【解決手段】前身頃6と後身頃2を有する上衣1であって、後身頃2は、メッシュ生地から構成された基材3と、織布または編布に中材が包まれた後側保温パック4を含み、後側保温パック4は、着用者側に面して、着用者の肩甲骨から下方に延びるように配置されている。
前記後側保温パックは、身長方向に1/3ずつの長さで上方部と下方部とその間の中間部とに区分され、前記後身頃の左右に配置された後側保温パックの離間距離が、前記上方部よりも前記中間部の方が広くなっている請求項1に記載の上衣。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダウンジャケットなどの上衣は防寒を目的に着用され、一般に、屋外であまり身体を動かさないような状況でも十分な防寒性や保温性が確保されるようになっている。一方、登山やゴルフなど屋外で身体を動かす場合は、ダウンジャケットなどを着用していると、身体から発せられた熱がダウンジャケットの内部でこもって身体が過剰に温まり、多量の汗をかきやすくなる。この場合、汗が乾く際に身体から熱が奪われるため、発汗によりかえって身体が冷えることが懸念される。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、身体を動かしたりする際に着用しても、上半身が過剰に温まるのが抑えられ、効果的に保温することができる上衣を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、身体のどの部分が発熱しやすく発汗しやすいか、またどの部分が寒さを感じやすいか、調査を行った。その結果、上半身においては、背中の身幅方向の中央部や脇の下付近で特に発熱しやすく、一方、肩甲骨からその下方にかけての部分では寒さを感じやすいことが分かった。従って、背中の肩甲骨からその下方にかけての部分で保温性を高め、それ以外の部分では通気性を高めて熱や汗による蒸れを発散しやすくすることで、身体を動かしたりする際にも、上半身が過剰に温まるのを抑えつつ、効果的に保温できることが明らかになった。
【0007】
すなわち前記課題を解決することができた本発明の上衣とは、前身頃と後身頃を有する上衣であって、後身頃は、メッシュ生地から構成された基材と、織布または編布に中材が包まれた後側保温パックを含み、後側保温パックが、着用者側に面して、着用者の肩甲骨から下方に延びるように配置されているところに特徴を有する。
【0008】
本発明の上衣は、後身頃に、着用者側に面して、着用者の肩甲骨から下方に延びるように後側保温パックが配置されているため、背中の特に寒さを感じやすい部分が後側保温パックによって優先的に保温される。一方、発熱量や発汗量が多い背中の身幅方向の中央部や体側部はメッシュ生地から構成された基材で覆われているため、当該部分から熱や蒸れがスムーズに外部に放出され、身体が過剰に温まりにくくなる。その結果、当該部分での発汗量が抑えられ、身体の冷えを防ぐことができる。従って、本発明の上衣は、屋外で身
体を動かす状況で着用しても、上半身が過剰に温まるのを抑えつつ、効果的に保温することができる。また、後側保温パックによって身体の動きが邪魔されにくくなるため、上半身の運動性も確保することができる。
【0009】
後側保温パックは、身長方向に1/3ずつの長さで上方部と下方部とその間の中間部とに区分され、後身頃の左右に配置された後側保温パックの離間距離が、上方部よりも中間部の方が広くなっていることが好ましい。このように後側保温パックを配置することにより、背中からの熱が好適に発散されやすくなるとともに、背中の寒さを感じやすい肩甲骨の周辺が後側保温パックで覆われるようになるため、後側保温パックによる保温性を確保することができる。
【0010】
後側保温パックは、後身頃の左右に3cm以上離間して配置されていることが好ましい。このように後側保温パックを配置することにより、背中の身幅方向の中央部に、熱や蒸れが拡散するための通気路が好適に形成されやすくなる。
【0011】
前身頃は、メッシュ生地から構成された基材と、織布または編布に中材が包まれた前側保温パックを含み、前側保温パックが、着用者側に面して、着用者の左右の胸部から下方に延びるように配置されていることが好ましい。上半身の前側では、胸部の中央部付近が特に発熱しやすく、一方、左右の胸部から下方にかけての部分では寒さを感じやすい。そのため、前側保温パックを、着用者側に面して、着用者の左右の胸部から下方に延びるように配置することにより、上半身の前側の特に寒さを感じやすい部分を前側保温パックによって優先的に保温することができる。一方、発熱量や発汗量が多い胸部の中央部はメッシュ生地から構成された基材で覆われるため、当該部分から熱や蒸れがスムーズに外部に放出される。そのため、胸部の中央部が過剰に温まるのを抑えつつ、上半身を効果的に保温することができる。また、前側保温パックによって身体の動きが邪魔されにくくなるため、上半身の運動性も確保することができる。
【0012】
本発明の上衣は、防寒着の裏地に用いてもよい。この場合、防寒着は表地と裏地を有し、裏地が本発明の上衣を有するものとなる。このように構成された防寒着は、裏地(すなわち本発明の上衣)によって保温性が確保されるため、表地を比較的薄手の材料から構成することができ、運動性に優れたものとなる。
【0013】
表地には、左側の後側保温パックと右側の後側保温パックの間の領域に、通気孔が形成されていることが好ましい。このように表地に通気孔が形成されれば、左側の後側保温パックと右側の後側保温パックの間の空間を拡散した熱や蒸れが、表地の通気孔から外部にスムーズに放出されやすくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上衣は、後身頃に、着用者側に面して、着用者の肩甲骨から下方に延びるように後側保温パックが配置されているため、背中の特に寒さを感じやすい部分が後側保温パックによって優先的に保温される。一方、発熱量や発汗量が多い背中の身幅方向の中央部や体側部はメッシュ生地から構成された基材で覆われるため、当該部分から熱や蒸れがスムーズに外部に放出され、身体が過剰に温まりにくくなる。その結果、上半身が過剰に温まるのを抑えつつ、効果的に保温することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、上半身に着用する上衣に関するものである。本発明の上衣は、防寒を目的とした衣料に好適に用いることができ、例えば、アウターウェアや、アウターウェアの内側に着用する衣料、あるいはアウターウェアの裏地に適用することができる。
【0017】
上衣は、少なくとも前身頃と後身頃を有し、例えば、袖をさらに有していてもよい。前身頃と後身頃とは、胴体の前側と後側を覆う部分をそれぞれ意味し、前身頃と後身頃は身体の真横で区分される。上衣を構成するパーツ(縫製前のパーツ)は、前身頃と後身頃の区分と一致するように必ずしも形成されていなくてもよい。
【0018】
本発明の上衣について、図面を参照して説明する。なお、本発明は図面に示された実施態様に限定されるものではない。
図1および
図2には、本発明の上衣の一例を示した。
図1および
図2は上衣を着用者側から見た展開図を表し、上衣の前身頃と後身頃の両肩での接合(縫合)を解いて展開した状態を表している。
図1および
図2には、後側保温パックと前側保温パックの異なる配置例を示している。
【0019】
上衣1は、前身頃6と後身頃2を有し、後身頃2が基材3と後側保温パック4を含んで構成されている。好ましくは、
図1および
図2に示すように、前身頃6も基材7と前側保温パック8を含んで構成される。
図1および
図2に示した上衣1は、左右の前身頃6にスライドファスナー10が設けられ、左右の前身頃6がスライドファスナー10で互いに止着できるようになっている。
【0020】
基材3は後身頃2の基本形状を形作り、基材7は前身頃6の基本形状を形作る。例えば、基材3は後身頃2の50%以上の領域に設けられることが好ましく、基材7は前身頃6の50%以上の領域に設けられることが好ましい。なお、前記領域の割合は、後身頃と前身頃を平面視した状態で定められる。
【0021】
基材3は、少なくとも一部が着用者側に面するように配される。すなわち、基材3は、後身頃2の着用者側の面の一部を構成する。基材7も、少なくとも一部が着用者側に面するように配される。すなわち、基材7は、前身頃6の着用者側の面の一部を構成する。なお上衣1において、着用者側とは、上衣を着用した際に着用者に面する側を意味する。
【0022】
基材3,7は、メッシュ生地から構成されている。基材3,7をメッシュ生地から構成することにより、基材3,7を通って着用者から発せられた熱が外部に放出されやすくなる。メッシュ生地には、上衣1の着用者側と外側をつなぐ開口が形成されていることが好ましい。
【0023】
メッシュ生地は、衣料に一般的に用いられるメッシュ生地を用いればよい。メッシュ生地の開口形状は特に限定されない。メッシュ生地は、例えば、円相当径として0.5mm〜10mm(好ましくは0.8mm〜8mm)の開口が形成されていればよい。円相当径は、メッシュ生地に負荷をかけずに平面状に置いた状態で、メッシュ生地に形成された各開口の面積を測定し、それと等面積の円の直径を算出することにより求められる。メッシュ生地の開口率は、例えば、10%〜40%(好ましくは15%〜30%)であればよい。開口率は、メッシュ生地に負荷をかけずに平面状に置いた状態で、メッシュ生地に形成された各開口の面積を測定し、これをメッシュ生地の面積で除することにより求められる。
【0024】
後側保温パック4と前側保温パック8は、織布または編布に中材が包まれて構成されている。後側保温パック4と前側保温パック8は、上衣1の保温性を確保するために設けられる。
【0025】
中材を包む織布の織組織や編布の編組織は特に限定されず、公知の織組織や編組織を採用できる。織布の織組織としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられ、編布の編組織としては、平編、ゴム編、両面編、ハーフ編等が挙げられる。織布や編布には、メッシュ生地のように大きな開口は形成されず、織布や編布に形成される隙間(織布や編布を構成する糸間の隙間)の大きさは、円相当径で0.5mm未満(好ましくは0.2mm以下であり、より好ましくは0.1mm以下)となる。中材の脱落を防止する点から、織布や編布としては、高密度織布や高密度編布を用いることが好ましい。
【0026】
中材は、後側保温パック4や前側保温パック8による保温性を高めるために設けられる。中材としては、例えば、ダウン(羽毛)、フェザー(羽根)、綿や合成繊維等の繊維塊等を用いることができる。中材は、複数の織布または編布の間に配してもよく、1枚の織布または編布を折り返してその間に配してもよい。いずれの場合も、中材は、織布または編布によって周囲全体が包まれることとなる。
【0027】
後側保温パック4と前側保温パック8は、織布または編布に包まれた内部が複数に区分されていてもよい。これにより中材の偏在を抑えることができる。図面では、後側保温パック4が縫合線5で内部が複数に区分され、前側保温パック8が縫合線9で内部が複数に区分されている。
【0028】
後側保温パック4は、後身頃2において、着用者側に面して、着用者の肩甲骨から下方に延びるように配置されている。一方、メッシュ生地から構成される基材3は、着用者側に面して、後身頃2の身幅方向の中央部と体側部に配置されている。上衣1は、このように後身頃2に基材3と後側保温パック4が配されているため、着用者から発せられた過剰な熱を外部に逃がしながら、効果的に着用者を保温することが可能となる。なお、後身頃の身幅方向の中央部とは、着用者の背中の身幅方向の中心線を含む近傍部分を意味し、着用者の背骨に沿った部分に相当する。
【0029】
人体の上半身は、背中の身幅方向の中央部や体側部(すなわち脇の下付近)で特に発熱しやすく、当該部分から発せられた熱がスムーズに発散されない場合、当該部分からの発汗量が増加する。一方、汗が乾く際には身体から熱が奪われるため、発汗量の増加は身体の冷えにつながる。そのため、汗をかいた後の冷えも考慮すると、背中の身幅方向の中央部や体側部では、着用者から発せられた熱や蒸れが外部にスムーズに放出されるようにすることが好ましい。そのため上衣1では、メッシュ生地から構成された基材3が、着用者側に面して、後身頃2の身幅方向の中央部と体側部に配置されている。これにより、背中の身幅方向の中央部や体側部での通気性が高まり、当該部分から熱や蒸れがスムーズに外部に放出され、身体が過剰に温まりにくくなる。その結果、当該部分での発汗量が抑えられ、身体の冷えを防ぐことができる。
【0030】
一方、人体の背中は、肩甲骨からその下方にかけての部分で特に寒さを感じやすく、当該部分では保温性を高めることが好ましい。そのため上衣1では、後側保温パック4が、着用者側に面して、着用者の肩甲骨から下方に延びるように配置されている。このように後側保温パックを配置することで、後身頃の身幅方向の中央部や体側部に後側保温パックを設けなくても、上衣による保温性を確保することができる。
【0031】
また、後側保温パック4は、織布または編布に中材が包まれて構成されているため、後側保温パック4が後身頃3の着用者側に面するように配置されることにより、後側保温パック4が着用者に向かって膨らみ、着用者との密着性を高めることができる。そのため、着用者の背中の肩甲骨から下方にかけての部分では、後側保温パック4による保温性が高まるとともに、背中の身幅方向の中央部では、左右の後側保温パック4に挟まれて、熱や蒸れが拡散するための空間が確保され、熱や蒸れがスムーズに外部に放出されやすくなる
。すなわち、着用者の背骨に沿って、熱や蒸れを外部に逃がすための通気路が形成されることとなる。そのため、上衣1を、アウターウェアの内側に着用する衣料として用いたり、アウターウェアの裏地に用いたりした場合でも、左右の後側保温パック4の間の空間(通気路)を通って、熱や蒸れが上衣1の上方部から放出されやすくなる。本発明の上衣は、例えば機械的な排気手段や送風手段を特に設けなくても、熱や蒸れを自然拡散によって外部に放出することができる。
【0032】
上衣1はまた、後側保温パック4が、着用者の肩甲骨から下方に延びるように配置されているため、一般的なダウンジャケット等とは異なり、上衣1を着用した状態でも、後側保温パック4によって身体の動きが邪魔されにくくなり、上半身の運動性を確保することができる。
【0033】
後側保温パック4は、後身頃2の着用者側に面するように設けられる限り、基材3の着用者側に積層して設けられてもよく、基材3と身幅方向および/または身長方向に並んで設けられてもよい。すなわち後側保温パック4は、後身頃2の着用者側の表面に露出するように設けられていればよい。後側保温パック4が基材3と身幅方向および/または身長方向に並んで設けられる場合は、後側保温パック4が後身頃2の外側にも面していてもよい。
【0034】
後側保温パック4は、着用者の肩甲骨から腰(具体的には背中の臍の高さの部分)まで延びるように配置されることが好ましい。このように後側保温パック4を配置することで、後側保温パック4により効果的に着用者を保温することができ、また左右の後側保温パック4によって熱や蒸れを外部に逃がすための通気路が好適に形成されやすくなる。
【0035】
図1および
図2では、後側保温パック4は、着用者の肩甲骨から腰まで延びるように配置されているが、後側保温パック4は例えば着用者の肩まで延びていてもよい。しかし、上衣1を着用した際の運動性を高める点からは、後身頃2の肩の部分は基材3から構成されていることが好ましい。後側保温パック4は、例えば、後身頃2の20%以上50%以下の領域(より好ましくは25%以上40%以下の領域)に配されることが好ましい。
【0036】
後側保温パック4は、着用者の背中の左右両側に設けられることが好ましい。すなわち、後側保温パック4は、後身頃2の左側と右側にそれぞれ配置されることが好ましい。この際、後側保温パック4は、後身頃2の左右に3cm以上離間して配置されていることが好ましく、これにより、背中の身幅方向の中央部に熱や蒸れが拡散するための通気路が好適に形成されやすくなる。なお、左右の後側保温パックの離間距離とは、左右の後側保温パックの最近接距離を意味する(以下、各離間距離についても同様に解する)。
【0037】
後側保温パック4は、
図1および
図2に示すように、後身頃2の左右に離間して、着用者の肩甲骨付近で下方に向かって離間距離が広がるように配置されていることが好ましい。具体的には、後側保温パック4を身長方向に1/3ずつの長さで上方部と下方部とその間の中間部とに区分したとき、左右の後側保温パック4の離間距離が、上方部よりも中間部の方が広くなっていることが好ましい。
図1および
図2では、後側保温パック4がこのように配置されている。このように後側保温パック4を配置することにより、背中の身幅方向の中央部が、メッシュ生地から構成される基材3によって広く覆われ、背中からの熱が好適に発散されやすくなる。特に、背中の身幅方向の中央部は、肩甲骨のすぐ下の部分でより発熱しやすいため、このように後側保温パック4を配置することで、背中からの熱が発散されやすくなる。一方、着用者の背中で寒さを感じやすい部分は後側保温パック4で覆うことができるため、後側保温パック4による保温性を確保することができる。この場合、後身頃2の左側と右側に配置された後側保温パック4は、身幅方向に最大10cm以上離間していることが好ましく、15cm以上離間していることがより好ましく、また
25cm以下離間していることが好ましい。なお、左右の後側保温パック4の下方部の離間距離は、
図1に示すように、中間部よりも狭くてもよく、
図2に示すように、中間部と同幅であってもよく、また図面には示されていないが、中間部よりも広くてもよい。
【0038】
後側保温パック4の幅(身幅方向の最大幅)は、4cm以上が好ましく、8cm以上がより好ましく、また18cm以下が好ましく、15cm以下がより好ましい。このように後側保温パック4が形成されていれば、後側保温パック4による保温性が確保されるとともに、背中の身幅方向の中央部や体側部にメッシュ生地から構成される基材3が十分広い面積で設けられ、当該部分での通気性を確保しやすくなる。
【0039】
前身頃6においては、前側保温パック8が、着用者側に面して、着用者の左右の胸部から下方に延びるように配置されることが好ましい。一方、前身頃6において、メッシュ生地から構成される基材7は、着用者側に面して、前身頃6の身幅方向の中央部に配置されることが好ましく、体側部にも配置されることがより好ましい。このように前身頃6を構成することにより、着用者の上半身の前側において、着用者から発せられた過剰な熱を外部に逃がしながら、効果的に着用者を保温することが可能となる。なお、前身頃の身幅方向の中央部とは、着用者の上半身の前側の身幅方向の中心線を含む近傍部分を意味し、図面では、スライドファスナー10とその近傍に相当する。
【0040】
人体の上半身の前側では、胸部の中央部付近で特に発熱しやすく、当該部分から発せられた熱をスムーズに発散することで、当該部分での過剰な発熱や発汗を抑えることができる。また、前述したように、体側部(すなわち脇の下付近)も発熱しやすい。そのため
図1および
図2に示した上衣1では、メッシュ生地から構成される基材7を、着用者側に面して、前身頃6の身幅方向の中央部と体側部に配置し、これにより当該部分での通気性を確保している。
【0041】
一方、上半身の前側は、左右の胸部から下方にかけての部分で特に寒さを感じやすく、当該部分での保温性を高めることが好ましい。従って、前身頃6においては、前側保温パック8が、着用者側に面して、着用者の左右の胸部から下方に延びるように配置されることが好ましい。
【0042】
また、前側保温パック8は、織布または編布に中材が包まれて構成されているため、前側保温パック8が前身頃6の着用者側に面するように配置されることにより、前側保温パック8が着用者に向かって膨らみ、着用者との密着性を高めることができる。そのため、着用者の左右の胸部から下方にかけての部分では、前側保温パック8による保温性が高まるとともに、上半身の前側の身幅方向の中央部では、左右の前側保温パック8に挟まれて、熱や汗による蒸れが拡散するための空間が確保され、熱や蒸れがスムーズに外部に放出されやすくなる。そのため、上衣1を、アウターウェアの内側に着用する衣料として用いたり、アウターウェアの裏地に用いたりした場合でも、左右の前側保温パック8の間の空間(通気路)を通って、熱や蒸れが上衣1の上方部から放出されやすくなる。
【0043】
さらに、前側保温パック8が、着用者の左右の胸部から下方に延びるように配置されることにより、上衣1を着用した状態でも、前側保温パック8によって身体の動きが邪魔されにくくなり、上半身の運動性を確保することができる。
【0044】
前側保温パック8は、前身頃6の着用者側に面するように設けられる限り、基材7の着用者側に積層して設けられてもよく、基材7と身幅方向および/または身長方向に並んで設けられてもよい。すなわち前側保温パック8は、前身頃6の着用者側の表面に露出するように設けられていればよい。前側保温パック8が基材7と身幅方向および/または身長方向に並んで設けられる場合は、前側保温パック8が前身頃6の外側にも面していてもよ
い。
【0045】
前側保温パック8は、着用者の左右の胸部から脇腹(具体的には臍の横の部分)まで延びるように配置されることが好ましい。このように前側保温パック8を配置することで、前側保温パック8により効果的に着用者を保温することができ、また左右の前側保温パック8によって熱や蒸れを外部に逃がすための通気路が好適に形成されやすくなる。
【0046】
図1および
図2では、前側保温パック8は、着用者の左右の胸部から脇腹まで延びるように配置されているが、前側保温パック8は例えば着用者の肩まで延びていてもよい。しかし、上衣1を着用した際の運動性を高める点からは、前身頃6の肩の部分は基材7から構成されていることが好ましい。前側保温パック8は、例えば、前身頃6の20%以上50%以下の領域(より好ましくは25%以上40%以下の領域)に配されることが好ましい。
【0047】
前側保温パック8は、前身頃6の左側と右側にそれぞれ配置されることが好ましい。この際、前側保温パック8は、前身頃6の左右に3cm以上離間して配置されていることが好ましく、これにより、上半身の前側の中央部に熱や蒸れが拡散するための通気路が好適に形成されやすくなる。図面に示すように、前身頃6が左右に分離する場合は、左右の前側保温パック8の離間距離は、左右の前身頃6を接合した状態で測るものとする。
【0048】
前側保温パック8は、着用者の腕の動き(特に腕を着用者の前に持ってくる動き)をできるだけ阻害しないように配置されることが好ましい。この点から、前側保温パック8は、
図1に示すように、着用者の左右の胸部から下方かつ身幅方向の外方に延びていることが好ましい。このように前側保温パック8を配置することで、着用者が両腕を狭めるように動かした際に前側保温パック8がスムーズに身幅方向の内方に移動しやすくなり、着用者の腕の動きが阻害されにくくなる。
【0049】
前側保温パック8は、
図2に示すように、脇を締めた状態で着用者の上腕の高さに位置する部分が幅狭に形成されていることも好ましい。このように前側保温パック8が形成されていれば、着用者が両腕を狭めるように動かした際に、前側保温パック8によって着用者の腕の動きが阻害されにくくなる。
【0050】
前側保温パック8の幅(身幅方向の最大幅)は、4cm以上が好ましく、8cm以上がより好ましく、また18cm以下が好ましく、15cm以下がより好ましい。このように前側保温パック8が形成されていれば、前側保温パック8による保温性が確保されるとともに、胸部の中央部付近や体側部にメッシュ生地から構成される基材7が十分広い面積で設けられ、当該部分での通気性を確保しやすくなる。
【0051】
本発明の上衣は、これをそのままアウターウェアとして着用してもよいが、アウターウェアの内側に着用したり、アウターウェアの裏地として用いることが好ましい。すなわち、本発明の上衣はインナーウェアであることが好ましく、あるいは、アウターウェアとして防寒着の裏地に用いることが好ましい。本発明の上衣をインナーウェアとして用いたり、アウターウェア(防寒着)の裏地として用いることにより、保温性を効率的に高めることができる。またその結果、本発明の上衣の上に着用するアウターウェアの生地や、本発明の上衣を裏地に用いたアウターウェア(防寒着)の表地を、比較的薄手の材料から構成することができ、身体の運動性を高めることができる。すなわち、前側保温パックや後側保温パックにより保温性が確保され、かつ、前側保温パックや後側保温パックによって身体の動きが邪魔されにくくなるため、本発明の上衣を、登山やゴルフ等のアウトドアにおける防寒着に好適に適用することができる。
【0052】
本発明の上衣を、アウターウェアとしての防寒着の裏地に用いる場合、当該防寒着は、表地と裏地を有し、裏地が本発明の上衣を有するものとなる。このように構成された防寒着は、裏地(すなわち本発明の上衣)によって保温性が確保されるため、表地を比較的薄手の材料から構成することができ、運動性に優れたものとなる。防寒着としては、コート、ジャンパー、ウィンドブレーカー、レインウェア、スキーウェア等が挙げられる。
【0053】
防寒着の表地には、左側の後側保温パックと右側の後側保温パックの間の領域(すなわち背中の身幅方向の中央部)に、通気孔が形成されていることが好ましい。詳細には、通気孔は、表地の、左側の後側保温パックと右側の後側保温パックの間の領域と重なる部分に形成されていることが好ましい。本発明の上衣を裏地に用いた防寒着では、左側の後側保温パックと右側の後側保温パックの間の領域に熱や蒸れが拡散する通気路が形成されるため、表地の当該領域と重なる部分に通気孔が形成されれば、当該通気路を拡散した熱や蒸れが表地の通気孔から外部にスムーズに放出されやすくなる。通気孔は、後側保温パックの身長方向の中間点よりも上方側に設けられることが好ましく、後側保温パックの身長方向の上方側から1/3の地点よりも上方側に設けられることがより好ましい。
【0054】
通気孔は、表地の体側部に形成されていることも好ましい。すなわち、表地には、後側保温パックよりも身幅方向の外方の領域(詳細には表地の当該領域と重なる部分)に、通気孔が形成されていることが好ましい。表地の体側部に通気孔が形成されていれば、着用者の体側部から発せられた熱や汗による蒸れが、当該通気孔から外部にスムーズに放出されやすくなる。表地の体側部に設けられる通気孔は、脇部(着用者の脇の下)から10cm以内の領域に形成されることが好ましい。
【0055】
通気孔の形状は特に限定されない。通気孔は、例えば、円相当径として1mm〜10mm(好ましくは2mm〜8mm)で形成されればよい。