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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-204941(P2017-204941A)
(43)【公開日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20171020BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20171020BHJP
【FI】
   H02M3/155 K
   H02M7/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-95778(P2016-95778)
(22)【出願日】2016年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】邱 雁宇
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】常定 亮太
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC08
5H006DC02
5H006DC04
5H006DC05
5H730AA18
5H730AS01
5H730AS04
5H730BB14
5H730CC01
5H730DD03
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD11
5H730FD41
5H730FF01
5H730FF09
(57)【要約】
【課題】電力変換装置のゼロクロス点検出手段において、ゼロクロス点の検出精度を向上させると共に、回路を安価に構成する。
【解決手段】ゼロクロス点検出部30は、電源位相検出回路5が出力する位相検出信号のハイレベル時間とローレベル時間をそれぞれ測定し、ハイレベル時間とローレベル時間の大小関係により交流電圧のゼロクロス点の時刻に対する位相検出信号のレベルが変化する時刻の進み/遅れを判定し、位相検出信号のハイレベル時間とローレベル時間との時間差の半分の値である位相検出誤差を算出し、位相検出誤差と時刻の進み/遅れに基づいて位相検出信号を補正し、交流電圧のゼロクロス点を求める位相補正手段とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相の交流電源が入力される整流回路と、同整流回路の出力に接続された昇圧チョッパと、前記交流電源の電圧の位相を検出してゼロクロス点信号を出力するゼロクロス点検出手段と、前記ゼロクロス点信号に基づいて前記昇圧チョッパを駆動するスイッチングパルス信号を出力する制御部とを備えた電力変換装置であって、
前記ゼロクロス点検出手段は、
前記交流電源から入力された交流電圧を半波整流して、正の半周期であるA信号と負の半周期であるB信号とを出力する交流電圧検出回路と、
前記A信号と前記B信号とにオフセット電圧を印加するオフセット電圧回路と、
前記A信号と前記B信号の大小関係により、ハイレベル又はローレベルの位相検出信号を出力する単電源型のコンパレータとを備えた電源位相検出回路と、
前記位相検出信号のハイレベル時間とローレベル時間をそれぞれ測定し、前記ハイレベル時間と前記ローレベル時間の大小関係により前記交流電圧のゼロクロス点の時刻に対する前記位相検出信号のレベルが変化する時刻の進み/遅れを判定し、
前記位相検出信号のハイレベル時間とローレベル時間との時間差の半分の値である位相検出誤差を算出し、
前記位相検出誤差と前記時刻の進み/遅れに基づいて前記位相検出信号を補正し、前記交流電圧のゼロクロス点を求める位相補正手段とを備えたことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相交流電圧のゼロクロス点検出手段を有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単相交流電圧のゼロクロス点を検出する回路を備えた電力変換装置としては、特許文献1に示すものが開示されている。この図示しない電力変換装置の位相検出回路は、単相の交流電源の2つの端子間にフォトカプラを配置し、交流電圧Vacに対応してこのフォトカプラ内のダイオードに流れる電流に基づいてフォトカプラから出力されるパルス信号(PCout)を出力する。そして、この信号が入力されたマイコンでゼロクロスポイントのタイミングを推定し、推定したタイミングを用いて電力変換装置を制御している。
【0003】
図6は横軸が時間を、縦軸が交流電圧Vacとフォトカプラから出力されるPCoutの信号をそれぞれ示している。
PCoutの信号はフォトカプラに所定以上の電流が流れるt1〜t5、t6〜t8の期間にハイレベルとなり、それ以外の期間ではローレベルとなる。このPCoutの信号のt5〜t8を周期:tacと定義する。
【0004】
また、PCoutのハイレベル期間において、交流電圧Vacのピーク電圧のタイミングであるt7を中心として左右の期間が同じになる。マイコンはPCoutのハイレベル期間を測定し、この半分の期間であるt6〜t7の時間を求める。そして、マイコンはPCoutの信号立ち上がりからt6〜t7の時間が経過したt7のタイミングを基準点とし、この基準点から1/4tacが経過した時点を次のゼロクロス点、また、基準点から3/4tacが経過した時点をさらに次のゼロクロス点と予測している。
【0005】
しかしながら、PCoutが本来、ローレベルからハイレベルになるべきt2の直前のt1でノイズが発生し、PCoutがt1〜t2でハイレベルとなり、結果的にt1〜t5の期間がハイレベルになる場合がある。この場合、本来はt4が交流電圧Vacのピーク電圧のタイミングであるが、マイコンがPCoutのハイレベル期間の中心はt3と誤判断するため、予測したゼロクロス点に誤差が発生する問題がある。
【0006】
このため、ノイズの影響を受けにくい差動型の電源位相検出回路が用いられている。図2はこの電源位相検出回路5を示すブロック図である。
電源位相検出回路5は、図示しない単相交流電源の一方の端子に接続されるAラインと、他方の端子に接続されるBラインとが接続されている。
【0007】
Aラインには抵抗51の一端が接続され、抵抗51の他端は抵抗52の一端に、また、抵抗52の他端はグランドにそれぞれ接続されている。一方、Bラインには抵抗53の一端が接続され、抵抗53の他端は抵抗54の一端に、また、抵抗54の他端はグランドにそれぞれ接続されている。
【0008】
一方、+5ボルトの電源には抵抗55の一端が接続され、抵抗55の他端はダイオード57のカソードに、また、ダイオード57のアノードはグランドに接続されている。一方、+5ボルトの電源には抵抗56の一端が接続され、抵抗56の他端はダイオード58のカソードに、また、ダイオード58のアノードはグランドに接続されている。そして、単電源型のコンパレータ59の電源端子とグランド端子には、+5ボルトとグランドがそれぞれ接続されている。
【0009】
そして、コンパレータ59の非反転入力端子(+)は、ダイオード57のカソード端子と、抵抗51と抵抗52の接続点にそれぞれ接続されている。また、コンパレータ59の反転入力端子(−)は、ダイオード58のカソード端子と、抵抗53と抵抗54の接続点にそれぞれ接続されている。なお、抵抗51と抵抗52の抵抗値の比率と、抵抗53と抵抗54の抵抗値の比率は同じであり、抵抗55と抵抗56の抵抗値も同じである。
【0010】
なお、+5ボルトの電源に接続された抵抗55、56と、グランドに接続された抵抗52、54でオフセット電圧回路60が構成され、抵抗51、52、53、54とダイオード57、58で交流電圧検出回路61が構成されている。そして、これらにコンパレータ59を加えた回路が電源位相検出回路5となる。
【0011】
そして、AラインとBラインに単相交流電源の電圧が印加されると、交流電圧が抵抗51と抵抗52、抵抗53と抵抗54でそれぞれ分圧される。そして分圧された電圧はダイオード57とダイオード58でそれそれ半波整流され、この脈流電圧がコンパレータ59の非反転入力端子(+)と反転入力端子(−)にそれぞれ入力される。
【0012】
それぞれの脈流電圧は単電源型のコンパレータ59で比較するため、抵抗55と抵抗52によってAライン信号に、また、抵抗56と抵抗54によってBライン信号に、それぞれオフセット電圧が印加されている。従って抵抗55と抵抗52の抵抗比率と、抵抗56と抵抗54の抵抗比率がほぼ等しければ、コンパレータ59から出力される位相検出信号は、交流電圧のゼロクロス点で信号が反転するパルス信号となる。
【0013】
しかしながら、抵抗55と抵抗52、及び抵抗56と抵抗54のそれぞれの抵抗値誤差が大きい場合、コンパレータ59の各入力端子に印加されるオフセット電圧が同一の電圧でなく誤差(電圧差)が発生する。一方、コンパレータ59で比較される電圧は、一方が一定の直流電圧の時、他方の電圧は半波の正弦波である。このため、オフセット電圧の誤差が大きいほどコンパレータ59から出力される位相検出信号のデューティー比が1:1からずれて誤ったゼロクロス点を検出してしまうという問題があった。
このため、電力変換装置はこの誤ったゼロクロス点に基づいてリアクタに流れる電流をスイッチングするため力率の悪化を招いていた。
【0014】
一方、抵抗55と抵抗52と抵抗56と抵抗54として精度の高い抵抗を使用する方法、又は単電源型のコンパレータ59の代わりにオフセット電圧が不要な両電源型のコンパレータを用いる方法もあるが、いずれの方法もコストアップとなってしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−45763号公報(第6−7頁、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上述べた問題点を解決し、電力変換装置のゼロクロス点検出手段において、ゼロクロス点の検出精度を向上させると共に、回路を安価に構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上述の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、単相の交流電源が入力される整流回路と、同整流回路の出力に接続された昇圧チョッパと、前記交流電源の電圧の位相を検出してゼロクロス点信号を出力するゼロクロス点検出手段と、前記ゼロクロス点信号に基づいて前記昇圧チョッパを駆動するスイッチングパルス信号を出力する制御部とを備えた電力変換装置であって、
前記ゼロクロス点検出手段は、
前記交流電源から入力された交流電圧を半波整流して、正の半周期であるA信号と負の半周期であるB信号とを出力する交流電圧検出回路と、
前記A信号と前記B信号とにオフセット電圧を印加するオフセット電圧回路と、
前記A信号と前記B信号の大小関係により、ハイレベル又はローレベルの位相検出信号を出力する単電源型のコンパレータとを備えた電源位相検出回路と、
前記位相検出信号のハイレベル時間とローレベル時間をそれぞれ測定し、前記ハイレベル時間と前記ローレベル時間の大小関係により前記交流電圧のゼロクロス点の時刻に対する前記位相検出信号のレベルが変化する時刻の進み/遅れを判定し、
前記位相検出信号のハイレベル時間とローレベル時間との時間差の半分の値である位相検出誤差を算出し、
前記位相検出誤差と前記時刻の進み/遅れに基づいて前記位相検出信号を補正し、前記交流電圧のゼロクロス点を求める位相補正手段とを備える。
【発明の効果】
【0018】
以上の手段を用いることにより、本発明による単相交流電圧のゼロクロス点検出手段を有する電力変換装置によれば、請求項1に係わる発明は、位相補正手段が交流電圧のゼロクロス点の時刻に対する位相検出信号のレベルが変化する時刻の進み/遅れと位相検出誤差に基づいて位相検出信号を補正して交流電圧のゼロクロス点を求めるため、位相検出信号に位相検出誤差が含まれていても正確なゼロクロス点を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による電力変換装置の実施例を示すブロック図である。
図2】電源位相検出回路を示すブロック図である。
図3】本発明による位相補正部を示すブロック図である。
図4】本発明による位相補正部の動作を説明する説明図である。
図5】本発明による位相補正部の別の動作を説明する説明図である。
図6】従来のゼロクロス点の検出方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明による電力変換装置の実施例を示すブロック図である。
電力変換装置1は図1に示すように、単相の交流電源13が接続される入力端4aと入力端4bと、整流回路2と、昇圧チョッパ3と、交流電源13の電圧の位相を検出してゼロクロス点信号を出力するゼロクロス点検出部(ゼロクロス点検出手段)30と、昇圧チョッパ3の入力電流を検出するための電流センサ6と、電力変換装置1の入力電流を電流センサ6からの検出信号により検出する入力電流検出部8を備えている。
【0022】
また、電力変換装置1は、昇圧チョッパ3の入力電圧を検出するための入力電圧検出部9と、昇圧チョッパ3の出力電圧(母線電圧)を検出するための出力電圧検出部10と、昇圧チョッパ3の出力の正極である出力端4cと負極である出力端4dと、入力電流検出部8による入力電流およびゼロクロス点検出部30から出力されるゼロクロス点信号に基づいて、昇圧チョッパ3を駆動するスイッチングパルス信号を駆動部7に出力するマイクロコンピュータなどからなる制御部11と、制御部11からの駆動信号により昇圧チョッパ3を駆動する駆動部7とを備えている。
【0023】
ゼロクロス点検出部30は、交流電源13の電圧の位相を検出し、ハイレベルの期間とローレベルの期間の合計が交流電源13の電圧の1周期と同じ期間になる位相検出信号として出力する電源位相検出回路5と、入力された位相検出信号を補正してゼロクロス点信号を出力する位相補正部(位相補正手段)20で構成されている。なお、電源位相検出回路5は、背景技術で説明した回路と同じであるため詳細な説明を省略する。
【0024】
昇圧チョッパ3は、一端が整流回路2の正端子側に接続されたリアクタ(昇圧チョークコイル)3aと、リアクタ3aの他端にアノード端子が接続されたダイオード3bと、このリアクタ3aの他端と整流回路2の負端子側の間に接続されたスイッチング素子(例えばIGBT;絶縁ゲート形トランジスタ)3cと、ダイオード3bのカソード端子と整流回路2の負端子側の間に接続され、昇圧された出力電圧を平滑化する平滑コンデンサ(電解コンデンサ)12を備えている。
この昇圧チョッパ3は、スイッチング素子3cによってリアクタ3aを介して短絡電流を流すことにより昇圧と力率の改善を行なう。なお、上記したリアクタ(昇圧チョークコイル)3aの位置は、図1の位置に限るものではなく、交流電源13と整流回路2が接続される配線に直列に接続しても良い。
【0025】
なお、制御部11は交流電圧における連続する2つのゼロクロス点で示される交流電源13の半周期毎に、同半周期の前半で複数回のスイッチング動作を行うアクティブ動作期間と、半周期の後半にスイッチング動作を行わないパッシブ動作期間を設ける部分スイッチング方式で動作する。このため、制御部11はゼロクロス点でハイレベルとローレベルが変化するゼロクロス点信号を用いて交流電源13の電圧のゼロクロス点のタイミングを判断している。そして制御部11はゼロクロス点から所定時間後にスイッチング素子3cのスイッチングを開始する。
【0026】
次に図4を用いて電源位相検出回路5について動作説明を行なう。
なお、以降、位相検出信号の1周期において、ハイレベルの期間よりもローレベルの期間が長い場合をハイレベル短状態、ハイレベルの期間よりもローレベルの期間が短い場合をローレベル短状態とそれぞれ呼称する。
【0027】
図4は電源位相検出回路5と位相補正部20の動作を説明する説明図である。
図4の横軸は時間を示している。そして、縦軸において図4(1)は、単相の交流電源13から出力される交流電圧を示している。図4(2)はコンパレータ59の入力信号であり、実線はコンパレータ59の非反転入力端子(+)に入力されるAライン信号を、破線はコンパレータ59の反転入力端子(−)に入力されるBライン信号をそれぞれ示している。また、図4(3)はコンパレータ59から出力される位相検出信号を示している。なお、t21〜t30は時間を示している。また、図4(4)〜図4(6)は位相補正部20に関わる信号であるため後で説明する。
【0028】
図4(2)に示すようにコンパレータ59の非反転入力端子(+)にはダイオード57で整流された脈流信号であるAライン信号(実線)が、コンパレータ59の反転入力端子(−)にはダイオード58で整流された脈流信号であるBライン信号(破線)が入力されており、コンパレータ59はBライン信号電圧よりAライン信号の電圧が大きくなった時、コンパレータ59の出力、つまり、図4(3)に示す位相検出信号がハイレベルになり、その逆の時に位相検出信号がローレベルとなる。
【0029】
背景技術で説明したように、コンパレータ59の各入力端子に印加されるオフセット電圧がほぼ同じ場合は位相検出信号のレベル変化点がゼロクロス点を示しているが、オフセット電圧が異なってその電圧の差、つまり、オフセット電圧の誤差が大きくなると、位相検出信号のレベル変化点が交流電圧のゼロクロス点とずれてしまい、この結果、そのデューティー比も1:1から大きく外れることになり、正しいゼロクロス点を検出できなくなる。このため、本発明では位相補正部20が、この不正確な位相検出信号を補正して正確なゼロクロス点を求める構成を発明の特徴にしている。
【0030】
次に図3のブロック図を用いて位相補正部20の構成を説明する。
位相補正部20は、位相検出信号のハイレベル期間を測定するハイレベル期間測定部21と、位相検出信号のローレベル期間を測定するローレベル期間測定部22と、ハイレベル期間とローレベル期間の時間が入力され、位相検出信号のレベル変化点と交流電圧のゼロクロス点における時間的なずれである位相誤差を算出する位相誤差算出部23と、位相検出信号を位相誤差に基づいて補正し、正確なゼロクロス点信号を出力する位相検出信号補正部24を備えている。
【0031】
ハイレベル期間測定部21とローレベル期間測定部22がそれぞれ測定した位相検出信号のハイレベル時間とローレベル時間は位相誤差算出部23へ出力される。位相誤差算出部23は、交流電圧の正方向の期間、つまり、位相検出信号がハイレベルの場合、ハイレベル時間とローレベル時間を比較し、ハイレベル時間<ローレベル時間ならばハイレベル短状態、ハイレベル時間>ローレベル時間ならローレベル短状態、ハイレベル時間とローレベル時間がほぼ同じ、例えば5マイクロセカンド以内の違いであれば電力変換装置としての機能に影響がないため、位相誤差がない状態と判断する。なお、これらの3つの状態を位相検出状態と呼称する。また、ハイレベル時間とローレベル時間は位相検出信号のレベルが反転する都度、それぞれの時間が算出され、常に最新の値が位相誤差算出部23へ出力される。
【0032】
次に位相誤差算出部23は、ハイレベル時間とローレベル時間の差の絶対値を算出し、その結果を半分にすることで位相検出誤差(時間)を算出する。そして、位相誤差算出部23は、位相検出誤差と位相検出状態のデータを位相検出信号補正部24へ出力する。
【0033】
位相検出信号補正部24は、入力された位相検出信号が示す誤ったゼロクロス点のタイミング、つまり、位相検出信号のレベル変化点と実際のゼロクロス点の位相検出誤差(時間)、及び実際のゼロクロス点に対する位相検出信号の進み/遅れである位相検出状態が入力されている。従って、位相検出信号補正部24は、位相検出誤差と位相検出状態を用いて位相検出信号から正しいゼロクロス点でレベルが変化するゼロクロス点信号を生成する。
【0034】
具体的に位相検出信号補正部24は、入力された位相検出信号の立ち下がり時点で、もし、位相検出状態のデータが位相誤差がない状態であれば、位相検出信号をそのままゼロクロス点信号として出力する。もし、位相検出状態のデータがハイレベル短状態であれば、位相検出信号補正部24は位相検出信号の立ち下がりから位相検出誤差(時間)経過後にゼロクロス点信号をローレベルにし、その時点から1/2T(交流電圧周期の半分)の時間経過後にゼロクロス点信号をローレベルからハイレベルに変化させる。
【0035】
また、位相検出信号補正部24は、もし、位相検出状態のデータがローレベル短状態であれば位相検出信号の立ち上がりから位相検出誤差(時間)経過後にゼロクロス点信号をハイレベルにし、その時点から1/2T(交流電圧周期の半分)の時間経過後にゼロクロス点信号をハイレベルからローレベルに変化させる。
【0036】
次に図4の説明図を用いて位相検出信号がハイレベル短状態の場合における位相補正部20の補正動作を説明する。
【0037】
図4の横軸は時間を示している。図4の縦軸において、図4(1)は交流電圧を、図4(2)はコンパレータ59の入力信号を、図4(3)は位相検出信号を、図4(4)は算出したハイレベル時間の出力タイミングを、図4(5)は算出したローレベル時間の出力タイミングを、図4(6)はゼロクロス点信号を、それぞれ示している。なお、t21〜t30は時刻を示している。
【0038】
図4(2)に示すようにオフセット電圧の誤差により、Aライン信号よりもBライン信号の電圧が高くなっている。このため、コンパレータ59は図4(3)に示すように位相検出信号のハイレベル時間がローレベル時間よりも短い位相検出信号を出力する。
【0039】
一方、ハイレベル期間測定部21は、位相検出信号のハイレベルの期間の時間を測定し、位相検出信号がハイレベルからローレベルに変化した時、例えばt27でこのレベルの変化直前に測定したt26〜t27のハイレベル時間を位相誤差算出部23へ出力する。一方、ローレベル期間測定部22は、位相検出信号のローレベルの期間の時間を測定し、位相検出信号がローレベルからハイレベルに変化した時、例えばt26でこのレベルの変化直前に測定したt23〜t26のローレベル時間を位相誤差算出部23へ出力する。
【0040】
位相誤差算出部23は、ハイレベル時間<ローレベル時間であるためハイレベル短状態と判断し、『ハイレベル短状態』の位相検出状態を示すデータと、(ローレベル時間−ハイレベル時間)/2で算出した『位相検出誤差の時間』を位相検出信号補正部24へ出力する。
【0041】
位相検出信号補正部24は、『ハイレベル短状態』が入力されたため、図4(3)で示すように位相検出信号がt27で立ち下がった時から、入力された『位相検出誤差の時間』が経過したt28でゼロクロス点信号をハイレベルからローレベルに変化させ、t28から1/2×T( 電源電圧の周期) が経過した時、ゼロクロス点信号をローレベルからハイレベルに変化させる。位相検出信号補正部24は、この処理を位相検出信号の1周期毎に繰り返して実行する。
【0042】
この結果、不正確なゼロクロス点を示していた位相検出信号が、位相補正部20によって補正され、そのレベルが反転するタイミングで正確なゼロクロス点を示すゼロクロス点信号を生成することができる。このため、制御部11はこのゼロクロス点信号を用いて、ゼロクロス点から所定の時間だけ経過した昇圧チョッパ3のスイッチング開始タイミングを正確に求めることができ、意図した力率改善動作を実行することができる。
【0043】
次に図5の説明図を用いて位相検出信号がローレベル短状態の場合における位相補正部20の補正動作を説明する。
【0044】
図5の横軸は時間を示している。図5の縦軸において、図5(1)は交流電圧を、図5(2)はコンパレータ59の入力信号を、図5(3)は位相検出信号を、図5(4)算出したハイレベル時間の出力タイミングを、図5(5)は算出したローレベル時間の出力タイミングを、図5(5)はローレベル時間の算出結果の出力タイミングを、図5(6)はゼロクロス点信号を、それぞれ示している。なお、t41〜t50は時刻を示している。
【0045】
図5(2)に示すようにオフセット電圧の誤差により、Aライン信号よりもBライン信号の電圧が低くなっている。このため、コンパレータ59は図5(3)に示すように位相検出信号のハイレベル時間がローレベル時間よりも長い位相検出信号を出力する。
【0046】
一方、ハイレベル期間測定部21は、位相検出信号のハイレベルの期間の時間を測定し、位相検出信号がハイレベルからローレベルに変化した時、例えばt44でこのレベル変化直前に測定したt41〜t44のハイレベル時間を位相誤差算出部23へ出力する。一方、ローレベル期間測定部22は、位相検出信号のローレベルの期間の時間を測定し、位相検出信号がローレベルからハイレベルに変化した直後、例えばt45で直前に測定したt44〜t45のローレベル時間を位相誤差算出部23へ出力する。
【0047】
位相誤差算出部23は、ハイレベル時間>ローレベル時間であるためローレベル短状態と判断し、『ローレベル短状態』の位相検出状態を示すデータと(ハイレベル時間−ローレベル時間)/2で算出した『位相検出誤差の時間』を位相検出信号補正部24へ出力する。
【0048】
位相検出信号補正部24は、『ローレベル短状態』のデータが入力されたため、図5(3)で示すように位相検出信号がt45で立ち上がった時から、入力された『位相検出誤差の時間』が経過したt46でゼロクロス点信号をローレベルからハイレベルに変化させ、t46から1/2×T( 電源電圧の周期) が経過した時、ゼロクロス点信号をハイレベルからローレベルに変化させる。位相検出信号補正部24は、この処理を位相検出信号の1周期毎に繰り返して実行する。
【0049】
この結果、不正確なゼロクロス点を示していた位相検出信号が、位相補正部20によって補正され、そのレベルが反転するタイミングで正確なゼロクロス点を示すゼロクロス点信号を生成することができる。このため、制御部11はこのゼロクロス点信号を用いて、ゼロクロス点から所定の時間だけ経過した昇圧チョッパ3のスイッチング開始タイミングを正確に求めることができ、意図した力率改善動作を実行することができる。
【0050】
以上説明したように、位相補正部20が電源位相検出回路5から出力される位相検出信号を補正してゼロクロス点信号を出力するため、位相検出信号にオフセット電圧の誤差による位相検出誤差が含まれていても、制御部11は正確なゼロクロス点を求めることができる。また、位相補正部20はソフトウェアで実現できるため、ゼロクロス点検出部30を安価に構成することができる。さらに、オフセット電圧による誤差が発生する単電源のコンパレータ59を使用できるため、両電源型コンパレータを使用する場合よりも安価にゼロクロス点検出部30を構成できる。
【0051】
本発明において位相補正部20を、例えば特許文献1の方式、つまり、位相検出信号の半周期時間の半分のタイミングを交流電圧のピーク点とする考え方も適用可能である。しかしながら、この方式の場合、位相検出信号のローレベル時間がハイレベル時間よりも短い場合、交流電圧のピーク点を特定できたタイミングはゼロクロス点が過ぎた直後であり、その次のゼロクロス点以降でしか補正でいない。本発明ではゼロクロス点の直前で補正処理が開始されるため、交流電圧が大きく変化したり、オフセット電圧が変動したとしても素早く対応可能であり、この結果、電力変換装置1の反応速度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 電力変換装置
2 整流回路
3 昇圧チョッパ
3a リアクタ
3b ダイオード
3c スイッチング素子
4a、4b 入力端
4c、4d 出力端
5 電源位相検出回路
6 電流センサ
7 駆動部
8 入力電流検出部
9 入力電圧検出部
10 出力電圧検出部
11 制御部
12 平滑コンデンサ
13 交流電源
20 位相補正部
21 ハイレベル期間測定部
22 ローレベル期間測定部
23 位相誤差算出部
24 位相検出信号補正部
30 ゼロクロス点検出部
51、52、53、54、55、56 抵抗
57、58 ダイオード
59 コンパレータ
60 オフセット電圧回路
61 交流電圧検出回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6