【構成】 排気弁装置10は、密閉したケース32を含み、ケースの上面に放出口44を形成し、ケース内にフロート46を設け、フロートの上面にパッキン54を取り付ける。ケース内に空気が入るとフロートが下がり、パッキンが放出口から離れ、放出口が開き、空気がそこから放出される。ケースの下部には、入口74がケース外で出口76がケース内にある流入管66および入口78がケース内で出口80がケース外にある流出管68が設けられる。流入管はケース内で上方に傾斜する傾斜管部72を含み、出口76が、傾斜管部の先端に形成され、流入管の入口78より高位に設けられる。流入管からの水の流入がなくなると、ケース内の水位が下がるが、傾斜管部に水が残り、出口76が封止される。
前記流入管は前記第1入口から前記ケース内において上方に延びる延長管部を有し、前記第1出口が前記第2入口より高位の前記延長管部の管端に形成される、請求項2記載の排気弁装置。
前記流入管は前記第1入口から前記ケース内において下方に延びる延長管部を有し、前記第1出口が前記第2入口より低位の前記延長管部の管端に形成される、請求項3記載の排気弁装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の排気弁装置では、必要な引継水位を確保するためには自由水面を高くしなれければならず、立ち上がり管や接続管を大きくする必要があり、大型化するという問題がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、排気弁装置およびサイホン式取水システムを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、小型化が可能な、排気弁装置およびサイホン式取水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および捕捉説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0009】
第1の発明は、密閉したケース、ケースの上端に設けられる排気弁部、ケース内に配置され、ケース内の水位に応じて排気弁部を開閉するフロート、ケースのフロートより下方に設けられ、ケースの外に配置される第1入口とケースの中に配置される第1出口を有する流入管、およびケースのフロートより下方に設けられ、ケースの中に配置されて第1出口と高低差を有する第2入口とケースの外に配置される第2出口を有する流出管を備える、排気弁装置である。
【0010】
第1の発明では、排気弁装置(30:実施例において相当する部分を例示する参照符号。以下、同様。)は、ケース(32)を含む。ケース(32)は、たとえば、側板(34)、底板(36)および天板(38)で密閉される。ケースの上端に排気弁部が設けられる。たとえば、天板に上方に延びる筒状部(40)が形成され、その筒状部の上端に放出口(44)が設けられ、その放出口の下方にフロート(46)が配置され、フロートの上端にパッキン(54)が形成され、放出口がパッキンで開閉される。一例としてこのようにして排気弁部(44、54)が形成される。この排気弁部は、ケース内に配置され、ケース内の水位に応じて上下するフロートによって開閉される。流入管(66)および流出管(68)は、ともにケースのフロートより下方に設けられる。流入管の第1入口(74)はケースの外に配置され、第1出口(76)はケースの中に配置される。流出管の第2入口(78)はケースの中に配置され、第2出口(80)はケースの外に配置される。ただし、第1出口と第2入口は、ケース内において、高低差を有して配置される。
【0011】
第1の発明においては、ケース内に溜まる水に含まれる空気は、上記排気弁部から放出される。また、ケース内の水が減少したとき、流出管からの水の流出が停止した状態で、上記の第1出口と第2入口との高低差に従って封水トラップが形成される。
【0012】
第1の発明によれば、封水トラップと排気弁装置を統合することで、確実に排気ができるうえ、確実に封水トラップを形成することもでき、2つの機能を持つ装置全体としては小型である。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属し、流入管は第1入口からケース内において上方に延びる延長管部を有し、第1出口が第2入口より高位の延長管部の管端に形成される、排気弁装置である。
【0014】
第2の発明では、流入管(66)の延長管部(72)は、たとえばケース(32)内において上方に延びる傾斜管部として形成され、第2入口より高位のその傾斜管部の管端に第1出口(76)が形成され、したがって第1出口は流出管(68)の第2入口(78)より高位とされ、その傾斜管部に残る水が封水トラップを形成する。
【0015】
第3の発明は、第1の発明に従属し、流入管の第1出口は流出管の第2入口より低位とされる、排気弁装置である。
【0016】
第3の発明では、流入管(66)の第1出口(76)は流出管(68)の第2入口(78)より低位とされ、ケース(32)内の水が減少するとき、水位が第2入口より低くなると、流出管から水が流出しなくなる。つまり、ケース内には流出管の第2入口より下方に水が溜まった状態である。第1出口が第2入口より低位にあるので、第1出口はその第2入口より下方に溜まった水の中に存在する。したがって、封水トラップは流入管に形成される。
【0017】
第4の発明は、第3の発明に従属し、流入管は第1入口からケース内において下方に延びる延長管部を有し、第1出口が第2入口より低位の延長管部の管端に形成される、排気弁装置である。
【0018】
第4の発明では、延長管部(82)は、たとえばケース(32)内において下方方に延びる垂下管部として形成され、第2入口より低位のその垂下管部の先端に第1出口が形成されるので、その第1出口が第2入口より下方に溜まった水の中に没入する。したがって、封水トラップは流入管に形成される。
【0019】
第5の発明は、水源の水を、堤体を越えるサイホン管により取水し、そのサイホン管の下流側に接続した給水管から圃場に給水する、サイホン式取水システムにおいて、給水管に第1ないし第4の発明のいずれかの排気弁装置を介挿したことを特徴とするサイホン式取水システムである。
【0020】
第5の発明では、サイホン管(16)が、堤体(12)を越えて設けられ、たとえば溜め池のような水源(14)の水を取水して、給水管(28)に供給する。排気弁装置(30)がその給水管の途中に介挿される。たとえば、流入管(66)第1入口(74)がサイホン管からの水を受け、流出管(68)の第2出口(80)が給水管に水を供給する。
【0021】
第5の発明によれば、封水トラップの機能と排気弁の機能とを統合して小型化した第1ないし第4の発明のいずれかの排気弁装置を用いるので、サイホン式取水システムをコンパクトにでき、排気性能と施工性の向上が期待できる。
【0022】
第6の発明は、水源の水を、堤体を越えるサイホン管により取水する、サイホン式取水システムであって、水源とは反対側の堤体の途中においてサイホン管に第1入口が接続される第1ないし第4の発明のいずれかの排気弁装置、および排気弁装置の第2出口から水が供給される減圧水槽を備え、圃場へは減圧水槽から自然流下によって給水する、サイホン式取水システムである。
【0023】
第6の発明では、サイホン管(16)が、堤体(12)を越えて設けられ、たとえば溜め池のような水源(14)の水を取水して、排気弁装置(30)に水を供給する。たとえば、流入管(66)第1入口(74)がサイホン管からの水を受ける。排気弁装置の流出管(68)の第2出口(80)から減圧水槽(86)に、接続管(84)を通して水を供給する。減圧水槽は大気に開放されているため、たとえば給水管(28)を経て、自然流下によって圃場に給水する。
【0024】
第6の発明によれば、サイホン管を長くする必要がないので、高低差の大きいサイホン管であっても安定して取水できる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、浮上する空気を留めるサイホントラップと呼ばれる管路区間を排気弁装置内に統合したので、システム全体の小型化が可能である。そして、そのような排気弁装置を利用するサイホン式取水システムでは、必要な引継水位を確保できるうえ、全体としてコンパクトにでき、排気性能と施工性の向上も期待できる。
【0026】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照して、この発明の一実施例のサイホン式取水システム(以下、単に「取水システム」と呼ぶ。)10では、堤体12によって堰き止められた溜め池のような水源14からサイホン管16で取水して、圃場18に給水する。なお、堤体12は基本的には水源14の側および圃場18の側がそれぞれ傾斜面として形成され、それらの傾斜面は堤体頂部から下方に向かうにつれて互いに離れる(広がる)ように形成される。しかしながら、堤体12の形状はそのような台形形状に限られるものではない。
【0029】
サイホン管16は、水源側管路16a、堤体頂部管路16bおよび給水側管路16cを含み、ポリエチレン等の合成樹脂製や金属製の管などを適宜接続することによって配管される。ここで、堤体頂部管路16bは、堤体12の頂部平坦部分に配管される管路である。また、水源側管路16aは、堤体頂部管路16bより水源14側に配管される管路であり、具体的には、水源14内のフロート(図示せず)に取り付けられた取水口(図示せず)から蛇腹状の取水ホース20を経て水源14側の傾斜部上端に至るまでの管路である。さらに、給水側管路16cは、堤体頂部管路16bより圃場18側に配管される管路であり、具体的には、圃場18側の傾斜部上端からサイホン仕切弁22に至るまでの管路である。なお、サイホン管16の径は、取水規模に応じて適宜設定され得るが、たとえば50‐300mmφである。
【0030】
堤体頂部管路16bには、抜気部接続継手24を介して気体捕捉タンク26が接続される。気体捕捉タンク26は、サイホン管16内で発生する空気(気体)を捕捉して一時的に溜めておくものである。
【0031】
給水側管路16cの下流端には、サイホン仕切弁22を介して給水管28が接続される。サイホン仕切弁22は、サイホンを起動する際にサイホン管16の下流端を止水して、注水した呼び水をサイホン管16内に留めておくための仕切弁である。
【0032】
図1の取水システム10では、給水管28の途中に、この発明の一実施例である排気弁装置30が介挿される。ただし、排気弁装置30は、その前段のサイホン仕切弁22と同様に、
図1に示すように、土中に埋設される。
【0033】
排気弁装置30は、
図2に示すように、たとえば塩化ビニールのような樹脂または鉄などの金属からなり、直径が一例として500‐600mm程度の円筒形状のケース32を含む。ケース32は側板34、底板36および天板38によって密封されている。
【0034】
天板38のほぼ中央には、上方に立ち上がる筒状部40が設けられる。筒状部40の上端は開口され、その上端には、放出口板42がたとえばボルト締め等の手段によって、取り付けられる。ケース32を含んで、底板36から筒状部40の上端までの高さが一例として1315mmである。
【0035】
放出口板42の中央には、一例として8mm程度の直径を有する放出口44が形成される。放出口44は、ケース32内に入り込んだ空気を大気中に放出するための孔である。
【0036】
放出口44の下方には円筒状のフロート46が、フロート保持部48によって、上下動可能に、保持される。フロート保持部48は、フロート46を載せてそれ以上の降下を止めるたとえば4角形の支持板50およびその支持板50を、4隅で放出口板42から吊り下げる棒部材52を含む。
【0037】
フロート46の頂上にはたとえばゴムからなるパッキン54が固着されていて、ケース32内の水によってフロート46が最上位に押し上げられたとき、パッキン54が放出口44をその下端において封止する。他方、たとえば
図2に示すようにフロート46が放出口44から離れているときには、その放出口44は当然開放され、そこから空気が放出され得る。つまり、この放出口44とパッキン54が、協働して、ケース32内の空気を排出するための排気弁部として機能する。
【0038】
ケース32内において、空気をできるだけ放出口44に集めるため、ケース32の上端内部には、天板38と側板部34とに差し渡された傾斜板56が形成される。傾斜板56は放出口44に向かって互いの間隔が狭くなるように傾斜される。そのため、水中から離脱してケース32の上部に集まった空気は、傾斜板56の内面に沿ってさらに放出口44の方向に導かれ、筒状部40から放出口44に到る。つまり、傾斜板56を設けたことによって、ケース32の内部上端角に空気溜まりが形成されるのが防止でき、かつ空気を放出口44へ誘導できるので、ケース32内の空気が効率的に排出され得る。
【0039】
天板38の上方は、蓋受け(リング)57によって支持された、たとえば塩化ビニールやコンクリートなどからなる防護ハット58で覆われる。この防護ハット58が地表に露出するように、排気弁装置30が埋設される。
【0040】
天板38に設けられた開口に一端が接続され、他端がケース32内を経て側板34の上部を経て外方に引き出されるドレン接続口60が設けられる。このドレン接続口60は、放出口44から空気と共に放出される水や、防護ハット58を通して浸入した雨水を、天板38から排水する。ただし、ドレン接続口60はケース32内を通るけれども、ケース32の密閉状態は保持されるように取り付けられている。
【0041】
ケース32の側板34のほぼ最下部には、ドレン排管62が取り付けられる。ドレン排管62は、ケース32の底部に溜まる汚泥を排出するための配管であり、ケース32の底部には、このドレン排管62に汚泥を導くための傾斜板64が設けられる。ただし、このドレン排管62は、通常は閉じられていて、必要なときに開かれて、ケース32内から汚泥を取り出す。ケース32の下部はこのように傾斜板64を設置することによって容積を減じているため、ケース32内に残る貯留水(死水)を可及的減じることができる。
【0042】
ケース32の側板34の下部(底板36から側板34の高さの1/3程度の位置)に、流入管66が設けられ、その流入管66と略同じ高さに流出管68が設けられる。一例として、流入管66および流出管68の軸中心の位置は、ケース32の上端(天板38の上面)から715mmの位置に設定されている。ちなみに、防塵ハット58の上端からだと1000mmになる。
【0043】
流入管66は、側板34からそのまま水平方向に外方に延びる水平直管部70と、ケース32内においてその水平直管部70から延長されて上方へ傾斜する傾斜管部(延長管部)72を含む。流入管66の水平直管部70の入口74はケース32の外部にあり、延長管部である傾斜管部72の出口76はケース32内にある。流出管68は水平直管だけで形成され、ケース32内に、ラッパ状に拡径された入口78があり、ケース32の外に出口80がある。
【0044】
なお、この実施例では、流入管66および流出管68のそれぞれの軸中心の位置は同じ高さ位置に設定されているが、これらは同じ高さである必要はない。さらに、流入管66および流出管68の管径は、必要な用水量によるが、一例として、150φ、200φあるいは250φなどに設定される。
【0045】
図2実施例では、流入管66の出口76が、ケース32内において、流出管68の入口78より高い位置に配置される。
【0046】
サイホンが起動された給水時には、給水管28を通った水が流入管66の入口74から入って出口76からケース32内に流入すると、その水はケース32内に徐々に溜まり、やがて流出管68の入口78まで水位が上がると、ケース32内の水は、流出管68から、給水管28の下流に流れ出す。給水管28から水が流れているときは、このように流出管68から水が流れ続ける。
【0047】
しかしながら、給水管28からの水が止まり、流入管66の入口74から水がケース32内に入らなくなると、ケース32内の水位が徐々に下がり、やがて流出管68から水が流出しなくなる。この状態では、ケース32内の水位は、流出管68の入口(取水口)78より下に下がる。しかしながら、流入管66の傾斜管部72には水が残ったままである。したがって、この傾斜管部72に残った水が封水トラップ(サイホントラップ)となり、空気が給水管28を通っての堤頂への進入を遮断することができる。
【0048】
つまり、この実施例の排気弁装置30では、流入管66をケース32内で立ち上げることによって、流入管66の吐出し口(出口76)を流出管68の取水入口(入口78)より高くして封水トラップを形成する。したがって、ケース32内の水位が下がっても、立ち上り管(傾斜管部72)内にはため池(
図1:水源14)からの水が残り、空気の堤頂への進入を遮断する。
【0049】
このように、この実施例の排気弁装置30によれば、給水管28内の水に混入している空気を効果的に排出するとともに、給水管28からの水が遮断されても、サイホントラップが排気弁装置30内で形成されるため、給水管28内の空気が堤頂に達してサイホンが破られてしまうということはない。しかも、ケース32を密閉状態に維持しているので、引継水頭(圃場18に配水できる水頭)を確保できる。
【0050】
この実施例の排気弁装置30によれば、上述のような封水トラップと排気弁装置を統合したことで、両者を別々に設ける場合に比べて大幅にコンパクトにでき、設置スペースを小さくすることができる。さらに、装置を簡略化でき、排気性能と施工性を向上できる。そのうえ、両者を別々に設ける場合であれば別々であった、排気弁用メンテナンス口が1箇所でよくなり、メンテナンスも簡便になる。
【0051】
図1の取水システム10においては、封水トラップの機能と排気弁の機能とを統合して小型化したこのような排気弁装置30を利用するので、取水システム10をコンパクトにできる。しかも、従来のように、別途にサイホントラップを形成するためには給水管に一定の高低差を形成する必要があり、そのためにある程度の管路長(一例として7m以上)を必要とするところ、別途にサイホントラップを形成する必要がないので、取水システム10を施工する際の施工性の向上が期待できる。
【0052】
なお、
図2実施例においては、流入管66の傾斜管部72は、一例として水平に対して45°で傾斜されている。この傾斜角度は特に限定される訳ではなく、流入管66の出口76が入口74および流出管68の入口78に対して上位にあればよいが、流入管66から水がケース32内に流入するとき、汚泥やごみが水圧によってケース32内に押し出され得る角度である必要がある。汚泥やごみが傾斜管部72内に残ると水の流れが悪くなり、やがて流入管66が詰まってしまう恐れがあるからである。
【0053】
図3は排気弁装置30の他の実施例を示す。
図3において、
図2と同じもしくは同様の部分には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0054】
図2の実施例では上述のように、流入管66の水平直管部70から延長した傾斜管部72を設け、流入管66の出口76を入口74に対して上位にすることによって封水トラップを形成するようにした。これに対して、
図3の実施例では、流入管66の水平直管部70から延長した垂下管部82を設け、流入管66の出口76を入口74に対して下位に設定した。ただし、流出管68は
図2の実施例と同様に水平直管部だけで形成され、流入管66および流出管68のそれぞれの軸中心の位置は同じまたはほぼ同じ高さ位置に設定される。ただし、
図2実施例と同じように、これらは同じ高さである必要はなく、少なくとも流入管66の出口76側が流出管68の管底より低位であればよい。
【0055】
給水時には、給水管28を通った水が流入管66の入口74から入って出口76からケース32内に流入すると、その水はケース32内に徐々に溜まり、やがて流出管68の入口78まで水位が上がると、ケース32内の水は、流出管68から、給水管28の下流に流れ出す。給水管28から水が流れているときは、このように流出管68から水が流れ続ける。
【0056】
給水管28からの水が止まり、流入管66の入口74から水がケース32内に入らなくなると、ケース32内の水位が徐々に下がり、やがて流出管68の入口78から水が流出しなくなる。この状態では、ケース32内の水位は、流出管68の入口(取水口)78より下に下がる。しかしながら、流入管66の延長管部である垂下管部82の出口76は、流出管68の入口78より下位にあるため、ケース32内に残る水の中にある。つまり、流入管66の出口76は、流出管68の入口78より下方に溜まった水の中に没入し、水で塞がったままである。したがって、この流入管66が封水トラップとなり、空気が給水管28を通っての堤頂への進入を遮断することができる。
【0057】
つまり、この実施例の排気弁装置30では、流入管66をケース32内で立ち下げることによって、流入管66の吐出し口(出口76)を、流出管68の取水入口(入口78)より低くして封水トラップを形成する。したがって、ケース32内の水位が下がっても、立ち上り管(傾斜管部72)内にはため池(
図1:水源14)からの水が残り、空気の堤頂への進入を遮断することができる。
【0058】
なお、
図3実施例においては、流入管66の出口76をケース32の下部に配置するように垂下管部82を形成する必要から、流入管66および流出管68の軸中心から下のケース部分を
図2の実施例に比べて200mm長くしている。したがってケース32の底板36から筒状部40の上端までが、一例として、1515mmとなる。したがって、
図3実施例の排気弁装置30を用いる場合、
図2実施例のものを用いるより少し深く掘る必要がある。
【0059】
図4はこの発明の他の実施例の排気弁装置30を示す。この実施例の排気弁装置30のケース32は、先の実施例の排気弁装置のケース32(
図2、
図3)に比べて大きくされているが、その他は
図3実施例に類似している。ただし、放出口44とパッキン54で形成する弁部をフロート46で開閉する構造および防護ハット58が被せられている構造は、先の実施例の構造と同様である。なお、先の実施例ではドレン接続口60は天板38からケース32内を通るように設けられていたが、この実施例では、防護ハット58の下方からケース32内を通らないドレン接続口60aが、それぞれの放出口44に関連して設けられている。
【0060】
そして、この実施例では、流入管66および流出管68は、いずれも水平直管からなり、流入管66の入口74はケース32の外部にあり、流入管66のラッパ状に拡径された出口76はケース32内にある。流出管68のラッパ状に拡径された入口78はケース32内にあり、ケース32の外に流出管68の出口80がある。
【0061】
ただし、この実施例では、流出管68の管軸の高さ位置が流入管66の管軸高さ位置より高くなるように、流入管66および流出管68がケース32の側面34に取り付けられている。つまり、流入管66の出口76は流出管68の入口78より下位にある。一例として、そのような高低差は、500mmである。
【0062】
図4の実施例の排気弁装置30において、給水時には、給水管28(
図1)を通った水が流入管66の入口74から入って出口76からケース32内に流入すると、その水はケース32内に徐々に溜まる。流出管68の入口78まで水位が上がると、ケース32内の水は、流出管68から、給水管28の下流に流れ出す。給水管28から水が流れているときは、このように流出管68から水が流れ続ける。
【0063】
給水管28からの水が止まり、流入管66の入口74から水がケース32内に入らなくなると、ケース32内の水位が徐々に下がり、やがて流出管68の入口78から水が流出しなくなる。この状態では、ケース32内の水位は、流出管68の入口(取水口)78より下に下がる。しかしながら、流入管66の出口76は、流出管68の入口78より下位にあるため、ケース32内に残る水の中にある。つまり、流入管66の出口76は、流出管68の入口78より下方に溜まった水の中に没入し、水で塞がったままである。したがって、この流入管66が封水トラップとなり、空気が給水管28を通っての堤頂への進入を遮断することができる。
【0064】
この実施例では、流入管66に延長管部を形成していないので、ケース32の内部の構造が簡略化されており、そのためにケース32内での水頭損失が小さくなり、効率的である。さらに、流入管66および流出管68をともに短い直管だけで形成したので、コストを低減できる。さらに、流入管66と流出管68に同じ短直管を用いるようにすれば、コストをさらに低減することができる。
【0065】
なお、この実施例では、流入管66と流出管68との高低差を従来サイホントラップのh=500で設計しているので、従来にサイホン等で実証されているサイホントラップh=500以上を確保できる。
【0066】
たとえば
図1のような取水システム10において堤体12の高さが高いと、サイホン管16内の水の流速が大きくなり、その摩擦による圧力損失が生じ、サイホンが破れることがある。このような場合には、
図5に示すような取水システム10が好適する。
【0067】
取水システム10では、サイホン管16の給水側管路16cは、堤体12の、水源14(
図1)とは反対側の圃場側の斜面に設置した排気弁装置30の流入管66の入口74(
図2または
図3)に直接接続される。ただし、
図1実施例で示したサイホン仕切弁22は
図4では省略しているが、排気弁装置30がこの仕切弁22とともに土中に埋設されるのは、
図1実施例と同様である。
【0068】
排気弁装置30に供給されて、流出管68の出口80(
図2または
図3)から吐出された水は、接続管84によって、減圧水槽86内に入れられる。
【0069】
減圧水槽86は、たとえばレジンコンクリートなどで形成され、接続管84の先端にはフロート弁88が設けられる。このフロート弁88は、フロート90によって開閉される。つまり、減圧水槽86内の水位が下がればフロート90が下降してフロート弁88が開くので、サイホン管16cから給水される。当然、水槽86内の水位が一定以上であれば、フロート弁88は閉じ、サイホン管16cからの給水が停止される。そして、減圧水槽86には給水管28が接続され、給水管28には減圧水槽86から水が流入する。ただし、減圧水槽86は大気に開放されているので、減圧水槽86から給水管28へは自然流下で給水される。
【0070】
図5の実施例では、堤体12の途中でサイホン管16に接続した減圧水槽86を設置し、そこからは自然流下で給水するようにしたので、堤体12の高さが高くても、サイホン管16を長くする必要がない。したがって、サイホン管16内の流速が過大にならず、サイホン状態を安定して維持できる。
【0071】
この場合、
図2または
図3実施例の排気弁装置30では、サイホントラップ(封水トラップ)と排気弁とを統合して前提として小型化されているので、仮に堤体12の圃場側斜面を掘削して平坦部を形成する必要がある場合であっても、平坦部の面積を最小にできるので、掘削量を最小に抑えることができる。
【0072】
なお、上で挙げた具体的な材料や寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。