特開2017-204627(P2017-204627A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.の特許一覧

特開2017-204627積層型キャパシター及びその製造方法
<>
  • 特開2017204627-積層型キャパシター及びその製造方法 図000003
  • 特開2017204627-積層型キャパシター及びその製造方法 図000004
  • 特開2017204627-積層型キャパシター及びその製造方法 図000005
  • 特開2017204627-積層型キャパシター及びその製造方法 図000006
  • 特開2017204627-積層型キャパシター及びその製造方法 図000007
  • 特開2017204627-積層型キャパシター及びその製造方法 図000008
  • 特開2017204627-積層型キャパシター及びその製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-204627(P2017-204627A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】積層型キャパシター及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/12 20060101AFI20171020BHJP
   C04B 35/468 20060101ALI20171020BHJP
   C04B 35/628 20060101ALI20171020BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20171020BHJP
【FI】
   H01G4/12 358
   C04B35/468 200
   C04B35/628
   H01G4/12 349
   H01G4/12 364
   H01G4/30 301E
   H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-216762(P2016-216762)
(22)【出願日】2016年11月4日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0057965
(32)【優先日】2016年5月12日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ウーン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、チャン ハク
(72)【発明者】
【氏名】リー、チ ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャン ホーン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、クワン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドー ヤン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AD04
5E001AE02
5E001AE04
5E001AJ02
5E082AB03
5E082BC35
5E082BC40
5E082EE04
5E082EE18
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG56
5E082LL01
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】低温かつ急速な焼成処理が可能で、高い誘電率及び高い信頼性を同時に確保することができる積層型キャパシターを得る。
【解決手段】本発明は、キャパシターの本体の誘電体層が、強誘電体を含むコア(core)−シェル(shell)構造を有し、且つシェル部上に1〜2nmの厚さのコーティング膜がさらに形成された複数のブロック状セラミック組成物を少なくとも2層以上積層することでなる、積層型キャパシター及びその製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層、及び前記複数の誘電体層の各々を挟んで交互に配置される第1及び第2内部電極を含む本体と、
前記本体の長手方向における両端面上にそれぞれ配置され、前記両端面上に前記第1及び第2内部電極がそれぞれ露出している部分とそれぞれ電気的に接続されるように構成される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記複数の誘電体層の各々は、強誘電体を含むコア−シェル構造を有し、且つ前記コア−シェル構造を構成するシェル部の表面上に1〜2nmの厚さのコーティング膜がさらに形成された複数のブロック状セラミック組成物が少なくとも2層以上積層されてなる、積層型キャパシター。
【請求項2】
前記コーティング膜が、アルカリ金属原子を含む単分子型吸着剤と、硝酸塩または塩酸塩形態の添加剤と、を反応させることで形成される、請求項1に記載の積層型キャパシター。
【請求項3】
前記単分子型吸着剤が分子型電解質またはケトン系の物質を含み、前記アルカリ金属原子がNa(ナトリウム)またはK(カリウム)である、請求項2に記載の積層型キャパシター。
【請求項4】
前記複数の誘電体層の各々は、前記複数のブロック状セラミック組成物の間に配置されるガラス(glass)をさらに含む、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の積層型キャパシター。
【請求項5】
前記複数の誘電体層の各々は、セラミック粉末に対してガラスを含有させた材料から形成され、100モルの前記セラミック粉末に対する含有比率が1〜5モル%となるように前記ガラスが含まれている、請求項4に記載の積層型キャパシター。
【請求項6】
ブロック状セラミック組成物を少なくとも2層以上積層してセラミックシートを製造する段階と、
前記セラミックシートに、導電性ペーストを用いて第1及び第2内部電極パターンをそれぞれ形成する段階と、
前記第1及び第2内部電極パターンが形成されたセラミックシートを交互に積層した後、加圧することで、積層体を製造する段階と、
前記第1及び第2内部電極パターンの一部がそれぞれ露出するように前記積層体を切断した後、焼成することで、第1及び第2内部電極を含む本体を製造する段階と、
前記本体に、前記第1及び第2内部電極がそれぞれ露出している部分とそれぞれ電気的に接続されるように、導電性ペーストを用いて第1及び第2外部電極を形成する段階と、
前記第1及び第2外部電極が形成された本体を焼成する段階と、を含み、
前記セラミック組成物は、
Ba(OH)に金属異物とTiOを添加してシードを合成する段階と、
前記シードに粒成長抑制剤を添加した後、粒成長させて、シードをコア−シェル構造に形成する段階と、
前記シードのモル比を調節する段階と、
前記シードの表面に単分子型吸着剤をパッチさせた後、硝酸塩または塩酸塩形態の金属イオンを添加して反応させることで、1〜2nmの厚みを有するコーティング膜を形成する段階と、
前記コーティング膜が形成されたシードを乾燥することでブロック状粉末を製造する段階と、を含んで製造される、積層型キャパシターの製造方法。
【請求項7】
前記セラミック組成物の製造方法において、前記単分子型吸着剤がアルカリ金属原子を含むと共に、分子型電解質またはケトン系の物質を含み、前記アルカリ金属原子がNa(ナトリウム)またはK(カリウム)である、請求項6に記載の積層型キャパシターの製造方法。
【請求項8】
前記セラミックシートを製造する段階で、前記セラミックシートは、積層されたセラミック組成物の間にガラスをさらに配置して製造される、請求項6または請求項7に記載の積層型キャパシターの製造方法。
【請求項9】
前記セラミックシートは、100モルの前記セラミック組成物に対する含有比率が1〜5モル%となるようにガラスを含む、請求項8に記載の積層型キャパシターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型キャパシター及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型キャパシター(MLCC:Multilayered Capacitor)は、小型でありながらも高容量が保障され、且つ実装が容易である利点を有する電子部品であって、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピューター、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)及び携帯電話などの種々の電子製品の回路基板に取り付けられ、電気を充電または放電させる役割を担うチップ形態のコンデンサーである。
【0003】
近年、電子製品の小型化及び高速化の傾向に伴い、上記積層型キャパシターにおいても、超小型化及び超高容量化が要求されるとともに、DC電圧の印加時における容量の低下を防止するように、優れたDC特性及び耐電圧特性を有する高信頼性が要求されている。
【0004】
したがって、上記積層型キャパシターの高信頼性を実現するためには、誘電体層及び内部電極の薄層化が求められるだけでなく、製品の製造工程上、焼成時に低温で急速に焼成を行う焼成工程が必要であるため、このような低温/急速焼成工程に適した材料の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第2007−0023228号公報
【特許文献2】特開2011−256091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低温で急速な焼成処理が可能となるように構成され、高い誘電率及び高い信頼性を同時に確保することができる積層型キャパシター及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、キャパシター本体の誘電体層が、強誘電体を含むと共に内側部分(コア部)と外殻部分(シェル部)から構成されるコア(core)−シェル(shell)構造を有し、且つシェル部上に1〜2nmの厚さのコーティング膜がさらに形成された複数のブロック状セラミック組成物を少なくとも2層以上積層することでなる積層型キャパシターを提供する。
【0008】
本発明の他の側面は、誘電体層を形成するためのセラミックシートに用いられるセラミック組成物を製造し、上記セラミック組成物は、Ba(OH)に金属異物とTiOを添加してシードを合成する段階と、上記シードに粒成長抑制剤を添加した後、粒成長させて、シードをコア−シェル構造に形成する段階と、上記シードのモル比を調節する段階と、上記シードの表面に単分子型吸着剤をパッチ(patch)させた後、硝酸塩または塩酸塩形態の金属イオンを添加してから反応させて、1〜2nmのコーティング膜を形成する段階と、上記コーティング膜が形成されたシードを乾燥することで、ブロック状粉末を製造する段階と、を含んで製造される積層型キャパシターの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によると、積層型キャパシターの高い誘電率及び高い信頼性を同時に確保することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシターの概略的な構造を示した斜視図である。
図2図1に示すI−I'線を切断面とした場合の積層セラミックキャパシターの断面図である。
図3図2においてA部分を拡大して示した断面図である。
図4図1において内部電極の積層構造を示した分離斜視図である。
図5】本発明の一実施形態によるセラミック組成物をSTEM−EDSで示した写真である。
図6】本発明の一実施形態によるセラミック組成物を製造する方法を順に示したフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態による積層型キャパシターを製造する方法を順に示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0012】
なお、各実施形態の図面に示された同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。
【0013】
さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に異なる趣旨の説明がされていないない限り、他の構成要素を除外する趣旨ではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0014】
図1及び図2を参照すると、本実施形態による積層セラミックキャパシター100は、本体110と、第1及び第2外部電極131、132と、を含む。
【0015】
本実施形態を明確に説明するために本体110の方向を定義すると、図面上に表示されたL、W、及びTはそれぞれ、長さ方向、幅方向、及び厚さ方向を示す。
【0016】
ここで、厚さ方向は、誘電体層111が積層された積層方向と同一の概念として用いることができる。
【0017】
また、本体110の形状は特に制限されず、例えば、略六面体形状を有することができる。
【0018】
また、本実施形態では、説明の便宜のために、誘電体層111が積層されて成る本体110の壁面のうち、厚さ方向Tにおいて互いに対向する一対の面を第1面及び第2面、上記第1面と第2面とを接続し、且つ長さ方向Lにおいて互いに対向する一対の面を第3面及び第4面、これに垂直に交差し、且つ幅方向において互いに対向する一対の面を第5面及び第6面と定義する。
【0019】
本体110は、活性領域115と、マージン部である上部カバー112及び下部カバー113と、からなる。
【0020】
活性領域115はキャパシター100の容量形成に寄与する部分であって、複数の誘電体層111と、複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122と、を含む。
【0021】
このような活性領域115は、複数の誘電体層111と、各々の誘電体層111を間に挟んで交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122と、を厚さ方向Tに積層してから焼成したものである。
【0022】
誘電体層111は焼結された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認することが困難な程度に一体化された状態とすることができる。
【0023】
図3を参照すると、誘電体層111は、強誘電体を含む高誘電率のセラミック粉末111aを少なくとも2層以上、好ましくは3層〜5層にわたって積層することにより構成される。
【0024】
セラミック粉末111aを形成する材料は、例えば、BaTiO(チタン酸バリウム)系のものであって、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶した(Ba1−xCa)TiO、Ba(Ti1−yCa)O、(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)O、またはBa(Ti1−yZr)Oなどを含むことができるが、本発明に係るセラミック粉末の形成材料はこれらに限定されるものではない。
【0025】
また、セラミック粉末111aは、内側のコア部(core)と表層部であるシェル部(shell)からなるコア−シェル構造を有し、図5に示すように、上記シェル部上に1〜2nmの厚さのコーティング膜がさらに形成されて、略四面体からなるブロック状にそれぞれ構成される。
【0026】
この際、上記コーティング膜の厚さが2nmを超えると、各粉末のコーティング膜が互いに凝集するため膜の形態が維持されず、島(island)状に(点在する島のように)凝集塊が形成されてしまうという問題が発生する恐れがある。その一方で、上記コーティング膜の厚さが1nm未満であると、層の形態が安定して維持されず、却って焼成時の焼結性を阻害する原因となり得る。
【0027】
また、上記コーティング膜は、アルカリ金属原子を含む単分子型吸着剤と、硝酸塩または塩酸塩形態の添加剤と、を反応させることで形成することができる。
【0028】
この際、上記単分子型吸着剤としては、例えば、分子型電解質またはケトン系の物質を用いることができ、上記アルカリ金属は、原子番号が20以下のアルカリ金属元素であって、例えば、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、またはLi(リチウム)の少なくとも一つとすることができる。
【0029】
一方、製造されたセラミック粉末111aは、粒の大きさ(粒径など)が全て異なった状態であるため、上下に積層した時に、それぞれのセラミック粉末111aの間には空隙(void)が生じ得る。そのため、上記のような粒の大きさのばらつきによって生じる空隙を除去し、セラミック粉末111aの積層時の高さを設計通りにするために、誘電体層111にはガラス(glass)111bをさらに含ませることができる。
【0030】
この際、ガラス111bは、100モルのセラミック粉末111aに対して含有比率(モル比)が1〜5モル%となるように含まれることができる。ガラス111bの含量比が1モル%未満である場合、本体110の焼成時に誘電体層が十分に焼結されないという問題が発生し得る。また、ガラス111bの含量比が5モル%を超える場合、本体110の誘電体特性が十分に発現されないという問題が発生し得る。
【0031】
図4を参照すると、第1内部電極121及び第2内部電極122は互いに異なる極性を有する電極であって、誘電体層111の積層方向において互いに対向するように配置され、第1内部電極121と第2内部電極122の間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁されるようにすることができる。
【0032】
第1内部電極121及び第2内部電極122の各々は、本体110内の長さ方向Lに沿ってそれぞれ延在し、第1内部電極121及び第2内部電極122の各々は、一方の端部が本体110の長さ方向Lにおける両端面を形成する第3面及び第4面にそれぞれ露出するように配置することができる。
【0033】
また、本体110の長さ方向Lにおける両端面を形成する第3面及び第4面に露出した第1内部電極121及び第2内部電極122の一方の端部は、本体110の長さ方向Lにおける両端面を形成する第3及面び第4面に露出した箇所において第1外部電極131及び第2外部電極132とそれぞれ電気的に接続されるようにすることができる。
【0034】
上述のような構成により、第1及び第2外部電極131、132に所定の電圧が印加されると、互いに対向する第1内部電極121と第2内部電極122との間に電荷が蓄積される。この際、積層型キャパシター100の静電容量は、誘電体層111の積層方向に沿って第1内部電極121と第2内部電極122とが互いに重なり合う重複領域の面積に比例する。
【0035】
また、第1及び第2内部電極121、122の厚さは、用途に応じて決定することができ、例えば、本体110のサイズを考慮して、0.05〜2.5μmの範囲内となるように決定することができるが、本発明における内部電極121、122の厚みは、このような寸法に限定されるものではない。
【0036】
また、第1及び第2内部電極121、122は導電性金属で形成され、本実施形態ではニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)合金などの材料を用いることができるが、本発明における内部電極121,122の形成材料はこれらに限定されるものではない。
【0037】
上記導電性金属の印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明における導電性金属の印刷方法は、これらに限定されるものではない。
【0038】
上記カバーは上部カバー112及び下部カバー113を含む。
【0039】
図面を参照すると、上部カバー112は、活性領域115において最上部に配置された第1内部電極121の上面に所定の厚さとなるように形成された部分であり、下部カバー113は、活性領域115において最下部に配置された第2内部電極122の下面に所定の厚さとなるように形成された部分である。
【0040】
このような上部カバー112及び下部カバー113は、例えば、活性領域115に含まれる誘電体層111を、キャパシター100の本体110における活性領域115の上部と下部にそれぞれ少なくとも一つ以上積層することで形成することができる。
【0041】
第1及び第2外部電極131、132は、本体110の長さ方向Lにおける両端面を形成する第3及び第4面に配置され、第1及び第2内部電極121、122が第3面と第4面にそれぞれ露出した部分とそれぞれ接触して電気的に接続される。
【0042】
この際、第1及び第2外部電極131、132は、本体110の壁面のうち、厚さ方向Tにおいて互いに対向する第1面及び第2面の一部まで延在させる形で設けることができる。
【0043】
また、第1及び第2外部電極131、132は、必要に応じて、本体110の壁面のうち、幅方向Wにおいて互いに対向する第5面及び第6面の一部まで延在させる形で設けることができ、それにより、本体110に対する外部電極131、132の固着強度を向上させることができる。
【0044】
かかる第1及び第2外部電極131、132は、導電性金属を含む導電性ペーストを印刷したり塗布したりする方法により形成することができる。
【0045】
上記導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、金(Au)、またはこれらの合金を含むことができるが、本発明において用いられる導電性材料は、これらに限定されるものではない。
【0046】
一方、必要に応じて、第1及び第2外部電極131、132の表面に、ニッケル(Ni)またはスズ(Sn)などを用いてめっき層(不図示)をさらに形成することができる。
【0047】
積層型キャパシターの製造方法
以下、本発明の一実施形態による積層型キャパシター100の製造方法を図6および図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0048】
先ず、本発明の誘電体層111を形成するのに使用されるセラミック組成物を製造する方法について説明する。
【0049】
本実施形態に係るセラミック組成物は、先ず、Ba(OH)を準備し(ステップS10)、このBa(OH)に結晶軸比の値を高めるために金属異物を添加し(ステップS21)、TiOをさらに添加して(ステップS22)、シードを合成する(ステップS20)。
【0050】
次に、上記シードに粒成長抑制剤を添加し(ステップS31)、誘電体粉末の結晶性を上昇させながら粒成長させて、シードをコア−シェル構造に形成する(ステップS30)。
【0051】
次に、上記粒成長したシードのモル比を調節する(ステップS40)。
【0052】
上記モル比が調節されたシードは、水系で重量比が約20〜40重量%の固形分を有するスラリー状に分散している。
【0053】
したがって、上記シードに単分子型吸着剤を添加してシードの表面にパッチさせた後、硝酸塩または塩酸塩形態の金属イオンを添加して反応させて(ステップS51)、図5に示すように、シードのシェル部に1〜2nmの厚さのコーティング膜を形成する(ステップS50)。
【0054】
この際、上記単分子型吸着剤としては分子型電解質またはケトン系の物質を用いることができ、上記アルカリ金属原子はNa(ナトリウム)またはK(カリウム)などの金属元素とすることができる。
【0055】
次に、上記コーティング膜が形成されたシードを乾燥する(ステップS60)ことで、ブロック状の粉末形態からなるセラミック組成物が完成する。
【0056】
本実施形態の積層型キャパシター100を製造するためには、先ず、上記のような方法により製造されたセラミック組成物を用いて、複数のセラミックシートを製造する(ステップS110)。
【0057】
上記セラミックシートは、本体110の活性領域115と上部カバー112及び下部カバー113に含まれる誘電体層111を形成するためのものである。
【0058】
上記セラミックシートは、セラミック粉末、ポリマー、及び溶剤などを混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレードなどによりキャリアフィルム上に塗布及び乾燥することで、数μmの厚さのシート(sheet)状となるように製作することが可能である。
【0059】
この際、追加材料として、セラミック組成物の間に配置されるようにガラス(glass)をさらに添加することができる。
【0060】
上記ガラスは、セラミック組成物100モルに対する含有比率(モル比)が1〜5モル%となるように含まれることができる。
【0061】
次に、上記それぞれのセラミックシートの少なくとも一面に、ニッケルなどの導電性粉末を含む導電性ペーストを所定の厚さの層となるように印刷することで、第1及び第2内部電極121、122を形成する(ステップS120)。
【0062】
また、第1及び第2内部電極121、122の各々は、セラミックシートの長さ方向Lにおける一方の端部が本体部110の両端面(第3面と第4面)にそれぞれ露出するように形成することができる。
【0063】
この際、上記導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明における印刷方法は、これらに限定されるものではない。
【0064】
次に、第1及び第2内部電極121、122が形成された複数のセラミックシートを、それぞれのセラミックシートを挟んで第1及び第2内部電極121、122が互いに対向して配置されるように積層する。そして、その上面と下面に内部電極121、122が形成されていないセラミックシートを配置した後、加圧することで積層体を製造する(ステップS130)。
【0065】
次に、上記積層体を1個のキャパシターに対応する領域毎に切断することでチップ化し、焼成することで、厚さ方向Tにおいて互いに対向する第1面及び第2面を壁面として有し、第1及び第2内部電極121、122の各々の一端が交互に露出しており、長さ方向Lにおける両端面を形成する第3及び第4面を壁面としてさらに有し、幅方向Wにおいて互いに対向する第5及び第6面を壁面としてさらに有する本体110を製造する(ステップS140)。
【0066】
この際、上記積層体を成すセラミックシート内のセラミック組成物はブロック状の構造を有しており、相互接触が点接触でなく面接触となった状態で焼成されるため、焼成速度を速くすることができる。
【0067】
また、このようなセラミック組成物の相互間における面接触は、セラミックシートの添加剤がグレイン内で全体的に拡散することを抑制する作用をもたらすため、セラミック組成物におけるコア部分に高誘電率の領域を確保することが可能となる。
【0068】
したがって、このようなセラミックシートの特性により、積層型キャパシター100の誘電率及び信頼性を同時に向上させる効果を期待することができる。
【0069】
次に、本体110の長さ方向Lにおいて両端面を形成する第3及び第4面の上に、第1及び第2内部電極121、122が露出している部分とそれぞれ電気的に接続されるように、導電性ペーストを用いて第1及び第2外部電極131、132を形成する(ステップS150)。
【0070】
この際、第1及び第2外部電極131、132はディッピングまたはローラーなどの方法により形成することができるが、本発明における外部電極131、132の形成方法は、これらの方法に限定されるものではない。
【0071】
次に、上記のように形成したキャパシタを焼成して積層型キャパシター100を完成する(ステップS160)。
【0072】
従来の誘電体層111の製造方法は、母材として球状の粒形状を有するBaTiOと、添加剤としての無定形金属酸化物粉末とを混合し、有機溶剤を溶媒として均一に分散させた後、それをシート状に成形してから乾燥することで製造していた。
【0073】
しかし、上記誘電体層111は、添加剤として用いられる金属酸化物粉末の高い活性化エネルギー(activation energy)により、過度な粒成長が生じて信頼性が低下する。そのため、低速かつ高温となる条件下での焼成は可能であるが、急速かつ低温となる条件下での焼成や、薄層化した状態での焼成は困難であるという問題があった。
【0074】
上記の問題を解消するために、添加剤として用いられる金属酸化物粉末を20nm以下の粒径を有するナノ金属酸化物に製造する技術や、添加剤をBaTiOの表面にコーティングする技術が知られている。
【0075】
しかし、上記ナノ金属酸化物の場合、微粒分散の限界により、急速かつ低温となる条件下での焼成や薄層化した状態での焼成の効果が高くない。
【0076】
また、上記添加剤をBaTiOの表面にコーティングする技術の場合、過度な粒成長の発生は一部抑えることができるが、粒子同士の点接触の焼結特性を示す幾何学的(Geometric)特性により、依然として長い焼成時間が必要となる。
【0077】
以上より、本実施形態によると、誘電体層を成すセラミック組成物がコア−シェル構造を有し、このうちシェル部上に1〜2nmの厚さのコーティング膜が形成されることで、硝酸塩または塩酸塩などの添加剤が母材とは速く反応するが、概ねシェル部でのみ部分的に反応し、コア部に至るまで完全に拡散することは最小限に抑えられるため、低温で急速な焼成が可能となる。
【0078】
したがって、このような材料で誘電体層111及びキャパシター100の本体110を製造すると、積層型キャパシター100の高誘電率及び高信頼性を同時に確保することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0080】
100 積層型キャパシター
110 本体
111 誘電体層
111a セラミック組成物
111b ガラス
112 上部カバー
113 下部カバー
115 活性領域
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7