【解決手段】シールセグメント11は、回転軸の外周側で該回転軸の周方向Dcに延びるリテーナと、リテーナから径方向Dr内側に延出して、周方向Dcに複数積層された第一薄板シール片20を有する第一シール体13と、第一シール体13とリテーナとに挟まれるように支持されて、第一シール体13の軸方向Da一方側を周方向Dcにわたって覆う高圧側側板23及び低圧側側板と、リテーナ21の周方向Dcの端部に複数積層されて径方向Dr内側に延出するとともに、第一薄板シール片20よりも耐フラッタリング性の高い第二薄板シール片40を有する第二シール体33と、を備え、高圧側側板23及び低圧側側板が、第二シール体33の少なくとも周方向Dc一部を覆っている。
前記第二薄板シール片は複数であって、前記第一薄板シール片に向かって径方向内側に延出する長さが大きくなっている請求項1から5のいずれか一項に記載のシールセグメント。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る各種実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
「第一実施形態」
以下、本発明の第一実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態においては、軸シール装置10をガスタービン(回転機械)1に適用した例を示す。
【0025】
図1に示すガスタービン1は、多量の空気を内部に取り入れて圧縮する圧縮機2と、圧縮機2にて圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させる燃焼器3と、回動するタービン4と、該タービン4の回動する動力の一部を圧縮機2に伝達して圧縮機2を回動させるロータ5(回転軸)とを有している。
タービン4は、燃焼器3で発生させた燃焼ガスがその内部に導入されるとともに燃焼ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換して回動する。
なお、以下の説明においては、特に言及しない限り、ロータ5の軸線Axの延びる方向を単に「軸方向Da」と、ロータ5の周方向を単に「周方向Dc」と、ロータ5の径方向を単に「径方向Dr」、ロータ5の回転方向を単に「回転方向Bc」という。
【0026】
上述のような構成のガスタービン1において、タービン4は、ロータ5に設けられた動翼7に燃焼ガスを吹き付けることで燃焼ガスの熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生する。タービン4には、ロータ5側の複数の動翼7の他に、タービン4のケーシング8側に複数の静翼6が設けられるとともに、これら動翼7と静翼6とが、軸方向Daに交互に配列されている。
動翼7は軸方向Daに流れる燃焼ガスの圧力を受けて軸線回りにロータ5を回転させ、ロータ5に与えられた回転エネルギーは軸端から取り出されて利用される。静翼6とロータ5との間には、高圧側から低圧側に漏れる燃焼ガスの漏れ量を低減するための軸シールとして、軸シール装置10が設けられている。
【0027】
圧縮機2はロータ5にてタービン4と同軸で接続されており、タービン4の回転を利用して外気を圧縮して圧縮空気を燃焼器3に供給する。タービン4と同様に、圧縮機2においてもロータ5に複数の動翼7と、圧縮機2のケーシング9側に複数の静翼6が設けられており、動翼7と静翼6とが軸方向Daに交互に配列されている。さらに、静翼6とロータ5との間においても、高圧側から低圧側に漏れる圧縮空気の漏れ量を低減するための軸シール装置10が設けられている。
【0028】
加えて、圧縮機2のケーシング9がロータ5を支持する軸受け部9a、及びタービン4のケーシング8がロータ5を支持する軸受け部8aにおいても、高圧側から低圧側に圧縮空気又は燃焼ガスが漏れるのを防止する軸シール装置10が設けられている。
【0029】
ここで、本実施形態に係る軸シール装置10は、ガスタービン1への適用に限定されるものではない。例えば蒸気タービン、圧縮機、水車、冷凍機、ポンプ等の大型流体機械のように、軸の回転と流体の流動によりエネルギーを仕事に変換する回転機械全般に広く採用することができる。この場合、軸シール装置10は、軸方向Daの流体の流動を抑えるために広く用いることも可能である。
【0030】
次に、上述のように構成されるガスタービン1に設けられる軸シール装置10の構成について、図面を参照して説明する。
図2は、軸方向Daから見た図である。
図2に示すように、この軸シール装置10は、円弧状に延びる複数(本実施形態では8つ)のシールセグメント11を備えている。複数のシールセグメント11、周方向Dcに沿って環状に配置されている。このように配置された隣り合うシールセグメント11の周方向端部12,12間には、隙間tが形成される。
【0031】
各シールセグメント11の構成について、
図3を参照して説明する。
図3における軸シール装置10の断面の切断位置は、
図2の軸シール装置10に示したIII−III線の位置に対応する。
各シールセグメント11は、ハウジング(静翼6、動翼7及び軸受け部8a,9aに相当)30に挿入されて、ロータ5とハウジング30との間の環状空間における作動流体の漏れを防ぐために設置される。
【0032】
シールセグメント11は、第一シール体13と、リテーナ21,22と、高圧側側板23と、低圧側側板24とを備える。
第一シール体13は、周方向Dcに沿って互いに微小間隔を空けて多重に配列された、金属製の部材である複数の第一薄板シール片20を備える。当該複数の第一薄板シール片20は、ロータ5の周方向Dcの一部領域において、周方向Dc(回転方向Bc)に沿って積層されており、軸方向Daからみて全体として円弧帯状をなしている。
リテーナ21,22は、第一薄板シール片20の外周側基端27において第一薄板シール片20を両側から挟持するように構成されている。リテーナ21,22の周方向Dcおける断面は略C字型に形成されている。また、リテーナ21,22の軸方向Daおける断面は円弧帯形状に形成されている。
高圧側側板23は、第一薄板シール片20の高圧側領域に対向する一方の縁端とリテーナ21とによって挟持されている。よって、高圧側側板23は、複数の第一薄板シール片20の高圧側側面を、軸方向Daの高圧側から覆うように径方向Dr及び周方向Dcに延びている。
低圧側側板24は、第一薄板シール片20の低圧側領域に対向する他方の縁端とリテーナ22とによって挟持されている。よって、低圧側側板24は、複数の第一薄板シール片20の低圧側側面を、軸方向Daの低圧側から覆うように径方向Dr及び周方向Dcに延びている。
【0033】
上述のように構成された第一シール体13において、第一薄板シール片20は外周側基端27の幅(軸方向Daの幅)に比べて内周側の幅(軸方向Daの幅)が小さくなる略T字型の薄い鋼板によって構成されている。その両方の側縁には、その幅が小さくなる位置において切り欠き部20a,20bが形成されている。
隣接する複数の第一薄板シール片20は、外周側基端27において、例えば溶接によって互いに固定連結されている。
【0034】
第一薄板シール片20は、周方向Dcにおいて、板厚に基づく所定の剛性を有している。さらに、第一薄板シール片20と回転方向Bcに対してロータ5の周面となす角が鋭角となるようにリテーナ21,22に固定されている。
したがって、第一薄板シール片20は、径方向Dr内側に向かうにしたがって、回転方向Bc前方側に延出している。
【0035】
このように構成されたシールセグメント11においては、ロータ5が静止している際には各第一薄板シール片20の先端がロータ5と接触している。そして、ロータ5が回転すると該ロータ5の回転によって生じる動圧効果により、第一薄板シール片20の先端がロータ5の外周から浮上してロータ5と非接触状態となる。このため、このシールセグメント11では、各第一薄板シール片20の磨耗が抑制され、シール寿命が長くなる。
【0036】
高圧側側板23及び低圧側側板24には、軸方向Daの幅において、その外周側が広くなるように嵌込段差部23a,24aが設けられており、この嵌込段差部23a,24aは、それぞれが第一薄板シール片20の切り欠き部20a,20bに嵌め込まれている。
【0037】
さらに、リテーナ21は、複数の第一薄板シール片20の外周側基端27における一方の側縁(高圧側)に対面する面に、凹溝21aを有している。リテーナ22は、複数の第一薄板シール片20の外周側基端27における他方の側縁(低圧側)に対面する面に、凹溝22aを有している。切り欠き部20a,20bに高圧側側板23及び低圧側側板24のそれぞれの嵌込段差部23a,24aが嵌め込まれた複数の第一薄板シール片20に対し、その外周側における一方の側縁(高圧側)にリテーナ21の凹溝21aが嵌め込まれている。さらに、その外周側における他方の側縁(低圧側)がリテーナ22の凹溝22aに嵌め込まれている。このような構成により、各第一薄板シール片20がリテーナ21,22に固定される。
【0038】
ハウジング30の内周壁面には、環状の凹溝31が形成されている。環状の凹溝31は、ロータ5の軸方向において外周側の幅が内周側の幅よりも広くなるように、第一薄板シール片20の一方の側縁(高圧側)及び他方の側縁(低圧側)に対向する側面に段差が設けられた形状とされている。そして、この段差における外周側を向く面にリテーナ21,22の内周側を向く面が当接するようにして、ハウジング30の凹溝31内に、第一薄板シール片20、リテーナ21,22、高圧側側板23及び低圧側側板24が嵌め込まれている。第一薄板シール片20の内周側端部26が高圧側側板23よりもロータ5側に突出している。一方で、第一薄板シール片20の内周側端部26は低圧側側板24よりもロータ5側に突出しているが、その突出量は高圧側よりも大きく設定されている。すなわち、第一薄板シール片20は高圧側よりも低圧側において作動流体Gに対してより大きく露出している。言い換えると、高圧側側板23は第一薄板シール片20の側面におけるより広い範囲を作動流体Gから遮蔽している。
【0039】
高圧側側板23は、作動流体Gの流れによる圧力によって、第一薄板シール片20の側面20cに密着することで、作動流体Gが複数の第一薄板シール片20間の隙間に大きく流れ込むことを防ぐ。よって、高圧側側板23は、複数の第一薄板シール片20間の隙間部分において、内周側端部26から外周側基端27へ向かう上向き流れを作り出し、流体力で第一薄板シール片20の内周側端部26を浮上させ、非接触化させている。
また、低圧側側板24は、高圧側側板23と第一薄板シール片20により押されてハウジング30の内周壁面の低圧側壁面32に密着する。低圧側側板24は、高圧側側板23よりも内径が大きくなっており、複数の第一薄板シール片20間の隙間の流れを浮上しやすい流況にしている。
【0040】
図4に示すように、本実施形態のシールセグメント11は、第一シール体13の周方向Dc両端側にさらに第二シール体33を備える。
第二シール体33及びその周辺の構造について、
図4〜
図8を参照して説明する。
【0041】
第二シール体33は、複数の第二薄板シール片40を有する。
複数の第二薄板シール片40は、複数の第一薄板シール片20の周方向Dcの隣に配置される複数の第二主薄板シール片60と、さらに周方向Dcの隣に配置される複数の第二副薄板シール片80とを備える。
リテーナ21,22の周方向Dcの端部に、複数の第二主薄板シール片60、続いて複数の第二副薄板シール片80が周方向Dcに積層されている。
積層された各第二主薄板シール片60及び各第二副薄板シール片80は、径方向Dr内側に延出している。
第二主薄板シール片60は、周方向Dcに沿って互いに微小間隔を空けて多重に配列された、金属製の部材である複数の第二主薄板シール片60を備える。
第二副薄板シール片80は、周方向Dcに沿って互いに微小間隔を空けて多重に配列された、金属製の部材である複数の第二副薄板シール片80を備える。
【0042】
図4に示すように、高圧側側板23は、複数の第一薄板シール片20の高圧側側面を覆うと共に、複数の第二主薄板シール片60の高圧側側面を、軸方向Daの高圧側から覆うように周方向Dcにさらに延びている。
同様に、
図4に示されない低圧側側板24も、上記のとおり複数の第一薄板シール片20の低圧側側面を覆うと共に、第二主薄板シール片60の低圧側側面を、軸方向Daの低圧側から覆うように周方向Dcにさらに延びている。
したがって、高圧側側板23及び前記低圧側側板24は、第一シール体13の軸線方向側面を周方向Dcにわたって覆うと共に、第二シール体33の軸線方向側面の少なくとも周方向Dc一部を覆っている。
【0043】
よって、第二主薄板シール片60は、高圧側側板23と低圧側側板24との間に嵌め込まれる構造となっており、第一薄板シール片20と同様に、軸方向Daに対向する高圧側側板23と低圧側側板24との間に配置されている。
【0044】
高圧側側板23は、周方向Dcの縁部であって、外径側縁部23bから径方向Dr内側に向かうに従って回転方向Bc前方側に延びて内径側縁部23cに接続される周方向縁部23dを有している。
本実施形態において、高圧側側板23は、周方向Dcについて、第二主薄板シール片60の高圧側側面と第二副薄板シール片80の高圧側側面との境界まで延びており、周方向縁部23dは、当該境界に位置している。
【0045】
低圧側側板24も、高圧側側板23と同様に、周方向Dcの縁部であって、外径側縁部から径方向Dr内側に向かうに従って回転方向Bc前方側に延びて内径側縁部に接続される前側縁部を有している。また、高圧側側板23と同様に、低圧側側板24は、周方向Dcについて、第二主薄板シール片60の低圧側側面と第二副薄板シール片80の低圧側側面との境界まで延びており、前側縁部は、当該境界に位置している。
【0046】
よって、第二副薄板シール片80は、高圧側側板23と低圧側側板24との間に嵌め込まれず、軸方向Da側面からみて、高圧側側板23及び低圧側側板24から周方向Dcに露出している。
複数の第二副薄板シール片80は、各シールセグメント11間の分割部の隙間に合わせて枚数調整され、各シールセグメント11間の分割部の隙間を遮蔽している。
複数の第二副薄板シール片80は、高圧側側板23及び低圧側側板24から周方向Dcに露出していることで第二副薄板シール片80の一部を順に剥がすことができるため、各シールセグメント11間の分割部の隙間に応じて、必要な薄板シール片の枚数調整がしやすい構造となっている。
【0047】
第一薄板シール片20の板厚Ptaは、周方向Dcに並べられた複数の第一薄板シール片20全体にわたって、一定の大きさとなっている。
他方、
図4に示すように、各第二主薄板シール片60の板厚Ptbは、複数の第二主薄板シール片60全体にわたって一定の大きさとなっており、第一薄板シール片20の板厚Ptaに比べて大きくなっている。各第二副薄板シール片80の板厚Ptcも、複数の第二副薄板シール片80全体にわたって一定の大きさとなっており、第一薄板シール片20の板厚Ptaに比べて大きくなっている。本実施形態では、板厚Ptbと板厚Ptcとを同じにしているが、異なっていてもよい。
【0048】
図5〜
図7に示すように、本実施形態の場合、周方向Dc断面における、第一薄板シール片20、リテーナ21及びリテーナ22の組み合わせの輪郭の概形状と、第二主薄板シール片60の輪郭の概形状と、第二副薄板シール片80の輪郭の形状とは、いずれも寸法及び形状が同じである。
他方、周方向Dc断面における第一薄板シール片20、リテーナ21及びリテーナ22の組み合わせと、複数の第二主薄板シール片60と、複数の第二副薄板シール片80とは、周方向Dc断面における当該各形状が周方向Dcに向かって揃うように並べられている。
したがって、シールセグメント11は、第一シール体13及び第二シール体33にわたって、軸方向Da側面が略面一になっているため、作動流体Gの流れの妨げにくい構造となっており、不均一な流れが発生することを抑制している。不均一な流れが発生することを抑制すれば、シール特性の劣化やフラッタリングの発生を抑制することができる。
なお、
図5〜
図7において、各構造に対して、同じ記号(Ma〜Mg)で表した部分は、同じ寸法であることを示す。
また、不均一な流れが問題とならないときは、周方向Dc断面における寸法及び形状を同じとする必要はなく、軸方向Da側面が面一にする必要もない。
【0049】
複数の第二薄板シール片40は、リテーナ21,22で挟持されないが、外周側基端67及び外周側基端87において、溶接又はろう付けによって、互いに接合されている。
よって、第二シール体33は、リテーナ21、リテーナ22及び第一シール体13から取り外し可能な構成であると共に、ブロック化されている。
変形例として、複数の第二薄板シール片40は、外周側基端67及び外周側基端87において、ネジ止め、帯掛け等によって、互いに拘止されブロック化されてもよい。
【0050】
図8に示すように、ブロック化された第二シール体33は、リテーナ21,22の周方向Dcの端部に向かって、高圧側側板23と低圧側側板24との間に嵌め込まれる。したがって、第二シール体33は、第一シール体13の周方向Dcの端面にキャップのように嵌められ、第一薄板シール片20を保護している。
【0051】
図6に示すように、複数の第二主薄板シール片60には、高圧側側板23の嵌込段差部23aが嵌め込まれる切欠き部60a及び低圧側側板24の嵌込段差部24aが嵌め込まれる切欠き部60bが設けられている。したがって、嵌込段差部23a,24aに切欠き部60a,60bがそれぞれ嵌っていることによって、ブロック化された第二シール体33は、高圧側側板23と低圧側側板24との間に嵌め込まれる際、径方向Drに規制されつつ、周方向Dcにスライド可能となっている。
【0052】
第二シール体33の作用及び効果について説明する。
本実施形態のシールセグメント11は、第一シール体13の周方向Dcの端面に、第一薄板シール片20の板厚Ptaに比べて大きな板厚Ptb,Ptcを有する複数の第二薄板シール片40を備えているため、シールセグメント11の周方向Dc端部における薄板シール片の剛性を高めている。したがって、シールセグメント11間の分割部、すなわち、周方向Dcに隣り合うシールセグメント11の高圧側側板23の間の分割部における薄板シール片の摩耗が抑制される。
他方でシールセグメント11の端部より周方向Dc内側は、薄い板厚の薄板シール片を用いており、薄板シール片の浮上特性の性能が維持される。
また、剛性の大きい薄板シール片を有する第二シール体33を、第一シール体13の周方向Dcの端面にキャップのように嵌めて、第一薄板シール片20を保護している。
【0053】
さらに、本実施形態のシールセグメント11は、第一薄板シール片20の板厚Ptaに比べて、高圧側側板23で覆われていない第二副薄板シール片80の板厚Ptcだけではなく、周方向縁部23d付近の高圧側側板23で第二主薄板シール片60の板厚Ptbも大きくしている。すなわち、第二主薄板シール片60及び第二副薄板シール片80の剛性を大きくしていることによって、以下の作用、効果を有する。
高圧側側板23の周方向縁部23dは、薄板シール片の側面に密着しにくく、高圧側側板23の軸方向Da内側にまで作動流体Gが回り込んでくる。
第二シール体33を用いずに、高圧側側板23の周方向縁部23dにわたって第一薄板シール片20を並べた場合、高圧側側板23の軸方向Da内側にまで作動流体Gが回り込んでくるため、高圧側側板23で覆われた第一薄板シール片20にも作動流体Gの軸方向Daの流れが漏れこむ。よって、高圧側側板23で覆われていない第一薄板シール片20だけではなく、周方向縁部23d付近の高圧側側板23で覆われた第一薄板シール片20においても、フラッタリングが発生する虞がある。
これに対し、本実施形態のシールセグメント11は、上記のとおり、高圧側側板23で覆われていない第二副薄板シール片80の剛性だけではなく、周方向縁部23d付近の高圧側側板23で覆われた第二主薄板シール片60の剛性も大きくしている。
したがって、周方向縁部23d付近の高圧側側板23で覆われた第二主薄板シール片60についても、フラッタリングを抑制している。
【0054】
加えて、本実施形態のシールセグメント11は、通常の製作工程によって製作された大部分の第一シール体13に、小部分のブロック化された第二シール体33を嵌め込むことができる。すなわち、板厚の同じ多数枚の薄板シール片でシールセグメント11の大部分を製作した後、周方向Dc端部だけ板厚の異なる少数枚の薄板シール片を設けることができる。
したがって、(通常の製作工程である)同じ板厚の薄板シール片を組み立てる製作工程を維持しながら、シールセグメント11の分割部付近のみ板圧を変更することができるため、品質の維持及び生産効率の向上を図ることができる。
【0055】
「第二実施形態」
以下、本発明の第二実施形態について、
図9を参照して説明する。
【0056】
本実施形態のシールセグメントは、第一実施形態と基本的に同じであるが、第二シール体の構造が異なっている。
【0057】
本実施形態のシールセグメントは、第一シール体13の周方向Dc両端側にさらに第二シール体133を備える。
図9には、本実施形態の第二シール体133のみを示す。
本実施形態の第二シール体133は、複数の第二薄板シール片140を有する。
複数の第二薄板シール片140は、複数の第一薄板シール片20の周方向Dcの隣に配置される複数の第二主薄板シール片160と、さらに周方向Dcの隣に配置される複数の第二副薄板シール片180とを備える。
また、第二シール体133は、第二シール体33と同様に、リテーナ21、リテーナ22及び第一シール体13から取り外し可能な構成であると共に、ブロック化されている。
【0058】
各第二薄板シール片140の板厚は、第一薄板シール片20の板厚Ptaに比べて大きくなっている。さらに、
図9に示すように、複数の第二薄板シール片140は、板厚一定ではなく、周方向Dcについて、第一薄板シール片20に向かって、板厚Ptc´から板厚Pta´へと連続的に小さくなって板厚Ptaに近づくように構成されている。
したがって、シールセグメントの分割部から周方向Dcに離れるにしたがって、薄板シール片の板厚は、薄板シール片に浮上特性を与えるのに適した板厚となるように徐々に変化している。
【0059】
第二シール体133の作用及び効果について説明する。
よって、第二シール体133も、第二シール体33と同様に、第二主薄板シール片160及び第二副薄板シール片180の剛性が大きい。したがって、シールセグメントの分割部の薄板シール片の摩耗が抑制されると共に、周方向縁部23d付近の高圧側側板23で覆われた第二主薄板シール片160についても、フラッタリング摩耗を抑制している。
【0060】
さらに、第二シール体133は、次のような作用、効果を有する。
シールセグメントの分割部から高圧側側板23の軸方向Da内側にまで回り込んでくる作動流体Gの流れは、シールセグメントの分割部から離れるほど小さくなる。すなわち、シールセグメントの分割部から離れるほど、複数の薄板シール片間の隙間部分における作動流体Gの圧力バランスは、浮上特性の性能に適した理想的な圧力バランスに近づく。よって、シールセグメントの分割部から離れるほど、薄板シール片のフラッタリング発生のリスクは徐々に減少するため、薄板シール片の板厚を大きくする必要がなくなる。
これに対し、第二シール体133は、シールセグメントの分割部から離れるほど、薄板シール片の板厚が徐々に小さくなっている。
したがって、第二薄板シール片140のうち、フラッタリングによる摩耗を避けられないシールセグメントの分割部の第二薄板シール片140については、板厚が大きくして剛性を大きくしている。他方で、シールセグメントの分割部から離れるほど板厚を小さくすることで第二薄板シール片140の剛性を小さくして、第二薄板シール片140にも浮上特性を与えている。また、徐々に第二薄板シール片140の板厚を変化させることで、不均一な流れを抑制することもできる。
【0061】
本実施形態の複数の第二薄板シール片140は、周方向Dcについて、板厚Ptc´からから板厚Pta´へと板厚が連続的に小さくなって板厚Ptaに近づくように構成されている。変形例として各第二副薄板シール片180の板厚Ptc´は一定とし、各第二主薄板シール片160の板厚だけが、板厚Ptc´から板厚Pta´へと連続的に小さくなって板厚Ptaに近づくように構成されてもよい。
【0062】
「第三実施形態」
以下、本発明の第三実施形態について、
図10を参照して説明する。
【0063】
本実施形態のシールセグメントは、第一実施形態と基本的に同じであるが、第三シール体の構造が異なっている。
【0064】
本実施形態のシールセグメントは、第一シール体13の周方向Dc両端側にさらに第二シール体233を備える。
図10は、本実施形態の第二シール体233のみを示す。
本実施形態の第二シール体233は、複数の第二薄板シール片240を有する。
複数の第二薄板シール片240は、複数の第一薄板シール片20の周方向Dcの隣に配置される複数の第二主薄板シール片260と、さらに周方向Dcの隣に配置される複数の第二副薄板シール片280とを備える。
また、第二シール体233は、第二シール体33と同様に、リテーナ21、リテーナ22及び第一シール体13から取り外し可能な構成であると共に、ブロック化されている。
【0065】
以下、各薄板シール片の径方向Dr内側に延出する長さを単に「薄板シール片の長さ」という。
【0066】
第一薄板シール片20の板厚Ptaは、周方向Dcに並べられた複数の第一薄板シール片20全体にわたって、一定の大きさとなっている。
他方、
図10に示すように、各第二主薄板シール片260の板厚Ptbは、複数の第二主薄板シール片260全体にわたって一定の大きさとなっており、第一薄板シール片20の板厚Ptaに比べて大きくなっている。各第二副薄板シール片280の板厚Ptcも、複数の第二副薄板シール片280全体にわたって一定の大きさとなっており、第一薄板シール片20の板厚Ptaに比べて大きくなっている。本実施形態では、板厚Ptbと板厚Ptcとを同じにしているが、異なっていてもよい。
【0067】
さらに、
図10に示すように、周方向Dcについて、複数の第二薄板シール片240の長さは一定ではなく、第一薄板シール片20に向かって、長さPlcから長さPlaへと連続的に大きくなり、第一薄板シール片20の隣の第二主薄板シール片260が長さPlaになるように構成されている。本実施形態では、長さPlaを第一薄板シール片20の長さより小さくしているが、第一薄板シール片20の長さと同じとしてもよい。
【0068】
すなわち、シールセグメントの分割部では、薄板シール片の長さを小さくして、シールセグメントの分割部から周方向Dcに離れるにしたがって、薄板シール片の長さを徐々に大きくしている。
したがって、第二薄板シール片240のうち、フラッタリングによる摩耗を避けられないシールセグメントの分割部の第二薄板シール片240については、薄板シール片の長さを小さくして、耐フラッタリング性を大きくしている。他方で、シールセグメントの分割部から離れるほど薄板シール片の長さを大きくして、第二薄板シール片240にも浮上特性を与えている。また、徐々に第二薄板シール片240の長さを変化させることで、不均一な流れを抑制することもできる。
【0069】
本実施形態の複数の第二薄板シール片240は周方向Dcについて、長さPlcから長さPlaへ向かって、連続的に大きくなるように構成されている。変形例として各第二副薄板シール片280の長さPlcは一定とし、各第二主薄板シール片260の長さだけが、長さPlcから長さPlaへ向かって、連続的に大きくなるように構成されてもよい。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0071】
本実施形態の軸シール装置10が備えるシールセグメント11の数は8つであるが、それ限らず、2つから7つのいずれか、さらには9つ以上であってもよい。
【0072】
各実施形態では、第一薄板シール片と第二薄板シール片とで、薄板シール片の厚さを変えている。すなわち、第二薄板シール片の剛性が、第一薄板シール片の剛性よりも大きくなるように、薄板シール片の構造を変えている。変形例として、第一薄板シール片の材料より剛性の高い材料を第二薄板シール片に用いることによって、第二薄板シール片の剛性が、第一薄板シール片の剛性よりも大きくなるようにしてもよい。さらに、薄板シール片の剛性を変更できれば、薄板シール片の構造と材料との組み合わせを選択、調整して、薄板シール片の剛性を変えてもよい。
【0073】
各実施形態及び各変形例では、第二薄板シール片の厚さ、長さ、又は材料を変更することによって、耐フラッタリング性を大きくなるように構成しているが、各種第二薄板シール片の厚さ、長さ、材料を選択、又は組み合わせて、耐フラッタリング性が大きくなるように構成してもよい。
【0074】
各実施形態では、第二副薄板シール片を設けているが、各シールセグメント11間の分割部の隙間の遮蔽が必要ない場合は、第二副薄板シール片を設けなくてもよい。