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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-204544(P2017-204544A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】電子デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20171020BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20171020BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20171020BHJP
【FI】
   H01L23/02 J
   H01L23/02 C
   H03H9/25 A
   H03H3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-94935(P2016-94935)
(22)【出願日】2016年5月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】小田 康之
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA33
5J097AA36
5J097EE05
5J097HA07
5J097HA08
5J097HA09
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】コストを削減することまたはバリの発生を抑制すること。
【解決手段】基板10と、下面に機能部13が設けられ、前記機能部と前記基板の上面とが空隙20を介し対向するように、前記基板の上面に実装されたデバイスチップ12と、前記デバイスチップを囲み前記空隙を封止するように、前記基板10の上面上に設けられた封止部材30と、前記デバイスチップの上面および前記封止部材の上面上に設けられ、結晶粒が潰れた金属リッド32と、を具備する電子デバイス。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
下面に機能部が設けられ、前記機能部と前記基板の上面とが空隙を介し対向するように、前記基板の上面に実装されたデバイスチップと、
前記デバイスチップを囲み前記空隙を封止するように、前記基板の上面上に設けられた封止部材と、
前記デバイスチップの上面および前記封止部材の上面上に設けられ、結晶粒が潰れた金属リッドと、
を具備する電子デバイス。
【請求項2】
前記金属リッドの側面と前記封止部材の側面とは連続した面である請求項1記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記封止部材の側面と前記基板の側面は連続した面である請求項2記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記金属リッドは平板状である請求項1から3のいずれか一項記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記金属リッドはコバール板である請求項1から4のいずれか一項記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記デバイスチップは、弾性波デバイスチップである請求項1から5のいずれか一項記載の電子デバイス。
【請求項7】
下面に機能部が設けられたデバイスチップを、基板の上面上に前記機能部が空隙を介して対向するように、前記基板の上面上に実装する工程と、
前記デバイスチップを囲み前記空隙を封止するように、前記基板の上面上に封止部材を形成する工程と、
前記デバイスチップの上面および前記封止部材の上面上にリッドを配置する工程と、
前記リッド上に犠牲層を形成する工程と、
ダイシング法を用い前記犠牲層および前記リッドを切断する工程と、
前記犠牲層および前記リッドを切断する工程の後に、前記犠牲層を除去する工程と、
を含む電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記封止部材を形成する工程および前記リッドを配置する工程は、前記デバイスチップ上に板状部材およびリッドを配置し、前記板状部材を加熱しかつ前記リッドを前記基板に押圧する工程を含む請求項7記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記リッドは、圧延された後再結晶のための熱処理が行なわれていない請求項7または8記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスおよびその製造方法に関し、例えばデバイスチップが封止部材で封止された電子デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上にデバイスチップを実装し、デバイスチップを封止部材と金属リッドとで封止することが知られている。金属リッドとして圧延材を用いることが知られている(特許文献1)。リッドをダイシングするときに、バリが発生することが知られている(特許文献2)。水晶振動体を収納するパッケージの蓋体をアニールすることが知られている(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−170668号公報
【特許文献2】特開2009−272352号公報
【特許文献3】特開2004−186995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において金属リッドとして用いる圧延材は再結晶のための熱処理が行なわれている。このため、金属リッドの製造コストが高くなる。また、ダイシング法を用いてリッドを切断する場合、特許文献2のようにバリが発生する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、コストを削減することまたはバリの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、下面に機能部が設けられ、前記機能部と前記基板の上面とが空隙を介し対向するように、前記基板の上面に実装されたデバイスチップと、前記デバイスチップを囲み前記空隙を封止するように、前記基板の上面上に設けられた封止部材と、前記デバイスチップの上面および前記封止部材の上面上に設けられ、結晶粒が潰れた金属リッドと、を具備する電子デバイスである。
【0007】
上記構成において、前記金属リッドの側面と前記封止部材の側面とは連続した面である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記封止部材の側面と前記基板の側面は連続した面である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記金属リッドは平板状である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記金属リッドはコバール板である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記デバイスチップは、弾性波デバイスチップである構成とすることができる。
【0012】
本発明は、下面に機能部が設けられたデバイスチップを、基板の上面上に前記機能部が空隙を介して対向するように、前記基板の上面上に実装する工程と、前記デバイスチップを囲み前記空隙を封止するように、前記基板の上面上に封止部材を形成する工程と、前記デバイスチップの上面および前記封止部材の上面上にリッドを配置する工程と、前記リッド上に犠牲層を形成する工程と、ダイシング法を用い前記犠牲層および前記リッドを切断する工程と、前記犠牲層および前記リッドを切断する工程の後に、前記犠牲層を除去する工程と、を含む電子デバイスの製造方法である。
【0013】
上記構成において、前記封止部材を形成する工程および前記リッドを配置する工程は、前記デバイスチップ上に板状部材およびリッドを配置し、前記板状部材を加熱しかつ前記リッドを前記基板に押圧する工程を含む構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記リッドは、圧延された後再結晶のための熱処理が行なわれていない構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コストを削減することまたはバリの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、金属材の圧延を説明する断面図、図1(b)は、熱処理温度に対する金属材の性質を示す図、図1(c)は、熱処理温度に対する金属材の断面の模式図である。
図2図2(a)は、圧延後熱処理前のコバール板の断面画像、図2(b)は、圧延後熱処理後のコバール板の断面画像である。
図3図3(a)は、実施例1に係る電子デバイスの断面図、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。
図4図4(a)から図4(d)は、実施例1に係る電子デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
図5図5(a)から図5(c)は、実施例1に係る電子デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
図6図6(a)は、実施例1に係る電子デバイスの平面図、図6(b)および図6(c)は、図6(a)のA−A断面図である。
図7図7(a)および図7(b)は、比較例1に係る電子デバイスの製造方法を示す断面図である。図7(c)および図7(d)は、実施例1に係る電子デバイスの製造方法を示す断面図である。
図8図8は、実施例1の変形例1に係る電子デバイスの断面図である。
図9図9は、実施例1の変形例2に係る電子デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、金属リッドの圧延材について説明する。圧延材は熱処理により焼鈍加工される。図1(a)は、金属材の圧延を説明する断面図、図1(b)は、熱処理温度に対する金属材の性質を示す図、図1(c)は、熱処理温度に対する金属材の断面の模式図である。図1(c)は、図1(b)の熱処理温度における結晶粒の様子を模式的に示している。図1(a)に示すように、金属材81には、複数の結晶粒82が形成されている。結晶粒82の界面が粒界84である。結晶粒82の大きさは、平面方向および垂直方向とも同程度である。ローラ86を用い金属材81を圧延すると、薄い金属材80となる。このように、圧延により板状の金属材81を薄膜化できる。圧延後の金属材80では結晶粒82が潰れている。このため、金属材80は硬くかつ伸びが小さい。図1(a)では、結晶粒82の斜め方向に長くなるように潰れているが、平面方向に長くなるように潰れることもある。
【0018】
図1(b)および図1(c)に示すように、圧延後の金属材80を熱処理する。低い熱処理温度では硬さおよび伸びはほとんど変わらないが硬さは若干小さくなる。この熱理温度の範囲では、圧延された金属材80の結晶粒82および粒界84はほとんど変わらない。この範囲は金属材80の回復期である。さらに熱処理温度を上げると、温度に対し、硬さは急激に小さくなり伸びは急激に大きくなる。この熱処理温度範囲では、再結晶が起こっている。潰れた結晶粒82が再結晶化し、結晶粒82の大きさが平面方向および垂直方向に同程度となる。この範囲は再結晶期である。さらに、熱処理温度を高くすると、硬さは若干小さくなり、伸びは若干大きくなる。この熱処理温度では、結晶粒82が成長し、結晶粒82が等方的に大きくなる。の範囲は粒成長期である。
【0019】
このように、再結晶の温度以上で熱処理(すなわち焼鈍加工)すると、金属材80の硬さおよび伸びが圧延前の状態に回復する。金属リッドとしてコバールを用いる場合、圧延後に再結晶のため例えば不活性ガス雰囲気の炉内で850℃から900℃の熱処理を約10分程度行なう。
【0020】
図2(a)は、圧延後熱処理前のコバール板の断面画像、図2(b)は、圧延後熱処理後のコバール板の断面画像である。圧延後の複数のコバールを積層し、圧延に平行な方向の断面を金属顕微鏡を用い撮影した。単一のコバール板の膜厚はいずれも15μmである。図2(a)に示すように、圧延後のコバール板では、結晶粒が潰れており、結晶粒および粒界は明確には観察できないが、平面方向に伸びる構造が観察できる。図2(b)に示すように、圧延後に熱処理すると、結晶粒82および粒界84が観察できる。結晶粒82は、Ni(ニッケル)−Co(コバルト)−Fe(鉄)合金の結晶である。このように、熱処理により、再結晶し結晶粒82が形成されている。これにより、圧延加工で硬くなったコバール板を柔らかくできる。しかしながら、高温での熱処理は製造コストが高い。このため、金属リッドの価格が高くなってしまう。また、薄膜化しても金属リッドの強度を保つためには金属リッドは硬い方がよい。
【0021】
このように、電子デバイスの小型化および低背化のため圧延された金属リッドを用いる。圧延された金属リッドは圧延後に再結晶のための熱処理が行なわれている。しかし、熱処理を行なう製造コストのため金属リッドの価格が高くなる。また、熱処理した金属リッドは柔らかく、金属リッドを薄くすると強度確保ができない。そこで、圧延後に再結晶のための熱処理を行わない金属リッドを用いることを検討した。
【実施例1】
【0022】
図3(a)は、実施例1に係る電子デバイスの断面図、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。図3(a)に示すように、実施例1の電子デバイス100は、基板10の上面に、デバイスチップ12が実装されている。基板10は、絶縁基板であり、例えばHTCC(High Temperature Co-fired Ceramic)またはLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramic)等のセラミックス基板または樹脂基板である。基板10の上面は例えば平坦であり、上面には端子24および環状電極28が設けられている。端子24は例えばバンプ14が接合するパッドである。環状電極28は、基板10の上面の外縁に、端子24を囲むように設けられている。基板10の下面に端子26が設けられている。端子26は外部と電気的に接続するための外部端子であり、例えばフットパッドである。基板10内には端子24と26とを電気的に接続する配線22が設けられている。端子24、26および配線22は、銅層、金層またはアルミニウム層等の金属層である。環状電極28は、ニッケル層または銅層等の金属層である。
【0023】
デバイスチップ12は基板16および機能部18を有する。基板10の下面にパッド15および機能部18が設けられている。機能部18は例えば弾性波を励振する電極である。機能部18は、電極を保護する保護膜を含んでもよい。保護膜は、例えば弾性波の振動を抑制しない程度に薄い。バンプ14はパッド15に接合する。
【0024】
デバイスチップ12が弾性表面波チップの場合、機能部18はIDT(Interdigital Transducer)の電極指である。電極指は例えば銅層またはアルミニウム層である。基板16は例えばタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板等の圧電基板である。圧電基板はサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板またはシリコン基板等の支持基板上に接合されていてもよい。デバイスチップが圧電薄膜共振器チップの場合、機能部18は圧電膜を挟み上部電極および下部電極が対向する共振部である。基板16は、例えばシリコン基板もしくは砒化ガリウム等の半導体基板、またはサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板またはガラス基板等の絶縁基板である。デバイスチップ12の厚さは例えば50μmから200μmであり、例えば150μmである。パッド15は例えば銅層、アルミニウム層または金層等の金属層である。
【0025】
デバイスチップ12はバンプ14を介し基板10上に実装されている。機能部18は、空隙20を介し基板10に対向している。空隙20の高さは例えば数μmから20μmであり、例えば10μmである。機能部18が空隙20に露出されているため、機能部18の振動等が抑制されない。バンプ14は、例えば銅バンプ、金バンプまたは半田バンプである。
【0026】
基板10の上面にデバイスチップ12を囲むように封止部材30が設けられている。封止部材30は、環状電極28に接合されている。封止部材30は、例えばSnAg半田またはAuSn半田等の金属部材または樹脂等の絶縁部材である。リッド32は、圧延された後熱処理されていないコバール板、Ni−Fe合金板または42合金等の金属リッドであり、例えば平板状である。リッド32の厚さは、例えば5μmから20μmであり、例えば10μmである。リッド32の上面および封止部材30の側面に保護膜36が設けられている。保護膜36は、例えばニッケル膜等の金属膜、または絶縁膜である。
【0027】
図3(b)に示すように、封止部材30は、平面視において基板10を完全に囲っている。保護膜36は封止部材30を完全に囲っている。デバイスチップ12の側面の一部は封止部材30に囲まれていなくてもよい。
【0028】
図4(a)から図5(c)は、実施例1に係る電子デバイスの製造方法を示す断面図である。図4(a)に示すように、基板10上にバンプ14を用い複数のデバイスチップ12をフリップチップ実装する。デバイスチップ12の機能部18と基板10の間には空隙20が広がっている。デバイスチップ12は基板10上にマトリックス状に配置されている。図4(b)に示すように、デバイスチップ12の上面に、板状部材31と金属リッド32が積層された積層体58を配置する。板状部材31は例えばSnAg半田である。
【0029】
図4(c)に示すように、封止部材30が融点以上の温度において、板状部材31が溶融した状態で金属リッド32を基板10に押圧する。例えばSnAg半田の融点は約220℃であり、AuSn半田の融点は280℃である。溶融した半田はデバイスチップ12間に充填される。充填された半田が環状電極28の上面に達する。環状電極28は半田の濡れ性がよいため、環状電極28上面に溶融した半田が濡れ広がる。この状態で基板10の温度を封止部材30の融点以下とする。これにより、板状部材31が溶融した半田から封止部材30が形成される。封止部材30は環状電極28と接合する。金属リッド32は封止部材30の上面およびデバイスチップ12の上面上に設けられる。金属リッド32はデバイスチップ12の上面に接しているが、金属リッド32とデバイスチップ12との間に封止部材30が残存していてもよい。機能部18は、封止部材30および金属リッド32により空隙20に封止される。その後、金属リッド32の上面に、デバイスチップ12を識別するための番号および/または記号を捺印してもよい。
【0030】
図4(d)に示すように、金属リッド32上に犠牲層60を形成する。犠牲層60は例えばニッケル層等の金属層であり、電解または無電解めっき法を用い形成する。犠牲層60は、絶縁層でもよい。犠牲層60の膜厚は例えば5μmから50μmであり、例えば10μmから20μmである。
【0031】
図5(a)に示すように、基板10の下面に端子26を覆うように保護材64を形成する。保護材64は例えばレジスト膜である。基板10の下面を保護材64を介しダイシングテープ66に貼り付ける。図5(b)に示すように、ダイシングブレード68を用い、犠牲層60、金属リッド32、封止部材30および基板10を切断する。これにより、電子デバイス70が個片化される。犠牲層60から基板10を確実に切断するため、ダイシングブレード68がダイシングテープ66の一部まで切断することが好ましい。
【0032】
図5(c)に示すように、犠牲層60およびダイシングテープ66を除去する。これにより、複数の電子デバイス70は分離される。複数の電子デバイス70をバレル(不図示)に入れバレルをめっき槽74に投入する。めっき法を用い、保護膜36としてめっき層を形成する。例えば犠牲槽60がニッケル層であり、保護膜36としてニッケル層を用いる場合、アンモニア系のめっき液を用い犠牲層60を除去してもよい。例えば15μmの犠牲層60を除去する場合、犠牲層60をめっき液に約20分浸漬させる。犠牲層60を除去後、エッチング停止のため水洗を行なってもよい。犠牲層60をエッチングで除去する場合、封止部材30の側面が粗面化されることもある。その後、保護材64を除去する。保護材64は、端子26に保護膜36が成膜されることを抑制する。
【0033】
実施例1の作用効果について説明する。図6(a)は、実施例1に係る電子デバイスの平面図、図6(b)および図6(c)は、図6(a)のA−A断面図である。図6(a)において、金属リッド32を透過してデバイスチップ12を図示している。図6(a)に示すように、図4(a)において単一の基板10上に複数のデバイスチップ12がマトリックス状に実装されている。単一の金属リッド32が複数のデバイスチップ12を覆っている。
【0034】
金属リッド32は、絶縁体である基板10に比べ線熱膨張係数が大きい。このため、図4(c)の後に基板10を室温に冷却すると、図6(b)に示すように基板10が下に湾曲するように反ってしまう。金属リッド32が圧延後に熱処理されていれば、金属リッド32が柔らかいため基板10の反りは小さい。ところが、圧延後に熱処理されていない金属リッド32は硬いため反りが大きくなる。例えば、金属リッド32が圧延後に熱処理されていない膜厚が10μmのコバール板とする。封止部材30がSnAg半田であり、図4(c)において260℃に加熱する。基板10を厚さが0.1mmから0.2mm、大きさが50mm×50mmのHTCC基板とする。この場合、基板10の中心は両端から0.1mmから0.2mm程度反ってしまう。この状態の基板10は、ダイシング装置のステージに吸着できない。また、ステージに吸着できたとしても、切断精度が悪くなってしまう。その他、製造工程において支障が生じる。
【0035】
実施例1では、図4(d)に示すように金属リッド32上に犠牲層60を形成する。図6(c)に示すように、犠牲層60が矢印61のような圧縮応力を有すれば、図6(b)の基板10の反りを犠牲層60が補償する。犠牲層60は、基板10の反りを抑制するような内部応力を有する層であればよく、例えばめっき法により形成された銅層または金層でもよい。基板10の反りが抑制されるため、ダイシング工程等の製造工程における支障が抑制される。よって、圧延後に熱処理していない硬い金属リッド32を用いることができる。
【0036】
図7(a)および図7(b)は、比較例1に係る電子デバイスの製造方法を示す断面図である。図7(a)に示すように、金属リッド32上に犠牲層60が形成されていない。図7(b)に示すように、ダイシングブレード68を用い金属リッド32を切断するときに、金属リッド32にバリ72が形成される。バリ72は、例えば金属リッド32が封止部材30から剥がれて浮いたもの、または金属リッド32が封止部材30とともに浮いたものである。バリ72の高さは例えば20μmである。バリ72は金属リッド32が柔らかい場合および/または薄い場合に形成されやすい。金属リッド32が圧延後に熱処理されていない場合、金属リッド32は硬いためバリ72は形成されにくい。しかし、低背化のため、金属リッド32の膜厚を10μm以下または5μm以下とすると、バリ72が形成されてしまう。
【0037】
図7(c)および図7(d)は、実施例1に係る電子デバイスの製造方法を示す断面図である。図7(c)に示すように、金属リッド32上に犠牲層60が形成されている。図7(d)に示すように、ダイシングブレード68を用い金属リッド32を切断するときに、犠牲層60が金属リッド32を覆うため、金属リッド32のバリが形成されにくい。また、バリが形成されたとしてもバリの成分はほとんど犠牲層60のため、犠牲層60を除去するときにバリも除去される。このように、犠牲層60を設けることで、バリ72の形成を抑制できる。なお、基板10の下面側から金属リッド32を切断するようにダイシングブレード68を挿入してもよい。この場合においても実施例1ではバリ72の発生を抑制できる。
【0038】
犠牲層60の膜厚は、基板10の反りの抑制および/またはバリ72の抑制ができる範囲で任意に設定できる。例えば基板10がHTCCセラミック基板、金属リッド32が厚さが約10μmのコバール板、犠牲層60がニッケル層のとき、犠牲層60の膜厚を15μmとする。犠牲層60が銅層のように柔らかい材料の場合、犠牲層60の膜厚を15μmより厚くすることができる。
【0039】
バリ72は、封止部材30の平面方向の幅が小さいと形成されやすい。犠牲層60によりバリ72が形成されにくくなるため、封止部材30の平面方向の幅を小さくし、電子デバイスの小型化を図ることもできる。金属リッド32が膜厚が20μmの圧延後熱処理したコバール板であり、かつ犠牲層を用いない場合、例えば電子デバイスのサイズが14mm×10mmである。このとき、図6(a)の基板10の大きさが50mm×50mmのとき、1枚の基板10から792個の電子デバイスを取得できる。金属リッド32が膜厚が10μmの圧延後熱処理していないコバール板であり、かつ犠牲層を用いる場合、例えば電子デバイスのサイズが3mm×9mmである。このとき、同じ1枚の基板10から936個の電子デバイスを取得できる。このように、実施例1により電子デバイスの取得数を増加できる。
【0040】
実施例1によれば、図4(a)のように、下面に機能部18が設けられたデバイスチップ12を、基板10の上面上に機能部18が空隙20を介して対向するように、基板10の上面上に実装する。図4(b)および図4(c)のように、デバイスチップ12を囲み空隙20を封止するように、基板10の上面上に封止部材30を形成し、デバイスチップ12の上面および封止部材30の上面上にリッド32を配置する。図4(d)のように、リッド32上に犠牲層60を形成する。図5(b)のように、ダイシング法を用い犠牲層60およびリッド32を切断する。図5(c)のように、その後、犠牲層60を除去する。
【0041】
これにより、硬い金属リッド32を用いても図6(c)のように、基板10の反りを抑制できる。よって、圧延後に熱処理していない金属リッド32を用いることができる。熱処理が不要なため、コストを削減することができる。また、硬いリッド32を用いるため、リッド32を薄くしても強度が確保される。よって、電子デバイスの小型化が可能となる。
【0042】
圧延後に熱処理していない金属リッド32の断面は図2(a)のように、結晶粒82が潰れている。結晶粒82の潰れは、光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察することができる。潰れた結晶粒82は平面方向または斜め方向に長い構造として観察できる。潰れた結晶粒82では、複数の構造体(例えば結晶粒82)のうち半数以上の構造体で構造体の形状が一方向(例えば平面方向)に伸びた構造となっている。8割以上の構造体で形状が一方向に伸びた構造となっている。一方向に伸びた構造では、構造体の一方向の幅が一方向に直交する方向の幅より大きい。例えば、構造体の一方向の幅は一方向に直交する方向の幅の2倍以上であり、または5倍以上である。一方向に伸びた構造は、一方向の幅が1μm以上であり、一方向に直交する方向の幅が1μm未満、好ましくは500nm以下である。
【0043】
また、リッド32として、圧延後熱処理した金属リッド、圧延していない金属リッド、または絶縁リッドを用いてもよい。このような場合においても、図7(d)のように、バリ72の発生を抑制できる。リッド32のとしては、例えばNi−Fe合金でもよい。また、リッド32は特許文献1のようにめっきされた金属層でもよい。リッド32がこれらの場合もバリ72の発生を抑制できる。
【0044】
さらに、図5(b)のように、金属リッド32と封止部材30を同時にダイシング法を用い切断すると、金属リッド32の側面と封止部材30の側面とは連続した面となる。例えば、金属リッド32の側面と封止部材30の側面とは共通の平面となる。金属リッド32と封止部材30と基板10とを同時にダイシング法を用い切断すると、封止部材30の側面と基板10の側面とは連続した面となる。例えば、封止部材30の側面と基板10の側面とは共通の平面となる。なお、金属リッド32と封止部材30の一部とを同時に切断し、封止部材30の残部と基板10とはその後に切断してもよい。
【0045】
さらに、図4(b)のように、デバイスチップ12上に板状部材31およびリッド32を配置する。図4(c)のように、板状部材31を加熱しかつリッド32を基板10に押圧することで、封止部材30を形成する。このような工程で封止部材30を形成すると、基板10とリッド32との線熱膨張係数の差により、図6(b)のように基板10が反る。よって、犠牲層60を形成することで、反りを抑制できる。このように電子デバイスを製造すると、金属リッド32は平板状となる。
【0046】
犠牲層60は、基板10の反りを抑制するような応力を有することが好ましい。例えば金属はセラミックスより線熱膨張係数が大きい。これにより、基板10は下に湾曲するように反る。よって、犠牲層は圧縮応力を有することが好ましい。
【0047】
図1(a)から図1(c)において説明した圧延とその後の熱処理による金属材の性質および結晶粒の振る舞いは、金属材料全般に共通である。コバール材は安価でありリッド等によく使用される材料であるが、再結晶のための熱処理温度が800℃から900℃と高い。例えば、温度サイクル試験の温度である40℃から125℃、または半田リフローの温度である280℃より十分に高い。このため、金属リッド32としてコバール板を用いた場合、圧延後熱処理しないことで薄膜化した金属リッド32のコストを削減することが可能となる。なお、圧延後再結晶のための熱処理を行なっているコバール板のピッカース硬度はHV160から220である、一方、圧延後熱処理していないコバール板では硬度はHV230から350である。
【0048】
デバイスチップ12は弾性波デバイスチップ以外の電子デバイスチップでもよい。デバイスチップ12が弾性波デバイスチップのとき、機能部18は弾性波を励振する。よって、機能部18が空隙20に露出していることが好ましく、実施例1のような構造を採用することが好ましい。
【0049】
図8は、実施例1の変形例1に係る電子デバイスの断面図である。図8に示すように、基板10上に複数のデバイスチップ12が実装されている。封止部材30は複数のデバイスチップ12を囲むように封止部材30が設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1のように、デバイスチップ12は複数設けられていてもよい。
【0050】
図9は、実施例1の変形例2に係る電子デバイスの断面図である。図9に示すように、基板10は、支持基板10aと圧電基板10bとを有する。圧電基板10bは支持基板10aの上面に接合されている。圧電基板10bの上面には、機能部13としてIDTが設けられている。配線22は、基板10を貫通するビア配線である。支持基板10aは例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板またはシリコン基板である。圧電基板10bは例えばタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0051】
実施例1の変形例2のように、基板10の上面に機能部13が設けられ、機能部13と18とが空隙20を介し対向していてもよい。機能部13としては、機能部18と同様に弾性波を励振する電極とすることができる。基板10は支持基板10aを含まなくてもよい。機能部13は圧電薄膜共振器もよく、その他の電子素子でもよい。
【0052】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 基板
12 デバイスチップ
14 バンプ
16 基板
18 機能部
20 空隙
30 封止部材
31 板上部材
32 リッド
82 結晶粒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9