(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-201307(P2017-201307A)
(43)【公開日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】車の角位置を検出するデバイスを有する電気機械式計時器用ムーブメント。
(51)【国際特許分類】
G04C 3/00 20060101AFI20171013BHJP
【FI】
G04C3/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-85877(P2017-85877)
(22)【出願日】2017年4月25日
(31)【優先権主張番号】16168244.8
(32)【優先日】2016年5月4日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ラゴルゲット
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101AC01
2F101AD02
2F101AD06
2F101AG00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車の基準半軸が所与の基準角度を通過することを正確に検出することができるような車の角位置を検出するデバイスを提供する。
【解決手段】ムーブメントは、ステッピングモーターと、モーターによって回転駆動される車22と、車と噛み合うピニオン24と、車とピニオンによって定められる基準角度(α
ref)を通り抜ける車の基準半軸42の通過を判断する車の角位置を検出する検出デバイスとを有する。検出デバイスは、車が駆動されるとき追加の局所的な抵抗性トルクを検出することができる電子回路を有する。局所的な抵抗性トルクは、車と一体化された弾性要素28によって達成され、弾性要素28の一部は、少なくとも部分的に、車の歯列23の所与の空欠部に重なり合い、可動部品には、少なくとも部分的に弾性要素のレベルに位置している歯列25がある。これによって、歯列が所与の空欠部の内側に入り込むときに、歯列は動いて弾性要素を押す。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモーター(4)と、前記モーターによって回転駆動される車(22)と、前記車と噛み合う可動部品(24)と、及び前記車の角位置を検出する検出デバイスとを有する電気機械式計時器用ムーブメントであって、
前記検出デバイスによって、前記車及び前記可動部品によって定められる基準角度(αref)を通り抜ける前記車の基準半軸(42)の通過を判断することができ、このために、前記車及び前記可動部品が前記モーターによってステッピング運動をするように駆動されるときに瞬間的に発生する追加の抵抗性トルクを検出することができる電子回路(16)を有し、
前記追加の抵抗性トルクは、前記車と一体化された弾性要素(28)によって発生し、
前記弾性要素(28)は、前記車の歯列(23)が位置している前記車の一般平面(40)上への射影において、
前記歯列(23)の2つの隣接歯(34、35)の間の1つの所与の空欠部(32)の少なくとも内側に延在するように構成しており、
前記弾性要素は、前記所与の空欠部の底部まで前記車の半径方向に実質的に弾性変形可能であり、
前記可動部品(25)は、前記歯列が前記所与の空欠部に入り込んでいるときに前記歯列が動いて弾性要素を押すように、前記弾性要素の高さレベルに少なくとも部分的に位置している歯列を有する
ことを特徴とする電気機械式計時器用ムーブメント。
【請求項2】
前記弾性要素は、前記一般平面上への射影において、前記所与の空欠部の内側よりも少ない程度しか前記所与の空欠部に隣接している2つの空欠部(36、37)の一方及び/又は他方の内側に入り込まないように、又は前記隣接している2つの空欠部の内側に入り込まないように、構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の電気機械式計時器用ムーブメント。
【請求項3】
前記弾性要素は、周部に前記歯列を有する前記車のプレート上において配置されており、
前記弾性要素は、前記歯列の前記所与の空欠部に重なり合った部分を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気機械式計時器用ムーブメント。
【請求項4】
前記弾性要素は、その2つの端の少なくとも一方(29)において車に取り付けられているワイヤーばね(28)によって形成される
ことを特徴とする請求項3に記載の電気機械式計時器用ムーブメント。
【請求項5】
前記ワイヤーばねは、その主な曲がりから突出している曲がり部(30)を有し、
前記曲がり部は、前記車の前記歯列の前記所与の空欠部に重なり合っている
ことを特徴とする請求項4に記載の電気機械式計時器用ムーブメント。
【請求項6】
前記可動部品は、当該計時器用ムーブメントの歯車列を前記車と形成するピニオン又は別の車である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気機械式計時器用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車列を駆動することができるように構成しているステッピングモーターを有する電気機械式計時器用ムーブメントに関し、この歯車列は、少なくとも第1の車と、及びこの第1の車と噛み合うピニオン又は第2の車とを有し、当該計時器用ムーブメントは、さらに、第1の車の角位置を決めるデバイスを有する。
【背景技術】
【0002】
計時器用モーターによって駆動される車の角位置を検出するデバイスがいくつか提案されている。いくつかの文献は、光源と光センサーを有する光学デバイスの構成に関し、計時器用ムーブメントは、当該車の角位置の関数として、制御された手法でセンサーによって光を受ける量を変化させるように構成している。他の文献は、容量性センサー又は誘導性センサーの構成を提案している。いくつかの文献は、磁化要素及び少なくとも1つのホールセンサーの構成を提案している。これらのデバイスはすべて、比較的高コストで複雑である。また、これらはしばしば、全体寸法が比較的大きかったり、かつ/又は、計時器用ムーブメントの部分、特に、当該車のプレート、の特定の機械加工を必要としたりする。
【0003】
車の角位置を検出するデバイスのコスト、複雑さ及び全体の寸法を減らすために、当該車を有する歯車列の1つのギヤに「ハードポイント」を導入することが提案されている。このような「ハードポイント」には、車の制約された角度領域に制限された歯車列を駆動するモーターのための追加負荷又は抵抗性トルクを加えることを伴う。適切な検出手段によってこの追加の抵抗性トルクを検出することは、特に、モーターの1ステップを進ませるために必要なトルクを判断することによって行われ、このような検出によって、当該車の回転軸に対する特定の基準角度を通して当該車の基準軸の通過を検出することが可能になる。
【0004】
第1のデバイスには、追加の外部センサーがなく、スイス特許CH640098に開示されている。これは、歯列の近くの車プレート上に強磁性要素と、及び車の周部における固定された磁石とによって構成している。車が回転しているときに、強磁性要素が磁石に近づくと、その磁石は、回転の方向にその強磁性要素を引きつけ、したがって、モーターを1ステップを進めるために必要なエネルギーが小さくなる。しかし、磁石の角位置を通過すると、磁石は、回転方向とは反対方向に力を与える。このことによって、1ステップ進めるために必要なエネルギーが大きくなる。ステップごとにモーターによって与えられる電気的なパルスのエネルギーを検出する回路によって、強磁性要素が磁石に対して実質的に対向しているステップを判断することが可能になる。このシステムには、様々な課題がある。第1に、磁石を用いることである。このために、計時器用ムーブメントの他の要素に影響を与えることがある。また、車に対する磁力に、軸方向の成分があることがあり、これは、車アーバーに対してトルクを発生させ、ベアリングにおける摩擦を増加させてしまう。次に、車の周部における磁石の構成には、ムーブメントの内部に自由な特定の空間を必要とすることである。これは、必ずしも容易ではない。最後に、磁石が、いくつかのモーターステップに対応する比較的大きな角距離にわたって強磁性要素に作用することである。したがって、強磁性要素によって定められる車の基準軸の位置を検出することには、いくつかのステップにわたってモーターのふるまいを解析することが必要である。したがって、この文献において、各パルスに対する現在の曲線を解析して、この曲線の特定の具体的なパラメーターの進展を判断することが提案されている。これらのパラメーターは、対応するステップを進ませるためのトルクに依存している。
【0005】
第2のデバイスには、追加の外部センサーがなく、米国特許US6414908に開示されている。この文献は、車が駆動されているときに、1又は複数のステップを進む際にステッピングモーターのために局所的な高負荷を発生させるような「ハードポイント」の構成を教示している。この負荷の検出は、所与の例において、モーターパルスの長さを測定することによって行われる。より正確には、この文献においては、通常のパルスに、歯車列のステッピング運動を行うための第1のエネルギーが供給されるように構成している。通常のパルスが供給されると、検出デバイスは、ローターが1ステップを適切に完了したかどうかを判断することができる。もし適切に完了していない場合、この実施形態においては、第1の補正パルスに、第1のエネルギーよりも大きい第2のエネルギーが供給されるように構成している。ハードポイント構成のない通常の動作において、歯車列の駆動は、通常のパルス及び第1の補正パルスによって確実にされる。しかし、ハードポイント構成によって発生する抵抗性トルクには、第2のエネルギーよりも大きい第3のエネルギーを有する第2の補正パルスが必要となる。したがって、第1の補正パルスが供給されたときに非回転が検出されるといずれの場合も、ハードポイントによって発生するものであり、したがって、このことによって、単に第2の補正パルスを必要としたステップを判断することによって、基準車軸の位置を判断することが可能になる。例えば、モーターに実質的に一定の電力が供給される場合、様々なパルスどうしが、それらの異なる長さによって識別される。
【0006】
米国特許US6414908は、第2の補正パルスを与えることを必要とするステップを記録することに基づいて「12時の位置」を針が通過することを検出することを詳細に記載している。しかし、ハードポイントの実際的な実施形態については実質的に何ら教示がない。追加の抵抗性トルクを発生させるために、2つの例のみが簡潔に記載されている。第1の変種は、歯列の輪郭の局所的な改変を提案している。第2の変種においては、単に追加の抵抗性トルクがカムによって発生することを示しているだけである。この第2の変種は曖昧であり、ここにおいて当業者には実質的に何ら教示が与えられていない。第1の変種に関して、まったく興味がないわけではないが、具体的な例が何ら与えられていない。しかし、この第1の変種の実装によって特定の技術的課題が発生することには注目すべきである。まず、このように車の歯列を均一ではなくすることによって、その製造プロセスが複雑になってしまう。次に、製造における許容量を考えると、ハードポイントが所与の範囲内にあるような抵抗性トルクの値を有することを確実にすることは容易ではない。最後に、一般的には、適切な噛み合いを確実にするために、ある程度のギヤ遊びが必要である。したがって、歯列の輪郭を局所的に変化させることによってハードポイントを作ると、モーターの回転に害を与え、したがって、モーターに関連づけられた歯車列の駆動に害を与えることになりがちである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、製造が比較的単純であり、車の基準半軸が所与の基準角度を通過することを正確に検出することができるような車の角位置を検出するデバイスを有する電気機械式計時器用ムーブメントを提供することを目的とする。
【0008】
また、別の目的は、車を駆動するように構成しているステッピングモーターの電力供給に関連して電気信号の複雑な処理を必要とせずに動作する前記のような検出デバイスを提供することである。
【0009】
また、別の目的は、比較的コンパクトである前記種類の検出デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明に係る電気機械式計時器用ムーブメントは、ステッピングモーターによって回転駆動される車と、及び車がステップ駆動されるときに、瞬間的に発生する追加の抵抗性トルクを検出することができる、車の角位置を検出するデバイスとを有する。前記追加の抵抗性トルクは、車と一体化された弾性要素によって発生する。この弾性要素は、車の歯列が位置している車の一般平面上への射影において、この歯列の2つの隣接歯の間に設けられた空欠部の内側に入り込むように構成している。次に、計時器用ムーブメントは、少なくとも部分的に弾性要素上に位置している歯列がある可動部品と車が噛み合い、これによって、歯の1つが所与の空欠部に入り込んでいるときに、歯列が動いて弾性要素を押す。
【0011】
好ましい実施形態において、前記弾性要素は、車の一般平面上への射影において、前記所与の空欠部に隣接する2つの空欠部の一方及び/又は他方の内側に入り込むよりも少ない程度しか入り込まないように、又は好ましくは、前記2つの空欠部の内側に入り込まないように、構成している。
【0012】
本発明の検出デバイスの特徴によると、追加の抵抗性トルクは、車の歯列の単一の所与の空欠部内への可動部品の1つの歯の通過までに制限することができる。したがって、非常に局地化され、場合に応じて、1モーターステップの範囲内だけで検出することができる。このことによって、車に関連づけられたステッピングモーターによって供給されるトルクに依存する電気信号の処理が単純化し、所与の車の歯列の空欠部の中心を通り抜けモーターの基準ステップに対応する車の基準半軸の基準角位置を判断することができるようになる。
【0013】
好ましい変種によると、弾性要素は、車プレートに取り付けられた小さな寸法のワイヤーばねである。このようなワイヤーばねは、非常にコンパクトであり、その自由端の一部が前記所与の空欠部に重なり合うように正確に構成することを確実にしつつ、様々な取り付け手段、特に、はんだ付け、によって、容易に取り付けることができる。
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明について説明する。なお、これは、例として与えられるものであり、これに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る電気機械式ムーブメントのブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1のムーブメントの歯車列の車とピニオンの平面図であり、この車には、この車の角位置を検出するデバイスに属するばねが設けられている。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aと同様な図であるが、ばねによって追加の抵抗性のトークが発生するような車の特定の角位置を有する。
【
図4】
図2Bの線のIV−IVに沿った部分断面図である。
【
図5】
図5A〜5Cは、3つの異なる変種に対するステッピングモーターによって与えられるトルク曲線の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、ステッピングモーター4を有しており、歯車列6がモーターにつながれており、アナログディスプレー8を駆動するような電気機械式計時器用ムーブメント2の実施形態について説明する。伝統的な形態で、ムーブメントは、さらに、モーターのためのパワー供給回路10と、モーターに与えられるパルス形成信号をパワー供給回路に与える制御論理回路12と、特にロジック回路12のために、タイムベースを定めるクロック回路14と、及び当該計時器用ムーブメントの各種機能を管理する中央処理装置18とを有する。最後に、計時器用ムーブメントは、さらに、負荷を検出する回路16を有する。この負荷は、この負荷を駆動するために各ステップに供給されるモータートルクの歯車列とアナログディスプレーのそれぞれによって定められる。この検出回路は、本発明に係る車の角位置を検出するデバイスの一部を形成する。この検出回路は、さらに、パワー供給回路(接続A)に、及び/又は直接ステッピングモーター(接続B)に、及び/又は、さらに、制御論理回路(特に中央処理装置を介して)に、接続されている。
【0017】
検出回路16は、当業者に知られている様々な形態にて、特に、前記従来技術におけるように、構成することができる。3つの異なるパルスに3つの異なる対応するエネルギーを供給することができるようになっている場合において、負荷検出は、これらの異なる3つのパルスのうちのどのパルスが特定のステップを行うために必要であるかを判断することを伴う。負荷の関数としてパルスのリアルタイム管理を行うような別の場合において、負荷検出は、電気パルスのエネルギーに伴う3つの物理的パラメータ一、すなわち、時間、与えられる電圧及び供給される電流、のうちの一又は複数のパラメーターを解析することによって、様々な形態で行うことができる。負荷検出をこれらのパラメーターの値にリンクすることができる。例えば、適用可能な場合に、パルス幅、ピーク電流、又は選択される電圧である。より精巧な検出モードにおいて、これらの値のいくつか又はこれらの値から発生する情報を用いることができる。最後に、当業者であれば、(パワー供給回路と検出回路の間のスイッチを用いて)電気パレスが供給された後に、モータコイルにおける誘導された電圧/誘導された電流を解析する検出手段を知っているであろう。このような誘導信号によって、特に、ステップが適切に実行されたかどうかを判断できるが、信号を解析することによって、さらに、モーターに与えられた抵抗性トルクについての情報も得ることができる。
【0018】
歯車列6は、歯列23を有しモーターによって回転駆動される車22と、及び歯列25を有しており前記車と噛み合っているピニオン24とを有する。このピニオンは、車22の歯列23と噛み合う可動部品を形成している。なお、これに限定されない。車22と一体化されている弾性要素26によって付加的な局所的な抵抗性トルクが達成される。この弾性要素は、ワイヤーばねによって形成されている。このワイヤーばねは、車プレートに配置されており、端29がこの車プレートに取り付けられている。ワイヤーばねの自由端において、曲がり部30がある。これは、歯列の2つの隣接歯34及び35の間の歯列23の所与の空欠部32に重なり合っている。なお、図面に示した有利な変種において、曲がり部30は、空欠部32に隣接している2つの空欠部36及び37に重なり合わないように、曲がっている。別の変種において、ワイヤーばねが、両端にて取り付けられており、曲がり部が、ワイヤーばねの長さのほぼ中央に位置している。曲がり部は、好ましいことに、ワイヤーばねの主な曲がりから突出しており、非常に局所的な形態で、歯列23に重なり合う。しかし、この好ましい変種には限定されない。なぜなら、弾性要素には、このような曲がり部が必ずしも必要ないからである。したがって、例えば、変種の1つにおいて、ばねの自由端の先端のみが車の歯列に重なり合う。最後に、
図4の断面図において示しているように、ピニオン24の歯列25は、少なくとも部分的にワイヤーばね上にあり、これによって、歯列が弾性要素を押す。すなわち、ここにおいて、歯列が所与の空欠部32に入り込むときに、ワイヤーばねの曲がり部を押す。
【0019】
より一般的には、歯列23が設けられている車22の一般平面40上への射影において、弾性要素が所与の空欠部内に入り込むように構成している。この弾性要素は、実質的に所与の空欠部の底まで深く車の半径方向に弾性変形可能である(すなわち、ピニオンと車の噛み合いを阻止するリスクなしでピニオンの歯列が空欠部に入り込むことが可能になることが少なくとも十分であるように弾性変形可能である)。好ましいことに、弾性要素は、前記一般平面上への射影において、前記所与の空欠部に入り込むよりも少ない程度に、前記所与の空欠部に隣接する2つの空欠部の一方及び/又は他方の内側となるように入り込むように構成している。好ましくは、上記の変種におけるように、一般平面上への射影において、これらの2つの隣接する空欠部の内側に入り込まないように、弾性要素を作り弾性要素を車に取り付けるように構成している。
【0020】
このようにして、車22の角位置を検出するデバイスは、当該車及び可動部品によって定められる基準角度α
ref対応する基準方向44を通り抜けるような当該車の基準半軸42の通過を判断することができる。半軸42は、前記選択された空欠部に重なり合うワイヤーばねの曲がり部30の部分によって、空欠部32の中間によって定められる。基準角度α
refは、車又はピニオンを形成する可動部品の場合、車22の中心及び前記可動部品の中心を通り抜ける直線44の角位置に対応している。このようにして、本発明に係る検出デバイスには、車の歯列の1つの空欠部のみにおいて位置している「ハードポイント」があり、そして、前記検出のために、この検出デバイスは、車22及びピニオン24がモーター4によってステッピング運動をするように駆動されているときに、瞬間的に発生する追加の抵抗性トルクを検出することができる電子回路を有する。
【0021】
図5A、5B及び5Cはそれぞれ、歯車列6がステッピング運動をするように駆動されているときにモーターによって与えられるトルクを表す3つの曲線48A、48B及び48Cを示している。これにおいて、ピニオン24の1つの歯が、車22の歯列の空欠部32に入り込んでおり、したがって、この所与の空欠部のみに重なり合っているワイヤーばね28によって、発生したハードポイントを通る。これらの3つの曲線は、連結しているものとして表されている一連のパルスの間にモーターが克服しなければならない抵抗性トルクの概略的表現であり、これに対して、通常の動作においては、これらのパルスどうしは、ステッピングモーターの休み期間によって分離される。
【0022】
図5Aは、60の歯を備えた歯列23及び1回転当たり60ステップ進む車についての特定の状況に対応しているものである。この場合、ワイヤーばねによって発生する追加の抵抗性トルクは、車の角位置が、モーターによって供給されるトルクにおけるステップNのピーク50Aの検出の際にすぐに判断されるように、1つのモーターステップに対してのみ発生する。しかし、モーター休み期間の間に噛み合う歯列どうしの相対的位置に依存して、追加の抵抗性トルクの効果が、2つの続くステップにまたがって発揮されることもあり得ることに留意すべきである。これは、特に、曲がり部30が歯列25の歯によって押されるような状況にモーターの休み期間が対応している場合にいえる。したがって、この場合において、2つの連続するステップのうち基準角位置を定めるステップはどちらかという ことを定める必要がある。
【0023】
図5Bは、歯列23に同様に60の歯があるが、車が30ステップごとに1回転するような変種に対応している。抵抗性トルクの増加ピーク50Bは、標準的なパルス幅よりも短い持続時間にわたって発生する。一般的には、モーターの1ステップによって定められる精度よりも精度が細かくても実際的には利点がないので、別の変種において、ワイヤーばねの曲がり部30が、2つの連続する空欠部にわたることができることに注目すべきである。これは、特に、2つの歯列の噛み合う関係が、好ましいことに、2つの連続する空欠部が同じステップにおいて入り込むように、正確に制御される場合にいえる。しかし、好ましくは、変種の実施形態の1つは、ワイヤーばねによって1つの空欠部のみに重なり合うように保持される。したがって、モーターの休み期間の間の歯列どうしの相対的位置の重要性は減る。モーターと歯車列は、好ましくは、所与の空欠部32の通過がモーターによって進む1ステップのみの間で発生するようにマウントされる。
【0024】
図5Cは、歯列23には30の歯があり、車が1回転当たり60ステップを進むような変種に対応している。この場合において、追加の抵抗性トルクがいくつかの連続するステップにわたって影響を与え、これにおいて、トルクピーク50Cが少なくとも2つのステップにわたって延在し、一般的には、3つのステップにわたって延在する。いくつかの連続するステップに関連する電気パルスを発生させるパワー供給信号を解析することによって、一般的には、抵抗性トルクが最大値を通り抜けるステップを定めることができ、したがって、抵抗性トルクが最大値を通り抜け、したがって、車22の基準位置に対応するステップを判断することができる。しかし、追加の抵抗性トルクがモーターのいくつかの連続するステップにわたって作用する場合、どのステップが基準ステップかを定めるためにはいくつかの方法がある。例えば、所定のしきい値よりも大きい抵抗性トルクを有する最初のステップにしたり、すべてが前記しきい値よりも大きい抵抗性トルクを有する一連のステップの最後のステップにしたりすることができる。なお、このような一連のステップの中央に位置するステップを選び、又はこのような一連のステップに続くステップ、すなわち、抵抗性トルクが所定のしきい値よりも大きかった一連のステップの後の、所与のしきい値よりも小さいトルクを有する最初のステップ、を選んだりすることもできることを理解できるであろう。
【0025】
本発明に係る検出デバイスはコンパクトである。これは、検出デバイス全体が関心事の車上に配置されるという点によって(計時器用ムーブメントの電子回路に組み入れられる電子部品を例外として)、構成の観点から有利である。実際に、関心事の車と一体化された1つの弾性要素のみが必要になる。この弾性要素は、1つの空欠部のみをカバーするように、車に容易に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0026】
4 ステッピングモーター
6 歯車列
8 アナログディスプレー
10 パワー供給回路
12 制御論理回路
14 クロック回路
16 負荷検出回路
18 中央処理装置
22 車
23 歯列
24、25 可動部品
28 弾性要素
29 端
30 曲がり部
32、36、37 空欠部
34、35 歯
40 一般平面
42 基準半軸