(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-203091(P2017-203091A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】貼付材
(51)【国際特許分類】
C09J 7/02 20060101AFI20171020BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20171020BHJP
G09F 3/03 20060101ALI20171020BHJP
【FI】
C09J7/02 Z
C09J201/00
G09F3/03 D
G09F3/03 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-94820(P2016-94820)
(22)【出願日】2016年5月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】富能 忠寛
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA10
4J004AA14
4J004AA15
4J004AB01
4J004CA01
4J004CC02
4J004CC06
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA06
4J004FA08
4J040CA001
4J040DF021
4J040ED001
4J040EF001
4J040EK031
4J040JA09
4J040JB09
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】剥がされたことが分かり易く、かつ剥がされた後に被着体に付着物が残り難い貼付材を提供する。
【解決手段】貼付材100は、被着体10に貼り付けられる剥離可能な貼付材であって、延伸可能な延伸層110と、延伸層の一方の面の側に延伸層と一体的に設けられ色が付された破断層130と、延伸層の他方の面の側に延伸層と一体的に設けられ被着体に対して接着可能な粘着剤層140と、を有する。破断層は、貼付材が伸ばされて延伸層に破断が生じるよりも小さい貼付材の伸度で破断する。また、粘着剤層は、破断層に破断が生じる伸度以上かつ延伸層に破断が生じる伸度未満に貼付材を伸ばすのに要する力と同等の接着力F1で、被着体に接着可能であるとともに、前記接着力よりも凝集力F2が大きく、また、前記接着力よりも大きい接着力F3で延伸層と接着している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貼り付けられる剥離可能な貼付材であって、
延伸可能な延伸層と、
前記延伸層の一方の面の側に前記延伸層と一体的に設けられ色が付された破断層と、
前記延伸層の他方の面の側に前記延伸層と一体的に設けられ前記被着体に対して接着可能な粘着剤層と、を有し、
前記破断層は、前記貼付材が伸ばされて前記延伸層に破断が生じるよりも小さい前記貼付材の伸度で破断し、
前記粘着剤層は、前記破断層に破断が生じる伸度以上かつ前記延伸層に破断が生じる伸度未満に前記貼付材を伸ばすのに要する力と同等の接着力で、前記被着体に接着可能であるとともに、前記接着力よりも凝集力が大きく、また、前記接着力よりも大きい接着力で前記延伸層と接着している、貼付材。
【請求項2】
前記延伸層に前記破断層と異なる色が付されている、請求項1に記載の貼付材。
【請求項3】
前記破断層の一部が切込まれた、または切除された脆弱部が前記破断層に設けられている、請求項1または請求項2に記載の貼付材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の蓋や梱包等を封緘しているラベルやテープの不当な剥離によって、それらの内容物が改変されたり入れ替えられたりするのを防止するため、不当な剥離を顕在化させるための工夫が施されたラベルやテープが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の粘着ラベルは、フィルム基材、脆質樹脂層、および粘着剤層を積層方向にこの順序で有し、剥離とともに粘着剤層および脆質樹脂層を被着体に付着させて残す。意図せず粘着剤層および脆質樹脂層が被着体に残っており、これらとフィルム基材とが分離していれば、不当な剥離が行われたことが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4684441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被着体に残されたそれらの付着物は、例えば被着体が使い捨ての場合、被着体に付着したままの状態であってもよいが、再利用される被着体については、多くの場合、そのような付着物は取り除く必要がある。
【0006】
これに関し、本発明者らは、そもそも被着体に付着物が残らなければ、付着物を除去する手間を省け、また付着物の除去にともなって被着体に傷等が生じる虞を低減できると考え、本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、剥がされたことが分かり易く、かつ剥がされた後に被着体に付着物が残り難い貼付材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の貼付材は、被着体に貼り付けられる剥離可能な貼付材であって、延伸可能な延伸層と、前記延伸層の一方の面の側に前記延伸層と一体的に設けられ色が付された破断層と、前記延伸層の他方の面の側に前記延伸層と一体的に設けられ前記被着体に対して接着可能な粘着剤層と、を有する。前記破断層は、前記貼付材が伸ばされて前記延伸層に破断が生じるよりも小さい前記貼付材の伸度で破断する。また、前記粘着剤層は、前記破断層に破断が生じる伸度以上かつ前記延伸層に破断が生じる伸度未満に前記貼付材を伸ばすのに要する力と同等の接着力で、前記被着体に接着可能であるとともに、前記接着力よりも凝集力が大きく、また、前記接着力よりも大きい接着力で前記延伸層と接着している。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を有する貼付材によれば、被着体からの剥離にともなって破断層が破断し、これが剥離の形跡となるため、剥がされたことが分り易い。また、上記構成を有する貼付材によれば、被着体からの剥離にともなって延伸層が破断せず、かつ粘着剤層が延伸層と一体のまま剥離するため、被着体の表面に付着物が残り難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である封緘テープを示す図である。
【
図2】被着体であるボックスへの封緘テープの貼り付けを示す図である。
【
図3】封緘テープによって封緘されたボックスを示す図である。
【
図4】被着体からの封緘テープの剥離を示す図である。
【
図7】封緘テープの貼り付けの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる。
【0012】
図1に示すように、実施形態の封緘テープ100(貼付材)は、延伸層110と、粘着剤層120と、破断層130と、粘着剤層140と、剥離材150と、を有する。
【0013】
延伸層110は、延伸自在であり、引っ張られることによって伸びる。延伸層110の形成に用いられる材料は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の樹脂であるが、これらに限定されない。延伸層110の厚みは、例えば、20〜300μmである。延伸層110は、例えばカーボン等の黒色顔料によって黒色に着色されている。
【0014】
粘着剤層120は、延伸層110の一方の面に形成されている。粘着剤層120は、延伸性を有しており、延伸層110の伸びに追従して伸びる。粘着剤層120の形成に用いられる粘着剤は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等であるが、これらに限定されない。粘着剤層120の厚みは、例えば、10〜100μmである。粘着剤層120は透明である。
【0015】
破断層130は、粘着剤層120を介して延伸層110と一体的に設けられている。また、破断層130は、粘着剤層120を介さずに、熱融着等の方法により、直接、延伸層110と一体的に設けられてもよい。破断層130の形成に用いられる材料は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の樹脂であるが、これらに限定されない。破断層130は、例えば二酸化チタンやシリカ等の白色顔料によって白色に着色されている。破断層130の厚みは、例えば、20〜100μmである。
【0016】
破断層130は、延伸層110に比べて脆く、封緘テープ100が面方向に引っ張られると、破断層130はほとんど伸びることなく破断するのに対し、延伸層110は柔軟に伸びる。封緘テープ100の伸びの割合を表す伸度が例えば5〜7%に達したとき、破断層130は破断するのに対し、延伸層110は、封緘テープ100の伸度が例えば50〜1000%に達するまで破断することなく伸びる。
【0017】
破断の生じ難さ、または破断の生じ易さをどのように調整するかは特に限定されないが、例えば、延伸層110に含まれる可塑剤や破断層130に含まれる白色顔料の量を変えることにより、それらを調製できる。延伸層110に含まれる可塑剤の量を増やすことにより、延伸層110に破断が生じ難くなる。また、破断層130に含まれる白色顔料の量を増やすことにより、破断層130に破断が生じ易くなる。
【0018】
粘着剤層140は、延伸層110に対し、破断層130が設けられている側と反対側の面(他方の面)に一体的に設けられている。粘着剤層140の形成に用いられる粘着剤は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等であるが、これらに限定されない。粘着剤層140の厚みは、例えば、10〜100μmである。
【0019】
剥離材150は、粘着剤層140の表面に剥離自在に配置されている。剥離材150は、粘着剤層140の表面に細かなゴミや手の油等が付着して接着力が低下するのを防ぐ。剥離材150としては公知のものが使用可能であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種樹脂によって形成された剥離フィルムを用いることができる。あるいは、剥離材150は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂からなるフィルム基材の表面、または、上質紙、グラシン紙、コート紙等の紙基材の表面に、シリコーン等の剥離剤が塗布された構成を有していてもよい。封緘テープ100は、剥離材150が剥がされ粘着剤層140が露出した状態で使用される。
【0020】
次に封緘テープ100の使用方法について述べる。
【0021】
図2に示すように、封緘テープ100は、ボックス10(被着体)の封緘に用いることができる。封緘テープ100は、物品を収容するボックス本体11と蓋12との境目13を塞ぐように貼り付けられる。
【0022】
ボックス10は、例えば、貨物輸送される物品を収容するものであり、物品を収容した状態でコンテナに入れられ輸送される。またはこれと異なり、ボックス10は、例えば宅配された物品を受取人不在の場合に一時的に保管しておくもの等であってもよいが、それらに限定されない。ボックス10を形成する材料は、例えばポリプロピレン等の樹脂であるが、これに限定されず、金属であってもよい。
【0023】
図3に示すように、封緘テープ100は、蓋12の全周にわたって貼り付けられ、粘着剤層140でボックス10と接着する。封緘テープ100は、ボックス10を封緘し、ボックス10が不当に開けられるのを防止する。
【0024】
図4に示すように、ボックス10に貼り付けられている封緘テープ100が剥がされると、それにともなって封緘テープ100は引っ張られて伸びる。封緘テープ100は、ボックス10と粘着剤層140との接着力F1以上の力で引っ張られて剥がされる。
【0025】
接着力F1は、破断層130に破断が生じる伸度以上かつ延伸層110に破断が生じる伸度未満に封緘テープ100を伸ばすのに要する力と同等である。
【0026】
このため、封緘テープ100を剥がすために接着力F1以上の力が加えられると、延伸層110は破断することなく延伸するが、破断層130は、封緘テープ100の伸びに追従しきれず破断する。
図4中の符号4で示すように、破断層130が破断して形成された隙間からは、延伸層110を視認できる。接着力F1は、例えば、JIS Z0237:2009に準拠して測定可能である。
【0027】
さらに、粘着剤層140の凝集力F2が接着力F1よりも大きく、かつ粘着材層140と延伸層110との接着力F3が接着力F1よりも大きい(F2、F3>F1)。このため、封緘テープ100が剥離された際に粘着剤層140自体に破壊が生じず、かつ粘着剤層140と延伸層110とが互いに剥離しない。従って、粘着剤層140は、延伸層110と一体となったまま剥離する。
【0028】
接着力F1、F3、および凝集力F2は、例えば、粘着剤層140に含まれる架橋剤の割合を調整することによって調整可能であり、上記JIS規格に準拠して測定される接着力F1を加えて封緘テープ100を剥がした際に、粘着剤層140自体に破壊が生じず、かつ粘着剤層140が延伸層110から剥離しないようにすることができる。
【0030】
上述したように、本実施形態の封緘テープ100によれば、ボックス10からの剥離とともに破断層130が破断し、これが剥離の形跡となるため、剥がされたことが分り易い。また、剥離にともなって延伸層110が破断せず、かつ粘着剤層140が延伸層110と一体のまま剥離する。このため、ボックス10の表面に粘着剤(付着物)が残り難い。
【0031】
また、破断層13の単純な破断が剥離の形跡になるため、簡単な構成によって封緘テープ100の剥離を顕在化できる。
【0032】
また、延伸層110に破断層130とは異なる色が付されているため、破断した破断層130の隙間から延伸層110が覗くと、その隙間が破断層130とは異なる色に視認される(
図4中の符号4参照)。従って、破断層130が破断していること、ひいては封緘テープ100の剥離があったことがより分り易い。
【0033】
特に、本実施形態では、破断層130の色が白であるのに対し、延伸層110の色は黒であるため、破断層130とその隙間とで明確なコントラストが生じ易く、破断層130の破断、ひいては封緘テープ100の剥離があったことをより簡単に認識できる。
【0034】
<変形例>
図5に示すように、変形例の封緘テープ100Aは、破断層130に切込み131A(脆弱部)が形成されている点で上記実施形態と異なる。他の構成については、変形例と上記実施形態とは略同様であり、図中で上記実施形態と同様の符号を付し、ここでの重複する説明を省略する。
【0035】
切込み131Aは、破断層130の面に垂直な方向から見た平面視において、破断層130を長手方向と直交する方向に部分的に切込んで形成されている。切込み131Aは、破断層130を厚み方向に貫通しているが、他の層120、110、140および剥離材150を貫通していない。また、切込み131Aは、破断層130の長手方向に離間して複数形成されている。
【0036】
本変形例では、破断層130に切込み131Aが形成されており、封緘テープ100Aを一旦被着体に貼り付けた後に剥がすと、切込み131Aの形成されている箇所で破断層130が容易に破断する。このため、封緘テープ100Aでは、剥離の形跡がさらに残り易くなっている。
【0037】
また、
図6に示す封緘テープ100Bように、切欠き131Bが脆弱部として破断層130に形成されていてもよい。切欠き131Bは、破断層130の長手方向に延在する縁の一部を三角形状に切除して形成されている。切欠き131Bによっても、上述の切込み131Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変できる。
【0039】
例えば、延伸層および破断層の色は上記実施形態に限定されず、他の色であってもよい。また、破断層に2色以上の色を付してもよいし、例えば、柄、写真、文字等の模様が付されてもよい。
【0040】
また、延伸層が透明であってもよい。このような場合であっても、破断層には色が付されているため、破断を確認し易い。
【0041】
また、破断層と延伸層との間に、装飾部を設けてもよい。装飾部は、特に制限されず、1色あるいは2色以上の色分け模様を表示するものであってもよい。ここで、模様は、所定の柄であってもよいし、写真であってもよいし、文字であってもよい。かような装飾部が設けられていれば、破断した破断層の隙間から模様が視認されるため、破断層が破断していることをより認識し易くなる。
【0042】
また、本発明の貼付材は、上記実施形態のように長尺なテープ状の形態に限定されず、シートもしくはラベル等の他の形態であってもよい。
【0043】
また、本発明の貼付材の用途も、上記実施形態のような物品を収容するボックスもしくは梱包材または物品自体のケースもしくは容器等の封緘に限定されない。例えば、本発明の貼付材は、物品の取り扱い上の注意等が記載されたラベルとして用いられてもよい。このような用途で用いられれば、ラベルが剥がされた場合にその形跡がラベルに残るため、ラベルの記載についての改ざんが防止される。
【0044】
また、本発明の貼付材を被着体にどのように貼り付けるかということに関しても、特に限定されない。例えば
図7に示すように、上記実施形態において、封緘テープ100は、境目13に沿う向きではなく、境目13と交差する向きで境目13を跨いで貼り付けられてもよい。この場合、封緘テープ100は、境目13に沿って離間した複数個所に貼り付けられてボックス10を封緘する。
【符号の説明】
【0045】
10 ボックス(被着体)、
100、100A、100B 封緘テープ(貼付材)、
110 延伸層、
120 粘着剤層、
130 破断層、
131A 切込み(脆弱部)、
131B 切欠き(脆弱部)、
140 粘着剤層、
150 剥離材。