【解決手段】実施形態のアクチュエータは、複数の流路部材を具備するアクチュエータであって、前記流路部材のそれぞれは、流体を流入する第一ポートと、流体を流出する第二ポートと、を有し、前記複数の流路部材のうち少なくとも1つは、前記第二ポートの数が前記第一ポートの数と異なる流路部材を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、アクチュエータの例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成や制御(技術的特徴)、ならびに当該構成や制御によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。
【0009】
また、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態のアクチュエータの概略構成図である。
図1に示されるように、アクチュエータ1は、複数の並列な作動要素2を有している。以下、アクチュエータ1に含まれる全ての作動要素2は、作動要素群200と称される。
【0011】
作動要素2は、流体が供給された供給状態において所定の出力値が得られる作動状態となり、流体の供給が停止されたり流体が排出されたりした非供給状態において作動状態では無い非作動状態となる。
【0012】
作動要素2は、例えば、マッキベン型人工筋肉である。マッキベン型人工筋肉は、例えば、エラストマ等の伸縮可能な弾性材料によって構成されて長手方向の一端が閉じられたチューブと、当該チューブを囲う合成繊維材料等によって構成されたメッシュと、を有する。マッキベン型人工筋肉は、チューブ内に流体としてのガス(エア)が供給された供給状態では径方向(短手方向)に膨らむとともに軸方向に縮み、軸方向の両端を引く引張力(収縮力)を発生する(作動状態)。他方、マッキベン型人工筋肉は、チューブ内からガスが排出された非供給状態では、チューブやメッシュの弾性力に応じて径方向に縮むとともに軸方向に伸び、元の形状に戻る(非作動状態)。作動要素2が、このようなマッキベン型人工筋肉である場合、作動要素2の出力値は、例えば、引張力(収縮力)である。
【0013】
図1に示されるように、複数の作動要素2は、並列に配置されている。アクチュエータ1では、作動要素2が並行して作動する数が切り替わることにより、作動要素群200の出力値が変化する。例えば、作動要素2がマッキベン型人工筋肉である場合、作動する数が切り替わることにより、出力値としての引張力が変化する。
【0014】
複数の作動要素2が、例えば同一仕様である場合など、同一の条件下で同一の出力値を与える場合にあっては、当該複数の作動要素2を含む作動要素群200の出力値は、一つの作動要素2の出力値と作動する作動要素2の数(作動数)との乗算値となる。すなわち、二つの作動要素2が並行して作動した場合の出力値は、一つの作動要素2が単独で作動した場合の出力値の2倍の出力値が得られ、n個(n:整数)の作動要素2が並行して作動した場合の出力値は、一つの作動要素2が単独で作動した場合の出力値のn倍の出力値が得られる。本明細書では、一つの作動要素2の出力値が、ベース出力値と称される。ベース出力値は、単独出力値、単位出力値、基準出力値等とも称されうる。
【0015】
図1に示されるアクチュエータ1は、作動要素群200の出力値が切り替わるよう、複数の作動要素2の作動状態と非作動状態とを切り替える。このような切り替えを行うアクチュエータ1は、流体系の装備として、例えば、流体供給源3、圧力制御弁4、切替弁51〜54および流路部材61〜64を有する。
【0016】
流体供給源3は、作動要素2に供給される流体の供給源である。流体供給源3は、例えば、ポンプや、高圧タンク、ボンベ、アキュムレータ等である。なお、流体供給源3の上流には、タンクや、リザーバ、ドレンパン等が設けられてもよい。
【0017】
圧力制御弁4は、作動要素2に供給される流体の流路71における圧力を制御する。圧力制御弁4は、流路71の圧力を所定圧の近傍に維持することができる。圧力制御弁4は、例えば、リリーフ弁や、減圧弁、シーケンス弁、カウンタバランス弁、アンロード弁等である。
【0018】
切替弁51〜54は、電気信号に応じて流路の開閉や複数の流路の接続状態を切り替えることができる電磁弁である。切替弁51〜54は、弁体を含む弁部(不図示)と、印加された電気信号に基づく電磁力により弁体を駆動する駆動部(不図示)と、を有する。
【0019】
切替弁51〜54は、例えば、供給ポート、アクチュエータポート、および排出ポート(リターンポート)の三つのポート(不図示)が設けられた電磁三方弁である。この場合、供給ポートは圧力が調整された流路71と繋がり、アクチュエータポートは作動要素2までの流路72と繋がり、排出ポートはドレン(不図示、低圧流路)と繋がる。切替弁51〜54は、電気信号に応じて、アクチュエータポートが供給ポートと接続される一方排出ポートとは遮断された第一の状態と、アクチュエータポートが排出ポートと接続される一方供給ポートとは遮断された第二の状態とを切り替える。第一の状態において、作動要素2は流路72および切替弁51〜54を介して圧力制御弁4によって圧力が調整された流路71(高圧流路)と繋がる。よって、作動要素2に流体が供給される。第二の状態において、作動要素2は流路72および切替弁51〜54を介してドレンと繋がるとともに流路71とは遮断される。よって、作動要素2には流体が供給されず作動要素2から流体が排出される。すなわち、切替弁51〜54における第一状態と第二状態との切替により、作動要素2への流体の供給状態と非供給状態、すなわち、作動要素2の作動状態と非作動状態とが切り替わる。以下では、第一状態はON状態、第二状態はOFF状態と称される。なお、切替弁51〜54や流路71,72はここに開示された構成には限定されない。切替弁51〜54は、制御弁と称されうる。
【0020】
流路部材61〜64は、切替弁51〜54と作動要素2との間に介在している。流路部材61〜64には流路72iが設けられている。流路72iは、切替弁51〜54と一つ以上の作動要素2との間の流路72の少なくとも一部である。複数の作動要素2が接続される流路部材62〜64の内部では、流路72iは分岐されている。流路部材61〜64には、第一ポート6aと、第二ポート6bと、が設けられている。第一ポート6aは、流路部材61〜64内の流路72iの切替弁51〜54側の端部に位置され、第二ポート6bは、流路部材61〜64内の流路72iの作動要素2側の端部に位置される。
【0021】
第二ポート6bおよび作動要素2の接続ポート(不図示)には、それぞれカプラ等の継手が設けられてもよい。第二ポート6bは、流路部材61〜64に設けられた作動要素2への流体の出口の一例である。
【0022】
流路部材61〜64のそれぞれに接続された一つ以上の作動要素2は、それぞれ、作動部21〜24と称される。複数の流路部材61〜64は、流路構成部600と称される。流路部材61〜64のそれぞれに接続された作動要素2は、換言すれば、流路部材61〜64のそれぞれの流路72iを流れた流体の供給によって作動する作動要素2である。
【0023】
図1に示されるように、アクチュエータ1は、複数の切替弁51〜54のそれぞれに対応して、複数の流路部材61〜64、および複数の作動部21〜24を、備えている。切替弁51〜54のそれぞれは、複数の作動部21〜24のうち対応する一つの作動を、制御する。
【0024】
アクチュエータ1は、切替弁51〜54へ制御信号(電気信号)を入力する制御系の装備として、制御装置8および駆動回路9を備える。制御装置8は、センサ(不図示)の検出結果や、外部装置(不図示)からの指令、操作部(不図示)におけるオペレータ等による操作入力等に基づいて、駆動回路9への指示信号を生成する。制御装置8は、例えばECU(electronic control unit)等のコンピュータである。この場合、制御装置8は、例えば、コントローラや、主記憶装置、補助記憶装置等を有することができる。コントローラは、インストールされたプログラム(アプリケーション、ソフトウエア)にしたがって演算処理を実行することにより、制御装置8としての機能を実現することができる。なお、制御装置8の少なくとも一部の機能は、ASIC(application specific integrated circuit)や、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(digital signal processor)等のハードウエアによって実現されてもよい。
【0025】
駆動回路9は、制御装置8から指示信号を受け取り、当該指示信号に応じて、複数の切替弁51〜54のそれぞれの状態を切り替える制御信号(電気信号)を出力する。駆動回路9は、例えば、電源回路やスイッチング素子等を有し、指示信号に応じてスイッチング素子の開閉を切り替えることにより、切替弁51〜54の駆動部を作動させる制御信号を出力する。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態では、流路部材61〜64のそれぞれに接続されている作動要素2の数が異なっている。
図1の例では、流路部材61に接続され、切替弁51のON状態により作動する作動要素2の数は1である。流路部材62に接続され、切替弁52のON状態により作動する作動要素2の数は2である。流路部材63に接続され、切替弁53のON状態により作動する作動要素2の数は4である。また、流路部材64に接続され、切替弁54のON状態により作動する作動要素2の数は8である。すなわち、切替弁5i(iは符号の一桁目の数)のON状態により作動する作動要素2の数は、2
(i−1)である。したがって、アクチュエータ1に含まれている複数(この例では四つ)の切替弁51〜54の中では、切替弁51〜54のそれぞれのON状態により作動する作動要素2の数は、互いに異なっており、2の冪乗のいずれかに設定されている。
【0027】
また、上述したように、本実施形態では、複数の作動要素2の出力値は略同じである。よって、番号iの切替弁5iのON状態により作動する作動要素群200の出力値は、一つの作動要素2の出力値であるベース出力値の略2
(i−1)倍である。
【0028】
図2は、切替弁51〜54のON状態およびOFF状態の切り替えにより作動する作動要素2の合計数及び作動要素群200の出力値を示す表である。上述したように、切替弁51のON状態により作動する作動要素2の数は「1」であり、切替弁52のON状態により作動する作動要素2の数は「2」であり、切替弁53のON状態により作動する作動要素2の数は「4」であり、切替弁54のON状態により作動する作動要素2の数は「8」である。
図2において「1」はON状態を示し、「0」はOFF状態を示す。よって、切替弁51〜54のON状態およびOFF状態を
図2に示されるように切り替えることにより、作動する作動要素2の数を1〜15の範囲で1つ刻みで切り替えることができ、ひいては、作動要素群200の出力値を、ベース出力値の1倍〜15倍の範囲で1倍(ベース出力値)刻みで切り替えることができる。2進数の各桁(各ビット)の「0」と「1」との切り替えにより10進数の全ての数を表せることを考えれば、このような制御が可能となることが理解できよう。
図2には、ベース出力値をFとした時の各場合の出力値が示されている。
【0029】
以上、説明したように、アクチュエータ1は、複数の並列な作動要素2において作動させる作動要素2を切り替える、具体的には、並行して作動する作動要素2の数や組み合わせを切り替えることにより、一つの出力対象に対する出力値や同一箇所における出力値を切り替える(変更する、変化させる)ことができる。
【0030】
また、アクチュエータ1においては、n個(nは、2以上の整数)の作動部21〜24(2n)の出力値は、それぞれ、ベース出力値の略2
i倍(iは0以上n−1以下の各整数)である。よって、n個の作動部21〜24(2n)の作動状態の切り替えによって、作動要素群200(アクチュエータ1)の出力値をベース出力値の1倍〜2
n−1倍の範囲で1倍(ベース出力値)刻みで切り替えることができる。すなわち、作動要素2の数より少ない数の切替弁51〜54によって、作動要素群200による、作動要素2の数と同数の段階で切り替わる出力値を、得ることができる。したがって、作動要素2の数と同数の切替弁51〜54を設けた場合に比べて、例えば、アクチュエータ1がよりコンパクトにあるいはより軽量に構成されたり、部品点数が減る分、アクチュエータ1の製造の手間やコストがより低減されたりするといった、効果が得られる。
【0031】
また、n個(nは、2以上の整数)の作動部21〜24(2n)は、それぞれ、2
i個(ただし、iは0以上n−1以下の各整数)の作動要素2を有する。また、n個(nは、2以上の整数)の流路部材61〜64(6n)には、それぞれ、2
i個(ただし、iは0以上n−1以下の各整数)の第二ポート6b(出口)が設けられている。よって、例えば、流路部材61〜64に接続する作動要素2の数を2の冪乗に設定することにより、2の冪乗の出力値を生じる作動部21〜24を、比較的簡単に構成することができる。
【0032】
また、例えば、作動要素2はマッキベン型人工筋肉であり、作動要素2は、流体の供給に応じて収縮し、出力値は、一つ以上の作動要素2の収縮によって生じる引張力である。すなわち、本実施形態のアクチュエータ1は、人工筋肉システムに適用することができる。本実施形態では、各作動要素2は比較的細径の筋繊維として機能し、作動要素群200が筋繊維群、すなわち筋束を模擬する人工筋肉として機能することができる。なお、第二ポート6b(出口)の数が2
i個以外の場合も含まれる。
【0033】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態のアクチュエータ1Aの概略構成図である。本実施形態にも、上記実施形態と同様の構成要素が含まれている。よって、本実施形態によっても、同様の構成要素に基づく同様の結果(効果)が得られる。
【0034】
ただし、本実施形態では、作動部23に含まれる作動要素2Aの出力値は、作動部21、22に含まれる作動要素2の出力値よりも大きく、例えば、ベース出力値の2倍である。4本の作動要素2Aの流体収容部(チューブ)の径(内径)は、作動要素2Aの出力値が作動要素2の出力値の2倍となるように、作動要素2Aの径を設定する。たとえば、作動要素4及び、作動要素4Aの長さが等しく、スリーブ巻き付け角が等しい場合、ベース出力値の2倍にするためには、径を√2倍程度に設定する。よって、作動部21、22、23の出力値を、それぞれ、ベース出力値(作動要素2の出力値)の1倍、2倍、および8倍に設定することができる。したがって、本実施形態によれば、作動要素2、2Aの作動数に対して作動要素群200Aの出力値が非線形的に増大(変化)するアクチュエータ1Aを得ることができる。
【0035】
図4は、作動部23に作動要素2Aを含む場合の、切替弁51〜53のON/OFF状態の切り替えにより作動する作動要素の合計数及び作動要素群200Aの出力値を示す表である。切替弁53がON状態の場合に出力値が急激に上昇しているのが解る。
図4には、ベース出力値をFとした時の各場合の出力値が示されている。
【0036】
なお、本実施形態では、作動部23に含まれる全ての作動要素2Aの出力値が、ベース出力値あるいは他の作動部21,22の作動要素2の出力値よりも大きいが、これには限定されず、例えば、作動部21,22,23のいずれかに含まれる少なくとも一つの作動要素2Aの出力値が、他の作動要素2の出力値と比較して、大きくてもよいし、あるいは小さくてもよい、すなわち、異なってもよい。
【0037】
また、作動要素の長さが等しく、スリーブ巻き付け角が等しい場合、作動要素の径を√N倍に設定すると、ベース出力値のN倍の出力値を得ることができる。
【0038】
作動要素に流入する流体の流量が同一とすると、径の太さにより作動要素の応答速度が変化するため、早い動きを実現したい場合は、細い径の作動要素を駆動し、応答速度は遅いが負荷がかかる動きをしたい場合は、太い径の作動要素を駆動することで、応答速度を加味した動作が可能となる。例えば、本作動要素を人工筋肉として利用する場合、人間の速筋や遅筋に対応した動作を再現することができ、ボール等をつかむ際の手の力や動きを再現することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、実施形態の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、角度、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0040】
また、例えば、複数の作動部に含まれる作動要素の数(流路構成部に設けられた出口の数)が異なるアクチュエータにあっては、異なる複数の作動要素の、数や組み合わせの変更によって、種々の出力値が得られるため、切替弁の数を減らすことが可能となる。すなわち、アクチュエータには、作動要素の数が互いに異なる複数の作動部が含まれればよく、本発明は、作動部の出力値がベース出力値の2の冪乗に設定されることや、作動要素の数が2の冪乗に設定されることには限定されない。
【0041】
また、本実施形態のアクチュエータは、人工筋肉システム以外にも適用することが可能であるし、作動要素は、人工筋肉とは異なる作動要素であってもよい。また、作動値は、引張力(収縮力)以外の力であってもよいし、力以外のディメンションの物理量であってもよい。また、本実施形態のアクチュエータは、気体の他、液体や、流動性を有した物体等にも適用可能である。