【課題】受け座に載置されたカップ状体の位置精度を高めることができ、該カップ状体をDI加工して成形されるDI缶の加工品位を安定して高めることができるカップ状体の受け座構造を提供すること。
【解決手段】水平軸O1、O2回りに回転させられ、互いの外周面同士の間にカップ状体を保持可能に形成された一対のフィードガイド1、2と、前記一対のフィードガイド1、2間の下方に配置され、前記一対のフィードガイド1、2に保持されたカップ状体が載置される受け座3と、を備えたカップ状体の受け座構造10であって、前記一対のフィードガイド1、2の各水平軸O1、O2に直交しこれらの水平軸O1、O2同士を繋ぐ軸間方向Cに沿って、前記一対のフィードガイド1、2に対して前記受け座3が移動可能であることを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のカップ状体の受け座は、下記の課題を有していた。
カップ状体にDI加工を施す際には、受け座に載置されたカップ状体のポジショニングが重要である。すなわち、カップ状体の中心軸(カップ軸)と、パンチスリーブ、カップホルダースリーブ及びダイ(DI加工金型)の中心軸と、の同軸度(芯合わせ)の精度が確保できていないと、成形後のDI缶に偏肉や片伸び等が生じるおそれがあり、DI缶の性能に影響する。しかしながら従来では、受け座に載置されたカップ状体の位置精度を確保することが難しかった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、受け座に載置されたカップ状体の位置精度を高めることができ、該カップ状体をDI加工して成形されるDI缶の加工品位を安定して高めることができるカップ状体の受け座構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、水平軸回りに回転させられ、互いの外周面同士の間にカップ状体を保持可能に形成された一対のフィードガイドと、前記一対のフィードガイド間の下方に配置され、前記一対のフィードガイドに保持されたカップ状体が載置される受け座と、を備えたカップ状体の受け座構造であって、前記一対のフィードガイドの各水平軸に直交しこれらの水平軸同士を繋ぐ軸間方向に沿って、前記一対のフィードガイドに対して前記受け座が移動可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明のカップ状体の受け座構造によれば、カップ状体が載置される受け座が、一対のフィードガイドに対して軸間方向に沿って移動可能であるので、このカップ状体の中心軸(カップ軸)を、続くDI工程で使用されるパンチスリーブ、カップホルダースリーブ及びダイ(DI加工金型)の中心軸に対して、芯合わせすることが可能になる。
【0012】
つまり、受け座に載置されたカップ状体の位置精度を高めることができ、カップ状体とDI加工金型との同軸度を高めて、成形されるDI缶の加工精度を向上することができる。具体的には、成形後のDI缶に偏肉や片伸び等が生じることを顕著に抑制して、DI缶の加工品位を安定して高めることができる。
なお、本発明でいう「水平軸」とは、水平方向に延びる軸を指しており、略水平方向に延びる軸を含んでいる。
【0013】
また、上記カップ状体の受け座構造において、前記受け座は、支持台上に配設されているとともに、前記支持台に対して前記軸間方向に沿ってスライド移動可能とされ、前記支持台には、前記支持台に対して前記受け座を前記軸間方向に沿う一方側へ向けて付勢する付勢部材と、前記支持台に螺着されるとともに、前記支持台に対して前記受け座を前記軸間方向に沿う他方側へ向けて押圧可能なネジ部材と、が設けられることが好ましい。
【0014】
上記構成では、カップ状体が載置される受け座が、支持台上において軸間方向にスライド移動可能に設けられている。
具体的に、受け座は支持台上において、付勢部材により軸間方向に沿う一方側へ向けて付勢されている。また、ネジ部材をねじ回すことにより、支持台に対して受け座を、軸間方向に沿う他方側へ向けて押圧することができ、これにより受け座は支持台上でスライド移動する。
【0015】
つまり、ネジ部材のねじ込み量によって、支持台に対する受け座の軸間方向の位置調整を簡単に行うことができる。
具体的に、受け座に載置されたカップ状体の中心軸(カップ軸)を、DI加工金型の中心軸に対して位置調整するにあたっては、例えば10μm程度の微調整が必要となる。このように精細な調整であっても、本発明の上記構成によれば、ネジ部材をねじ込みつつ受け座の軸間方向の位置を確認することができるので、調整作業が容易である。しかも、ねじ込み量が大き過ぎた場合には、ネジ部材のねじ込み量を戻す(ねじを緩める)ことで、付勢部材の付勢力によって受け座の位置が元の位置に戻されるので、位置調整作業を複雑にすることなく、位置調整の精度を顕著に高めることができる。
【0016】
ここで、本発明の上記構成による作用効果を理解しやすくするため、例えば上記構成とは異なり、支持台に軸間方向に長い長孔が形成され、該長孔に挿通された固定ネジが、受け座に螺着されている構成について説明する。
この場合、まず固定ネジを緩め、支持台に対して受け座を直接的にスライド移動させて、受け座の位置を調整する。受け座の位置を調整したら、再び固定ネジを締め込んで、受け座の位置を固定する。なお、受け座の固定状態を安定させる上で、長孔及び固定ネジの組数は、1つよりは複数であることが好ましい。従ってこの場合、受け座の位置調整には作業者の熟練した技能が必要とされ、また固定ネジの締め込み時において極僅かな位置ずれが生じる可能性が考えられる。
【0017】
一方、本発明の上記構成によれば、受け座の位置調整はネジ部材のねじ込み量に応じて間接的に行われるので、作業者の技能に依存するようなことが抑えられて、簡単かつ精細に位置調整が行える。しかも、調整時にはネジ部材が常に、支持台に螺着した状態で受け座を押圧していることから、支持台上の受け座においては、極僅かな位置ずれの発生も抑制されることになる。
さらに、たとえネジ部材が1つのみであっても位置調整を高精度に行うことができるため、構造を簡素化でき、かつ作業性がよい。なお、このネジ部材をDI加工装置のメンテナンスパネル(オペレーターに近い外壁の開口部)付近に配置した場合には、作業性向上の効果がより格別顕著なものとなることから、好ましい。
【0018】
また、上記カップ状体の受け座構造において、前記一対のフィードガイドに対して、前記受け座を上下方向に移動可能な上下動機構が備えられることが好ましい。
【0019】
この場合、一対のフィードガイドに対して、受け座が軸間方向(左右方向)及び上下方向に移動可能となる。従って、受け座に載置されるカップ状体の中心軸(カップ軸)を、DI加工金型の中心軸に対して、より高精度に、確実に一致させることが可能になる。
これにより、受け座に載置されたカップ状体の位置精度を高めることができ、該カップ状体をDI加工して成形されるDI缶の加工品位を安定して高めることができる、という本発明の作用効果が、さらに格別顕著なものとなる。
【0020】
また、上記カップ状体の受け座構造において、前記上下動機構は、前記一対のフィードガイドに対する前記受け座の上下方向の位置を調整可能な調整ネジ部を備えることが好ましい。
【0021】
この場合、上下動機構が調整ネジ部を備えているので、一対のフィードガイドに対する受け座の上下方向への位置調整を、調整ネジ部のねじ込み量により、高精度に安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカップ状体の受け座構造によれば、受け座に載置されたカップ状体の位置精度を高めることができ、該カップ状体をDI加工して成形されるDI缶の加工品位を安定して高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るカップ状体の受け座構造10について説明する。
本実施形態のカップ状体の受け座構造10は、カップ状体にDI加工を施してDI缶とするDI加工装置に備えられる。
【0025】
まず、DI缶について説明する。
DI缶とは、飲料等の内容物が充填、密封される缶体(2ピース缶やボトル缶)に用いられるものである。2ピース缶の場合、缶体は、有底筒状のDI缶と、該DI缶の開口端部に巻き締められる円板状の缶蓋と、を備える。ボトル缶の場合、缶体は、DI缶(DI加工後にダイネッキング加工等が施されたもの)と、該DI缶の開口端部に螺着されるキャップと、を備える。なお、DI缶の「DI」とは、Drawing&Ironingの略称である。
【0026】
DI缶は、アルミニウム合金材料の板材から打ち抜いた円板状のブランクに、カッピング工程(絞り工程)及びDI工程(絞りしごき工程)を施すことにより、有底筒状に形成される。具体的にDI缶は、例えば2ピース缶の場合、板材打ち抜き工程、カッピング工程、DI工程、トリミング工程、印刷工程、塗装工程、ネッキング工程、ボトムリフォーム工程及びフランジング工程をこの順に経て、製造される。
【0027】
DI缶を製造する過程では、ブランクをカッピングプレスによって絞り加工(カッピング加工)し、カップ状体に成形する。つまりカップ状体は、上記カッピング工程において、ブランクからDI缶へ移行する過程で作製される成形中間体である。カップ状体は、DI缶よりも周壁の高さ(缶軸方向に沿う長さ)が小さく、底壁の直径が大きい有底筒状をなしている。
【0028】
次に、DI加工装置について説明する。
DI加工装置は、上記DI工程に用いられるものであり、カップ状体にDI加工(絞り(再絞り)しごき加工)を施して、DI缶に成形する。
【0029】
DI加工装置は、
図1に示されるカップ状体の受け座構造10と、特に図示していないが、カップ状体を再絞り加工するための断面円形の貫通孔を有する一枚の再絞りダイと、この再絞りダイと同軸に配列される断面円形の貫通孔を有する複数枚(例えば3枚)のアイアニング・ダイ(しごきダイ)と、アイアニング・ダイと同軸とされ、各アイアニング・ダイの貫通孔の内部に嵌合可能とされ、ダイの中心軸方向に移動自在とされる円筒状又は円柱状のパンチスリーブと、このパンチスリーブの外側に嵌合する円筒状のカップホルダースリーブと、を備えている。
【0030】
上述した再絞りダイ、アイアニング・ダイ、パンチスリーブ及びカップホルダースリーブについては、例えば上記特許文献2(特開2007−216302号公報)に記載されたものを用いることができる。本実施形態では、これらの再絞りダイ、アイアニング・ダイ、パンチスリーブ及びカップホルダースリーブを、DI加工金型ということがある。
DI加工金型の各中心軸は、互いに同軸とされ、水平方向に延びて配置されている。
【0031】
DI加工装置によるカップ状体へのDI加工は、下記のように行われる。
後述するカップ状体の受け座構造10の受け座3に、カップ状体が載置される。受け座3に載置されたカップ状体は、そのカップ軸(缶軸)を水平方向に延ばし、その開口部をパンチスリーブへ向けた状態で、パンチスリーブと再絞りダイとの間に配置される。
【0032】
このカップ状体に対して、カップホルダースリーブ及びパンチスリーブが前進移動する。そしてカップホルダースリーブが、再絞りダイの端面にカップ状体の底壁を押し付けてカップ押し付け動作を行いながら、パンチスリーブが、カップ状体を再絞りダイの貫通孔内に押し込んでいき、再絞り加工を施す。
【0033】
再絞り加工により、前記カップ状体よりも小径でカップ軸方向に沿う長さ(高さ)が大きいカップ状体が成形される。引き続き、このカップ状体をパンチスリーブで押し込んでいき、複数のアイアニング・ダイを順次通過させつつ徐々にしごき加工していく。つまり、カップ状体の周壁をしごいて該周壁を延伸させ、周壁高さを高くするとともに壁厚を薄くして、有底筒状のDI缶を成形する。このDI缶は、周壁がしごかれることで冷間加工硬化され、強度が高められる。
【0034】
しごき加工が終了したDI缶は、パンチスリーブがさらに前方に押し出して底部(缶底となる部分)をボトム成形金型に押圧することにより、この底部がドーム形状に形成される。
【0035】
次に、カップ状体の受け座構造10について説明する。
図1に示されるように、本実施形態のカップ状体の受け座構造10は、水平軸O1、O2回りに回転させられ、互いの外周面同士の間にカップ状体を保持可能に形成された一対のフィードガイド1、2と、一対のフィードガイド1、2間の下方に配置され、一対のフィードガイド1、2に保持されたカップ状体が載置される受け座(カップステーショナー)3と、を備えている。
なお、本実施形態でいう「水平軸」とは、水平方向に延びる軸を指しており、略水平方向に延びる軸を含んでいる。
また、カップ状体の受け座構造10は、一対のフィードガイド1、2の各水平軸O1、O2に直交しこれらの水平軸O1、O2同士を繋ぐ軸間方向(水平軸O1、O2同士が対向する方向。左右方向)Cに沿って、受け座3をスライド移動可能に支持する支持台4と、支持台4を介して受け座3を上下方向Hに沿って移動可能な上下動機構5と、を備えている。
【0036】
フィードガイド1、2は、円形リング状又は円筒状をなしており、本実施形態の例では、円形リング状に形成されている。
図1に示される例では、一対のフィードガイド1、2のうち、フィードガイド2が、水平軸O2方向に間隔をあけて配置された2つのリング体を備えており、フィードガイド1が、水平軸O2方向に沿う前記2つのリング体同士の間に位置する1つのリング体を備えている。フィードガイド1、2の各水平軸O1、O2同士は、互いに平行に延びている。
【0037】
フィードガイド1、2は、各水平軸O1、O2回りに、互いに逆方向にかつ互いに同期して回転させられる。特に図示していないが、フィードガイド1、2の水平軸O1、O2は、上述したDI加工金型の中心軸に対して、平行に延びて配置されている。
【0038】
また、フィードガイド1、2間の上方には、カップ軸を水平軸O1、O2に平行に延ばした姿勢とされたカップ状体が、上下方向Hに沿って複数重ねられて配設されている。フィードガイド1、2の外周面にはそれぞれ凹部が形成されており、これらの凹部同士の間には、複数のカップ状体のうち、最下端に位置する1つのカップ状体のみが保持可能である。
本実施形態のフィードガイド1、2としては、例えば上記特許文献1(特許第2906306号公報)に記載されたものを用いることができる。
【0039】
これらのフィードガイド1、2が水平軸O1、O2回りに互いに逆方向に回転させられたときに、各フィードガイド1、2の外周面の凹部同士の間には、カップ状体が1つずつ保持される。これら凹部間に保持されたカップ状体は、フィードガイド1、2の回転にともなって下方へと移動させられていき、受け座3へと1つずつ着座させられる。具体的には、フィードガイド1、2が1回転したときに、カップ状体が受け座3へと1つ受け渡されるようになっている。
【0040】
図1及び
図2に示されるように、受け座3は、底壁と、底壁の軸間方向Cの両端部から上方に向けて立ち上がる一対の側壁と、を有している。受け座3における底壁の上面と、一対の側壁の内面とは、カップ状体の外周面に対応する形状とされて互いに滑らかに接続しており、1つの凹曲面を形成している。これにより、受け座3においてカップ状体が載置される凹曲面状の上面3aが形成されている。また、水平軸O1、O2に垂直な断面視(水平軸O1、O2方向から見た正面視)において、受け座3の上面3aは、下方に向けて窪むU字状をなしている。
【0041】
受け座3は、後述する支持台4上に配設されており、支持台4に対して軸間方向Cに沿ってスライド移動可能とされている。そして受け座3は、一対のフィードガイド1、2に対して、軸間方向Cに沿って移動可能である。
【0042】
図2において、支持台4は、受け座3が固定される台座6と、台座6を軸間方向Cに沿ってスライド移動可能に支持する底板7と、底板7の軸間方向Cの両端部から上方に向けて立ち上がる一対の側板8(8A、8B)と、台座6を軸間方向Cに貫通して延びるとともに、両端が一対の側板8に接続されたガイドピン9と、底板7に対して台座6を軸間方向Cに沿う一方側(
図1及び
図2における左側)へ向けて付勢する付勢部材11と、側板8に螺着されるとともに、底板7に対して台座6を軸間方向Cに沿う他方側(
図1及び
図2における右側)へ向けて押圧可能なネジ部材12と、を備えている。
【0043】
台座6は、受け座3を支持しており、該受け座3に一体に固定されている。台座6には、軸間方向Cに沿って該台座6を貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔には、ガイドピン9が摺動可能に嵌合している。本実施形態の例では、台座6に、水平軸O1、O2方向に間隔をあけて一対の貫通孔が形成されており、これら貫通孔に一対のガイドピン9が挿通されている。
【0044】
底板7は、台座6よりも軸間方向Cの長さが大きく形成されている。底板7上に載置された台座6及び該台座6に固定された受け座3は、底板7に対して軸間方向Cに沿ってスライド移動可能である。底板7の下面には、後述する上下動機構5の雄ネジ部(調整ネジ部)15に螺着される雌ネジ部13が設けられている。
【0045】
一対の側板8と、台座6において軸間方向Cに沿う両端に位置する各端面との間には、それぞれ隙間が設けられている。一対の側板8のうち、軸間方向Cの一方側に位置する側板8Aには、該側板8Aを軸間方向Cに貫通してネジ部材12が螺着されている。また、一対の側板8のうち、軸間方向Cの他方側に位置する側板8Bと、台座6において軸間方向Cの他方側を向く端面との間には、付勢部材11が配設されている。
【0046】
本実施形態の例では、付勢部材11として、軸間方向Cに沿って弾性変形可能な圧縮コイルばねが用いられており、該付勢部材11の内部には、ガイドピン9が挿通されている。また、付勢部材11は、一対のガイドピン9に対応して、一対設けられている。付勢部材11は、支持台4の底板7に対して、台座6及び該台座6上に支持される受け座3を、軸間方向Cに沿う一方側へ向けて付勢している。
【0047】
また、本実施形態の例では、ネジ部材12として、ネジ頭部に滑り止め加工(ローレット加工)が施されたローレットネジが用いられており、ドライバー等の作業用工具を用いることなく、ネジ部材12をねじ回す(ネジ部材12のねじ込み量を調整する)ことが可能である。
【0048】
ネジ部材12のネジ頭部は、側板8Aに対して軸間方向Cの一方側に配置されている。ネジ部材12のネジ軸部の先端は、側板8Aから軸間方向Cの他方側へ向けて突出しているとともに、台座6において軸間方向Cの一方側を向く端面に当接している。図示の例では、ネジ部材12は1つのみ設けられており、該ネジ部材12のネジ軸部の先端は、台座6の軸間方向Cの一方側を向く端面のうち、水平軸O1、O2方向に沿う中央部に対して当接させられている。
【0049】
ネジ部材12は、支持台4の底板7に対して、台座6及び該台座6上に支持される受け座3を、軸間方向Cに沿う他方側へ向けて押圧可能である。
具体的には、ネジ部材12を、そのネジ軸回りの締め込み側にねじ回すことで、ネジ部材12は、側板8Aに対して軸間方向Cの他方側へ向けて移動する。このとき、ネジ部材12のネジ軸部の先端が、台座6を軸間方向Cの他方側へ向けて押圧し、台座6及び受け座3が、底板7上を軸間方向Cの他方側へ向けて移動する。この際、付勢部材11は、軸間方向Cに収縮(弾性変形)させられる。
【0050】
また、ネジ部材12を、そのネジ軸回りの緩み側にねじ回すことで、ネジ部材12は、側板8Aに対して軸間方向Cの一方側へ向けて移動する。このとき、ネジ部材12のネジ軸部の先端による、台座6の軸間方向Cの一方側を向く端面に対する押圧が解除され、付勢部材11の付勢力(復元変形力)によって、台座6及び受け座3が、底板7上を軸間方向Cの一方側へ向けて移動する。
【0051】
このように、ネジ部材12のねじ込み量を調整することで、支持台4の底板7に対して、台座6及び受け座3を軸間方向Cに沿って移動させることができる。より詳しくは、ネジ部材12のねじ込み量を調整することにより、一対のフィードガイド1、2及び上述のDI加工金型に対して、受け座3が軸間方向Cに沿って移動可能である。
【0052】
上下動機構5は、一対のフィードガイド1、2及び上述のDI加工金型に対して、支持台4及び該支持台4に支持された受け座3を、上下方向Hに沿って移動可能に構成されている。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の上下動機構5は、一対のフィードガイド1、2に対して支持台4及び受け座3を上下方向Hに移動可能なシリンダ部14と、該シリンダ部14の上下方向Hに沿うストロークよりも小さいピッチで、一対のフィードガイド1、2に対する支持台4及び受け座3の上下方向Hの位置を調整可能な雄ネジ部(調整ネジ部)15と、を備えている。
【0053】
シリンダ部14は、例えばエアシリンダ、油圧シリンダ、電動シリンダ等である。シリンダ部14は、シリンダ本体と、該シリンダ本体に対して上下方向Hに移動可能なロッドと、を備えている。
ロッドは、シリンダ本体から上方に向けて突出しており、該ロッドの先端部(上端部)には、支持台4が接続される。
図1において、ロッドは、シリンダ本体から上方へ向けて最も突出させられた状態であり(上死点に位置しており)、この状態で支持台4上の受け座3に載置されたカップ状体に対して、DI加工が施される。
【0054】
またこの状態から、ロッドは、シリンダ本体に対して下方に向けて移動可能である。ロッドの下方移動により、該ロッドに支持される支持台4及び受け座3を、一対のフィードガイド1、2から大きく離間させることができる。これにより、例えばDI加工時に成形不良等が生じた場合には、シリンダ部14のロッドを下方移動させることで、カップ状体を容易に取り出すことができる。
【0055】
図2において、ロッドの先端部には、雄ネジ部15が形成されている。雄ネジ部15は、支持台4の底板7の雌ネジ部13に螺着している。雌ネジ部13に対する雄ネジ部15のねじ込み量を調整することで、シリンダ部14のロッドに対して、支持台4及び受け座3を上下方向Hに沿って移動させることができる。より詳しくは、雄ネジ部15のねじ込み量を調整することにより、一対のフィードガイド1、2及び上述のDI加工金型に対して、受け座3が上下方向Hに沿って移動可能である。
【0056】
ロッドの雄ネジ部15には、緩み止めナット16が螺着している。上述のように、雌ネジ部13に対する雄ネジ部15のねじ込み量を調整した後に、緩み止めナット16を雌ネジ部13に当接するまで締め込むことにより、雌ネジ部13と雄ネジ部15との螺着状態がロック(固定)されて、シリンダ部14のロッドに対する支持台4及び受け座3の上下方向Hの位置が、精度よく安定して維持される。
【0057】
以上説明した本実施形態に係るカップ状体の受け座構造10によれば、カップ状体が載置される受け座3が、一対のフィードガイド1、2に対して軸間方向Cに沿って移動可能であるので、このカップ状体の中心軸(カップ軸)を、続くDI工程で使用されるパンチスリーブ、カップホルダースリーブ及びダイ(DI加工金型)の中心軸に対して、芯合わせすることが可能になる。
【0058】
つまり、受け座3に載置されたカップ状体の位置精度を高めることができ、カップ状体とDI加工金型との同軸度を高めて、成形されるDI缶の加工精度を向上することができる。具体的には、成形後のDI缶に偏肉や片伸び等が生じることを顕著に抑制して、DI缶の加工品位を安定して高めることができる。
【0059】
また本実施形態では、受け座3が、支持台4上に配設されているとともに、支持台4に対して軸間方向Cに沿ってスライド移動可能とされている。また支持台4には、支持台4に対して受け座3を軸間方向Cに沿う一方側へ向けて付勢する付勢部材11と、支持台4に螺着されるとともに、支持台4に対して受け座3を軸間方向Cに沿う他方側へ向けて押圧可能なネジ部材12と、が設けられている。この構成により、下記の作用効果を奏する。
【0060】
すなわち上記構成では、受け座3は支持台4上において、付勢部材11により軸間方向Cに沿う一方側へ向けて付勢されている。また、ネジ部材12をねじ回すことにより、支持台4に対して受け座3を、軸間方向Cに沿う他方側へ向けて押圧することができ、これにより受け座3は支持台4上でスライド移動する。
【0061】
つまり、ネジ部材12のねじ込み量によって、支持台4に対する受け座3の軸間方向Cの位置調整を簡単に行うことができる。
具体的に、受け座3に載置されたカップ状体の中心軸(カップ軸)を、DI加工金型の中心軸に対して位置調整するにあたっては、例えば10μm程度の微調整が必要となる。このように精細な調整であっても、本実施形態の上記構成によれば、ネジ部材12をねじ込みつつ受け座3の軸間方向Cの位置を確認することができるので、調整作業が容易である。しかも、ねじ込み量が大き過ぎた場合には、ネジ部材12のねじ込み量を戻す(ねじを緩める)ことで、付勢部材11の付勢力によって受け座3の位置が元の位置に戻されるので、位置調整作業を複雑にすることなく、位置調整の精度を顕著に高めることができる。
【0062】
ここで、本実施形態の上記構成による作用効果を理解しやすくするため、特に図示していないが例えば上記構成とは異なり、支持台4に軸間方向Cに長い長孔が形成され、該長孔に挿通された固定ネジが、受け座3に螺着されている構成について説明する。
この場合、まず固定ネジを緩め、支持台4に対して受け座3を直接的にスライド移動させて、受け座3の位置を調整する。受け座3の位置を調整したら、再び固定ネジを締め込んで、受け座3の位置を固定する。なお、受け座3の固定状態を安定させる上で、長孔及び固定ネジの組数は、1つよりは複数であることが好ましい。従ってこの場合、受け座3の位置調整には作業者の熟練した技能が必要とされ、また固定ネジの締め込み時において、極僅かな位置ずれが生じる可能性が考えられる。
【0063】
一方、本実施形態で説明した上記構成によれば、受け座3の位置調整はネジ部材12のねじ込み量に応じて間接的に行われるので、作業者の技能に依存するようなことが抑えられて、簡単かつ精細に位置調整が行える。しかも、調整時にはネジ部材12が常に、支持台4に螺着した状態で台座6を介して受け座3を押圧していることから、支持台4上の受け座3においては、極僅かな位置ずれの発生も抑制されることになる。
さらに、本実施形態のように、たとえネジ部材12が1つのみであっても位置調整を高精度に行うことができるため、構造を簡素化でき、かつ作業性がよい。なお、特に図示していないが、このネジ部材12をDI加工装置のメンテナンスパネル(オペレーターに近い外壁の開口部)付近に配置した場合には、作業性向上の効果がより格別顕著なものとなることから、好ましい。
【0064】
また本実施形態では、一対のフィードガイド1、2に対して、受け座3を上下方向Hに移動可能な上下動機構5が備えられるので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、一対のフィードガイド1、2に対して、受け座3が軸間方向(左右方向)C及び上下方向Hに移動可能となる。従って、受け座3に載置されるカップ状体の中心軸(カップ軸)を、DI加工金型の中心軸に対して、より高精度に、確実に一致させることが可能になる。
これにより、受け座3に載置されたカップ状体の位置精度を高めることができ、該カップ状体をDI加工して成形されるDI缶の加工品位を安定して高めることができる、という本実施形態の作用効果が、さらに格別顕著なものとなる。
【0065】
また本実施形態では、上下動機構5が、一対のフィードガイド1、2に対する受け座3の上下方向Hの位置を調整可能な雄ネジ部(調整ネジ部)15を備えているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、上下動機構5が雄ネジ部15を備えているので、一対のフィードガイド1、2に対する受け座3の上下方向Hへの位置調整を、支持台4の雌ネジ部13に対する雄ネジ部15のねじ込み量により、高精度に安定して行うことができる。
【0066】
また本実施形態では、受け座3が固定される台座6に、軸間方向Cに沿って延びるガイドピン9が挿通されており、該ガイドピン9の延在方向(つまり軸間方向C)に沿って受け座3がスライド移動可能である。従って、受け座3を軸間方向Cに沿って精度よくスライド移動させることができて、位置調整の精度をより高めることができる。
また、付勢部材11の内部にガイドピン9が挿通されているため、付勢部材11の性能を安定化させることができ、かつ紛失を防止できる。
【0067】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0068】
例えば、前述の実施形態では、受け座3を支持する支持台4に、支持台4に対して受け座3を軸間方向Cに沿う一方側へ向けて付勢する付勢部材11と、支持台4に螺着されるとともに、支持台4に対して受け座3を軸間方向Cに沿う他方側へ向けて押圧可能なネジ部材12と、が設けられることとしたが、これに限定されるものではない。
つまり、上記構成以外の構成によって、受け座3が、支持台4に対して軸間方向Cに沿ってスライド移動可能とされていてもよい。さらに、支持台4以外の構成により(つまり支持台4を設けることなく)、受け座3が、一対のフィードガイド1、2及びDI加工金型に対して、軸間方向Cに沿って移動可能とされていてもよい。
【0069】
また、前述の実施形態では、支持台4の台座6に受け座3が固定されているとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、受け座3に対して台座6が一体に形成されていてもよい。この場合、受け座3の底部(台座6に相当する部分)が、底板7上に直接載置され、該受け座3が底板7上を軸間方向Cに沿ってスライド移動する。また、受け座3の底部に対して、ガイドピン9が挿通される。また、受け座3の軸間方向Cの一方側を向く端面を直接的にネジ部材12が押圧し、受け座3の軸間方向Cの他方側を向く端面を直接的に付勢部材11が付勢する。
また、ガイドピン9は設けられていなくてもよい。
【0070】
また、前述の実施形態では、付勢部材11が圧縮コイルばねであり、付勢部材11は、一対の側板8のうち軸間方向Cの他方側に位置する側板8Bと、台座6において軸間方向Cの他方側を向く端面と、の間に配設されているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、付勢部材11は引張コイルばねであってもよく、この場合付勢部材11は、一対の側板8のうち軸間方向Cの一方側に位置する側板8Aと、台座6において軸間方向Cの一方側を向く端面と、の間に配設される。
また、付勢部材11は、上述したコイルばね以外の板ばねやゴム等の弾性材料により形成されていてもよい。
【0071】
また、前述の実施形態では、上下動機構5が、シリンダ部14と、雄ネジ部(調整ネジ部)15と、を備えることとしたが、これに限定されるものではない。
例えば、上下動機構5の雄ネジ部15の代わりに、雌ネジ部(調整ネジ部)が設けられていてもよい。この場合、支持台4の雌ネジ部13の代わりに雄ネジ部が設けられて、前記雌ネジ部(調整ネジ部)が螺着される。また、上下動機構5は、シリンダ部14の代わりに、例えばアクチュエータ部等を備えていてもよい。
また上下動機構5は、調整ネジ部15のみを備えていて、シリンダ部14を備えていなくてもよい。ただし、前述の実施形態のように、上下動機構5がシリンダ部14を備えている場合には、DI加工時において成形不良等が発生したときにカップ状体を取り除きやすくなり、好ましい。
【0072】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。