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特開2017-203053光学活性基を有する置換ポリアセチレン及びその製造方法
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  • 特開2017203053-光学活性基を有する置換ポリアセチレン及びその製造方法 図000026
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-203053(P2017-203053A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】光学活性基を有する置換ポリアセチレン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 38/00 20060101AFI20171020BHJP
【FI】
   C08F38/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-93564(P2016-93564)
(22)【出願日】2016年5月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(72)【発明者】
【氏名】三田 文雄
(72)【発明者】
【氏名】佐野 夏博
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AT05P
4J100BA04P
4J100BB01P
4J100BC43P
4J100BC44P
4J100BC49P
4J100DA61
4J100FA08
4J100FA19
4J100JA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光学分割剤、液晶、非線形光学材料、フォト・エレクトロルミネッセンス材料等として有用な新規な光学活性基を有する置換ポリアセチレンの提供。
【解決手段】式(1)で表される繰り返し構造単位を含む光学活性基を有する置換ポリアセチレン。

(R1及びR2は異なる炭素数1〜10の(置換)アルキル基又は(置換)アリール基、R≠R;Xはハロゲン原子;*は不斉炭素原子)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を示し、該アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。但し、R1とR2は同一の基となることはない。Xはハロゲン原子を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表される繰り返し構造単位を含むことを特徴とする光学活性基を有する置換ポリアセチレン。
【請求項2】
一般式(1)の式中のR1及びR2は、メチル基とエチル基の組み合わせ、又はメチル基とフェニル基の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の光学活性基を有する置換ポリアセチレン。
【請求項3】
下記一般式(2)
【化2】
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を示し、該アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。但し、R1とR2は同一の基となることはない。Xはハロゲン原子を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性基を有する2置換アセチレンの重合反応を、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R3、R4及びR5は、炭素数1〜10のアルキル基及びアリール基から選ばれる
基を示し、前記アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。式中、Meはメチル基を示し、Zはハロゲン基、トシル基、トリフラート基及びメシル基から選ばれる基を示す。yは1〜2の整数を示す。)で表される置換アセチレン重合開始剤の存在下に行うことを特徴とする下記一般式(1)
【化4】
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を示し、該アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。但し、R1とR2は同一の基となることはない。Xはハロゲン原子を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表される繰り返し構造単位を含む光学活性基を有する置換ポリアセチレンの製造方法。
【請求項4】
一般式(3)の式中のXが塩素原子であることを特徴とする請求項3に記載の光学活性基を有する置換ポリアセチレンの製造方法。
【請求項5】
一般式(3)の式中のR3、R4及びR5が、それぞれtert−ブチル基であり、yは1である置換アセチレン重合開始剤を用いたことを特徴とする請求項3又は4の何れか一項に記載の光学活性基を有する置換ポリアセチレンの製造方法。
【請求項6】
重合反応を、一般式(3)の置換アセチレン重合開始剤と、更に一般式(3)の式中のZの基を引き抜き可能な活性剤の存在下に行うことを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載の光学活性基を有する置換ポリアセチレンの製造方法。
【請求項7】
活性剤が、トリフロオロメタンスルホン酸銀であることを特徴とする請求項6記載の光学活性基を有する置換ポリアセチレンの製造方法。
【請求項8】
下記一般式(2)
【化5】


(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を示し、該アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。但し、R1とR2は同一の基となることはない。Xはハロゲン原子を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表されることを特徴とする2置換アセチレン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性基を有する置換ポリアセチレン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物は、様々な機能を示し、有用な材料として使用されている。このような背景の下、ポリマーに共役構造を導入し、その共役構造に起因する光・電気的機能を発現させようとする試みは近年盛んに行われている。
【0003】
置換ポリアセチレンは代表的な共役高分子で、フォト・エレクトロルミネッセンス,ホール輸送性などの光電気機能のみならず、気体透過性などの有用な特性を示す機能性材料として広く研究されている。その中でも、二置換アセチレンのポリマーは一置換のものよりも高い熱安定性や光学特性を示すとされている。一方、光学活性ポリマーは不斉誘起触媒能や不斉認識能を示すため不斉分割材料としての応用が期待されている。光学活性共役ポリマーは光・電気特性に加え, 不斉認識能を併せ持つことが知られている。例えば、下記特許文献1〜3には、光学分割剤、液晶、非線形光学材料等で有用な光学活性基を有するポリアセチレン誘導体が提案されている。
このように、光学活性基を有するポリアセチレンは、独特の機能を有しおり、いろいろな用途への展開が期待される。
【0004】
共役ポリマーの合成に関してはアセチレン類を重合し、得られたポリマー中に共役2重結合を生成されることにより達成させる方法が興味深い。このような観点から、モノマーとしてアセチレンのαβ位にそれぞれ官能基を導入し、2置換アセチレンとすれば、重合後のポリマー主鎖に起因する共役性に加えて、官能基の機能が相乗的に加わることにより、更なる機能性向上が期待できる。しかしながら、アセチレンのαβ位に置換基を有する2置換アセチレンの重合に関してはメタセシス重合での合成が数例(例えば、下記非特許文献1及び2参照)であり、連鎖重合の合成例は極めて少ない。
【0005】
本出願人は、先に置換アセチレン重合開始剤として、ホスフィンーパラジウム錯体を用いて連鎖重合により2置換アセチレンから置換ポリアセチレンを製造する方法を提案している(下記特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−292037号公報
【特許文献2】特開平8−133991号公報
【特許文献3】特開平8−217698号公報
【特許文献4】特開2014−162745号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Polymer Chemistry 2巻 ページ1044 2011年
【非特許文献2】「季刊化学総説 No. 17 (前周期遷移金属の有機化学)」, 学会出版センター, 1993年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、連鎖重合により2置換アセチレンから置換ポリアセチレンを製造する方法を検討する中で、新規な光学活性基を有する2置換アセチレンを用い、これを特定の重合開始剤の存在下に重合反応を行うことにより、光学分割剤、液晶、非線形光学材料、フォトエレクトロルミネッセンス材料等として有用な新規な光学活性基を有する置換ポリアセチレンが得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
即ち、本発明は、光学分割剤、液晶、非線形光学材料、フォト・エレクトロルミネッセンス材料等として有用な新規な光学活性基を有する置換ポリアセチレン及びその工業的に有利な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が提供しようとする第1の発明は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を示し、該アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。但し、R1とR2は同一の基となることはない。Xはハロゲン原子を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表される繰り返し構造単位を含むことを特徴とする光学活性基を有する置換ポリアセチレンである。
【0011】
本発明が提供しようとする第2の発明は、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を示し、該アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。但し、R1とR2は同一の基となることはない。Xはハロゲン原子を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性基を有する2置換アセチレンの重合反応を、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R3、R4及びR5は、炭素数1〜10のアルキル基及びアリール基から選ばれる基を示し、前記アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。式中、Meはメチル基を示し、Zはハロゲン基、トシル基、トリフラート基及びメシル基から選ばれる基を示す。yは1〜2の整数を示す。)で表される置換アセチレン重合開始剤の存在下に行うことを特徴とする下記一般式(1)
【化4】
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を示し、該アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。但し、R1とR2は同一の基となることはない。Xはハロゲン原子を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表される繰り返し構造単位を含む光学活性基を有する置換ポリアセチレンの製造方法である。
【0012】
また、本発明が提供しようとする第3の発明は、下記一般式(2)
【化5】
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を示し、該アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。但し、R1とR2は同一の基となることはない。Xはハロゲン原子を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表されることを特徴とする2置換アセチレンである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光学分割剤、液晶、非線形光学材料、フォト・エレクトロルミネッセンス材料等として有用な新規な光学活性基を有する置換ポリアセチレンを提供することが出来る。
また、本発明の製造方法によれば、工業的に有利な方法で、該光学活性基を有する置換ポリアセチレンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例4、5及び6で得られた置換ポリアセチレンのCDスペクトルとUV−visスペクトル図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の光学活性基を有する置換ポリアセチレン(以下、単に「置換ポリアセチレン」と言うことがある)は、下記一般式(1)で表される繰り返し構造単位を含むものである。
【化6】


(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を示し、該アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。但し、R1とR2は同一の基となることはない。Xはハロゲン原子を示す。*は不斉炭素原子を示す。)
【0016】
一般式(1)中のR1及びR2は、炭素数1〜10のアルキル基、又はアリール基である。
【0017】
前記アルキル基としては、非環式アルキル基と脂環式アルキル基が挙げられる。
非環式アルキル基には、直鎖状アルキル基と分岐状アルキル基がある。直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基等の炭素数1〜10のものが挙げられる。分岐状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基、イソヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基等の炭素数3〜10のものが挙げられる。
脂環式アルキル基には、単環式アルキル基と複環式アルキル基がある。単環式アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜10のものが挙げられる。複環式アルキル基としては、アダマンチル基等の炭素数4〜10のものが挙げられる。
前記R1及びR2に係るアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙がられる。
前記R1及びR2に係るアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。該置換基としは、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜8のアルキル基及び一般式;−N(A1)(A2)(式中、A1及びA2は炭素数1〜8の直鎖状のアルキル基を示す)から選ばれる基が挙げられる。
【0018】
本発明において、前記一般式(1)の式中のR1及びR2は、それぞれが異なる基であり、R1及びR2は、メチル基とエチル基の組み合わせ、又はメチル基とフェニル基の組み合わせであることが好ましい。
【0019】
一般式(1)の式中のXは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等のハロゲン原子であり、これらの中、塩素原子が好ましい。
【0020】
本発明に係る置換ポリアセチレンは、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、特に好ましくは5,000〜200,000である。また、本発明において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が15以下、好ましくは6以下、特に好ましくは1.1〜2である。
【0021】
以下、本発明に係る光学活性基を有する置換ポリアセチレンの製造方法について説明する。
本発明に係る前記一般式(1)で表される光学活性基を有する置換ポリアセチレンの製造方法は、前記一般式(2)で表される光学活性基を有する2置換アセチレンの重合反応を、前記一般式(3)で表される置換アセチレン重合開始剤の存在下に行うことを特徴とするものである。
【0022】
原料となる光学活性基を有する2置換アセチレンは、下記一般式(2)で表される。
【化7】
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を示し、該アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。但し、R1とR2は同一の基となることはない。Xはハロゲン原子を示す。*は不斉炭素原子を示す。)
【0023】
前記一般式(2)の式中のR1、R2及びXは、前記一般式(1)の式中のR1、R2及びXにそれぞれ相当する基である。
【0024】
前記一般式(2)の式中のR1及びR2は、炭素数1〜10のアルキル基、又はアリール基である。
【0025】
前記アルキル基としては、非環式アルキル基と脂環式アルキル基が挙げられる。
非環式アルキル基には、直鎖状アルキル基と分岐状アルキル基がある。直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基等の炭素数1〜10のものが挙げられる。分岐状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基、イソヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基等の炭素数3〜10のものが挙げられる。
脂環式アルキル基には、単環式アルキル基と複環式アルキル基がある。単環式アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜10のものが挙げられる。複環式アルキル基としては、アダマンチル基等の炭素数4〜10のものが挙げられる。
前記R1及びR2に係るアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙がられる。
前記R1及びR2に係るアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。該置換基としは、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜8のアルキル基及び一般式;−N(A1)(A2)(式中、A1及びA2は炭素数1〜8の直鎖状のアルキル基を示す)から選ばれる基が挙げられる。
【0026】
本発明において、前記一般式(2)の式中のR1及びR2は、それぞれが異なる基であり、R1及びR2は、メチル基とエチル基の組み合わせ、又はメチル基とフェニル基の組み合わせであることが好ましい。
【0027】
一般式(2)の式中のXは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等のハロゲン原子であり、これらの中、塩素原子が好ましい。
【0028】
前記一般式(2)で表される光学活性基を有する2置換アセチレンは、例えば、下記反応スキーム(1)に従って製造することが出来る。
【0029】
【化8】
(式中、R1及びR2は前記と同義。Bu4NFはテトラブチルアンモニウムフロライドを示す。)
【0030】
本製造方法で使用する置換アセチレン重合開始剤は、下記一般式(3)で表される。
【化9】

(式中、R3、R4及びR5は、炭素数1〜10のアルキル基及びアリール基から選ばれる基を示し、前記アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。式中、Meはメチル基を示し、Zはハロゲン基、トシル基、トリフラート基及びメシル基から選ばれる基を示す。yは1〜2の整数を示す。)
【0031】
前記一般式(3)の式中のR3、R4及びR5は、炭素数1〜10のアルキル基、又はアリール基である。
【0032】
前記アルキル基としては、非環式アルキル基と脂環式アルキル基が挙げられる。
非環式アルキル基には、直鎖状アルキル基と分岐状アルキル基がある。直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基等の炭素数1〜10のものが挙げられる。分岐状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基、イソヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基等の炭素数3〜10のものが挙げられる。
脂環式アルキル基には、単環式アルキル基と複環式アルキル基がある。単環式アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜10のものが挙げられる。複環式アルキル基としては、アダマンチル基等の炭素数4〜10のものが挙げられる。
前記R3〜R5に係るアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙がられる。
前記R3〜R5に係るアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。該置換基としは、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜8のアルキル基及び一般式;−N(A3)(A4)(式中、A3及びA4は炭素数1〜8の直鎖状のアルキル基を示す)から選ばれる基が挙げられる。
【0033】
本発明において、前記一般式(3)の式中のR3、R4及びR5は、それぞれが同一の基であっても異なる基であってもよく、また、R3〜R5の中、2つが同一の基であってよい。本製造方法において、R3、R4及びR5は、それぞれがtert−ブチル基であることが特に好ましい。
【0034】
一般式(3)の式中のMeはメチル基を示し、Zはハロゲン基、トシル基、トリフラート基及びメシル基から選ばれる基を示し、これらの中、Zはハロゲン基が好ましい。
【0035】
また、一般式(3)の式中のyは1〜2の整数であり、yは1であることが好ましい。
【0036】
本製造方法において、一般式(3)で表される置換アセチレン重合開始剤は、下記の化合物が好ましく、特に化合物(3a)(以下、[(t−Bu3P)PdMeCl]と言う)が特に好ましい。
【0037】
【化10】


(式中、tBuはtert−ブチル基、iPrはイソプロピル基を示す。)
【0038】
一般式(3)で表される置換アセチレン重合開始剤は、公知の化合物であり、例えば、下記反応スキーム(2)に従って製造することが出来る(特開2014−162745号公報、特開2006−241325号公報、特開2006−241326号公報、ACS
Macro Lett.,3,51−54(2014)等参照)。
【0039】
【化11】
(式中、R3、R4、R5、X及びyは、前記と同義。codは1,5−シクロオクタジエ
ン基を示す。)
【0040】
本発明に係る前記一般式(2)で表される光学活性基を有する2置換アセチレンの重合反応は、前記一般式(3)で表される置換アセチレン重合開始剤の存在下に前記一般式(2)で表される光学活性基を有する2置換アセチレンの重合反応を反応溶媒中で行って、前記一般式(1)で表される光学活性基を有する置換ポリアセチレンを得るものである。
【0041】
本製造方法において、置換アセチレン重合開始剤に対する2置換アセチレンの添加割合はモル比で10〜1,000倍、好ましくは50〜500倍とすることが好ましい。
【0042】
また、用いることが出来る反応溶媒としては、原料を溶解でき生成物に対して不活性な溶媒であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル等が挙げられ、これは1種又は2種以上で用いることができる。
【0043】
本製造方法において、2置換アセチレンの重合反応は、更に一般式(3)の式中のZの基を引き抜き可能な活性剤の存在下に重合反応を行うことにより、効率よく、且つ円滑に重合反応を行うことができる。
【0044】
用いることができる前記活性剤としては、例えばヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸銀、テトラフルオロボウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀等が挙げられ、この中、トリフルオロメタンスルホン酸銀が好ましく用いられる。
【0045】
活性剤の添加量は、置換アセチレン重合開始剤に対するモル比で1〜5倍、好ましくは1〜1.5倍である。
【0046】
重合反応の反応温度は、重合を行う2置換アセチレンの種類により適宜好適な温度条件を選択することが好ましいが、多くの場合、0〜100℃、好ましくは20〜90℃である。また、反応時間は、重合を行う置換アセチレンの種類により異なるが、多くの場合6時間以上、好ましくは12〜36時間である。
【0047】
重合反応終了後、常法により、反応溶媒を除去し、必要により再沈殿化等の精製を行うことにより、目的とする前記一般式(1)で表わされる置換ポリアセチレンを得ることができる。
【0048】
かくして、得られる前記一般式(1)で表わされる置換ポリアセチレンは、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、特に好ましくは5,000〜200,000である。また、本発明において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が15以下、好ましくは6以下、特に好ましくは1.1〜2である。
【0049】
本発明に係る前記一般式(1)で表される光学活性基を有する置換ポリアセチレンは、光学分割剤、液晶、非線形光学材料、フォトエレクトロルミネッセンス材料等として特に有用であり、また、一般式(1)の式中のXのハロゲン原子を置換して他の所望の機能性基の導入も可能である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
{実施例1}
<光学活性基を有する2置換アセチレン(1P)の調製>
2置換アセチレンとして下記化学式(1p)を下記反応スキーム(3)に従って合成した。
【化12】
(式中、Etはエチル基を示す。)
【0052】
((R)―1−(2−ブトキシ)−4−ヨードベンゼン(a3)の合成)
反応容器内に ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(61.1ml)、THF(100ml)を仕込んだ。THF(300ml)にPPh3(30.5g、116mmol)、p−ヨードフェノール(25.5g、116mmol)、(S)−2−ブタノール(8.60g、116mmol)を溶解させ、0℃、アルゴン中で滴下した後、室温、N2下で2日間撹拌した。反応終了後、 ロータリーエバポレーターで 溶媒THFを留去し、減圧乾燥した。残留物をジエチルエーテルで溶解し、溶液を減圧濾過した。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、減圧乾燥してガム状の黄色粘稠物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー (hexane/chloroform = 10/1)で精製し、無色透明液体(13.98g、50.6mmol)を得た(収率44%)。
(同定データ)
1H NMR (400MHz,CDCl3): d 0.95 (t, J = 7.6 Hz, 3H, CH3), 1.26 (d, J =6.0Hz,3H, CH3), 1.56-1.73 (m, 2H, CH2),4.19-4.26 (m, 1H,CH), 6.64-7.53(m, 4H).
【0053】
(トリメチルシリル−4−((R)―2−ブトキシ)フェニルアセチレン(a4)の合成)
反応容器に、(R)−1−(2−ブトキシ)−4−ヨードベンゼン(a3)(13.98g、50.6mmol)、Pd(PPh32Cl2(3.58g、5.10mmol)、PPh3(5.36g、20.4mmol)を仕込み, THF (170ml、22.3mmol)、Et3N(63.8ml、23.8mmol)、トリエチルシリルアセチレン(8.63ml、61.0mmol)をアルゴン下で加え、50℃で3h撹拌した。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、THFに溶解させ濾過した後, 再度溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/chloroform= 5/1)で精製し, 黄色液体 (8.05g、32.6mmol)が得られた(収率65%)。
(同定データ)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): d 0.22 (s, 9H, TMS), 0.95 (t,J=7.6 Hz, 3H, CH3), 1.27 (d, J = 6.0 Hz, 3H, CH3),1.54-1.78 (m, 2H,CH2), 4.25-4.32 (m,1H, CH), 6.79-7.38(m, 4H)
【0054】
(クロロ−4−((R)−2−ブトキシ)フェニルアセチレン(1p)の合成)
反応容器内に、トリメチルシリル−4−((R)―2−ブトキシ)フェニルアセチレン(a4)(8.05g、32.6mmol)、 炭酸カリウム(4.57g、32.6mmol)を仕込み、四塩化炭素(100ml)を加えた。さらに、テトラブチルアンモニウムフロライドのTHF溶液(1.0M、18.7ml、66.0mmol)を加え数分撹拌した後、25°Cで15時間撹拌した。反応終了後、Et2O(110ml)を加え、NaClを用いて塩析することにより分液した。有機層にMgSO4を加えて数分脱水させた後、MgSO4を濾別し, ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し, 減圧乾燥した。生成した液体を1.20g計り取り、分取HPLCを用いて精製し, 茶色液体 (0.873g、4.06mmol)として得た(収率73%)。
(同定データ)
[a]D = 19.7 ° (c=0.1 g/dL, THF). IR (cm-1): 832, 1249,2221, 2878, 2936, 2974. 1HNMR (400 MHz, CDCl3): d 0.95(t, J = 7.6 Hz, 3H, CH3),1.27 (d, J = 6.4 Hz,3H,
CH3),1.55-1.78 (m, 2H, CH2),4.25-4.32 (m, 1H, CH), 6.78-7.35 (m, 4H). 13CNMR (100 MHz, CDCl3):9.84, 19.2, 29.2, 66.2, 75.4, 76.8, 77.1,77.4, 115.8, 133.5, 158.6. Elem. Anal.Calcd for C12H13OCl,C: 69.07%; H 6.28%. Found C: 67.95%,H 6.20%.
【0055】
{実施例2}
<光学活性基を有する2置換アセチレン(1m)の調製>
光学活性基を有する2置換アセチレン(1m)を下記反応スキーム(4)に従って合成した。
【化13】
(式中、Etはエチル基を示す。)
(クロロ−4−((R)−2−ブトキシ)フェニルアセチレン(1m)の合成)
(R)―1−(2−ブトキシ)−4−ヨードベンゼン(a3)の合成において、p−ヨードフェノール(a1)に代えて、m−ヨードフェノール(b1)を用いた以外は、クロロ−4−((R)−2−ブトキシ)フェニルアセチレン(1p)の合成と同様にして、クロロ−4−((R)−2−ブトキシ)フェニルアセチレン(1m)を合成した。
(同定データ)
[a]D = 42.2 °(0.1g/ dL, THF). IR (cm-1): 686, 785, 1286,1596, 2217, 1878,1935,2972. 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) d0.96 (t, J = 8.0 Hz, 3H,CH3), 1.28 (d, J= 6.0 Hz, 3H, CH3), 1.60-1.75 (m, 2H, CH2),4.23-4.32 (m, 1H, CH),6.85-7.24(m, 4H, Ar), 13CNMR (100 MHz, CDCl3)10.0, 19.5, 29.5, 67.9, 75.0, 76.8, 77.3,77.7,117.1,119.0, 123.2, 124.3, 129.5,158.2. Elem. Anal. Calcdfor C12H13OCl, C: 69.07%; H: 6.28%.Found C: 67.95%, H6.20%.
【0056】
{実施例3}
(光学活性基を有する2置換アセチレン(2p)の合成)
光学活性基を有する2置換アセチレン(2p)を下記反応スキーム(5)に従って合成した。
【化14】
(式中、Phはフェニル基を示す。)
(クロロ−4−((S)−1−フェニルエトキシ)フェニルアセチレン(2p)の合成)
(R)―1−(2−ブトキシ)−4−ヨードベンゼン(a3)の合成において、(S)−2−ブタノール(a2)に代えて、(R)−1−フェニルエタノール(c2)を用いた以外は、クロロ−4−((R)−2−ブトキシ)フェニルアセチレン(1p)の合成と同様にして、クロロ−4−((S)−1−フェニルエトキシ)フェニルアセチレン(2p)を合成した。
(同定データ)
[a]D = 2.92 ° (c=0.1g/dL, THF). 1H NMR(400 MHz, acetone-d6): d 7.46-7.22(Ar, 5H), 6.94-6.86 (Ar, 2H), 5.00 (q, 1H, J = 6.3 Hz),1.58 (d, 3H, J = 6.3Hz). 13C
NMR (100 MHz, acetone-d6): d159.4, 143.8,134.0, 129.4, 128.3, 126.4, 116.9, 114.3, 76.4, 70.2, 66.4, 24.6.IR (KBr): 2985.2, 2975.8, 2927.0, 1604.4, 1508.3,1287.8,1241.3, 1180.0, 1078.0,835.7, 763.1, 699.4. Elem. Anal. Calcdfor C14H9OCl, C:73.53%; H 3.93%. Found C: 72.33%, H4.02%. MS (EI): m/z 256, 258 (M+),256:258 = 3:1.
【0057】
{実施例4}
<置換ポリアセチレン(Poly(1p))の調製>
【化15】
反応容器内でクロロ−4−((R)−2−ブトキシ)フェニルアセチレン(1p) (234mg、1.12mmol)をトルエン (0.280ml)に溶解させた。 [(t−Bu3P)PdMeCl](16.0mg、0.04mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf、14.0mg、0.05mmol)を別の容器で混合し、トルエン(0.560ml)で溶解させた。その後, 二つの溶液を混合し, アルゴン下で80℃、20h撹拌した。反応後、酢酸(0.1ml)加えて30分撹拌し反応を停止させた。その後, 少量のCH2Cl2に溶解させたのちに、MeOH (200ml)に滴下し,生じた沈殿物を減圧で濾別した後にTHF(50ml)を加え、THF可溶部と不溶部に分離し、得られた固体をTHF不溶部として回収した。THF可溶部は溶液を回収したのちにロータリーエバポレーターで溶媒を留去し, 再び少量のCH2Cl2に溶解させ、MeOH(200ml)に投入し、生じた沈殿物を減圧濾過にて回収し、置換ポリアセチレン(Poly(1p))を得た。
(同定データ)
Poly(1p): IR (cm-1): 803, 1098, 1247,1507,1605, 2965, 3434. 1H NMR (400 MHz,CDCl3): d 0.08(s),1.57 (s).
【0058】
{実施例5}
<置換ポリアセチレン(Poly(1m))の調製>
【化16】
クロロ−4−((R)−2−ブトキシ)フェニルアセチレン(1p)に代えて、クロロ−4−((R)−2−ブトキシ)フェニルアセチレン(1m)を用いた以外は実施例4と同様にして反応を行い、置換ポリアセチレン(Poly(1m))を得た。
(同定データ)
Poly(1m): IR (cm-1): 796, 1216, 1595,2968,3434. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): d 1.50 (br), 3.50(s).
【0059】
{実施例6}
<置換ポリアセチレン(Poly(2p))の調製>
【化17】
クロロ−4−((R)−2−ブトキシ)フェニルアセチレン(1p)に代えて、クロロ−4−((S)−1−フェニルエトキシ)フェニルアセチレン(2p)を用いた以外は実施例4と同様にして反応を行い、置換ポリアセチレン(Poly(2p))を得た。
(同定データ)
Poly(2p): IR (cm-1): 699, 1241, 1507,1604,2927, 2925, 3438. 1H NMR (400 MHz,CDCl3): d 1.24(br), 1.60 (br), 3.48 (s).
【0060】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の評価>
実施例で得られた置換ポリアセチレンについて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を求めた。その結果を表1に示す。
なお、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の評価は、SEC (ShodexGPC KD-G × 2, Shodex TSK-GELa-M C0053 × 2,JASCOCO-965, JASCO UV-2075 Plus, JASCORI-930, JASCO PU-980, JASCO DG-980-50, 10 mMDMF 溶液, ポリスチレン換算)により行った。
【0061】
【表1】
【0062】
<光学的性質の評価>
実施例4、5及び6で得られた置換ポリアセチレンをDMFに溶解し比旋光度とUV−visスペクトルを測定した。なお、DMF中の置換ポリアセチレンのモノマー単位の濃度は0.04mMとした。
実施例4、5及び6で得られた置換ポリアセチレンのCDスペクトルとUV−visスペクトルを図1に示す。
図1の結果から、実施例5で得られた350nm付近に主鎖の吸収領域にCDピークを示したことから、キラルな二次構造を形成しているものと考えられる。
図1