【解決手段】 回転体2には、中心において回転自在な状態で配置される枢軸と、この枢軸から偏った位置において枢軸を中心として旋回自在な旋回軸6とを備えている。枢軸は、少なくとも二つの駆動源3,4から個別に回転駆動力が付与される第1および第2の駆動軸5,7が同軸に配置されている。旋回軸は、回転体の内部において自転が自在な状態で、第1および第2の回転軸と平行な軸線を有して設けられる。二つの駆動軸の回転方向が同じであり、かつ旋回軸に伝達されるときの回転方向が相互に逆向きとしている。
前記第1および第2の駆動軸は、一方が円筒状の軸であり、他方が該円筒の内部を挿通させた棒状の軸であり、前記円筒状および棒状の両軸線を一致させて同軸に配置されている請求項1に記載の回転駆動力伝達機構。
前記第1および第2の駆動軸は、それぞれ該駆動軸の駆動力によって回転する第1および第2の駆動歯車を備え、前記旋回軸は、前記第1および第2の各駆動歯車との間で直接または間接に噛合して該旋回軸に対して回転力を出力する第1および第2の出力歯車を備え、前記第1の駆動歯車と第1の出力歯車との間、または第2の駆動歯車と第2の出力歯車との間の少なくともいずれか一方に中間歯車が介在し、第1の出力歯車と第2の出力歯車との回転方向を相互に逆向きとしている請求項1または2に記載の回転駆動力伝達機構。
前記中間歯車は、前記回転体の内部に自転可能に設けられた中間軸に支持され、該中間軸は、前記旋回軸とともに前記枢軸の周囲を旋回するものである請求項3に記載の回転駆動力伝達機構。
前記中間軸は、自転による回転力を出力するための出力手段と、この出力手段により出力された回転力を回生する回生手段とを備える請求項4に記載の回転駆動力伝達機構。
前記旋回軸は、自転による回転力を出力するための出力手段と、この出力手段により出力された回転力を回生する回生手段とを備える請求項1ないし5のいずれかに記載の回転駆動力伝達機構。
請求項6に記載の車輪を有する平行二輪走行体であって、駆動源を搭載する車体と、この車体の左右両側に支持される各1個の前記車輪とを備え、前記車体の重心が前記車輪の車軸よりも下位に調整されていることを特徴とする平行二輪走行体。
前記車体は、前記車輪の車軸近傍において、前記車輪による直進方向に向かって、進退移動する第2の錘をさらに搭載するものであり、これら二種類の錘の総重量により重心を前記車軸よりも下位に設定されている請求項10に記載の平行二輪走行体。
前記車体は、少なくとも前面および後面が外方に膨出する曲面で構成され、前記錘が前後両面の間に設けられたレールに沿って進退移動するものである請求項10または11に記載の平行二輪走行体。
前記車体は、前記前面および後面を構成する曲面に連続するように外方に膨出させた曲面によって左右両面の一部が構成され、前記車輪が回転する領域を除き、外部表面の横断面形状が円形または楕円形とするものである請求項12に記載の平行二輪走行体。
前記車体は、さらに、上端の所定範囲が部分的に分離された頂上部と、該頂上部を除く本体部とで構成され、前記本体部には、前記錘を進退移動させるためのレールが前後面の間に設けられており、前記頂上部は、前記本体部に支持され、昇降および回転が可能に設けられている請求項12または13に記載の平行二輪走行体。
前記本体部の上面には、前記頂上部の内側に配置される物体検出手段を備え、該頂上部が上昇するとき、該物体検出手段が該頂上部の外側に対する検知機能を可能にするものである請求項14に記載の平行二輪走行体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、高回転かつ高トルクの駆動力を伝達するためには、大出力の駆動源を使用すればよいのであるが、大出力の駆動源は、それ自体が大型であり、例えば、車椅子のような小型の移動体では、大型の駆動源を搭載するスペースを設けることが難しく、また、大型駆動源は、それ自体の重量も大きくなり、駆動しない状態(手動)において移動させる機会がある場合には、その移動を困難なものとする要因となっていた。
【0006】
また、駆動源としては、電動モータを使用することが一般的であるが、電動モータの場合には、出力の大きさと、モータ全体の大きさとが比例せず、例えば、ある出力のモータに比較して、2倍の出力を有するモータの大きさは3倍程度となるものであった。これは、多数の構成部品について、強度上の問題によりその寸法が大きくなるためであり、当該モータを小型化することによって、高回転かつ高トルクの出力を得ることは容易ではなかった。特に、車椅子や荷台のように、重量物を搬送する場合には高トルクが要求されるところ、一般的な駆動装置にあっては、減速機を介在させることによって高トルク化が可能であるが、その反面、回転速度は低下することとなり、他方、高速回転を実現する場合にはトルクが低下せざるを得なかった。
【0007】
さらに、平行二輪走行体の車輪について、高速回転かつ高トルクの伝達を可能にする前記伝達機構を備えた場合、この車輪を使用する平行二輪走行体では、その重量バランスの制御が容易ではなかった。さらに、監視対象物を追尾し、または誘導するために自走させる走行体において、小型の平行二輪走行体は実現していないのが現状であった。
【0008】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、小型の駆動源を使用しつつ高回転かつ高トルクの駆動力を伝達し得る伝達機構の提供であり、その伝達機構を備えた車輪と、該車輪を有する移動体および小型の平行二輪走行体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、回転駆動力伝達機構にかかる本発明は、駆動源によって付与される回転駆動力を回転体に伝達する駆動力伝達機構であって、前記回転体は、中心において回転自在な状態で配置される枢軸と、この枢軸から偏った位置において該枢軸を中心として旋回自在な旋回軸とを備え、前記枢軸は、前記回転体の外方に設置される少なくとも二つの駆動源から個別に回転駆動力が付与される第1および第2の駆動軸が同軸に配置されたものであり、前記旋回軸は、前記回転体の内部において自転が自在な状態で、前記第1および第2の回転軸と平行な軸線を有して設けられ、前記第1および第2の駆動軸の双方による回転駆動力の伝達を歯車によって受けるものであり、前記第1の駆動軸の回転方向と前記第2の駆動軸の回転方向とが同じであり、かつ前記旋回軸に伝達されるときの回転方向が相互に逆向きであることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成によれば、第1の駆動軸によって伝達される回転駆動力は旋回軸に伝達されるとともに、第2の駆動軸によって伝達される回転駆動力は、同じ旋回軸に逆回転で伝達されることとなり、旋回軸そのものに対して捩れ方向に作用することとなる。ここで、各軸の位置が固定であれば、旋回軸はいずれか大きい駆動力の方向へ自転するのみとなるが、旋回軸は旋回自在であることから、両駆動軸の駆動力を受けて旋回することができる。ところで、第1および第2の駆動軸による回転駆動力は、歯車によって伝達されるものであることから、旋回軸が自転しない状態では、駆動軸側の歯車と旋回軸側の歯車とが噛み合った状態において、駆動軸の回転駆動力が歯車を介して旋回軸に対する旋回力として作用することとなる。特に、第1および第2の駆動軸の回転方向は、ともに同一方向であることから、双方の駆動軸による回転駆動力に抗することなく、旋回することができるものである。また、第1および第2の両駆動軸の回転数が同じである場合には、旋回軸は自転することなく、当該旋回軸に対して作用する捩れを解消することができる。なお、第1の駆動軸と第2の駆動軸とによる回転駆動力が旋回軸に異なる状態で伝達される(回転数に差違がある)場合には、相対的に異なる回転力(回転数)の差違部分のみを自転により解消し、同一の回転力(回転数)に相当する範囲については旋回軸の旋回を強制し得ることとなる。さらに、上記第1および第2の駆動軸に対する駆動力の付与は、複数の駆動源から個別に伝達されるものであり、これらの複数の駆動源による回転駆動力を統合させることとなり、比較的小さな出力の駆動源を用いつつ大きい駆動力を出力させることができる。すなわち、複数の駆動源の統合により減速機を介在させることなく高トルク化させ、よって、高トルクかつ高速回転による駆動を可能にし得るものである。
【0011】
上記の発明においては、前記第1および第2の駆動軸のうち、一方が円筒状の軸であり、他方が該円筒の内部を挿通させた棒状の軸であり、前記円筒状および棒状の両軸線を一致させて同軸に配置する構成とすることができる。
【0012】
上記構成の場合には、二種類の駆動軸(第1および第2)を同軸に配置することが用意であり、駆動力を付与すべき複数の駆動源も近接した位置に設置することが可能となる。これにより、小型の駆動源を使用しつつ小型の駆動伝達機構による駆動力の伝達が可能となり、小型の車輪または小型の移動体に使用しても、全体的に小さく設計し得ることとなる。
【0013】
また、上記の各発明においては、前記第1および第2の駆動軸が、それぞれ該駆動軸の駆動力によって回転する第1および第2の駆動歯車を備えており、前記旋回軸が、前記第1および第2の各駆動歯車との間で直接または間接に噛合して該旋回軸に対して回転力を出力する第1および第2の出力歯車を備えており、前記第1の駆動歯車と第1の出力歯車との間、または第2の駆動歯車と第2の出力歯車との間の少なくともいずれか一方に中間歯車が介在し、第1の出力歯車と第2の出力歯車との回転方向を相互に逆向きとしているものとすることができる。
【0014】
上記構成によれば、歯車の噛合により二つの駆動軸による回転駆動力は確実に旋回軸に伝達され、当該旋回軸に設けられる第1および第2の出力歯車は、両駆動軸の第1および第2の駆動歯車と噛合した状態が維持されつつ、一体となって旋回することとなる。すなわち、旋回軸が自転しない場合には、駆動軸の歯車と旋回軸の歯車とが、数個の歯で相互に噛合した状態が維持され、この歯を介して回転駆動力が伝達されて旋回軸の旋回力として出力されることとなる。また、旋回軸が自転する場合には、噛合する双方の歯は相対的に変動するが、相互に噛み合った状態が維持されることとなるものである。なお、旋回軸が自転する場合とは、第1の出力歯車と第2の出力歯車とに伝達される回転駆動力が相互に異なる状態であり、二つの駆動軸に対し個別に駆動力を付与する二つの駆動源を使用する場合、その両駆動源の出力を故意に異ならせる場合、または出力が安定しない場合などに生じ得る。
【0015】
さらに、上記の各発明においては、前記中間歯車が、前記回転体の内部に自転可能に設けられた中間軸に支持され、該中間軸が、前記旋回軸とともに前記枢軸の周囲を旋回するように構成してもよい。
【0016】
このような構成の場合には、駆動軸の回転方向と旋回軸に伝達される際の回転方向とを自在に調整できるうえ、場合によっては減速比を調整することも可能となり、好適な回転数とトルクとを出力させつつ、駆動回転の方向を変換することが可能となる。なお、中間軸は、駆動輪によって支持されることから、旋回軸の旋回とともに同様に旋回されることとなり、中間軸に対しても捻れの一部が作用することとなり、これらの捻れの発生により旋回軸および中間軸に対する旋回が強制され、ともに駆動輪に対する駆動力を付与することとなる。
【0017】
上記各構成の発明において、前記中間軸または旋回軸について、自転による回転力を出力するための出力手段と、この出力手段により出力された回転力を回生する回生手段とを備える構成としてもよい。
【0018】
上記構成によれば、二つの駆動軸に対し個別の駆動源から駆動力を付与させる場合、回転駆動力に差違を生じる場合に、その差違によって生じる捻れを旋回軸の自転として解消するのであるが、その自転によるロスを回生手段によって回生させることができる。また、旋回軸が自転する状況下においては中間軸も自転することとなり、この中間軸の自転の回転力をも回生させることが可能となる。なお、回生手段としては、例えばダイナモを使用することができ、その際の出力手段としては、旋回軸の自転による回転力の伝達を受ける回転子がある。なお、ダイナモにより発電した電気は、駆動輪の内部で消費させるほか、駆動輪から外部に送ることも可能である。
【0019】
他方、車輪に係る本発明は、前記各構成の回転駆動力伝達機構を備える車輪であって、該回転駆動力伝達機構がハブに内蔵されていることを特徴するものである。
【0020】
上記構成によれば、ハブと車輪(リム)とをスポーク等で一体化される車輪において、当該車輪を構成するハブが駆動力伝達機構を備えることとなり、当該ハブの構造を変更することにより、既存の車輪を用いた新規な車輪を構成することができる。従って、当該車輪は、前記駆動力伝達機構により複数の駆動源が統合されつつ回転駆動されることから、比較的小型の構造によって、高トルクでありながら高速回転が可能となる。
【0021】
また、移動体に係る本発明は、上記構成の車輪を有する移動体であって、駆動源を搭載する車体に支持される駆動車輪の少なくとも1個が前記車輪であることを特徴とするものである。
【0022】
上記構成により、車輪の駆動によって移動する移動体の駆動輪について、前記駆動力伝達機構による駆動力の伝達を可能とするものとすることができる。この場合、小型の駆動源によって大きい出力を得ることができ、構造全体としても小型でありながら、高トルクかつ高速回転を実現するものである。そして、これを車体に搭載するとしても、移動体全体の小型化・軽量化を可能にする。なお、移動体の駆動用の車輪に対する駆動力は、駆動源の出力調整によることとなり、移動体の方向変換時における両輪の回転速度を容易に操作することができる。これは、駆動源の制御によって自動化が可能となるものであり、パワーアシスト機能による制御をも可能にすることとなる。
【0023】
さらに、平行二輪走行体に係る本発明は、前記構成の車輪を有する平行二輪走行体であって、駆動源を搭載する車体と、この車体の左右両側に支持される各1個の前記車輪とを備え、前記車体の重心が前記車輪の車軸よりも下位に調整されていることを特徴とするものである。
【0024】
上記構成によれば、車体の重心が左右両側に配置される平行な二輪の車軸よりも下方に位置するため、停止状態で安定することとなり、二輪走行が可能となる。また、二輪走行可能であることから、走行体全体を小型にすることができる。
【0025】
上記構成の平行二輪走行体に係る発明において、前記車体には、前記車輪の車軸よりも下方において、前記車輪による直進方向に向かって、進退移動する錘が搭載される構成とすることができる。
【0026】
上記構成によれば、走行体に加速度が作用する場合、車体が前後方向に傾倒することを抑制することができる。すなわち、車体の慣性力により、加速時には後方へ、減速時には前方へ傾倒するような現象が発現するが、錘を直進方向の前後に移動することにより、傾倒する車体の重心を前後方向へ移動し、車体の直立状態を維持させることができるのである。なお、前記車輪は高回転かつ高トルクの駆動力が伝達され得ることから、加速時における加速度が比較的大きく作用するため、車体の傾倒は皆無ではないとしても、錘の移動により車体を直立状態へ復元させることが容易となる。
【0027】
上記構成の平行二輪走行体に係る発明において、前記車体には、前記車輪の車軸近傍において、前記車輪による直進方向に向かって、進退移動する第2の錘をさらに搭載するものであり、これら二種類の錘の総重量により重心を前記車軸よりも下位に設定されているように構成することができる。
【0028】
上記構成の場合には、車軸近傍における第2の錘が移動することにより、車体の重心を大きく前後方向へ移動させることができる。この重心の移動により車体に対し、傾倒に対する反力を早期に作用させることができる。これは、下位の錘(これを第1の錘と称する)による重心の高さよりも、第2の錘の配置による重心の位置が上方となり、この重心を前後方向へ移動させることにより、車軸を中心とする車体の回転モーメントを大きくすることができるからである。なお、第1および第2の錘によって設定される車体の重心は、車軸よりも下方とすることによって、二輪によって支持される車体の姿勢を安定させることができる。
【0029】
また、上記それぞれのように構成された各平行二輪走行体に係る発明において、前記車体は、少なくとも前面および後面が外方に膨出する曲面で構成され、前記錘が前後両面の間に設けられたレールに沿って進退移動するように構成することができる。
【0030】
上記構成によれば、錘が進退可能な領域を、前後両面を膨出させた曲面によって確保し得ることとなる。また、車体の外側表面に曲面部分が存在することにより、威圧感を緩和することができる。これにより、誘導型(散歩などを誘導)として使用する場合に、利用者に安心感を与えることができる。
【0031】
さらに、上記構成の平行二輪走行体に係る発明において、前記車体は、前記前面および後面を構成する曲面に連続するように外方に膨出させた曲面によって左右両面の一部が構成され、前記車輪が回転する領域を除き、外部表面の横断面形状が円形または楕円形とするように構成してもよい。
【0032】
上記構成の場合には、前後両面に加えて左右両面にも曲面部分が存在することから、全体として柔らかな外観を呈することとなる。車輪が回転する領域においては、平面部分が存在するが、当該部分は車輪の存在によって容易に視認できるものではなく、視認する範囲において、全体を球体または楕円体に近似する走行体とすることができる。
【0033】
そこで、上記に示した曲面によって形成される車体を有する平行二輪走行体に係る発明において、前記車体は、さらに、上端の所定範囲が部分的に分離された頂上部と、該頂上部を除く本体部とで構成され、前記本体部には、前記錘を進退移動させるためのレールが前後面の間に設けられており、前記頂上部は、前記本体部に支持され、昇降および回転が可能に設けられる構成とすることができる。
【0034】
上記構成の場合には、頂上部が、本体部から分離しており、錘の進退移動は本体部の内部において可能となっており、頂上部が昇降することにより、形態を変化させることができる。この形態変化は、平行二輪走行体の作動時と停止時とで変化させるものとすれば、当該走行体の状態を目視で判断することができる。また、頂上部が回転可能であることから、当該頂上部にデザインを施すことにより頭部のような形態とすることも可能となる。なお、頂上部を含めた全体形状において、前後両面が曲面であり、また、左右両面を曲面にすることによって、頂上部を下降させることによって連続的な曲面形状とすることも可能となる。
【0035】
さらに、上記構成の平行二輪走行体に係る発明において、前記本体部の上面には、前記頂上部の内側に配置される物体検出手段を備え、該頂上部が上昇するとき、該物体検出手段が該頂上部の外側に対する検知機能を可能にするものとすることができる。
【0036】
上記構成によれば、頂上部が上昇した形態において、物体検出手段により、周辺に存在する物体の検出を可能にし、例えば、監視対象物を物体検出手段により検出させることにより、その位置や距離などを検知することが可能となる。従って、監視対象となる人物について、追尾型走行体として使用する場合には、監視対象の人物との間に所定の距離を維持しつつ追尾することが可能となり、誘導型走行体として使用する場合には、監視対象の人物が誘導に沿って同行していることを確認することができる。これらの追尾型または誘導型の走行体として使用する場合、物体検出手段が全方向(360°)に対する物体の検出を可能にすることにより、前後近傍のみならず左右近傍において、追尾または誘導することも可能である。また、同時に移動に障害となる物体の存在を検知し、これを避けて移動することも可能となる。なお、物体検出手段としては、赤外線センサ、レーザセンサ、超音波センサなどを使用することができる。
【0037】
さらに、頂上部を有する構成の上記平行二輪走行体に係る発明において、前記本体部の正面側表面および前記頂上部の表面は、それぞれ個別の撮影手段を備える構成とすることができる。
【0038】
上記構成の場合には、本体部正面に設置する撮影手段によって、進行方向前方の状態を撮影することができるとともに、頂上部に設置する撮影手段により、この頂上部を回転させることによって進行方向とは異なる方向の状態を撮影することができる。さらに、物体検出手段を備える場合には、監視対象物の方向を検出することにより、監視対象物の状態を撮影することができる。例えば、留守中の室内監視用として使用する場合には、侵入者(不審者)の容姿を撮影することができ、幼児または高齢者の監視用として使用する場合は、移動中の幼児や高齢者の状態を撮影することができる。このような構成において、通信手段を備えれば、監視映像を離れた場所で視聴することも可能となる。
【発明の効果】
【0039】
回転駆動力伝達機構に係る本発明によれば、二つの駆動軸に対して異なる複数(二つ)の駆動源から個別に駆動力が付与されることによって、当該複数(二つ)の駆動源による駆動力を合わせた出力を得ることができることとなり、各駆動源は比較的小型であるとしても、二つを合わせることにより高回転かつ高トルクの駆動力を出力させることができる。
【0040】
また、複数(二つ)の駆動源によって二つの駆動軸に回転駆動力を付与する際に、相互の駆動力が異なる場合であっても、旋回軸が自転可能であるから、最終的に旋回軸に作用する捻れを解消することができるうえ、当該旋回軸の自転を出力として回生手段により回生させることにより、省エネ化を可能にするものとなる。
【0041】
車輪に係る本発明によれば、上記のように小型の駆動源を使用しつつ高回転かつ高トルクの駆動力によって駆動可能な構成となるため、各種の移動体における駆動輪として利用可能となる。
【0042】
そして、移動体に係る本発明によれば、小型の駆動源を搭載することによって、高回転かつ高トルクの駆動輪を有する構成となることから、移動体の軽量化とともに、重量物を搭載しつつ勾配のある上り坂を移動し、また適当な速度による移動を可能にすることができる。
【0043】
また、前記のように高回転かつ高トルクの駆動力によって駆動可能な車輪を左右両側に設けた平行二輪走行体においては、二つの車輪の中間に車体を有する構成であるから、少なくとも四輪による走行体に比較して小型なものとなり得る。また、二輪がともに駆動輪である場合には、車体の姿勢が前後方向に傾倒することがあるが、重心を車軸よりも下方とし、さらに、前後方向へ進退移動する錘を備えることにより、この錘の移動によってバランスを維持させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態の概略を示すものである。この図に示されるように、本実施形態は、駆動輪1のハブ2において、モータ等の駆動源3,4による回転駆動力の伝達を受け、当該駆動輪1を回転させる機構である。本実施形態では、回転駆動力伝達機構が回転体としてのハブ2に装備され、このハブ2を備える車輪(駆動輪)1を例示するものである。駆動輪1とハブ2とが個別に設けられていない場合には、駆動輪1を回転体とみなしてもよいが、ここではハブ2を個別に設けた場合を例示して説明する。
【0046】
駆動輪1としては一般的な車輪が使用され、リム11の外周にゴム製のタイヤ12が設けられている。このリム11は、前記ハブ2との間を連結するためのリソッドスポーク13が設けられており、ハブ2の回転がリソッドスポーク13を介して駆動輪1の全体に伝達される構成となっている。
【0047】
そこで、ハブ2は、円筒状の周壁部21と、その円筒の両端を閉塞する円板部22,23によって、全体として中空の円柱状に形成されており、その中空内部がギアボックスとして機能させている。そして、中空円柱状のハブ2は、周壁21の円筒状の軸線(以下、ハブの中心線という場合がある)を中心に回転駆動されるものである。そのため、ハブ2の中心線に沿った枢軸が、ハブ2の主軸として回転自在に設けられている。
【0048】
枢軸は中心軸5と円筒軸7とで構成され、両軸5,7はともに、回転自在であって、駆動源3,4から伝達される駆動力をハブ2に直接伝達するものではなく、この枢軸5,7の近傍に偏心した位置に設けられる旋回軸6が、枢軸5,7の周囲を旋回することによって、ハブ2に回転駆動力を生じさせるものである。このような旋回を生じさせるために、枢軸の中心には中心軸5が設けられ、これと同軸の円筒軸7が、当該中心軸5を挿通した状態で設けられている。また、ハブ2の内部には、後述する複数の歯車51,52,53,71,72によって回転状態が制限され、中心軸5および円筒軸7に伝達される回転駆動力を利用してハブ2を回転させるようにしている。
【0049】
中心軸5および円筒軸7に対して回転駆動力を付与するために、駆動車輪1の外方に駆動力付与部8が設置されている。駆動力付与部8には、前述のモータ3,4と、このモータ3,4の回転軸に設けられた傘歯車31,41と、この傘歯車31,41に噛合して、回転駆動力を所定方向の回転力に変化するための傘歯車81,82が設けられている。この二つの傘歯車81,82のうち、一方の歯車81が中心軸5に固着され、他方の歯車82が円筒軸7に固着されている。両軸5,7は、同軸において個別の(二つの異なる)モータ3,4によって回転駆動されるものである。従って、中心軸5が第1の駆動軸であり、円筒軸7が第2の駆動軸として機能するものである。なお、これらの両軸5,7は、同じ回転方向に駆動されるものであり、その回転力を統合するために、複数の歯車(本実施形態では平歯車)51,52,53,71,72が設けられている。
【0050】
ここで、上記ハブ2および上記駆動力付与部8による駆動力を伝達するための構造について詳述する。
図2は、ハブ2および駆動力付与部8の部分断面を示す図であり、この図に示されるように駆動力付与部8は、箱形のケーシング80に設けられ、ハブ2の回転軸(中心軸および円筒軸)5,7は、ケーシング80にベアリングを介して回転自在に支持されている。車両における車輪の駆動のように車体を有する場合には、車体にケーシング80が設置され、当該車体によって支持される回転軸(中心軸および円筒軸)5,7が、車輪1を支持しつつ回転駆動するものである。
【0051】
二つのモータ3,4のうち、一方のモータ3が中心軸5に回転駆動力を付与するためのものであり、他方のモータ4は円筒軸7に回転駆動力を付与するものである。これらのモータ3,4は、駆動に所望される出力の1/2のものが使用されており、両モータ3,4が統合されることにより定格出力を発揮させている。例えば、300Wの定格出力が必要な場合には、各モータ3,4の定格出力を150Wとするのである。従って、1台のモータで所望出力を得る場合に比べて遙かに小型のモータが使用されているのである。なお、モータ3,4による駆動力の伝達方法は、プーリおよびベルトによる伝達でもよいが、本実施形態では傘歯車31,41,81,82によって、対向して設けられるモータ3,4による駆動力を同軸の二つの回転軸5,7に伝達させている。また、モータ3,4をサーボモータで構成し、駆動力が伝達される回転軸5,7の回転数をエンコーダ(ロータリエンコーダまたはリニアエンコーダなど)により取得しつつ制御させる構成としてもよい。
【0052】
中心軸5と円筒軸7との間には、ベアリングが介在されており、円筒軸7がケーシング80に支持されていることから、中心軸5も間接的にケーシング80に支持された状態となっている。なお、円筒軸7は、ハブ2に突設(突出状態で一体化)された軸受部24にベアリングを介して支持され、軸受部24が、ケーシング80に貫設された貫通孔に挿通された状態で、ケーシング80の壁部にベアリングを介在させつつ締着部9によってネジ止めさるものである。従って、車輪1の車軸は、前記軸受部24、中心軸5および円筒軸7で形成され、その全体が同心に配置されることによって構成されたものである。中心軸5と円筒軸7は、同じ方向に回転するものであるが、ベアリングを介在することにより、回転数(回転速度)に差違を有する場合においても、その回転数(回転速度)によって回転駆動力を伝達できるようにしている。
【0053】
ハブ2の内部には、中心軸5に固着された第1の駆動歯車51と、旋回軸6に固着された第1の出力歯車53が設けられ、さらに、第1の駆動歯車51の回転方向を逆転させつつ第1の出力歯車53に噛合する中間歯車52(中間軸50に支持されている(
図1参照))が設けられている。また、円筒軸7に固着された第2の駆動歯車71と、この駆動歯車71に噛合する状態で旋回軸6に固着された第2の出力歯車72が設けられている。従って、第1および第2の出力歯車53,72は同じ旋回軸6に固着され、二種類の駆動力が同時に伝達され得るものとなっている。
【0054】
二種類の駆動軸5,7の駆動力が同時に単一の旋回軸6に伝達できるように、また、枢軸5,7の周囲を旋回できるように、旋回軸6の軸線は、駆動軸(枢軸)5,7の軸線と平行な状態で設けられている。旋回軸6には、二種類の出力歯車53,72が固着されており、一方の出力歯車53はモータ3から伝達される回転方向を反転させているため、二種類の出力歯車53,72は、相互に逆向きへの回転力を旋回軸6に伝達することとなる。この状態において、伝達される回転力(回転数)が同じである場合には、旋回軸6が自転できないこととなる。そして、旋回軸6が自転できない場合には、結果的に各歯車51,52,53,71,72はいずれも回転することができないため、旋回軸6が中心軸5および円筒軸7を中心に旋回することとなる。このときの状態は、中心軸5および円筒軸7(両者による枢軸)が全体の駆動軸としてハブ2を回転している状態に似ているが、この回転駆動力は、旋回軸6がハブ2に作用することによって発揮し得るものである。
【0055】
上記とは異なり、中心軸5と円筒軸7との回転力(回転数)が異なる場合には、その差分だけ旋回軸6が自転することとなる。この旋回軸6の自転は、回転力(回転数)の大きい出力歯車(53または72)の回転方向であり、他方の出力歯車(53または72)の回転方向からは逆転方向となる。そして、逆転方向に回転する出力歯車(53または72)は、第1の駆動歯車51または第2の駆動歯車71との噛合を維持しつつ、その周辺を転動することとなる。
【0056】
このような旋回軸6による駆動力の発生と、旋回軸6の自転との関係をさらに詳細に説明する。
図3〜
図5は、5つの歯車51,52,53,71,72の回転の状態とハブ2の回転の状態を示すものである。各図ともに、(a)は駆動力付与部8による駆動源からハブ2への駆動力の伝達状態を示し、(b)は5つの歯車51,52,53,71,72の回転状態を示す。なお、説明の都合上、一方のモータ(3または4)のみが作動する場合を説明し、その後に両方のモータ3,4が同時に作動する場合を説明する。
【0057】
まず、
図3は、中心軸5に対するモータ3のみが作動する場合を示す。この状況では、第2の駆動歯車71は回転せず、第1の駆動歯車51のみが回転する。この第1の駆動歯車51の回転は、中間歯車42が回転しなければ、すなわち、旋回軸6が自転しなければ、各歯車52,53,72とともに旋回軸6を軸回りに旋回させる駆動力として作用する。しかし、第2の駆動歯車71が回転していないことから、旋回軸6は自転することとなる。つまり、第1の駆動歯車51の回転は、中間歯車52を介して回転方向を反転させ、第1の出力歯車53に伝達されるが、第2の出力歯車72は駆動されていないため、旋回軸6は第1の出力歯車53の回転に伴って自転することとなる。この旋回軸6を介して第2の出力歯車72を逆向き(駆動歯車71の作動による回転方向とは逆向き)に回転させることとなるのである。
【0058】
このような作動状態において、旋回軸6の自転は、第2の出力歯車72を回転させることであるが、その回転は、第2の出力歯車72が、第2の駆動歯車71(円筒軸7)の周囲を転動することによって実現し得る。つまり、旋回軸6は、中心軸5の軸回りを旋回しながら自転し、旋回によってハブ2に対する回転力を生じさせつつ、自転によって第2の出力歯車72を駆動歯車71の周囲を転動させているのである。そして、この旋回軸6の自転は、結果的には、第1の駆動歯車51(中心軸5)の回りを中間歯車52が転動するように作用し、中心軸5の回転力を減殺するものである。すなわち、中間歯車52の転動方向は、第2の出力歯車72の転動方向とは逆向きであり、第1の駆動歯車51の回転方向に逆行することとなるのである。なお、この中間歯車52の転動により中間軸50は、旋回軸6と同じ旋回軌道となるものである。
【0059】
従って、第1の駆動歯車51の回転力(回転数)の一部は旋回軸6を旋回させるように作用するが、残りの回転力(回転数)は、旋回軸6が自転できる範囲において、第1の駆動歯車51の回転方向とは逆行する方向への転動(中間歯車52の転動)することによって減殺されるのである。そこで、駆動歯車51,71と出力歯車53,72との歯車比が同じである場合には、一方のモータ3による駆動力は、1/2が旋回軸6の旋回(ハブ2の回転)に使用されるが、1/2は旋回軸6の自転に使用されることとなる。
【0060】
このような駆動力の伝達は、円筒軸7のみを回転させる場合も同様である。
図4は、一方のモータ4のみを作動させ、円筒軸7を介して第2の駆動歯車71のみを回転させる場合を示すものである。この図に示されるように、第2の駆動歯車71の回転力は、第2の出力歯車72を介して旋回軸6を旋回する方向へ伝達されるが、旋回軸6が自転できる状態であることから、第2の出力歯車72に伝達された駆動力は、旋回軸6を旋回させると同時に自転させるように作用する。このときの旋回軸6の自転は、中間歯車52が第1の駆動歯車51の周囲を転動することによって実現するものであり、この中間歯車52の転動による回転によって、第1の出力歯車53が回転できる範囲で旋回軸6が自転するのである。
【0061】
この場合においても、駆動力の一部は旋回に使用されるが残りは自転に使用されることとなり、同じギア比であれば、1/2ずつが旋回と自転に分離されることとなる。
【0062】
そこで、両モータ3,4が作動する場合には、旋回軸6の自転によって使用されない駆動力を小さくし、しかも両モータ3,4の駆動力を統合させることができる。すなわち、上述のように、両モータ3,4のいずれか一方を作動させた場合であっても、旋回軸6が自転しなければ、中心軸5または円筒軸7の回転方向に沿って旋回軸6を旋回させることができる。そして、中心軸5および円筒軸7が同一方向へ回転する場合には、その回転力はともに、旋回軸6に対して、同じ方向への旋回を生じさせることとなるのである。
【0063】
そこで、その詳細を
図5に示す。
図5は、両モータ3,4による両駆動歯車51,71を回転させる状態を示すものである。この図に示されるように、旋回軸6は、第1の駆動歯車51と第2の駆動歯車71との回転駆動力を受けて、第1の出力歯車53と第2の出力歯車72とが相互に逆方向への回転力が付与されている。このときの中心軸5と円筒軸7の回転力(回転数)が同じである場合には、単一の旋回軸6に相反する回転方向へ同一の駆動力が付与されることとなり、旋回軸6の自転が制限されることとなる。また、同時に、中心軸5および円筒軸7の回転方向は同一であることから、旋回軸6および伝達歯車52,53,72は、同時に同じ方向へ旋回することとなり、これらは自転することなく、旋回することによってハブ2に対する回転力を生じさせることとなる。
【0064】
なお、中心軸5と円筒軸7との回転力(回転数)に差違がある場合には、その差分のみが旋回軸6の自転によって解消される。解消されるとは、前述のように駆動歯車51,71の一方に対して軸回りに転動することにより、旋回軸6の自転を許容するということである。この旋回軸6が自転する範囲で、一方に作用する回転力が減殺されることとなるが、両者の回転数が異なることによる伝達歯車52,53,72に対する負荷を低減し、または旋回軸6に対する偶力を発生させないようにしているのである。
【0065】
両モータ3,4から出力される回転数を一致させれば、統合される出力は無駄なく旋回軸6の旋回に消費され得る。そこで、両回転数(回転速度)を一致させるために、モータ3,4を制御すものとしてもよい。また、上記構成に代えて、または上記構成とともに、旋回軸6の自転を回生エネルギとして使用してもよい。旋回軸6の自転は、二つの出力歯車53,72の回転力(回転数)の差違であるから、双方の回転力(回転数)の制御が困難な場合、または制御が不十分な場合において、一種の安全機構として旋回できることが好ましく、しかも、その場合のエネルギを回生させることによりエネルギの無駄な消費を解消させるのである。なお、旋回軸6の自転は、ハブ2との相対的な関係では、単なる回転のみであるから、それを使用してダイナモ等の発電装置による回生などの方法が想定される。
【0066】
回転駆動力伝達機構に係る本実施形態は上記のとおりであることから、第1に、複数の(二つ)の駆動源(モータ)3,4により付与される回転駆動力を同時に旋回軸6に伝達することにより、これらの駆動源3,4の駆動力を統合させるものであるから、減速機を介在させることなく高トルクの回転駆動力を出力でき、かつ減速機が介在されないことからモータ3,4の本来の回転速度に基づく高速回転によって出力させることができる。第2に、使用されるモータ3,4は、所望出力の1/2程度の定格出力を有するものが使用されることから、1台のモータによって所望出力を得る場合に比べて遙かに小型となり得る。第3に、複数(二つ)の駆動源3,4によって付与される回転駆動力(回転数)が、相互に差違を有する場合において、旋回軸6に逆向きの回転力が作用することとなるが、当該旋回軸6が自転することにより、軸そのものに対する捻り力の作用を減殺することができる。第4に、旋回軸6の自転は、単なる回転力(回転数)の調整であるため、そのエネルギのロスを解消するために、旋回軸6の自転を回生手段によって回生させることが可能となる。
【0067】
次に、上記駆動輪(駆動される車輪)を使用する移動体の具体例を説明する。
図6(a)は車椅子の駆動側車輪に回転駆動力伝達機構を適用した例を示し、
図6(b)は、二輪ビークル(特願2014−213574)の車輪に適用した例を示している。
【0068】
図6(a)に示すように、車椅子100に回転駆動力伝達機構を適用する場合には、車椅子100の駆動用として配置される一対の車輪101A,101Bに、前記回転駆動力伝達機構を有するハブ102A,102Bが設けられたものがある。この場合には、両輪101A,101Bのそれぞれに対して、個別に駆動力を付与する駆動力付与部108A,108Bが両車輪101A,101Bの内側近傍に設置されており、この駆動力付与部108A,108Bは車体の一部としてフレームFLによって支持されている。前述のとおり、回転駆動力伝達機構は、複数(二つ)の駆動源(モータ)による回転力を同時に伝達するものであるが、この回転力(回転数)の差違によって、旋回軸が自転するとともに、旋回軸の旋回の状態(速度等)も変化することとなる。そこで、これらの駆動源(モータ)の回転力を制御するための制御装置を制御ボックス110に備える構成としている。制御ボックス110の内部には、モータ駆動のための電源とともに制御装置(パーソナルコンピュータ)が設置され、回転駆動力伝達機構に付与するモータの回転数を制御するとともに、左右の車輪101A,101Bの相互の回転数を制御するものである。左右の車輪101A,101Bの相互の回転数制御とは、直進の場合は同一回転数とし、左右いずれかへ操舵する場合には、回転数に差を設けるように制御することである。
【0069】
同様に、
図6(b)に示すように、二輪ビークル200における一対の車輪201A,201Bのハブ202A,202Bに、前述の回転駆動力伝達機構を備える構成としたものがある。この二輪ビークルは、傾斜地などを上り下りする際に姿勢を制御するためのカウンタウエイトを備えており、上り傾斜においても減速させないためには高回転かつ高トルクの駆動装置が必要となる。そこで、上述の回転駆動力伝達機構を備えることにより、小型の駆動源(モータ)を使用しつつ十分な回転速度およびトルクを発揮させることができる。なお、この駆動源(モータ)は、荷台部分に設置でき、姿勢制御用の制御装置を使用して回転数の制御を行うことができる。
【0070】
さらに、
図7に示すような台車300にも適用することが可能である。この種の台車は、手押し式(手動)の場合もあるが、本実施形態はパワーアシスト機能を搭載する台車としている。すなわち、荷台フレームFLに設置されたグリップGLに圧力センサを内蔵し、この圧力センサによって感知される方向への操作力に応じて、駆動輪301A,301Bを駆動することにより移動に必要な力をアシストするのである。この台車300の駆動輪301A,301Bのハブ302A,302Bに、前述の回転駆動力伝達機構を備える構成とするのである。
【0071】
なお、駆動力付与部308は、制御ボックスとして設置され、内部には、両駆動輪301A,301Bのための二セット分の駆動源(モータ)のほか、前記圧力センサによって検出される操作力に基づく駆動力制御のための制御装置、および電源などが搭載されるものである。
【0072】
移動体に係る本発明の実施形態は上記のとおりであるから、移動体の駆動車輪に前述の回転駆動力伝達機構を使用されることによって、高回転かつ高トルクの駆動力によって移動体を走行させることができる。これは、車椅子100や台車200,300のように、使用時に大重量となる移動体では、高トルクによる回転駆動力が必要となるが、大きい駆動装置を設置することができるスペースが存在しない場合に、小型の駆動源を複数使用することによって大きいトルクを得ることができ、移動体全体を小型に維持しつつ所望の駆動力を発揮させることが可能となる。
【0073】
本発明の本実施形態は以上のとおりであるが、上述の実施形態は本発明の一例を示すものであって、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。従って、本発明の趣旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、移動体としての実施形態は、一対の駆動車輪(両側に各1個)を備えた移動体を例示したが、三輪車のように奇数の車輪を有する移動車のうち、単一の駆動車輪についてのみ回転駆動力伝達機構を有する構成としてもよく、この三輪車の三輪全部または四輪車の四輪全部について回転駆動力伝達機構による駆動輪とする移動体であってもよい。
【0075】
また、駆動源(モータ)からの駆動力の伝達に傘歯車または平歯車を使用した形態のみを例示したが、これらの歯車の形態は適宜変更が可能である。また、モータ3,4から中心軸5および円筒軸7への駆動力の付与には、歯車による伝達に限定されるものではなく、プーリとベルトによって伝達する構成であってもよい。
【0076】
さらに、
図6(b)に示す二輪ビークル200におけるカウンタウエイト(錘)は、車体210の内部に設けられた上下二段の基部220,230の表面上を進退移動させる構成とすることにより、車体210(二輪ビークル200全体)のバランスを維持させることができる。このとき、車体210の重心が車輪201A,201Bの車軸よりも下位に調整されていることが好ましい。
【0077】
そこで、このような錘の移動を可能にしつつ、車体210の内部に格納させるような形態としては、
図8に示すような全体として略球体または略楕円体の車体210とすることができる。この実施形態は、基本的には
図6(b)に示す二輪ビークル(平行二輪走行体)において、車体210を中空としつつ、外部の形状を主として曲面によって構成したものである。
【0078】
図8に示されているように、この車体210の上端部分が本体部240から分離された頂上部250が設けられる構成としている。この頂上部250は、全体として球面の一部によって椀形に構成されたものであり、頂上部250が下降した状態では、本体部240と円滑な曲面で連続し、一体的な形状となる(
図8(a)参照)が、頂上部250が上昇した状態では、本体部240を胴体とし、頂上部250を頭部とするような擬人的な形態となるものである。
【0079】
なお、図示のように、本体部240および頂上部250のいずれもが、複数のパーツを組み合わせる構成とすることができる。
図8において、本体部240および頂上部250の表面に描画されている線は、各パーツの境界線を示している。このように、複数のパーツを組み合わせて構成する場合には、一部のみを交換し、または補修することが可能である。すなわち、図示の形態においては、複数のパーツの一部に映像取得用のカメラ241,251が設置されており、これらのカメラ241,251を設置するか否かは、これらのパーツを使用することによって変更が可能なものとなる。また、本体部240にあっては、パーツの一部を取り除くことにより、内蔵(格納)させる各種の装置の設置または修繕することを可能としている。また、同様に非常停止ボタン242,243の設置についても同様である。本実施形態では、前方および後方の表面に各1個の非常停止ボタン242,243を設ける構成としているが、これらの位置の変更や数を増減する場合には、適宜位置におけるパーツを変更することによって可能となる。
【0080】
ところで、本実施形態は、外部形状の全体が略球体または略楕円体とするものであるが、平行二輪走行体の場合には、車輪201A,201Bを左右両側に配置する関係上、当該車輪201A,201Bが回転する領域においては、当該曲面部分を平面に変更している。また、後述する錘(カウンタウエイト)の進退のための空間を得るために、底部においても平面状としている。その結果、
図9〜
図11に示すように、その一部に平面部が構成されている。
【0081】
なお、
図9は側面図であり、
図10は正面図である。それぞれにおける(a)は頂上部250が下降した状態であり、(b)は頂上部250を上昇させた状態である。また、
図11(a)は平面図であり、
図11(b)は底面図である。
【0082】
これらの各図において示されるように、側面から見た場合には、全体として曲面となっており、全体的に丸みのある柔軟な印象を与えることができる。また、正面や平面から見た状態において、車輪201A,201Bとの位置関係を把握することができるものであるが、車体210の本体部240の左右用側に形成される平面部244,345の外方には車輪201A,201Bが存在するため、全体として、曲面が遮断された印象はなく、やはり全体として丸みのある柔軟な印象を与えることができる。
【0083】
ところで、車体210の本体部240および頂上部250には、それぞれ個別のカメラ241,251が設けられ、このカメラ241,251は、外部の状態を撮影するためのものである。さらに、頂上部250は回転可能としており、この頂上部250の回転により、当該頂上部250に設置されるカメラによる撮影は、進行方向に対し前方に限らず、左右方向や後方の映像をも撮影することができるものとなる。従って、本体部240に設置されるカメラ241によって、常に進行方法の前方を撮影しつつ、頂上部250に設置されるカメラ251によって、任意の方向に向けた映像を撮影することができる。
【0084】
なお、これらのカメラで撮影された映像は、本体部240の内部にHDDを設置し、これに記録させることも可能であり、通信手段を備えることにより、外部へ送信させることも可能である。
【0085】
次に、本実施形態における車体210の内部構造について説明する。
図12は、
図10(b)に示すXII−XII断面図である。なお、図中の切断部端面におけるハッチングは、不明瞭となるため省略している。
【0086】
この
図12に示されているように、車体210の内部は中空としている。そして、その底部246と、この底部246よりも上方には、それぞれ錘(カウンタウエイト)260.270を進退移動させるための基部220,230が設けられている。なお、下位の基部220は底部246によって構成することも可能であるが、本実施形態では、底部246の表面に設置し、底部246と一体的に構成したものとしている。
【0087】
これらの錘(カウンタウエイト)は、両者によって、車体210の全体における重心が、車輪201の車軸280よりも下方となるように調整されている。また、下位の錘(第1の錘)260のみによって車体210の重量バランスを制御してもよいが、重心の移動速度を向上させるために、車軸280の近傍に上位の錘(第2の錘)が設けられている。この場合、図示のように、第2の錘270が移動できる距離が、第1の錘260の移動可能な範囲よりも長くすることにより、重心を広い範囲で移動でき、かつ機敏な重心移動が可能となる。そして、これらの錘260,270は、進行方向(直進する際の移動方向)に対して平行な方向へ進退移動するように設けられている。直進方向と平行な方向へ移動させるのは、平行二輪走行体に加速度(慣性力)が生じる際に、車体210が前後方向に傾くことを解消させるためである。加速度を受けた際に(傾斜した際に)、前後のいずれか一方が上昇するため、その上昇側に錘260,270を移動させて、その上昇を制限させるのである。その上昇に対するカウンタ重量を作用させることから、本願ではカウンタウエイトと称している。なお、これらの錘260,270の移動には、無端縁ベルト261,271をモータ262,272によって循環駆動させることによるものであるが、その詳細は後述する。
【0088】
ところで、
図12には、頂上部250の回転駆動の機構が示されている。車体210の本体部240の上部(頂上部250が分離される部分)の端面290には、本体部240の内部にサーボモータ291が設けられ、その回転軸は、サーボホーン292を介して、頂上部250の中心軸252が連結されている。頂上部250の中心軸252は、サーボホーン292が回転することによる回転駆動力の伝達を受けて回転するものである。従って、サーボモータ291が制御された回転数に応じて回転することにより、設置するカメラ251の向きを360°に自在に変更させることができる。なお、カメラ251のカメラケーブル251aを本体部240の内部に設置するため、サーボモータ291は、1回転させるものとせず、正逆方向へ回転する(回動する)もとしてもよく、この場合には、例えば、正転方向に180°の回転と、逆転方向に180°の回転により、360°の方向変換を可能とする。
【0089】
なお、頂上部250の昇降に際しては、例えば、本体部240の上部端面の一部(中央部)を昇降可能とし、この昇降可能領域にサーボモータ291を設置するような構成により、頂上部250を回転させるための機構の全体を、当該頂上部250とともに昇降させることができる。また、頂上部250の中心軸252の近傍に、赤外線センサ等の物体検出手段253,254(
図10(b))を設けることにより、頂上部250が上昇した状態において、当該赤外線センサ等253,254によって、車体210の周囲における物体の存在を検出させることも可能となる。
【0090】
このような構成とすることにより、頂上部250を上昇させた状態においては、赤外線センサ等253,254により、例えば、監視対象物(人物)を検出させることができ、これにより、その人物との相対的な位置関係(方向および距離など)を検知し、その人物に対して、追尾しまたは誘導するような走行が可能となる。そして、例えば、追尾型または誘導型の走行体として使用する場合には、車体210の周辺(360°)のうち、任意の方向に対する映像を撮影することができ、進行方向を本体部240のカメラ241で撮影しつつ、追尾または誘導する対象の人物の様子を撮影することも可能となる。
【0091】
そして、頂上部250が昇降可能な形態において、当該頂上部250の回転や赤外線センサ等253,354の作動は、当該頂上部250が上昇している状態において可能となる。そこで、前述のように、本体部240を胴体、頂上部250を頭部と見立てた場合には、頂上部250が上昇するとき(頭部を上昇させたとき)が、走行体の作動状態であることを示し、下降時(頭部が胴体と一体となって丸まっている状態)では、作動していないことを示すものとなる。これにより、作動の状態を容易に認知させることが可能となる。
【0092】
次に、錘260,270の進退移動の状態について説明する。なお、第1の錘260および第2の錘270は同様の構造によるため、第1の錘(単に錘と称する)260を例示して説明する。錘260の進退移動させるための構成を
図13に示す。
【0093】
この
図13に示されているように、錘260は、進退方向に対して平行な二本のスライダ263,264の上部に摺動可能に設けられている。なお、スライダ263,264に沿って摺動するために、スライダ263,264には長尺な凸部が形成され、錘260の底面には、この凸部に嵌合する凹溝が設けられている。この二本のスライダ263,264の中間の位置において、長手方向の両端近傍にそれぞれプーリ265,266が設けられており、両方のプーリ265,266に無端縁のベルト(ギアベルト)261が懸架されている。そして、このベルト261の一部に設けられているベルトストッパ267が錘260と連結されており、従って、ベルト261が循環移動することにより、ベルトストッパ267が進退方向に移動し、これに伴って錘260がスライダ263の表面を摺動して進退方向に移動するものである。なお、プーリ265,266の一方(266)はモータ262によって回転駆動されるものであるが、他方(265)は従動側として回転自在な状態で設けられている。また、モータ262は、サーボモータを使用し、回転方向および回転角等が制御されつつ駆動側プーリ266を駆動するものである。
【0094】
平行二輪走行体にかかる本実施形態は、上記のような構成であるから、前述の回転駆動力伝達機構による左右両方の駆動輪201A,201Bによって、高回転かつ高トルクによる駆動力を得て、高速に移動できるとともに、上り坂での走行も可能となる。そのうえ、車体210の頂上部250を上昇させた状態において、赤外線センサ等253,254によって周辺の状況(監視対象物の存在等)を検知しつつ走行させることができる。また、頂上部250の回動を制御することにより、カメラ251による周辺の映像を取得することもできる。
【0095】
また、駆動輪201A,201Bによって走行する平行二輪走行体200は、内蔵する錘260,270を適宜移動させることにより、姿勢を維持しつつ、走行させることができる。なお、この錘の移動の状態を工夫することにより、走行時のみならず停止時においても、故意に車体210を傾斜させることができる。そして、車体210を傾斜させつつ頂上部250を回転させることにより、障害物を避けるように、カメラ251の位置および向きを調整することも可能となる。
【0096】
なお、錘260,270の移動に際しては、各基部220,230に傾斜センサが設置され、基部220,230の傾斜角に応じて、錘260,270の進退移動を制御するものである。そして、そのためのモータ262,272の作動、また、頂上部250の昇降および回転させるためのモータ291などの作動は、前記回転駆動力伝達機構におけるモータ3,4とともに、制御部によって制御され、この制御部は、車体210の底面などの空間を利用して設置されるものである。
【0097】
また、本実施形態においては、各モータを駆動するためのバッテリを特に示していないが、これは、錘260,270としてバッテリを使用したためである。すなわち、本実施形態の錘260,270は、バッテリケースであって、その内部にバッテリが搭載される構成としている。これに代えて、錘260,270とは別にバッテリを搭載する構成としてもよい。