(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-202832(P2017-202832A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】受水用袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/08 20060101AFI20171020BHJP
B65D 33/02 20060101ALI20171020BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20171020BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20171020BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20171020BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20171020BHJP
【FI】
B65D33/08
B65D33/02
B65D33/25 A
B65D33/38
B32B27/32 D
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-94052(P2016-94052)
(22)【出願日】2016年5月9日
(71)【出願人】
【識別番号】500242203
【氏名又は名称】有限会社関田商会
(74)【代理人】
【識別番号】100200584
【弁理士】
【氏名又は名称】浜林 尊幸
(72)【発明者】
【氏名】関田 和幸
【テーマコード(参考)】
3E064
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA27
3E064BA36
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA06
3E064EA07
3E064EA09
3E064FA04
3E064GA02
3E064HA06
3E064HA10
3E064HB03
3E064HB05
3E064HF08
3E064HF10
3E064HG02
3E064HG06
3E064HJ02
3E064HJ04
3E064HM01
3E064HN13
3E064HN65
3E064HS10
4F100AK04C
4F100AK42A
4F100AK46B
4F100AK63C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
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4F100EC18
4F100EJ38B
4F100GB16
4F100JA11A
4F100JJ03A
4F100JK10B
(57)【要約】
【課題】取っ手部の周りに引き裂きが発生しても、引き裂きの進行を防止することができる補強手段を施し、かつ取っ手部に入れる指先の負担の軽減を実現した袋を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の受水用袋は、ヒートシールによって袋状としたシート2と、シート2を多重化した開口部4と、開口部4に切り込みが形成された取っ手部5と、を備える袋において、シート2を多重化した開口部4は、少なくとも片面に凹凸模様が表れていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシールによって袋状としたシートと、
前記シートを多重化した開口部と、
前記開口部に切り込みが形成された取っ手部と、を備え、
前記シートは、前後面および底面から構成されることを特徴とする袋において、
前記開口部は、少なくとも片面に凹凸模様が表れていることを特徴とする受水用袋。
【請求項2】
前記開口部は、前記シートを折り返すことによって多重化され、前記ヒートシールは、前記開口部の前後面の間が除かれることを特徴とする請求項1に記載の受水用袋。
【請求項3】
前記凹凸模様は、凹凸を上下左右に交互に配することを特徴とする請求項1または2に記載の受水用袋。
【請求項4】
前記取っ手部の前記切り込みの形状は、上方が開いたC字型の形状であり、
前記切り込みの両端は、内側に向かって円弧状に形成し、
前記取っ手部の下方には、ジッパー式のファスナーが設けられ、
前記ファスナーの下方には、肩部が設けられ、
前記肩部には蓋付きの注ぎ口が設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の受水用袋。
【請求項5】
前記シートは、少なくとも、耐熱性高分子フィルムと、耐衝撃性高分子フィルムと、熱間剥離抵抗性高分子フィルムと、を含み、
前記耐熱性高分子フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、
前記耐衝撃性高分子フィルムは、ポリアミドフィルム、
前記熱間剥離抵抗性高分子フィルムは、ポリエチレンフィルムである積層体であって、
前記積層体の厚さが100μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の受水用袋。
【請求項6】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムは結晶化ポリエチレンテレフタレートフィルム、
前記ポリアミドフィルムは、二軸延伸ポリアミドフィルム、
前記ポリエチレンフィルムは、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであることを特徴とする請求項5に記載の受水用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取っ手部の周りを補強した受水用袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水の運搬や保管に至便な袋は、これまでに多数提供されている。本出願人は、この種の袋として、災害時応急受水用袋を公開している(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の災害時応急受水用袋を形成するシートは、水量に応じた厚みが確保されていることによって、袋に自立性および耐久性をもたらしている。また、特許文献1に記載の災害時応急受水用袋は、前後面に切り込みによる取っ手部が形成されている。切り込みは、上方が開いたC字型に形成され、切り込みの両端は内側に向かって円弧状となっている。特許文献1に記載の災害時応急受水用袋は、切り込みの両端の円弧状の形状によって、袋を持ったときの水の重量によって生じる取っ手部の周りの応力が一点に集中せず、取っ手部の周りに引き裂きが発生することを抑止する。
【0004】
袋の取っ手部の周りを補強する発明としては、取っ手部から外周部にかけて、補強材の付加またはシートの多重化を行うといった手段が開示されている(特許文献2から6)。補強材の付加またはシートの多重化といった手段は、袋の強度を上げ、取っ手部の周りまたは開口部の周りの形状の維持に資する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3179010号公報
【特許文献2】特開2011−025945号公報
【特許文献3】特開2007−112510号公報
【特許文献4】特開平09−216639号公報
【特許文献5】特開平05−270548号公報
【特許文献6】登録実用新案第3056998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
袋の取っ手部の周りまたは開口部の周りに補強材を用いることによって、取っ手部の周りまたは開口部の周りの形状の維持および破損の防止を期待できる。しかしながら、製造販売という観点から見ると、補強材のコスト増および補強材の取り付けの工数増は免れない。
【0007】
袋のシートの厚みの確保および取っ手部の周りまたは開口部の周りのシートを多重化することによって、取っ手部の周りまたは開口部の周りの破損の防止および運搬時の指先の負担の軽減を期待できる。しかしながら、取っ手部の周りに応力がかかったときに、伸展による破損を防止することはできるものの、取っ手部の周りに引き裂きが発生したときには、引き裂きの進行を完全に防止することが困難である。
【0008】
そこで、本発明は、取っ手部の周りに引き裂きが発生しても、引き裂きの進行を防止することができる補強手段を施し、かつ取っ手部に入れる指先の負担の軽減を実現した袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の受水用袋は、前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、ヒートシールによって袋状としたシートと、前記シートを多重化した開口部と、前記開口部に切り込みが形成された取っ手部と、を備え、前記シートは、前後面および底面から構成されることを特徴とする袋において、前記開口部は、少なくとも片面に凹凸模様が表れていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の手段は、前記開口部は、前記シートを折り返すことによって多重化され、前記ヒートシールは、前記開口部の前後面の間が除かれることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の手段は、前記凹凸模様は、凹凸を上下左右に交互に配することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の手段は、前記取っ手部の前記切り込みの形状は、上方が開いたC字型の形状であり、前記切り込みの両端は、内側に向かって円弧状に形成し、前記取っ手部の下方には、ジッパー式のファスナーが設けられ、前記ファスナーの下方には、肩部が設けられ、前記肩部には蓋付きの注ぎ口が設けられることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の手段は、前記シートは、少なくとも、耐熱性高分子フィルムと、耐衝撃性高分子フィルムと、熱間剥離抵抗性高分子フィルムと、を含み、前記耐熱性高分子フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、前記耐衝撃性高分子フィルムは、ポリアミドフィルム、前記熱間剥離抵抗性高分子フィルムは、ポリエチレンフィルムである積層体であって、前記積層体の厚さが100μm以上300μm以下であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6の手段は、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムは結晶化ポリエチレンテレフタレートフィルム、前記ポリアミドフィルムは、二軸延伸ポリアミドフィルム、前記ポリエチレンフィルムは、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の構成によって、本発明の受水用袋は、取っ手部の周りに引き裂きが発生しても、引き裂きが凹凸模様を通過するときに凹部と凸部の間のシートの密度の差により引き裂き方向が変化し、袋を持ったときの内容物の重量によって生じる応力が分散することによって、引き裂きの進行を防止する効果がある。また、取っ手部に指を入れたときに折り返し部分が緩やかな曲線状になり、荷重が分散し、指先の負担が軽減される効果がある。さらに、取っ手部は、折り返し部分の復元力が高くなり、開口部を広げた状態での受水が容易になる効果がある。
【0016】
請求項2の構成によって、本発明の受水用袋は、開口部はカールすることなく平坦な形状を保持し、開閉が容易となる効果がある。
【0017】
請求項3の構成によって、本発明の受水用袋は、発生した引き裂きが必然的に交互に凹凸模様に達する効果がある。
【0018】
請求項4の構成によって、本発明の受水用袋は、水の注入、運搬、保管、排出に好適となる。
また、切り込みの両端が円弧状であることにより、引き裂きの発生を抑止する効果がある。
【0019】
請求項5および6の構成によって、本発明の受水用袋は、予定の水量を収容したときに正常に自立し、かつ、水袋として必要な一定の強度を保つ効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例における本発明の受水用袋であり、(a)は正面図、(b)および(c)は断面図である。
【
図2】実施例における本発明の受水用袋であり、凹凸模様が表れた開口部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0022】
本発明の受水用袋は、ヒートシールによって袋状としたシートと、シートを多重化した開口部と、開口部に切り込みが形成された取っ手部と、を備える。
【0023】
シートは、前後面および底面から構成され、袋の形状は、いわゆる底ガゼットタイプである。
【0024】
開口部は、シートを折り返すことによって多重化されることが好ましいが、切り離したシートを貼り合わせてもよい。また、折り返した後に折り目部分を切断してもよい。折り返しは内側であっても外側であってもよい。折り返しの回数は、1回以上であれば特に限定されるものではなく、二重以上になればよい。
【0025】
シートはカールする特性を有するが、ヒートシールによって、カール方向が相反するシートを多重化することで、開口部はカールすることなく平坦な形状を保持する効果がある。
【0026】
また、ヒートシールは、開口部の前後面の間が除かれ、開口部は、前後面とも側面から見たときにV字型に開くことが好ましい。開口部は、V字型に開くことによって、開閉が容易となる効果がある。
【0027】
シートを多重化した開口部は、少なくとも片面に凹凸模様が表される。凹凸模様を表す手段は、特に限定されるものではないが、凹凸模様は、開口部の多重化のためのヒートシールと同時に、凹凸のある熱導電性の高い素材をプレスすることによって表すことができる。シートに熱と圧力を加えることによって、凹凸模様の凹部と凸部の間にシートの密度の差が生じる。
【0028】
また、凹凸模様は、凹部と凸部の間にシートの密度の差が生じていれば、形状は特に限定されるものではない。一例として、凹凸を上下左右に交互に配する市松模様状であってもよいし、凹部が一定間隔に表れる格子模様状あるいは水玉模様状であってもよい。
なお、凹凸を上下左右に交互に配する模様とすることにより、発生した引き裂きが必然的に交互に凹凸模様に達する効果がある。なお、凹凸模様は、シートに熱と圧力を加えることによって生じるものであるため、市松模様状や格子模様状であっても、形状は方形にはならず、丸みを帯びた形状が表れる。
【0029】
本発明の受水用袋は、凹凸模様によって、取っ手部の伸展に対する強度が増している。つまり、取っ手部の周りに引き裂きが発生しても、引き裂きが凹凸模様を通過するときに凹部と凸部の間のシートの密度の差により引き裂き方向が変化し、袋を持ったときの内容物の重量によって生じる応力が分散することによって、引き裂きの進行を防止する効果がある。
【0030】
本発明の受水用袋は、取っ手部の切り込みの形状は特に限定されるものではないが、折り返し部が上方にくるように上方が開いたC字型の形状とすることが好ましく、切り込みの両端は、内側に向かって円弧状に形成することが好ましい。また、切り込みは、袋の前後面にそれぞれ設けられることが好ましい。切り込みの両端の円弧の形状は、黄金比の長方形に内接する対数螺旋、いわゆる黄金螺旋にすることができる。
【0031】
本発明の受水用袋は、取っ手部の切り込みが多重化した開口部に設けられている。そのため、取っ手部に指を入れたときに折り返し部分が緩やかな曲線状になり、荷重が分散し、指先の負担が軽減される効果がある。また、取っ手部は、折り返し部分の復元力が高くなり、開口部を広げた状態での受水が容易になる効果がある。さらに、切り込みの両端が円弧状であることにより、引き裂きの発生を抑止する効果がある。
【0032】
ここで、取っ手部の下方には、ジッパー式のファスナーが設けられ、ファスナーの下方には、肩部が設けられ、肩部には蓋付きの注ぎ口が設けられることが好ましい。
これらの構成によって、本発明の受水用袋は、水の注入、運搬、保管、排出に好適となる。
【0033】
シートは、少なくとも、耐熱性高分子フィルムと、耐衝撃性高分子フィルムと、熱間剥離抵抗性高分子フィルムと、を含む積層体であることが好ましい。
ここで、積層体は、外層から内層に、耐熱性高分子フィルム、耐衝撃性高分子フィルム、熱間剥離抵抗性高分子フィルムの順に構成されることが好ましい。
外層と内層の間の中間層に耐衝撃性高分子フィルムを用いることで、積層体は一定の強度を保つことができる。外層および内層に用いる耐熱性高分子フィルムおよび熱間剥離抵抗性高分子フィルムの耐熱温度差と、内層に用いるフィルムの熱間剥離抵抗性によって、ヒートシールで袋を形成することができる。
【0034】
耐熱性高分子フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、耐衝撃性高分子フィルムは、ポリアミドフィルム、熱間剥離抵抗性高分子フィルムは、ポリエチレンフィルムであることが好ましいが、これらに限られるものではない。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、結晶化ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルムは、二軸延伸ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルムは、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであることがより好ましい。
ここで、耐熱性高分子フィルムと耐衝撃性高分子フィルムの間は、ドライラミネーション法によって貼り合わせることが好ましいがこれに限られるものではない。耐衝撃性高分子フィルムと熱間剥離抵抗性高分子フィルムの間も、同様にドライラミネーション法によって貼り合わせることが好ましいがこれに限られるものではない。
耐熱性高分子フィルムと耐衝撃性高分子フィルムの間には、インク層を設けて文字または図形を表示することができる。使用者に使用方法を知らしめるために、インク層に文字または図形を表示することが好ましい。なお、外層のポリエチレンテレフタレートフィルムは、油性ペンを用いて文字または図形を記入することができる。
【0035】
シートは、積層体の厚さが100μm以上300μm以下であることが好ましく、収容量が大きくなるに従って厚くすることが好ましい。過度に薄いと引き裂きおよび伸展が発生しやすくなるため、積層体の全体の厚さは100μm以上とすることが好ましい。使用者が片手で持てる袋の重さにはある程度の限界があるため、積層体の全体の厚さは300μm以下とすることが好ましい。適切な厚さがあることによって、袋は正常に自立する。
【0036】
本発明の受水用袋は底ガゼットタイプであるため、底面の周辺はヒートシールされる外周部の面積が大きい。底面の周辺の外周部に切り抜きを設けて、ヒートシール時に溶けるフィルムの逃げ場所とすることができる。
【0037】
これらの構成によって、本発明の受水用袋は、予定の水量を収容したときに正常に自立し、かつ、水袋として必要な一定の強度を保つ効果がある。
【0039】
上記の表1は、開口部のシートを多重化の有無、および、凹凸模様の有無、それぞれの場合における取っ手部の伸展に対する強度の比較の試験である。数値は、破損した時点の強度である。
【0040】
表中、シール・凹凸というのは、開口部を折り込み、ヒートシールし、多重化し、凹凸模様を施しているものである。取っ手枚数は、開口部を二重化していれば、2枚と数える。取っ手枚数1枚というのは、開口部を多重化していない、袋の前面あるいは後面のみを用いて測定したものである。また、取っ手枚数4枚・シール・凹凸というのは、開口部を二重化した袋の前後面の両方を用いて測定したものである。
【0041】
この試験で用いたシートは、結晶化ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなる積層体であり、各層をドライラミネーション法によって貼り合わせている。結晶化ポリエチレンテレフタレートフィルム層の厚さは12μm、二軸延伸ポリアミドフィルム層の厚さは15μm、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム層の厚さは210μmであり、全体の厚さは237μmである。
また、シートは縦横が150mmで、80mmの切り込みを入れたものとし、別の65mm幅のシートを切り込みに入れて上下をチャッキングし、シートをそれぞれ逆方向に引っ張り、破損した時点の強度を測定している。
【0042】
開口部はシートを多重化し、凹凸模様を表す方が、開口部はシートを多重化せず、凹凸模様を表さない場合と比較して、取っ手部の伸展に対する強度が増していることがわかる。また、開口部のシートの多重化に関しては、接着をした方がより効果がある。
【実施例1】
【0043】
上記実施形態に沿った具体的な実施例を、図面にしたがって説明する。
【0044】
図1(a)は、本発明の受水用袋の正面図である。また、
図1(b)は、本発明の受水用袋のA−A’線断面図である。さらに、
図1(c)は、本発明の受水用袋のA−A’線断面図であり、水を注入した状態である。
本実施例における受水用袋は、災害時において水道水の供給が遮断された場合等に使用する災害時応急受水用袋であり、水の収容量は5リットルを想定している。
【0045】
災害時応急受水用袋1は、前後面および底面がシート2で形成される底ガゼットタイプである。災害時応急受水用袋1は、シート2の外周部3を、開口部4を除いてヒートシールすることによって形成される。
【0046】
シート2は、結晶化ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなる積層体であり、各層をドライラミネーション法によって貼り合わせている。結晶化ポリエチレンテレフタレートフィルム層の厚さは12μm、二軸延伸ポリアミドフィルム層の厚さは15μm、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム層の厚さは210μmであり、全体の厚さは237μmである。
災害時応急受水用袋1は、水を収容すると底面が船底状に広がる底ガゼットタイプであり、前後面をヒートシールしたシート2の下部の外周部3が略楕円状に置き場所に接して、シート2に適切な厚さがあることによって自立する。
【0047】
開口部4は、シート2を内側に折り込み、シート2を二重化する。
開口部4の中央付近に、取っ手部5を設ける。取っ手部5は、切り込みによって形成される。切り込みの形状は、上方が開いたC字型の形状であり、切り込みを上方に折り曲げて取っ手部とする。切り込みの両端は、内側に向かって円弧状に形成する。
開口部4のシート2の二重部分は、ヒートシールすることによって接着するとともに、シートの前後面の両方の外側の面に凹凸模様を表す。凹凸模様は、開口部の多重化のためのヒートシールと同時に、凹凸のある熱導電性の高い素材をプレスすることによって表す。
【0048】
図2は、凹凸模様が表れた開口部4のB−B’線断面図の一部であり、断面は拡大して模式化している。後面側の断面は省略している。凹凸模様は、凹凸が上下左右に交互に配され、丸みを帯びた形状となる。
引き裂きの一例として、
図2においては、左右どちらかから手前方向と奥方向に分かれるように引き裂きが進むとすると、引き裂きは、開口部4の凹部と凸部を交互に通過することになり、凹部と凸部の間のシート2の密度の差により、引き裂き方向が変化する。引き裂き方向が変化すれば、袋を持ったときの水の重量によって生じる応力が分散し、引き裂きの進行が防止される。
【0049】
取っ手部5の下方には、ジッパー式のファスナー6が設けられる。また、ファスナー6の下方には肩部7が設けられ、肩部7には蓋付きの注ぎ口8が設けられる。
【0050】
災害時応急受水用袋1は、前後面に油性ペンを用いて図形または文字を記入することができる。前面には、氏名、受水日、受水場所を記入するための欄が設けられる。これらの記入によって、使用者は、水の安全性について判断することができる。
【0051】
災害時応急受水用袋1は、以上の構成によって、開閉が容易な開口部4から水を注入しやすく、水を注入した状態で取っ手部5に指を入れて運搬し、持ったまま水を注ぐことができ、保管にも至便である。
また、災害時応急受水用袋1は、取っ手部5の周りに応力がかかり、引き裂きが発生しても、凹凸模様によって、引き裂きの進行を防止する効果がある。
【0052】
災害時応急受水用袋1は、取っ手部5の切り込みが多重化した開口部4に設けられている。そのため、取っ手部5に指を入れたときに折り返し部分が緩やかな曲線状になり、荷重が分散し、指先の負担が軽減される効果がある。また、取っ手部5は、折り返し部分の復元力が高くなり、開口部4を広げた状態での受水が容易になる効果がある。さらに、切り込みの両端が円弧状であることにより、引き裂きの発生を抑止する効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、袋の引き裂きの進行を防止するものである。引き裂きが発生しやすく、凹凸模様を形成できる袋であれば応用が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…災害時応急受水用袋、2…シート、3…外周部、4…開口部、5…取っ手部、6…ファスナー、7…肩部、8…注ぎ口。