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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-201242(P2017-201242A)
(43)【公開日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】油圧センサの取付け構造
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/00 20060101AFI20171013BHJP
   H05K 7/12 20060101ALI20171013BHJP
   F16H 61/00 20060101ALI20171013BHJP
【FI】
   G01L19/00 101
   H05K7/12 J
   F16H61/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-92630(P2016-92630)
(22)【出願日】2016年5月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大澤 朝華
(72)【発明者】
【氏名】若林 弘宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊晃
(72)【発明者】
【氏名】立田 洋
【テーマコード(参考)】
2F055
3J552
4E353
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC60
2F055DD20
2F055EE40
2F055FF43
2F055HH03
3J552MA01
3J552MA06
3J552NA01
3J552PA64
3J552QA41A
3J552QA42A
3J552QC07
4E353AA30
4E353BB02
4E353BB13
4E353CC20
4E353DD05
4E353DR02
4E353DR27
4E353DR60
4E353GG20
(57)【要約】
【課題】正確な圧力検出を可能とすると共に、複数の油圧センサを簡単な構造で取付けることのできる油圧センサの取付け構造を提供する。
【解決手段】油圧センサ3は、下部ケース31と、下部ケース31の上方に固定された上部ケース32を備える。バルブボディは、複数の油圧センサ3を収納する穴部4を備えた上部ボディ1と、油路5が設けられた下部ボディ2とを含む。被押圧部7は、下部ケース31に設けられる。被押圧部7は、上部ケース32に対向して下部ケース31の水平方向に突出する。被押圧部7は、上部ボディ1の押圧部によって下方に押圧される。上部ボディ1と下部ボディ2の少なくとも一方は、複数の油圧センサ3の穴部41内における水平方向の位置決め部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ケースと該下部ケースの上方に上部ケースを固定してなる複数の油圧センサと、
前記複数の油圧センサを収納する穴部を備えた上部ボディと、前記上部ボディに向かって設けられた油路を有する下部ボディとを含むバルブボディと、
を備えた油圧センサ取付け構造において、
前記各油圧センサは、
前記下部ケースに設けられ、一端側が前記油路に開口し、他端側が油の圧力に応じて変形する可撓板で塞がれた油導入空間と、
前記上部ケースに設けられ、前記可撓板における油導入空間の反対側に設けられた圧力検出素子と、
前記上部ケースに設けられ、可撓板の上面側を囲んだ圧力検出空間と、
前記下部ケースに水平方向に突出して設けられ、前記上部ボディによって下方に押圧される被押圧部を備え、
前記上部ボディと下部ボディの少なくとも一方は、前記複数の油圧センサの前記穴部内における水平方向の位置決め部を備え、
前記上部ボディは、前記複数の油圧センサに設けられた前記被押圧部を上方から押圧する押圧部を備えたことを特徴とした油圧センサの取付け構造。
【請求項2】
前記複数の油圧センサが、各センサの中心を結ぶ線が正多角形状になるように配置され、
前記穴部は、バルブボディの上下方向に伸びる中心軸の周囲に形成された共通空間と、この共通空間の前記中心軸から外方に形成されて各油圧センサが収容される複数の個別空間を備え、
前記上部ボディにおける個別空間に臨む箇所に、前記押圧部が設けられる請求項1に記載の油圧センサの取付け構造。
【請求項3】
前記各油圧センサは、各々その上部に端子ピンを備え、
前記各油圧センサの端子ピンは、前記穴部に収容されたプリント配線基板に共通して接続され、
前記プリント配線基板から、各油圧センサに共通な給電線と、各油圧センサからの個別の信号線が引き出され、
前記穴部の内壁面、及び上部ボディと下部ボディの接合面の少なくとも一方に、穴部内からバルブボディ外部に連通する配線溝が形成され、
前記共通な給電線と個別の信号線が前記配線溝を経由してバルブボディ外部に引き出される請求項1に記載の油圧センサの取付け構造。
【請求項4】
前記配線溝が、前記複数の油圧センサのいずれか1つに向き合って前記穴部の内面に形成され、
前記いずれか1つ油圧センサにおいては、前記配線溝の水平方向の両側に、平面形状が同一である前記押圧部が、配線溝を中心として対称形に設けられる請求項3に記載の油圧センサの取付け構造。
【請求項5】
前記複数の油圧センサの上部に上面が開口した箱型のケースが設けられ、このケースの内部に各油圧センサの端子ピンがケースの底部を貫通して挿入され、
前記ケースの内部にプリント配線基板が収納され、このプリント配線基板に前記端子ピンが接続されるとともに、このプリント配線基板に前記給電線と信号線が接続され、
前記ケース内には前記端子ピンとプリント配線基板を被覆する樹脂が充填される請求項3または請求項4に記載の油圧センサの取付け構造。
【請求項6】
前記上部ボディは、その穴部内に、前記押圧部と前記被押圧部の間に配置されるブラケットを備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の油圧センサの取付け構造。
【請求項7】
前記押圧部は、前記上部ボディの穴部の内面に設けられた段部である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の油圧センサの取付け構造。
【請求項8】
前記上部ボディと下部ボディとの間に板状のスペーサが設けられ、このスペーサに前記センサ筐体を挿入する穴が設けられ、
前記スペーサの穴の縁が前記各油圧センサの下部ケースの被押圧部に当接する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の油圧センサの取付け構造。
【請求項9】
前記上部ボディに設けられた穴部が上部ボディの下面から上面に貫通し、
前記穴部内に収納された前記センサ筐体の上部が、前記上部ボディの上面に突出する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の油圧センサの取付け構造。
【請求項10】
前記下部ボディの表面に、前記下部ケースの下部及び前記被押圧部が収容される凹部を有し、
前記被押圧部の表面が前記下部ボディの表面と同一面に位置する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の油圧センサの取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の変速機のコントロールバルブとして使用するのに適した油圧センサの取付け構造に関するもので、特に、複数の油圧センサをバルブボディに取り付けるのに適した取付け構造に係る。
【背景技術】
【0002】
車両の自動変速機には、変速機構を制御するためのコントロールバルブが設けられる。このコントロールバルブは、電磁弁装置を使用して変速機構に対して所定の大きさの油圧を供給・停止することにより、変速機構を制御する。特許文献1から特許文献3に示すように、従来のコントロールバルブとして、上部ボディと下部ボディとを重ね合わせて成るバルブボディを備えるものが知られている。バルブボディ内には、作動油が流れる油路を形成すると共に、油圧の切換のための電磁弁装置と油路内の油圧を検出するセンサを設ける。
【0003】
従来のコントロールバルブにおいて、センサなどの電子機器は個々にバルブボディの上から取り付けられていることがほとんどであった。近年、小型化の要請から上部ボディと下部ボディの間に電子部品を挟みこむビルトイン構造化が必要となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−174991号公報
【特許文献2】特表2010−058800号公報
【特許文献3】特開2011−134801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来技術においては、油圧センサを上部ボディで押さえて固定することから、油圧センサ内部の圧力検出素子に不要な押圧力がかかり、正確な圧力が検出できなくなる。上部ボディからの押圧力により、油圧センサやその内部の圧力検出素子などの構造体が破壊する可能性もある。このような不都合を解消するために、油圧センサのケースの強度を向上させることも考えられるが、その場合は、ケースの大型化や必要とする材料の増加を招く問題が生じる。
【0006】
また、バルブボディに複数の油圧センサを設ける場合、従来技術では、個々の油圧センサを別々にバルブボディに取付けていたため、バルブボディの構造が複雑化すると共に、取付け作業に手間がかかる問題があった。
【0007】
本発明は、油圧センサ内部の圧力検出素子に悪影響を与えることがなく、正確な圧力検出を可能とすると共に、複数の油圧センサを簡単な構造で取付けることのできる油圧センサの取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の油圧センサの取付け構造は、次のような構成を有することを特徴とする。
(1)下部ケースと該下部ケースの上方に上部ケースを固定してなる複数の油圧センサと、
(2)前記複数の油圧センサを収納する穴部を備えた上部ボディと、前記上部ボディに向かって設けられた油路を有する下部ボディとを含むバルブボディを備える。
(3)前記各油圧センサは、
前記下部ケースに設けられ、一端側が前記油路に開口し、他端側が油の圧力に応じて変形する可撓板で塞がれた油導入空間と、
前記上部ケースに設けられ、前記可撓板における油導入空間の反対側に設けられた圧力検出素子と、
前記上部ケースに設けられ、可撓板の上面側を囲んだ圧力検出空間と、
前記下部ケースに設けられ、前記上部ケースに対して下部ケースの水平方向に突出し、前記上部ボディによって下方に押圧される被押圧部を備える。
(4)前記上部ボディと下部ボディの少なくとも一方は、前記複数の油圧センサの前記穴部内における水平方向の位置決め部を備え、
前記上部ボディは、前記複数の油圧センサに設けられた前記被押圧部を上方から押圧する押圧部を備える。
【0009】
本発明において、以下の構成とすると良い。
(1)前記複数の油圧センサが、各センサの中心を結ぶ線が正多角形状になるように配置され、前記穴部は、バルブボディの上下方向に伸びる中心軸の周囲に形成された共通空間と、この共通空間の前記中心軸から外方に形成されて各油圧センサが収容される複数の個別空間を備え、前記上部ボディにおける個別空間に臨む箇所に、前記押圧部が設けられる。
【0010】
(2)前記各油圧センサは、各々その上部に端子ピンを備え、前記各油圧センサの端子ピンは、前記穴部に収容されたプリント配線基板に共通して接続され、前記プリント配線基板から各油圧センサに共通な給電線と、各油圧センサからの個別の信号線が引き出され、前記穴部の内壁面、及び上部ボディと下部ボディの接合面の少なくとも一方に、穴部内からバルブボディ外部に貫通連通する配線溝が形成され、前記共通な給電線と個別の信号線が前記配線溝を経由してバルブボディ外部に引き出される。
【0011】
(3)前記配線溝が、前記複数の油圧センサのいずれか1つに向き合って穴部の内面に形成され、前記いずれか1つ油圧センサにおいては、前記配線溝の水平方向の両側に、平面形状が同一である前記押圧部が、前記押圧部が配線溝を中心として対称形に設けられる。
【0012】
(4)前記複数の油圧センサの上部に上面が開口した箱型のケースが設けられ、このケースの内部に各油圧センサの端子ピンがケースの底部を貫通して挿入され、前記ケースの内部にプリント配線基板が収納され、このプリント配線基板に前記端子ピンが接続されるとともに、このプリント配線基板に前記給電線と信号線が接続され、前記ケース内には前記端子ピンとプリント配線基板を被覆する樹脂が充填される。
【0013】
(5)上部ボディは、その穴部内に、前記押圧部と前記被押圧部の間に配置されるブラケットを備える。
(6)前記押圧部は、前記上部ボディの穴部の内面に設けられた段部である。
(7)前記上部ボディと下部ボディとの間に板状のスペーサが設けられ、このスペーサに前記センサ筐体を挿入する穴が設けられ、前記スペーサの穴の縁が前記各油圧センサの下部ケースの被押圧部に当接する。
【0014】
(8)前記上部ボディに設けられた穴部が上部ボディの下面から上面に貫通し、前記穴部内に収納された前記センサ筐体の上部が、前記上部ボディの上面に突出する。
(9)前記下部ボディの表面に、前記下部ケースの下部及び前記被押圧部が収容される凹部を有し、前記被押圧部の表面が前記下部ボディの表面と同一面に位置する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、油圧センサの下部ケースに設けられた被押圧部を上部ボディによって押さえることで、上部ボディと下部ボディとの間に油圧センサを固定したので、油圧センサやその内部の圧力検出素子に押圧力が加わることがない。その結果、上部ボディと下部ボディで油圧センサを挟み込む際に大きな力が加わっても、油圧センサや圧力検出素子の変形や破損のおそれがなく、正確な圧力検出が可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、バルブボディに設けられた穴部内に複数の油圧センサを組み込むことが可能になるので、個々の油圧センサごとに専用に穴部を用意する必要もなく、バルブボディの構成が単純化する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態における上部ボディと複数の油圧センサを上方から見た斜視図である。
図2図2は、第1実施形態における上部ボディと複数の油圧センサを下方から見た斜視図である。
図3図3は、第1実施形態において、複数の油圧センサを組み込んだバルブボディの縦断面図である。
図4図4は、第1実施形態の油圧センサの1つを拡大した縦断面図である。
図5図5は、第1実施形態の上部ボディを下方から見た斜視図である。
図6図6は、第1実施形態の上部ボディの底面図である。
図7図7は、第1実施形態の複数のセンサの斜視図である。
図8図8は、第1実施形態の複数のセンサに基板を固定した状態の斜視図である。
図9図9は、第1実施形態の複数のセンサに取り付けるケースを示す斜視図である。
図10図10は、第1実施形態の複数のセンサにケースを取り付けた斜視図である。
図11図11は、第1実施形態の複数のセンサを取り付けたケース内に樹脂を充填した斜視図である。
図12図12は、第2実施形態における油圧センサ部分の拡大断面図である。
図13図13は、第3実施形態の縦断面図である。
図14図14は、第4実施形態の縦断面図である。
図15図15は、第5実施形態の縦断面図である。
図16図16は、他の実施形態を示す水平断面図である。
【0018】
[1.第1実施形態]
[1.1 構成]
以下、本発明の第1実施形態について、図1から図11を参照して説明する。本実施形態は、3つの油圧センサを上部ボディに設けた1つの穴部内に収容する。本実施形態において軸とは、油圧センサの上下方向に沿った中心軸をいい、単に周方向あるいは軸方向と言った場合は、中心軸の周方向あるいは中心軸の軸方向を示す。
【0019】
(1)バルブボディ
バルブボディは、図3および図4に示すように、上部ボディ1と下部ボディ2とから構成され、上部ボディ1の下面に3個の油圧センサ3を収容するための穴部4が設けられる。下部ボディ2には、上部ボディ1に向かって上方に3本の油路5が設けられ、各油路5の開口部に油圧センサ3がそれぞれ固定される。3個の油圧センサ3の上部と穴部4の天井部の間には、プリント配線基板6が設けられる。3個の油圧センサ3は、図1および図2に示すように、各センサの中心を結ぶ線が正多角形状、すなわち三角形状になるように配置される。
【0020】
(2)油圧センサ3
個々の油圧センサ3は、図3および図4に示すように、下部ケース31とその上方に固定された上部ケース32を有する。下部ケース31と上部ケース32が本発明のセンサ筐体に相当する。下部ケース31には、一端側が油路5に開口し、他端側が油の圧力に応じで変形する可撓板33で塞がれた油導入空間34が設けられる。下部ケース31における油路5の周方向外側には、下部ケース31の下面から上方に向かって凹んだ溝35が設けられる。この溝35内にO−リング等のシール材35aが嵌め込まれている。下部ケース31と下部ボディ2との接触面は、シール材35aで密封される。
【0021】
下部ケース31の外周は、上部ケース32の外周よりも周方向外側、すなわち図中水平方向に張り出す。この張り出し部分の上面が、本発明における被押圧部7である。本実施形態では、被押圧部7となる張り出し部分は、下部ケース31の全周囲にフランジ状に張り出す。
【0022】
上部ケース32には、可撓板33の上面側を囲んだ圧力検出空間36が設けられる。圧力検出空間36内には、周囲が上部ケース32に固定された支持部材37が設けられ、支持部材37の下面に圧力検出素子38が設けられる。圧力検出素子38は、可撓板33における油導入空間34の反対側に設けられる。油路5からの油圧で可撓板33が変形した場合に、可撓板33が圧力検出素子38に接触する。図4および図7に示すように、上部ケース32には、圧力検出素子38に接続されたばね性の端子ピン39が設けられ、この端子ピン39は穴部4内に設けられたプリント配線基板6に接続される。
【0023】
(3)上部ボディ1の穴部4
図5および図6に示すように、穴部4は、上部ボディ1の上下方向に伸びる中心軸の周囲に形成された共通空間4aと、この共通空間4aの中心軸から外方に形成されて各油圧センサ3が収容される3個の個別空間4bを備える。穴部4の内壁面の下端部には、個別空間に臨む箇所に段部41が設けられる。すなわち、図4に示すように、穴部4の上部では、穴部4の内径が上部ケース32の外径とほぼ等しく、下部ケース31の外径よりも小さい。穴部4の下部では、穴部4の内径が下部ケース31の外径とほぼ等しい。そのため、穴部4における下部ケース31の被押圧部7に臨む箇所には、穴部4の内周面全域にわたって段部41が形成される。この段部41の水平部分が本発明における押圧部である。
【0024】
図4に示すように、段部41の垂直部分が下部ケース31の外周面と接し、油圧センサ3が個別空間4a内で移動しないように位置決めする。この段部41の垂直部分が本発明の「油圧センサの穴部内における水平方向の位置決め部」である。段部41の垂直部分の代わりに、穴部4の上部で穴部4の内径が上部ケース32の外径とほぼ等しい場合、穴部4の上部の内壁面が上部ケース32の外周面に接することで、本発明の「油圧センサの穴部内における水平方向の位置決め部」としても良い。
【0025】
図1図2および図3に示すように、穴部4の内壁面、及び上部ボディ1における下部ボディ2との接合面に、穴部4内からバルブボディの外部に連通する1本の配線溝42が形成される。配線溝42は、3個の油圧センサ3のいずれか1つに向き合って穴部4の内壁面を凹ませることで形成される。図5および図6に示すように、穴部4における配線溝42が設けられた油圧センサ3の部分には、配線溝42の水平方向の両側に、平面形状が同一である段部41が配線溝42を中心として対称形に設けられる。
【0026】
(4)プリント配線基板6
図9および図10に示すように、3個の油圧センサ3の上部に、平面形状が略三角形で上面が開口した箱型のケース8が設けられ、このケース8内にプリント配線基板6が収容される。ケース8内には、各油圧センサ3の端子ピン39の上部がケース8の底部を貫通して挿入され、各端子ピン39の上部とプリント配線基板6の導電パターンが接続される。プリント配線基板6からは、各油圧センサ3に共通な1本の給電線61と、各油圧センサ3からの3本の信号線62が引き出される。共通な給電線61と3本の信号線62は、ケース8の側壁に設けられた切欠部81を貫通し、配線溝42を経由してバルブボディ外部に引き出される。
【0027】
本実施形態では、給電線61は、絶縁被覆の内部に電源線と接地線の2本の配線を収容したものを使用したが、電源線と接地線を別々の配線とすることもできる。その場合は、プリント配線基板6から合計5本の配線が引き出される。
【0028】
図11に示すように、ケース8内には、端子ピン39、プリント配線基板6、およびプリント配線基板6と給電線61および信号線62との接続部を被覆し絶縁する充填材9が充填される。
【0029】
[1.2 作用]
本実施形態においては、図7に示すように、あらかじめ3つの油圧センサ3をバルブボディ内に組み込む状態に合わせて三角形に配置する。その状態で、図10に示すように、各油圧センサ3の上部にケース8を載せて、端子ピン39をケース8の底板を貫通させ、ケース8内に配置したプリント配線基板6に接続する。この場合、プリント配線基板6には、給電線61と信号線62を予めはんだ付けしておく。端子ピン39とプリント配線基板6の接続が終了した後は、ケース8内に充填材9を注入し固化させ、3つの油圧センサ3をケース8によって固定する。
【0030】
次に、下部ボディ2に設けられた3か所の油路5の位置に合わせて、下部ボディ2の表面に3つの油圧センサ3を配置する。この状態で、下部ボディ2の上方から上部ボディ1を重ね合わせ、3つの油圧センサ3を穴部4の個別空間4b内にそれぞれ収容する。すると、上部ボディ1の穴部4の下縁に設けられた段部41の下面が、各油圧センサ3の下部ケース31に設けられた被押圧部7に当たり、上部ボディ1の押圧力が段部41から被押圧部7を経て下部ケース31に伝達され、下部ケース31は上部ボディ1の押圧力により下部ボディ2の表面に押圧される。この時、上部ケース32には上部ボディ1の押圧力が直接加わることはないが、上部ケース32と下部ケース31が固定されることから、上部ケース32も穴部4内に固定される。
【0031】
3つの油圧センサ3を穴部4内に収容する際には、ケース8から引き出されている1本の電源線61と3本の信号線62をまとめた状態で、穴部4の内壁に形成された配線溝42内にはめ込む。このようにすると、個々の油圧センサ3に接続されるプリント配線基板6と複数の配線を一時に配線溝41内に収容することができ、各油圧センサ3からの配線を上部ボディ1と下部ボディ2の間を通して、バルブボディ外部に引き出すことができる。
【0032】
[1.3 効果]
本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)下部ケース31の被押圧部7に加えられた上部ボディ1からの押圧力で、個々の油圧センサ3が下部ボディ2に押し付けられて、バルブボディ内部に固定される。そのため、上部ボディ1からの押圧力が圧力検出素子38を設けた上部ケース32に伝達することなく、下部ケース31のみで油圧センサ3を固定できる。その結果、圧力検出素子38やプリント配線基板6、配線などの部材に、上部ボディ1の押圧力が加わって損傷することがない。
【0033】
(2)1つの穴部4内に複数の油圧センサ3を収納できるので、バルブボディに油圧センサ3ごとに穴部4を設ける必要がなく、バルブボディの構造が単純化する。
【0034】
(3)ケース8を用いて固定することで、3つの油圧センサ3を1つの部品として取り扱うことが可能になり、1つの穴部4内に1つの部品を挿入するだけで複数の油圧センサ3のバルブボディ内への組み込みが可能となり、組み立ての作業性が向上する。
【0035】
(4)穴部4が、個々の油圧センサ3を収容する個別空間4bを備え、穴部4に設けた段部41の垂直部分が下部ケース31の外周面に当接しているので、穴部4内で各油圧センサ3が水平方向に位置ずれを起こすことがない。したがって、各油圧センサ3を下部ボディ2に設けられた油路5に対して正確に位置決めすることができる。
【0036】
(5)複数の油圧センサ3を三角形に均等配置し、各油圧センサ3は、穴部4に設けられた専用の個別空間4bに位置し、個別空間4bに設けられた段部41によってそれぞれ押さえられる。このような多角形の均等配置により、上下のボディ1,2を締結してバルブボディ内に油圧センサ3をビルドインした場合に、各油圧センサ3が均等に押圧され、確実に固定される。
【0037】
(6)各油圧センサ3に共通な給電線61と個別の信号線62が1つの配線溝42を経由してバルブボディの外部に引き出されるので、プリント配線基板6及び配線の共通化による部品点数の削減が可能になる。また、個々の油圧センサ3ごとに配線溝42を設ける従来技術に比較して、配線溝42の削減と配線溝42内に対する配線の組み込み作業の容易化が図れる。
【0038】
(7)配線溝42を形成した油圧センサ3の部分では、配線溝42の分だけ上部ボディ1の段部41と下部ケース31の被押圧部7の当接箇所が少なくなる。しかし、本実施形態では、配線溝42の水平方向の両側に、平面形状が同一である段部41が、配線溝42を中心として対称形に設けているので、油圧センサ3をバランス良く押圧することができ、油圧センサ3の押さえが不均衡にならず、油圧センサ3が傾いて固定されることがない。
【0039】
(8)ケース8内には、端子ピン39、プリント配線基板6、およびプリント配線基板6と給電線61および信号線62との接続部を被覆し絶縁する充填材9が充填されているので、絶縁性能の向上を図ることができる。接続部を充填材のみで被覆して絶縁する場合に比較して、充填材9の樹脂量を多くしてもケース8によって樹脂が外へ流れないので、確実に絶縁できる。
【0040】
[2.第2実施形態]
第2実施形態を図12及び図3に従って説明する。本実施形態では、バルブボディが、上部ボディ1、下部ボディ2及び両者の間に配置された板状のスペーサ10から構成される。スペーサ10は、上部ボディ1の一部として、アッパープレートと呼ばれることもある。
【0041】
スペーサ10には、上部ボディ1に設けられた穴部4と同一の平面形状を有する穴部11が設けられ、上部ボディ1とスペーサ10を重ね合わせた状態で、穴部4と穴部11の内部に共通空間4aと3つの個別空間3bが形成される。3つの油圧センサ3は、各個別空間3b内に収容される。スペーサ10の穴部11には、上部ボディ1の配線溝41の位置に合わせて、図示しない配線溝が設けられる。3つの油圧センサ3から伸びる共通な給電線61と3本の信号線62は、上部ボディ1の配線溝42をスペーサ10の配線溝を経由してバルブボディ外部に引き出される。
【0042】
スペーサ10の穴部11の下縁には、第1実施形態の穴部4の下縁と同様に、段部12が設けられる。この段部12の水平部分が第2実施形態の押圧部に相当し、この段部12の水平部分が下部ケース31の被押圧部7に当接する。
【0043】
第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様な作用効果加え、上部ボディ1自体に変更を加えることなく、スペーサ10を用意するだけで、本発明を適用できる利点がある。
【0044】
[3.第3実施形態]
第3実施形態を図13に従って説明する。本実施形態は、上部ボディ1に設けた穴部4が、上部ボディ1を貫通する。油圧センサ3の上部ケース32は上部ボディ1の上面に突出する。他の構成は、第2実施形態と同様である。
【0045】
第3実施形態によれば、前記第2実施形態と同様な作用効果加え、上部ボディ1の上面に油圧センサ3が露出するので、端子ピン39に対する配線が容易になる。バルブボディの組み立て時に穴部4内の配線溝41内に配線する構成に比較して、バルブボディの組み立て後に油圧センサ3の配線を行うことができるので、多数の油圧センサ3の配線をまとめて行えると共に、配線パターンの自由度も高い。
【0046】
[4.第4実施形態]
第4実施形態を図14に従って説明する。第4実施形態では、上部ボディ1と下部ボディ2との間に板状のスペーサ10が設けられ、このスペーサ10に3つの油圧センサ3を挿入する穴部11が設けられ、スペーサ10の穴部11の縁に設けられた段部12が下部ケース31の被押圧部7に当接する。他の構成は第3実施形態と同様である。
【0047】
第4実施形態によれば、前記第3実施形態と同様な作用効果に加え、上部ボディ1自体に変更を加えることなく、スペーサ10を用意するだけで、本発明を適用できる利点がある。
【0048】
[5.第5実施形態]
第5実施形態を図15に従って説明する。本実施形態では、下部ボディ2における油路5の周方向外側に、下部ケース31の下部及び被押圧部7が収容される凹部21が形成されている。被押圧部7の表面が下部ボディ2の表面と同一面に位置している。上部ボディ1の穴部4の縁が被押圧部7の表面に当たって、上部ボディ1によって下部ケース31が押さえられる。
【0049】
第5実施形態によれば、前記第2実施形態と同様な作用効果加え、上部ボディ1に段部41を設けることなく、上部ボディ1の穴部4の縁でそのまま押さえることができる利点がある。油圧センサ3が下部ボディ2の凹部21でも位置決めされるので、横方向のがた付きがない効果がある。
【0050】
[6.他の実施形態]
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。以上の実施形態は例として提示したものであって、その他の様々な形態で実施されることが可能である。発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲、要旨、その均等の範囲に含まれる。以下、その一例を示す。
【0051】
(1)下部ケース31に設けられる油導入空間31としては、一端側が油路5に開口し、他端側が油の圧力に応じで変形する可撓板33で塞がれた油導入空間31に連通するものであれば、図示のように上下に延びるもの以外に、一端側が上方で、中間点で屈曲し、他端側が水平方向にあるものでも良い。
【0052】
(2)下部ケース31に設ける被押圧部7は、下部ケース31の全周囲にフランジ状に設ける必要はない。下部ケース31の周囲に等間隔或いは適宜な間隔で突出部を設け、その上面を被押圧部7とすることができる。
【0053】
(3)段部41としては、穴部4の内面の一部を切り欠いて段部としたものや、穴部4の内面に下部ケース31に係合する突起を設けて突起の下面が段部となったものも使用することができる。
【0054】
(4)図示の実施形態は、上部ボディ1の穴部4またはスペーサ11に設けた穴部11の下縁に段部を設けて、段部の水平部分を押圧部とした。しかし、穴部4や穴部11に加工を施すことなく、穴部4の天井部分を押圧部として、その押圧部と下部ケース31の被押圧部7の間に、上部ボディ1や下部ボディ2と別部材であるブラケットを配置してもよい。このようなブラケットを使用することで、上部ボディ1には特に加工を施すことなく、下部ケース31を押さえることができる。
【0055】
(5)図示の実施形態は、1つの穴部41に3つの油圧センサ3を収容したが、穴部41に収容する油圧センサ3の数は、2つ或いは4つ以上とすることができる。その場合、複数の油圧センサ3を図16のように1列或いは複数列に直線状に配置しても、また、各油圧センサ3の中心を結ぶ線が正多角形状になるように配置しても良い。
【0056】
(6)複数の油圧センサ3に接続するプリント配線基板6は、図示のように、すべての油圧センサ3に共通な1枚のプリント配線基板6を使用する以外に、個々の油圧センサ3ごとに設けたり、隣接する幾つかの油圧センサ3ごとに共通のプリント配線基板6を使用しても良い。
【0057】
(7)プリント配線基板6にケース8を設けることなく、基板上に絶縁塗料を塗布したり、樹脂を盛り上げるように被覆することで、プリント配線基板と端子或いは配線とを絶縁しても良い。
【0058】
(8)上部ボディに設ける穴部41の形状は、下部ケース31の被押圧部7を押さえる押圧部を設けたものであれば、その形状は限定されない。穴部41の内壁の下縁に突起状の押圧部を設けた場合や、第2実施形態や第4実施形態のようにスペーサを設けた場合には、穴部41の形状は単なる円形或いは矩形断面でもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…上部ボディ、2…下部ボディ、3…油圧センサ、4…穴部、4a…共通空間、4b…個別空間、5…油路、6…プリント配線基板、7…被押圧部、8…ケース、9…充填材、10…スペーサ、11…穴部、12…段部、31…下部ケース、32…上部ケース、33…可撓板、34…油導入空間、35…溝、35a…シール材、36…圧力検出空間、37…支持部材、38…圧力検出素子、39…端子ピン、41…段部、42…配線溝、61…給電線、62…信号線、81…切欠部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16