【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明は、低粘度化粧料組成物20を収容する収容部材10の開放部12を覆う、化粧料組成物膜形成部材30を含む化粧品1を提供する。本発明は、含浸材化粧品の場合、含浸材が占める比表面積が大きいことから、多量の化粧料を収容するためには容器が大きくなり、容器を小さくすれば多量の内容物を収容できないという問題点に着目してなされたものであり、このような問題点を改善するための低粘度の化粧料組成物及びそのような化粧料組成物が膜形成部材を通って排出される化粧品に関する。
【0014】
本発明は、化粧料の表面で水膜または油膜を形成できる部材を適用することで、低粘度の化粧料を効果的に保持できるため、容器を小さくするか又は化粧料の内容量を増加させることができる。また、使い残しを最小化できるだけでなく、持続的に使用しても優れた化粧効果が奏される化粧品1を提供することを目的とする。
【0015】
本明細書において、低粘度化粧料組成物20とは高流動性の化粧料組成物を意味し、代表的には液相(液体)化粧料が挙げられる。従来、流動性の大きい低粘度(7000cPs以下)化粧料を携帯が便利なパクト形態に収容するためには、比表面積の大きいスポンジ状の含浸材を用いるか、又は、エアレスタイプのパクト型容器を用いなければならず、上述したような問題を有していたが、本発明者らは鋭意研究を繰り返したところ、吸水/吸油能を有する膜形成部材30が水膜または油膜を形成することで、携帯または輸送時、流動性の大きい低粘度内容物もパクト容器内で保持し易く、使用時には容易に吐出できることを見出して本発明の完成に至った。
【0016】
本発明における低粘度化粧料20は、ブルックフィールド粘度計(Brookfield Synchro−Lectric Viscometer、USA)でスピンドル#4を用いて30RPMで1分間測定した粘度が1,000cPsないし7,000cPsの化粧料である。粘度が1,000cPs未満であれば、内容物保液性が低下して漏れが生じ、7,000cPsを超えれば、低粘度化粧料の長所である伸び性、しっとり感など全般的な化粧満足度が低下する問題がある。そこで、粘度は1,000cPsないし7,000cPsのものを使用し、望ましくは2,000cPsないし6,000cPsのものを使用する。
【0017】
化粧料組成物の粘度が10,000cPs未満である場合、液相の流れ性により、容器を密閉しなければ内容物が漏れてしまうため、当業界では上記範囲の化粧料組成物を携帯するためにスポンジのような含浸材を用いていた。しかし、本発明では、膜形成部材30を採用することで、10,000cPs未満の化粧料組成物も簡便に携帯できる方法を提供する。
【0018】
本発明の膜形成部材は弾性を有する網体であり得る。
【0019】
弾性とは、外部から力が加えられて形態の変形が生じても、外力が作用しなくなると本来の形態に復元しようとする性質を意味する。例えば、本発明の弾性は、膜形成部材に力を加えて収容部材10の底面まで力を加えた後、この力を除去すれば本来の形態に戻ることができることを意味する。
【0020】
「実質的に復元される」場合には、本来の形態の70%程度、望ましくは80%程度、さらに望ましくは90%以上に回復される場合を含む。
【0021】
本発明の網体は、化粧料組成物の保液性を有するだけでなく、多数の吐出または排出自在な通路が形成された形態であり、繊維などによって形成された格子状の間から内容物が吐出できるあらゆる形態を含む。例えば、網、メッシュなどの形態は本発明の網体の範囲に含まれ得る。
【0022】
本発明者らは、膜形成部材が低粘度化粧料組成物20の剤形による水膜または油膜に影響を及ぼすことができることを確認した。具体的に、前記膜形成部材によって化粧料組成物の漏液を防止して収容部材10内に安定的に保持できることを確認し、使用時には加圧することで内容物がよく吐出した。これは膜形成部材30が低粘度化粧料組成物20の界面と接触し、化粧料組成物の油膜または水膜の張力に影響を及ぼした結果であると考えられるが、必ずしもこのような理論に制限して解釈されることはない。
【0023】
望ましくは、前記膜形成部材は、全体厚さ0.4mmないし3mmの紙のようなシート状であり得、一重または二重以上に重ねて使用することができる。前記膜形成部材の素材としては、繊維類、発泡ゴム類及び発泡ポリウレタン類に分けられ、単独で一重または二重以上に混用して使用することができる。望ましくは、繊維からなる復元力の優れた繊維生地を使用することができる。緻密に織造されたものであっても、全体厚さが0.4mm未満の場合は、内容物の保液性が低下し、容器が逆さになるか又は斜めになったとき、内容物が漏れる恐れがある。一方、3mmを超える場合は、容器の大きさを減らすか又は内容物の容量を増加させて本来の目的である携帯及び便宜性を向上させることができず、さらに使い残しも増加する問題がある。したがって、前記膜形成部材の全体厚さは0.4mm以上3.0mm以下が適切であり、望ましくは0.6mm以上2mm以下が適切である。
【0024】
本発明の膜形成部材において「膜」とは、化粧料組成物の表面に生ずる界面張力、引力などによって形成される化粧料組成物の水膜または油膜だけでなく、部材に含浸されて生じる表面膜をすべて含む意味で用いられる。
【0025】
本発明の膜形成部材によって化粧料組成物の膜が形成されるだけでなく、化粧料組成物に形成された膜と化粧料組成物膜形成部材によって化粧料組成物が漏液なく保持されることもできる。
【0026】
本発明の膜形成部材の場合、厚さの外に気孔の大きさ、弾力性なども水膜または油膜の形成に影響を及ぼし得る。
【0027】
内容物をよく保持し、使用時の円滑な取出のためには、適当な吸水能または吸油能を有し、厚さは厚いほど、気孔は小さいほど、内容物の保持能力が優れる。弾力性は、使用後にシート状の膜形成部材が本来の形状に戻れるように、繊維の織造方法、繊維の種類及び厚さ、または混紡方法を調節し、内容物の特性及び容器の深さを考慮して使用性に優れ、使い残しが少ないように選択することが望ましい。また、繊維の場合、原糸自体をコーティングして表面特性を改質するか、又は、生地自体をコーティングして表面特性を改質して使用することができる。
【0028】
本発明の「化粧料組成物膜形成部材」は、化粧料組成物の漏液を防止する保持機能だけでなく、上部からの押下力によって気孔が大きくなりながら内容物が吐出し、力を除外すれば気孔が小さくなって内容物の吐出を制限する機能を有する。すなわち、本発明者らは当業界で周知の「低粘度化粧料は漏液が生じるため、密閉構造の容器にしか収容することができない」との認識から逸脱した画期的な形態の化粧品を提供する。
【0029】
前記化粧料組成物膜形成部材は、化粧料組成物の漏液を防止する役割をするという点で支持体として機能でき、気孔の形態が変形しながら吐出と吐出中断を繰り返すという点で吐出調節機能も果たすことができる。
【0030】
本発明に含まれる膜形成部材は、繊維生地、発泡ゴムシート、発泡ウレタンシート及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つであり得る。
【0031】
繊維生地は繊維を加工して布にしたもので、繊維の集合を意味する。繊維は非常に細長く柔軟に曲げられる天然または人造の線状体であって、その生成過程によって天然繊維と人造繊維とに大別される。天然繊維には植物繊維、動物繊維、鉱物繊維があり、植物繊維には綿花、カポック(kapok)綿、コイア(coir)などの種子繊維、マニラ麻、サイザル麻などの葉脈繊維、そしてアマ、カラムシ、黄麻、麻などの靭皮繊維があり、動物繊維には羊毛、山羊毛、ラクダ毛、カシミヤなどの獣毛繊維、家蠶絹、野蠶絹などの絹繊維がある。そして、鉱物繊維には、石綿(アスベストス)などがある。人造繊維は無機繊維と有機繊維とに大別できるが、無機繊維には金箔糸、銀箔糸などの金属繊維があり、ガラス繊維、岩石繊維、鉱滓繊維などのケイ酸塩繊維がある。有機繊維は、再生繊維、半合成繊維、合成繊維に分けられる。再生繊維にはビスコースレーヨン、キュプラレーヨンなどの繊維素繊維とタンパク質繊維があり、半合成繊維にはアセテート、トリアセテートなどがあり、合成繊維にはポリアミド系としてナイロン繊維、ポリエステル系としてポリエステル繊維、ポリウレタン系、ポリウレア系、ポリエチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリビニリデン系、ポリテトラフルオロエチレン系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリロニトリル系、ポリプロピレン系などがあり、これら繊維を単独で使用するか又は2種以上を混合して使用することができる。織造方法により延伸力が与えられたものが良いが、ポリエステル系繊維とポリウレタン系繊維の一種であるスパンデックスとを混紡して弾力性を与えて使用することが望ましい。
【0032】
本発明の一実施例においては、繊維を用いてシート状の生地を製造して化粧料組成物膜形成部材として使用する。生地は、組織をもって織物、編物、そして不織布に大別することができる。織物は縦糸(経糸)と横糸(緯糸)とが直角で交差しながら織られ、最も基本的な織物組織である。交差点が多いため組織が丈夫であり、織り方によって平織、綾織、朱子織がある。平織は、縦糸と横糸とで織る方法のうち最も簡単且つ緻密であり、縦糸と横糸とが一本ずつ交差する。交差点が多いため、強度が高く、滑りの少ない織物を生産する。代表的な織物としては、フレスコオーガンジー(fresco organdy)、タフタ(taffeta)、モスリン(muslin)などがある。綾織は、縦糸と横糸とをそれぞれ2本以上ずつ飛ばして斜線が現われるようにした織物である。少し柔らかく、しわが寄り難い。組織と密度によって滑らかで緻密であり、耐久性が強い。種類としては、デニム、ドリル、ギャバジン(gabardine)、ツイル(twill)、トリコチン(tricotine)、サージ(serge)などがある。朱子織は、縦糸が4本またはそれ以上の横糸上に一定間隔に配置され、均一且つ滑らかであり、光沢がある。種類としては、サテン、ダマスク、アトラスなどがある。
【0033】
編物は、横糸と縦糸とが直角で交差しながら織られる織物と違って、棒針またはかぎ針などの編み針を使用して1本の糸で結び目を作りながら編み合わせるものである。糸が結び目で繋がれているため、最後の結び目を解けば1本の糸に戻る特徴がある。また、2本以上の糸が編み合わせられる網、マクラメ(macrame)、レースなども編物の技法を用いる。編物は、経編と緯編とに分けられる。経編は経糸方向(縦)に糸が給糸される一方、緯編は緯糸方向(横)に糸が給糸される。上記2種類は準備工程及び機械など生地に成るまでのすべての過程が異なる。圧迫衣類や水着に使用される生地が経編、ニット類が緯編に属する。本発明のシート状膜形成部材は織物や編物をすべて使用することができる。
【0034】
本発明の生地は、起毛の有無に関係なく、あらゆる種類の生地を使用することができる。
【0035】
本発明による前記化粧料組成物膜形成部材は、繊維生地の外に、発泡ゴムシート、発泡ポリウレタンシート、またはこれらの混合物を使用することができる。望ましくは、繊維生地とともに、発泡ゴムシート、発泡ポリウレタンシート及びこれらの混合物から選択されたいずれか1つを共に使用することができる。
【0036】
前記発泡ゴム類や発泡ポリウレタン類は、化粧料組成物の含浸用として当業界で通常使用されるものであれば制限なく使用でき、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアセテート(EVA)及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つを使用することができる。
【0037】
前記発泡ポリウレタン類は、ポリエーテルウレタン、ポリブタジエンウレタン、ポリエステルウレタンまたはこれらの混合物などを使用して単独または混合発泡加工したものであり得、当業界で通常使用される発泡ポリウレタン類は本発明の範囲にすべて含まれる。
【0038】
前記膜形成部材として使用可能な発泡ゴム類は、天然ゴム、合成ゴムまたはこれらの組合せを発泡させて製造するものであり、発泡は当業界で一般に用いる発泡剤、触媒などを使用して行うことができる。
【0039】
前記天然ゴムは、一般的な天然ゴムまたは変性天然ゴムであり得、改質された天然ゴムを含むことができる。前記天然ゴムは、一般に、NR(natural rubber)を含むことができる。天然ゴムとして知られたものであればいずれも使用でき、原産地などで限定されない。前記合成ゴムは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、変性スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム(BR)、変性ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、水素化されたニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、変性ニトリルブタジエンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、スチレンブタジエンスチレンゴム(SBS)、及びこれらの組合せからなる群より選択されるいずれか1つであり得る。
【0040】
本発明の化粧料組成物は、本明細書の粘度範囲を有する流動性の化粧料組成物であれば本発明の範囲に含まれ得、剤形は特に制限されない。
【0041】
前記低粘度化粧料組成物20は、本発明の目的から逸脱しない範囲内で必要に応じて、色素、抗酸化剤、活性剤、保湿剤、薬剤、金属イオン封鎖剤、多価アルコール、防腐剤及び香料などを含むことができる。
【0042】
前記化粧料組成物は、当業界の通常の方法によって製造することができる。