【解決手段】冷却槽4に収容した冷却液5に食品などの被処理物を接触させて素早く冷凍させる液体冷凍機10であって、スターリング冷凍機1の低温部19と冷却槽4とをヒートパイプ3で熱的に接続する。ヒートパイプ3は、熱伝達部2を介してスターリング冷凍機1の低温部19と接続されており、その熱伝達部2は冷却液5の液面よりも高い位置に配置する。
前記ヒートパイプは、両端が封じられた銅パイプよりなり、内部に前記スターリング冷凍機の低温部で液化する作動流体が封入されていることを特徴とする請求項3に記載の液体冷凍機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係る液体冷凍機10のブロック図である。
【0015】
実施形態に係る液体冷凍機10は、
図1に示すように、冷却液5を収容する冷媒槽4と、冷却液5を冷却するためのスターリング冷凍機1とを備えている。
【0016】
冷媒槽4は、冷却液5を収容するものであり、その周囲は断熱材で覆われている。その断熱材としては、例えば発泡スチロールや発泡ウレタンフォームなどを用いることができる。また、断熱材の代わりに、真空引きした断熱空間を設けて保温性を確保するようにしてもよい。
【0017】
この冷媒槽4に収容する冷却液5としては、少なくとも−40℃でも凍らない溶液を用いることができる。例えば、エタノール分が60%以上の水−エタノール溶液を用いることができる。
【0018】
冷媒槽4の内側には、コイル状に巻かれたヒートパイプ3が配置されており、そのヒートパイプ3の一端は、熱伝達部2を介してスターリング冷凍機1の低温部に接続されている。
【0019】
熱伝達部2は、冷却液5の液面よりも高い位置に配置されている。そして、ヒートパイプ3は、その上端部3bが熱伝達部2に接続され、その先端部3aにかけて徐々に低くなるように傾斜している。
【0020】
このようにして、スターリング冷凍機1の冷熱をヒートパイプ3を介して冷媒槽4に伝えることで、冷却液5を冷却する。
【0021】
以下、各部の構成について更に詳しく説明する。
【0022】
(スターリング冷凍機1の構成)
図2は、
図1のスターリング冷凍機の断面図である。また、
図3は、
図2のスターリング冷凍機の低温部とヒートパイプとの接続部の構造を示す断面図である。
【0023】
図2に示すように、スターリング冷凍機1は、内部にヘリウムガスなどの気体が封入されてなり、圧縮部11と膨張部12とを有する。
【0024】
圧縮部11は、圧縮ピストン13と膨張ピストン14とに挟まれた部分であり、内部の気体を圧縮が行われて気体を発熱させる部分である。また、膨張部12は、膨張ピストン14の先端側に設けられた部分であり、内部の気体を膨張させて気体の吸熱が行われる部分である。
【0025】
圧縮ピストン13は、駆動部15とシャフト13aを介して接続されており、一定の周期で上下運動を行う。一方、膨張ピストン14は、シャフト14aを介してばね(不図示)と接続されており、圧縮ピストン13とは独立して運動する。ただし、膨張ピストン14は、圧縮部11の圧力によって運動するため、圧縮ピストン13に対して一定の位相差を保って上下運動する。
【0026】
圧縮部11では、圧縮ピストン13の上昇によって、内部の気体が圧縮され温度が上昇する。このとき発生する熱は、放熱部16から放出される。
【0027】
圧縮部11で圧縮された高温の気体は、高温側再生器17を及び低温側再生器18を経て膨張部12に移動する。このとき、気体の熱は高温側再生器17に奪われて気体の温度が低下する。
【0028】
そして、気体が低温側再生器18を通過しつ膨張する際に、吸熱を行い、低温部19が冷却される。
【0029】
その後、膨張ピストン14が上昇して膨張部12の気体が圧縮部11に移動する。このとき、高温側再生器17に蓄えられた熱が気体に与えられて圧縮部11に流入する気体の温度が上昇する。
【0030】
スターリング冷凍機1は、上記の動作を繰り返すことで、低温部19に低温を発生させ、放熱部16に高温を発生させる。
【0031】
スターリング冷凍機1は、比較的小型であり、200W程度の消費電力であっても−40℃以下の温度において80W程度の冷却能力が得られる。
【0032】
そのため、一般家庭などの単相の交流電源(例えば、100V)で使用することができる。
【0033】
(熱伝達部2の構成)
本実施形態の液体冷凍機10では、冷却液5に効率よく伝達するべく、熱伝達部2を介してヒートパイプ3とスターリング冷凍機1の低温部19とを接続している。以下、熱伝達部2及びヒートパイプ3の構成について説明する。
【0034】
図3は、
図2のスターリング冷凍機1の低温部19とヒートパイプ3と熱伝達部2の構造を示す断面図である。
【0035】
図3に示すように、熱伝達部2は、アダプタ23とヒートパイプ3の固定金具21とを備えている。
【0036】
アダプタ23は、スターリング冷凍機1の低温部19の外周に取り付ける管状の部材であり、低温部19を周方向から締め付けるようにして固定されている。
【0037】
そのアダプタ23の上に、固定金具21がねじ止めなどの方法で取り付けられる。
【0038】
固定金具21は、ヒートパイプ3を支える支持部21aと蓋部21bとの2つの部品よりなる。支持部21aは、アダプタ23の上に取り付けられる。その支持部21aの上部には、ヒートパイプ3を支持して固定するための断面がU字型の溝21cが形成されており、その溝21c内にヒートパイプ3を収容する。
【0039】
ヒートパイプ3を収容した支持部21aの上には蓋部21bが取り付けられる。この支持部21a及び蓋部21bは、ねじ止めなどの方法で固定される。
【0040】
本実施形態の固定金具21には、支持部21a及び蓋部21bに、側方に伸び出た延長部21dが設けられている。これにより、固定金具21とヒートパイプ3との接触面積を広くとってヒートパイプ3への熱伝導性を高めている。
【0041】
支持部21aの溝21cは、ヒートパイプ3の上端部3bから先端に向けて下るように傾斜が設けられている。この傾斜により、ヒートパイプ3の中で冷やされて凝縮した液相の作動流体が、固定金具21付近で滞留するのを防ぎ、先端側に向かって自重により流れ落ちるようにしている。
【0042】
なお、固定金具21及びアダプタ23は、熱伝導性の良い金属として、例えば、銅、アルミニウム又は真鍮などの金属を用いるとよい。
【0043】
このように、本実施形態の熱伝達部2によれば、作動流体を介してヒートパイプ3へ効率よく冷熱を伝えることができる。
【0044】
なお、熱伝達部2は冷却槽4の冷却液5の液面よりも高い位置に配置することが好ましい。
【0045】
このように、熱伝達部2を冷却液5よりも高い位置に配置しておくことで、ヒートパイプ3の内部で冷却されて液化した作動流体が自重でヒートパイプ3の先端側に流れ下り、循環ポンプなどを設けなくても効率よく冷熱を伝えることができる。
【0046】
(ヒートパイプ3及び冷却槽4の構成)
図3の断面図に示すように、本実施形態のヒートパイプ3は内部が中空の管であり、例えば直径8〜10mm程度の銅パイプよりなり、その内部にはハイドロフルオロカーボンガスなどの作動流体が封入されている。
【0047】
図4は、
図1のヒートパイプ3の全体と冷却槽4の構造を示す透視図である。
【0048】
図4に示すように、冷却槽4は箱状に成形されている。ヒートパイプ3は、冷却槽4の内壁に沿って略矩形のコイル状に巻きまわされている。
【0049】
そして、そのヒートパイプ3の先端部3aは、冷却槽4の底部付近で溶接又はロウ付けなどの方法で封じられている。ヒートパイプ3の上端部3bにはバルブが設けられておりそのバルブから作動流体を注入することができる。
【0050】
このヒートパイプ3には、熱伝達部2と接触する部分だけでなく、冷却槽4内で巻かれた部分にも先端部3aにかけて緩やかに下るように傾斜が設けられている。この傾斜は、例えば4°〜8°、より好ましくは6°程度とすると好適である。
【0051】
この傾斜を設けることにより、冷たい液相の作動流体がヒートパイプ3の内部を適度な速度で流れ下り、ヒートパイプ3の全体に効率よく冷熱を伝達することができる。
【0052】
なお、傾斜角を上記の範囲よりも小さくすると、液相の作動流体がヒートパイプ3の先端部3aに到達する前に気化してしまい、ヒートパイプ3の全体を使って冷却液5に効率よく冷熱を伝えることができない。
【0053】
また、傾斜角を大きくとりすぎると、液相の作動流体がヒートパイプ3の先端部3a付近に滞留してしまい、冷却槽4の底部付近のみが過剰に冷やされてしまい、効率の良い冷却が行えなくなってしまう。
【0054】
図5は、
図1の冷却槽4の冷却動作を示す図である。
【0055】
ヒートパイプ3内の液相の作動流体は、ヒートパイプ3の内部を流れ下りつつ蒸発して冷却液5を冷却する。ヒートパイプ3内では冷却液5から熱を奪うことで差動流体の蒸気が発生し、その蒸気が熱伝達部2に移動する。ヒートパイプ3は熱伝達部2からの冷熱により、作動流体の蒸気が冷却されて差動流体が液相に戻る。差動流体が蒸気から液相に戻る際に放出する蒸発潜熱は、熱伝達部2を介してスターリング冷凍機1の低温部で冷却される。
【0056】
その後、液相の差動流体がヒートパイプ3の傾きにしたがって、先端部3aにむかって流れ下る。
【0057】
以上のようにしてヒートパイプ3を介して冷却液5にスターリング冷凍機1の冷熱が伝えられる。
【0058】
ヒートパイプ3で冷却された冷却液5は、図中の矢印に示すように、冷却槽4の内壁に沿って下方に向かって流れる。
【0059】
そして、冷却槽4の中央付近では冷却液5の上昇する流れが生じる。このような冷却液5の対流を発生する。これにより、冷却液5をポンプなどを用いて能動的に攪拌しなくても、冷却液5の全体に冷熱が伝わり、その全体を均一に冷却することができる。
【0060】
本実施形態では、ヒートパイプ3は、冷却槽4の内壁よりも内側に離間して配置されている。このように、ヒートパイプ3を冷却槽4の内壁と離間させておくことで、冷却槽4の壁からの熱伝導を抑制し、冷却液5に効率よく冷熱を伝えることができる。
【0061】
(実施例)
図6は、実施例に係る液体冷凍機30の斜視図である。
【0062】
図6に示すように、本実施例の液体冷凍機30は、
図1〜
図5を参照しつつ説明した液体冷凍機10の各構成を箱型の筐体31に収めたものである。なお、
図1〜
図5で説明したものと同じ構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
筐体31の内部には、冷却槽4が収容されており、その冷却槽4の上には保温蓋36が設けられている。この保温蓋36は、断熱材によって形成されてなり外気から冷却液5への熱の流入を抑える。被処理物91の出し入れを行なわないときに、この保温蓋36を閉じておくことにより、外気からの熱の流入が少なくなり、液体冷凍機30の消費電力を抑制できる。
【0064】
保温蓋36を含めた筐体31のサイズは、例えば、幅70cm、奥行き及び高さが40cmとすることができる。また、この液体冷凍機30が内部するスターリング冷凍機1は、−40℃において80W程度の冷却能力を有しており、そのときの消費電力は200Wであるため、単相の交流電源(例えば、100V)で動作させることができる。
【0065】
筐体31の上面には、冷却液5の温度を表示する表示部32と、温度設定などの運転条件を入力する入力部33とが設けられており、冷却液5の温度を適宜設定することができる。
【0066】
また筐体31の側面には、スターリング冷凍機1の放熱部16を冷却するための吸気部34a及び排気部34bが設けられている。吸気部34a又は排気部34bには冷却封を送るための送風ファンが設けられている。
【0067】
本実施例の液体冷凍機30は、食品などの被処理物91の処理の数時間前に電源を投入して冷却液5の冷却を開始する。例えば、冷却液5の温度を−40℃以下に冷却する。
【0068】
被処理物91は、冷却対象となる肉、魚、果物、惣菜などの食品をあらかじめプラスチックバッグに入れ、その内部の空気を抜いた、いわゆる真空パックとする。
【0069】
真空パック化した被処理物91は、所定のサイズのバスケット92に入れ、そのバスケット92を冷却槽4の内にいれることで、被処理物91を冷却液5に接触させて冷凍を行う。被処理物91の厚さにもよるが、約5分程度で被処理物91の冷凍が完了する。
【0070】
本実施例の液体冷凍機30は、−40℃以下の低温を発生させることができる能力を有しつつも、テーブルなどの上に設置できる程に小型化されており、レストランなどの小規模な事業所や一般家庭に液体冷凍機を設置することができる。