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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-203723(P2017-203723A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】水中測長装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20171020BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20171020BHJP
【FI】
   G01C3/06 120Q
   G01B11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-96376(P2016-96376)
(22)【出願日】2016年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】594077622
【氏名又は名称】ダイトロンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】小薮 隆史
(72)【発明者】
【氏名】堀 正輝
【テーマコード(参考)】
2F065
2F112
【Fターム(参考)】
2F065AA22
2F065AA26
2F065BB23
2F065FF32
2F065GG04
2F065GG07
2F065GG23
2F065HH04
2F065HH15
2F065JJ01
2F065JJ17
2F065JJ18
2F065NN08
2F112AD01
2F112BA01
2F112CA01
2F112DA21
2F112DA22
2F112DA25
(57)【要約】
【課題】測長した対象物が光反射体からなる測長対象物であるのか水中浮遊粒子群からなる測長対象物であるのかを判別することができる水中測長装置を提供する。
【解決手段】水中に存在する測長対象物A,Bに向けて波長の異なる複数の可視光を照射する光源部11と、測長対象物A,Bで反射された光を検出する検出部12と、光源部12が可視光を出射した時刻から検出部12が反射光を検出するまでの遅延時間ΔT1、ΔT2を波長毎に計測する処理部13とを備え、処理部13は、検出部12が検出した光の種類と、波長毎に計測した遅延時間13とに基づいて、測長対象物A,Bまでの距離を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に存在する測長対象物に向けて波長の異なる複数の可視光を照射する光源部と、
前記測長対象物で反射された光を検出する検出部と、
前記光源部が可視光を出射した時刻から前記検出部が反射光を検出するまでの遅延時間を波長毎に計測する処理部とを備え、
前記処理部は、前記検出部が検出した光の種類と、波長毎に計測した遅延時間とに基づいて、前記測長対象物までの距離を算出する水中測長装置。
【請求項2】
前記光源部は、第1波長帯の可視光と、前記第1波長帯より長波長の第2波長帯の可視光とを照射し、
前記処理部は、前記第1波長帯の可視光の遅延時間から算出された前記測長対象物までの第1距離と、前記第2波長帯の可視光の遅延時間から算出された前記測長対象物までの第2距離とが異なる場合、前記第1距離に水中浮遊粒子群が存在することを検出する請求項1に記載の水中測長装置。
【請求項3】
前記光源部は、パルスレーザ光を照射し、
前記処理部は、前記光源部が出射した前記第1波長帯の可視光のパルス幅と、前記第1波長帯の可視光の反射光のパルス幅とに基づいて、前記可視光の照射方向に沿った前記水中浮遊粒子群の長さを算出する請求項2に記載の水中測長装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記光源部が出射した前記第1波長帯の可視光の強度と、前記第1波長帯の可視光の反射光の強度とに基づいて、前記水中浮遊粒子群を構成する水中浮遊粒子の粒子径を算出する請求項2又は3に記載の水中測長装置。
【請求項5】
前記光源部は、第1波長帯の可視光と、前記第1波長帯より長波長の第2波長帯の可視光とを照射し、
前記処理部は、前記第1波長帯の可視光の遅延時間から算出された前記測長対象物までの距離と、前記第2波長帯の可視光の遅延時間から算出された前記測長対象物までの距離とが同じ場合、算出された前記測長対象物までの距離に光反射体が存在することを検出する請求項1に記載の水中測長装置。
【請求項6】
前記第1波長帯が青色波長帯であり、前記第2波長帯が緑色波長帯である請求項2〜5のいずれか1項に記載の水中測長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中測長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶や潜水艦などで水中や海中(以下、総称して水中という)の探査を行う際に用いられる水中測長装置として、トリガ信号を送って生成したレーザ光を物体へ向けて照射し、物体で反射したレーザ光を光センサで受光し、レーザ光の発振時とレーザ光の受光時との時間差から物体との距離を算出するものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−229622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中では、波長が短い可視光ほど吸収減衰しにくいため、物体へ向けて照射するパルスレーザ光として青色波長帯のレーザ光を用いることが測長可能なエリアを広くできる点で好ましい。しかし、波長が短い可視光は、マリンスノーや海底の熱水噴出孔から吹き出すスモーカーなどのような水中を浮遊する水中浮遊粒子によって散乱しやすいため、水中浮遊粒子が高密度に浮遊していると、水中浮遊粒子によってすべて散乱されることがある。
【0005】
そのため、水中測長装置において物体へ向けて照射するレーザ光として青色波長帯の光を用いると、光センサで受光した光が水中浮遊粒子による反射光であるのか、海底面などの光反射体による反射光であるのかを判別できず、水中浮遊粒子を光反射体と誤認して測長することがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、水中浮遊粒子を光反射体と誤認することなく測長が可能な水中測長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水中測長装置は、水中に存在する測長対象物に波長の異なる複数の可視光を照射する光源部と、前記測長対象物で反射された光を検出する検出部と、前記光源部が可視光を出射した時刻から前記検出部が反射光を検出するまでの遅延時間を波長毎に計測する処理部とを備え、前記処理部は、波長毎に計測した遅延時間と、前記検出部が検出した光の種類とに基づいて、前記測長対象物までの距離を算出する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、前記光源部は、第1波長帯の可視光と、前記第1波長帯より長波長の第2波長帯の可視光とを照射し、前記処理部は、前記第1波長帯の可視光の遅延時間から算出された前記測長対象物までの第1距離と、前記第2波長帯の可視光の遅延時間から算出された前記測長対象物までの第2距離とが異なる場合、前記第1距離に水中浮遊粒子群が存在することを検出する。さらに、好ましい実施形態において、前記光源部は、パルスレーザ光を照射し、前記処理部は、前記光源部が出射した前記第1波長帯の可視光のパルス幅と、前記第1波長帯の可視光の反射光のパルス幅とに基づいて、前記可視光の照射方向に沿った前記水中浮遊粒子群の長さを算出する。さらに、好ましい実施形態において、前記処理部は、前記光源部が出射した前記第1波長帯の可視光の強度と、前記第1波長帯の可視光の反射光の強度とに基づいて、前記水中浮遊粒子群を構成する水中浮遊粒子の粒子径を算出する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、前記光源部は、第1波長帯の可視光と、前記第1波長帯より長波長の第2波長帯の可視光とを照射し、前記処理部は、前記第1波長帯の可視光の遅延時間から算出された前記測長対象物までの距離と、前記第2波長帯の可視光の遅延時間から算出された前記測長対象物までの距離とが同じ場合、算出された前記測長対象物までの距離に光反射体が存在することを検出する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、前記第1波長帯が青色波長帯であり、前記第2波長帯が緑色波長帯である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水中浮遊粒子を光反射体と誤認することなく測長対象物までの距離を測長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る水中測長装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明に係る水中測長装置の各種信号のタイムチャートである。
図3】本発明に係る水中測長装置が照射した可視光の経路を示す図である。
図4】本発明に係る水中測長装置が照射した可視光の経路を示す図である。
図5】本発明に係る水中測長装置が照射した可視光の経路を示す図である。
図6】本発明に係る水中測長装置の各種信号のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の1実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る水中測長装置10は、波長の異なる複数の可視光(400〜750nm)を水中に存在する測長対象物A、Bに向けて照射し、測長対象物A、Bで反射された光を検出することで、水中測長装置10から測長対象物A、Bまでの距離を得る装置であり、図1に示すように、光源部11と検出部12と処理部13とを備える。なお、本明細書及び図において、測長対象物Aは海底面のような光が透過しない光反射体を表し、測長対象物Bはマリンスノーや海底の熱水噴出孔から吹き出すスモーカーなどのような水中を浮遊する水中浮遊粒子が集まった水中浮遊粒子群を表している。
【0015】
光源部11は、青色レーザ装置11Bと緑色レーザ装置11Gとを備え、測長対象物A、Bに向けて波長の異なる複数種類(この例では2種類)のレーザ光を照射する。青色レーザ装置11Bは、青色の波長帯(例えば、400〜500nm)、この例では、中心波長が450nmの第1波長帯(445〜455nm)の青色レーザ光を発光する半導体レーザ素子を備える。青色レーザ装置11Bは、繰り返し周波数が50Hzでパルス幅が6nsのパルス状の青色レーザ光を発生する。緑色レーザ装置11Gは、緑色の波長帯(例えば、500〜580nm)、この例では、中心波長が532nmの第2波長帯(527〜537nm)の緑色レーザ光を発光する半導体レーザ素子を備える。緑色レーザ装置11Gは、繰り返し周波数数が50Hzでパルス幅が6nsのパルス状の青色レーザ光を発生する。
【0016】
光源部11を構成する青色レーザ装置11B及び緑色レーザ装置11Gには、光源駆動回路14で生成した第1トリガ信号St1及び第2トリガ信号St2が入力される。青色レーザ装置11Bに入力される第1トリガ信号St1と緑色レーザ装置11Gに入力される第2トリガ信号St2とは所定時間ずれている。第1トリガ信号St1と第2トリガ信号St2との時間差は、青色レーザ装置11Bや緑色レーザ装置11Gからレーザ光を照射してから測長対象物A,Bによる反射光が検出部12に戻るまでの時間より十分に長い時間に設定されている。これにより、青色レーザ装置11B及び緑色レーザ装置11Gは、異なるタイミングでそれぞれパルス状のレーザ光を発生させるとともに、青色レーザ光及び緑色レーザ光の反射光を異なるタイミングで検出部12が受光するようになっている。
【0017】
光源駆動回路14は、生成した第1トリガ信号St1及び第2トリガ信号St2を青色レーザ装置11B及び緑色レーザ装置11Gとともに処理部13にも入力する。
【0018】
検出部12は、フォトダイオード(PD)やアバランシェフォトダイオード(APD)や光電子増倍管(PMT)などの受光素子を備え、測長対象物A,Bで反射された反射光を受光して受光信号Spに変換し、得られた受光信号Spを処理部13へ出力する。
【0019】
処理部13は、光源駆動回路14から入力された第1トリガ信号St1及び第2トリガ信号St2と検出部12で得られた受光信号Spに基づいて、検出部12が検出した光の種類を特定するとともに、検出部12が検出した光について波長毎に遅延時間を計測する。
【0020】
具体的には、図2に示すように、第1トリガ信号St1を青色レーザ装置11Bに入力した時刻から第2トリガ信号St2を緑色レーザ装置11Gに入力した時刻までの間に検出部12が受光信号Spを検出すると、処理部13は、当該受光信号Spを第1トリガ信号St1によって発生した青色レーザ光の反射光による受光信号Sp1と特定する。
【0021】
青色レーザ光の反射光による受光信号Sp1を特定すると、処理部13は、第1トリガ信号St1と受光信号Sp1との時間差ΔT1、つまり、青色レーザ装置11Bが青色レーザ光を出射した時刻から検出部12が青色レーザ光の反射光を検出するまでの遅延時間を計測するとともに、計測した遅延時間ΔT1から下記式(1)に基づいて水中測長装置10から測長対象物までの第1距離D1を算出する。なお、式(1)において、vはレーザ光の速度、nは水の屈折率を示す。
【0022】
(数1)
D1=vΔT1/2n (1)
【0023】
また、緑色レーザ光についても青色レーザ光の場合と同様、第2トリガ信号St2を緑色レーザ装置11Gに入力した時刻から第1トリガ信号St1を青色レーザ装置11Bに入力した時刻までの間に検出部12が受光信号Spを検出すると、処理部13は、当該受光信号Spを第2トリガ信号St2によって発生した緑色レーザ光の反射光による受光信号Sp2と特定する。
【0024】
緑色レーザ光の反射光による受光信号Sp2を特定すると、処理部13は、第2トリガ信号St2と受光信号Sp2との時間差ΔT2、つまり、緑色レーザ装置11Gが緑色レーザ光を出射した時刻から検出部12が緑色レーザ光の反射光を検出するまでの遅延時間を計測するとともに、青色レーザ光の場合と同様、計測した遅延時間ΔT2に基づいて水中測長装置10から測長対象物までの第2距離D2を算出する。
【0025】
そして、処理部13は、検出部12が検出した光の種類と、波長毎に計測した遅延時間ΔT1、ΔT2に基づいて、測長対象物までの距離を検出するとともに、測長対象物が海底面のような光が透過しない光反射体であるのか、あるいは、水中浮遊粒子が集まった水中浮遊粒子群であるのかを検出する。
【0026】
例えば、図1に示すように、水中測長装置10から離れた位置に光反射体からなる測長対象物Aが存在し、水中測長装置10と測長対象物Aとの間に水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bが存在し、水中浮遊粒子群を構成する水中浮遊粒子の密度が高い場合、波長の短い可視光(この例では、青色レーザ光)は、これより波長の長い可視光(この例では、緑色レーザ光)に比べて水中浮遊粒子散乱されやすいため、青色レーザ光は水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bを透過することなく反射され、緑色レーザ光は測長対象物Bを透過しその先にある光反射体からなる測長対象物Aで反射される。
【0027】
そのため、処理部13は、検出部12の受光信号Spから青色レーザ光と緑色レーザ光を検出する。処理部13は、検出した青色レーザ光と緑色レーザ光についてそれぞれ遅延時間ΔT1、ΔT2を計測するとともに、計測した遅延時間ΔT1、ΔT2に基づいて水中測長装置10から測長対象物までの第1距離D1及び第2距離D2を算出するが、青色レーザ光は測長対象物Aまで到達することなく測長対象物Bで反射し、緑色レーザ光は測長対象物Bを透過して測長対象物Aで反射しているため、処理部13で算出された第1距離D1は第2距離D2より短くなる。
【0028】
よって、処理部13は、検出部12の受光信号Spから青色レーザ光と緑色レーザ光を検出し、かつ、青色レーザ光の遅延時間ΔT1から算出された第1距離D1と、緑色レーザ光の遅延時間ΔT2から算出された第2距離D2とが異なっている場合、波長の短い光から算出された距離(つまり、第1距離D1)を水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bまでの距離とし、波長の長い光から算出された距離(つまり、第2距離D2)を光反射体からなる測長対象物Aまでの距離とする。
【0029】
また、図3に示すように、水中測長装置10から離れた位置に光反射体からなる測長対象物Aが存在し、水中測長装置10と測長対象物Aとの間に水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bが存在しない場合、青色レーザ光及び緑色レーザ光はいずれも光反射体からなる測長対象物Aで反射される。
【0030】
処理部13は、検出部12の受光信号から青色レーザ光と緑色レーザ光を検出する。処理部13は、検出した青色レーザ光と緑色レーザ光についてそれぞれ遅延時間ΔT1、ΔT2を計測するとともに、計測した遅延時間ΔT1、ΔT2に基づいて水中測長装置10から測長対象物までの第1距離D1及び第2距離D2を算出するが、青色レーザ光及び緑色レーザ光はいずれも測長対象物Aで反射しているため、処理部13で算出された第1距離D1と第2距離D2は等しくなる。
【0031】
よって、処理部13は、検出部12の受光信号から青色レーザ光と緑色レーザ光を検出し、かつ、青色レーザ光の遅延時間ΔT1から算出された第1距離D1と、緑色レーザ光の遅延時間ΔT2から算出された第2距離D2とが等しい場合、算出された距離D1、D2を光反射体からなる測長対象物Aまでの距離とする。
【0032】
また、図4に示すように、水中測長装置10から離れた位置に水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bが存在し、青色レーザ光及び緑色レーザ光によって測長が可能な範囲に光反射体からなる測長対象物Aが存在しない場合、青色レーザ光は水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bで反射され、緑色レーザ光は測長対象物Bを透過し、その後、消滅する。
【0033】
そのため、処理部13は、検出部12の受光信号から青色レーザ光を検出するが、緑色レーザ光をしない。
【0034】
よって、処理部13は、検出部12の受光信号Spから青色レーザ光を検出し、緑色レーザ光を検出しない場合は、青色レーザ光の遅延時間ΔT1から算出された第1距離D1を水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bまでの距離とする。
【0035】
また、図5に示すように、水中測長装置10から離れた位置に光反射体からなる測長対象物Aが存在し、水中測長装置10と測長対象物Aとの間に水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bが存在し、水中浮遊粒子群を構成する水中浮遊粒子の密度が低い場合、青色レーザ光の一部は水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bで反射されるが、残部が測長対象物Bを透過して光反射体からなる測長対象物Aで反射され、緑色レーザ光は測長対象物Bを透過しその先にある光反射体からなる測長対象物Aで反射される。水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bで反射される青色レーザ光は、測長対象物Bを透過しながら測長対象物Bにおける青色レーザ光の進行方向(照射方向)の様々な位置で反射される。
【0036】
そのため、処理部13は、検出部12の受光信号Spから青色レーザ光と緑色レーザ光を検出する。この時、青色レーザ光は、水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bと、その先にある光反射体からなる測長対象物Aで反射されるため、処理部13は、図6に示すように、青色レーザ光の反射光として測長対象物Bによる反射光の受光信号Sp1Bと、測長対象物Aによる反射光の受光信号Sp1Aとを検出する。
【0037】
処理部13は、検出した青色レーザ光について受光信号Sp1B及び受光信号Sp1Aについてそれぞれ遅延時間ΔT1B及び遅延時間ΔT1Aを計測し、検出した緑色レーザ光について遅延時間ΔT2を計測するとともに、計測した遅延時間ΔT1B、ΔT1A、ΔT2に基づいて水中測長装置10から測長対象物までの第1距離D1B、第1距離D1A及び第2距離D2を算出する。図5の場合、青色レーザ光は水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bと光反射体からなる測長対象物Aで反射され、緑色レーザ光は光反射体からなる測長対象物Aで反射されるため、処理部13で算出された第1距離D1B、第1距離D1A及び第2距離D2のうち第1距離D1Bは第1距離D1A及び第2距離D2より短くなり、第1距離D1Aと第2距離D2は等しくなる。
【0038】
よって、処理部13は、検出部12の受光信号から2種類の青色レーザ光と緑色レーザ光を検出した場合において、一方の青色レーザ光の遅延時間ΔT1Bから算出された第1距離D1Bと、緑色レーザ光の遅延時間ΔT2から算出された第2距離D2とが異なっている場合、算出された距離のうち短い第1距離D1Bを水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bまでの距離とし、他方の青色レーザ光の遅延時間ΔT1Aから算出された第1距離DA1と緑色レーザ光の遅延時間ΔT2から算出された第2距離D2とが等しい場合、算出された距離DA1、D2を光反射体からなる測長対象物Aまでの距離とする。
【0039】
また、図5の場合、青色レーザ光は測長対象物Bにおける青色レーザ光の進行方向の様々な位置で反射される。測長対象物Bの手前側(水中測長装置10側)で反射された青色レーザ光と測長対象物Bの奥側で反射された青色レーザ光とでは光路長が異なるため、測長対象物Bの奥側で反射された青色レーザ光は、測長対象物Bの手前側で反射された青色レーザ光より両者の光路差(つまり、青色レーザ光の進行方向に沿った測長対象物Bの長さの2倍の長さ)に応じた時刻だけ遅れて検出部12で検出される。その結果、遅れた時刻だけ受光信号Sp1Bのパルス幅が青色レーザ装置11Bから照射された青色レーザ光のパルス幅より長くなる。
【0040】
そのため、処理部13は、測長対象物Bによる反射光の受光信号Sp1Bのパルス幅Wと、青色レーザ装置11Bから照射された青色レーザ光のパルス幅との時間差Δtから下記式(2)に基づいて青色レーザ光の進行方向に沿った測長対象物Bの長さLを算出する。なお、式(2)において、vは青色レーザ光の速度、nは水の屈折率を示す。
【0041】
(数2)
L=vΔt/2n (2)
【0042】
以上のような本実施形態の水中測長装置10では、水中に存在する測長対象物に向けて波長の異なる複数の可視光を照射し、検出部12で検出された光の種類と、処理部13が波長毎に計測した遅延時間とに基づいて、測長対象物までの距離を算出するため、距離を算出した測長対象物が、光反射体からなる測長対象物Aであるのか水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bであるのかを判別することができる。
【0043】
また、本実施形態では、青色レーザ光の一部は水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bで反射され、残部が測長対象物Bを透過して光反射体からなる測長対象物Aで反射される場合に、光源部11の青色レーザ装置11Bが出射した青色レーザ光のパルス幅と青色レーザ光の反射光のパルス幅との時間差Δtが、測長対象物Bの手前側で反射された青色レーザ光と測長対象物Bの奥側で反射された青色レーザ光との光路差に対応するため、当該時間差Δtに基づいて、青色レーザ光の照射方向に沿った測長対象物Bの長さを得ることができる。
【0044】
また、本実施形態では、水中において吸収減衰しにくい青色の波長帯と緑色の波長帯の可視光を測長対象物に向けて照射するため、広い範囲にわたって光反射体と水中浮遊粒子群とを判別しつつ測長対象物までの距離を測定することができる。
【0045】
(第2実施形態)
上記した第1実施形態では、水中測長装置10から一方向へ可視光を照射し、その反射光を検出することで、一方向の測長対象物までの距離を測定する場合について説明したが、特定方向から順次走査して測長対象物までの距離を二次元的に取得してもよい。
【0046】
(第3実施形態)
上記した第1実施形態では、処理部13が、検出部12が検出した受光信号Spから遅延時間ΔT1、ΔT2を計測し、水中測長装置10から測長対象物までの距離を算出する場合について説明したが、これに加えて、水中浮遊粒子群を検出した場合、つまり、青色レーザ光の遅延時間ΔT1から算出された第1距離D1と緑色レーザ光の遅延時間ΔT2から算出された第2距離D2とが異なっている場合に、青色レーザ装置11Bが出射した青色レーザ光の強度と、水中浮遊粒子群からなる測長対象物Bで反射した青色レーザ光の反射光の強度とに基づいて、水中浮遊粒子群を構成する水中浮遊粒子の粒子径を算出してもよい。
【0047】
(他の実施形態)
上記した実施形態では、光源部11が照射する可視光として、半導体レーザ素子よりパルス状のレーザ光を照射する場合について説明したが、連続的にレーザ光を出すCWレーザ光や、LEDから照射する可視光であってもよい。
【0048】
また、上記した実施形態では、波長の異なる可視光として青色及び緑色の可視光を照射したが、青紫色と青色や、青色と赤色や、緑色と赤色など、測長対象物Bを構成する水中浮遊粒子の粒子径や密度などに応じて、可視光(400〜750nm)から異なる波長の光を適宜選択して照射することができる。また、測長対象物に向けて照射する光の種類も2種類に限定されず、2種以上を照射してもよい。
【0049】
また、上記した実施形態では、トリガ信号と受光信号との時間差から遅延時間を計測したが、青色レーザ装置11Bや緑色レーザ装置11Gから放出されたレーザ光をビームスプリッタによって分割し、分割した光による受光信号の時間差から遅延時間を計測し、測長対象物までの距離を測長してもよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、
発明の範囲を限定することを意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実
施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変
更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様
に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
10…水中測長装置、11…光源部、11B…青色レーザ装置、11G…緑色レーザ装置、12…検出部、13…処理部、14…光源駆動回路、A…測長対象物、B…測長対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6