特開2017-203445(P2017-203445A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-203445(P2017-203445A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20171020BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20171020BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20171020BHJP
【FI】
   F02D45/00 366E
   F02D45/00 301E
   F02D23/00 Z
   F02B37/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-97025(P2016-97025)
(22)【出願日】2016年5月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 克則
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】戸田 仁司
【テーマコード(参考)】
3G005
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G005FA06
3G005JA24
3G005JA39
3G005JA45
3G005JB02
3G005JB05
3G005JB17
3G092AA18
3G092BA01
3G092DB03
3G092FA06
3G092HA01X
3G092HA16Z
3G092HE01Z
3G092HF08Z
3G092HF21Z
3G092HG08Z
3G384BA04
3G384DA04
3G384FA01Z
3G384FA06Z
3G384FA11Z
3G384FA56Z
3G384FA79Z
3G384FA85Z
(57)【要約】
【課題】過給機付きエンジンの制御装置において、簡素な構成で吸気量の算出精度を向上させる
【解決手段】過給機13の圧縮機15よりも上流側に流量計21を有し、下流側に圧力計23を有する吸気系を具備するエンジン10の制御装置30において、第一算出部2と第二算出部3とを設ける。第一算出部2は、流量計21の計測値に基づき、エンジン10の第一吸気量Ec1を算出する。第二算出部3は、圧力計23の計測値に基づき、第二吸気量Ec2を算出する。また、第一算出部2は、吸気の体積流量QTGTが圧縮機15のサージ下限流量QMIN以下であることを実施条件の一つとして、第二吸気量Ec2を考慮した第一吸気量Ec1の補正を実施する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給用の圧縮機よりも上流側に流量計を有し、下流側に圧力計を有する吸気系を具備するエンジンの制御装置において、
前記流量計の計測値に基づき、前記エンジンの第一吸気量を算出する第一算出部と、
前記圧力計の計測値に基づき、前記エンジンの第二吸気量を算出する第二算出部と、を備え、
前記第一算出部は、吸気の体積流量が前記圧縮機の運転が可能な下限流量以下であることを実施条件の一つとして、前記第二吸気量を考慮した前記第一吸気量の補正を実施する
ことを特徴とする、エンジン制御装置。
【請求項2】
前記実施条件には、前記圧縮機の上流に対する下流の圧力比が所定値以上であることが含まれる
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記第一算出部は、前記実施条件が不成立になってから所定時間が経過するまでは、前記第二吸気量を考慮した前記第一吸気量の補正を継続する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記第二算出部は、前記第二吸気量に応じて前記第一吸気量の許容範囲を設定する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記体積流量が、アクセル開度に応じて設定される目標体積流量である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機付きエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるエンジンの制御装置において、吸気系に設けられた流量計(エアフローセンサ)の計測値に基づいて吸気量を算出する手法が知られている。流量計の計測値は、流量計近傍を実際に通過した空気量に対応しており、数行程後にシリンダへ導入される吸気量に相当することから、エンジンの運転状態を制御するためのパラメータとして使用されうる。また、計測値の変動状態を監視することで、流量計自体の故障や出力異常を検出する技術も開発されている。例えば、流量計の計測値から算出された吸気量をインマニ圧力(インテークマニホールド内の圧力)やインマニ吸気温度(過給後吸気温度)で補正し、その急変をセンサ異常と判断する技術が知られている。インマニ圧力やインマニ吸気温度を加味した吸気量を算出することで、流量計の異常検出精度が向上しうる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-048133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、過給機付きエンジンの吸気系では、過給の影響を受けて吸気の流れに乱れが発生し、適切な計測値を検出できないことがある。例えば、過給機の動作停止直後にコンプレッサの上流側で吸気流れの詰まりや逆流が発生し、流量計の計測値が一時的に大きく変動することがある。この変動は、長時間にわたって振動を伴いながら継続されうる。一方、このような流量計の出力異常は予測が難しく、吸気量の計測精度を向上させにくい。
【0005】
上記のような課題の解決策として、流量計による計測以外の代替手法を用いて吸気量を算出することも考えられる。例えば、エンジン回転速度とインテークマニホールド圧力とに基づいて吸気量を算出する手法が挙げられる。あるいは、スロットルバルブ部の上下圧力差や圧力比に基づいて流速を推定し、これに基づいて吸気量を算出する手法も考えられる。しかし、圧力の変動には応答遅れ時間が含まれるため、即時性の高い吸気量を精度よく算出することが難しく、空燃比制御の精度を確保できない。
【0006】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、過給機付きエンジンの制御装置において、簡素な構成で吸気量の算出精度を向上させることである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本明細書では、過給用の圧縮機よりも上流側に流量計を有し、下流側に圧力計を有する吸気系を具備するエンジンの制御装置を開示する。本エンジン制御装置には、前記流量計の計測値に基づき、前記エンジンの第一吸気量を算出する第一算出部が設けられる。また、本エンジン制御装置には、前記圧力計の計測値に基づき、前記エンジンの第二吸気量を算出する第二算出部が設けられる。前記第一算出部は、吸気の体積流量が前記圧縮機の運転が可能な下限流量以下であることを実施条件の一つとして、前記第二吸気量を考慮した前記第一吸気量の補正を実施する。
【0008】
前記第二算出部で算出される前記第二吸気量は、前記第一算出部で算出される前記第一吸気量の代わりに使用してもよいし、前記第一算出部で算出される前記第一吸気量を補正する(あるいは、制限する)ために使用してもよい。ここで、前記第一吸気量,前記第二吸気量をまとめて「吸気量」と呼ぶことができる。前記吸気量には、前記エンジンの実吸気量が含まれ、前記エンジンの負荷パラメータとして用いられる充填効率(実充填効率)や体積効率(実体積効率)なども含まれる。
【0009】
(2)前記実施条件には、前記圧縮機の上流に対する下流の圧力比が所定値以上であることが含まれることが好ましい。つまり、過給中であることを条件として、前記第二吸気量を考慮した前記第一吸気量の補正を実施することが好ましい。
(3)前記第一算出部は、前記実施条件が不成立になってから所定時間が経過するまでは、前記第二吸気量を考慮した前記第一吸気量の補正を継続することが好ましい。
【0010】
(4)前記第二算出部は、前記第二吸気量に応じて前記第一吸気量の許容範囲を設定することが好ましい。
(5)前記体積流量が、アクセル開度に応じて設定される目標体積流量であることが好ましい。なお、前記目標体積流量は、前記アクセル開度及び車速に応じて設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
圧縮機の運転が可能な下限流量(サージ下限流量)以下であることを条件として吸気量の取得手法(算出手法,補正の要否)を変更することで、流量計にエラーが発生しやすい状態(脈動や逆流が発生しやすい状態)では圧力ベースの第二吸気量を用いて第一吸気量を補正することができる。一方、流量計にエラーが発生しにくい状態では、運転者の加減速意思が強く反映された流量ベースの第一吸気量を精度よく算出することができる。したがって、総合的な吸気量の算出精度を向上させることができ、エンジンの制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】エンジン制御装置及びエンジンの構成を示す模式図である。
図2】体積流量とコンプレッサの圧力比との関係を例示するグラフである。
図3】質量流量と圧損(圧力低下)との関係を例示するグラフである。
図4】エンジン制御装置による制御手順を例示するフローチャートである。
図5】(A)〜(E)は、過給状態から非過給状態への移行時における充填効率の変化を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としてのエンジン制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.装置構成]
本実施形態のエンジン制御装置30は、図1に示す過給機13(ターボチャージャ)を備えた車両のエンジン10に適用される。過給機13のタービン14は排気通路12上に介装され、コンプレッサ15(圧縮機)は吸気通路11上に介装される。コンプレッサ15の上流側には、吸気の流量を計測するエアフローセンサ21(流量計)が設けられ、最上流側にエアクリーナ16が配置される。コンプレッサ15の下流側には、インタクーラ17,スロットル上流圧センサ22,スロットルバルブ18,インマニ圧センサ23(圧力計)がこの順序で設けられる。スロットル上流圧センサ22はスロットルバルブ18の上流圧(スロットル上流圧)を計測し、インマニ圧センサ23はインマニ圧(インテークマニホールド圧力)を計測する。
【0015】
エンジン制御装置30は、内部バス34を介して互いに接続されたプロセッサ31,メモリ32,インタフェイス装置33を内蔵する電子デバイス(電子制御装置)であり、エンジン10が搭載された車両の車載ネットワーク網に接続される。プロセッサ31は、例えば制御ユニット(制御回路)や演算ユニット(演算回路),キャッシュメモリ(レジスタ)などを内蔵する処理装置(プロセッサ)である。メモリ32は、プログラムや作業中のデータが格納されるメモリ装置であり、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory),不揮発メモリなどを含む。エンジン制御装置30で実施される制御の内容は、ファームウェアやアプリケーションプログラムとしてメモリ32に記録,保存され、プログラムの実行時にはプログラムの内容がメモリ空間内に展開されて、プロセッサ31によって実行される。
【0016】
本実施形態のエンジン制御装置30は、エアフローセンサ21,スロットル上流圧センサ22,インマニ圧センサ23,エンジン回転速度センサ24,大気圧センサ25,アクセル開度センサ26,車速センサ27に接続される。エンジン制御装置30は、各種センサ21〜27から入力される情報に基づいて吸気量を算出するとともに、その吸気量に基づいてエンジン10の運転状態を制御する機能を持つ。ここでいう「吸気量」にはエンジン10の実吸気量,充填効率(実充填効率),体積効率(実体積効率)などが含まれる。本実施形態では、流量から推定される第一充填効率Ec1と、圧力(スロットル上流圧やインマニ圧)から推定される第二充填効率Ec2とが算出され、これらに基づいてエンジン10の負荷パラメータとして用いられる最終的な充填効率の値が算出される。
【0017】
充填効率を算出するためのプログラム1は、例えばメモリ32に記録,保存される。あるいは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録,保存され、インタフェイス装置33に接続された読み取り装置を介して、エンジン制御装置30に読み込まれて実行される。プログラム1には、第一算出部2,第二算出部3,制御部4が設けられる。これらの要素は、エンジン制御装置30で実行されるプログラムの一部の機能を示すものであり、ソフトウェアで実現されるものとする。ただし、各機能の一部又は全部をハードウェア(電子回路)で実現してもよく、あるいは、ソフトウェアとハードウェアとを併用して実現してもよい。
【0018】
[2.制御構成]
第一算出部2は、エアフローセンサ21の計測値に基づき、第一充填効率Ec1を算出する。第一充填効率Ec1は、流量ベースの吸気量(第一吸気量)に対応するパラメータである。充填効率とは、標準大気条件での行程容積に相当する空気質量に対する、気筒内に充填される吸入空気質量の比率であり、単位燃焼サイクル(単位時間)毎に気筒内へ導入される空気量(吸気量)に対応するパラメータである。エアフローセンサ21の測定値が質量流量であれば、エンジン回転速度に応じた時間を質量流量に乗じて吸入空気質量が算出される。また、エアフローセンサ21の測定値が体積流量であれば、吸入空気の密度を考慮して吸入空気質量が算出される。
【0019】
第二算出部3は、インマニ圧センサ23の計測値(インマニ圧)に基づいて第二充填効率Ec2を算出する。第二充填効率Ec2は、圧力ベースの吸気量(第二吸気量)に対応するパラメータである。また、第二算出部3は、第一充填効率Ec1を補正(制限)するための許容範囲を第二充填効率Ec2に基づいて設定する。ここで、第二算出部3が設定した許容範囲で第一充填効率Ec1を補正(制限)する制御のことを「制限制御」と呼び、制限制御の実施条件のことを「制限制御条件」と呼ぶ。
【0020】
本実施形態の制限制御は、以下の条件1,2がともに成立したときに開始される。ただし、条件1,2は論理積条件ではなく、いずれか一方が成立したときに制限制御を開始してもよい。このとき、第一算出部2が第二充填効率Ec2に基づく第一充填効率Ec1の補正(制限)を実施する。また、本実施形態では、条件1,2の少なくともいずれかが不成立になってから、所定時間(ディレイ時間)が経過するまでは制限制御が継続される。
条件1.目標体積流量QTGTがサージ下限流量QMIN以下である
条件2.コンプレッサ圧力比Rが所定値R0以上である
【0021】
本実施形態の第二算出部3は、インマニ圧及びエンジン回転速度を引数としたマップに基づいて、第二充填効率Ec2を算出する。あるいは、インマニ圧とスロットル上流圧との差圧又は圧力比に基づいて、第二充填効率Ec2を算出する。その後、第二充填効率Ec2よりも大きい値を持つ上限クリップ値と、第二充填効率Ec2よりも小さい値を持つ下限クリップ値とを算出する。これらの上限・下限クリップ値で挟まれる範囲は、第一算出部2で算出された第一充填効率Ec1の許容範囲を表すものとして利用される。例えば、第一充填効率Ec1が上限クリップ値よりも大きい場合には、超過分の値が消去されて上限クリップ値と同一の値に補正される。同様に、第一充填効率Ec1が下限クリップ値よりも小さい場合には、下限クリップ値と同一値に補正される。第一充填効率Ec1が許容範囲内にある場合には、補正されない。第一充填効率Ec1の値は、上限・下限クリップ値によって制限される。
【0022】
目標体積流量QTGTとは、これから気筒内に導入させたい吸気の体積流量についての目標値であり、運転者の加減速意思が反映されるパラメータである。目標体積流量QTGTは、少なくともアクセル開度に応じて設定され、好ましくは車速も考慮して設定される。本実施形態では、アクセル開度,車速,エンジン負荷などに応じて目標トルクが設定され、その目標トルクをエンジン10に発生させるのに要する単位時間当たりの吸入空気量が目標体積流量QTGTとして算出される。
【0023】
サージ下限流量QMINとは、その時点のコンプレッサ15の作動状態においてサージングが発生しうる最大の限界流量(体積流量)であって、実質的にコンプレッサ15の運転が可能となる下限流量である。コンプレッサ15の圧力・流量特性を、図2に例示する。サージング領域は、図中に太線で示すサージ限界線よりも左側の領域である。第二算出部3は、このような圧力・流量特性に基づき、現時点のコンプレッサ圧力比Rに対応するサージ下限流量QMINを取得する。また、コンプレッサ圧力比Rとは、コンプレッサ15の上流圧に対する下流圧の比であり、少なくとも大気圧とスロットル上流圧とに基づいて算出される。コンプレッサ15の上流圧は、大気圧からエアクリーナ16の圧損を減算することで算出される。また、コンプレッサ15の下流圧は、スロットル上流圧にインタクーラ17の圧力低下量を加算することで算出される。
【0024】
エアクリーナ16の圧損,インタクーラ17の圧力低下量は、図3に示すような特性から、吸気の質量流量に基づいて算出される。ここで使用される質量流量の値は、例えば直前の演算周期(あるいは数周期前)におけるエアフローセンサ21の検出値に相当するものとされる。第二算出部3は、このような圧損特性に基づき、コンプレッサ15の上流圧,下流圧を算出し、コンプレッサ圧力比Rを取得する。コンプレッサ15の前後に圧力センサが配置されている場合には、それらの計測値からコンプレッサ圧力比Rを算出してもよい。なお、所定値R0は、アイドル運転状態や低負荷走行状態を制限制御条件から除外すべく、あらかじめ設定された固定値である。
【0025】
制御部4は、第一算出部2で算出された第一充填効率Ec1や第二算出部3で算出された第二充填効率Ec2などに基づき、エンジン10の運転状態(例えば、スロットルバルブ18の開度,過給機13の作動状態,燃料噴射量,点火時期など)を制御する。制限制御条件が成立していない状態では、第一充填効率Ec1に基づく制御が実施される。また、制限制御条件が成立している状態では、第二充填効率Ec2を含むように設定された許容範囲を用いて、第一充填効率Ec1を制限する制限制御が実施される。
【0026】
[3.フローチャート]
プログラム1の流れを図4に例示する。各種センサ情報がエンジン制御装置30に読み込まれ(A1)、アクセル開度,車速などから目標体積流量QTGTが算出される(A2)。また、大気圧,スロットル上流圧,エアクリーナ16の圧損,インタクーラ17の圧力低下量に基づき、コンプレッサ圧力比Rが算出され(A3)、第一算出部2においてエアフローセンサ21の計測値に基づき第一充填効率Ec1が算出される(A4)。また、第二算出部3では、インマニ圧センサ23の計測値に基づき第二充填効率Ec2が算出される(A5)。
【0027】
ここで、制限制御条件が成立しない場合(A6,No側)には、第一充填効率Ec1が補正,制限されることはなく、その第一充填効率Ec1に基づいてエンジン10が制御される(A9)。一方、制限制御条件が成立する場合(A6,Yes側)には、第二算出部3において第二充填効率Ec2を挟む二つのクリップ値(許容範囲)が設定され(A7)、第一充填効率Ec1の値を許容範囲内に制限する補正が実施される(A8)。その後、補正された第一充填効率Ec1に基づいてエンジン10が制御される(A9)。
【0028】
[4.作用,効果]
図5(A)〜(D)は、過給域からの減速時におけるアクセル開度,コンプレッサ圧力比R,流量,第一充填効率Ec1の変化を示すグラフであり、図5(E)は制限制御によって補正(制限)された第一充填効率Ec1の変化を示すグラフである。過給機13の動作停止直後には、コンプレッサ15の上流側で吸気流れの詰まりや逆流が発生し、エアフローセンサ21の計測値が振動変化することがある。このような振動変化は、第一充填効率Ec1の値を振動させて、エンジン10の制御性を低下させる一因となる。一方、本エンジン制御装置30では、制限制御条件が成立する時刻t1,t4に第二充填効率Ec2の算出が開始され、第二充填効率Ec2の上下に上限・下限クリップ値〔図5(D)中の破線〕が設定される。これにより、第一充填効率Ec1の変動が制限されて安定化することから、エンジン10の制御性が改善される。
【0029】
また、時刻t2,t5に上記の条件1が不成立になっても、その時点から所定時間が経過した時刻t3,t6までは制限制御が継続される。これは、目標体積流量QTGTがアクセル開度に応じて設定されるものであり、吸気の応答遅れ時間の影響を受けないパラメータだからである。つまり、条件1,2が不成立となってからのディレイ時間を設定することで、制限制御が尚早に終了することが阻止される。
【0030】
(1)上記の制限制御は、少なくとも条件1が成立する場合に実施される。このように、コンプレッサ15のサージ下限流量QMINを条件として充填効率の算出手法を変更することで、サージング領域で発生しうる吸気脈動や吸気逆流の影響を排除することができる。例えば、エアフローセンサ21でエラーが発生しやすい状況では、圧力ベースの吸気量を精度よく算出することができる。一方、エアフローセンサ21にエラーが発生しにくい状況では、流量ベースの吸気量を精度よく算出することができる。したがって、エンジン10の制御性を向上させることができる。
【0031】
(2)上記の制限制御は、条件1に加えて条件2が成立する場合に実施される。これにより、例えばエンジン10の運転状態がアイドル状態や低負荷走行状態になっているにも関わらず制限制御が継続されてしまうことを防止できる。また、コンプレッサ圧力比Rを参照することで、制限制御に適した過給状態からの減速時を精度よく検出することができる。さらに、非過給時には第二充填効率Ec2が考慮されず、エアフローセンサ21の近傍を実際に通過した空気量に対応する第一充填効率Ec1が算出されるため、演算精度の高い吸気量情報を用いてエンジン10を制御することができる。したがって、エンジン10の制御性を向上させることができる。
【0032】
(3)上記の制限制御は、条件1,2が不成立になってから所定時間が経過した後に終了する。このように、条件1,2が不成立となってからのディレイ時間を設けることで、吸気の応答遅れ時間を考慮した制限制御を実施することができる。例えば、制限制御の終了が早すぎることがなくなり、第一充填効率Ec1の算出値の安定性を向上させることができる。したがって、エンジン10の制御安定性を向上させることができる。
【0033】
(4)上記の制限制御は、第一充填効率Ec1を基本パラメータとしてこれを第二充填効率Ec2で補正(制限)する制御となっている。第一充填効率Ec1は、流量実測値に対応するパラメータであって、第二充填効率Ec2よりも高い算出精度が得られる。したがって、最終的に得られる充填効率(補正後の第一充填効率Ec1)の算出精度を向上させることができ、エンジン10の制御性を向上させることができる。
【0034】
(5)条件1では、アクセル開度に応じて設定される目標体積流量QTGTが、サージ下限流量QMINと比較される。目標体積流量QTGTは、これから気筒内に導入させたい吸気の体積流量についての目標値であることから、その値には運転者の加減速意思が反映される。この目標体積流量QTGTを用いて制限制御の実施条件を判定することで、運転者の加減速意思に対する応答性を改善することができ、加速時や減速時のドライブフィーリングを向上させることができる。また、過給域からの減速時にコンプレッサ15の上流側で発生しうる吸気流れの詰まりや逆流に先立って、制限制御を開始させることができる。したがって、エアフローセンサ21の計測値に基づく吸気量(第一充填効率Ec1)の算出精度を向上させることができ、エンジン10の制御性を向上させることができる。
【0035】
[5.変形例]
上記の制限制御における具体的な内容は、変更可能である。例えば、第一充填効率Ec1を補正(制限)する制御構成に代えて、第二充填効率Ec2で代用する制御構成としてもよい。あるいは、第一充填効率Ec1と第二充填効率Ec2とを併用して、最終的な充填効率推定値を算出する制御構成としてもよい。少なくとも、条件1が成立する状況で圧力ベースの吸気量(第二充填効率Ec2)を算出することで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0036】
上述の実施形態では、第二算出部3がインマニ圧に基づいて第二充填効率Ec2を算出しているが、インマニ圧の代わりにスロットル上流圧及びスロットル開度を用いて第二充填効率Ec2を算出してもよい。少なくとも圧力ベースの吸気量に対応するパラメータを第二算出部3で算出することで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0037】
1 プログラム
2 第一算出部
3 第二算出部
4 制御部
15 コンプレッサ(圧縮機)
21 エアフローセンサ(流量計)
23 インマニ圧センサ(圧力計)
図1
図2
図3
図4
図5