【解決手段】水処理システム1は、被冷却装置131へ供給するための循環水W2及び被冷却装置131から返送される循環水W2を冷却する冷却塔120と、循環水W2を冷却塔120と被冷却装置131との間で循環させる循環水ラインL20と、循環水W2に殺菌剤を添加する殺菌剤添加手段125と、循環水W2の酸化還元電位を検出する酸化還元電位検出手段126と、循環水W2の塩素濃度を検出する塩素濃度検出手段133と、酸化還元電位に基づいて殺菌剤添加手段を制御する酸化還元電位制御モードと、塩素濃度に基づいて殺菌剤添加手段を制御する塩素濃度制御モードとで、殺菌剤添加手段を制御する殺菌剤制御部100と、を備え、殺菌剤制御部100は、所定の移行条件に基づいて制御モードを切り換える。
前記殺菌剤制御部は、前記酸化還元電位制御モードで前記殺菌剤添加手段を制御する場合であっても、前記塩素濃度検出手段でバックアップ塩素濃度として塩素濃度を検出し、前記バックアップ塩素濃度が所定の値を上回る場合には、酸化還元電位制御モードから前記塩素濃度制御モードに制御モードを切り換える、請求項1に記載の水処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の水処理システム1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の水処理システム1の全体構成図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態に係る水処理システム1は、空調機や冷凍機に組み込まれた熱交換器等の被冷却装置131を冷却するために、循環水W2(冷却水)を循環させるシステムである。循環水W2は、その節約を図る観点から、冷却塔120で冷却しながら循環して用いられる。本実施形態において、冷却塔120は、いわゆる開放式冷却塔である。
【0017】
本実施形態の水処理システム1は、主な構成として、冷却塔120と、被冷却装置131と、殺菌剤添加手段としての殺菌剤添加装置125と、酸化還元電位検出手段としてのORPセンサ126と、塩素濃度検出手段としての塩素濃度センサ133と、制御部100と、を備える。水処理システム1は、主なラインとして補給水ラインL10と、循環水ラインL20と、排水ラインL30と、を備える。なお、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、
図1において、制御部100と被制御対象装置との電気的接続線の図示については、省略している。
【0018】
冷却塔120は、被冷却装置131へ供給するための循環水W2及び被冷却装置131から返送される循環水W2を冷却する設備である。詳細には、冷却塔120は、補給水W1が供給されると共に、補給水W1を循環水W2として被冷却装置131へ供給し、被冷却装置131から返送される循環水W2を冷却する設備である。冷却塔120は、塔本体121と、貯留部122と、を備える。また、冷却塔120には、循環水ラインL20と、補給水ラインL10と、排水ラインL30とが接続されている。
【0019】
塔本体121は、冷却塔120の外郭を形成する筐体である。塔本体121は、散水部、ファン、開口部、ルーバー、充填材等からなる循環水冷却部(図示せず)を有する。塔本体121の下部には、貯留部122が設けられている。循環水W2は、循環水冷却部により冷却され、貯留部122に落下する。
【0020】
貯留部122は、循環水冷却部で冷却された循環水W2を貯留する部位である。貯留部122は、塔本体121の下部に設けられている。貯留部122の底部には、循環水ラインL20(詳細には、第1循環水ラインL21)及び排水ラインL30(詳細には、第2排水ラインL32)が接続されている。貯留部122に貯留された循環水W2は、第1循環水ラインL21を介して被冷却装置131へ供給される。また、貯留部122の内部には、排水ラインL30(詳細には、第1排水ラインL31)の上流側の端部としてのオーバフロー口138が配置されている。貯留部122には、給水栓137、殺菌剤添加装置125及びORPセンサ126が設けられている。
【0021】
殺菌剤添加装置125は、循環水W2に殺菌剤を添加する装置である。殺菌剤添加装置125は、主な構成として、タンクと、ポンプと、逆止弁と、導入流路とを備える。また、殺菌剤添加装置125は、制御部100と電気的に接続されている。なお、後述するように、制御部100は、殺菌剤添加装置125の殺菌剤の添加(薬注)方式を選択可能に構成される。
【0022】
殺菌剤添加装置125のタンクは、循環水W2の水質を改善するための殺菌剤を貯留する容器である。殺菌剤添加装置125のタンクは、導入流路を介して貯留部122に接続される。本実施形態においては、殺菌剤添加装置125のタンクには、液状の殺菌剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム、臭化ナトリウム等)又は固形の殺菌剤(例えば、塩素化イソシアヌル酸等の塩素固形剤)が貯留されている。殺菌剤添加装置125が循環水W2に塩素固形剤(塩素化イソシアヌル酸等)を添加する場合の変形例については、後述する(
図3参照)。
【0023】
殺菌剤添加装置125のポンプ(不図示)は、タンクに貯留された殺菌剤を、導入流路を介して、冷却塔120の貯留部122に向けて吐出する。殺菌剤添加装置125の運転(駆動及び停止)は、制御部100からの駆動信号により制御される。
【0024】
殺菌剤添加装置125の逆止弁(不図示)は、殺菌剤添加装置125の導入流路の所定箇所に配置される。逆止弁は、殺菌剤が吐出された場合には、タンクから貯留部122に向けて殺菌剤を流通させる。一方で、逆止弁は、循環水W2が意図せずにタンクに向けて逆流することを防ぐ。
【0025】
ORPセンサ126は、循環水W2の酸化還元電位を検出酸化還元電位として検出する装置である。詳細には、冷却塔120(貯留部122)に貯留された循環水W2の酸化還元電位(以下、「酸化還元電位値ORP」ともいう)を検出する装置である。ORPセンサ126は、制御部100と電気的に接続されている。ORPセンサ126で検出された酸化還元電位値ORPは、制御部100へ送信される。本実施形態においては、ORPセンサ126は、リアルタイムで酸化還元電位値ORPを検出し、制御部100へ酸化還元電位値ORPを送信する。なお、「酸化還元電位」は、循環水W2の酸化力(殺菌作用)が強くなる程、正の値で大きい値を示す。つまり、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を増量するほど、酸化還元電位は正の値で大きい値を示す。
【0026】
循環水ラインL20は、循環水W2を冷却塔120と被冷却装置131との間で循環させるラインである。循環水ラインL20は、第1循環水ラインL21と、第2循環水ラインL22とを有する。
【0027】
第1循環水ラインL21は、冷却塔120の貯留部122と被冷却装置131とを接続する。貯留部122に貯留された循環水W2は、第1循環水ラインL21を介して被冷却装置131に供給される。第1循環水ラインL21の途中には、循環水ポンプ132が設けられている。
【0028】
循環水ポンプ132は、循環水ラインL20(第1循環水ラインL21、第2循環水ラインL22)の上流側から下流側へ向けて、循環水W2を吐出する。循環水ポンプ132は、制御部100と電気的に接続されている。循環水ポンプ132の運転(駆動及び停止)は、制御部100から出力されるポンプ運転信号により制御される。
【0029】
被冷却装置131は、循環水W2による冷却が必要な熱交換器等の各種装置である。被冷却装置131は、例えば、各種の化学プラントのターボ冷凍機や吸収冷凍機、建築物の空調用冷却機、食品工場の冷水製造機や真空冷却機等である。
【0030】
第2循環水ラインL22は、被冷却装置131と冷却塔120とを接続するラインである。被冷却装置131において、熱交換により加温された循環水W2は、第2循環水ラインL22を介して冷却塔120の循環水冷却部(図示せず)に回収される。本実施形態においては、第2循環水ラインL22の途中には、塩素濃度センサ133が設けられている。
【0031】
塩素濃度センサ133は、循環水W2の塩素濃度を検出塩素濃度として検出する装置である。詳細には、塩素濃度センサ133は、第2循環水ラインL22を流通する循環水W2の塩素濃度(以下、「塩素濃度値CL」ともいう)を検出する装置である。塩素濃度センサ133は、制御部100と電気的に接続されている。塩素濃度センサ133で検出された塩素濃度値CLは、制御部100へ送信される。本実施形態においては、塩素濃度センサ133は、所定の時間間隔で塩素濃度値CLを検出し、制御部100へ塩素濃度値CLを送信する。なお、殺菌剤に含まれる塩素は、循環水W2において、酸化力(殺菌作用)を有する。循環水W2の塩素濃度が高い程、循環水W2の酸化力(殺菌作用)が強くなる。つまり、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を増量するほど、塩素濃度は高く検出される。
【0032】
本実施形態においては、塩素濃度センサ133は、間欠的に循環水W2の塩素濃度を検出塩素濃度として検出する装置である。具体的には、塩素濃度センサ133は、第2循環水ラインL22から循環水W2の一部を採取し、採取した循環水W2に呈色試薬を添加して反応させ、この反応による循環水W2の発色強度を測定することで循環水W2の残留塩素濃度を測定する比色式のセンサである。このような塩素濃度センサ133は、例えば、特開2007−93398号公報等に記載されたものであり、既に知られたものである。
【0033】
水処理システム1は、補給水W1を供給源(図示せず)から冷却塔120に供給するラインとして、補給水ラインL10を有する。補給水ラインL10は、第1補給水ラインL11と、第2補給水ラインL12と、第3補給水ラインL13を有する。
【0034】
第1補給水ラインL11は、補給水W1の供給源(図示せず)と、第2補給水ラインL12及び第3補給水ラインL13の上流側の端部(分岐部)とを接続するラインである。第1補給水ラインL11の上流側は、補給水W1の供給源(図示せず)に接続される。一方、第1補給水ラインL11の下流側は、第2補給水ラインL12と第3補給水ラインL13とに分岐している。第1補給水ラインL11の途中には、流量センサFMが設けられている。
【0035】
流量センサFMは、補給水W1の供給量を検出する装置である。流量センサFMは、制御部100と電気的に接続されている。流量センサFMから出力されたパルス信号は、制御部100へ送信される。
【0036】
第2補給水ラインL12の下流側の端部は、冷却塔120の貯留部122に接続されている。第2補給水ラインL12の途中には、補給水バルブ136が設けられている。
【0037】
補給水バルブ136は、第2補給水ラインL12を開閉することにより、貯留部122に補給水W1を強制的に供給する給水設備である。補給水バルブ136は、制御部100と電気的に接続されている。補給水バルブ136における弁体の開閉は、制御部100から出力される補給水バルブ駆動信号により制御される。
【0038】
第3補給水ラインL13の下流側の端部は、冷却塔120の塔本体121に接続されている。第3補給水ラインL13の下流側の端部には、給水栓137が設けられている。給水栓137は、貯留部122に貯留される循環水W2の水位(即ち、水量)を管理するボールタップ式の給水設備である。循環水W2の蒸発や飛散損失により貯留部122の水位が低下すると、給水栓137のボールタップが作動し、第3補給水ラインL13を経由して、貯留部122に補給水W1が供給される。
【0039】
水処理システム1は、循環水W2を冷却塔120から系外に排出するラインとして排水ラインL30を有する。排水ラインL30は、第1排水ラインL31と、第2排水ラインL32と、を有する。
【0040】
第1排水ラインL31は、貯留部122内の循環水W2が所定の水位を上回った場合に、循環水W2の一部を冷却塔120から系外に排出するラインである。第1排水ラインL31の上流側の端部は、循環水W2のオーバフロー口138を形成する。オーバフロー口138は、給水栓137の管理水位よりも上方に開口している。オーバフロー口138から、第1排水ラインL31は、下方に延びている。第1排水ラインL31の下流側の端部は、貯留部122の外部(系外)に通じている。
【0041】
第2排水ラインL32は、貯留部122内の循環水W2の一部(又は全部)を冷却塔120から系外に排出するラインである。第2排水ラインL32の上流側の端部は貯留部122の底部に接続されている。第2排水ラインL32の途中には、排水バルブ139が設けられている。第1排水ラインL31の下流側の端部は、貯留部122の外部(系外)に通じている。
【0042】
排水バルブ139は、第2排水ラインL32を開閉することにより、貯留部122内の循環水W2の一部(又は全部)を冷却塔120から強制的に系外に排出する給水設備である。排水バルブ139における弁体の開閉は手動で行われる。
【0043】
制御部100は、水処理システム1における各部の動作を制御する。制御部100の機能は、CPU及び内部メモリ含むマイクロプロセッサ(図示せず)により実現される。以下、制御部100の機能の一部について説明する。
【0044】
制御部100は、循環水W2に対する必要な添加量の殺菌剤を循環水W2に添加するように殺菌剤添加装置125を制御する。また、制御部100は、検出された水質に基づいて殺菌剤添加装置125を制御する殺菌剤制御部として機能する。
【0045】
制御部100は、殺菌剤添加装置125の殺菌剤の添加(薬注)方式を選択可能に構成される。以下、代表的な添加(薬注)方式について説明する。
【0046】
<タイマ薬注>
タイマ薬注が選択された水処理システム1において、殺菌剤添加装置125は、予め設定された時間間隔に基づいて、循環水W2に殺菌剤を添加する。この場合、制御部100は、循環水W2に対する必要な殺菌剤の添加量に応じて、時間間隔を適宜に設定できる。
【0047】
<流量比例薬注>
流量比例薬注が選択された水処理システム1において、殺菌剤添加装置125は、流量センサの測定情報(例えば、補給水W1の流量)に基づいて、循環水W2に殺菌剤を添加する。具体的には、殺菌剤添加装置125は、補給水W1の水量(流量)と予め設定された比例定数に基づいて、循環水W2に殺菌剤を添加する。この場合、制御部100は、循環水W2に対する必要な殺菌剤の添加量に応じて、比例定数を適宜に設定できる。
【0048】
殺菌剤制御部としての制御部100は、検出酸化還元電位に基づいて殺菌剤添加装置125を制御する酸化還元電位制御モードと、検出塩素濃度に基づいて殺菌剤添加装置125を制御する塩素濃度制御モードとで、殺菌剤添加装置125を制御する。殺菌剤制御部としての制御部100の機能について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態の酸化還元電位制御モードと塩素濃度制御モードとの間の状態遷移図である。
【0049】
まず、酸化還元電位制御モードについて説明する。
〔酸化還元電位制御モード〕
酸化還元電位制御モードは、制御部100が酸化還元電位値ORPに基づいて殺菌剤添加装置125を制御する場合の制御モードである。詳細には、酸化還元電位制御モードは、制御部100が酸化還元電位値ORPに基づいて循環水W2に対する必要な添加量の殺菌剤を循環水W2に添加するように殺菌剤添加装置125を制御することで、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を調整する制御モードである。より詳細には、酸化還元電位制御モードにおいて、制御部100は、酸化還元電位値ORPが酸化還元電位目標上限値ORPmaxと酸化還元電位目標下限値ORPminとにより規定される酸化還元電位目標範囲に収まるように、殺菌剤添加装置125を制御する。例えば、酸化還元電位値ORPが酸化還元電位目標上限値ORPmaxを上回る場合には、制御部100は、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を減量するように殺菌剤添加装置125を制御する。反対に、酸化還元電位値ORPが酸化還元電位目標下限値ORPminを下回る場合には、制御部100は、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を増量するように殺菌剤添加装置125を制御する。そのため、酸化還元電位制御モードで殺菌剤添加装置125が適切に制御されている場合には、酸化還元電位値ORPが酸化還元電位目標範囲に収まる。
【0050】
また、制御部100は、酸化還元電位制御モードで殺菌剤添加装置125を制御する場合であっても、塩素濃度センサ133で塩素濃度値CLを取得する。なお、酸化還元電位制御モードにおいて制御部100が取得する塩素濃度値CLを、バックアップ塩素濃度又はバックアップ塩素濃度値CLともいう。酸化還元電位制御モードにおいて、制御部100は、バックアップ塩素濃度値CLが所定の値(塩素濃度閾値T)を上回るか否かを比較する。
【0051】
続いて、塩素濃度制御モードについて説明する。
〔塩素濃度制御モード〕
塩素濃度制御モードは、制御部100が塩素濃度値CLに基づいて殺菌剤添加装置125を制御する場合の制御モードである。詳細には、塩素濃度制御モードは、制御部100が塩素濃度値CLに基づいて循環水W2に対する必要な添加量の殺菌剤を循環水W2に添加するように殺菌剤添加装置125を制御することで、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を調整する制御モードである。塩素濃度制御モードにおいて、制御部100は、塩素濃度値CLが塩素濃度目標上限値CLmaxと塩素濃度目標下限値CLminとにより規定される塩素濃度目標範囲に収まるように、殺菌剤添加装置125を制御する。例えば、塩素濃度値CLが塩素濃度目標上限値CLmaxを上回る場合には、制御部100は、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を減量するように殺菌剤添加装置125を制御する。反対に、塩素濃度値CLが塩素濃度目標下限値CLminを下回る場合には、制御部100は、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を増量するように殺菌剤添加装置125を制御する。そのため、塩素濃度制御モードで殺菌剤添加装置125が適切に制御されている場合には、塩素濃度値CLが塩素濃度目標範囲に収まる。
【0052】
なお、本実施形態においては、酸化還元電位目標範囲(酸化還元電位制御モードにおける目標範囲)、及び塩素濃度目標範囲(塩素濃度制御モードにおける目標範囲)は、循環水W2の水質条件(例えば、pH)や、循環水W2に対する必要な殺菌剤の添加量等に応じて適宜に設定される。具体的には、試運転時における塩素濃度値CLと酸化還元電位値ORPとの相関を取り、例えば塩素濃度値CLが0.1〜0.2[mg/L]のときの酸化還元電位値ORPが290〜300[mV]であれば、酸化還元電位目標範囲は290〜300[mV]に設定される。また、塩素濃度目標範囲も同様に、適宜に設定される。
【0053】
続いて、酸化還元電位制御モードから塩素濃度制御モードに制御モードを切り換える移行条件(イベントE1)について説明する。
図2に示すように、制御部100は、イベントE1が発生すると酸化還元電位制御モードから塩素濃度制御モードに制御モードを切り換える。以下に、イベントE1が発生してから、制御部100が制御モードを酸化還元電位制御モードから塩素濃度制御モードに切り換えるまでの動作の一例について説明する。
【0054】
酸化還元電位制御モードでは、制御部100は、酸化還元電位値ORPに基づいて循環水W2に対する必要な添加量の殺菌剤を循環水W2に添加するように殺菌剤添加装置125を制御する。そのため、酸化還元電位値ORPが正確に検出される状況では、制御部100は、制御モードを塩素濃度制御モード切り換えることなく、酸化還元電位制御モードで、循環水W2に対する必要な添加量の殺菌剤を循環水W2に添加するように殺菌剤添加装置125を制御できる。
【0055】
また、酸化還元電位値ORPが正確に検出される状況では、バックアップ塩素濃度値CLは、塩素濃度閾値Tを上回らない範囲で、酸化還元電位値ORPの変動に対応するように変動している。具体的には、酸化還元電位値ORPが高く検出された場合には、バックアップ塩素濃度値CLは高く検出される。一方で、酸化還元電位値ORPが低く検出された場合には、バックアップ塩素濃度値CLは低く検出される。
【0056】
本実施形態においては、塩素濃度閾値Tは、酸化還元電位目標上限値ORPmaxよりもさらに高い酸化還元電位に対応する塩素濃度に設定されている。酸化還元電位値ORPが正確に検出される状況では、制御部100は、酸化還元電位目標範囲に収まるように、殺菌剤添加装置125を制御する。具体的には、酸化還元電位値ORPが酸化還元電位目標上限値ORPmaxを上回る場合には、制御部100は、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を減量するように殺菌剤添加装置125を制御する。そのため、酸化還元電位目標上限値ORPmaxよりもさらに高い酸化還元電位は検出されない。同様に、塩素濃度閾値Tよりもさらに高い塩素濃度は検出されない。つまり、酸化還元電位値ORPが正確に検出される状況では、バックアップ塩素濃度値CLは、塩素濃度閾値Tを上回らない。
【0057】
一方で、酸化還元電位値ORPが不正確に低く検出される場合には、酸化還元電位値ORP(不正確に低く検出される値)に基づいて制御部100が殺菌剤を増量するように殺菌剤添加装置125を制御しても、酸化還元電位値ORP(不正確に低く検出される値)は増加せずに酸化還元電位目標下限値ORPminを下回ることが想定される。また、酸化還元電位値ORP(不正確に低く検出される値)に基づいて制御部100が殺菌剤を増量するように殺菌剤添加装置125を制御することにより、バックアップ塩素濃度値CLは、塩素濃度閾値Tを上回ることが想定される。
【0058】
なお、酸化還元電位値ORPが不正確に低く検出されている状況として、例えば、外気から混入した砂塵や冷却塔内で発生したスライム等による汚れが、ORPセンサ126又はその付近に付着する場合が挙げられる。
【0059】
本実施形態においては、イベントE1は、バックアップ塩素濃度値CLが塩素濃度閾値Tを上回った場合に発生するように設定されている。言い換えれば、制御部100は、バックアップ塩素濃度値CLが塩素濃度閾値T(所定の値)を上回る場合には、酸化還元電位制御モードから塩素濃度制御モードに制御モードを切り換える。
【0060】
〔効果〕
上述した本実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態の水処理システム1は、
被冷却装置131へ供給するための循環水W2及び被冷却装置131から返送される循環水W2を冷却する冷却塔120と、循環水W2を冷却塔120と被冷却装置131との間で循環させる循環水ラインL20と、循環水W2に殺菌剤を添加する殺菌剤添加手段としての殺菌剤添加装置125と、循環水W2の酸化還元電位を検出酸化還元電位として検出する酸化還元電位検出手段としてのORPセンサ126と、循環水W2の塩素濃度を検出塩素濃度として検出する塩素濃度検出手段としての塩素濃度センサ133と、検出酸化還元電位に基づいて殺菌剤添加装置125を制御する酸化還元電位制御モードと、検出塩素濃度に基づいて殺菌剤添加装置125を制御する塩素濃度制御モードとで殺菌剤添加装置125を制御する殺菌剤制御部としての制御部100と、を備え、殺菌剤制御部としての制御部100は、所定の移行条件に基づいて制御モードを切り換える。
【0061】
そのため、ORPセンサ126と、塩素濃度センサ133とで循環水W2の水質を検出し、循環水W2の酸化還元電位に基づいた酸化還元電位制御モード又は循環水W2の塩素濃度に基づいた塩素濃度制御モードで、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を調整できる。これにより、適切な手段(ORPセンサ126又は塩素濃度センサ133)で循環水W2の水質を検出し、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を調整できる。
【0062】
また、循環水W2に対する殺菌剤の添加量に応じて酸化還元電位値ORPは変動する。更に、塩素濃度値CLは、酸化還元電位値ORPの変動に対応するように変動する。そのため、酸化還元電位値ORP又は塩素濃度値CLのいずれか一方が検出されなくても、塩素濃度値CL又は酸化還元電位値ORPのいずれか他方に基づいて、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を調整できる。
【0063】
また、ORPセンサ126はリアルタイムで酸化還元電位値ORPを検出できる。一方で、比色式の塩素濃度センサ133は、毎回ブランク測定を行うため、ORPセンサ126に比べて汚れの影響を受けずに、循環水W2の水質を高精度で検出できる。このような特徴の異なる2つの手段(ORPセンサ126又は塩素濃度センサ133)で循環水W2の水質を検出し、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を調整できる。
【0064】
また、殺菌剤制御部としての制御部100は、酸化還元電位制御モードで殺菌剤添加装置125を制御する場合であっても、塩素濃度センサ133でバックアップ塩素濃度として塩素濃度を検出し、バックアップ塩素濃度が所定の値を上回る場合には、酸化還元電位制御モードから塩素濃度制御モードに制御モードを切り換える。酸化還元電位値ORPが不正確に低く検出される場合には、バックアップ塩素濃度が所定の値を上回ることが想定される。そのため、殺菌剤制御部としての制御部100は、酸化還元電位値ORPが不正確に低く検出された場合に、塩素濃度制御モードで循環水W2に対する殺菌剤の添加量を調整できる。これにより、酸化還元電位値ORPが不正確に低く検出される場合であっても、適切な手段(塩素濃度センサ133)で循環水W2の水質を検出し、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を調整できる。
【0065】
また、塩素濃度検出手段としての塩素濃度センサ133は、間欠的に循環水W2の塩素濃度値CLを検出する。塩素濃度センサ133が間欠的に循環水W2の塩素濃度CLを検出することにより、塩素濃度CLが高精度で検出される。また、ORPセンサ126は、リアルタイムで酸化還元電位値ORPを検出する。そのため、塩素濃度制御モードにおいて、制御部100は、高精度で検出される塩素濃度値CLに基づいて殺菌剤添加装置125を制御できる。また、酸化還元電位制御モードにおいて、制御部100は、リアルタイムで検出される酸化還元電位値ORPに基づいて殺菌剤添加装置125を制御できる。そのため、適切な手段(塩素濃度センサ133又はORPセンサ126)で循環水W2の水質を検出し、循環水W2に対する殺菌剤の添加量を調整できる。
【0066】
〔変形例〕
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0067】
例えば、制御部100は、バックアップ塩素濃度値CLが塩素濃度閾値T(所定の値)を上回る場合には、酸化還元電位制御モードから塩素濃度制御モードに制御モードを切り換える例について説明したが、これに限定されない。制御部100は、他の移行条件に基づいて、酸化還元電位制御モードから塩素濃度制御モードに制御モードを切り換えてもよい。具体的には、制御部100は、ORPセンサ126から酸化還元電位値ORPを受信できない場合には、ORPセンサ126が故障していると判定して、酸化還元電位制御モードから塩素濃度制御モードに制御モードを切り換えてもよい。
【0068】
また、移行条件によっては、制御部100は、塩素濃度制御モードから酸化還元電位制御モードに制御モードを切り換えてもよい。
【0069】
また、水処理システム1に対して、一つの制御部100が、殺菌剤添加装置125等を制御する例について説明したが、これに限定されない。例えば、制御部100が他の制御部と協働して殺菌剤制御部として機能してもよい。具体的には、殺菌剤添加装置125の内部に設置される制御装置(図示しない)が制御部100と協働して循環水W2に殺菌剤を供給する処理を実行してもよい。
【0070】
また、塩素濃度センサ133は、間欠的ではなく、リアルタイムで循環水W2の塩素濃度を検出塩素濃度として検出してもよい。
【0071】
また、殺菌剤添加装置125は、殺菌剤を貯留部122に向けて添加する例について説明したが、これに限定されない。殺菌剤添加装置125が循環水W2に殺菌剤を添加できるのであれば、殺菌剤添加装置125は、殺菌剤を循環水ラインL20(第1循環水ラインL21、第2循環水ラインL22)に向けて添加してもよい。
【0072】
また、ORPセンサ126は、貯留部122に設けられる例について説明したが、これに限定されない。ORPセンサ126は、循環水W2の酸化還元電位を検出できるのであれば、循環水ラインL20(第1循環水ラインL21、第2循環水ラインL22)の途中に設けられてもよい。
【0073】
また、塩素濃度センサ133は、第2循環水ラインL22の途中に設けられる例について説明したが、これに限定されない。塩素濃度センサ133は、循環水W2の塩素濃度を検出できるのであれば、第1循環水ラインL21の途中に設けられてもよい。
【0074】
また、殺菌剤が塩素固形剤からなる場合、例えば、
図3に示す構成とされる。
図3は、本発明の水処理システムの変形例の全体構成図である(
図1対応図)。
【0075】
図3に示すように、変形例の水処理システム1Aは、
図1に示した全体構成に加えて、希釈水ラインL40と、第3排水ラインL33(排水ラインL30)と、電磁弁141〜143と、を備える。
【0076】
希釈水ラインL40は、第2循環水ラインL22と、殺菌剤添加装置125のタンクとを接続するラインである。第3循環水ラインL23の途中には、上流側から下流側に向けて、電磁弁141と、電磁弁142とが設けられている。
【0077】
第3排水ラインL33は、第3循環水ラインL23の電磁弁141と電磁弁142との間の位置から、循環水W2を系外に排出するラインである。第3排水ラインL33の途中には、上流側から下流側に向けて、電磁弁143と、塩素濃度センサ133とが設けられている。なお、塩素濃度センサ133は、第2循環水ラインL22には設けられていない。
【0078】
電磁弁141〜143の開閉は、制御部100によって制御されている。電磁弁141及び電磁弁142が開くことで希釈水ラインL40が開き、循環水W2が第2循環水ラインL22から希釈水ラインL40を介して殺菌剤添加装置125のタンクに供給される。これにより、殺菌剤添加装置125のタンク内には、塩素固形剤を溶質として含んだ循環水W2が貯留される。また、電磁弁141及び電磁弁143が開くことで第3排水ラインL33が開き、循環水W2が系外に排出される。塩素濃度センサ133は、第3排水ラインL33(排水ラインL30)を流通する循環水W2の塩素濃度を検出する。