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特開2017-202970肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-202970(P2017-202970A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物
(51)【国際特許分類】
   C05G 3/00 20060101AFI20171020BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20171020BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20171020BHJP
【FI】
   C05G3/00 103
   C08G18/76 057
   C08G18/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-85909(P2017-85909)
(22)【出願日】2017年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-93577(P2016-93577)
(32)【優先日】2016年5月9日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政義
【テーマコード(参考)】
4H061
4J034
【Fターム(参考)】
4H061AA01
4H061BB03
4H061BB04
4H061BB05
4H061BB10
4H061BB11
4H061BB15
4H061BB22
4H061BB31
4H061BB32
4H061BB52
4H061BB54
4H061DD04
4H061DD18
4H061EE35
4H061FF08
4H061FF15
4H061HH03
4J034BA03
4J034DA01
4J034DA03
4J034DB03
4J034DF01
4J034DG03
4J034EA12
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA01
4J034JA42
4J034LA22
4J034LA33
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QB19
4J034QD06
4J034RA01
(57)【要約】
【課題】 肥料に優れた徐放性を与える肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供する。
【解決手段】 ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含有するポリウレタン樹脂形成性組成物であって、該ポリイソシアネート成分が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B1)と2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B2)とを構成単位として含み、該(B1)と(B2)との重量比[(B1)/(B2)]が20/80〜80/20である肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを含有するポリウレタン樹脂形成性組成物であって、該(B)が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B1)と2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B2)とを構成単位として含み、該(B1)と(B2)との重量比[(B1)/(B2)]が20/80〜80/20である肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)。
【請求項2】
ポリイソシアネート成分(B)が、(B1)と、(B2)と、ひまし油ポリオール(A1)とを構成単量体として含むイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(U)を含有する請求項1記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項3】
ポリオール成分(A)が、ひまし油ポリオール(A1)と、ポリアミンのアルキレンオキサイド(炭素数2〜3)付加物(A2)および/またはアルカノールアミンのアルキレンオキサイド(炭素数2〜3)付加物(A3)とを含有する請求項1または2記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項4】
ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)との当量比[(A)/(B)]が、0.5〜2.0である請求項1〜3のいずれか記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載のポリウレタン樹脂形成性組成物(P)の硬化物である肥料被覆材用ポリウレタン樹脂(X)。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか記載の肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)の硬化物で被覆した肥料(Y)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物に関する。さらに詳しくは、肥料成分の徐放性に優れる肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肥料の有効成分の効果を持続させるため、肥料にコーティングを施すことにより、徐放性を加える検討がなされている。このようなコーティング剤としては、ポリイソシアネートと、ウールまたはラノリン等から誘導されるポリオールとを有機溶剤に溶解したコーティング剤が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−305085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、多量の有機溶剤を必要とし、100℃程度の高温で、含浸工程と該有機溶剤の蒸発工程とを何回も行う必要があり、効率的に肥料の生産が十分にできるとは言えなかった。
本発明の目的は、上記問題を解決し、肥料に優れた徐放性を与える肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを含有するポリウレタン樹脂形成性組成物であって、該(B)が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B1)と2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B2)とを構成単位として含み、該(B1)と(B2)との重量比[(B1)/(B2)]が20/80〜80/20である肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(X)は、以下の効果を奏する。
(1)被覆性に優れるため、肥料に徐放性を付与する。
(2)広い温度範囲(5〜40℃)での被覆であっても、徐放性を維持できる。
(3)肥料の合着物が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリオール成分(A)>
本発明におけるポリオール成分(A)は、ひまし油ポリオール(A1)、ポリアミンのアルキレンオキサイド(炭素数2〜3)付加物(A2)、アルカノールアミンのアルキレンオキサイド(炭素数2〜3)付加物(A3)、ポリエステルポリオール(A4)、ポリエーテルポリオール(A5)、およびこれら2種以上の混合物が挙げられる。
【0008】
ひまし油ポリオール(A1):
(A1)としては、Mn(数平均分子量)が300〜4,000のもの、例えば、ひまし油、部分脱水ひまし油、ポリエーテルポリオールとひまし油とのエステル交換反応により得られるひまし油脂肪酸エステル、ポリエーテルポリオールとひまし油脂肪酸のエステル化反応により得られるひまし油脂肪酸エステル、ひまし油への炭素数2〜8、好ましくは炭素数2〜3のアルキレンオキサイド(以下において、AOを略記することがある)(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドおよびこれら2種以上の混合物)付加により得られるひまし油AO付加体等が挙げられる。
【0009】
(A2)ポリアミンのアルキレンオキサイド(炭素数2〜3)付加物:
(A2)を構成するポリアミン(a)としては、下記の(a1)〜(a4)、およびこれらの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。
(A2)としては、上記ポリアミン(a)に、エチレンオキサイド(EO)および/またはプロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したものが挙げられる。
【0010】
(a1)脂肪族ポリ(2〜7価)アミン:
炭素数[以下において、Cと略記することがある]2以上かつMn500以下のもの、例えばC2〜10のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン等)、ポリアルキレン(C2〜10)ポリ(3価〜6価またはそれ以上)アミン[ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等]、並びに、それらのアルキル(C1〜4)またはヒドロキシアルキル(C2〜4)置換体、例えばジアルキル(C1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン;
【0011】
(a2)脂環含有ポリ(2〜3価)アミン
C4〜15のもの、例えば1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン;
【0012】
(a3)複素環含有ポリ(2〜3価)アミン
C4〜15のもの、例えばピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン;
【0013】
(a4)芳香環含有ポリアミン
C8〜15のもの、例えばキシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン。
【0014】
(A3)アルカノールアミン(b)のアルキレンオキサイド(炭素数2〜3)付加物:
(A3)を構成するアルカノールアミン(b)は、C4〜12のもの、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
(A3)としては、上記アルカノールアミン(b)に、エチレンオキサイド(EO)および/またはプロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したものが挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオール(A4):
(A4)としては、前記(A1)〜(A3)以外で、Mnが150〜4,000のもの、例えば、ポリオール[前記(A2)および/または後述の多価アルコール]とC2〜20の多価カルボン酸から形成される線状または分岐状ポリエステルポリオール;ポリラクトンポリオール[例えば後述の低分子ポリオール(A4)の1種または2種以上の混合物と開始剤として、これに(置換)カプロラクトン(C6〜10、例えば、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン)を触媒(有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化合物等)の存在下に付加重合させたポリオール(例えばポリカプロラクトンポリオール)];末端にカルボキシル基および/またはOH基を有するポリエステルにAOを付加重合させて得られるポリエーテルエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール等。
【0016】
ポリエーテルポリオール(A5):
(A5)としては、前記(A1)〜(A4)以外のもの、例えば脂肪族ポリエーテルポリオール、芳香族含有ポリエーテルポリオールが挙げられる。
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレン[ポリエチレングリコール等]、ポリオキシプロピレン[ポリプロピレングリコール等]、ポリオキシエチレン/プロピレン(付加形式はブロックおよび/またはランダムのいずれでもよい)およびポリテトラメチレンエーテルグリコール等。
芳香環含有ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノール型ポリエーテル、[例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下EOと略記)2〜20モル付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下POと略記)2〜20モル付加物]、およびレゾルシンのEOおよび/またはPO2〜20モル付加物等。
【0017】
(A5)は、触媒(アルカリ金属水酸化物、ルイス酸等)の存在下で、脂肪族または芳香環含有の低分子量活性水素原子含有化合物(好ましくは後述の多価アルコール)にEOおよび/またはPOを開環付加反応させることで得られる。
【0018】
上記多価アルコールとしては、脂肪族多価(2価〜4価またはそれ以上)アルコール、脂環含有多価(2価)アルコール、芳香環含有多価(2〜4価)アルコールが挙げられる。
脂肪族の2価アルコールとしては、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,6−ヘキサンジーオール(1,6−HD)、3価アルコールとしては、グリセリン(以下GRと略記)、トリメチロールプロパン(以下TMPと略記)、ヘキサントリオール、4価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、6価アルコールとして、ソルビトール、8価アルコールとしてスクロース等;脂環含有2価アルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等;芳香環含有多価(2〜4価)アルコールとしては、キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビスフェノールA等。
【0019】
前記多価カルボン酸としては、ジカルボン酸[脂肪族(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸等)、脂環式(ダイマー酸等)、芳香族(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等)]、3価またはそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等);前記エステル形成性誘導体としては、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキル(C1〜3)エステル(コハク酸ジメチル、フタル酸ジメチル等)、およびこれらの併用が挙げられる。
【0020】
上記ポリオール成分(A)のうち、徐放性、徐放性の維持の観点から、好ましいのは(A1)、(A2)、(A3)およびこれらの併用、さらに好ましいのは(A1)、(A2)、およびこれらの併用、とくに好ましいのは、ひまし油、エチレンジアミンのPO付加物、およびそれらの併用である。
【0021】
ポリオール成分(A)の水酸基価(単位:KOHmg/g)は、徐放性の観点から、好ましくは150〜500、さらに好ましくは200〜450、とくに好ましくは250〜400である。また、(A)の平均水酸基数は、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2
〜4である。
そして、ポリオール成分(A)のアミン価(単位:KOHmg/g)は、好ましくは10〜200、さらに好ましくは30〜150である。
【0022】
<ポリイソシアネート成分(B)>
本発明におけるポリイソシアネート成分(B)は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B1)と2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B2)とを構成単位とする。つまり、該(B)は、該(B1)と該(B2)とを構成単位として含有する。
該(B1)と該(B2)との重量比[(B1)/(B2)]は20/80〜80/20であり、好ましくは50/50〜75/25、さらに好ましくは55/45〜65/35である。該重量比[(B1)/(B2)]が80/20を超えると高温(40℃)被覆での徐放性に劣り、20/80未満では低温(5℃)被覆での徐放性に劣る。
【0023】
また、ポリイソシアネート成分(B)には、必要により、前記(B1)、(B2)以外の後述のポリイソシアネート(B3)を構成単位としてもよい。(B1)と(B2)との合計重量に基づいて、(B3)の重量は、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、とくに好ましくは10重量%以下である。
【0024】
ポリイソシアネート成分(B)は、前記(B1)と(B2)との混合物(α)、該(B1)と該(B2)とを構成単量体(構成単位)として含むイソシアネート末端プレポリマー(U)等が挙げられる。
該(B)のうち、徐放性の観点から、好ましいのは(U)を含有するもの、さらに好ましいのは(U)である。
【0025】
前記イソシアネート末端プレポリマー(U)としては、例えば、過剰の(B1)と(B2)と、ポリオールとを公知の方法でウレタン化反応したものが挙げられる。
なお、該(U)には、必要により、前記(B1)〜(B3)を追加してもよい。
【0026】
上記ポリオールとしては、前記ひまし油ポリオール(A1)、ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A2)、アルカノールアミンのアルキレンオキサイド付加物(A3)、ポリエステルポリオール(A4)が使用できるが、好ましいのは(A1)、(A2)、(A4)、さらに好ましいのは(A1)、(A4)、とくに好ましいのは(A1)である。
【0027】
前記ポリイソシアネート(B3)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の(B1)、(B2)以外の芳香族ポリイソシアネート(B31)、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート(B32)、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート(B33)、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート(B34)およびこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)(B35)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0028】
芳香族ポリイソシアネート(B31)は、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)等。
脂肪族ポリイソシアネート(B32)は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等。
脂環式ポリイソシアネート(B33)は、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)等。
芳香脂肪族ポリイソシアネート(B34)は、例えば、m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等。
【0029】
ポリイソシアネートの変性物(B35)は、前記(B31)〜(B34)の変性物、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物が挙げられる。
【0030】
ポリイソシアネート成分(B)のイソシアネート基含有量(NCO含量)は、徐放性、その維持の観点から、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは15〜25重量%である。
【0031】
<肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)>
本発明の肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)は、前記ポリオール成分(A)と前記ポリイソシアネート成分(B)とを含有する。
上記ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)において、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)との当量比[(A)/(B)](OH/NCO)は、徐放性の観点から、好ましくは0.5〜2.0、さらに好ましくは0.7〜1.5である。該当量比は、(A)の水酸基量と、(B)のイソシアネート基量とから算出できる。
【0032】
ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤(G)を含有してもよい。該(G)としては、無機フィラー(G1)、有機フィラー(G2)、吸水性樹脂粒子(G3)、滑剤(G4)、可塑剤(G5)、チクソ性付与剤(G5)、発泡剤(G6)、紫外線吸収剤(G7)、酸化防止剤(G8)、抗酸化剤(G9)、着色剤(G10)、難燃剤(G11)、防黴剤(G12)、分散剤(沈降防止剤)(G13)、消泡剤(G14)、界面活性剤(G15)からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤が挙げられる。該(G)の添加量は、(A)と(B)との合計重量に基づいて、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0033】
[肥料被覆材用ポリウレタン樹脂(X)、肥料(Y)]
本発明の肥料被覆材用ポリウレタン樹脂(X)は、前記肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)の硬化物である。
また、本発明の肥料(Y)は、前記肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)の硬化物で被覆した肥料である。
肥料(Y)は、例えば、公知の肥料(Y0)に、前記組成物(P)を、公知のコーティング装置によりコーティング、硬化して得られる。
公知の肥料(Y0)としては、粒状のものが好ましく、尿素、塩安、硫安、硝安、塩化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸アンモニウム、燐酸石灰、有機肥料等が挙げられる。
コーティング、硬化条件は、好ましくは5〜100℃、さらに好ましくは5〜40℃である。また、上記(Y)において、組成物(P)と肥料(Y0)との重量比[(P)/(Y0)]は、目的とする徐放性により異なるが、好ましくは3/97〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、とくに好ましくは10/90〜20/80である。
本発明の肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)が、肥料に徐放性を付与、とりわけ、広い温度範囲(5〜40℃)での被覆であっても、徐放性を維持できるのは、被覆性に優れるためと推定できる。
【実施例】
【0034】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、モル%以外の%は重量%を表す。
【0035】
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次のとおりである。
<ポリオール(A)>
(A1−1):ひまし油
[分子量940、水酸基価161]
(A1−2):部分脱水ひまし油
[分子量920、水酸基価120]
(A2−1):エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物
[分子量300、水酸基価750]
(A3−1):ジエタノールアミンのプロピレンオキサイド付加物
[分子量290、水酸基価580]
【0036】
<ポリイソシアネート(B)>
(B1−1):4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
(B2−1):2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0037】
[イソシアネート基末端プレポリマー(U)の製造]
<製造例1>
窒素導入管、排ガス流出管、撹拌装置および冷却管を備えた反応容器に、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を仕込み、気相部分に0.5ml/minの流量で窒素を通気し、撹拌下、60℃で4時間反応させて、(U−1)を得た。なお、(U−1)のイソシアネート基含有量は23.1%であった。
【0038】
<製造例2>
窒素導入管、排ガス流出管、撹拌装置および冷却管を備えた反応容器に、(B1−1)26部、(B2−1)14部、(A1−1)12部を仕込み、気相部分に0.5ml/minの流量で窒素を通気し、撹拌下、60℃で4時間反応させて、(U−2)を得た。なお、(U−2)のイソシアネート基含有量は23.1%であった。
【0039】
<製造例3>
窒素導入管、排ガス流出管、撹拌装置および冷却管を備えた反応容器に、(B1−1)22部、(B2−1)18部、(A1−1)12部を仕込み、気相部分に0.5ml/minの流量で窒素を通気し、撹拌下、60℃で4時間反応させて、(U−3)を得た。なお、(U−3)のイソシアネート基含有量は23.1%であった。
【0040】
<製造例4>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)19部、(B2−1)19部、(A1−1)11部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量23.2%の(U−4)を得た。
【0041】
<製造例5>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)33.6部、(B2−1)8.4部、(A1−1)10部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量23.2%の(U−5)を得た。
【0042】
<製造例6>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)10部、(B2−1)32部、(A1−1)13部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量22.8%の(U−6)を得た。
【0043】
<製造例7>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)35部、(B2−1)12部、(A1−1)14部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量22.7%の(U−7)を得た。
【0044】
<製造例8>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)6部、(B2−1)4部、(A1−1)11部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量7.6%の(U−8)を得た。
【0045】
<製造例9>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)26部、(B2−1)17部、(A1−2)16部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量20.7%の(U−9)を得た。
【0046】
<製造例10>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)28部、(B2−1)19部、(A1−1)12部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量23.8%の(U−10)を得た。
【0047】
<製造例11>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)21部、(B2−1)14部、(A1−2)16部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量18.4%の(U−11)を得た。
【0048】
<製造例12>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)26部、(B2−1)17部、(A1−1)15部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量22.5%の(U−12)を得た。
【0049】
<比較製造例1>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)40部、(A1−1)12部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量22.8%の(比U−1)を得た。
【0050】
<比較製造例2>
製造例1において、(B1−1)24部、(B2−1)16部、(A1−1)12部を、(B1−1)38部、(B2−1)2部、(A1−1)12部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、イソシアネート基含有量22.8%の(比U−2)を得た。
【0051】
<実施例1〜12、比較例1〜2>
表1に示す配合組成(部)にしたがって、容器に仕込んで撹拌してポリオール成分(A)を作成した。
次に、表1にしたがって、容器に仕込んで撹拌してポリイソシアネート成分(B)を作成した。
各ポリオール成分(A)と各ポリイソシアネート成分(B)とをスタティックミキサーで混合して、各肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)を得た後、以下の手順にしたがって、各肥料(Y)を得た。
各肥料(Y)を後述の<評価方法>にしたがって評価した。結果を表1に示す。
【0052】
<各肥料(Y)製造の手順>
(1)5℃の場合
噴流層による流動コーティング装置に、市販の硫安肥料[重量平均粒子径5.0mm](Y0−1)1000gを仕込み、5℃に温調した。5℃に温調しながら、装置内で浮遊している該(Y0−1)に、各肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物(P)60gをスプレー噴霧した後、さらに2時間硬化させて、各肥料(Y)を得た。
(2)40℃の場合
上記(1)において、5℃に温調を、40℃に温調に代えた以外は、上記(1)と同様にして各肥料(Y)を得た。
【0053】
<評価方法>
(1)重量平均粒子径(単位:mm)
得られた各肥料(Y)について、画像を解析して、重量平均粒子径を求めた。
(2)徐放性(単位:%)
200gのイオン交換水を容器に仕込み、次に得られた各肥料(Y)を10g仕込んだ。各々別々に25℃で、2週間、4週間放置し、水相の導電率から、硫安の溶出率(%)を求めた。
(3)目視評価
得られた各肥料(Y)について、以下の評価基準で、目視で肥料の合着物の有無を評価した。
<評価基準>
◎:合着物がほとんどない
○:合着物が少ない
△:合着物が多い
×:合着物が著しい
【0054】
【表1】
【0055】
表1の結果から、本発明の肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、比較のものに比べて、肥料に徐放性を付与、とりわけ、広い温度範囲(5〜40℃)での被覆において、徐放性を維持でき、かつ合着物が少ないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の肥料被覆材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、肥料に徐放性を付与、とりわけ、広い温度範囲(5〜40℃)での被覆であっても、徐放性を維持できる。そのため、好適な肥料を生産でき、とりわけ農業分野に有用である。