【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示日:平成27年11月5日 展示会名:「四国技術フォーラム’15」in愛媛 開催場所:愛媛県松山市久米窪田町337番地1 テクノホール第1会場1F
【解決手段】地形データを保持するための地形データ記憶部22と、気象データ取得部10が取得した気象データと、地形データ記憶部22から呼び出した地形データとに基づいて、現在の水位と、所定時間後の水位を場所毎に予測する水位演算部31と、特定の地域の地図を表示させる地図表示領域41を有する表示部40とを備え、表示部40は、地図表示領域41上に重ねて、該地図表示領域41で表示されている地図中の任意の位置について、水位演算部31で演算された現在の水位から、浸水の危険度合いを示す浸水危険度を表示させるための浸水危険度指示体42と、水位演算部31で演算された所定時間経過後の水位から、水位又は浸水危険度の時間変動を表示させるための時間変動指示体43を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のような従来の気象データに基づいたリアルタイム予測では、あくまでも過去からの降雨量の累積や残留量を予測した表示に止まり、ユーザ側である、避難指示を行う行政や、実際に避難する住民側から見た場合、これらの情報をもって直ちに避難等の行動の判断に結びつけることが必ずしも容易でない。すなわち、今後どのような方向に向かうのか、例えば水位が上昇してより危険な方向に向かうのか、逆に暫く待てば水位が下がるのか、避難経路のみならず避難等の行動を起こすタイミングを知ることが困難という問題があった。
【0005】
本発明は従来のこのような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、ユーザの視認性を向上させ、避難のタイミングや向かうべき方向等の速やかな判断に資する浸水度リアルタイム予測装置、浸水度リアルタイム予測方法及び浸水度リアルタイム予測プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【0006】
本発明の第1の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、気象データを取得するための気象データ取得部と、地形データを保持するための地形データ記憶部と、前記気象データ取得部が取得した気象データと、前記地形データ記憶部から呼び出した地形データとに基づいて、現在の水位と、所定時間後の水位を場所毎に予測する水位演算部と、特定の地域の地図を表示させる地図表示領域を有する表示部とを備え、前記表示部は、前記地図表示領域上に重ねて、該地図表示領域で表示されている地図中の任意の位置について、前記水位演算部で演算された現在の水位から、浸水の危険度合いを示す浸水危険度を表示させるための浸水危険度指示体と、前記水位演算部で演算された所定時間経過後の水位から、水位又は浸水危険度の時間変動を表示させるための時間変動指示体とを備えることができる。上記構成により、現在の浸水危険度のみならず、所定時間経過後の水位や浸水危険度を確認できるので、ユーザにとっては避難のタイミングを図る指標として利用できる。また、災害予防の観点から、避難路の策定等にも資することができる。
【0007】
また、第2の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記時間変動指示体が、所定時間経過後の水位が上昇する方向にあるか、下降する方向にあるかを示す水位変動方向指示体を有することができる。
【0008】
さらに、第3の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記水位変動方向指
【0009】
さらにまた、第4の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記水位変動方向指示体が、水位が上昇する方向に変化する場合は上向きの矢印で、水位が下降する方向に変化する場合は下向きの矢印で、それぞれ表示するよう構成できる。
【0010】
さらにまた、第5の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記水位変動方向指示体が、水位が変化しない場合は点状に表示するよう構成できる。
【0011】
さらにまた、第6の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記水位変動方向指示体が、水位の変化量を矢印の長さで表示させることができる。
【0012】
さらにまた、第7の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記水位変動方向指示体が、水位の変化量を矢印の太さで表示させることができる。
【0013】
さらにまた、第8の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記水位変動方向指示体が、水位の変化量を矢印の色で表示させることができる。
【0014】
さらにまた、第9の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記地形データ記憶部に保持された地形データが、地表面モデルを含むことができる。上記構成により、地表面モデルを用いた浸水度リアルタイム予測が可能となる。特に排水路モデルを用いずとも、地表面モデルのみの解析でも実用的な浸水度リアルタイム予測が可能となる。
【0015】
さらにまた、第10の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記地表面モデルが、地図を5m〜25mメッシュで区画した単位で前記地形データ記憶部に保持させることができる。
【0016】
さらにまた、第11の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、さらに前記地形データ記憶部に保持される地形データと重ねて、任意の位置における排水能力の情報を示す排水路モデルを保持するための排水路データ記憶部を備えており、前記水位演算部は、前記気象データ取得部で取得した気象データと、前記地形データ記憶部に保持された地形データと、前記排水路データ記憶部に保持された排水路モデルに従い、排水能力を考慮して所定時間経過後の水位を演算するよう構成できる。
【0017】
さらにまた、第12の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、さらに前記時間変動指示体で表示される水位又は浸水危険度の、現在から経過後の所定時間を調整するための表示時刻調整スライダを有することで、前記表示時刻調整スライダの動作に連動させて、前記地図表示領域における水位又は危険度の表示を変化させることができる。
【0018】
さらにまた、第13の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記表示部は、前記浸水危険度指示体に重ねて時間変動指示体を表示可能とできる。
【0019】
さらにまた、第14の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記表示部は、前記浸水危険度指示体と時間変動指示体とを一画面で同時に表示可能とできる。
【0020】
さらにまた、第15の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記表示部は、対応する地図中の各位置における前記浸水危険度指示体と時間変動指示体とを重ねて表示させ、前記時間変動指示体が、前記浸水危険度指示体のメッシュに応じた大きさに表示させることができる。
【0021】
さらにまた、第16の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記表示部は、前記時間変動指示体で表示される水位又浸水危険度の時間変動をアニメーションで表示させることができる。
【0022】
さらにまた、第17の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記表示部はさらに、広告表示領域を備えることもできる。
【0023】
さらにまた、第18の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記表示部はさらに、降雨量グラフを表示させる降雨量グラフ表示領域を備えることができる。
【0024】
さらにまた、第19の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記表示部はさらに、前記地図表示領域に重ねて、学校の位置を表示させる学校表示機能、排水機場の位置を表示させる排水機場表示機能、避難所の位置を表示させる避難所表示機能、歩行の困難度を表示させる歩行困難度表示機能の少なくともいずれかを備えることができる。
【0025】
さらにまた、第20の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記水位演算部は、グラフィックス・プロセッシング・ユニットでもって所定時間後の水位を場所毎に予測するよう構成できる。上記構成により、水位の変化等の高速な計算が可能となり、リアルタイムで更新可能とできる。
【0026】
さらにまた、第21の形態に係る浸水度リアルタイム予測装置によれば、前記表示部はさらに、前記地図表示領域上に重ねて、任意の位置における水の流れる水平方向を示す矢印を示す水流方向指示体を含むことができる。上記構成により、水位の変化する鉛直方向に加えて、水平方向に水が流れる移動方向も表示させることで、避難経路や避難計画の立案により資することができる。
【0027】
さらにまた、第22の形態に係る浸水度リアルタイム予測方法によれば、気象データ及び地形データに基づいて浸水度を予測するための浸水度リアルタイム予測方法であって、気象データと地形データをそれぞれ取得する工程と、前記取得した気象データと、地形データとに基づいて、所定時間後の水位を場所毎に予測する工程と、表示部の地図表示領域上に重ねて、前記水位演算部で演算された水位から、浸水危険度を該当する場所に表示させ、さらに浸水危険度の時間変動を表示させる工程とを含むことができる。
【0028】
さらにまた、第23の形態に係る浸水度リアルタイム予測プログラムによれば、気象データを取得する機能と、地形データを保持する機能と、前記取得した気象データと、地形データとに基づいて、所定時間後の水位を場所毎に予測する機能と、表示部の地図表示領域上に重ねて、前記水位演算部で演算された水位から、浸水危険度を該当する場所に表示させる機能と、浸水危険度の時間変動を表示させる機能とをコンピュータに実現させることができる。
【0029】
さらにまた、第24の形態に係るコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記憶した機器は、上記プログラムを格納するものである。記録媒体には、CD−ROM、CD−R、CD−RWやフレキシブルディスク、磁気テープ、MO、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、Blu−ray(登録商標)、HD DVD(AOD)等の磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリその他のプログラムを格納可能な媒体が含まれる。またプログラムには、上記記録媒体に格納されて配布されるものの他、インターネット等のネットワーク回線を通じてダウンロードによって配布される形態のものも含まれる。さらに記憶した機器には、上記プログラムがソフトウェアやファームウェア等の形態で実行可能な状態に実装された汎用もしくは専用機器を含む。さらにまたプログラムに含まれる各処理や機能は、コンピュータで実行可能なプログラムソフトウェアにより実行してもよいし、各部の処理を所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェア、又はプログラムソフトウェアとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウェアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0032】
本発明の実施例において使用される浸水度リアルタイム予測装置とこれに接続される操作、制御、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232xやRS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的、あるいは磁気的、光学的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x等の無線LANやBluetooth(登録商標)、その他のNFC等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらにデータの交換や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。なお本明細書において浸水度リアルタイム予測装置とは、浸水度リアルタイム予測装置本体のみならず、これにコンピュータ、外部記憶装置等の周辺機器を組み合わせた浸水度リアルタイム予測システムも含む意味で使用する。
(実施形態1)
【0033】
本発明の実施形態1に係る浸水度リアルタイム予測装置100を
図1に示す。この図に示す浸水度リアルタイム予測装置100は、ある予測地域内の地形データと気象データに基づいて、地域内の浸水危険度を算出して、地図上に表示する。ここで予測地域とは浸水度リアルタイム予測装置100により、浸水の有無や浸水危険度等を予測する地域全体のことを指す。この予測地域の範囲等は、特に特定しない。予測地域の範囲はシステム利用者が対象地域内で任意に決定することができ、例えば、特定の市町村単位とすることができる。
【0034】
浸水度リアルタイム予測装置100は、専用のハードウェアで構成する他、浸水度リアルタイム予測プログラムを汎用あるいは専用のコンピュータにインストールして構成できる。この浸水度リアルタイム予測装置100は、データ取得部10と、データ記憶部20と、演算部30と、表示部40と、操作部50を備える。
(データ取得部10)
【0035】
データ取得部10は、外部からのデータを取得するための部材である。ここでは、気象データを取得する気象データ取得部として機能する。気象データは、典型的には雨量データである。また気象データはネットワークを介して取得する。これによって、逐次最新の情報に更新することが容易となる。このためデータ取得部10は、インターネットなどの汎用ネットワーク回線、あるいは専用線等を介した特定のネットワークに接続するための通信機能を備えている。
【0036】
雨量データには、予測地域の解析雨量と短時間降水予報が含まれる。ここで解析雨量とは、現在時刻から過去、所定の時間内に実際に降雨した雨量である。また短時間降水予報とは、現在時刻から今後、所定の時間内に降雨すると予想される雨量である。本実施形態において、この所定時間は1時間毎としている。
【0037】
例えば気象業務支援センターが配信する雨量データは、解析雨量と短時間降水予報を、地形データを1kmメッシュで区切った範囲の6時間先までの予測雨量が30分毎に更新されて配信される。よって気象データ取得部10は、このようなデータを逐次取得して、演算部30に送出する。また、気象データ取得部10で取り込んだ気象データを、データ記憶部20に保持することもできる。例えばデータ記憶部20に、気象データを保持する気象データ記憶部21を設けてもよい。
【0038】
雨量データの収集先は特に特定せず、例えば気象庁や気象業務支援センターが配信する雨量データを利用する他、独自の雨量観測装置等を設置して直接収集してもよい。また、所定時間は、1時間に限らず、これよりも短い時間(例えば30分)、あるいはこれよりも長い時間(例えば2時間)としてもよい。
(データ記憶部20)
【0039】
データ記憶部20は、各種データを保持するための部材である。例えば、地形データを保持する地形データ記憶部22が挙げられる。地形データは、地図上の各位置における高さ情報を保持している。例えば、予測地域内の各区画の標高や傾斜等の情報を含んでいる。地図上の位置は、メッシュ状に区画されたデータで管理できる。
【0040】
ここで区画とは、予測地域内を5m四方の枡目状に区切った単位を1区画としている。実施形態1では、5m四方の範囲をさらに縦横5×5個ずつ組み合わせて、25m四方を1区画とする。後述する演算部30に利用する地形データは、この25m四方内における平均値を利用している。このデータ記憶部20は、5m四方の地形データを記憶させてもよいし、あるいは予め25m四方における地形データの平均値を記憶させてもよい。
【0041】
なお、1区画あたりの大きさは、以上に特定されない。精密な予測結果が要求されるなら1区画を25mより小さくしてもよい。あるいは、演算処理の高速化が優先される場合等には、1区画を大きくしてもよい。
【0042】
例えば5mメッシュ(一例として国土交通省国土地理院による基盤地図情報数値標高モデル)や2mメッシュ(一例として一般財団法人日本地図センターによる2mメッシュ標高データ)の詳細な地盤高データが公表、販売されており、このような地盤高データには排水路を地表の起伏として反映されていることがある。
(演算部30)
【0043】
演算部30は、各種の演算を行うための部材であり、ここでは水位演算部31の機能を果たす。水位演算部31は、気象データ取得部10が取得した気象データと、地形データ記憶部22から呼び出した地形データとに基づいて、現在の水位と、所定時間後の水位を場所毎に予測するための部材である。例えば水位演算部31は、データ記憶部20に記憶された地形データと気象データ(雨量データ)に基づいて、予測地域内の所定時間毎の浸水危険度及び浸水深の変動を算出する。この水位演算部31により得られた予測結果は、データ記憶部20に蓄積することができる。
【0044】
このような水位演算部31には、例えばCPUを用いることができる。またCPUに限らず、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(Graphics Processing Unit:GPU)を利用してもよい。このようなGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)を利用することにより、CPUの負荷を低減しつつ、演算速度を向上させ、予測結果をより高精度なものとしながらも、後述する表示部40によりシステム利用者が予測結果を簡単に確認できるようにしている。GPGPUには、例えばCUDA(商品名)が利用できる。
(表示部40)
【0045】
表示部40は、演算部で演算された結果等を表示させるための部材である。例えばLCDやCRT、有機EL等のディスプレイで構成される。
(操作部50)
【0046】
操作部50は、各種の操作を行うための部材であり、例えばキーボードやマウス等のポインティングデバイス、コンソール等で構成される。また、タッチパネルを使用することで、操作部50と表示部40と共通化することもできる。
(サーバ・クライアント)
【0047】
また演算部をサーバ機器とし、表示部40をこのサーバ機器に接続されたクライアント機器の表示画面とすることで、ユーザはクライアント機器を用いて外部からサーバ機器にアクセスし、演算部により得られた予測結果等を閲覧することができる。このような例を
図2に示す。この場合、操作部50はネットワークを介してサーバ機器SVと接続されたクライアント機器CLの操作、例えばタッチパネルやマウス等を利用できる。
(浸水度リアルタイム予測プログラムのユーザインターフェース画面)
【0048】
表示部40には、浸水度リアルタイム予測プログラムのユーザインターフェース画面が表示される。上述の通り、浸水度リアルタイム予測プログラムのユーザインターフェース画面は、スタンドアロンのコンピュータに接続された表示部40の他、
図2に示したような、浸水度リアルタイム予測プログラムをインストールしたサーバ機器にアクセスしたクライアント機器の表示画面も含まれる。描画はwebベースとすることにより、汎用性を持たせることができる。
【0049】
浸水度リアルタイム予測プログラムのユーザインターフェース画面の一例を
図3に示す。この図に示す浸水度リアルタイム予測プログラムは、地図表示領域41と操作領域60を有する。地図表示領域41には、地図が表示される。
(地図表示領域41)
【0050】
表示部40は、特定の地域の地図を表示させる地図表示領域41を有する。地図表示領域41では、地図が所定の倍率で表示される。地図の倍率は、地図表示領域41の隅部に設けられた拡大縮小ボタン57を操作して、拡大、縮小することができる。あるいは、操作部50を構成するマウスのスクロールボタンを操作して、拡大、縮小させてもよい。またデータの管理上、所定の幅で縦横に格子状のラインを表示させており、ラインで区画されたブロック状に表示される。以下、ラインで区画された領域をブロック(基準地域メッシュ)と呼ぶ。また地図の表示倍率は、適宜変更できる。さらにこの地図表示領域41上に重ねて、浸水危険度指示体42と、時間変動指示体43を表示させることができる。
(浸水危険度指示体42)
【0051】
浸水危険度指示体42は、水位演算部31で演算された現在の水位から、浸水の危険度合いを示す浸水危険度を該当する場所に表示させるための部材である(詳細は後述)。
(時間変動指示体43)
【0052】
時間変動指示体43は、水位演算部31で演算された所定時間経過後の水位から、水位又は浸水危険度の時間変動を表示させるための部材である(詳細は後述)。
(水位変動方向指示体)
【0053】
時間変動指示体43は、所定時間経過後の水位が上昇する方向にあるか、下降する方向にあるかを示す水位変動方向指示体を含む(詳細は後述)。この水位変動方向指示体は、水位の変化を矢印の方向で表示させることができる。これにより、現在の浸水危険度のみならず、所定時間経過後の水位や浸水危険度を確認できるので、ユーザにとっては大雨時に避難のタイミングを図る指標として利用できる。また、大雨時に限らず平時においても、災害予防の観点から、避難路の策定等に資することができる。
(水流方向指示体45)
【0054】
さらに地図表示領域41上に重ねて、任意の位置における水の流れる水平方向を示す水流方向指示体45を表示させることもできる。これにより、水位の変化する鉛直方向に加えて、水平方向に水が流れる移動方向も表示させることで、避難経路や避難計画の立案により資することができる。なお水流方向指示体45を矢印等で表示し、上述した時間変動指示体43を矢印等で表示する場合は、これらを重ねて表示するといずれの矢印かを判別し辛くなるので、いずれか一方の表示のみとするように、択一的に表示させるか、またはいずれの矢印であるかが視覚的に判別できるよう、矢印の形状や色等を区別した態様で、同時に表示させるようにする。例えば、水流方向指示体45は動画状に表示させることで、水平方向への水流の移動方向を把握できる。
(操作領域60)
【0055】
また操作領域60には、地図表示領域41における表示内容を設定するための表示設定部61や表示時刻調整スライダ62が設けられる。これらの部材は、操作部50でもって画面上で擬似的に操作できる。さらに操作領域60には、各種の情報を表示させるための情報表示欄63も配置される。加えて、操作領域60に広域地図表示領域64、グラフ表示領域65なども配置できる。さらに加えて、各種の操作、選択、設定等を行うツール類を配置してもよい。なお、これらの配置は一例であって、例えば広域地図表示領域64やグラフ表示領域65を別ウィンドウで表示させる等、任意のレイアウトが利用できる。
【0056】
具体的には、操作領域60には表示させる地域を選択する表示地域選択欄66と、表示させる時刻を選択するための表示時刻選択欄67が設けられる。
図3の例では、操作領域60の上部に表示地域選択欄66と表示時刻選択欄67が設けられており、ドロップダウンリストで切り替え可能な候補の一覧を表示させ、選択することができる。また、表示地域選択欄66や表示時刻選択欄67に、直接数値や文字等で入力するようにしてもよい。
(情報表示欄63)
【0057】
情報表示欄63には、気象データ取得部10で取得した気象データに関する情報を表示する。例えば何時の気象データに基づいて、いつからいつまでの浸水度等を予測しているのかを表示させてる。
図3の例では、操作領域60の上段に情報表示欄63が設けられており、更新時刻2014年8月9日9時の気象データに基づいて、前後6時間の浸水危険度を予測しているかを示している。ここでは解析対象時刻として、2014年8月9日3時から2014年8月9日15時までの解析が可能となる。また情報表示欄63の下部には、表示時刻調整スライダ62が表示される。
(表示時刻調整スライダ62)
【0058】
表示時刻調整スライダ62は、時間変動指示体43で表示される水位又は浸水危険度の、現在から経過後の所定時間を調整するための部材である。表示時刻調整スライダ62の動作に連動させて、地図表示領域41における水位又は危険度の表示を変化させることができる。
図3の例では、表示時刻調整スライダ62に、情報表示欄63で表示された3時から15時までがスケール状に表示され、現在表示されている時間帯である2014年8月9日4時の位置にハンドルが配置される。さらに表示時刻選択欄67には、同様に「08月09日03:00〜04:00」と表示される。これによってユーザは、現在表示されている情報が2014年8月9日3時〜4時の時間帯の情報であることを確認できる。
【0059】
ここで表示時刻調整スライダ62に沿って移動可能に設けられたハンドルを操作することで、異なる時間帯の情報に切り替えることができる。例えば表示時刻調整スライダ62を操作して6時の位置に移動させると、
図4に示すように2014年8月9日5時〜6時の時間帯の情報に切り替えられ、地図表示領域41や操作領域60の表示内容がこれに応じて更新される。同様に、表示時刻選択欄67も「08月09日05:00〜06:00」と表示される。また
図5に示す例では、2014年8月9日9時〜10時の時間帯の情報、
図6に示す例では、2014年8月9日10時〜11時の時間帯の情報、
図7に示す例では、2014年8月9日11時〜12時の時間帯の情報を、それぞれ示している。なお、表示時刻調整スライダ62の操作に限らず、表示時刻選択欄67で時間帯を選択することでも、同様に表示内容が更新され、また表示時刻調整スライダ62の位置も自動的に変更される。このようにしてユーザは、所望の時間帯の変化を画面上から確認できる。特に時間経過と共に状態が変化する様子を対比しながら確認できる利点が得られる。
(広域地図表示領域64)
【0060】
広域地図表示領域64には、広域の地図が表示される。好ましくは、地図表示領域41で表示される地域を含む、広域地図を表示させる。
図3等の例では、気象庁のホームページから取得した気象レーダや解析雨量、降水短時間予報を表示させている。これにより、広域の気象情報と対比させながら、特定の地域の浸水度を検討することができる。特に雨雲の動きなどから、今後の雨量の変化の予測を立てやすくなる。さらに、広域地図表示領域64における気象情報の表示内容も、上述した表示時刻選択欄67や表示時刻調整スライダ62と連動しており、表示時刻選択欄67や表示時刻調整スライダ62で表示時刻を変化させると、これに応じて広域地図表示領域64における気象情報の表示内容も選択された時刻の情報に更新される。
(降雨量グラフ表示領域)
【0061】
グラフ表示領域65には、各種のグラフを表示させることができる。例えば、降雨量グラフを表示させる降雨量グラフ表示領域として機能させることができる。降雨量グラフは、過去または将来の、一定時間幅の雨量を表示させる。ここでは、地図表示領域41で表示されている地域において、選択した任意のブロックにおける降雨量を表示させている。選択位置を変更させると、これに応じて降雨量グラフも変更される。例えば
図8に示す画面では、地図表示領域41の中段左端のブロックを選択したときの降雨量を示している。選択されたブロックは、太枠で示される。これによって、どのブロックを選択中であるかをユーザは視覚的に区別できる。また、選択したブロックの枠の色を変えて表示させてもよい。
図8の例では赤色で表示させている。
【0062】
図8の状態から、1つ右側のブロックを選択すると、
図9に示す画面に切り替わり、これに応じて降雨量グラフの表示内容が変更される。また降雨量グラフに、選択中のブロックの情報、例えばブロックに含まれるメッシュの情報やコード情報を表示させてもよい。さらに
図8等の例では12時間の降雨量グラフを表示させているが、これに限らず6時間などとすることもできる。また過去の解析雨量と将来の予測雨量とで、表示を変えることもできる。例えば解析雨量を青、予測雨量を赤で表示させる。これにより、データの信頼性をユーザは視覚的に把握できる。
(表示設定部61)
【0063】
操作領域60には、地図表示領域41で表示される内容を設定するための表示設定部61が設けられる。表示設定部61には、例えば地図表示領域41における表示モードとして、降雨量表示モード、浸水危険度表示モード、歩行困難度表示モードを選択する表示モード選択欄68が設けられる。
(浸水危険度表示モード)
【0064】
図8、
図9等の例では、浸水危険度表示モードが選択されている。浸水危険度表示モードでは、気象データ及び地形データに基づいて、現在の水位を水位演算部31で予測し、さらに必要に応じて将来の水位も予測して、これに応じて浸水の度合いを指標化して、地図表示領域41上に浸水危険度指示体42を表示させる。浸水危険度指示体42は、上述の通り水位演算部31で演算された現在の水位から、浸水の危険度合いを示す浸水危険度を該当する場所に表示させる。この例では、浸水危険度指示体42として、所定のメッシュ単位で浸水危険度指数の色を変えて表示させる。ここでは25mメッシュを升目状に、地図表示領域41に重ねて表示させている。メッシュは、浸水危険度指数の程度に応じて色を変化させている。これにより、水位が高い領域はメッシュ状に着色されるため、ユーザは視覚的に水位の高い領域を容易に把握できる。
【0065】
図8の例では、現在指定されている時刻(8月9日8時から9時)における浸水危険度指数は、予測される浸水危険度指数が0.4(浸水深0.2m相当)以下の領域を無色(着色無し)、0.4〜0.6(同0.2〜0.3m相当)の領域を黄色、0.6〜1.0(同0.3〜0.5m相当)の領域を茶色、1.0〜1.5(同0.5〜0.75m相当)の領域を赤色、1.5(同0.75m相当)以上の領域を紫色に、それぞれ重ねて表示させている。併せて、地図表示領域41の隅部に、浸水危険度指数の凡例52を表示させている。
(時間変動指示体43の例)
【0066】
さらに浸水危険度表示モードにおいては、時間変動指示体43の表示のON/OFFを切り替えることができる。このような切り替えは、例えば
図8、
図9の例では、操作領域60において、表示モード選択欄68の浸水危険度表示モード選択欄に設けられた、「浸水危険度時間変動」欄69のチェックマークのON/OFFによって行うことができる。例えば
図8、
図9の例では、「浸水危険度時間変動」欄69をOFFとすることで、画像表示欄に時間変動指示体43を表示させていない。一方、
図3〜
図7においては、「浸水危険度時間変動」欄69をONとすることで、画像表示欄に時間変動指示体43を重ねて表示させている。時間変動指示体43は、上述の通り水位演算部31で演算された所定時間経過後の水位から、水位又は浸水危険度の時間変動を表示させる。具体的には、時間変動指示体43は、所定時間経過後の水位が上昇する方向にあるか、下降する方向にあるかを示す水位変動方向指示体を有する。水位変動方向指示体は、例えば水位の変化を矢印の方向で表示させることができる。さらに水位変動方向指示体は、水位の変化に加えて、変化の程度も表示させることができる。例えば水位の変化量を矢印の長さで表示させる。この場合、例えば矢印の長さが長いほど、水位の変化量が大きいことを示す。あるいは、水位変動方向指示体は、水位の変化量を矢印の太さで表示させてもよい。この場合、例えば矢印が太いほど、水位の変化量が大きいことを示す。あるいはまた、水位の変化量を矢印の色で表示させてもよい。この場合、例えば色が赤いほど水位の変化量が大きく、青いほど水位の変化量が小さいことを示す。あるいはまた、水位の変化量を矢印の濃淡やグラデーションで表示させてもよい。この場合、例えば矢印が濃いほど変化量が大きく、薄いほど水位の変化量が小さいことを示す。その他、矢印の本数、矢印の矢尻の数、矢印の角度、矢印を動画で変化させる際の速度、点滅の速度、ハイライトの有無など、水位変動方向指示体の表示態様を区別できるように適宜変化させることで、程度を表現できる。
図3〜
図7の例では、矢印の方向で、水位の時間変化が上昇方向にあるか、下降方向にあるかを示す。変動がない場合は、矢印に変えて黒丸で表示させている。さらに矢印の色で、変動の程度を示している。ここでは、1時間後の増加が10cm以上の場合を赤色の矢印で、1時間後の増加が10cm未満の場合を黒色の矢印で、変動がない場合は黒丸で、また1時間後に減少する場合は水色の矢印で、それぞれ示している。このような色分けや表示段階は、適宜変更できる。例えば1時間後の水位が減少する場合の程度に応じて、異なる色で表示させてもよい。また、このような水位変動方向指示体の凡例53を地図表示領域41の隅部に、浸水危険度指数の凡例52と並べて表示させている。
【0067】
なお、以上の例では水位変動方向指示体として矢印を用いたが、水位変動方向指示体はこれに限られず、例えば三角形状や矢尻、ハート、指さし等、方向を示す任意の記号や図形を用いてもよい。あるいは、静止画に限らず動画で表示させることもできる。例えば水位が上昇あるいは下降するように動画で水位を上方向や下方向に移動させるアニメーション表示としてもよい。あるいは、矢印などのマークと動画像を組み合わせてもよい。例えば矢印が上方向に延びるような動画像を利用できる。これによってユーザに対し、視覚的に水位の変化方向を示すことができる。
【0068】
このような水位変動方向指示体は、地図中の対応する位置における浸水危険度指示体42と重ねて表示させている。すなわち、
図3〜
図7の例では、地図中の各位置における浸水危険度表示部として表示されたメッシュの着色と重ねて、このメッシュ内に含まれるように水位変動方向指示体の矢印が配置される。このように、時間変動指示体43を、浸水危険度指示体42のメッシュ内に応じて表示させることで、地図上のどの位置、すなわちメッシュにおける水位変動方向や変動量を示しているかを、視覚的に峻別できる。
【0069】
また以上の例では、矢印を真上又は真下のいずれかに向けて表示させているが、傾けて表示させてもよい。特に複数の矢印を細かく表示させる際は、矢印同士が重なると見難くなるので、若干傾斜させて表示させることで、矢印同士が重なっていても視認し易くなる。
(降雨量表示モード)
【0070】
次に、表示モード選択欄68で降雨量表示モードに切り替えた状態を
図10に示す。この図の地図表示領域41に示す情報は、2014年8月9日5時〜6時の時間帯における解析雨量又は短時間予測雨量をブロック毎に表示させたものである。ここではブロック単位で、当該ブロック内の降雨量の過多に応じてブロック毎に着色して表示させている。ここでは1時間当たりの降雨量に応じて、例えば80mm以上は紫色、50mm〜80mmは赤色、0mm以下は着色なし、等に着色している。この例は一例であり、表示させる色や区分の数などは、用途などに応じて適宜設定できる。好ましくは、降雨量の工程に応じた色の変化を、上述した浸水危険度指示体42における表示と対応させる。これによって、水位の変化や雨量を、同様の色分けで視覚的に把握できる。ユーザは、現在の降雨量や将来の降雨量の変化といった情報を知ることができ、現在の状況や避難のタイミング、避難経路やタイムライン等の検討に資することができる。また降雨量表示の凡例54を地図表示領域41の隅部に表示させている。さらに上述した浸水危険度表示モードの例と同様、表示時刻選択欄67や表示時刻調整スライダ62で表示時刻を変化させると、これに応じて地図表示領域41における降雨量表示も更新される。なお、広域地図表示領域64における気象情報の更新も、同様に行われることはいうまでもない。
(歩行困難度表示モード)
【0071】
さらに、表示モード選択欄68で歩行困難度表示モードに切り替えた状態を
図11に示す。この図の地図表示領域41に示す情報は、2014年8月9日14時〜15時の時間帯における歩行困難度を25mメッシュ単位で表示させたものである。ここでは25mメッシュ単位で、歩行困難と判断された領域を着色して表示させている。この例では、歩行困難度として、歩行可能、歩行困難、歩行不可能の三段階に分けて、それぞれ無色、黄色、赤色に着色している。これらの色分けや段階は一例であり、歩行困難度は任意の態様で表示可能である。また歩行困難度の凡例55を地図表示領域41の隅部に表示させている。ユーザは、地図上の各位置における歩行困難度を知ることができるので、特に避難経路の策定やタイムラインの検討等に資することができる。
【0072】
さらに上述した浸水危険度表示モードや降雨量表示モード等の例と同様、表示時刻選択欄67や表示時刻調整スライダ62で表示時刻を変化させると、これに応じて地図表示領域41における歩行困難度表示も更新される。さらに広域地図表示領域64における気象情報の更新も、同様に行われることはいうまでもない。
(施設表示機能)
【0073】
さらに表示部40は、地図上の特定の施設に関する情報を表示させる施設表示機能を備えることもできる。例えば、地図表示領域41に重ねて、学校の位置を表示させる学校表示機能、排水機場の位置を表示させる排水機場表示機能、避難所の位置を表示させる避難所表示機能等を設ける。例えば
図12に示す例では、施設表示機能をONさせた状態を示している。施設表示機能は、上述した表示モード選択欄68における表示モードの選択とは独立してON/OFFを切り替え可能としている。これにより、いずれの表示モードにおいても、施設表示機能を利用できる。
【0074】
施設表示機能をONさせると、地図表示領域41で表示された地図上に施設マーク70が重ねて表示される。表示可能な施設としては、学校や排水機場等、避難施設や排水能力を備える施設などが挙げられる。特に学校の位置を表示させる学校表示機能においては、幼稚園、保育所、社会福祉施設等を表示させてもよい。
図12の地図表示領域41では、地図上に小学校、中学校、排水機場を示す施設マーク70が表示されている。さらに地図表示領域41の右上隅部には、施設表示の凡例56が表示される。このように小学校や中学校を表示することで、これらの学校の位置や学校の周囲の状況、通学路等を確認でき、避難経路や通学路の策定等に資することができる。また浸水災害時等においては、学校長等のシステム管理者は、浸水危険度指示体42や施設マーク70を基にして、大雨等の災害中に各学校の児童が帰宅するべきかどうかを決定するための判断材料にすることができる。さらに加えて、ヘリポート、役所、病院、消防署、警察署、緊急輸送路等の重要施設や、土砂災害警戒区域などの危険情報を表示させることもできる。
【0075】
以上の例では、地図表示領域41における地図の表示形態は、衛星写真に基づいているが、これに限らず、航空写真や図表化された地図としてもよい。また地図の表示方向も、北を上とする表示の他、任意の方向に回転可能としてもよい。この場合は、いずれの方向が北を示すか、方位表示部を地図表示領域41に重ねて表示させることが好ましい。さらに地図を三次元状に斜めに表示させることで、より広い面積を表示させるようにしてもよい。またGPS機能を備えることで、現在の使用者の位置を検出して、この位置の周囲の地図を自動的に選択して表示させるようにしてもよい。
【0076】
また、
図1等に示すように表示部40の一部に、広告を表示させる広告表示領域44を設けてもよい。これによって広告収入によりユーザに無料で浸水度リアルタイム予測情報を提供することが可能となる。広告表示領域44は表示領域の一部や、別ウィンドウで表示させることが好ましい。
(水流方向表示機能)
【0077】
さらに、浸水度リアルタイム予測装置は地図表示領域41に表示された地図上に、各メッシュ上における水流方向を表示することができる。具体的には水流方向指示体45が、浸水した水がどの方向へ向かって流れているか、水流の方向を示す。浸水度リアルタイム予測装置は、データ取得部10により得られた雨量データと、データ記憶部20に記憶された地形データから、各メッシュに降った雨が流れていく水流方向を演算部40で算出し、この予測結果を地図上に表示する。
図13に地図上に水流方向を表示した模式図を示す。
図13の表示画面は、システム利用者が選択したあるメッシュに対して隣接するメッシュの水流方向を表示している。図の表示画面は、システム利用者が選択したメッシュに水位変動方向指示体46を表示し、その周囲のメッシュに水流の方向を示す水流方向指示体45aを表示している。これにより、システム利用者は、地表面でどのように水流が流れているかを確認することができる。なお
図13では中央のメッシュに隣接したメッシュのみ水流方向指示体45aを表示したが、地図表示領域41に表示されている地域全体のメッシュに水流方向指示体を表示させ、地域全体における水流方向が分かるようにしてもよい。
【0078】
以上、本実施形態の浸水度リアルタイム予測装置の説明をした。浸水度リアルタイム予測装置は、地図表示領域41に表示された地図上に、メッシュ毎の浸水危険度を示す浸水危険度指示体42と、浸水深の変動を示す水位変動方向指示体とを地図上に表示することで、システム利用者は、この地図表示領域41を確認し、予測された今後数時間内のある時刻における、メッシュ毎の浸水の有無、浸水危険度及び浸水深の変動を1画面で確認することができる。また、浸水危険度指示体42と水位変動方向指示体とを重ねて同一地図上に表示することで、システム利用者は一度に各メッシュの危険度と浸水深の変動を確認することができる。このように、浸水危険度指示体42や水位変動方向指示体を同時に表示することにより、例えば、既に浸水しているメッシュで所定時間後に更に浸水深が上昇するような特に危険な地域や、ある時間では安全であるが所定時間後には危険になる可能性が高い地域などを判断することができる。また、地図上に表示する予測結果の時刻を変えていくことで、システム利用者は地域全体の各時刻の浸水深の変化を簡単に確認することができる。これにより、地図上に一度に表示される予測結果が増加しても、短時間で今後の浸水状況を把握できる。以上により、浸水度リアルタイム予測装置はシステム利用者が、避難の必要な地域を特定したり、あるいは安全性の高い避難ルートの決定するのに役立てることができる。
(変形例1)
【0079】
以上、実施形態1の浸水度リアルタイム予測装置の説明をしたが、本発明の実施形態は以上に特定されない。以下に、変形例1について
図14を用いて説明をする。
図14に変形例1の浸水度リアルタイム予測装置の表示画面の模式拡大図を示す。
図14に示すように、矢印状の水位変動方向指示体46bの長さにより、浸水深の変動を表示している。図に示す水位変動方向指示体46bは、各メッシュにおける所定時間後の浸水深の変動が大きければ矢印を長くし、少なければ矢印の長さを短くしている。また、図の水位変動方向指示体46bは、傾斜して表示されている。このように水位変動方向指示体46bを傾斜させることで、あるメッシュにおける水位変動方向指示体46bの長さを長くしても、水位変動方向指示体46bが隣接するメッシュの水位変動方向指示体46bと互いに重ならないようにできるからである。以上のように、浸水深の変動量を矢印の長さにより表示することで、システム利用者は、各メッシュにおける浸水深の変動を直感的に理解することができる。ただ、図示しないが矢印以外の記号により表示できることは言うまでもない。記号の一部に棒状部を含んだ記号であれば、その棒状部により浸水深の変動量を表示することができる。
【0080】
以上のように、時間変動指示体43は、浸水危険度指示体42に重ねて表示させることができる。これにより、各位置に時間変動指示体43と浸水危険度指示体42とを一画面で同時に表示させて、浸水危険度や水位の変動方向を両面から確認できる。また、対応する地図中の各位置における浸水危険度指示体42と時間変動指示体43とを重ねて表示させる際は、時間変動指示体43が、浸水危険度指示体42のメッシュに応じた大きさに表示させることが好ましい。なお、浸水危険度指示体と時間変動指示体とを、切り替えて表示可能としてもよい。
(変形例2)
【0081】
さらに、以上の実施形態は、地図上に危険度段階表示と水位変動方向指示体と重ねて二次元的に表示する形態としたが、以下に説明する変形例2のように、三次元的な表示とすることができる。
図15に変形例2の浸水度リアルタイム予測装置の表示画面の模式拡大図を示す。図に示す浸水度リアルタイム予測装置の表示画面は、地図を斜め上から見下ろすように表示している。地図上の表示形態は上記実施形態と同様、所定のメッシュ単位で表示可能としている。各メッシュは危険度の段階により浸水危険度指示体42が重ねて表示されている。さらに、図の各メッシュには、四角柱や三角錐により表現された水位変動方向指示体46cが表示される。図の浸水深変動表示は、所定時間後に浸水深が上昇するメッシュでは四角柱で表現されている。この四角柱は、浸水深の上昇を示すと共に、その上昇量を示している。また、図の水位変動方向指示体46cは、所定時間後に浸水深が下降するメッシュでは先端が下向きになった三角錐で表現されている。ただ、以上の水位変動方向指示体46cの形状は一例であり、その他の形状を利用できるのは言うまでも無い。以上の変形例2の浸水度リアルタイム予測装置は、浸水深の上昇量が多いメッシュにおいて、三次元で表示された水位変動方向指示体46cの長さにより、システム利用者に視覚的に各メッシュの危険性を訴えることができる。
【0082】
以上、実施形態1及びその変形例1、2の浸水度リアルタイム予測装置の説明をした。ただ、以上の変形例では、水位変動方向指示体の形状のみに言及したが、実施形態1と同様に色や模様の違いを利用することができるのは言うまでも無い。例えば、特に浸水深が上昇する地域は警告色である赤にするなどして、システム利用者に色覚的に各メッシュの危険性を分かりやすくすることができる。
(地表面モデル)
【0083】
地形データ記憶部22が保持する地形データには、例えば地表面流の計算に用いる地表面モデルが利用できる。地表面モデルは、地図を5m〜25mメッシュで区画した単位で記録される。この地形データから、例えば一定の距離離れた位置同士の高低差を把握できる。さらにデータ記憶部20は、過去の降雨時のデータを保存することもできる。
【0084】
また、保存する期間を一定値に定めることもできる。例えば自動で過去一週間分のデータを保存すると共に、一週間以上経過したデータは上書きするように構成する。これにより、データの過大な蓄積を回避できる。あるいは、必要なデータのみを手動で保存可能としてもよい。例えば特定の地域における過去の洪水時のデータを保持しておくことで、当時の水位などを再現できる。これに基づいて、将来の大雨発生等の災害時の避難経路を、ユーザレベルで予め確認しておくことや、行政レベルでは災害時の避難経路を策定する際に、避けるべき地域や推奨の避難地などを決定する際の参考にすることができる。
(排水路モデル)
【0085】
以上の例では、地形データとして地表面モデルを用いている。ただ、地形データに加えて排水路モデルを組み合わせてもよい。このような例を実施形態2として
図16に示す。この図に示す浸水度リアルタイム予測装置200は、排水路モデルを記憶する排水路データ記憶部23を設けている。排水路モデルは、地形データの各位置の排水能力を示す情報であり、地形データの各位置と対応付けて保持される。例えば各位置における下水道や側溝(開水路)などの排水路の有無や単位時間当たりの排水量を保持する。この排水路モデルを用いることで、水位演算部31が現在の水位や将来の水位を予測する際に、降雨量の累積のみならず、単位時間当たりの排水量等の排水能力を加味して、より正確な水位の演算が可能となる。なお、記憶部に記憶するデータは、排水路データに限らず、これに代えて、あるいはこれに加えて、下水路データ、貯留施設データ、浸透施設データ、樋門・水門データ等を用いることもできる。
(地表面モデルと排水路モデルの関係)
【0086】
地表面モデルと排水路モデルの関係を
図17に示す。この図に示すように、地図をメッシュサイズ(dx)×(dy)に分割し、排水路が設けられている部位の情報が加えられる。これにより、地表面モデルに基づく地表面流に対して、排水路モデルに基づく排水路内の流れが加味され、
図17において放物線状の矢印で示すように地表面から排水路への流入や、逆に排水路から地表面への溢水といった相互の水の流れが考慮される。
【0087】
従来、徳島市などの地方都市では下水道が未整備のため、排水路(開水路)により雨水排水を行っている地区が多い。そのような地区において数値解析により内水被害を予測しようとすると、地表面モデルとは別レイヤーで排水路モデルを計算する必要があるため、予測しようとする地区の排水路の断面、敷高を測量する必要がある。一方で近年、地域によっては5mメッシュや2mメッシュの詳細な地盤高データが公表、販売されており、このような地盤高データには排水路が地表の起伏として反映されていることがある。
【0088】
そこで本発明者らは比較試験を行い、排水路のみで雨水排水をしている地区を対象とし、25mメッシュで地表面モデルと排水路モデルを考慮した解析結果(実施例1)と、25mメッシュで地表面モデルのみの解析結果(実施例2)と、5mメッシュで地表面モデルのみの解析結果(実施例3)の3ケースを比較した。ここでは、解析コードとしてX−Okabe(登録商標)(商品名:氾濫解析AFREL(登録商標))を使用した。この解析コードでは、二次元不定流モデル(地表面モデル)、一次元開水路不定流モデル(排水路モデル)、一次元管水路不定流モデル(下水路モデル)の3個のサブモデルを結合することにより構築されている。なお本実施例で対象とした地区では下水管路が未整備のため、下水路モデルは使用していない。また、排水路網、雨水排水用下水路網、水門・樋門、排水機場など、実在する内水排水関連施設の効果を考慮することが可能である。なお、5m及び25mメッシュの解析での地盤標高はメッシュ内既知点の平均値を用いることとした。
【0089】
ここでは、降雨量が地表面の水深として与えられ、地表面レイヤーにおいて隣接するメッシュ間の地表面の浸水深や流速を計算する。排水路は、
図17に示すように地表面メッシュの中央を走るようにモデル化されている。排水路が存在するメッシュは、本間の越流公式により、地表面から排水路への流入量が算定され、地表面レイヤーから排水路レイヤーに水量が移行する。排水路の水位が地表面の水位より高い場合は、その逆に排水路レイヤーから地表面レイヤーに溢水量が移行する。排水路が存在するメッシュが隣接する場合は、排水路レイヤーにおいて隣接するメッシュ間の排水路内流量を計算する。
【0090】
本実施例で対象となる降雨の波形を
図18に示す。対象降雨は、計算開始0時間目から3時間まで、60mm/hrの降雨強度の降雨波形の仮想降雨を想定した。
【0091】
対象とした地区は、徳島県内の都市郊外部に位置する地区である。この地区の排水系統を
図19に示す。当地区は下水路が未整備であり、排水路と内水河川を通じて、流末の排水機場により堤外への排水を行っている。
図19中、■の部分(内水河川として水色で着色された箇所)については川幅が25m以上であるため、25mメッシュでの解析においても、地盤の起伏として内水河川をモデル化している。
(解析結果)
【0092】
実施例1〜3の3つについて、最大浸水深分布を
図20A〜
図20Cに示す。これらの図には、各実施例の最大湛水量と床上浸水の基準となっている(財団法人国土開発技術研究センター「内水処理計画策定の手引き」参照)、0.45m以上の最大浸水面積も併せて示した。各実施例の最大湛水量を比較すると、実施例1では43.2万m
3、実施例2では80.9万m
3、実施例3では47.5万m
3であった。また、各実施例の0.45m
3以上の最大浸水面積比較すると、実施例1では39.3万m
2、実施例2では83.6万m
2、実施例3では45.6万m
2であった。これらから、5mメッシュで地表面モデルのみの解析は、25mメッシュでの排水路モデルの影響を最大湛水量では88.6%、最大浸水面積では85.6%反映できていると考えられる。そのため、5mメッシュでの解析は排水路モデルの影響を概ね反映できており、地表面モデルのみの解析でも実用上、支障なく利用できると考えられる。これによって排水路モデルを省略しても利用可能な浸水度リアルタイム予測が実現される。