【解決手段】アンテナユニット100は、ドアハンドル200内に装着して用いられるアンテナユニット100であって、複数のアンテナ部10備えている。複数のアンテナ部10の各々は、コア11と、コア11に巻回されたコイル12と、コイル12の両端部(一端部13、他端部14がそれぞれ電気的に接続された一対の端子部15、16と、を有している。複数のアンテナ部10のコア11が互いに離間している。
前記複数のアンテナ部のそれぞれに対して個別のコンデンサが接続されていて、各アンテナ部がそれぞれLC共振回路を構成している請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
前記複数のアンテナ部の各々の前記コイルについて、他の前記アンテナ部の前記コイルからの離間距離が、前記コアの長さの1/3以上である請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
前記複数のアンテナ部に含まれる第1アンテナ部及び第2アンテナ部のうち、前記第1アンテナ部の前記コイルに入力する電流の向きを反転させることによって、当該アンテナユニットの周囲に形成される磁界の分布を変化させることが可能な入力電力変化回路を備える請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
前記複数のアンテナ部に含まれる第1アンテナ部及び第2アンテナ部のうち、前記第1アンテナ部の前記コイルに入力する矩形電圧の矩形波の位相をずらすことによって、当該アンテナユニットの周囲に形成される磁界の分布を変化させることが可能な入力電力変化回路を備える請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
前記複数のアンテナ部のうち互いに隣接するアンテナ部の前記コアの軸心どうしが所定の交差角度で交差している請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0012】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係るアンテナユニット100及びドアハンドル200を示す模式図である。
本実施形態に係るアンテナユニット100は、ユーザが携帯する電子キーと通信を行うことによってドア80の施錠(ロック)及び開錠(アンロック)の制御を自動的に行うキーレスエントリシステムを採用する車両のドアハンドルに組み込んで用いられるものである。
また、本実施形態に係るドアハンドル200は、キーレスエントリシステムを採用する車両のドア80に組み込んで用いられるものである。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るアンテナユニット100は、ドアハンドル200内に装着して用いられるアンテナユニット100であって、複数のアンテナ部10を備えている。複数のアンテナ部10の各々は、コア11と、コア11に巻回されたコイル12と、コイル12の両端部(一端部13及び他端部14)がそれぞれ電気的に接続された一対の端子部15、16と、を有している。そして、複数のアンテナ部10のコア11が互いに離間している。
また、複数のアンテナ部10のうち互いに隣接するアンテナ部10は、互いに所定の角度を挟んで配置されている。すなわち、複数のアンテナ部10のうち互いに隣接するアンテナ部10のコア11の軸心どうしが所定の交差角度(
図1に示す交差角度α)で交差している。ここで、所定の交差角度は、60度以上170度以下の範囲であることが好ましく、鈍角であることがより好ましく、130度以上150度以下であることが更に好ましく、140度であることが特に好ましい 。
ここで、交差角度αは、互いに隣接するアンテナ部10のコア11の軸心どうしが交差して見える方向であって、軸心どうしの交差角度が最も小さくなる方向から視たときの、当該軸心どうしのなす角度である。互いに隣接するアンテナ部10のコア11の軸心どうしは、同一平面上に配置されていて実際に交差していても良いし、実際には交差しておらず、ねじれの関係にあっても良い。
アンテナユニット100が備えるアンテナ部10の数は、特に限定されないが、本実施形態では、例えば、2つであるものとする。
また、本実施形態に係るドアハンドル200は、複数のアンテナ部10と、複数のアンテナ部10を収容しているとともに車両のドア80に対して揺動可能に取り付けられるハウジング210と、を備えている。複数のアンテナ部10の各々は、コア11と、コア11に巻回されたコイル12と、コイル12の両端部(一端部13及び他端部14)がそれぞれ電気的に接続された一対の端子部15、16と、を有し、複数のアンテナ部10のコア11が互いに離間している。すなわち、ドアハンドル200は、アンテナユニット100とハウジング210とを備えて構成されている。
以下、詳細に説明する。
【0014】
図1においては、車両のドア80の外面パネル81を部分的に示しているとともに、当該外面パネル81にドアハンドル200が取り付けられている状態を示している。
図1においては、外面パネル81とドアハンドル200については模式的な平断面構造を示している。ドアハンドル200の一端側に隣接する位置には、カバー部82が外面パネル81に取り付けられている。このカバー部82については、平面形状を示している。
図1において、外面パネル81よりも上側の領域は、車両の内部側の領域であり、外面パネル81よりも下側の領域は、車両の外部側の領域である。なお、
図1において、右方が車両の前側であり、左方が車両の後側である。
【0015】
本実施形態の場合、ドアハンドル200はレバー式であり、ドアハンドル200の揺動軸は、概ね上下方向に延在している。ドアハンドル200は、概ね、車両の前後方向に沿って延在している。
近年、ドアハンドル200は、当該ドアハンドル200の長手方向における中央部が、車両の外部側に向けて弧状に膨出した湾曲形状に形成することが試みられており、本実施形態に係るドアハンドル200も、そのような湾曲形状となっている。すなわち、ドアハンドル200は、平面視において、弧状に(アーチ状に)湾曲している。
なお、外面パネル81において、ドアハンドル200と対向している部分は、例えば、車両の内側に向けて凹曲面状に窪んでおり、ドアハンドル200と外面パネル81との間に手を差し入れやすくなっている。
後述するドアロック装置60(
図2)がドア80を開錠した状態においては、ユーザが手でドアハンドル200を把持し、該ドアハンドル200を車両の外部側(
図1において下側)に引っ張ることにより、ドアハンドル200がドア80に対して揺動するとともに、ドア80を開くことができるようになっている。
【0016】
ドアハンドル200は、その一端部(例えば前端部)がドア80の内部において軸部83により軸支され、ドア80に対して揺動可能となっている。
ドアハンドル200のハウジング210は、例えば、外側部材211と内側部材212とを備えており、外側部材211と内側部材212が相互に組み付けられることによって構成されている。ハウジング210の内部には、アンテナユニット100を収容する収容空間210aが形成されている。
なお、収容空間210aの形状も、当該収容空間210aの長手方向における中央部が車両の外部側に向けて弧状に膨出した湾曲形状に形成されている。
【0017】
内側部材212は、その両端部が車両の内側(つまりドア80の内部側)に向けて屈曲した形状に形成されており、両端部がドア80の内部に挿入されている。内側部材212の前端部には、ドア80の内部において軸部83によって軸支される被軸支部212aが形成されている。内側部材212の後端部には、係合部212bが形成されている。外面パネル81において、係合部212bと対応する部分には、ドアハンドル200が引っ張られて揺動した際に係合部212bが係合するストッパ部81aが形成されている。ドアハンドル200を引っ張ってドア80を開く際には、係合部212bがストッパ部81aに係合することによって、ドア80に対するドアハンドル200の揺動が規制される。
内側部材212における被軸支部212aの近傍の部分には、外面パネル81の内側の空間と外側の空間とを相互に連通させる配線通路212cが形成されている。配線通路212cを通して、各種の配線42が外面パネル81よりも内側(
図1において上側)の空間から外側(
図1において下側)の空間に亘って配設されている。
【0018】
アンテナユニット100は、複数のアンテナ部10を支持する支持部材を備えている。支持部材としては、板状のものや、ケース状のものや、ハーネスなどの金属ワイヤ状のものや、アンテナ部を固定するための凹部を有するブロック状のものなどを用いることができる。また、支持部材は内側部材212または外側部材211の内面と一体化されていても良い。更に、支持部材は連続するもの(全体が一体形成されたもの)ではなくても良い。連続でない場合、例えば、支持部材は複数の分割部に分割された分割構造をなし、各分割部が内側部材212または外側部材211に取り付けられても良い。
本実施形態においては、アンテナユニット100は、複数のアンテナ部10を支持する支持板20を備えている。すなわち、複数のアンテナ部10が共通の支持板20によって支持されている。支持板20は、ハウジング210に収容されている。本実施形態の場合、支持板20は、直接又は間接にハウジング210に固定されている。
【0019】
支持板20は、複数のアンテナ部10をそれぞれ支持する複数の支持部21と、複数の支持部21どうしの間に位置する境界部22と、を有しており、境界部22において屈曲している。すなわち、支持板20は屈曲しており、かつ、当該支持板20の屈曲部(境界部22)が複数のアンテナ部10どうしの間に位置している。一方、各支持部21は、平板状に形成されている。
支持板20の材料は特に限定されないが、絶縁材料であることが好ましい。支持板20は、例えば、塑性変形可能な樹脂材料により構成することができる。平坦な支持板20に複数のアンテナ部10を搭載した後で、支持板20の境界部22を局所的に加熱しながら支持板20を屈曲させることによって、支持板20を屈曲形状に形成することができる。ただし、射出成型などの成型技術を用いて支持板20を作製した後で、支持板20に複数のアンテナ部10を搭載しても良い。
支持板20は、例えば、その板面が鉛直又は略鉛直に起立する姿勢で、収容空間210a内に配置されている。
【0020】
上述のように、アンテナ部10は、コア11と、コア11に巻回されたコイル12と、一対の端子部15、16と、を有している。
コア11の材料としては、例えば、Ni−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト、金属系磁性体、またはアモルファス磁性体が用いられる。コア11は、一方向に長尺に形成されている。コイル12は、コア11の長手軸周りに巻回されている。
【0021】
上述のように、アンテナ部10は、一対の端子部15、16を有している。端子部15、16は、例えば、支持板20に固定されている。端子部15、16は、例えば、コイル12の一端部13及び他端部14がそれぞれ絡げられた絡げ端子である。
なお、各端子部15、16の一部分によって、アンテナ部10を外部に電気的に接続するための外部端子が構成されていてもよいし、外部端子は、端子部15、16とは別の端子部(不図示)により構成されていてもよい。
各アンテナ部10の外部端子は、後述する制御回路40(
図2)に対して電気的に接続されており、各アンテナ部10の動作は制御回路40によって制御される。
【0022】
ここで、支持板20は、例えば、
図1の左右方向に長尺に形成されており、左右方向における中央部において屈曲している。つまり、支持板20の長手方向における中央部に境界部22が配置されている。そして、支持板20は、ドアハンドル200の湾曲した延在方向に沿って延在している。
本実施形態の場合、2つのアンテナ部10のうち、一方のアンテナ部10aが、支持板20の一端部の片面に設けられ、他方のアンテナ部10bが、支持板20の他端部の片面に設けられている。これらアンテナ部10a、10bは、支持板20の同一面に配置することができる。
図1の例では、アンテナ部10a、10bは、約140度の角度を挟んで、収容空間210aの両端部にそれぞれ配置されている(交差角度αは約140度となっている)。また、アンテナ部10a、10bの長さは必要に応じてそれぞれ設定することができ、互いに同じ長さであっても良いし、互いに異なる長さであっても良い。
各アンテナ部10のコア11は、各コア11の長手方向が支持板20の延在方向に沿うように配置することができる。
【0023】
ここで、複数のアンテナ部10の各々のコイル12について、他のアンテナ部10のコイル12からの離間距離D1が、コア11の長さの1/3以上であることが好ましく、コア11の長さの1/2以上、または、コア11の長さ以上(コア11の長さの1倍以上)としてもよい。すなわち、各アンテナ部10のコイル12が、当該アンテナ部10のコア11の長さの1/3以上、他のアンテナ部10のコイル12から離間していることが好ましく、当該コア11の長さの1/2以上または当該コア11の長さ以上、他のアンテナ部10のコイル12から離間していてもよい。
このようにすることにより、コア11どうしの相互インダクタンスを抑制することができる。その結果、コア11の寸法や特性のバラツキや車両の走行時の振動に起因する相互インダクタンスの変動量も低減することができ、アンテナユニット100のアンテナ部10の特性が安定する。
【0024】
ドアハンドル200は、さらに、収容空間210a内に配置された静電容量検出電極41を有している。静電容量検出電極41は、例えば、支持板20に設けられている。ただし、静電容量検出電極41は、ハウジング210(内側部材212又は外側部材211)に設けられていてもよい。
静電容量検出電極41は、例えば、導電性金属板のプレス成形品により構成されている。静電容量検出電極41の材料は、特に限定されず、例えば、ベリリウム銅やリン青銅(Cu−Sn−P合金)などの銅合金が好適である。
支持板20又はハウジング210に対する静電容量検出電極41の固定方法は特に限定されず、例えば、嵌合、圧入、係止、接着等の任意の方法を採用することができる。
【0025】
図2は第1の実施形態に係るアンテナユニット100を含むキーレスエントリシステム1000の模式図であり、キーレスエントリシステム1000の回路構成とブロック構成とを混在させて示している。
【0026】
図2に示すように、キーレスエントリシステム1000は、キーレスエントリシステム1000の動作制御を行う制御回路40と、ユーザが携帯する電子キーの認証処理を行う認証回路50と、ドア80の状態をロック状態又はアンロック状態に切り替えるドアロック装置60と、キーレスエントリシステム1000の各部に電力を供給可能な電源70と、を備えている。電源70は、例えば、車両のバッテリーである。
【0027】
制御回路40には静電容量検出電極41が電気的に接続されており、制御回路40は、静電容量検出電極41における静電容量の変化を検出可能に構成されている。すなわち、アンテナユニット100は、静電容量の変化を検出する静電容量検出部を備えている。
なお、静電容量検出部は、複数のアンテナ部10からリクエスト信号(後述)を送信するリクエスト動作のトリガを検出するトリガ検出部の一例である。トリガ検出部としては、他に、ドアハンドル200に設けられた押しボタンなどに対する操作(押下操作)を検出するものを例示できる。
【0028】
複数のアンテナ部10のそれぞれに対して個別のコンデンサ31が接続されていて、各アンテナ部10がそれぞれLC共振回路30を構成している。
例えば、各アンテナ部10に対してコンデンサ31が直列に接続されている。
【0029】
制御回路40は、静電容量検出電極41における静電容量の変化を検出することにより、ドアハンドル200にユーザの手が接触又は近接したことを認識し、ユーザが携帯する電子キー(不図示)の認証のためのリクエスト信号を複数のアンテナ部10から送信させるように構成されている。
認証回路50は、図示しない受信アンテナを備えており、アンテナ部10からリクエスト信号の送信が開始されてから所定期間の間、電子キーから送信されるID信号が受信アンテナによって受信されたか否かを監視する。
認証回路50が予め記憶しているIDコードと対応するID信号が受信アンテナによって受信された場合、認証回路50は、その旨を制御回路40に通知する。すると、制御回路40は、ドアロック装置60を制御して、ドア80の錠を開錠する(アンロック状態にする)。
その一方で、認証回路50が予め記憶しているIDコードと対応するID信号が受信アンテナによって受信されない場合、認証回路50は、制御回路40にその旨を通知し、制御回路40はドア80の錠をロック状態に維持させる。
【0030】
従って、電子キーを携帯したユーザがドア80を開けるためにドアハンドル200に触ると、それを静電容量検出部が検出し、アンテナユニット100から電子キーに向けてリクエスト信号が送信される。すると、リクエスト信号を受信した電子キーは、認証回路50に対して自己のID信号を送信し、そのID信号を受信した認証回路50は、受信したID信号に含まれるIDコードが予め記憶されているIDコードと一致するか否かを判定する。IDコードが一致する場合(認証がなされた場合)には、制御回路40がドアロック装置60のアクチュエータを駆動してドア80の錠をアンロック状態とし、ドア80を開放可能にする。
一方、IDコードが一致しなかった場合(認証がなされなかった場合)には、制御回路40はドア80の錠をロック状態に維持させる。
【0031】
以上のような第1の実施形態によれば、アンテナユニット100は、複数のアンテナ部10を備えており、複数のアンテナ部10のコア11が互いに離間している。よって、必要な通信距離を確保しつつ、ドアハンドルのデザインの多様化に容易に対応することが可能である。すなわち、複数のアンテナ部10の配置の自由度を高くすることができる。
各アンテナ部10を任意の形状に配置することができるため、例えば、上述したような湾曲した形状のドアハンドル200のハウジング210内にアンテナユニット100の複数のアンテナ部10を配置することなどが容易となる。
さらに、アンテナユニット100が複数のアンテナ部10の集合体であることにより、ドアハンドル200を引っ張る際にハウジング210が撓んでも、各アンテナ部10が個別に変位できるため、アンテナ部10に加わる応力を抑制することができる。
【0032】
また、複数のアンテナ部10が共通の支持板20によって支持されているため、複数のアンテナ部10を予め最適な配置で支持板20に搭載した後、一括してハウジング210内に配置することができる。また、ドアハンドル200を引っ張る際にハウジング210が撓んでも、支持板20が応力を吸収することによって、アンテナ部10に加わる応力を抑制することができる。
【0033】
また、支持板20は、複数のアンテナ部10をそれぞれ支持する支持部21と、支持部21どうしの間に位置する境界部22とを有し、境界部22において屈曲している。よって、上述したような湾曲した形状のドアハンドル200のハウジング210内に、複数のアンテナ部10を一括して配置することができる。
【0034】
<変形例1>
上記の第1の実施形態では、アンテナユニット100が備えるアンテナ部10の数が2つの例を説明したが、アンテナ部10の数は3つ以上であってもよい。
例えば、
図3(a)に示すように、アンテナユニット100は、3つのアンテナ部10(アンテナ部10a、10b、10c)を備えるものとして構成することができる。3つのアンテナ部10のうち、互いに隣接するものどうしは、例えば、約160度の角度を挟んで配置されている。この場合、3つのアンテナ部10a、10b、10cのうち、中央に位置するアンテナ部10cを収容空間210aの中央部に配置し、残りのアンテナ部10a、10bをそれぞれ収容空間210aの両端部に配置することができる。
【0035】
<変形例2>
上記の第1の実施形態では、約140度の角度を挟んで2つのアンテナ部10a、10bが収容空間210aの両端部にそれぞれ配置されている例を説明したが、例えば、
図3(b)に示すように、これらアンテナ部10a、10bは、約160度の角度を挟んで収容空間210aの一端部と中央部とにそれぞれ配置されていても良い。
【0036】
〔第2の実施形態〕
図4は第2の実施形態に係るアンテナユニット100を含むキーレスエントリシステム1000の模式図であり、キーレスエントリシステム1000の回路構成とブロック構成とを混在させて示している。
本実施形態の場合、キーレスエントリシステム1000は、制御回路40が入力電力変化回路45を含んで構成されている点で、上記の第1の実施形態と相違し、その他の点では上記の第1の実施形態と同様に構成されている。
なお、
図1に示す構造については、本実施形態にも共通である。
【0037】
すなわち、本実施形態に係るアンテナユニット100は、複数のアンテナ部10に含まれる第1アンテナ部(アンテナ部10a)及び第2アンテナ部(アンテナ部10b)のうち、第1アンテナ部(アンテナ部10a)のコイル12に入力する電流の向きを反転させることによって、当該アンテナユニット100の周囲に形成される磁界の分布を変化させることが可能な入力電力変化回路45を備えている。
入力電力変化回路45が自動的にアンテナ部10aのコイル12に入力する電流の向きを反転させることによって、アンテナ部10aの周囲に形成される磁界を変化させて、アンテナ部10a、10bの周囲において通信が困難な領域の位置を変化させることが可能となっている。
以下、この動作について、
図5(a)及び
図5(b)を用いて説明する。
【0038】
アンテナ部10aのコイル12に入力する電流の向きが第1の方向のとき(以下、第1状態と称する場合がある)に、アンテナ部10a及びアンテナ部10bの周囲にそれぞれ
図5(a)に模式的に示すような磁界が形成されるとする。すなわち、
図5(a)には、アンテナ部10a及びアンテナ部10bの周囲に形成される磁力線が示されており、各磁力線の向きが黒塗りの三角形の矢尻形状で示されている。
図5(a)に示す第1状態のときには、例えば第1領域17においては、アンテナ部10aによって形成される磁力線の向きと、アンテナ部10bによって形成される磁力線の向きとが、互いにほぼ反対方向となっており、従って、第1領域17では電波が弱く、通信が困難となる。つまり、複数のアンテナ部10により形成される磁界が相殺されることにより、通信が困難な領域(死角)が発生する。
なお、例えば第2領域18においては、アンテナ部10aによって形成される磁力線の向きと、アンテナ部10bによって形成される磁力線の向きとが、互いにほぼ同方向となっており、従って、第2領域18では電波が強く、良好な通信が可能である。
【0039】
一方、アンテナ部10aのコイル12に入力する電流の向きが第1の方向とは反対の第2方向のとき(以下、第2状態と称する場合がある)には、アンテナ部10a及びアンテナ部10bの周囲にそれぞれ
図5(b)に模式的に示すような磁界が形成される。
図5(b)に示す第2状態のときには、第1領域17においては、アンテナ部10aによって形成される磁力線の向きと、アンテナ部10bによって形成される磁力線の向きとが、互いにほぼ同方向となり、従って、第1領域17では電波が強く、良好な通信が可能となる。一方、第2領域18においては、アンテナ部10aによって形成される磁力線の向きと、アンテナ部10bによって形成される磁力線の向きとが、互いにほぼ反対方向となり、従って、第2領域18では電波が弱く、通信が困難となる。
【0040】
つまり、アンテナ部10aのコイル12に入力する電流の向きを時分割で反転させて、アンテナ部10aにより形成される磁力線を、アンテナ部10bにより形成される磁力線に対して相対的に変化させる。これにより、第1領域17では通信が困難である一方で第2領域18では通信が良好な第1状態から、第1領域17では通信が良好である一方で第2領域18では通信が困難な第2状態に切り替えることができる。
よって、ユーザが電子キーを保持する位置に応じて適切な通信ができないといった不具合の発生頻度を低減することができる。
さらに、アンテナ部10aと10b間の相互インダクタンスを減らすためには、両者を交互にオンしても良い。即ち、アンテナ10aと10bのうちの何れか一方をオンにして他方をオフにする第1期間と、一方をオフにして他方をオンにする第2期間と、を交互に繰り返すことにより、車両の前後に死角なく信号を送ることができる。
【0041】
ここで、第1状態から第2状態への切り替えは、例えば、静電容量検出部が静電容量の変化を検出してから所定時間が経過しても、認証回路50によって電子キーの認証がなされなかった場合に行うようにしてもよい。
すなわち、本実施形態に係るドアハンドル200は、複数のアンテナ部10からリクエスト信号を送信するリクエスト動作のトリガを検出するトリガ検出部(例えば静電容量検出部)と、複数のアンテナ部10に含まれる第1アンテナ部(アンテナ部10a)及び第2アンテナ部(アンテナ部10b)のうち、第1アンテナ部のコイル12に対する電力の入力態様を変化させることによって、複数のアンテナ部10の周囲に形成される磁界の分布を変化させることが可能な入力電力変化回路45と、を備え、入力電力変化回路45は、トリガ検出部がトリガを検出してから所定時間に亘って複数のアンテナ部10の通信対象(電子キー)の認証がなされなかった場合に、第1アンテナ部のコイル12に対する電力の入力態様を変化させる。
これにより、第1状態から第2状態への切り替えを、必要な場合にのみ実行するようにできる。
【0042】
なお、上記の第2の実施形態では、入力電力変化回路45が第1アンテナ部(アンテナ部10a)のコイル12に入力する電流の向きを反転させる例を説明したが、本発明はこの例に限らない。
例えば、入力電力変化回路45は、第1アンテナ部(アンテナ部10a)のコイル12に入力する矩形電圧の矩形波の位相を徐々に又は段階的にずらすことによって、アンテナユニット100の周囲に形成される磁界の分布を変化させることが可能に構成されていても良い。この場合、例えば、静電容量検出部が静電容量の変化を検出してから所定時間が経過しても、認証回路50によって電子キーの認証がなされなかったときに、第1アンテナ部(アンテナ部10a)のコイル12に入力する矩形電圧の矩形波の位相をずらすことによって、通信が困難な領域の位置をずらすことができる。よって、この場合も、ユーザが電子キーを保持する位置に応じて適切な通信ができないといった不具合の発生頻度を低減することができる。
【0043】
また、入力電力変化回路45は、上述した例に限らず、アンテナ部10aにより形成される磁界の強さが、アンテナ部10bにより形成される磁界の強さに対して相対的に強くなるように、アンテナ部10aのコイル12に対する電力の入力態様を変化させてもよい。
【0044】
〔第3の実施形態〕
図6は第3の実施形態に係るアンテナユニット100及びドアハンドル200を示す模式図である。本実施形態に係るアンテナユニット100及びドアハンドル200は、以下に説明する点で、上記の第1の実施形態又は第2の実施形態に係るアンテナユニット100及びドアハンドル200と相違している。本実施形態に係るアンテナユニット100及びドアハンドル200において、上記の第1の実施形態又は第2の実施形態に係るアンテナユニット100及びドアハンドル200と共通する構成については、適宜に説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係るドアハンドル200の場合、複数のアンテナ部10のうちの少なくともいずれか1つは、ハウジング210に対して揺動可能に軸支されている。好ましくは、複数のアンテナ部10の各々は、ハウジング210に対して揺動可能に軸支されている。
これにより、ドアハンドル200を引っ張った際にドアハンドル200が撓んでも、アンテナ部10に作用する応力を低減することができる。
【0046】
ここで、アンテナ部10が揺動可能な方向は、ドアハンドル200の揺動方向と同じ方向成分を含む方向であることが好ましい。
また、アンテナ部10が揺動可能な方向は、ドアハンドル200の膨出の方向(
図6における下方)の成分を含む方向であることが好ましい。
また、アンテナ部10をハウジング210に対して軸支している軸の延在方向は、ドアハンドル200をドア80に対して軸支している軸の延在方向に対して平行であることが好ましい。
【0047】
アンテナ部10をハウジング210に対して軸支する具体的な構造は、特に限定されない。
一例として、
図6に示すように、アンテナユニット100は、支持板20を備えておらず、その代わりに、各アンテナ部10を個別に保持する複数のアンテナ保持ケース91を備えている。
そして、各アンテナ部10をアンテナ保持ケース91内に収容保持させ、当該アンテナ保持ケース91をハウジング210に対して軸支部92によって軸支することができる。これにより、軸支部92を揺動支点としてアンテナ保持ケース91及びアンテナ部10をハウジング210に対して揺動可能にすることができる。
【0048】
アンテナ保持ケース91は、ハウジング210の延在方向におけるアンテナ保持ケース91の一端部において、ハウジング210に対して軸支することができる。
また、アンテナ保持ケース91において、ハウジング210の端部側に位置する部分が軸支部92によって軸支され、アンテナ保持ケース91において、ハウジング210の中央側の部分は、揺動先端側となっていることが好ましい。
【0049】
また、車両の走行時の振動によりアンテナ保持ケース91およびアンテナ部10ががたついてしまうことを抑制できるように、ドアハンドル200は、アンテナ保持ケース91における揺動先端側の部分を、揺動を規制する方向に付勢する付勢手段を備えていることが好ましい。
図6には、その付勢手段として、圧縮型のコイルバネにより構成された付勢部材93が、アンテナ保持ケース91と外側部材211との間に介装されている例を示している。なお、付勢部材93は、スポンジやゴムなどの弾性部材でも良いし、軸支部92に装着されたねじりバネなどであってもよい。ただし、付勢手段(付勢部材93)は任意の構成であり、ドアハンドル200は、付勢手段を備えていなくても良い。
【0050】
なお、上記の第3の実施形態では、アンテナ部10がハウジング210に対して揺動可能に軸支されている例を説明したが、アンテナ部10が支持板20に対して揺動可能に軸支されていても良い。
すなわち、複数のアンテナ部10のうちの少なくともいずれか1つが、支持板20に対して揺動可能に軸支されている構成を採用することができる。この場合、支持板20は、板面が水平又は略水平に配置することができ、且つ、支持板20は、板面が曲がる方向に屈曲しているのではなく、板面の面内方向で屈曲した構造のものとすることができる。この場合も、複数のアンテナ部10の各々が、支持板20に対して揺動可能に軸支されていることが好ましい。この場合、アンテナ部10の揺動軸を支持板20の板面に対して直交する方向に配置し、アンテナ部10が支持板20の面内方向において支持板20に対して揺動可能にすることができる。
【0051】
また、複数のアンテナ部10が個別の支持板20によって支持されており、各支持板20がハウジング210に対して揺動可能に軸支されていても良い。
【0052】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0053】
上記においては、複数のアンテナ部10のそれぞれに対して個別のコンデンサ31が接続されていて、各アンテナ部10がそれぞれLC共振回路30を構成している例を説明したが、複数のアンテナ部10に対して共通のコンデンサが直列に接続されていて、複数のアンテナ部10によって共通のLC共振回路が構成されていてもよい。なお、複数のアンテナ部10どうしは直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。
【0054】
また、上記においては、ドアハンドル200がレバー式である例を説明したが、ドアハンドル200は揺動軸が略水平に配置されていて上方に揺動する(跳ね上げられる)フラップ式であってもよい。
【0055】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)ドアハンドル内に装着して用いられるアンテナユニットであって、複数のアンテナ部を備え、前記複数のアンテナ部の各々は、コアと、前記コアに巻回されたコイルと、前記コイルの両端部がそれぞれ電気的に接続された一対の端子部と、を有し、前記複数のアンテナ部の前記コアが互いに離間しているアンテナユニット。
(2)前記複数のアンテナ部は、共通の支持板に支持されている(1)に記載のアンテナユニット。
(3)前記支持板は、前記複数のアンテナ部をそれぞれ支持する複数の支持部と、前記複数の支持部どうしの間に位置する境界部と、を有し、前記境界部において屈曲している(2)に記載のアンテナユニット。
(4)前記複数のアンテナ部のうちの少なくともいずれか1つは、前記支持板に対して揺動可能に軸支されている(2)又は(3)に記載のアンテナユニット。
(5)前記複数のアンテナ部のそれぞれに対して個別のコンデンサが接続されていて、各アンテナ部がそれぞれLC共振回路を構成している(1)から(4)のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
(6)前記複数のアンテナ部の各々の前記コイルについて、他の前記アンテナ部の前記コイルからの離間距離が、前記コアの長さの1/3以上である(1)から(5)のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
(7)前記複数のアンテナ部に含まれる第1アンテナ部及び第2アンテナ部のうち、前記第1アンテナ部の前記コイルに入力する電流の向きを反転させることによって、当該アンテナユニットの周囲に形成される磁界の分布を変化させることが可能な入力電力変化回路を備える(1)から(6)のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
(8)前記複数のアンテナ部に含まれる第1アンテナ部及び第2アンテナ部のうち、前記第1アンテナ部の前記コイルに入力する矩形電圧の矩形波の位相をずらすことによって、当該アンテナユニットの周囲に形成される磁界の分布を変化させることが可能な入力電力変化回路を備える(1)から(7)のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
(9)前記複数のアンテナ部のうち互いに隣接するアンテナ部の前記コアの軸心どうしが所定の交差角度で交差している(1)から(8)のいずれか一項に記載のアンテナユニット。
(10)前記所定の交差角度は60度以上170度以下である(9)に記載のアンテナユニット。
(11)前記所定の交差角度は130度以上150度以下である(9)に記載のアンテナユニット。
(12)複数のアンテナ部と、前記複数のアンテナ部を収容しているとともに、車両のドアに対して揺動可能に取り付けられるハウジングと、を備え、前記複数のアンテナ部の各々は、コアと、前記コアに巻回されたコイルと、前記コイルの両端部がそれぞれ電気的に接続された一対の端子部と、を有し、前記複数のアンテナ部の前記コアが互いに離間しているドアハンドル。
(13)前記複数のアンテナ部からリクエスト信号を送信するリクエスト動作のトリガを検出するトリガ検出部と、前記複数のアンテナ部に含まれる第1アンテナ部及び第2アンテナ部のうち、前記第1アンテナ部の前記コイルに対する電力の入力態様を変化させることによって、前記複数のアンテナ部の周囲に形成される磁界の分布を変化させることが可能な入力電力変化回路と、を備え、前記入力電力変化回路は、前記トリガ検出部が前記トリガを検出してから所定時間に亘って前記複数のアンテナ部の通信対象の認証がなされなかった場合に、前記第1アンテナ部の前記コイルに対する電力の入力態様を変化させる(12)に記載のドアハンドル。
(14)前記複数のアンテナ部のうちの少なくともいずれか1つは、前記ハウジングに対して揺動可能に軸支されている(12)又は(13)に記載のドアハンドル。