【解決手段】可撓性を有する基材層11と、基材層11上に形成され、離型層が形成された微細凹凸パターンを有する表面形状体12とを備え、表面形状体12の軟化温度が、基材層11の軟化温度より高いレプリカ原盤10。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはもちろんである。また、各図中、同一符号は、同一または同等の構成要素を示している。
【0022】
(レプリカ原盤の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るレプリカ原盤10の構成の一例を示す図である。
【0023】
図1に示すレプリカ原盤10は、基材層11と、表面形状体12とを備える。
【0024】
基材層11は、シート状の基材であり、立体的な被形成体の形状に追従して変形するために、可撓性を有し、かつ、十分な伸び率(例えば、10%以上)を有することが望ましい。また、基材層11の厚さは、立体的な被形成体の形状に追従して変形するために、薄いことが好ましく、500μm以下、より好ましくは、100μm以下であることが好ましい。なお、本明細書において、「可撓性を有する」とは、人間の手によって曲げ、かつ、撓めることができることを指す。また、本明細書において、「伸び率」は、例えば、以下の方法により求めることができる。
【0025】
測定対象とする基材を、長さ10.5cm×幅2.5cmの短冊状にして測定試料とする。得られた測定試料の引張り伸び率を引張り試験機(オートグラフAG−5kNXplus、株式会社島津製作所製)で測定(測定条件:引張り速度=100mm/min;チャック間距離=8cm)する。伸び率の測定においては、基材の種類によって測定温度が異なり、伸び率は、基材の軟化点近傍又は軟化点以上の温度で測定する。具体的には、10℃〜250℃の間である。例えば、基材が、ポリカーボネートやPC/PMMA積層体の場合は、190℃で測定するのが好ましい。
【0026】
基材層11は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン(PE)、アモルファスポリエチレンテレフタレート(APET)、ポリスチレン(PS)、トリアセチルセルロース(TAC)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などで構成される。レプリカ原盤10の製造後の工程を考慮した場合、基材層11は、PMMA,PC,PVC,TACなどで構成されることが好ましい。
【0027】
表面形状体12は、基材層11上に所定の厚みを持って形成され、表面には微細凹凸パターンが形成されている。表面形状体12は、活性エネルギー線により硬化する樹脂、例えば、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマーなどの重合体で構成される。また、表面形状体12は、無機化合物により構成されてもよい。ここで、表面形状体12は、その軟化温度が、基材層11の軟化温度よりも高くなるような材料により構成される。なお、軟化温度は、フィルムが軟化して加圧などで変形する温度であり、動的粘弾性測定(DMA測定)にて、貯蔵弾性率(E’)が0.3GPa以下となる温度である。
【0028】
本実施形態に係るレプリカ原盤10によれば、表面形状体12の軟化温度は、基材層11の軟化温度よりも高い。したがって、レプリカ原盤10を立体的な被形成体の形状に追従して変形させるために、基材層11をその軟化温度まで加熱した場合にも、表面形状体12は軟化しない。そのため、表面形状体12の微細凹凸パターンの崩れを防ぎ、転写の精度の劣化を抑制することができる。
【0029】
なお、レプリカ原盤10の構成は、
図1に示す構成に限られない。例えば、
図2に示すように、基材層11と表面形状体12との間に、バインダ層としての中間層13を略平坦状に形成し、中間層13により基材層11と微細凹凸パターンを有する表面形状体12とが固着されていてもよい。
【0030】
また、
図3Aに示すように、基材層11上に所定の厚みを持ち、微細凹凸パターンを有する中間層13を形成し、中間層13の表面を覆うように、表面形状体12を形成してもよい。また、
図3Bに示すように、中間層13が複数層で形成されていてもよい。
図3Bでは、基材層11上に略平坦な中間層13−2が形成され、中間層13−2上に所定の厚みを持ち、微細凹凸パターンを有する中間層13−1が形成されている。そして、中間層13−1の表面を覆うように、表面形状体12が形成されている。
【0031】
図2,3A,3Bに示すように、中間層13を設けることで、基材層11と表面形状体12との間の密着性を向上させたり、光学特性を向上させたりすることができる。なお、中間層13は、例えば、PC、樹脂浸透性を有するアクリレートモノマー、ウレタン系などの多官能オリゴマーなどにより構成される。
【0032】
また、離型性を高めるために、表面形状体12の表面に離型層として、フッ素やシリコーンを含むアクリルモノマーからなる層、あるいは、酸化物からなる層を形成してもよい。なお、表面形状体12の表面に酸化物を成膜することで、より確実に、表面形状体12の微細凹凸パターンの変形を防ぐことができる。
【0033】
(レプリカ原盤を用いた被形成体への微細構造体の形成の概略)
次に、レプリカ原盤10を用いた微細構造体の形成の概略について
図4A〜
図4Dを参照して説明する。なお、以下では、微細構造体が形成される被形成体は、例えば、凸レンズのような凸面を有するものとし、その凸面に微細構造体(微細凹凸パターン)を形成するものとして説明する。
【0034】
まず、
図4Aに示すように、被形成体に形成する微細構造体に対応する微細凹凸パターンを有するマスターモールド14を製造する。マスターモールド14は、インプリント用マスターモールドの既知の製造方法により製造される。例えば、石英プレートにレジスト層を成膜し、形成する微細凹凸パターンに合わせて光を照射する(露光する)。次に、レジスト層の上に現像液を塗布して、レジスト層を現像し、微細凹凸パターンに対応するレジストパターンをレジスト層に形成する。レジストパターンが形成されたレジスト層をマスクとしてエッチングを行うことで、石英プレートに微細凹凸パターンが形成される。なお、マスターモールド14は、プレート状ではなく、ロール状であってもよい。
【0035】
次に、マスターモールド14を用いて、
図4Bに示すようなレプリカ原盤10を製造する。マスターモールド14を用いたレプリカ原盤10の製造は、例えば、未硬化の光硬化性樹脂を、マスターモールド14と基材層11との間に挟み込み、その後、光硬化性樹脂に光(紫外光)を照射して硬化させる。未硬化の光硬化性樹脂を、マスターモールド14との基材層11との間で挟み込むことで、マスターモールド14の微細凹凸パターンが未硬化の光硬化性樹脂に転写される。そして、紫外光を照射することで、微細凹凸パターンが転写された状態で光硬化性樹脂を硬化させ、その後、マスターモールド14を硬化した光硬化性樹脂から離型させる。硬化した光硬化性樹脂を表面形状体12とすることで、基材層11の上に微細凹凸パターンを有する表面形状体12が形成されたレプリカ原盤10を製造することができる。
【0036】
上述した方法では、表面形状体12に形成される微細凹凸パターンは、マスターモールド14に形成された微細凹凸パターンを反転させたものとなる。ただし、これに限られるものではなく、例えば、マスターモールド14の微細凹凸パターンを別の転写物に転写し、その転写物に転写された微細凹凸パターンを未硬化の光硬化性樹脂に転写し、その後、光硬化性樹脂を硬化して表面形状体12とすることで、マスターモールド14の微細凹凸パターンと同じ微細凹凸パターンを有する表面形状体12が形成されたレプリカ原盤10を製造することもできる。
【0037】
なお、上述したような、未硬化の光硬化性樹脂にマスターモールド14を押し当て、その後、光硬化性樹脂を硬化させる方式(光転写方式)の代わりに、熱硬化性樹脂を用いた熱転写方式によっても、レプリカ原盤10を製造することができる。レプリカ原盤10を製造する工程の詳細については後述する。
【0038】
次に、レプリカ原盤10をマスターモールド14から離間させた後、レプリカ原盤10を加熱し、
図4Cに示すように、被形成体の形状に合わせた型15にレプリカ原盤10を押し当てる。こうすることで、レプリカ原盤10は、型15の形状、すなわち、被形成体の形状に追従して変形(プレフォーム)する。なお、レプリカ原盤10は、表面形状体12が型15と対向するように、型15に押し当てる。
図4Cに示す工程(レプリカ原盤10を変形させる工程)の詳細については、後述する。
【0039】
次に、
図4Dに示すように、被形成体16の表面に未硬化の光硬化性樹脂17を塗布し、型15(被形成体16)の形状に追従して変形したレプリカ原盤10を、表面形状体12が光硬化性樹脂17を向くようにして、光硬化性樹脂17に押し付ける。表面形状体12が未硬化の光硬化性樹脂17に押し付けられることで、表面形状体12の微細凹凸パターンが光硬化性樹脂17に転写される。そして、未硬化の光硬化性樹脂17に光(紫外光)を照射して硬化させることで、被形成体16に微細構造体が形成される。
【0040】
(レプリカ原盤の製造工程)
次に、
図4Bに示すレプリカ原盤10を製造する工程の詳細について、
図5A,5Bを参照して説明する。なお、以下では、上述した光転写方式ではなく、加熱により樹脂を軟化させ、その軟化した樹脂にマスターモールド14に押し付けることで、マスターモールド14に形成された微細凹凸パターンを軟化した樹脂に転写する方式について説明する。
【0041】
レプリカ原盤10を製造する工程は大きく分けて、加熱工程と、転写工程と、離型工程とを含む。
【0042】
まず、
図5Aに示すように、基材層11の上に略平坦状の樹脂層12aが形成された積層体10aを用意する。樹脂層12aは、表面形状体12と同じ材料により構成される。したがって、樹脂層12aの軟化温度は、基材層11の軟化温度より高い。
【0043】
加熱工程では、積層体10aを、樹脂層12aが軟化するまで加熱する。加熱手法としては、高温体の接触による伝導加熱、高温流体の対流による対流加熱、赤外光(IR)などの放射加熱などの手法がある。
【0044】
転写工程では、
図5Bに示すように、加熱した樹脂層12aをマスターモールド14に押し付ける。加熱した樹脂層12aをマスターモールド14に押し付けることで、マスターモールド14に形成された微細凹凸パターンが樹脂層12aに転写される。マスターモールド14に樹脂層12aを押し付ける手法としては、気体や液体による流体加圧、積層体10aの端部をクランプしてマスターモールド14に押し付ける手法などがある。また、加熱工程では、樹脂層12aが軟化するまで、積層体10aが加熱されている。したがって、軟化温度が樹脂層12aの軟化温度以下である基材層11も軟化している。そのため、真空成型、圧空成形、TOM(Three dimension Overlay Method)成形などを用いることで、基材層11はマスターモールド14の形状に倣うこととなり、より再現性の高い樹脂層12aへの微細凹凸パターンの転写が可能となる。
【0045】
離型工程では、転写工程後の積層体10aを冷却し、基材層11および樹脂層12aを硬化させる。次に、樹脂層12aからマスターモールド14を離間する。こうすることで、基材層11の上に、マスターモールド14の微細凹凸パターンが転写された樹脂層12aを表面形状体12とするレプリカ原盤10が得られる。
【0046】
(レプリカ原盤の変形)
次に、
図4Cに示すレプリカ原盤10を変形させる工程の詳細について、
図6A〜
図6Eを参照して説明する。なお、以下では、押上成形によりレプリカ原盤10を変形させる工程について説明する。
【0047】
まず、
図6Aに示すように、被形成体16に合った形状の型15がステージ21上に載置される。ステージ21の周囲には側壁22が設けられ、ステージ21は、側壁22に沿って移動可能に(
図6Aにおいては上下に移動可能に)設けられている。側壁22には、レプリカ原盤10を支持するための支持部23が設けられ、支持部23によりレプリカ原盤10が型15と対向するように支持される。レプリカ原盤10は、表面形状体12が型15と対向するように支持される。支持部23に支持されたレプリカ原盤10の型15とは反対側には、側壁22により支持され、ステージ21と対向する石英板24が設けられている。石英板24は光を透過可能である。ステージ21、側壁22および支持部23に支持されたレプリカ原盤10により囲まれる領域25が密閉され、また、石英板24、側壁22および支持部23に支持されたレプリカ原盤10により囲まれる領域26が密閉されるように、ステージ21、側壁22、支持部23および石英板24は設けられている。
【0048】
支持部23により支持されたレプリカ原盤10を、基材層11の軟化温度以上であり、かつ、表面形状体12の軟化温度より低い温度に加熱する。上述したように、表面形状体12の軟化温度は、基材層11の軟化温度よりも高い。そのため、基材層11は軟化するが、表面形状体12は軟化しない。したがって、表面形状体12の表面に形成された微細凹凸パターンの形状の崩れが生じることはない。
【0049】
次に、
図6Bに示すように、領域25および領域26の真空引きを行う。上述したように、ステージ21は、側壁22に沿って上下に移動可能である。領域25が真空引きされることで、ステージ21は上方向に向かって(支持部23に支持されたレプリカ原盤10に向かって)移動する。
【0050】
ステージ21が上方向に向かって移動し、
図6Cに示すように、型15が支持部23に支持されたレプリカ原盤10を押し上げる。型15により押し上げられることで、レプリカ原盤10は、型15の形に沿って変形する。ただし、型15による押し上げだけでは、型15とレプリカ原盤10とを隙間なく密着させることはできず、型15の端部近傍には、型15とレプリカ原盤10との間に隙間27が生じている。
【0051】
次に、
図6Dに示すように、型15がレプリカ原盤10を押し上げたままで、領域26に圧縮空気を導入して、圧力をレプリカ原盤10に印加する。こうすることで、型15の端部付近においても、型15とレプリカ原盤10とが密着する。この状態で、レプリカ原盤10を冷却し、レプリカ原盤10を支持部23および型15から取り外すことで、
図6Eに示すように、型15の形状に沿って変形したレプリカ原盤10が作製される。
【0052】
(被形成体への微細構造体の形成)
次に、
図4Dに示す被形成体16に微細構造体を形成する工程の詳細について、
図7A〜
図7Dを参照して説明する。なお、以下では、立体形状の被形成体16に微細構造体を形成する例を用いて説明する。ここで、「立体形状の被形成体」とは、レプリカ原盤10に形成された微細構造体(微細凹凸パターン)の高さよりも大きい曲率半径をもつ曲面を有する被形成体を指す。上述したように、レプリカ原盤10は、被形成体16の形状に追従して変形される。したがって、被形成体16の形状に追従して変形されたレプリカ原盤10は、レプリカ原盤10に形成された微細構造体(微細凹凸パターン)の高さよりも大きい曲率半径をもつ曲面を有する。
【0053】
被形成体16に微細構造体を形成する工程は大きく分けて、塗布工程と、転写工程と、光硬化工程と、離型工程とからなる。
【0054】
塗布工程では、
図7Aに示すように、被形成体16の表面に未硬化の光硬化性樹脂17を塗布する。被形成体16への光硬化性樹脂17の塗布の手法としては、光硬化性樹脂17の粘度や被形成体16の形状に合わせて、スプレー塗布、インクジェット塗布、ディスペンサ塗布、ディップ塗布、スポイト滴下、スピンコートなどの種々の手法を用いることができる。被形成体16と光硬化性樹脂17との間に、被形成体16と光硬化性樹脂17との密着性の向上、光学特性の向上などのために、中間層を設けてもよい。
【0055】
転写工程では、
図7Bに示すように、被形成体16に塗布された光硬化性樹脂17にレプリカ原盤10を押し付ける。上述したように、レプリカ原盤10は、表面形状体12が被形成体16に向かう状態で、型15(被形成体16)の形状に追従して変形されている。したがって、このレプリカ原盤10を被形成体16に押し付けることで、表面形状体12が光硬化性樹脂17に押し付けられる。表面形状体12が光硬化性樹脂17に押し付けられることにより、表面形状体12に形成された微細凹凸パターンが光硬化性樹脂17に転写される。
【0056】
レプリカ原盤10の被形成体16(光硬化性樹脂17)への押し付けの手法としては、基材層11側から気体や液体などの流体加圧、弾性のある固体による押し付け、ローラによる押し付けなどの手法がある。
【0057】
光硬化工程においては、
図7Cに示すように、レプリカ原盤10が光硬化性樹脂17に押し付けられた状態で、活性エネルギー線を光硬化性樹脂17に照射して硬化させる。活性エネルギー線としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外LED(Light Emitting Diode)などの光源から出射される光線がある。
【0058】
なお、レプリカ原盤10が活性エネルギー線を透過する場合には、レプリカ原盤10側から活性エネルギー線を光硬化性樹脂17に照射すればよく、また、被形成体16が活性エネルギー線を透過する場合には、被形成体16側から活性エネルギー線を光硬化性樹脂17に照射すればよい。
【0059】
離型工程では、
図7Dに示すように、被形成体16とレプリカ原盤10とを離間させる。被形成体16の表面には、レプリカ原盤10の表面形状体12の微細凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂17が硬化して微細構造体17aが形成される。こうして、微細構造体17aが形成された被形成体16(物品)が製造される。
【0060】
ここで、被形成体16とレプリカ原盤10とを離間させる際には、レプリカ原盤10の表面形状体12の脱落やレプリカ原盤10の破損が無いようにする必要がある。本実施形態においては、レプリカ原盤10はフィルム形状であるため、従来の石英や金属などで構成される原盤と比較して柔軟に変形しやすいため、離型の際に破損する可能性が小さい。また、フィルム状のレプリカ原盤10の離型の際には、レプリカ原盤10の端部から変形させて離間させていくのが通常であるが、必要に応じて、被形成体16を変形させたり、空気などの流体をレプリカ原盤10と被形成体16との間に吹き付けて離間を促進させたりしてもよい。
【0061】
なお、レプリカ原盤10と被形成体16とを貼り合わせることで、被形成体16に微細構造体を形成してもよい。この場合、レプリカ原盤10の基材層11側に接着剤を塗布するなどして被形成体16に貼付することで、微細構造体17aを被形成体16に形成する(被形成体16に貼付されたレプリカ原盤10自体を微細構造体17aとする)ことができる。
【0062】
また、上述した実施形態においては、レプリカ原盤10を被形成体16の形状に追従して変形させる工程と、変形したレプリカ原盤10を用いて被形成体16に微細構造体17aを形成する工程とを分けて説明したが、変形例として、これらの工程を一体的に行うことも可能である。
【0063】
以下では、変形例に係る、レプリカ原盤10の変形および被形成体16への微細構造体17aの形成について説明する。本変形例に係るレプリカ原盤10の変形および被形成体16への微細構造体17aの形成は、
図6A〜
図6Eを参照して説明したレプリカ原盤の変形の際に用いられた、ステージ21、側壁22、支持体23、石英板24などからなる装置を用いて行われる。
【0064】
まず、光硬化性樹脂17を塗布した被形成体16をステージ21に載置する。また、表面形状体12が被形成体16を向くようにして、支持部23によりレプリカ原盤10を支持する。
【0065】
次に、領域25の真空引きを行うとともに、領域26に圧縮空気を導入する。領域25の真空引きを行うことで、ステージ21は上方向に向かって(支持部23に支持されたレプリカ原盤10に向かって)移動する。ステージ21の移動に伴い、光硬化性樹脂17が塗布された被形成体16が支持部23に支持されたレプリカ原盤10を押し上げる。上述したように、レプリカ原盤10の押し上げだけでは、被形成体16とレプリカ原盤10との間に隙間が生じてしまう。本変形例においては、領域25の真空引きを行うとともに、領域26に圧縮空気を導入する。圧縮空気の導入により、レプリカ原盤10に圧力が印加される。そのため、レプリカ原盤10と被形成体16とを隙間なく密着させることができる。
【0066】
次に、領域25の真空引きを行うとともに、領域26に圧縮空気を導入した状態のまま、石英板24の上側から光を照射する。上述したように、石英板24は光を透過させる。したがって、レプリカ原盤10も光を透過するように形成することで、被形成体16に塗布された光硬化性樹脂17に光が照射され、光硬化性樹脂17が硬化する。
【0067】
次に、被形成体16とレプリカ原盤10とを離間させる。被形成体16の表面には、レプリカ原盤10の表面形状体12の微細凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂17が硬化して微細構造体17aが形成される。
【0068】
これまでは凸面を有する被形成体16の凸面に微細凹凸パターンを形成する例を説明したが、これに限られるものではなく、本発明は、被形成体が凹面を有し、その凹面に微細凹凸パターンを形成する場合にも適用可能である。以下では、
図8に示すように、凹面を有する被形成体16Aの凹面に微細構造体17a(微細凹凸パターン)を形成する例について説明する。
【0069】
なお、凹面に微細構造体17a(微細凹凸パターン)が形成された被形成体16Aは、例えば、
図8に示すように、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示体18の前面にエアーギャップを設けて取り付けられるトッププレート(カバー)として用いられる。また、被形成体16Aは、タッチパネルの内側(表示体側)に設けられる反射防止部材としても用いられる。なお、
図8においては、表示体の前面にも反射防止のための微細構造体19が形成されている例を示している。微細構造体19は、例えば、表示体18の前面上に略平坦に設けられたTAC(トリアセチルセルロース)フィルムなどのベースフィルム、および、ベースフィルム上に設けられた微細凹凸パターンを有する光硬化性樹脂(例えば、アクリル系紫外線硬化樹脂)などからなる。微細構造体19の構成や形成方法などは当業者にとって既知であり、また、本発明と直接関係しないため、説明を省略する。
【0070】
まず、
図9A〜
図9Eを参照して、レプリカ原盤10を被形成体16Aの形状に合わせて変形させる工程の詳細について説明する。なお、以下では、押上成形によりレプリカ原盤10を変形させる工程について説明する。また、
図9A〜
図9Eにおいて、
図6A〜
図6Eと同様の構成については、説明を省略する。
【0071】
まず、
図9Aに示すように、被形成体16Aの凹面の形状に合った凹面を有する型15Aがステージ21上に載置される。ここで、型15Aは、凹面が支持部23により支持されるレプリカ原盤10と対向するように支持される。なお、レプリカ原盤10は、表面形状体12が型15Aと対向するように支持される。
【0072】
次に、支持部23により支持されたレプリカ原盤10を、基材層11の軟化温度以上であり、かつ、表面形状体12の軟化温度より低い温度に加熱する。上述したように、表面形状体12の軟化温度は、基材層11の軟化温度よりも高い。そのため、基材層11は軟化するが、表面形状体12は軟化しない。したがって、表面形状体12の表面に形成された微細凹凸パターンの形状の崩れが生じることはない。
【0073】
次に、
図9Bに示すように、領域25および領域26の真空引きを行う。上述したように、ステージ21は、側壁22に沿って上下に移動可能である。領域25が真空引きされることで、ステージ21は上方向に向かって(支持部23に支持されたレプリカ原盤10に向かって)移動する。
【0074】
ステージ21が上方向に向かって移動し、
図9Cに示すように、型15Aが支持部23に支持されたレプリカ原盤10を押し上げる。型15Aにより押し上げられることで、レプリカ原盤10は、型15Aの形(型15Aの凹面)に沿って変形する。ただし、型15Aによる押し上げだけでは、型15Aとレプリカ原盤10とを隙間なく密着させることはできず、型15Aの端部近傍には、型15Aとレプリカ原盤10との間に隙間27が生じる。
【0075】
次に、
図9Dに示すように、型15Aがレプリカ原盤10を押し上げたままで、領域26に圧縮空気を導入して、圧力をレプリカ原盤10に印加する。こうすることで、型15Aの端部付近においても、型15Aとレプリカ原盤10とが密着する。この状態で、レプリカ原盤10を冷却し、レプリカ原盤10を支持部23および型15Aから取り外すことで、
図9Eに示すように、型15Aの形状に沿って変形したレプリカ原盤10が作製される。
【0076】
次に、被形成体16Aの凹面に微細構造体を形成する工程の詳細について、
図10A〜
図10Dを参照して説明する。なお、
図10A〜
図10Dにおいて、
図7A〜
図7Dと同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0077】
被形成体16Aに微細構造体を形成する工程は大きく分けて、塗布工程と、転写工程と、光硬化工程と、離型工程とからなる。
【0078】
塗布工程では、
図10Aに示すように、被形成体16Aの凹面に未硬化の光硬化性樹脂17を塗布する。被形成体16Aへの光硬化性樹脂17の塗布の手法としては、光硬化性樹脂17の粘度や被形成体16Aの形状に合わせて、スプレー塗布、インクジェット塗布、ディスペンサ塗布、ディップ塗布、スポイト滴下、スピンコートなどの種々の手法を用いることができる。被形成体16Aと光硬化性樹脂17との間に、被形成体16Aと光硬化性樹脂17Aとの密着性の向上、光学特性の向上などのために、中間層を設けてもよい。
【0079】
転写工程では、
図10Bに示すように、被形成体16Aに塗布された光硬化性樹脂17にレプリカ原盤10を押し付ける。上述したように、レプリカ原盤10は、表面形状体12が被形成体16Aに向かう状態で、型15A(被形成体16A)の形状に追従して変形されている。したがって、このレプリカ原盤10を被形成体16Aに押し付けることで、表面形状体12が光硬化性樹脂17に押し付けられる。表面形状体12が光硬化性樹脂17に押し付けられることにより、表面形状体12に形成された微細凹凸パターンが光硬化性樹脂17に転写される。
【0080】
光硬化工程においては、
図10Cに示すように、レプリカ原盤10が光硬化性樹脂17に押し付けられた状態で、活性エネルギー線(例えば、紫外光)を光硬化性樹脂17に照射して硬化させる。
【0081】
離型工程では、
図10Dに示すように、被形成体16Aとレプリカ原盤10とを離間させる。被形成体16Aの表面には、レプリカ原盤10の表面形状体12の微細凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂17が硬化して微細構造体17aが形成される。こうして、微細構造体17aが形成された被形成体16A(物品)が製造される。
【0082】
なお、レプリカ原盤10を被形成体16Aの形状に追従して変形させる工程と、変形したレプリカ原盤10を用いて被形成体16Aに微細構造体17aを形成する工程とを一体的に行ってもよい。
【0083】
すなわち、まず、スピンコートなどにより凹面に光硬化性樹脂17を塗布する。そして、凹面に光硬化性樹脂17を塗布した被形成体16Aを、
図6A〜
図6Dあるいは
図9A〜
図9Dで示した装置のステージ21に載置する。また、表面形状体12が被形成体16Aを向くようにして、支持部23によりレプリカ原盤10を支持する。
【0084】
次に、領域25の真空引きを行うとともに、領域26に圧縮空気を導入する(真空差圧)。領域25の真空引きを行うことで、ステージ21は上方向に向かって(支持部23に支持されたレプリカ原盤10に向かって)移動する。ステージ21の移動に伴い、光硬化性樹脂17が塗布された被形成体16Aが支持部23に支持されたレプリカ原盤10を押し上げる。上述したように、レプリカ原盤10の押し上げだけでは、被形成体16Aとレプリカ原盤10との間に隙間が生じてしまう。そこで、領域25の真空引きを行うとともに、領域26に圧縮空気を導入する。圧縮空気の導入により、レプリカ原盤10に圧力が印加される。そのため、レプリカ原盤10と被形成体16Aとを隙間なく密着させることができる。
【0085】
次に、領域25の真空引きを行うとともに、領域26に圧縮空気を導入した状態のまま、石英板24の上側から光を照射する。上述したように、石英板24は光を透過させる。したがって、レプリカ原盤10も光を透過するように形成することで、被形成体16Aに塗布された光硬化性樹脂17に光が照射され、光硬化性樹脂17が硬化する。
【0086】
次に、被形成体16Aとレプリカ原盤10とを離間させる。被形成体16Aの表面(凹面)には、レプリカ原盤10の表面形状体12の微細凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂17が硬化して微細構造体17aが形成される。
【0087】
このように本実施形態においては、レプリカ原盤10は、基材層11と、基材層上に形成され、微細凹凸パターンを有する表面形状体12とを備え、表面形状体12の軟化温度が、基材層11の軟化温度より高い。
【0088】
そのため、レプリカ原盤10の変形のためにレプリカ原盤10を加熱する場合に、基材層11の軟化温度以上であり、表面形状体12の軟化温度より高い温度でレプリカ原盤10加熱することで、基材層11だけを軟化させ、レプリカ原盤10を変形させることができる。また、表面形状体12は軟化しないため、微細凹凸パターンの形状の崩れが生じず、微細凹凸パターンの崩れによる転写の精度の劣化を抑制することができる。
【実施例】
【0089】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0090】
(マスターモールドの作製)
まず、マスターモールド14の作製について説明する。
【0091】
外径が126mmのガラス製の基材(ガラスロール原盤)を用意した。このガラスロール原盤の表面に、フォトレジストをシンナーで質量比で1/10に希釈した希釈レジストをディッピング法により、ガラスロール原盤の円柱面上に平均厚み70nm程度に塗布してレジスト層を形成した。次に、レジスト層を形成したガラスロール原盤を露光装置に搬送して、レジスト層を露光することにより、螺旋状であって、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンをなす潜像をレジスト層にパターニングした。具体的には、六方格子状の露光パターンが形成されるべき領域に対して、0.50mW/mのレーザ光を照射して、六方格子状の露光パターンを形成した。
【0092】
次に、ガラスロール原盤上のレジスト層に現像処理を施して、露光した部分のレジスト層を溶解させて現像を行った。具体的には、現像機のターンテーブル上に未現像のガラスロール原盤を載置し、ターンテーブルごと回転させつつ、ガラスロール原盤の表面に現像液を滴下して、レジスト層を現像した。これにより、レジスト層が六方格子パターンに開口したガラスロール原盤が得られた。
【0093】
次に、ロールエッチング装置を用い、CHF
3ガス雰囲気中でプラズマエッチングを行った。これにより、ガラスロール原盤の表面において、レジスト層から露出している六方格子パターン部分のみエッチングが進行し、その他の領域はレジスト層がマスクとなりエッチングされず、楕円錐形状の凹部がガラスロール原盤に形成された。エッチングの際、エッチング量(深さ)は、エッチング時間により調整した。最後に、酸素アッシングによりレジスト層を除去し、凹形状の六方格子パターンを有するガラスロール原盤(マスターモールド)を得た。
【0094】
(レプリカ原盤の作製および変形)
上述のようにして得られたガラスロール原盤(マスターモールド)を用いてレプリカ原盤を作製し、作製したレプリカ原盤を被形成体の形状に追従して変形させた。以下では、実施例および比較例に係るレプリカ原盤の製造およびレプリカ原盤の変形(プレフォーム)について説明する。なお、軟化温度は、50〜200μmの厚みで作製したフィルム状サンプルを40mm×0.5mmに打ち抜き、動的粘弾性測定装置(テキサスインスツルメント社製、製品名「Rheometrics System Analyzer-3 (RSA-3)」により動的粘弾性E’を測定し、動的粘弾性E’=0.3GPaとなる温度を軟化温度として測定した。
【0095】
(実施例1)
本実施例では、基材層11として、平均厚みが200μmのPVCフィルム(軟化温度84℃)を用いた。このPVCフィルムの上に紫外線硬化性樹脂組成物(軟化温度116℃)をスポイトにて滴下した。紫外線硬化性樹脂組成物の組成は、エステルアクリレート(DIC株式会社製、製品名「SP−10」)が90質量部、フッ素アクリレートモノマー(ユニマテック社製、製品名「FAAC−6」)が10質量部である。
【0096】
次に、紫外線硬化性樹脂組成物を滴下したPVCフィルムと上述の凹形状の六方格子パターンを有するガラスロール原盤とを密着させ、メタルハライドランプを用いて、PVCフィルム(基材層)側から1500mJ/cm
2の照射量で紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させた。その後、ガラスロール原盤を硬化した紫外線硬化性樹脂組成物から離間させた。以上の処理により、基材層11としてのPVCフィルムの上に、表面形状体12としての硬化した紫外線硬化性樹脂組成物が形成されたレプリカ原盤を得た。
【0097】
次に、得られたレプリカ原盤を被形成体16の形状に追従して変形させた。本実施例では、被形成体16として、外径が12.7mmであり、F値が15である凸レンズを用い、変形時のプロセス温度を120℃とし、押上成形により、レプリカ原盤を変形させた。
【0098】
(実施例2)
本実施例では、
図3に示すように、微細凹凸パターンを有する中間層13を形成し、中間層13の上に表面形状体12が形成されたレプリカ原盤を作製した。具体的には、基材層11として、PMMAフィルム(軟化温度102℃)を用いた。このPMMAフィルムの上に、中間層として、PC(軟化温度148℃)からなる層および紫外線硬化性樹脂(デクセリアルズ株式会社製、製品名「SK1900」)(軟化温度157℃)からなる層を形成した。次に、中間層を形成したPMMAとガラスロール原盤とを密着させ、メタルハライドランプを用いて、PMMAフィルム(基材層)側から1500mJ/cm
2の照射量で紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させた。この処理により、微細凹凸パターンを有する中間層を形成した。そして、微細凹凸パターンを有する中間層の上に、無機化合物である酸化タングステン層(軟化温度1473℃)を表面形状体12として形成し、レプリカ原盤を得た。
【0099】
次に、得られたレプリカ原盤を実施例1と同じ凸レンズの形状に追従して変形させた。なお、本実施例では、変形時のプロセス温度を190℃とし、押上成形により、レプリカ原盤を変形させた。
【0100】
(実施例3)
本実施例では、
図2に示すように、略平坦な中間層13を形成し、中間層13の上に表面形状体12が形成されたレプリカ原盤を作製した。具体的には、基材層11として、平均厚みが188μmのPETフィルム(軟化温度125℃)を用いた。このPETフィルムの上に、密着性の向上のための中間層(易接着層)を形成し、この中間層の上に、紫外線硬化性樹脂(デクセリアルズ株式会社製、製品名「SK1900」)(軟化温度157℃)を塗布した。
【0101】
次に、紫外線硬化性樹脂を塗布したPETフィルムとガラスロール原盤とを密着させ、メタルハライドランプを用いて、PETフィルム(基材層)側から1500mJ/cm
2の照射量で紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させた。以上の処理により、基材層11としてのPETフィルムの上に、表面形状体12としての硬化した紫外線硬化性樹脂が形成されたレプリカ原盤を得た。
【0102】
次に、得られたレプリカ原盤を実施例1と同じ凸レンズの形状に追従して変形させた。なお、本実施例では、変形時のプロセス温度を160℃とし、押上成形により、レプリカ原盤を変形させた。
【0103】
(比較例1)
本比較例では、基材層11として、平均厚みが100μmのCOCフィルム(軟化温度128℃)を用いた。このCOCフィルムの上に、表面形状体12として微細凹凸パターンを有する単層基材(軟化温度128℃)を形成してレプリカ原盤を得た。ここで、本比較例では、基材層11としてのCOCフィルムの軟化温度と、表面形状体12としての単層基材の軟化温度とが同じである。
【0104】
次に、得られたレプリカ原盤を実施例1と同じ凸レンズの形状に追従して変形させた。なお、本実施例では、変形時のプロセス温度を150℃とし、0.1MPaの真空差圧により、レプリカ原盤を変形させた。
【0105】
(比較例2)
本比較例では、基材層11として、PETフィルム(東洋紡績株式会社製、製品名「コスモシャインA4300」)(軟化温度184℃)を用いた。このPETフィルムの上に、実施例3と同様に、密着性の向上のための中間層(易接着層)を形成し、この中間層の上に、紫外線硬化性樹脂(デクセリアルズ株式会社製、製品名「SK1900」)(軟化温度157℃)を塗布した。
【0106】
次に、紫外線硬化性樹脂を塗布したPETフィルムとガラスロール原盤とを密着させ、メタルハライドランプを用いて、PETフィルム(基材層)側から1500mJ/cm
2の照射量で紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させた。以上の処理により、基材層11としてのPETフィルムの上に、表面形状体12としての硬化した紫外線硬化性樹脂が形成されたレプリカ原盤を得た。
【0107】
次に、得られたレプリカ原盤を実施例1と同じ凸レンズの形状に追従して変形させた。なお、本比較例では、変形時のプロセス温度を220℃とし、押上成形により、0.1MPaの真空差圧により、レプリカ原盤を変形させた。
【0108】
上述した実施例1〜3および比較例1,2により製造、変形されたレプリカ原盤の評価結果について説明する。
【0109】
図11Aは、実施例1に係るレプリカ原盤のプレフォーム前後の微細凹凸パターンをSEM(Scanning Electron Microscope)により撮影した断面撮影図である。
図11Bは、実施例2に係るレプリカ原盤のプレフォーム前後の微細凹凸パターンの断面撮影図である。
図11Cは、実施例3に係るレプリカ原盤のプレフォーム前後の微細凹凸パターンの断面撮影図である。
図11Dは、比較例1に係るレプリカ原盤のプレフォーム前後の微細凹凸パターンの断面撮影図である。
図811は、比較例2に係るレプリカ原盤のプレフォーム前後の微細凹凸パターンの断面撮影図である。なお、
図11A〜
図11Eにおいて、レプリカ原盤のプレフォーム後の撮影画像は、凸レンズの頂点部の撮影画像である。
【0110】
表1は、実施例1〜3、比較例1,2に係るレプリカ原盤における、プレフォーム前の微細凹凸パターンの高さと、プレフォーム後の微細凹凸パターンの高さと、プレフォーム前の微細凹凸パターンの高さとプレフォーム後の微細凹凸パターンの高さとの比である残留率と、変形後のレプリカ原盤の目視による評価結果とを示す図である。
【0111】
【表1】
【0112】
図11A〜11Cおよび表1に示すように、実施例1〜3では、プレフォーム前後で、微細凹凸パターンが崩れることなく(残留率が高く)、レプリカ原盤に微細凹凸パターンが転写されている。すなわち、レプリカ原盤が立体形状を維持したまま、微細凹凸パターンが形成されている。
【0113】
一方、
図11D,11Eおよび表1に示すように、比較例1,2では、プレフォーム前後で、微細凹凸パターンが崩れている(残留率が小さい)ことが分かる。
【0114】
また、実施例1〜3では、レプリカ原盤が被形成体の形状に追従して変形されている(評価結果:「良好」)のに対し、比較例1,2でが、レプリカ原盤が被形成体の形状に追従して変形されていない(評価結果:「不良」)ことが分かる。なお、評価結果が「良好」とは、レプリカ原盤にシワやクラックがなく、かつ曲面全体において、型に接している状態である。
【0115】
次に、実施例2に係るレプリカ原盤および比較例1に係るレプリカ原盤を用い、上述した凸レンズを被形成体として、凸レンズ上に微細構造体を作製し、作製した微細構造体の光学特性(反射率特性)を評価した。
【0116】
凸レンズへの微細構造体の形成は、凸レンズ上に紫外線硬化性樹脂(デクセリアルズ株式会社製、製品名「SK1120」)を塗布し、その紫外線硬化性樹脂に実施例2および比較例1に係るレプリカ原盤をそれぞれ押し付けた。そして、基材層側から1500mJ/cm
2の照射量で紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させた。その後、レプリカ原盤を離間させることで、硬化した紫外線硬化性樹脂からなる微細構造体が形成された凸レンズを得た。
【0117】
図12Aは、実施例2に係るレプリカ原盤を用いて形成した微細構造体の反射特性を示す図である。
図12Bは、比較例1に係るレプリカ原盤を用いて形成した微細構造体の反射率特性を示す図である。
【0118】
図12Bに示すように、比較例1に係るレプリカ原盤を用いて形成した微細構造体では、反射率は4.2%程度であるのに対し、実施例2に係るレプリカ原盤を用いて形成した微細構造体では、反射率は0.5%程度と、良好な反射防止光学特性が得られている。上述したように、比較例1に係るレプリカ原盤では、微細凹凸パターンの崩れが生じた。そのため、比較例1に係るレプリカ原盤を用いて形成された微細構造体でも凹凸形状が崩れ、その結果、良好な反射率特性が得られなかったと考えられる。一方、実施例2に係るレプリカ原盤では、微細凹凸パターンの崩れはほとんど生じなかった。そのため、実施例2に係るレプリカ原盤を用いて形成した微細構造体でも凹凸形状の崩れがなく、その結果、良好な反射率特性が得られたと考えられる。
【0119】
(実施例4)
上述したように、本発明は、凸面を有する被形成体16の凸面への微細構造体の形成だけでなく、凹面を有する被形成体16Aの凹面への微細構造体の形成にも適用することができる。本実施例では、凹面へ微細構造体を形成した。なお、本実施例では、レプリカ原盤10を被形成体16Aの形状に追従して変形させる工程と、変形したレプリカ原盤10を用いて被形成体16Aに微細構造体17aを形成する工程とを一体的に行った。
【0120】
本実施例では、被形成体16Aとして、シリンドリカル形状を有するポリカーボネート製のプレートを用いた。このようなプレートは、例えば、LCDなどの表示体の前面にエアーギャップを設けて取り付けられるトッププレート(カバー)として用いられる。用いた被形成体16Aは、曲率半径Rが500mmであり、曲率半径R方向の長さが200mmであり、幅(奥行)が140mmであった。
【0121】
まず、被形成体16Aの凹面に未硬化のアクリル系紫外線硬化樹脂をスピンコートにより塗布した。スピンコートは、被形成体16Aを1000rpmで30秒間回転させて行った。
【0122】
次に、凹面にアクリル系紫外線硬化樹脂を塗布した被形成体16Aをステージ21上に載置し、ロータリーポンプにより−0.1MPaまで領域25,26の真空引きを行った。領域25,26の真空引きにより、ステージ21上に載置された被形成体16Aを支持部23に支持されたレプリカ原盤に押し当てた。なお、本実施例では、レプリカ原盤(フィルムモールド)として、平均厚みが100μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「A4300」)を用いた。
【0123】
次に、フィルムモールド側、すなわち、領域26側に大気加圧を行った。これにより、フィルムモールドと被形成体16Aとを隙間なく密着させることができる。
【0124】
次に、フィルムモールドと被形成体16Aとが密着した状態で、フィルムモールド側から紫外光を照射した。紫外光源としては、メタルハライドランプを用い、1000mJ/cm
2の照射量で紫外線を照射した。紫外光の照射により被形成体16Aの凹面に塗布された未硬化のアクリル系紫外線硬化樹脂が硬化し、その後、フィルムモールドを被形成体16Aから剥離した。上述した処理により、被形成体16Aの凹面に、ピッチが150nm〜230であり、高さが200nm〜250nmの微細構造体を形成した。
【0125】
本発明を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。