特開2017-203144(P2017-203144A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-203144複合樹脂発泡粒子、その製造方法、複合樹脂発泡粒子成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-203144(P2017-203144A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】複合樹脂発泡粒子、その製造方法、複合樹脂発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/22 20060101AFI20171020BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20171020BHJP
   B29C 44/00 20060101ALN20171020BHJP
【FI】
   C08J9/22CES
   C08J9/22CET
   C08J9/22CEY
   C08F255/02
   B29C67/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-97358(P2016-97358)
(22)【出願日】2016年5月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島 昌臣
(72)【発明者】
【氏名】西島 浩気
【テーマコード(参考)】
4F074
4F212
4J026
【Fターム(参考)】
4F074AA17K
4F074AA21A
4F074AA21K
4F074AA41A
4F074AB02
4F074AC22
4F074AD14
4F074AG07
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA39
4F074CA46
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA24
4F074DA33
4F212AA04
4F212AA13
4F212AA21
4F212AB09
4F212AE03
4F212AG20
4F212AH56
4F212UA02
4F212UB01
4J026AA12
4J026BA05
4J026BA25
4J026BA27
4J026DB03
4J026DB08
4J026DB15
4J026FA02
4J026GA01
(57)【要約】
【課題】内部融着が良好で圧縮剛性及びたわみ耐性に優れると共に、帯電防止性能に優れた成形体を得ることができる複合樹脂発泡粒子、その製造方法、及び複合樹脂発泡粒子を用いた成形体を提供すること。
【解決手段】エチレン系樹脂に(メタ)アクリル酸とスチレン系単量体とを含浸重合させた複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子、その製造方法、及びこれを用いた成形体である。複合樹脂は、スチレン系単量体由来の構造単位をエチレン系樹脂100質量部に対して100〜1900質量部含有する。複合樹脂中のキシレン可溶分をさらにアセトンに溶解させて得られるアセトン可溶分のガラス転移温度Tgが105℃以下である。複合樹脂発泡粒子の表面におけるカルボニル量が0.03mol%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系樹脂に(メタ)アクリル酸とスチレン系単量体とを含浸重合させた複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子であって、
上記複合樹脂は、スチレン系単量体由来の構造単位をエチレン系樹脂100質量部に対して100〜1900質量部含有し、
上記複合樹脂中のキシレン可溶分をさらにアセトンに溶解させて得られるアセトン可溶分のガラス転移温度Tgが105℃以下であり、
上記複合樹脂発泡粒子の表面におけるカルボニル量が0.03mol%以上である、複合樹脂発泡粒子。
【請求項2】
上記複合樹脂100質量部に対する上記(メタ)アクリル酸由来の構造単位の含有量が0.1〜2質量部である、請求項1に記載の複合樹脂発泡粒子。
【請求項3】
上記複合樹脂発泡粒子の水蒸気吸着量が0.5cm3/g以上である、請求項1又は2に記載の複合樹脂発泡粒子。
【請求項4】
上記エチレン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン、又は直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなり、上記エチレン系樹脂中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が10質量%未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合樹脂発泡粒子。
【請求項5】
上記複合樹脂は、上記スチレン系単量体由来の構造単位を上記エチレン系樹脂100質量部に対して400質量部を超えかつ1900質量部以下含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合樹脂発泡粒子。
【請求項6】
上記複合樹脂発泡粒子の表面が帯電防止剤によって被覆されており、該帯電防止剤の付着量が上記複合樹脂発泡粒子100質量部に対して0.3〜5質量部である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合樹脂発泡粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の複合樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であって、該成形体の表面抵抗率が1×1012Ω未満である、複合樹脂発泡粒子成形体。
【請求項8】
水性媒体中にエチレン系樹脂種粒子が分散した分散液中に、上記エチレン系樹脂種粒子中のエチレン系樹脂100質量部に対して100〜1900質量部のスチレン系単量体と、(メタ)アクリル酸とを添加し、上記エチレン系樹脂種粒子に上記スチレン系単量体と上記(メタ)アクリル酸とを含浸、重合させて複合樹脂粒子を得る改質工程と、
発泡剤を用いて上記複合樹脂粒子を発泡させて複合樹脂発泡粒子を得る発泡工程と、を有し、
上記複合樹脂発泡粒子中のキシレン可溶分をさらにアセトンに溶解させて得られるアセトン可溶分のガラス転移温度Tgが105℃以下であり、
上記複合樹脂発泡粒子の表面におけるカルボニル量が0.03mol%以上である、複合樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項9】
上記改質工程においては、上記スチレン系単量体を複数回に分けて上記水性媒体中に添加し、上記(メタ)アクリル酸を、少なくとも最後に添加される上記スチレン系単量体と共に上記エチレン系種粒子に含浸、重合させる、請求項8に記載の複合樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項10】
上記(メタ)アクリル酸の添加量が、該(メタ)アクリル酸と上記エチレン系樹脂と上記スチレン系単量体との合計量100質量部に対して0.1〜2質量部である、請求項8又は9に記載の複合樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系樹脂にスチレン系単量体が含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子、その製造方法、及び複合樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン系樹脂にスチレン系単量体が含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子の型内成形体(すなわち、複合樹脂発泡粒子成形体)は、電子機器や精密機器の部品の梱包や緩衝包装材料として広く利用されている。このような用途の成形体には、埃の付着や、放電等の過電流の発生による電気的な損傷を防止するために、一般に帯電防止性能が付与されることがある。
【0003】
複合樹脂発泡粒子を得る方法としては、例えば次の方法が知られている。具体的には、まず、エチレン系樹脂を含有する種粒子中にスチレン系単量体を含浸、重合させることにより、エチレン系樹脂にスチレン系単量体が含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂粒子を得る。次いで、発泡剤を複合樹脂粒子に含浸させ、該複合樹脂粒子を発泡させることにより複合樹脂発泡粒子を得ることができる。また、発泡粒子成形体に帯電防止性能を付与する方法としては、一般に、界面活性剤などからなる帯電防止剤を添加する方法が用いられている。具体的には、複合樹脂粒子への揮発性発泡剤の含浸時又は含浸後に帯電防止剤を含浸させる方法が知られている。また、複合樹脂発泡粒子に帯電防止剤を塗布する方法も知られている。
【0004】
揮発性発泡剤の含浸時に帯電防止剤を含浸させる方法では、帯電防止剤によって樹脂粒子が過剰に可塑化されることにより、成形時に発泡粒子の耐熱性が低下して成形体が変形するおそれや、発泡粒子同士の融着性が低下するおそれがある。そこで、特許文献1のように、複合樹脂発泡粒子にカチオン系帯電防止剤を所定量塗布する方法が開発されている。また、特許文献2のように、複合樹脂粒子に対してポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルを含浸重合させ、次いで発泡剤の含浸時に帯電防止剤を含浸させる方法が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−81274号公報
【特許文献2】特開平10−147660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のように、複合樹脂発泡粒子に帯電防止剤を塗布する方法では、帯電防止剤の定着性が不十分な場合があり、型内成形時の加熱条件によっては、加熱媒体であるスチーム等によって発泡粒子に付着した帯電防止剤が部分的に脱離するおそれがある。したがって、帯電防止性能に更なる改善が望まれている。また、特許文献2に記載のように、複合樹脂粒子に反応性界面活性剤であるポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルを含浸重合させ、次いで帯電防止剤を含浸させる方法においては、帯電防止性能の向上は可能である。しかし、ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルは水溶性が高い反応性界面活性剤であるため、含浸重合時に複合樹脂粒子中に含浸されにくく、複合樹脂粒子のごく表面付近でポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルの重合が生じる。これにより、ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルの重合体が複合樹脂粒子の表面付近に偏在することで発泡粒子とした際の融着性が低下し、成形体の圧縮剛性、たわみ耐性等の強度物性が不十分となるおそれがある。また、特許文献2の方法では、発泡剤の含浸時に帯電防止剤を含浸させるため、上記したように発泡粒子同士の融着性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、内部融着が良好で圧縮剛性及びたわみ耐性に優れると共に、帯電防止性能に優れた成形体を得ることができる複合樹脂発泡粒子、その製造方法、及び該複合樹脂発泡粒子を用いた成形体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、エチレン系樹脂に(メタ)アクリル酸とスチレン系単量体とを含浸重合させた複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子であって、
上記複合樹脂は、スチレン系単量体由来の構造単位をエチレン系樹脂100質量部に対して100〜1900質量部含有し、
上記複合樹脂中のキシレン可溶分をさらにアセトンに溶解させて得られるアセトン可溶分のガラス転移温度Tgが105℃以下であり、
上記複合樹脂発泡粒子の表面におけるカルボニル量が0.03mol%以上である、複合樹脂発泡粒子にある。
【0009】
本発明の他の態様は、上記複合樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であって、該成形体の表面抵抗率が1×1012Ω未満である、複合樹脂発泡粒子成形体にある。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、水性媒体中にエチレン系樹脂種粒子が分散した分散液中に、上記エチレン系樹脂種粒子中のエチレン系樹脂100質量部に対して100〜1900質量部のスチレン系単量体と、(メタ)アクリル酸とを添加し、上記エチレン系樹脂種粒子に上記スチレン系単量体と上記(メタ)アクリル酸とを含浸、重合させて複合樹脂粒子を得る改質工程と、
発泡剤を用いて上記複合樹脂粒子を発泡させて複合樹脂発泡粒子を得る発泡工程と、を有し、
上記複合樹脂発泡粒子中のキシレン可溶分をさらにアセトンに溶解させて得られるアセトン可溶分のガラス転移温度Tgが105℃以下であり、
上記複合樹脂発泡粒子の表面におけるカルボニル量が0.03mol%以上である、複合樹脂発泡粒子の製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
上記複合樹脂発泡粒子(以下、適宜「発泡粒子」という)においては、(メタ)アクリル酸及びスチレン系単量体がエチレン系樹脂に含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とし、複合樹脂発泡粒子の表面におけるカルボニル量が所定量以上に調整されている。そのため、複合樹脂発泡粒子に帯電防止剤を塗布しても、成形時の帯電防止剤の流出を抑制することができ、良好な帯電防止性能を有する複合樹脂発泡粒子成形体(以下、適宜「成形体」という)を得ることができる。また、複合樹脂中のキシレン可溶分をさらにアセトンに溶解させて得られるアセトン可溶分のガラス転移温度が所定値以下であるため、成形体の内部融着、すなわち、発泡粒子同士の融着性が良好になる。そのため、成形体は、エチレン系樹脂やスチレン系樹脂の組成等に基づいた複合樹脂本来の優れた圧縮剛性及びたわみ耐性等の強度特性を発揮することができる。
【0012】
また、発泡粒子が相互に融着した、表面抵抗率が1×1012Ω未満の成形体は、帯電防止性能に優れるだけでなく、上述のように圧縮剛性及びたわみ耐性等の強度物性に優れている。したがって、上記複合樹脂粒子を用いて得られる成形体は、液晶パネル、太陽光発電パネルなどの電子機器又は精密機器の部品の梱包容器や緩衝包装材料等の用途に好適である。
【0013】
発泡粒子は、改質工程と発泡工程とを行うことにより製造することができる。改質工程においては、エチレン系樹脂種粒子が水性媒体中に分散した分散液中に、所定量のスチレン系単量体と、(メタ)アクリル酸とを添加し、エチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とを含浸、重合させる。これにより、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とがエチレン系樹脂に含浸重合された複合樹脂粒子を得ることができる。発泡工程においては、発泡剤を用いて複合樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る。このようにして得られた発泡粒子に帯電防止剤を塗布しても、上述のように成形時の帯電防止剤の流出を抑制することができ、良好な帯電防止性能を有する成形体を得ることができる。また、成形体は、内部融着が良好で圧縮剛性及びたわみ耐性等の強度特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例における、スチレン量と吸光度比との関係図。
図2】実施例における、カルボニル量と吸光度比との関係図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、上記発泡粒子の好ましい実施形態について説明する。発泡粒子は、例えば、その表面に帯電防止剤が塗布される用途に用いられる。このような用途の発泡粒子は、帯電防止剤を付着させるための帯電防止剤接触面を表面に有するといえる。なお、本明細書において、発泡粒子は、表面に帯電防止剤が付着した粒子、帯電防止剤が付着していない粒子のいずれをも含む概念である。
【0016】
発泡粒子は、型内成形により成形体を得るために用いられる。すなわち、多数の発泡粒子を成形型内に充填し、成形型内で複合樹脂粒子同士を相互に融着させることにより、所望形状の成形体を得ることができる。
【0017】
発泡粒子は、エチレン系樹脂にスチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸(以下、これらをスチレン系単量体等ともいう。)が含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする。本明細書において、複合樹脂は、上述のようにエチレン系樹脂にスチレン系単量体等が含浸、重合された樹脂であり、エチレン系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含有する樹脂である。スチレン系樹脂成分は、スチレン系単量体同士が重合してなる成分と、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とが共重合してなる成分とを含む。さらに、スチレン系単量体等の重合時には、スチレン系単量体同士の重合だけでなく、エチレン系樹脂を構成するポリマー鎖にスチレン系単量体のグラフト重合が起こる場合がある。この場合、複合樹脂は、エチレン系樹脂からなるエチレン系樹脂成分と、スチレン系単量体が重合してなるスチレン系樹脂成分とを含有するだけでなく、さらにスチレン系単量体がグラフト重合したエチレン系樹脂成分(すなわち、PE−g−PS成分)を含有する。したがって、複合樹脂は重合済みのエチレン系樹脂と重合済みのスチレン系樹脂とを混合してなる混合樹脂とは異なる概念である。
【0018】
エチレン系樹脂に含浸、重合させるスチレン系単量体の量は、所望の物性に応じて適宜調整することができる。具体的には、複合樹脂中のエチレン系樹脂の割合を高めると、靱性、復元性が向上するが、剛性が低下する傾向にある。一方、スチレン系単量体由来の構造単位の割合を高めた場合には、剛性が向上するが、靭性、復元性が低下する傾向にある。上記のごとく、複合樹脂は、スチレン系単量体由来の構造単位をエチレン系樹脂100質量部に対して100質量部以上かつ1900質量部以下含有するため、靱性、復元性、剛性のバランスの良い成形体を得ることができる。靱性、復元性、剛性のバランスがより良い成形体を得るためには、複合樹脂は、スチレン系単量体由来の構造単位をエチレン系樹脂100質量部に対して、150質量部を超えかつ1900質量部以下含有することが好ましい。さらに成形体の剛性をより向上させるという観点から、エチレン系樹脂100質量部に対するスチレン系単量体由来の構造単位の含有量は、400質量部を超えることがより好ましく、450質量部以上であることがさらに好ましく、500質量部以上であることが特に好ましい。また、成形体の靱性、復元性をより向上させるためには、エチレン系樹脂100質量部に対するスチレン系単量体由来の構造単位の含有量は、1000質量部以下であることがより好ましく、900質量部以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、数値範囲の上限及び下限に関する好ましい範囲、より好ましい範囲、さらに好ましい範囲は、上限及び下限の全ての組み合わせから決定することができる。
【0019】
エチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を用いることができる。エチレン系樹脂としては、1種の重合体でもよいが、2種以上の重合体の混合物を用いることもできる。
【0020】
上記エチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン、又は直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなることが好ましい。エチレン系樹脂中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。エチレン系樹脂は、酢酸ビニル共重合体を含有しないことが最も好ましい。さらに、エチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とすることが好ましい。具体的には、エチレン系樹脂中の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンのみからなることが特に好ましい。
【0021】
直鎖状低密度ポリエチレンは、直鎖のポリエチレン鎖と炭素数2〜6の短鎖状の分岐鎖とを有する構造を有することが好ましい。具体的には、例えばエチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等が挙げられる。特に、エチレン系樹脂は、メタロセン系重合触媒を用いて重合してなる、融点105℃以下の直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。この場合には、複合樹脂中のエチレン系樹脂成分と、スチレン系単量体が重合してなるスチレン系樹脂成分との親和性がより向上し、複合樹脂の靱性を高めることできる。また、低分子量成分を少なくしつつ、成形時の発泡粒子間の融着強度を高めることができるため、低VOCでかつ割れにくい成形体を得ることが可能になる。さらに、スチレン系樹脂の優れた剛性とエチレン系樹脂の優れた粘り強さとをより高いレベルで兼ね備えた成形体を得ることが可能になる。
【0022】
また、エチレン系樹脂の融点Tmは95〜105℃であることが好ましい。この場合には、エチレン系樹脂にスチレン系単量体を充分に含浸させることができるため、重合時に懸濁系が不安定化することを防止することができる。その結果、スチレン系樹脂の優れた剛性とエチレン系樹脂の優れた粘り強さとをより高いレベルで兼ね備えた成形体を得ることが可能になる。同様の観点から、エチレン系樹脂の融点Tmは100〜105℃であることがより好ましい。なお、融点Tmは、JIS K7121−1987年に基づいて、示差走査熱量測定(すなわち、DSC)にて融解ピーク温度として測定することができる。
【0023】
エチレン系樹脂は、融点Tm(単位:℃)とビカット軟化点Tv(単位:℃)とが、Tm−Tv≦20(単位:℃)という関係を満足する直鎖状低密度ポリエチレンからなることが好ましい。このようなエチレン系樹脂は、均一な分子構造を示し、架橋による網目構造がより均一にエチレン系樹脂中に分布するものと推察される。したがって、この場合には、上記発泡粒子を用いて得られる発泡粒子成形体の強度及び粘り強さを向上させることができる。成形体の強度及び粘り強さをより向上させるという観点から、直鎖状低密度ポリエチレンは、Tm−Tv≦15(単位:℃)を満足することがより好ましく、Tm−Tv≦10(単位:℃)を満足することが更に好ましい。通常、融点Tmはビカット軟化点Tvよりも高くなる。なお、ビカット軟化点Tvは、JIS K7206(2016年)のA50法に基づいて、測定することができる。また、エチレン系樹脂が2種類以上の樹脂からなる混合樹脂である場合には、混合樹脂の融点、ビカット軟化点を測定し、それをエチレン系樹脂の融点、ビカット軟化点とする。
【0024】
発泡性をより向上できるという観点から、温度190℃、荷重2.16kgの条件におけるエチレン系樹脂のメルトマスフローレイト(すなわち、MFR)は、0.5〜4.0g/10分が好ましく、1.0〜3.0g/10分がより好ましい。温度190℃、荷重2.16kgの条件におけるエチレン系樹脂のMFRは、JIS K7210−1(2014年)に基づき、測定される値である。なお、測定装置としては、メルトインデクサー(例えば宝工業(株)製の型式L203など)を用いることができる。
【0025】
複合樹脂は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸が共重合してなる成分を含有する。なお、本明細書では、スチレン系樹脂成分を構成するスチレン、必要に応じて添加されるスチレンと共重合可能なモノマー(ただし、(メタ)アクリル酸を除く)を、併せてスチレン系単量体と称することがある。スチレン系単量体中のスチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。スチレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば下記のスチレン誘導体、その他のビニルモノマー等がある。
【0026】
スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、ジビニルベンゼン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、単独でも2種類以上を混合したものを用いても良い。
【0027】
また、その他のビニルモノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、水酸基を含有するビニル化合物、ニトリル基を含有するビニル化合物、有機酸ビニル化合物、オレフィン化合物、ジエン化合物、ハロゲン化ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、マレイミド化合物などが挙げられる。これらのビニルモノマーは、単独でも2種類以上を混合したものを用いても良い。
【0028】
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等がある。メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等がある。これらは、単独でも2種類以上を混合したものを用いても良い。
【0029】
水酸基を含有するビニル化合物としては、例えばアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等がある。ニトリル基を含有するビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等がある。有機酸ビニル化合物としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等がある。これらは、単独でも2種類以上を混合したものを用いても良い。
【0030】
オレフィン化合物としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン等がある。ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン等がある。ハロゲン化ビニル化合物としては、例えば塩化ビニル、臭化ビニル等がある。ハロゲン化ビニリデン化合物としては、例えば塩化ビニリデン等がある。マレイミド化合物としては、例えばN−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等がある。これらは、単独でも2種類以上を混合したものを用いても良い。
【0031】
発泡性を高めるという観点から、スチレン系単量体としては、スチレン、又はスチレンとアクリル酸エステル系単量体とを併用することが好ましい。さらに発泡性を高めるという観点からは、スチレンとアクリル酸ブチルとを併用することが好ましい。この場合には、複合樹脂中のアクリル酸ブチル由来の構造単位の含有量は、複合樹脂全体に対して0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
また、スチレン系樹脂成分は(メタ)アクリル酸由来の構造単位をさらに含有する。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」と「メタクリル酸」とを含む概念であり、これらの一方、又は双方を意味する。(メタ)アクリル酸は、構造内に炭素−炭素間の2重結合を有するため、スチレン系単量体の含浸重合時に、スチレン系単量体と共重合することができる。そして、(メタ)アクリル酸由来の構造単位が発泡粒子における例えば表面に存在することによって、発泡粒子の融着性の低下を抑制しつつ帯電防止剤の定着性の向上が可能になる。この理由は次のように考えられる。
【0033】
すなわち、(メタ)アクリル酸は、適度な水溶性を有するため、重合安定性が高く、凝結が生じにくい。さらに、(メタ)アクリル酸がスチレン系単量体と共重合することにより、複合樹脂がスチレン系単量体由来の構造単位と(メタ)アクリル酸由来の構造単位とを有する共重合体成分を含有すると共に、この共重合体成分を粒子表面に含有させることができると考えられる。そのため、発泡粒子の融着性を維持したまま、帯電防止剤の定着性を向上させることが可能になる。
【0034】
(メタ)アクリル酸由来の構造は、発泡粒子の中心部よりも表面付近に多く存在していることが好ましい。この場合には、発泡粒子の帯電防止剤の定着性をより向上させることができる。後述の発泡粒子の製造工程において、(メタ)アクリル酸を添加するタイミングを調整することにより、(メタ)アクリル酸由来の構造が発泡粒子の表面付近に存在しやすくなる。具体的には、スチレン系単量体の含浸重合時において、スチレン系単量体を複数回に分けて添加する場合において、2回目以降に添加するスチレン系単量体と共に(メタ)アクリル酸を添加することにより、(メタ)アクリル酸由来の構造が発泡粒子の表面付近に存在し易くなる。
【0035】
可能な限り、少なくとも最後に添加されるスチレン系単量体と共に(メタ)アクリル酸を添加するか、或いは、最後に添加されるスチレン系単量体を添加した後からそのスチレン系単量体の重合が完了するまでの間に(メタ)アクリル酸を添加することがより好ましい。この場合には、発泡粒子の表面における(メタ)アクリル酸由来のカルボニル量を高め易くなる。
【0036】
また、最後に添加されるスチレン系単量体は、例えば上述のアクリル酸エステル等のスチレンと共重合可能なモノマーを含まないことが好ましい。具体的には、最後に添加されるスチレン系単量体は、スチレンであることがより好ましい。この場合には、帯電防止剤の定着性を(メタ)アクリル酸の添加量に応じて効率良く高めることができる。
【0037】
複合樹脂中のキシレン可溶分をさらにアセトンに溶解させて得られるアセトン可溶分のガラス転移温度Tgは、105℃以下であり、102℃以下であることが好ましい。一方、ガラス転移温度Tgの下限は、概ね85℃以上であることが好ましい。この場合には、複合樹脂粒子の発泡時における発泡性をより向上させることができ、発泡時の収縮をより防止することができる。さらに、発泡後に得られる発泡粒子の型内成形時に、発泡粒子同士の融着性をより向上させることができ、発泡粒子成形体の寸法安定性をより向上させることができる。
【0038】
上記ガラス転移温度Tgは、例えば次のようにして測定できる。まず、150メッシュの金網袋中に複合樹脂粒子1.0gを入れる。次に、容積200mlの丸型フラスコにキシレン約200mlを入れ、ソックスレー抽出管に上記金網袋に入れたサンプルをセットする。マントルヒーターで8時間加熱し、ソックスレー抽出を行う。抽出したキシレン溶液をアセトン600mlへ投下し、デカンテーションし、上澄み液を減圧蒸発乾固し、アセトン可溶分を得る。得られたアセトン可溶分2〜4mgについて、ティ・エイ・インスツルメント社製のDSC測定器Q1000を用い、JIS K7121(1987年)に準拠して熱流束示差走査熱量測定を行う。そして、加熱速度10℃/分の条件で得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度としてアセトン可溶分のTgが得られ、それを複合樹脂中のキシレン可溶分をさらにアセトンに溶解させて得られるアセトン可溶分のTgとする。なお、複合樹脂中のキシレン可溶分をさらにアセトンに溶解させて得られるアセトン可溶分は、主にスチレン系樹脂である。
【0039】
発泡粒子の表面におけるカルボニル量(以下、表面カルボニル量ともいう)は0.03mol%以上である。0.03mol%未満の場合には、帯電防止剤の定着性の向上効果が不十分になるおそれがある。その結果、成形体の帯電防止性能が不十分になるおそれがある。帯電防止剤の定着性をより向上させるという観点から、発泡粒子の表面におけるカルボニル量は0.07mol%以上であることがより好ましく、0.1mol%以上であることがさらに好ましい。
【0040】
一方、発泡粒子全体のカルボニル量が多くなりすぎると、ガラス転移温度Tgが105℃を超えて高くなり、発泡粒子の融着性が低下するおそれがある。ガラス転移温度を高めずに発泡粒子の融着性を維持しつつ、帯電防止剤の定着性をより向上させるという観点から、発泡粒子の表面におけるカルボニル量は0.2mol%以下であることが好ましく、0.16mol%以下であることがより好ましく、0.15mol%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
発泡粒子の表面におけるカルボニル量は全反射吸収(ATR法)の赤外吸収スペクトルから求めることができる。具体的には、発泡粒子の表面におけるスチレン量と、表面におけるスチレン量に対するカルボニル量の乗算から求められる。まず、以下のようにして、スチレン量、及びスチレン量に対するカルボニル量を測定する。
(a)スチレン量
スチレン量の測定にあたっては、測定装置として、赤外分光光度計と全反射吸収測定装置を用いて発泡粒子の表面の赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)を得る。次に、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる698cm-1における吸光度D698、2850cm-1における吸光度D2850を測定し、吸光度比D698/D2850を求める。これらの平均値を発泡粒子の吸光度比D698/D2850とする。上記吸光度比D698/D2850は、発泡性改質樹脂粒子の表面におけるポリスチレン量を推定する指標となる。なお、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる吸光度D698は、スチレン系樹脂に主に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来するピークの高さである。また、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる吸光度D2850は、エチレン系樹脂とスチレン系樹脂の双方に含まれるメチレン基のC−H間伸縮振動に由来するピークの高さである。そして、検量線を用いて発泡粒子表面のスチレン量を求めることができる。
(b)スチレン量に対するカルボニル量
カルボニル量の測定にあたっては、上述のスチレン量の測定と同様の測定装置、測定条件により求められる。次に、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる698cm-1における吸光度D698、1730cm-1における吸光度D1730を測定し、吸光度比D1730/D698を求める。同様の測定を5つの発泡粒子について行い、これらの平均値を複合樹脂発泡粒子の吸光度比D1730/D698とする。なお、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる吸光度D1730は、(メタ)アクリル酸成分単位のカルボキシ基に由来するピークの高さである。そして、あらかじめ作成した検量線を用いて、スチレン量に対するカルボニル量を求める。そして、上記スチレン量とスチレン量に対するカルボニル量の乗算から発泡粒子の表面におけるカルボニル量を求めることができる。
【0042】
スチレン系樹脂成分は、メタクリル酸由来の構造単位、アクリル酸由来の構造単位、又はメタクリル酸由来の構造単位とアクリル酸由来の構造単位を有する。好ましくは、スチレン系樹脂成分は、少なくともメタクリル酸由来の構造単位を有することがよい。この場合には、帯電防止剤の定着性と発泡粒子の融着性とをよりバランス良く向上させることができる。
【0043】
発泡粒子においては、複合樹脂100質量部に対する(メタ)アクリル酸由来の構造単位の含有量が0.1〜2質量部であることが好ましい。この場合には、帯電防止剤の定着性と発泡粒子の融着性とをよりバランス良く向上させることができる。帯電防止剤の定着性をより向上させるという観点から、複合樹脂100質量部に対する(メタ)アクリル酸由来の構造単位の含有量は0.2質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。一方、融着性の低下をより抑制するという観点から、複合樹脂100質量部に対する(メタ)アクリル酸由来の構造単位の含有量は、1.5質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。
【0044】
発泡粒子の表面には帯電防止剤を付着させることができる。帯電防止剤の付着量は、使用する帯電防止剤の種類にもよるが、発泡粒子100質量部に対して0.3〜5質量部であることが好ましい。この場合には、帯電防止性能が十分に得られると共に、融着性の低下をより防止することができる。帯電防止性能をより十分に得るという観点から、発泡粒子100質量部に対する帯電防止剤の付着量は、0.5質量部以上であることがより好ましい。また、融着性の低下をさらに一層防止できるという観点から、帯電防止剤の付着量は、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましい。
【0045】
なお、エチレン系樹脂にスチレン系単量体が含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子は基本的に疎水性を有するため、親水性を有する帯電防止剤を付着させた際の定着性が低く、発泡粒子を型内成形する際の加熱条件によっては、加熱媒体であるスチーム等によって発泡粒子に付着した帯電防止剤が部分的に脱離するおそれがある。しかしながら、上記発泡粒子は、上述のように(メタ)アクリル酸由来の構造単位を特定量含有しているため、発泡粒子同士の融着性を阻害することなく表面付近が適度に親水化され、帯電防止剤の定着性が向上すると考えられる。すなわち、上記複合樹脂発泡粒子によれば、優れた機械的強度と帯電防止性能とを兼ね備えた成形体を得ることが可能になる。
【0046】
帯電防止剤としては、特に制限はなく、例えば、ヒドロキシアルキルアミン、ヒドロキシアルキルモノエーテルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系界面活性剤;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート等のアニオン系界面活性剤;オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤等が挙げられる。また、これらの帯電防止剤は、単独または混合して使用することもできる。帯電防止剤としては、例えば各種市販品を利用することができる。
【0047】
帯電防止剤は、少なくともカチオン系界面活性剤を含有することが好ましく、少なくともオクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートを用いることがより好ましい。この場合には、(メタ)アクリル酸由来の構造単位を含有する発泡粒子に帯電防止剤がより定着し易くなり、成形体の帯電防止性能をより向上させることができる。
【0048】
発泡粒子が相互に融着した成形体の表面抵抗率は、1×1012Ω未満であることが好ましい。表面抵抗率が上記範囲であれば、液晶パネル、太陽光発電パネルなどの梱包容器、緩衝包装材料に要求される帯電防止性能を十分に発揮することができる。成形体の表面抵抗率は5×1011Ω以下がより好ましく、2.5×1011Ω以下がさらに好ましい。
【0049】
発泡粒子の水蒸気吸着量は、0.5cm3/g以上であることが好ましい。この場合には、発泡粒子表面における帯電防止剤の定着性をより確実かつ十分に向上させることができる。上記観点から、発泡粒子の水蒸気吸着量は、0.7cm3/g以上であることがより好ましく、0.8cm3/g以上であることがさらに好ましい。なお、上記水蒸気吸着量は、発泡粒子表面に水蒸気がどれだけ吸着できるかを示すものである。この水蒸気吸着量は、発泡粒子の親水性の指標であり、発泡粒子の表面におけるカルボニル量が増大すると、発泡粒子表面に吸着する水蒸気量も高くなる傾向にある。
【0050】
複合樹脂発泡粒子の水蒸気吸着量の測定は、蒸気吸着量測定装置を用いて25℃にて吸着等温線(設定相対圧:0.005〜0.9)を測定し、最大相対圧0.9における水蒸気吸着量を本発明における複合樹脂発泡粒子の水蒸気吸着量として求めることができる。具体的には、例えば、予め複合樹脂粒子を約0.2g計量し、次に、計量した複合樹脂粒子をサンプルセル内に入れ、25℃における水蒸気の吸着等温線(設定相対圧:0.005〜0.9)を測定し、最大相対圧0.9における水蒸気吸着量を本発明における複合樹脂発泡粒子の水蒸気吸着量として求めることができる。
【0051】
次に、発泡粒子の製造方法の実施形態について説明する。発泡粒子は、改質工程及び発泡工程を行うことにより得られる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0052】
改質工程においては、エチレン系樹脂成分を主成分とするエチレン系樹脂種粒子(以下、適宜「種粒子」という)が用いられる。種粒子は、エチレン系樹脂成分の他に、気泡調整剤、着色剤、滑剤、分散径拡大剤等の添加剤をさらに含有することができる。種粒子は、必要に応じて添加される上述の添加剤をエチレン系樹脂成分に配合し、配合物を溶融混練してから細粒化することにより製造することができる。溶融混練は押出機により行うことができる。均一な混練を行うためには、予め樹脂成分を混合した後に押出を行うことが好ましい。樹脂成分の混合は、例えばヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー、レディーゲミキサーなどの混合機を用いて行うことができる。溶融混練は、例えばダルメージタイプ、マドックタイプ、ユニメルトタイプ等の高分散タイプのスクリュを備えた単軸押出機や二軸押出機を用いて行うことが好ましい。
【0053】
種粒子の造粒は、例えば、溶融混練した配合物を押出機等により押出しながら切断することにより行われる。造粒は、例えばストランドカット方式、アンダーウォーターカット方式、ホットカット方式等によって行うことができる。
【0054】
改質工程においては、まず、水性媒体中に種粒子を分散させることにより分散液を得る。水性媒体としては、例えば脱イオン水を用いることができる。種粒子は、懸濁剤とともに水性媒体中に分散させることが好ましい。この場合には、種粒子を分散させた水性媒体中に後述のスチレン系単量体を均一に懸濁させることができる。懸濁剤としては、例えばリン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第2鉄、水酸化チタン、水酸化マグネシウム、リン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、ベントナイト等の微粒子状の無機懸濁剤を用いることができる。また、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の有機懸濁剤を用いることもできる。好ましくは、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウムがよい。これらの懸濁剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
懸濁剤の使用量は、懸濁重合系の水性媒体(具体的には、反応生成物含有スラリーなどの水を含む系内の全ての水)100質量部に対して、固形分量で0.05〜10質量部が好ましい。より好ましくは0.3〜5質量部がよい。懸濁剤が少なすぎる場合には、改質工程において、スチレン系単量体を安定して懸濁させることが困難になり、樹脂の塊状物が発生するおそれがある。一方、懸濁剤が多すぎる場合には、製造コストが増大してしまうだけでなく、改質工程後に得られる複合樹脂粒子の粒子径分布が広がってしまうおそれがある。
【0056】
水性媒体には、界面活性剤からなる分散剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えばアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。これらの界面活性剤は、単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0057】
アニオン系界面活性剤としては、例えばアルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等を用いることができる。ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等を用いることができる。より好ましくは、分散剤としては、炭素数8〜20のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩)からなるアニオン系界面活性剤を用いることがよい。これにより、懸濁を充分に安定化させることができる。
【0058】
また、水性媒体には、必要に応じて、例えば塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の無機塩類からなる電解質を添加することができる。また、靭性、機械的強度により優れた成形体を得るためには、水性媒体に水溶性重合禁止剤を添加することが好ましい。水溶性重合禁止剤としては、例えば亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム、L−アスコルビン酸、クエン酸等を用いることができる。
【0059】
水溶性重合禁止剤は、種粒子内に含浸し難く、水性媒体中に溶解する。したがって、種粒子に含浸したスチレン系単量体の重合は行われるが、種粒子に含浸されていない水性媒体中のスチレン系単量体の微小液滴、及び種粒子に吸収されつつある種粒子表面付近のスチレン系単量体の重合を抑制することができる。その結果、複合樹脂粒子の最表面付近におけるスチレン系樹脂成分の量を少なくすることができ、得られる成形体の靭性が向上すると推察される。水溶性重合禁止剤の添加量は、水性媒体(具体的には、反応生成物含有スラリーなどの水を含む系内の全ての水)100質量部に対して0.001〜0.1質量部が好ましく、より好ましくは0.005〜0.06質量部がよい。
【0060】
改質工程においては、上記のように種粒子が水性媒体に分散した分散液中において、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とを種粒子に含浸、重合させる。なお、スチレン系単量体等の重合は、重合開始剤の存在下で行うことができる。この場合には、スチレン系単量体等の共重合と共にエチレン系樹脂の架橋が生じることがある。また、必要に応じて架橋剤を併用することができる。重合開始剤、架橋剤を使用する際には、予めスチレン系単量体に重合開始剤、架橋剤を溶解させておくことが好ましい。
【0061】
重合開始剤としては、スチレン系単量体の懸濁重合法に用いられるものを用いることができる。例えばスチレン系単量体に可溶で、10時間半減期温度が50〜120℃である重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えばクメンヒドロキシパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物を用いることができる。また、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用いることができる。これらの重合開始剤は1種類、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、残留スチレン系モノマーを低減しやすいという観点からt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが好ましい。重合開始剤は、スチレン系単量体100質量部に対して0.01〜3質量部で使用することが好ましい。
【0062】
また、架橋剤としては、重合温度では分解せず、架橋温度で分解する10時間半減期温度が重合温度よりも5℃〜50℃高い物質を用いることが好ましい。具体的には、例えばジクミルパーオキサイド、2,5−t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン等の過酸化物を用いることができる。架橋剤は、単独または2種類以上併用して用いることができる。架橋剤の配合量は、スチレン系単量体100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。なお、重合開始剤及び架橋剤としては、同じ化合物を採用することもできる。
【0063】
また、(メタ)アクリル酸は、スチレン系単量体に予め溶解させておくことが好ましい。すなわち、水性媒体中に分散させた種粒子に、(メタ)アクリル酸を溶解させたスチレン系単量体を含浸、重合させることが好ましい。この場合には、スチレン系単量体の重合時に(メタ)アクリル酸がより取り込まれ易くなる。
【0064】
種粒子にスチレン系単量体を含浸させて重合させるにあたって、種粒子を分散させた水性媒体中に、配合予定のスチレン系単量体の全量を一括して添加することもできるが、配合予定のスチレン系単量体の全量を例えば2以上に分割し、これらのモノマーを異なるタイミングで添加することもできる。具体的には、配合予定のスチレン系単量体の全量のうちの一部を、種粒子が分散された水性媒体中に添加して、スチレン系単量体を含浸、重合をさせつつ、次いで、さらに配合予定のスチレン系単量体の残部を1回又は2回以上に分けて水性媒体中に添加することができる。後者のように、スチレン系単量体を分割して添加することにより、重合時に樹脂粒子同士が凝結することをより抑制することが可能になる。
【0065】
また、上述のように配合予定のスチレン系単量体の全量を2以上に分割し、これらのモノマーを異なるタイミングで添加する場合には、2回目以降に添加されるスチレン系単量体と共に(メタ)アクリル酸を添加することが好ましい。より好ましくは、少なくとも最後に添加されるスチレン系単量体と共に(メタ)アクリル酸を添加することが好ましい。この場合には、発泡粒子の表面付近に(メタ)アクリル酸由来の構造単位を含むスチレン系樹脂成分を存在させやすくなる。その結果、発泡粒子における帯電防止剤の定着性をより向上させることができる。
【0066】
また、重合開始剤は、スチレン系単量体に溶解させた状態で、水性媒体中に添加することができる。上述のごとく、配合予定のスチレン系単量体を2回以上に分割して異なるタイミングで添加する場合には、いずれのタイミングで添加されるスチレン系単量体にも重合開始剤を溶解させることができ、異なるタイミングで添加される各スチレン系単量体に重合開始剤を添加することもできる。スチレン系単量体を分割して添加する場合には、少なくとも最初に添加されるスチレン系単量体(以下、「第1モノマー」という)には重合開始剤を溶解させておくことが好ましい。第1モノマーには、配合予定の重合開始剤の全量のうちの75%以上を溶解させることが好ましく、80%以上を溶解させておくことがより好ましい。この場合には、複合樹脂粒子の製造時に、エチレン系樹脂にスチレン系単量体を充分に含浸させることができ、重合時に懸濁系が不安定化することを防止することができる。その結果、スチレン系樹脂の優れた剛性とエチレン系樹脂の優れた粘り強さとをより高いレベルで兼ね備えた成形体を得ることが可能になる。また、上述のように、配合予定のスチレン系単量体の一部を第1モノマーとして添加する場合には、配合予定のスチレン系単量体の全量のうちの残部を第2モノマーとして、第1モノマーの添加後に第1モノマーとは異なるタイミングで添加することができる。第2モノマーをさらに分割して添加することもできる。
【0067】
なお、第1モノマーとして添加するスチレン系単量体のシード比(すなわち、種粒子に対する第1モノマーの質量比)は、0.5以上であることが好ましい。この場合には、複合樹脂粒子の形状をより球状に近づけることが容易になる。同様の観点から、シード比は0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。また、シード比は、1.5以下であることが好ましい。この場合には、スチレン系単量体が種粒子に充分に含浸される前に重合することをより防止することができ、樹脂の塊状物の発生をより防止することができる。同様の観点から、第1モノマーのシード比は、1.3以下であることがより好ましく、1.2以下であることがさらに好ましい。
【0068】
種粒子中のエチレン系樹脂の融点Tm(℃)と、改質工程における重合温度Tp(℃)とが、Tm−10≦Tp≦Tm+30の関係を満足することが好ましい。この場合には、複合樹脂粒子の製造時に、エチレン系樹脂にスチレン系単量体を充分に含浸させることができ、重合時に懸濁系が不安定化することを防止することができる。その結果、スチレン系樹脂の優れた剛性とエチレン系樹脂の優れた粘り強さとをより高いレベルで兼ね備えた発泡粒子成形体を得ることが可能になる。また、改質工程における含浸温度、重合温度は、使用する重合開始剤の種類によって異なるが、60〜105℃であることが好ましく、70〜105℃であることがより好ましい。また、架橋温度は使用する架橋剤の種類によって異なるが、100〜150℃であることが好ましい。
【0069】
また、スチレン系単量体には、必要に応じて可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤、着色剤、連鎖移動剤等の添加剤を添加することができる。これらの添加剤をスチレン系単量体に添加する場合には、上述の第1モノマーに添加することが好ましい。少なくとも上述の最後に添加されるスチレン系単量体には、これらの添加剤の内、カルボニル基を有する添加剤を添加しないことが好ましい。
【0070】
可塑剤としては、例えば脂肪酸エステル、アセチル化モノグリセライド、油脂類、炭化水素化合物等を用いることができる。脂肪酸エステルとしては、例えばグリセリントリステアレート、グリセリントリオクトエート、グリセリントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ブチルステアレート等を用いることができる。また、アセチル化モノグリセライドとしては、例えばグリセリンジアセトモノラウレート等を用いることができる。油脂類としては、例えば硬化牛脂、硬化ひまし油等を用いることができる。炭化水素化合物としては、例えばシクロヘキサン、流動パラフィン等を用いることもできる。また、油溶性重合禁止剤としては、例えばパラ−t−ブチルカテコール、ハイドロキノン、ベンゾキノン等を用いることができる。難燃剤としては、例えばヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA系化合物、トリメチルホスフェート、臭素化ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水酸化アルミニウム等を用いることができる。着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、炭素繊維等を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えばn−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等を用いることができる。上記添加剤は、単独または2種以上の組合せで添加することができる。
【0071】
上述の可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤、着色剤、連鎖移動剤等の添加剤は、溶剤に溶解させて種粒子に含浸させることもできる。溶剤としては、例えばエチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0072】
発泡工程においては、複合樹脂粒子を発泡させる。発泡方法としては、特に限定されるものではないが、例えばガス含浸予備発泡方法、分散媒放出発泡方法、或いはこれらの方法、原理を基本としたその他の発泡方法が挙げられる。
【0073】
ガス含浸予備発泡方法においては、重合中、重合後、又は重合中及び重合後の複合樹脂粒子に物理発泡剤等の発泡剤を含浸させる。発泡剤が含浸された複合樹脂粒子を以下、適宜「発泡性複合樹脂粒子」という。次いで、発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に投入し、水蒸気、熱風、或いはそれらの混合物などの加熱媒体にて加熱することにより発泡性複合樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得ることができる。また、圧力容器内にて重合して得られた複合樹脂粒子を別の圧力容器内に充填し、発泡剤を圧入することにより複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性複合樹脂粒子を作製することもできる。
【0074】
一方、分散媒放出発泡方法においては、まず、圧力容器内の水性媒体中に分散させた複合樹脂粒子に、加熱、加圧下で発泡剤を含浸させて発泡性複合樹脂粒子を作製する。次いで、発泡適正温度条件下において、水性媒体と共に発泡性複合樹脂粒子を圧力容器から圧力容器内よりも低圧下に放出することにより、発泡性複合樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得ることができる。
【0075】
発泡剤の含浸には、液相含浸法、気相含浸法を適宜選択できる。物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気、ヘリウム、水等の無機ガス;メタン、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン等の有機揮発性ガス等が挙げられる。好ましくは、無機系発泡剤がよい。この場合には、発泡後に発泡粒子から発泡剤が放散し、発泡粒子内に発泡剤が残留しない。そのため、成形時に発泡粒子の内圧が過度に上昇しにくく、短時間で成形体の冷却を完了し、成形型から取り出すことが可能となる。
【0076】
発泡粒子の形状としては、例えば、円柱状、ラグビーボール状、球状などが挙げられる。また、発泡粒子の大きさは、発泡剤の量や樹脂粒子の大きさにもよるが、直径0.5mm〜5mm程度である。
【0077】
帯電防止剤の発泡粒子への塗布方法としては、吹付け塗布、エアレス塗布、浸漬塗布、ブレンド法、或いはこれらの方法、原理を基本としたその他の塗布方法が挙げられる。吹付け塗布は、帯電防止剤溶液を霧状にして高圧空気とともに発泡粒子に吹きつける方法である。エアレス塗布は、帯電防止剤溶液を高圧にしてその圧力を用いてスプレーノズルから発泡粒子に噴霧して塗布する方法である。なお、発泡粒子は、吹付時に流動状態とするか、または吹付け後に攪拌して発泡粒子の表面全体に帯電防止剤溶液を付着させることが好ましい。浸漬塗布は、発泡粒子を帯電防止剤溶液に浸漬後に引き上げる方法である。ブレンド法は、発泡粒子と少量の帯電防止剤溶液とを攪拌することにより塗布する方法である。
【0078】
塗布に使用される帯電防止剤の濃度及び性状に制限は無く、原液でも粉体でもよく、水またはアルコール等の希釈液でもよい。さらに、発泡粒子に帯電防止剤を塗布する際の容器は、密閉系、開放系のどちらでもよく、塗布時の温度も発泡粒子の耐熱温度以下であればよい。塗布時、または、塗布後に発泡粒子をよく攪拌して、帯電防止剤が複合発泡粒子の表面全体に付着させることが好ましい。塗布方法は、上記のいずれか、もしくはそれらを組み合わせることもできる。
【0079】
帯電防止剤の塗布工程においては、帯電防止剤の付着量が上記範囲となるように、発泡粒子100質量部に対して、帯電防止剤を0.3〜5質量部塗布することが好ましい。この場合には、発泡粒子に十分優れた帯電防止性能を付与することができると共に、発泡粒子の流動性の低下を防止し、成形時に充填不良を防止することができる。複合樹脂発泡粒子100質量部に対する帯電防止剤の塗布量は、0.5〜4質量部であることがより好ましく、1〜3質量部であることがさらに好ましい。なお、帯電防止剤の被覆は、帯電防止剤が発泡粒子の表面に存在していればよく、発泡粒子の表面を完全に覆っている態様がより好ましい。したがって、帯電防止剤によって被覆された発泡粒子は、必ずしも表面が完全に覆われている必要はなく、発泡粒子表面に帯電防止剤によって覆われていない部分を有していてもよい。
【0080】
成形体は、公知のスチーム加熱による型内成形方法により、製造可能である。即ち、多数の発泡粒子を金型等の成形型内に充填し、該成形型内にスチームを導入して発泡粒子を相互に融着させることにより、成形体を得ることができる。
【実施例】
【0081】
以下に発泡粒子、成形体を製造する実施例について詳細に示す。
【0082】
(実施例1)
(1)種粒子の作製
エチレン系樹脂として、メタロセン重合触媒を用いて重合してなる直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(具体的には、東ソー社製「ニポロンZ HF210K」)を準備した。このエチレン系樹脂の融点Tmは、103℃である。このエチレン系樹脂20kgと、ホウ酸亜鉛(具体的には、富田製薬(株)製のホウ酸亜鉛2335)0.144kgとをヘンシェルミキサー(具体的には、三井三池化工機(株)製の型式FM−75E)に投入し、5分間混合し、樹脂混合物を得た。
【0083】
次いで、26mmφの2軸押出機(具体的には、東芝機械(株)製の型式TEM−26SS)を用いて、樹脂混合物を温度230〜250℃で溶融混練した。溶融混練物を押出し、水中カット方式により平均0.5mg/個に切断することにより、種粒子を得た。
【0084】
(2)複合樹脂粒子の作製
撹拌装置の付いた内容積3Lのオートクレーブに、脱イオン水1000gを入れ、更にピロリン酸ナトリウム6.0gを加えた。その後、粉末状の硝酸マグネシウム・6水和物12.9gを加え、室温で30分間撹拌した。これにより、懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムスラリーを作製した。次に、この懸濁剤を含む水性媒体中に界面活性剤としてのラウリルスルホン酸ナトリウム(具体的には、10質量%水溶液)2.0g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.21g、及び種粒子75gを投入した。
【0085】
次いで、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(具体的には、日油社製「パーブチルE」)及びt−ヘキシルパーオキシベンゾエート(具体的には、日油社製「パーヘキシルZ」)を準備した。また、連鎖移動剤として、αメチルスチレンダイマー(具体的には、日油社製「ノフマーMSD」)を準備した。そして、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート1.72gと、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート0.86gと、αメチルスチレンダイマー0.63gとを、第1モノマー(すなわち、スチレン系単量体)に溶解させた。そして、溶解物を回転速度500rpmで撹拌しながらオートクレーブ内の水性媒体中に投入した。なお、第1モノマーとしては、スチレン60gとアクリル酸ブチル15gとの混合モノマーを用いた。
【0086】
次いで、オートクレーブ内の空気を窒素にて置換した後、昇温を開始し、1時間30分かけてオートクレーブ内を温度100℃まで昇温させた。昇温後、この温度100℃で1時間保持した。その後、撹拌速度を450rpmに下げ、温度100℃で7.5時間保持した。このときの温度(具体的には100℃)が重合温度である。尚、温度100℃に到達してから1時間経過時に、第2モノマー(具体的にはスチレン系単量体)としてのスチレン346.25gと、メタクリル酸(すなわち、MAA)3.75gとを5時間かけてオートクレーブ内に添加した。なお、MAAは、予め第2モノマーとしてのスチレンに溶解させた状態で添加した。
【0087】
次いで、オートクレーブ内を温度125℃まで2時間かけて昇温させ、そのまま温度125℃で5時間保持した。その後、オートクレーブ内を冷却させ、内容物(具体的には、複合樹脂粒子)を取り出した。次いで、硝酸を添加して複合樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを溶解させた。その後、遠心分離機により脱水及び洗浄を行い、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去することにより、複合樹脂粒子を得た。なお、製造時に用いたスチレン系単量体とエチレン系樹脂との配合比(質量比)から、複合樹脂中のエチレン系樹脂に由来する成分とスチレン系単量体に由来する成分との質量比を求めた。
【0088】
上記のようにして得られた複合樹脂粒子について、スチレン系単量体の配合量、MAAの量、MAAの添加時期、添加時間、エチレン系樹脂成分(すなわち、PE)とスチレン系樹脂成分(すなわち、PS)との質量比を後述の表1に示す。なお、MAAの量は、エチレン系樹脂とスチレン系単量体とMAAとの合計100質量部に対する量である。また、複合樹脂粒子について、以下のようにして複合樹脂中のキシレン可溶分をさらにアセトンに溶解させて得られるアセトン可溶分のガラス転移温度Tg(以下、適宜「アセトン可溶分のTg」という)を測定し、さらに発泡性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
「アセトン可溶分のTg」
まず、150メッシュの金網袋中に複合樹脂粒子1.0gを入れる。次に、容積200mlの丸型フラスコにキシレン約200mlを入れ、ソックスレー抽出管に上記金網袋に入れたサンプル(すなわち複合樹脂粒子)をセットする。マントルヒーターで8時間加熱し、ソックスレー抽出を行う。抽出したキシレン溶液をアセトン600mlへ投下し、デカンテーションし、上澄み液を減圧蒸発乾固し、アセトン可溶分を分離する。得られたアセトン可溶分2〜4mgについて、ティ・エイ・インスツルメント社製のDSC測定器Q1000を用い、JIS K7121(1987年)に準拠して熱流束示差走査熱量測定を行う。そして、加熱速度10℃/分の条件で得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度としてアセトン可溶分のTgを求めることができる。
【0090】
「発泡性の評価」
複合樹脂粒子1kgを水3.5リットルと共に攪拌機を備えた5Lの耐圧容器内に仕込み、更に、水に分散剤としてのカオリン5g、及び界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを添加した。次いで、耐圧容器内を撹拌速度300rpmで攪拌しながら、耐圧容器内を発泡温度165℃まで昇温させた後、耐圧容器内に無機系物理発泡剤としての二酸化炭素を4.0MPa(ただし、ゲージ圧)となるように圧入し、攪拌下で20分間保持した。その後、内容物を大気圧下に放出することにより、複合樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の嵩密度を測定し、以下の基準にて発泡性を評価した。
【0091】
即ち、嵩密度が40kg/m3未満の場合を「優」とし、40kg/m3以上かつ50kg/m3未満の場合を「良」とし、50kg/m3以上の場合を「不良」として評価した。その結果を後述の表1に示す。なお、表1においては、発泡性の評価における嵩密度の値を示すと共に、その評価結果を括弧内に示す。なお、嵩密度(単位:kg/m3)は、次のようにして測定した。まず、1Lのメスシリンダーを用意し、空のメスシリンダー中に発泡粒子を1Lの標線まで充填した。次いで、1Lあたりの発泡粒子の質量(単位:g)を測定した。そして、発泡粒子1Lの質量(単位:g)を単位換算することにより嵩密度(単位:kg/m3)を算出した。
【0092】
(3)発泡粒子の作製
上記のようにして作製した複合樹脂粒子500gを分散媒としての水3500gと共に撹拌機を備えた5Lの圧力容器内に仕込んだ。続いて、容器内の分散媒中に分散剤としてのカオリン5gと、界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gとをさらに添加した。次いで、回転速度300rpmで容器内を撹拌しながら、容器内を発泡温度165℃まで昇温させた。その後、無機系物理発泡剤である二酸化炭酸を容器内の圧力が3.9MPa(ただし、ゲージ圧)になるように容器内に圧入し、同温度(すなわち、165℃)で15分間保持した。これにより複合樹脂粒子中に二酸化炭素を含浸させて、発泡性複合樹脂粒子を得た。次いで、発泡性複合樹脂粒子を分散媒と共に容器から大気圧下に放出することにより、嵩密度が50kg/m3の発泡粒子を得た。発泡粒子は、複合樹脂粒子の発泡体であるため、複合樹脂発泡粒子とも言える。発泡条件を後述の表1に示す。
【0093】
上記のようにして作製した発泡粒子について、表面のカルボニル量、及び水蒸気吸着量を以下のようにして測定した。その結果を表1に示す。
【0094】
「カルボニル量」
発泡粒子の表面におけるカルボニル量は、発泡粒子の表面におけるスチレン量と、表面におけるスチレン量に対するカルボニル量の乗算によって表される。まず、下記のようにして、スチレン量、及びスチレン量に対するカルボニル量を測定する。
【0095】
(a)スチレン量
スチレン量の測定にあたっては、測定装置として、日本分光社製の赤外分光光度計「FT/IR−460plus」と、同社製の全反射吸収測定装置「ATR PRO 450−S型」を用いた。また、全反射吸収測定装置の測定条件は、プリズム:ZnSe、入射角:45°とした。具体的には、まず、全反射吸収測定装置のプリズムに発泡粒子を170kg/cm2の圧力で押し付けて密着させて発泡粒子の表面の赤外スペクトルを測定し、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)を得た。
【0096】
次に、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる698cm-1付近における吸光度D698、2850cm-1付近における吸光度D2850を測定し、吸光度比D698/D2850を求める。同様の測定を5つの発泡粒子について行い、これらの平均値を発泡粒子の吸光度比D698/D2850とする。その結果を表1に示す。
【0097】
赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる吸光度D698は、スチレン系樹脂に主に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来するピークの高さである。また、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる吸光度D2850は、エチレン系樹脂とスチレン系樹脂の双方に含まれるメチレン基のC−H間伸縮振動に由来するピークの高さである。そして、あらかじめスチレンの検量線を作成し、その検量線から得られる下記の(式1)に、上記赤外吸収スペクトルから求めた発泡粒子の吸光度比D698/D2850を代入することにより発泡粒子表面のスチレン量を求めた。その結果を表1に示す。
(式1) スチレン量=0.7622×(吸光度比D698/D2850)2+7.4831×(吸光度比D698/D2850)+1.1635
【0098】
スチレンの検量線の作成は以下のように行った。即ち、まず、押出機を用いて、ポリエチレン(具体的には、東ソー社製「ニポロンZ HF210K」)とポリスチレン(具体的には、PSジャパン社製「680」)を、100/0、91.8/8.2、78.8/21.2、55.3/44.7、0/100のmol比(ただし、ポリエチレン/ポリスチレン)で溶融混練してペレットを作製した。具体的には、エチレンのモル質量28g/mol、スチレンのモル質量104g/molに基づいて、モル比を質量比に換算した後、ポリエチレン、ポリスチレンを特定の質量比となるようにそれぞれ秤で計量することによって、上記のmol比を有するペレットを作製することができる。次いで、温度180℃で加熱したプレス機によりこのペレットをフィルム状に成形することにより、フィルムを得た。上述の全反射吸収測定装置を用いて、フィルムの赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)を測定した。次に、上述の方法と同様にして赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる吸光度D698と吸光度D2850を測定し、吸光度比D698/D2850を求める。そして、横軸に標準試料中のスチレン量(単位:mol%)をとり、縦軸に吸光度比D698/D2850をとることにより、図1に例示されるような検量線を得ることができる。
【0099】
(b)スチレン量に対するカルボニル量
カルボニル量の測定にあたっては、上述のスチレン量の測定と同様の測定装置を用い、全反射吸収測定装置の測定条件もスチレン量の測定と同様である。具体的には、まず、全反射吸収測定装置のプリズムに発泡粒子を170kg/cm2の圧力で押し付けて密着させて発泡粒子の表面の赤外スペクトルを測定し、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)を得た。次に、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる698cm-1付近における吸光度D698、1730cm-1付近における吸光度D1730を測定し、吸光度比D1730/D698を求める。同様の測定を5つの発泡粒子について行い、これらの平均値を発泡粒子の吸光度比D1730/D698とする。なお、赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)から得られる吸光度D1730は、(メタ)アクリル酸成分単位のカルボキシ基のC=O間の伸縮振動に由来するピークの高さである。そして、あらかじめ検量線を作成し、その検量線から得られる下記の(式2)に上記赤外吸収スペクトルから求めた発泡粒子の吸光度比D1730/D698を代入することによりスチレン量に対するカルボニル量を求めた。その結果を表1に示す。
(式2) スチレン量に対するカルボニル量=6.4838×(吸光度比D1730/D698)−0.0523
【0100】
カルボニル量の検量線の作成は以下のように行った。即ち、スチレンとアクリル酸ブチルを用い、懸濁重合法にてアクリル酸ブチルの量がそれぞれ0mol%、0.8mol%、2.5mol%、4.1mol%の重合粒子を作製した。次に、重合粒子を温度180℃で加熱したプレス機によりフィルム状に成形してフィルムを得た。上述の全反射吸収測定装置を用いてフィルムの赤外吸収スペクトル(ただし、ATR補正なし)を測定した。次に、上述の方法と同様にして赤外吸収スペクトル(ATR補正なし)から得られる吸光度D698と吸光度D1730を測定し、吸光度比D1730/D698を求めた。そして、横軸に標準試料中のカルボニル量(単位:mol%)をとり、縦軸に吸光度比D1730/D698をとることにより、図2に例示されるような検量線を得ることができる。
【0101】
(c)表面カルボニル量
上述の方法で求めた発泡粒子表面のスチレン量を100で割った値にスチレン量に対するカルボニル量を乗算した値を、複合樹脂発泡粒子の表面カルボニル量とした。その結果を表1に示す。
【0102】
「複合樹脂発泡粒子の水蒸気吸着量」
水蒸気吸着量の測定は、蒸気吸着量測定装置(BELSORP−max(日本ベル株式会社製))を使用し、25℃にて吸着等温線(設定相対圧:0.005〜0.9)を測定し、最大相対圧0.9における水蒸気吸着量を本発明における複合樹脂発泡粒子の水蒸気吸着量として求めた。具体的には、まず予め複合樹脂粒子を約0.2g計量した。次に、計量した複合樹脂粒子をサンプルセル内に入れ、BELSORP−max(日本ベル株式会社製)を用いて、25℃における水蒸気の吸着等温線(設定相対圧:0.005〜0.9)を測定し、最大相対圧0.9における水蒸気吸着量を複合樹脂発泡粒子の水蒸気吸着量として求めた。その結果を表1に示す。
【0103】
(4)帯電防止剤の塗布工程
帯電防止剤として、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート(具体的には、第一工業製薬(株)製の「カチオーゲンES−O」;有効成分50%)を準備した。発泡粒子を帯電防止剤と共にポリ袋に入れ、良く振り混ぜた後、袋ごとタンブラーに入れて30分間混合することにより、発泡粒子に帯電防止剤を塗布した。帯電防止剤の添加量は、発泡粒子100質量部に対して2質量部とした。有効成分量としては、発泡粒子100質量部に対して1質量部である。その後、発泡粒子を温度40℃のオーブン内で12時間乾燥した。このようにして、表面に帯電防止剤が付着した発泡粒子を得た。この発泡粒子について、帯電防止剤の付着量を次のようにして測定した。
【0104】
「帯電防止剤の付着量」
帯電防止剤が付着した発泡粒子約5g及び帯電防止剤が付着していない発泡粒子約5gをそれぞれ秤量した。帯電防止剤が付着していない発泡粒子の重量をW0(W0≒5)とする。秤量後の各発泡粒子を洗浄液(具体的にはエタノール)100cm3(ml)で3回洗浄した。洗浄後の洗浄液約300cmを回収し、温度40℃で24時間保持することにより洗浄液を蒸発させた。そして、帯電防止剤が付着した発泡粒子の洗浄液の蒸発後の残渣物重量WAと、帯電防止剤が付着していない発泡粒子の洗浄液の蒸発後の残渣物重量Wとを測定した。これらの残渣物重量WA、WB、及び発泡粒子の重量W0に基づいて、下記の(式3)から、発泡粒子100質量部に対する帯電防止剤の付着量A(質量部)を算出した。その結果を表1に示す。
(式3) A=(WA−WB)/W0×100
【0105】
(5)型内成形
次に、帯電防止剤を被覆させた発泡粒子を、縦250mm、横200mm、厚み50mmの平板形状のキャビティを有する金型内に充填した。次いで、金型内に水蒸気を導入することにより、発泡粒子を加熱して相互に融着させた。その後、水冷により金型内を冷却した後、金型より成形体を取り出した。さらに成形体を温度60℃に調整されたオーブン内で12時間載置することにより、成形体の乾燥及び養生を行った。このようにして、多数の発泡粒子が相互に融着してなる成形体を得た。
【0106】
上記のようにして作製した成形体について、見掛け密度、融着率、表面抵抗率、曲げ弾性率、破断エネルギー、圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。測定方法は次の通りである。
【0107】
「見掛け密度」
見掛け密度を、成形体の質量をその体積で除することにより算出した。
【0108】
「融着率」
成形体を折り曲げ、略等分に破断させた。破断面を観察し、内部で破断した発泡粒子数と界面で剥離した発泡粒子数をそれぞれ計測した。次いで、内部で破断した発泡粒子と界面で剥離した発泡粒子の合計数に対する内部で破断した発泡粒子の割合を算出し、これを百分率で表した値を融着率(%)とした。
【0109】
「表面抵抗率」
成形体の表面抵抗率を測定することにより、成形体の帯電防止性能の評価を行った。表面抵抗率は、JIS K 6271−1−2015年に準拠した方法により測定した。測定にあたっては、まず、温度23℃、50%RH条件下で1日養生した成形体の中央付近から、縦100mm×横100mm×厚み25mmの直方体状の試験片を切り出した。このとき、直方体に存在する縦100mm×横100mmの2つの面の内の一方が発泡粒子成形体表面(すなわち、スキン面)となるように試験片を切り出した。そして、三菱化学社製の「ハイレスタMCP−HT450」を用いて、試験片のスキン面における表面抵抗率を測定した。プローブとしては、三菱化学社製の「UR100」を使用し、23℃、50%RH、印加電圧500Vを30秒間保持するという条件で測定を行った。測定は、同一試験片上の任意の4箇所について行い、その最大値、最小値、及び算術平均値を求めた。なお、スキン面とは、型内成形によって得られた発泡粒子成形体の表面である。
【0110】
「曲げ弾性率」
曲げ弾性率は、JIS K7221−1(2006年)に記載の3点曲げ試験方法に準拠して測定した。具体的には、まず、厚み20mm×幅25mm×長さ120mmの5つの試験片を成形体の任意の箇所から全面が切削面となるように切り出した。室温23℃、湿度50%の恒室内で試験片を24時間以上放置した後、支点間距離100mm、圧子の半径R15.0mm、支持台の半径R15.0mm、試験速度20mm/min、室温23℃、湿度50%の条件で、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−10kNG試験機により曲げ弾性率を測定した。5つの試験片の測定値の算術平均値を曲げ弾性率の測定結果として採用した。
【0111】
「曲げ破断エネルギー」
上述の曲げ弾性率の測定と同様に3点曲げ試験を行い、歪(単位:m/m)と応力(単位:MPa)との関係から破断点までのエネルギー(単位:MJ/m3)を5つの試験片の測定値の算術平均値から求めた。なお、曲げ破断エネルギーは、破断点までの歪−応力曲線と、横軸(すなわち、歪)とによって囲まれる面積から算出される。
【0112】
「圧縮強度」
発泡粒子成形体の中央部分から縦50mm、横50mm、厚み25mmの直方体状の試験片を切出した。次に、この試験片に対してJIS K6767−1999年に準拠して50%ひずみ時の圧縮荷重を求めた。この圧縮荷重を試験片の受圧面積で除することより、圧縮強度(すなわち、50%圧縮応力)を算出した。
【0113】
(実施例2)
実施例2〜4は、MAAの配合を変更した例である。具体的には、本例においては、第2モノマーとしてのスチレン345gと、MAA5gとを用いた点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0114】
(実施例3)
本例においては、第2モノマーとしてのスチレン347.5gと、MAA2.5gとを用いた点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0115】
(実施例4)
本例においては、第2モノマーとしてのスチレン348.75gと、MAA1.25gとを用いた点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0116】
(実施例5)
実施例5及び6は、MAAの配合を変更し、さらにMAAを添加するタイミング及び添加にかける時間を変更した例である。具体的には、本例においては、水溶性重合禁止剤として使用する亜硝酸ナトリウム量を0.21gから0.15gに変更し、オートクレーブの温度が100℃に到達してから1時間経過時に第2モノマーのスチレン348.75gを4時間50分かけてオートクレーブ内に添加し、スチレンの添加後にMAA1.25gを10分かけてオートクレーブ内に添加した点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0117】
(実施例6)
本例においては、水溶性重合禁止剤として使用する亜硝酸ナトリウム量を0.21gから0.15gに変更し、オートクレーブの温度が100℃に到達してから1時間経過時に第2モノマーのスチレン347.5gを4時間50分かけてオートクレーブ内に添加し、スチレンの添加後にMAA2.5gを10分かけてオートクレーブ内に添加した点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0118】
(実施例7)
実施例7及び8は、複合樹脂中のエチレン系樹脂とスチレン系樹脂との質量比を変更した例である。具体的には、本例においては、オートクレーブ内に添加する種粒子の量を150gに変更し、第1モノマーとして、スチレン135gとアクリル酸ブチル15gとの混合モノマーを用い、第2モノマーとしてスチレン196.25gを用いた点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0119】
(実施例8)
本例においては、オートクレーブ内に添加する種粒子の量を50gに変更し、第1モノマーとして、スチレン35gとアクリル酸ブチル15gとの混合モノマーを用い、第2モノマーとしてスチレン396.25gを用いた点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0120】
(実施例9)
本例は、MAAをアクリル酸(すなわち、AA)に変更した例である。具体的には、本例においては、MAAの代わりにAAを用いた点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0121】
(比較例1)
本例は、メタクリル酸及びアクリル酸を用いずに作製した発泡粒子、及び成形体の例である。具体的には、本例においては、メタクリ酸を添加せずに、第2モノマーとしてスチレン350gを用いた点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0122】
(比較例2)
本例は、メタクリル酸の添加量を過少にした例である。具体的には、本例においては、第2モノマーとしてのスチレン349.55gと、MAA0.45gとを用いた点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0123】
(比較例3)
比較例3は、メタクリル酸を過剰に添加した例である。具体的には、本例においては、第2モノマーとしてのスチレン337.55gと、MAA12.5gとを用いた点を除いては、実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0124】
(比較例4)
本例は、エチレン系樹脂に対するスチレン系単量体の添加量を過少にし、さらに第1モノマーと共にメタクリル酸を添加した例である。具体的には、本例においては、オートクレーブ内に添加する種粒子の量を260gに変更した。また、第1モノマーとして、スチレン221.25gとアクリル酸ブチル15gとの混合モノマーを用い、この第1モノマーと共にメタクリル酸3.75gをオートクレーブ内に添加した。その他は実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0125】
(比較例5)
本例は、エチレン系樹脂に対するスチレン系単量体の添加量を過剰にした例である。具体的には、本例においては、オートクレーブ内に添加する種粒子の量を24gに変更した。また、第1モノマーとして、スチレン9gとアクリル酸ブチル15gとの混合モノマーを用いた。また、第2モノマーとして、スチレン448.25gを用いた。その他は実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0126】
(比較例6)
本例は、第2モノマーにメタクリル酸(すなわち、MAA)を、メタクリル酸メチル(すなわち、MMA)に変更した例である。具体的には、本例においては、第2モノマー(具体的にはスチレン系単量体)としてのスチレン346.25gと、メタクリル酸メチル3.75gとを5時間かけてオートクレーブ内に添加した。なお、MMAは、予め第2モノマーとしてのスチレンに溶解させた状態で添加した。その他は実施例1と同様にして発泡粒子、成形体を作製した。
【0127】
実施例2〜9及び比較例1〜6についても、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1及び表2に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
表1より知られるように、実施例の発泡粒子を用いて得られる帯電防止剤が付着した成形体は、表面抵抗率1×1012Ω未満という優れた帯電防止性能を示した。また、帯電防止剤が付着した発泡粒子は、上述の優れた帯電防止性能を発揮しつつも、融着性にも優れる。したがって、内部融着が良好で、圧縮剛性及びたわみ耐性に優れ、変形による破壊を防止できる成形体の製造が可能になる。したがって、実施例の発泡粒子を用いて得られる成形体は、自動車部材、液晶パネル、太陽光発電パネル等のような電子機器、精密機器の梱包容器等に好適である。
【0131】
これに対し、表2より知られるように、複合樹脂発泡粒子の表面カルボニル量が少ない比較例1及び2においては、十分な帯電防止性能が得られなかった。また、(メタ)アクリル酸の添加量を増やした比較例3においては、アセトン可溶分のガラス転移温度が高く、発泡性や融着性が不十分になっていた。スチレン系単量体の添加量が少ない比較例4においては、成形体の剛性が低下するため、圧縮強度が小さく、曲げ弾性率が低い。そのため、比較例4の成形体は、撓みにより変形しやすく、たわみ耐性が不十分である。一方、スチレン系単量体の添加量の多い比較例5においては、成形体の圧縮強度や曲げ弾性率は高くなるが、曲げ破断エネルギーが不十分である。そのため、比較例5の成形体は、変形による破壊が起こりやすくなる。また、比較例6においては、十分な耐電防止性能が得られなかった。
【0132】
以上のように、実施例について説明したが、本発明は、上記の各実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
図1
図2