(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-201204(P2017-201204A)
(43)【公開日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】軽量ピストン型アキュムレーター
(51)【国際特許分類】
F15B 1/24 20060101AFI20171013BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20171013BHJP
【FI】
F15B1/24
F16J12/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-137386(P2016-137386)
(22)【出願日】2016年7月12日
(31)【優先権主張番号】14/798,328
(32)【優先日】2015年7月13日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】517143067
【氏名又は名称】スチールヘッド コンポサイト,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(72)【発明者】
【氏名】マリック,コーシック
(72)【発明者】
【氏名】クアーズ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】パジェット−シールズ,アンナリーザ
【テーマコード(参考)】
3H086
3J046
【Fターム(参考)】
3H086AA25
3H086AD07
3H086AD16
3H086AD43
3H086AD46
3J046AA20
3J046BA01
3J046BD09
3J046CA10
3J046DA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軽量で点検に適した油圧アキュムレータを提供する。
【解決手段】油圧アキュムレーターは容器本体200と、容器本体200の内部空間内に配置されているピストンチャンバー300とを備える。容器本体200は、複合被覆材及び裏張り材を含む。ピストンチャンバー300の内部空間にピストン304を備え、それによりピストンチャンバー300は第1のチャンバー310と第2のチャンバー320とに分かれる。容器本体200とピストンチャンバー300との間の環状容積500と第1のチャンバー310はオリフィス314を介して連通可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アキュムレーターであって、該油圧アキュムレーターは、
容器本体であって、
円筒形の容器壁と、
内部空間と、
該油圧アキュムレーターの外部の気体源と連通する該容器本体の一端部にある閉鎖可能な気体ポートオリフィスと、
該油圧アキュムレーターの外部の流体源と連通する該容器本体の他端部にある閉鎖可能な流体ポートオリフィスと、
を備える、容器本体と、
前記容器本体の前記内部空間内に配置され、前記円筒形の容器壁と略同心であるピストンチャンバーであって、該ピストンチャンバーは、
不透過性の円筒形本体であって、前記円筒形の容器壁の内径が該ピストンチャンバーの該円筒形本体の外径よりも大きく、それにより、前記容器本体の前記円筒形の容器壁と該ピストンチャンバーの該円筒形本体との間の環状容積を形成する、不透過性の円筒形本体と、
ピストンチャンバーの内部空間と、
前記ピストンチャンバーの内部空間内に摺動可能に配置され、それにより、前記ピストンチャンバーの内部空間が、圧力下で圧縮されるようになっている気体を包含する第1のチャンバーと、前記流体ポートと流体連通する加圧流体を包含する第2のチャンバーとに分かれる、ピストンと、
を備える、ピストンチャンバーと、
を備え、前記第1のチャンバーは、該第1のチャンバーと前記環状容積との間の連通を可能にするように構成されているオリフィスを有する、油圧アキュムレーター。
【請求項2】
前記容器本体の外層は複合被覆材を含む、請求項1に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項3】
前記容器本体は不透過性の裏張り材を含む、請求項1に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項4】
前記不透過性の裏張り材は、金属、ポリマー、セラミック、複合材、又はそれらの組合せを含む材料から作製される、請求項3に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項5】
前記円筒形の容器壁の前記内径と前記ピストンチャンバーの前記円筒形本体の前記外径との比が、少なくとも1.1:1である、請求項1に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項6】
前記気体チャンバーは、前記第1のチャンバーと前記環状容積との間の連通を可能にするように構成されている複数の前記オリフィスを有する、請求項1に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項7】
前記ピストンチャンバーの長さは、少なくとも前記容器本体の前記気体ポートオリフィスから前記容器本体の前記流体ポートオリフィスまである、請求項1に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項8】
前記環状容積は圧縮性気体によって充填される、請求項1に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項9】
前記ピストンの形状は円形である、請求項1に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項10】
前記第1のチャンバーは、発泡材、エラストマー材料、金属若しくは複合材のばね、ベロー、又は他の圧縮性の装置若しくは材料を更に含む、請求項1に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項11】
前記ピストンの第1の環状シールを更に備え、それにより、前記第1のチャンバーと前記第2のチャンバーとの間の連通の可能性を低減する、請求項1に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項12】
前記ピストンの外周部に、前記第1のチャンバーと前記第2のチャンバーとの間の連通の可能性を低減する単数又は複数の動的ラジアルシールを更に備える、請求項11に記載の油圧アキュムレーター。
【請求項13】
前記容器の前記内部は相変化材料を含む、請求項1に記載の油圧アキュムレーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アキュムレーターに関する。1つの特定の実施形態において、本発明は、点検可能な(serviceable)ピストンを備え、フィラメント巻き複合材で被覆された(overwrapped)油圧アキュムレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧アキュムレーターは、本質的にはエネルギー貯蔵装置である。アキュムレーターは、移動式及び工業用の油圧系(hydraulics)において、エネルギーを貯蔵し、脈動を減衰し、熱膨張を補償し、及び/又は、補助動力を提供するのに広く用いられている。一般的に、アキュムレーターは、非圧縮性油圧流体が外部供給源により圧力下で保持される高圧容器からなる。これらのアキュムレーターは、気体が圧縮性であり、流体(例えば、油又は他の同様の液体)が相対的に非圧縮性であるという原理に基づいている。動作時、流体又は油は、アキュムレーター内に流入し、気体の貯蔵容積を減少させることによって気体を圧縮する。エネルギーは、圧力下に維持される圧縮気体中に貯蔵される。流体が解放されると、膨張する気体の圧力によって流体は急速に流出し、それにより、貯蔵されているエネルギーが供給される。
【0003】
ブラダー型アキュムレーターは、エラストマー製内部ブラダーを備える圧力容器からなり、ブラダーの内部には加圧窒素を備え、ブラダーの外部であるが容器内に収容されている状態で油圧流体を備える。アキュムレーターには、頂部に設置された弁を通して気体、通常は窒素が充填される。ブラダー型アキュムレーターにおいて、エネルギーは、エラストマー(例えばゴム)製ブラダー内に封入されている気体を圧縮することによって貯蔵される。アキュムレーターの流体ポートから油圧流体が出るときにエネルギーが解放され、それにより、ブラダーの膨張が可能になることでブラダーが減圧される。
【0004】
ブラダー型アキュムレーターの主な利点は、作動が迅速であること、ヒステリシスがないこと、汚染を被りにくいこと、より低コストであること、また、同様の条件下で一貫した挙動をとることである。しかしながら、ブラダー型アキュムレーターは、極度に高い流量、極高低温への耐久性、高い圧縮率、外力への耐久力、及び/又は、取付けの制約が要求される用途においては限度がある。さらに、ブラダー型アキュムレーターは、水平に取り付けられる場合又は長手方向に対して垂直に遠心力を受ける場合には、通常、ピーク出力を提供することができない。
【0005】
ピストン型アキュムレーターは、これらの問題のうちの多くを軽減する。ピストン型アキュムレーターは、アキュムレーターハウジングに対してシール状態で摺動するピストンを備える。ピストンの一方の側には気体(ここでも通常は窒素)があり、他方の側には油圧流体とシステムへの接続部とがある。充填ポートにより、窒素の加圧が可能である。ピストン型アキュムレーターの利点のうちの1つは、ブラダー型アキュムレーターよりも高い質量流量の油圧流体を提供する能力である。これは、ピストン型アキュムレーターによって、より高い比出力(アキュムレーターの質量あたりの伝達出力)が約束されることを意味し、このことは、移動式の用途における利点とすることができる。また、ピストン型アキュムレーターはブラダーを備えないが、ブラダーは、サイクルごとの激しい変形に起因して疲労寿命が限られているため、定期的に交換が必要となる。それに対して、往復ピストンにおけるシールは、通常はブラダー型アキュムレーターほど頻繁にはメンテナンスを必要としない。
【0006】
上述したように、ブラダー型アキュムレーターは、極度に低い温度又は極度に高い温度で動作する場合には限度がある。それに対して、ピストン型アキュムレーターは、使用されるシールのタイプに応じて、はるかに広い温度範囲において使用することができる。
【0007】
ブラダー型アキュムレーターの不良は突然起こるのが通常であり、その結果、貯蔵されている気体が油圧システムに漏れることになる。それに対して、ピストン型アキュムレーターは、シール面が小さいため、概して徐々に不良を起こす傾向にある。したがって、ピストン型アキュムレーターが不良を起こし始めた場合でも、気体側から流体側への気体の移動は遅く、油圧流体システムへの気体の漏れを補正する点検のために十分な時間が残される。
【0008】
概して、ブラダー型アキュムレーターは、底部の流体ポートに対して垂直に取り付けられ、重力により流体の流れが補助される場合に最も良好に機能するが、ピストン型アキュムレーターは、いずれの位置でも取り付けることができる。さらに、ブラダー型アキュムレーターの性能は、遠心力又はコリオリ力を受けると著しく低減される。ピストン型アキュムレーターはそれらの力に影響を受けない。
【0009】
残念ながら、従来のピストン型アキュムレーターは、鋼製で精巧な機械動作を伴い、概して非常に重い。通常、構造負荷を支持するとともに往復ピストンを収容するのに、厚い鋼製の円筒形チャンバーが用いられる。いくつかのアキュムレーター製造業者は、鋼の代わりに、構造複合材で旧来の鋼製チャンバー設計の上を被覆することにより、これらのピストン型アキュムレーターの総重量を低減することを試みている。
【0010】
多種多様な油圧アキュムレーターが利用可能であるにもかかわらず、軽量の点検可能な油圧アキュムレーターが引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明のいくつかの態様は、軽量で点検に適した油圧アキュムレーターを提供すると同時に、ピストン型アキュムレーターの種々の利点を提供することである。
【0012】
1つの特定の実施形態において、本発明は、容器本体と、容器本体の内部空間内に配置されているピストンチャンバーとを備える油圧アキュムレーターを使用する。ピストンチャンバーは、ピストン型アキュムレーターとして作用する。しかし、従来のピストン型アキュムレーターとは異なり、このピストンチャンバーは、構造負荷を支持するのに厚い鋼製の円筒形部材を必要としない。本発明の油圧アキュムレーターにおいて流体が及ぼす圧力の大部分は、ピストンチャンバー自体ではなく容器本体によって保持される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の軽量ピストン型アキュムレーターの1つの実施形態の2D切欠き図である。
【
図2】本発明の軽量ピストン型アキュムレーターの1つの実施形態の3D切欠き図である。
【
図3】気体側が膨張している図を示す、本発明の軽量ピストン型アキュムレーターの1つの実施形態の部分的な3D切欠き図である。
【
図4】本発明の軽量ピストン型アキュムレーターの別の実施形態の3D切欠き図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、本発明の種々の特徴の例示を助ける添付図面に関して記載される。これに関して、本発明は、包括的には油圧アキュムレーターに関する。すなわち、本発明は、複合材圧力容器の内部内にピストン型アキュムレーターを備える油圧アキュムレーターに関する。このようにして、ピストン型アキュムレーターの圧力保持能は、ピストン型アキュムレーターの機能とは切り離される。圧縮気体及び加圧流体の貯蔵されるエネルギーのうち、全てではないが大部分は、ピストン型アキュムレーターのチャンバーではなく複合材圧力容器自体によって持ち堪えられる。
【0015】
いくつかの実施形態において、複合材圧力容器は、金属で裏張りされた複合材圧力容器を含み、この複合材圧力容器は、大きい金属ポート開口を有し、それにより、複合材圧力容器の内側に収容される軽量で取外し可能な円筒形ピストン(すなわち、ピストン型アキュムレーター)の容易な組立て、点検、及びメンテナンスを可能にする。
【0016】
油圧アキュムレーターの例示的な実施形態は、概して添付の
図1〜
図4に示されている。これらの図は、本発明の実施を例示する目的で提供されているにすぎず、本発明の範囲の限定をなすものではない。
【0017】
ブラダー型アキュムレーターの性能では、これらのアキュムレーターが水平に取り付けられる場合、完全な潜在能力に達しないことがわかっている。ピストン型アキュムレーターは、上述したようないくつかの用途において、ブラダー型アキュムレーターを上回る、より良好な性能をもたらすことが、本発明者らによって発見されている。これらの用途のうちのいくつかは、可変の取付け位置(例えば、ブルドーザー及び掘削機の移動式用途)、遠心力(例えば、風力タービンブレードのピッチ制御)、コリオリ力(例えば、飛行機及びヘリコプター等の航空用途)、及び極高低温における動作(例えば、油圧ハイブリッド)を経るが、これらは軽量ピストン型アキュムレーターにより利することができる。
【0018】
図1〜
図4は、油圧アキュムレーター100に関する本発明の実施形態のうちのいくつかを示している。見て取ることができるように、油圧アキュムレーター100は、容器本体200及びピストンチャンバー300を備える。容器本体200の好適な材料は、炭素繊維複合材、ガラス繊維複合材、又は、高圧の複合材圧力容器向けに見出すことができるような強固で軽量の多くの他の複合材のうちの1つを含む。
図3に見て取ることができるように、1つの実施形態において、容器本体200は、複合被覆材250(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、又は強固で軽量の他の材料)及び裏張り材254を含む。裏張り材254に好適な材料として、限定はしないが、金属、合金、セラミック、プラスチック、又は強固で不透過性の任意の他の材料が挙げられる。通常、裏張り材254は、展延性があり疲労に耐える材料を含む。本明細書において用いられる場合、「不透過性」という用語は、通常動作の圧力条件下では気体を漏らさない材料を指す。通常、不透過性材料は、容器の動作圧力において顕著な気体漏れを示さない(例えば、1週間の期間にわたり0.1 %未満)。
【0019】
また、容器本体200は、容器本体200の端部にあり、容器本体200の内部へのアクセスを提供する対極の軸頭(polar bosses)400A及び400Bを有することができる。通常、対極の軸頭400A及び400Bは、裏張り材254が設けられる場合、裏張り材254内に埋め込まれるか又は結合されている。対極の軸頭の1つの特定の実施形態は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第14/282160号において開示されているものを含む。この米国特許出願は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【0020】
見て取ることができるように、ピストンチャンバー300は容器本体200内にある。ピストンチャンバー300は、容器本体200に(例えば、溶接継手によって一方の極の軸頭400Aに)溶接することができるか、又は一方の極の軸頭400Aに螺合することができる。ピストンチャンバー300がねじによって容器本体200に取り付けられる場合、気体及び/又は油圧流体の漏れを防止するのにシール(図示せず)を用いることができる。他の接合手段、例えば、雌雄継手接続を、適切なシール手段とともに代替的に使用することができる。
【0021】
1つの実施形態において、容器本体200の端部をシールするのに端部プラグ210A及び210Bが用いられる。特に、端部プラグ210A及び210Bは、容器本体200内の適所にピストンチャンバー300を配置するのに、対極の軸頭400A及び400B内に配置される。また、端部プラグ210A及び210Bは、気体ポートオリフィス214及び流体ポートオリフィス224をそれぞれ有することができる。
【0022】
流体ポートオリフィス224は、油圧アキュムレーター100の外部の流体源(図示せず)と連通する。同様に、気体ポートオリフィス214は、油圧アキュムレーター100の外部の気体源(図示せず)と連通する。通常、気体ポートオリフィス214及び流体ポートオリフィス224は、オリフィスを開閉して圧力変動させることができるように、閉鎖可能又は再シール可能である。
【0023】
また、ピストンチャンバー300は、不透過性の円筒形本体を有する。容器本体200の内径は、ピストンチャンバー300の円筒形本体の外径よりも大きく、容器本体200とピストンチャンバー300との間に環状容積500を形成する。概して、容器本体200の内径とピストンチャンバー300の外径との比は、少なくとも約2:1、通常は少なくとも約1.5:1、また多くの場合、少なくとも約1.25:1である。
【0024】
見て取ることができるように、ピストンチャンバー300は、容器本体200の内部空間内に配置され、容器本体200の円筒形の容器壁と略同心である。また、ピストンチャンバー300は、ピストンチャンバー300の内部空間内にピストン304を備える。ピストン304は、ピストンチャンバー300の内部空間内に摺動可能に配置され、それにより、ピストンチャンバー300が第1のチャンバー310と第2のチャンバー320とに分かれる。第1のチャンバー310は、圧力下で圧縮されるようになっている気体を包含し、第2のチャンバー320は、外部の流体源と流体ポートオリフィス224を通して流体連通する加圧流体を包含する。
【0025】
第1のチャンバー310内、通常は一方の極の軸頭領域400Aの付近において、ピストンチャンバー300は、第1のチャンバー310と環状容積500との間の連通を可能にするように構成されているオリフィス314も有する。いくつかの例において、複数のオリフィス314は、第1のチャンバー310内にあることができる。この構成は、気体が及ぼす圧力のうち、実質的に全てではないが大部分が、ピストンチャンバー300ではなく容器本体200によって支持されることを可能にする。通常、オリフィス314は第1のチャンバー310内に配置され、それにより、ピストン304が第1のチャンバー310の極端部にある場合でも、ピストン304の厚さ及び/又は設計により、油圧流体がオリフィス314を通って漏れる可能性がない。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1のチャンバー310は、気体に加えて又は気体の代わりに、発泡材、エラストマー材料、従来の金属製コイルばね、1組の複合材ベローばね、ベロー、又は他の圧縮性の装置若しくは材料を含むこともできる。
【0027】
図示していないが、本発明の油圧アキュムレーターは、第1のチャンバー310と環状容積500との間の気体の連通を可能にするように設計されるため、ピストンチャンバー300の長さが、一方の極の軸頭端部から他方の極の軸頭端部まで(例えば、400Aから400Bまで)の容器本体200の長さよりも短くなるように、ピストンチャンバー300を設計することができることが理解されるべきである。このような構成により、第1のチャンバー310の端部が環状容積500内に「ぶら下がる(hanging)」すなわち吊るされることになる。このような実施形態では、オリフィス314は必要とされない。
【0028】
しかし、通常、ピストンチャンバー300の長さは、少なくとも気体ポートオリフィス214から流体ポートオリフィス224まで延びる。
【0029】
ポート224を介して油圧流体が出入りする際、ピストン304は、第1のチャンバー310内の気体と第2のチャンバー320内の流体との圧力を均衡させることにより生じる力を受けて、ピストンチャンバー300内で長手方向に動く。ピストンシール(図示せず)によって、充填気体が流体と接触することを防止することができる。いくつかの例では、ピストン304を包囲する動的ラジアルシール(図示せず)が存在する。このような動的ラジアルシールは、当該技術分野においてよく知られており、ピストンチャンバー300内における長手方向の動きを容易にするように作用する。
【0030】
概して、油圧アキュムレーター100の動作準備には、気体側に事前充填することを伴う。事前充填中、気体(例えば、窒素又は当業者に既知の任意の他の好適な気体)は、指定の事前充填圧力、例えば、1000 psi、2000 psi、5000 psi、又は更には最大10000 psiで、(オリフィス314を介して)気体ポートオリフィス214を通して第1のチャンバー310及び環状容積500内に導入される。初めの気体充填圧力により、ピストン304はピストンチャンバー300の他端部に向かって長手方向に動き、流体が存在する場合、ピストンが第2のチャンバー320を通って摺動する(sweeps)につれて、流体を第2のチャンバー320から排出する。充填気体を保持するために、気体ポートオリフィス214は、当該技術分野において既知の従来の気体弁手段によってシールされる。このようにして、油圧アキュムレーター100には適切な事前充填圧力がもたらされる。油圧システムの動作の開始時、油圧流体は、第2のチャンバー320に流体が充填されるように流体ポートオリフィス224を通して第2のチャンバー320内に導入され、ピストン304は第1のチャンバー310に向かって摺動する。当業者(oneskilled in the art)には容易に理解することができるように、ピストン304は、第1のチャンバー310(環状容積500も含む)と第2のチャンバー320との間の圧力平衡が達成されるまで、第1のチャンバー310に向かって摺動する。油圧アキュムレーター100にエネルギーを貯蔵するために、流体は、油圧ポンプ/油圧モーター又は当該技術分野において既知の他の手段によって、流体ポートオリフィス224を通して第2のチャンバー320内に圧送される。また当該技術分野において既知のように、これにより、第1のチャンバー310(及び環状容積500)内に充填されている気体は、流体によりピストン304が第1のチャンバー310に向かって動かされると、圧縮状態になる。
【0031】
いくつかの例における圧力変化は、充填気体内の温度変化をもたらす。エネルギー貯蔵プロセス(すなわち油圧流体充填プロセス)中の温度上昇を回避又は低減するために、いくつかの実施形態では、容器本体200の内部は、相変化材料(「PCM」)を含むか又はPCMによってコートされる。別の実施形態では、第1のチャンバー310は、エネルギー貯蔵プロセス中、ピストン304が第1のチャンバー310に向かって動くにつれて圧縮されるPCMエラストマー又はPCM発泡材によって充填することができる。好適なPCMは当該技術分野においてよく知られている。本発明の譲受人に譲渡された、2014年3月4日に発行された米国特許第8,662,343号を参照されたい。この米国特許は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。簡潔には、一般的なPCMは、或る特定の温度で溶解する(すなわち、固体から液体に相変化する)材料を含む。本発明に有用なPCMは、約0℃〜約80℃、通常は約20℃〜約50℃の範囲の融点を有する。いくつかの実施形態では、ピストンチャンバー300も、PCMを含む(又はPCMでコートする)ことができる。本発明に好適である例示的なPCMとして、限定はしないが、パラフィン及び脂肪酸等の有機材料、塩水和物、水、共晶、天然吸湿剤、金属、及び金属粒子、ナノ材料が挙げられる。本発明に好適な特定のPCMのうちのいくつかとして、限定はしないが、heptanone-4(商標)、n-Unedane(商標)、TEA_16(商標)、エチレングリコール、n-ドデカン、Thermasorb 43(商標)、Thermasorb65(商標)、Thermasorb 175+(商標)、Thermasorb 215+(商標)、リン酸水素ナトリウム、Micronal(商標)、及び他のポリマーPCMの組合せが挙げられる。
【0032】
複合被覆材の圧力容器を使用することによって、本発明は、気体の損失の問題を回避すると同時に、比較的軽量のピストン型アキュムレーターシステムを提供する。
【0033】
本明細書において考察するように、概して、ピストン304を収容するピストンチャンバー300は、圧力容器、すなわち容器本体200内に封入される。1つの特定の実施形態において、圧力容器(すなわち容器本体)200は複合材で被覆された圧力容器であり、ピストン304は、金属、複合材、セラミック、強化ポリマー、及びそれらの組合せからなる群から選択される材料を含む。
【0034】
別の実施形態において、容器本体200は、適切なプラグを用いて少なくとも部分的に閉鎖することができるポート開口を有する。容器本体200が複合材で被覆された圧力容器である1つの特定の例において、ポートの開放は、裏張り材及び複合材構造に一体化された極の軸頭によって容易になる。
【0035】
通常、油圧アキュムレーター100の組立てには、ポート開口を通してピストンチャンバー300を圧力容器200内に挿入することを伴う。次に、第1のチャンバー310は圧縮性気体で充填され、第2のチャンバー320は油圧流体で充填される。場合に応じてラジアルシール(複数の場合もある)を備えるピストン304は、気体と流体とを2つの区画に分ける。本発明の重要な要素のうちの1つは、ピストンチャンバー300と容器本体200(すなわち環状容積500)との間の環状領域が、完全に又は部分的に圧縮性気体によって充填されることである。圧縮性気体を包含する第1のチャンバー310と環状容積500との間に連通路を有することにより、圧力負荷を容器本体100によって支持することが可能になる。
【0036】
圧縮気体における圧力は、容器本体200によって構造的に支持される。1つの実施形態において、容器本体200は複合材圧力容器である。別の実施形態において、容器本体200は、金属又はポリマー等の不透過性の裏張り材の上を被覆する複合材外殻である。
【0037】
ピストン304は、流体が第2のチャンバー320に入る場合、第1のチャンバー310に向かって摺動して気体を圧縮し、気体と流体との間に圧力平衡をもたらす。エネルギーは圧縮気体中に貯蔵される。第2のチャンバー320内の圧力が降下する場合又は流体が第2のチャンバー320を出る場合、ピストン304は、第2のチャンバー320に向かって摺動し、それにより気体を減圧し、貯蔵されているエネルギーを回収し、第1のチャンバー310と第2のチャンバー320との間の圧力平衡を可能にする。
【0038】
第1のチャンバー310がエラストマー材料、発泡材、又は他の圧縮性材料で部分的に又は完全に充填される場合、そのような材料は相変化材料を含むこともできる。気体が急速に圧縮される場合、温度上昇が起こる。温度が安定すると、気体区画内の圧力が降下する。これにより、貯蔵されているエネルギーを回収する場合、所望よりも少ない流体体積が排出されることになる。気体区画(すなわち第1のチャンバー310)にPCMを用いることにより、各エネルギー貯蔵回収サイクル中の圧縮気体の熱管理が向上し、そのため、本発明の油圧アキュムレーターは、各サイクル中、ピーク出力を伝達し、より効率的に動作することが可能になる。
【0039】
いくつかの実施形態において、第1のチャンバー310は、圧縮によりエネルギーを貯蔵するばねのような装置を備える。このばねは、金属、ポリマー、エラストマー、PCM、又は複合材により作製することができる。このばねは、金属、複合材、又はエラストマー製のベローとすることもできる。
【0040】
本発明の利点のうちの1つは、ピストンチャンバー300が中立平衡、すなわち、ピストンチャンバー300の内部と、外部すなわち環状容積500との間に圧力差が存在しない状態になることである。この正味の圧力差は、多種多様な材料をピストンチャンバー300として用いることを可能にする。ピストンチャンバー300に好適な材料として、限定はしないが、金属、金属合金、セラミック、ポリマー、複合材等が挙げられる。ピストンチャンバー300は、ピストン動作に要求される円形性を与えるように機械加工又はネット成形(netformed)することができる。1つの特定の実施形態において、ピストンチャンバー300は、滑らかな内面をもたらすために機械加工、磨き加工(honed)、及び重ね加工(lapped)された金属から作製される。別の実施形態において、ピストンチャンバー300は、複合材で被覆された薄い金属、ポリマー、又はセラミックの外殻から作製される。
【0041】
いくつかの実施形態において、ピストンチャンバー300は、圧力容器200内への挿入後、ラジアルシールを用いて極の軸頭に対してシールされる。これにより、圧力容器200のポート開口を通過する気体又は流体の漏れが防止される。圧力容器200の内側へのピストンチャンバー300の設置は、ねじ、圧力容器200の外側から動作する特殊な機械式ロック又はアタッチメントによって達成することができる。端部キャップは、ポート開口に螺合又は係止し、アキュムレーターの各端部に1つの気体充填ポート及び流体ポートを与えることができる。
【0042】
ねじ、特殊な機械式ロック又はアタッチメントがポート開口から取り外されると、ピストンチャンバー300は、圧力容器200から引き出し、取り外して、圧力容器200の内面、ピストン304、又はピストン304のラジアルシールを点検することができる。
【0043】
本発明の油圧アキュムレーターの圧縮比及びエネルギー出力貯蔵能は、概して、ピストンチャンバー300の直径と圧力容器200の直径との間の相対比によって決まる。1つの実施形態において、ピストンチャンバー300の外径は、圧力容器200の内径に比べて非常に大きく(70 %〜85 %)、圧縮比は2以上に保たれる。これには、圧力容器200の極開口が、圧力容器200の内径の大部分となることが必要である。
【0044】
鋼のようなモノリシックで等方性の材料とは異なり、大きいポート開口を有する、複合材で被覆された圧力容器は、非常に高い内圧に耐えるように設計することができる。このことは、内圧を支持するよう複合材が適切かつ最適に配置されるように、最適化された設計の構造形状及び複合積層材(composite layup)によって可能になる。1つの特定の実施形態において、複合材圧力容器のドーム形状(例えば非円筒形部分)は、ドームの圧力保持能を最適化する螺旋巻き角度で一方向複合材の測地線のフィラメント巻きを可能にすることを選択することができる。このような場合、巻回パターンは、極開口直径が圧力容器200の直径の大部分(50 %〜90 %)である圧力容器を完全にカバーすることを可能にする。
図4に概略的に示されている別の実施形態において、圧力容器200の直径の80 %である極開口直径は、±54.5度の螺旋巻き角度を使用することによって達成することができ、その結果、フープ又は周方向の層(plies)を必要とすることなく複合材構造がもたらされる。
【0045】
ピストンチャンバー300は、圧力容器200の構造と一体になるように設計することができる。端部キャップにかかる極における噴出の負荷は、軸方向においてピストンチャンバー300の壁によって完全に又は部分的に支持することができる。ピストンチャンバー300の壁は、金属製外殻又は金属製外殻、ポリマー製外殻、セラミック製外殻、及び複合材外殻の組合せの厚さを最適化することによって、この軸方向負荷を完全に又は部分的に支持するように設計することができる。
【0046】
本発明の上述の考察は、例示及び説明の目的で提示されている。上記は、本明細書に開示されている単数又は複数の形態に本発明を限定する意図はない。本発明の記載は、1つ又は複数の実施形態並びにいくつかの変形形態及び変更形態の記載を含むが、他の変形形態及び変更形態が本発明の範囲内にある、例えば、本開示を理解した後に当業者の技能及び知識内にある場合がある。許容される範囲まで代替的な実施形態を含む権利を得ることが意図され、これには、特許請求されるものに対して代替の、互換可能な、及び/又は均等の構造、機能、範囲、又はステップが、そのような代替の、互換可能な、及び/又は均等の構造、機能、範囲、又はステップが本明細書に開示されているかにかかわらず、またいずれの特許請求可能な主題にも公然と供する意図はなく含まれる。本明細書に引用される全ての参考文献は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【符号の説明】
【0047】
100:油圧アキュムレーター
200:容器本体
210:端部プラグ210A及び210B
214:気体ポートオリフィス
224:流体ポートオリフィス
250:複合被覆材
254:裏張り材
300:ピストンチャンバー
304:ピストン
310:第1のチャンバー
314:オリフィス
320:第2のチャンバー
224:流体ポートオリフィス
400:対極の軸頭(polar bosses)400A及び400B
500:環状容積
【外国語明細書】