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特開2017-202518マグネシウム合金板のホットスタンピング加工方法
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  • 特開2017202518-マグネシウム合金板のホットスタンピング加工方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-202518(P2017-202518A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】マグネシウム合金板のホットスタンピング加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20171020BHJP
   C22F 1/06 20060101ALI20171020BHJP
   B21D 37/18 20060101ALI20171020BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20171020BHJP
【FI】
   B21D22/20 E
   C22F1/06
   B21D22/20 H
   B21D37/18
   C22F1/00 602
   C22F1/00 630A
   C22F1/00 630C
   C22F1/00 630K
   C22F1/00 682
   C22F1/00 683
   C22F1/00 684C
   C22F1/00 691B
   C22F1/00 691C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-106782(P2016-106782)
(22)【出願日】2016年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】591172216
【氏名又は名称】小豆島 明
(72)【発明者】
【氏名】小豆島 明
【テーマコード(参考)】
4E050
【Fターム(参考)】
4E050HA01
(57)【要約】
【課題】 マグネシウム合金板を用い高強度を有する自動車、飛行機等の部品を製造するホットスタンピング加工方法を提供する。
【解決手段】 時効析出硬化型マクネシウム合金は固溶化熱処理後にプレス加工により部品の形状に成形し、金型との接触により焼入れを行った後、時効熱処理を行うことにより高強度を有したマグネシウム部材となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時効析出硬化型マグネシウム合金板を用い高強度を有する自動車、飛行機等の部品を製造するホットスタンピング加工方法。
【請求項2】
請求項1の時効析出硬化型マグネシウム合金板のホットスタンピング加工は、固溶化温度で熱処理後のプレス加工により部品の形状に成形し、金型との接触により焼入れを行った後、時効熱処理を行うことにより、マグネシウム部品の強度を非常に大きくすることを可能にする加工方法。
【請求項3】
請求項2の固溶化処理は温度が400℃から500℃で、時間は5分から1時間及び時効処理は温度が20℃から250℃で、時間は1時間から1週間である。
【請求項4】
プレス加工において潤滑剤を使用するときは、油性または水溶性の潤滑剤を用いて工具表面に一様に付着した潤滑膜を被膜することができる加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム合金板を用い高強度を有する自動車、飛行機等の部品を製造するホットスタンピング加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因となる温室効果ガスのCO2削減のため、自動車、飛行機などの輸送機器の構造材料を軽量化することによる燃費向上が求められている。金属材料の分野においては、その強度を増加させる、その重量を減少させることによる軽量化を行う開発が行われている。
【0003】
鋼板材料においては、1200MPa級の超ハイテン鋼板を冷間プレスにより自動車部品を製造するか、1500MPa以上の高強度を有する鋼板の自動車用部材を最近ホットスタンピングプロセスが用いて製造する方法は提案されている。金属板材料において更なる軽量化を求めるならば鋼よりも比重の小さく、比強度が高い金属材料の利用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−118628
【特許文献2】特開2010−529288
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、1200MPa級の超ハイテン鋼板を冷間プレスにより自動車部品を製造する方法では、被加工材のスプリングバックや工具の摩耗などの問題があり、高強度を有する鋼板の自動車用部材をホットスタンピングプロセスを用いて製造する方法では、靭性が必要な自動車部品に適用することに問題がある。更に、現状以上の軽量化が求められているので、鋼よりも比重の小さく、比強度が高い金属材料の利用を検討しなければならない。本発明において、鋼よりも比重の小さく、比強度が高い金属材料としてマグネシウム合金を取り上げ、鋼板の代替材料としてマグネシウム合金板を用いて自動車などの部品を製造する。マグネシウム合金は最密六方晶構造であるので冷間加工は難しいので、温・熱間加工を行わなければならない。そのため、高強度を有した部品を製造することは困難である。本発明は、マグネシウム合金板を用いて高強度を有した部品を製造するため、ホットスタンピングの加工方法を提案することである。
【発明を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段としては、高強度を有したマグネシウム部品をホットスタンピングの加工に用いて製造するために時効析出硬化型マグネシウム合金を用いる。時効析出硬化型マグネシウム合金は固溶化熱処理後に焼入れ行い、つづいて低温時効またはT5,T6処理などの時効熱処理を行うことにより高強度を有したマグネシウム部材をなる。このような時効析出硬化型マグネシウム合金をホットスタンピング加工に用いることにより高強度を有したマグネシウム部品を製造する方法が最も適切な解決策となる。
【0007】
ホットスタンピング加工においては、時効析出硬化型マグネシウム合金板を固溶化熱処理後にプレス加工を行い、仮死点において加工されたマグネシウム合金板を金型に保持させ、その部材に焼入れを行う。つづいて、その部材に低温時効処理またはT5,T6処理などの時効熱処理を行い、時効析出による高強度を有するマグネシウム部品の製造を可能にすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の時効析出硬化型マグネシウム合金板のホットスタンピング加工は、固溶化熱処理後のプレス加工により部品の形状に成形し、金型との接触により焼入れを行った後、低温時効処理またはT5,T6処理などの時効熱処理を行うことにより、マグネシウム部品の強度を非常に大きくすることを可能にする。本発明は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスのCO2削減のため、輸送機器の構造材料を軽量化することにより燃費向上を可能にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を詳しく説明する。図1に時効析出効果型マグネシウム合金板のホットスタンピングのプロセスを示す。時効析出硬化型マグネシウム合金板にホットスタンピング加工を行うため、まず、マグネシウム合金板を電気炉、通電加熱処理などを用いて固溶化温度の400℃から500℃の範囲に加熱する。つづいて、マグネシウム合金板を油圧プレスまたはサーボプレスのマグネシウム合金板よりも低い温度の金型に移動し、プレス加工を行い所定の部品に成形すると同時に、その仮死点で一定時間保持し金型との接触により焼入れを行う。プレス加工の際には材料と金型間にはドライあるいは潤滑剤を使用することもある。潤滑剤を使用するときは、油性または水溶性の潤滑剤を使用し、工具表面に一様に付着した潤滑膜を被膜する。また、マグネシウム部品に焼入れ処理が施されるように、マグネシウム合金板温度と金型温度の管理が行われている。その後、時効析出による硬化を行うために、マグネシウム部品に低温時効処理またはT5,T6処理などの時効熱処理を行う。時効熱処理の温度範囲は20℃から250℃及び処理時間範囲は1時間から1週間である。固溶化温度の時効析出硬化型マクネシウム合金板をプレス加工により部品の形状に成形し、金型との接触により焼入れを行ったホットスタンピング加工後、低温時効処理またはT5,T6処理の時効熱処理を行うことにより、マグネシウム部品の強度を非常に大きくすることを可能にすることが本発明の形態である。
【0010】
本研究で用いる時効析出硬化型マグネシウム合金は、ZK系列、ZE系列、ZM系列、AZ系列などに基づいたものである。
【0011】
本発明は、時効析出硬化型マグネシウム合金板を固溶化温度に加熱後、プレス加工することにより部品の形状に成形し、金型との接触により焼入れを行った後、低温時効処理またはT5,T6処理などの時効熱処理を行うことにより、マグネシウム部品の強度を非常に大きくするホットスタンピング加工方法を提案することを意味している。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。400℃に加熱した板厚2.0mmのAZ80の時効析出硬化型マグネシウム合金板を表面粗さ0.2RaμmのSKD61の工具、潤滑剤を用いて、垂直荷重3.5kN(面圧8MPa)、すべり速度10mm/minの条件で70mmの平板引抜き加工を行った後、マグネシウム合金板を停止させ、30秒間保持し焼入れを行った。初期工具表面温度は室温で、潤滑剤は各加工前に工具表面に一様に塗布し潤滑膜を被膜させた。つづいて、上記の加工を行ったマグネシウム合金板を200℃で10時間の時効熱処理を行った。
【0013】
上記実施例の焼入れ後と時効熱処理後のAZ80時効析出硬化型マクネシウム合金板の硬度を確認するため、400℃に加熱したAZ80マグネシウム合金を室温の工具を用いて垂直圧力10MPa、保持時間10秒で焼入れした後のビッカース硬度とその材料を200℃で10時間の時効熱処理を行った後のビッカース硬度を測定した。その結果を表1に示す。
【0014】
AZ80時効析出硬化型マグネシウム合金は時効処理を行うことにより、ホットスタンピング加工後の硬度は非常に大きくなっている。本発明により、マグネシウム部品の強度を非常に大きくすることが可能になることを示している。
【0015】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】析出硬化型マクネシウム合金材料のホットスタンピングのプロセスにおける温度と時間の関係を示す図面
図1