(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-203669(P2017-203669A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20171020BHJP
C23C 18/31 20060101ALI20171020BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20171020BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
C23C18/31 E
G01N21/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-95007(P2016-95007)
(22)【出願日】2016年5月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000150202
【氏名又は名称】株式会社中央製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野 泰
(72)【発明者】
【氏名】小崎 崇
【テーマコード(参考)】
2G059
4K022
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059CC03
2G059DD12
2G059DD13
2G059EE01
2G059GG02
2G059GG05
2G059JJ11
2G059KK01
2G059KK03
2G059MM18
2G059NN05
4K022DA01
4K022DB28
(57)【要約】
【課題】 駆動電流の増減に対する光の強度の増減率が投光角度によって異なるLEDを使用してもその影響を受けることがなく、フローセルの外表面に結露して測定結果に誤差を生じることのない、無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置を提供する。
【解決手段】
無電解めっき液が導かれるフローセル1の透過光を受光する第一のフォトセンサー3と、光源であるLED2が発光する光を受光する第二のフォトセンサー4とを、第一のフォトセンサー3の光軸と第二のフォトセンサー4の光軸とがLED2先端のレンズの焦点付近を通り、第一のフォトセンサー3の光軸とLED2の光軸との間の角度と、第二のフォトセンサー4の光軸とLED2の光軸との間の角度とが同一になるように配置した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解めっき液の金属イオン濃度を吸光光度法により測定する無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置であって、無電解めっき液が導かれるフローセルの透過光を受光する第一のフォトセンサーと、光源であるLEDが発光する光を受光する第二のフォトセンサーとを、第一のフォトセンサーの光軸と第二のフォトセンサーの光軸とがLED先端のレンズの焦点付近を通り、第一のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度と、第二のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度とが同一になるように配置したことを特徴とする無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置。
【請求項2】
第一のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度と、第二のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度とを、LEDの光の強度が光軸方向の強度の80%以上となる方向の角度としたことを特徴とする請求項1に記載の無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置。
【請求項3】
フローセルの第一のフォトセンサーの光軸が通る面の外表面に親水性の塗膜を施したことを特徴とする請求項1または2に記載の無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸光光度法による無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無電解ニッケルめっき等の無電解めっきでは、めっき液中の金属イオンがワーク金属の触媒還元反応によりワーク表面に金属として析出し、それにつれて金属イオン濃度、還元剤濃度、pH等が徐々に低下して行く。そのため、めっき液をサンプリングして金属イオン濃度を測定し、めっき液中の金属イオン濃度等を常に定められた値に保つようにめっき液の管理が行われており、その金属イオン濃度は吸光光度法による例えば特許文献1に示されるような方法で測定されている。
【0003】
この特許文献1に示されるのは、無電解めっき液の金属イオン濃度を吸光光度法により測定する無電解めっき液の金属イオン濃度測定方法であって、実使用時の定常の最高金属イオン濃度以下の場合に無電解めっき液が導かれるフローセルの透過光を受光するフォトセンサーの出力が光源からの投光量を検出するフォトセンサーの出力より大きく、最大出力近くになるようにしておき、フローセルの透過光を受光するフォトセンサーの出力と、光源からの投光量を検出するフォトセンサーの出力とを比較して大きい方の信号を選択し、選択された信号が一定に保たれるように光源の出力を制御して測定するものである。
【0004】
従来、この特許文献1に示されるような方法により金属イオン濃度を測定する無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置の光学系は
図4及び
図5に示されるように構成されており、フローセル1を挟んで光源であるLED2とフローセル1の透過光を受光する第一のフォトセンサー3が対向して配置され、LED2からの投光量を検出する第二のフォトセンサー4がLED2の近傍の側方に配置されている。そして、これらのフローセル1、LED2、第一のフォトセンサー3、第二のフォトセンサー4はこのような位置関係を保つようにブロック状の基体5に設けた孔に挿入して固定されている。
【0005】
吸光光度法ではフローセルすなわち測定対象のめっき液を透過した後の透過光の強度が十分に大きいことが好ましいので、LEDには強い光を出すものが使用されている。こうした強い光を出すLEDは先端がレンズ形状に成型されてレンズの焦点に相当する位置付近にLEDのチップが置かれており、光軸方向で光の強度が最も大きく、光軸から外れた方向では光の強度が減少する強い指向特性を有している。
図6はそうしたLEDの指向特性の一例であって、光軸から外れる角度と光の強度の関係を表したものである。
図4及び
図5に示されるように光学系が構成される従来の金属イオン濃度測定装置では、第一のフォトセンサー3がLED2の光軸方向すなわち光軸から角度0度の方向に、第二のフォトセンサー4が90度の方向にそれぞれ配置されている。
【0006】
この測定方法では、フローセル1の透過光を受光する第一のフォトセンサー3の出力と、LED2からの投光量を検出する第二のフォトセンサー4の出力とを比較して大きい方の信号を選択し、選択された信号の大きさが一定に保たれるようにLED2の光出力を制御しており、LED2の光出力はLED2の駆動電流を増減させて制御される。ところがLED2の駆動電流を変化させたとき、指向特性の強いLEDでは駆動電流の増減に対する光の強度の増減率が投光角度によって異なることがあり、そうした場合にはフローセル1方向と第二のフォトセンサー4方向とで光の強度の増減率が異なることとなって測定結果に誤差を生じるという問題があった。
【0007】
また、通常このようなフローセル1等が固定された基体5は図示しない筐体に収納して外気と遮断し、筐体内部を不活性ガスや乾燥した空気で満たすようにしているが、経年変化や温度サイクルによって筐体内部に外気が侵入することがある。外気温が高い場合には、筐体内部やフローセル1等の温度が上昇して測定のためフローセル1に流される冷却された無電解めっき液との間に温度差が生じることとなり、侵入した外気に含まれる水分がフローセル1の外表面に結露することがある。筐体の容積は小さく、侵入する水分も微量であるが、装置は静止しているのでフローセル1の外表面に結露すると容易に消滅せず、フローセル1の外表面で光の透過を妨げたり光の経路を曲げたりして光の透過量を減少させ、測定結果に誤差を生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3753815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、駆動電流の増減に対する光の強度の増減率が投光角度によって異なるLEDを使用してもその影響を受けることがなく、フローセルの外表面に結露して測定結果に誤差を生じることのない、無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は上記の目的を達成するために、無電解めっき液の金属イオン濃度を吸光光度法により測定する無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置であって、無電解めっき液が導かれるフローセルの透過光を受光する第一のフォトセンサーと、光源であるLEDが発光する光を受光する第二のフォトセンサーとを、第一のフォトセンサーの光軸と第二のフォトセンサーの光軸とがLED先端のレンズの焦点付近を通り、第一のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度と、第二のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度とが同一になるように配置したものである。ここにおいて、第一のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度と、第二のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度とを、LEDの光の強度が光軸方向の強度の80%以上となる方向の角度とすることが好ましく、フローセルの第一のフォトセンサーの光軸が通る面の外表面に親水性の塗膜を施すことが好ましい。
【0011】
上記の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、第一のフォトセンサーの光軸と第二のフォトセンサーの光軸とがLED先端のレンズの焦点付近を通り、第一のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸の間の角度と、第二のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸の間の角度とが同一になるように第一のフォトセンサー及び第二のフォトセンサーが配置してあるので、LEDからの第一のフォトセンサー方向への光の強度と第二のフォトセンサー方向への光の強度とが同一になり、LEDの駆動電流の増減に対する第一のフォトセンサー方向への光の強度の増減率と第二のフォトセンサー方向への光の強度の増減率に大きな差を生じることがない。
【0012】
第一のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度と、第二のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度とを、LEDの光の強度が光軸方向の強度の80%以上となる方向の角度とした場合には、第一のフォトセンサー及び第二のフォトセンサーに充分な強度の光が到達することになる。さらに、フローセルの外表面に親水性の塗膜を施した場合には、塗膜がない場合や撥水性の塗膜を施した場合のように水滴状の結露を生じることがなく、光の透過を妨げたり光の経路を曲げたりして光の透過量を減少させることがない。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたたように、本発明の無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置によれば、LEDからの第一のフォトセンサー方向への光の強度と第二のフォトセンサー方向への光の強度が同一になり、LEDの駆動電流の増減に対する両方向への光の強度の増減率も大差ないので測定結果に誤差を生じること少ない利点がある。第一のフォトセンサー及び第二のフォトセンサーの光軸とLEDの光軸との間の角度をLEDの光の強度が光軸方向の強度の80%以上となる方向の角度とした場合には、第一のフォトセンサー及び第二のフォトセンサーに充分な強度の光が到達し、測定結果に誤差を生じることがない利点がある。また、フローセルに親水性の塗膜を施した場合には、フローセル外表面に水滴状の結露を生じることがないので測定結果に誤差を生じない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置の光学系の構成を示す横断平面図である。
【
図2】本発明の無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置の光学系の構成を示す縦断正面図である。
【
図3】本発明の無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】従来の無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置の光学系の構成を示す横断平面図である。
【
図5】従来の無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置の光学系の構成を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0016】
図において、1は無電解めっき液が導かれるフローセルであって、フローセル1の一方側にはLED2が、他方側にはフローセル1の透過光を受光する第一のフォトセンサー3がそれぞれ配置してあり、フローセル1の近傍にはLED2が発する光を受光する第二のフォトセンサー4が配置してある。ここにおいて、第一のフォトセンサー3及び第二のフォトセンサー4の光軸は共にLED2先端のレンズの焦点付近を通り、それぞれLED2の光軸と同一の角度αで交差するように配置してある。そして、これらのフローセル1、LED2、第一のフォトセンサー3、第二のフォトセンサー4は上記のような位置関係を保つようにブロック状の基体5に設けた孔に挿入して固定し、光学系が構成してある。また、図示していないがフローセル1の第一のフォトセンサー3の光軸が通る面の外表面には親水性の塗膜が施してあり、このように構成した光学系は図示しない筐体に収納してある。
【0017】
この角度αは、LED2の光の強度が光軸方向の強度の80%以上となる方向の角度とすることが好ましい。高い測定精度を得るためには第一のフォトセンサー3及び第二のフォトセンサー4に充分な強度の光が到達することが好ましく、本願発明者は光軸方向の強度の80%以上の強度であれば充分な測定精度が得られることを確認している。多くのLEDでは、その光軸方向の光の強度に対して光の強度が80%以上となる方向の角度が15度程度であるので、第一のフォトセンサー3及び第二のフォトセンサー4はその光軸の角度がLED2の光軸に対して15度以内になるように配置するのが好ましいということになる。
【0018】
第一のフォトセンサー3及び第二のフォトセンサー4からは受光した光の強度に比例した電流信号が出力されるので、それぞれ第一の変換器6及び第二の変換器7によって電圧信号に変換し、第一の変換器6及び第二の変換器7の出力を比較器8及びCPU9に入力してある。これらの第一の変換器6及び第二の変換器7の出力は、第一の変換器6の出力Aがフローセル1の透過光の強度の検出信号であり、第二の変換器7の出力Bが光源であるLED2の発する光の強度の検出信号ということになる。
【0019】
比較器8は第一の変換器6の出力Aと第二の変換器7の出力Bとを比較してその結果によりスイッチ10を駆動し、何れか大きい方の信号を選択して光源駆動装置11に送るようにしてあり、光源駆動装置11はその送られた信号が一定に保たれるようにLED2を駆動する電流を制御するようにしてある。また、CPU9は第一の変換器6及び第二の変換器7の出力から濃度を算出し、その結果を濃度表示装置12により表示するようにしてある。ここにおいて、第一の変換器6及び第二の変換器7の変換率は、測定対象の無電解めっき液が実使用時の定常の最高金属イオン濃度以下の場合に第一の変換器6の出力Aが第二の変換器7の出力Bより大きく、最大出力近くになるように設定してある。
【0020】
このように構成した無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置は以下のように動作する。すなわち、フローセル1に測定対象となる無電解めっき液を流して運転すると、LED2が点灯する。LED2から出た光はフローセル1を通って第一のフォトセンサー3に到達し、同時に第二のフォトセンサー4に到達する。このとき、フローセル1に到達する光の強度と第二のフォトセンサー4に到達する光の強度は同一となる。第一のフォトセンサー3及び第二のフォトセンサー4は受光した光の強度に比例した電流の信号を出力し、第一の変換器6及び第二の変換器7はそれぞれ電圧信号に変換してその信号を比較器8及びCPU9に送る。
【0021】
フローセル1に流される無電解めっき液が実使用時の定常の最高金属イオン濃度以下の場合には、第一の変換器6の出力Aが第二の変換器7の出力Bより大きいので、スイッチ10により第一の変換器6の出力Aが選択されて光源駆動装置11に送られる。光源駆動装置11は第一の変換器6の出力Aが一定になるようにLED2を駆動する電流を制御するので、フローセル1の透過光の強度が一定に保たれることになる。第一の変換器6の出力Aは最大出力近くに保たれることとなり、信号レベルの高い状態で動作するので吸光度の測定誤差を小さくすることができる。
【0022】
また無電解めっき液が定常の最高金属イオン濃度以上となった場合には、第二の変換器7の出力Bが第一の変換器6の出力Aより大きいので第二の変換器7の出力Bが選択され、光源駆動装置11は第二の変換器7の出力Bが一定になるようにLED2を駆動する電流を制御する。これによりLED2の発光強度が一定に保たれることになり、第二のフォトセンサー4に到達する光の強度が過大になることがないので第二のフォトセンサー4が飽和することがなく、測定回路のダイナミックレンジを有効に活用することができ、実使用時の測定精度を向上させることができる。
【0023】
以上説明したように、本発明の無電解めっき液の金属イオン濃度測定装置によれば、第一のフォトセンサー3の光軸と第二のフォトセンサー4の光軸とがLED2先端のレンズの焦点付近を通り、第一のフォトセンサー3の光軸とLED2の光軸の間の角度と、第二のフォトセンサー4の光軸とLED2の光軸の間の角度とが同一になるように第一のフォトセンサー3及び第二のフォトセンサー4が配置してあるので、LED2からの第一のフォトセンサー3方向への光の強度と第二のフォトセンサー4方向への光の強度が同一になり、LED2の駆動電流の増減に対する両方向への光の強度の増減率に大きな差を生じることはない。
【0024】
また、第一のフォトセンサー3の光軸とLED2の光軸との間の角度と、第二のフォトセンサー4の光軸とLED2の光軸との間の角度とを、LED2の光の強度が光軸方向の強度の80%以上となる方向の角度とした場合には、第一のフォトセンサー3及び第二のフォトセンサー4に充分な強度の光が到達し、測定結果に誤差を生じることがない利点がある。さらに、フローセル1の外表面に親水性の塗膜を施した場合には、塗膜がない場合や撥水性の塗膜を施した場合のように水滴状の結露を生じることがなく、光の透過を妨げたり光の経路を曲げたりして光の透過量を減少させることがないので測定結果に誤差を生じない利点がある。
【符号の説明】
【0025】
1 フローセル
2 LED
3 第一のフォトセンサー
4 第二のフォトセンサー
5 基体
6 第一の変換器
7 第二の変換器
8 比較器
9 CPU
10 スイッチ
11 光源駆動装置
12 濃度表示装置