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特開2017-205518多電極カテーテルスパインおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-205518(P2017-205518A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】多電極カテーテルスパインおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20171027BHJP
【FI】
   A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-97031(P2017-97031)
(22)【出願日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】15/157,179
(32)【優先日】2016年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ビシャブ・アウジラ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK04
4C160KK20
4C160KK37
4C160MM33
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】 可撓性フレームを提供する。
【解決手段】 可撓性フレームが導電性の中空円筒状金属チューブを含み、この金属チューブは長手軸に沿って複数の切り込みを有して複数の導電性ワイヤを形成している。ワイヤはチューブの長手軸に沿って円周方向に間隙によって等間隔に隔地されて、ワイヤを電気絶縁している。第1の電極はフレームの円周の周りに、長手軸に沿って搭載され、複数のワイヤのうちの第1のワイヤに取り付けられている。第2の電極は、可撓性フレームの円周の周りに、長手軸に沿って第1の電極から所定の距離に搭載され、第2のワイヤに取り付けられている。非導電性の熱可塑性層を第1および第2の電極間で可撓性フレームの外面に固定して、第1および第2の電極間に絶縁層を形成してもよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の可撓性フレームであって、
外面、円周、および長手軸を有する導電性の中空円筒状金属チューブであって、前記金属チューブは前記長手軸に沿って複数の切り込みを有して、複数の平行な導電性ワイヤを含む可撓性フレームを形成し、前記複数の導電性ワイヤはそれぞれ前記チューブの前記長手軸に沿って円周方向に間隙によって等間隔に隔置されて前記複数のワイヤを電気絶縁する、金属チューブと、
前記可撓性フレームの前記円周の周りに、前記チューブの前記長手軸に沿って搭載され、前記複数のワイヤのうちの第1のワイヤに取り付けられた第1の電極と、
前記可撓性フレームの前記円周の周りに、前記チューブの前記長手軸に沿って前記第1の電極から所定の距離に搭載され、前記複数のワイヤのうちの第2のワイヤに取り付けられた第2の電極であって、前記第2のワイヤは前記第1のワイヤに隣接し、前記第1のワイヤに取り付けられていない、第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間で前記可撓性フレームの前記外面に固定された非導電性の熱可塑性層であって、前記熱可塑性層が前記複数のワイヤを円周方向に囲んで前記第1の電極と第2の電極との間に絶縁層を形成する、非導電性の熱可塑性層と、を含む、導電性の可撓性フレーム。
【請求項2】
前記複数の導電性ワイヤはそれぞれ非導電性の電気絶縁体コーティングを含んでいる、請求項1に記載のフレーム。
【請求項3】
前記電気絶縁体コーティングはパリレンを含んでいる、請求項2に記載のフレーム。
【請求項4】
前記熱可塑性層はポリエーテルブロックアミドを含んでいる、請求項1に記載のフレーム。
【請求項5】
前記熱可塑性層は、リフローされた熱可塑性物質を含み、前記リフローされた熱可塑性物質は前記複数の導電性ワイヤ間の各間隙に充填されている、請求項1に記載のフレーム。
【請求項6】
前記円筒状金属チューブは、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、白金、およびMP35N合金からなる群から選択された導電性金属を含む、請求項1に記載のフレーム。
【請求項7】
前記複数の電極は、パラジウム、白金、金、イリジウム、ならびにそれらの組み合わせおよび合金からなる群から選択された導電性金属を含む、請求項1に記載のフレーム・カテーテル。
【請求項8】
前記複数の平行な導電性ワイヤの数は8〜50である、請求項1に記載のフレーム。
【請求項9】
前記複数のワイヤはそれぞれ幅が50〜250μmである、請求項1に記載のフレーム。
【請求項10】
前記複数のワイヤはそれぞれ幅が約20μmである、請求項1に記載のフレーム。
【請求項11】
前記第1の電極は、前記第1の電極を前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに取り付けるための鍵穴を含み、前記第2の電極は、前記第2の電極を前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに取り付けるための鍵穴を含んでいる、請求項1に記載のフレーム。
【請求項12】
前記第1の電極は、前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに、溶接によって、前記第1の電極内の前記鍵穴を通して取り付けられ、前記第2の電極は、前記複数のワイヤのうちの前記第2のワイヤに、溶接によって、前記第2の電極内の前記鍵穴を通して取り付けられている、請求項11に記載のフレーム。
【請求項13】
前記長手軸に沿った前記金属チューブの前記複数の切り込みはレーザ切断によって形成されている、請求項1に記載のフレーム。
【請求項14】
導電性の可撓性フレームを製造する方法であって、
導電性の中空円筒状金属チューブを前記チューブの長手軸に沿って切断して前記長手軸に沿って複数の切り込みを形成することであって、前記複数の切り込みは、複数の平行な導電性ワイヤを含む可撓性フレームを形成し、前記複数の導電性ワイヤはそれぞれ前記チューブの前記長手軸に沿って円周方向に間隙によって等間隔に隔置されて、前記複数のワイヤを電気絶縁する、ことと、
第1の電極を、前記可撓性フレームの前記円周の周りに、前記チューブの前記長手軸に沿って、前記複数のワイヤのうちの第1のワイヤに取り付けることと、
第2の電極を、前記可撓性フレームの前記円周の周りに、前記チューブの前記長手軸に沿って、前記複数のワイヤのうちの第2のワイヤに取り付けることであって、前記第2のワイヤは前記第1のワイヤに隣接し、前記第2の電極は、前記チューブの前記長手軸に沿って、前記第1の電極から所定の距離に配置されて、前記第1のワイヤに取り付けられていない、ことと、
前記第1の電極と第2の電極との間で前記可撓性フレームの少なくとも外面上に非導電性の熱可塑性層を形成することであって、前記熱可塑性層が前記複数のワイヤを円周方向に囲んで前記第1の電極と第2の電極との間に絶縁層を形成する、ことと、を含む、方法。
【請求項15】
前記複数の導電性ワイヤを非導電性コーティングでコーティングすることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記非導電性コーティングはパリレンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記導電性の金属チューブは、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、白金、およびMP35N合金からなる群から選択された金属を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記熱可塑性層を形成することが、
前記第1の電極と第2の電極との間で前記可撓性フレームの前記円周の周りに熱可塑性物質チュービングを配置することと、
前記熱可塑性物質チュービングを熱収縮チュービングで覆うことと、
前記熱可塑性物質チュービングを加熱して前記熱可塑性物質をリフローして、外層を形成することと、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記熱可塑性物質チュービングを加熱して前記熱可塑性物質をリフローし前記複数のワイヤ間の前記複数の間隙内に入れて、複数の導電性ワイヤを電気絶縁する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記熱可塑性物質チュービングを加熱して前記熱可塑性物質をリフローして、前記可撓性フレームの前記外面上に熱可塑性層を形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の電極は、前記第1の電極を前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに取り付けるための鍵穴を含み、前記第2の電極は、前記第2の電極を前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに取り付けるための鍵穴を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の電極は、前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに、溶接によって、前記第1の電極内の前記鍵穴を通して取り付けられ、前記第2の電極は、前記複数のワイヤのうちの前記第2のワイヤに、溶接によって、前記第2の電極内の前記鍵穴を通して取り付けられている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記長手軸に沿った前記金属チューブの前記複数の切り込みはレーザ切断によって形成される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的に、経皮治療に対する方法およびデバイスに関し、具体的にはカテーテル、詳細には多電極カテーテルに関する。より詳細には、本開示は多電極診断および治療カテーテルの製造方法の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波(RF)電極カテーテルは、長年にわたり医療現場で一般的に使用されてきた。電極カテーテルは心臓内の電気的活動を刺激およびマッピングし、異常な電気的活動が見られる部位をアブレーションするために用いられる。特に、数多くの徴候に対して、標的アブレーションを実施し得る。たとえば、心筋組織のアブレーションは、カテーテルを用いてRFエネルギーを印加し、損傷を形成して、心組織中の催不整脈性の電流経路を破断することによる、心不整脈の治療として周知である。別の例として、腎臓のアブレーション処置には、腎動脈内に単一又は多電極カテーテルを挿入して動脈内に螺旋状又は円周の損傷を完成させて動脈の神経を麻痺させ、高血圧の治療を行なうことが伴う場合がある。他の用途では、電極カテーテルを患者内に挿入して心臓の室内に位置させ、異常な電気的活動の場所を決定する。
【0003】
多くの場合、多電極カテーテルを用いることが好まれる。さらに、カテーテルは、複数の機能(診断用か又は治療用か)を行なうことがますます要求されている。カテーテルは両方の機能を提供することが多い。カテーテルのサイズも考慮すべき事項である。多くの場合、患者内への橈骨挿入点の方が大腿アプローチよりも好まれる。また、小さい方が通常、挿入経路に沿って侵襲性が小さく外傷性が小さいと考えられている。したがって、多電極カテーテルをデザインするときに、内部の管腔スペースが重要である。管腔は、とりわけ、電極および種々のセンサをシステム・コントローラに接続するために用いられる配線をすべて収容し、ならびに治療部位に灌漑流体を供給するための導管として機能する場合がある。単一カテーテルが行なうこれらの機能のそれぞれによって、管腔内のスペースに対する要求がさらに高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、望ましい挿入サイズを維持しながらより多くの特徴に適応することができる多電極カテーテルを提供することが望ましいであろう。以下に記述されるように、本開示はこれらおよび他の目的を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、カテーテルであって、細長い本体と細長い本体の遠位端に搭載された多電極アセンブリとを含むカテーテルに関する。多電極アセンブリは、少なくとも1つのスパインを含み、少なくとも1つのスパインは可撓性フレームを含み、可撓性フレームは複数の導電性ワイヤと非導電性外層と複数のリング電極とを有し、複数のリング電極はそれぞれ、複数の導電性ワイヤの隣接する導電性ワイヤに溶接されている。
【0006】
一態様では、複数の導電性ワイヤは電気絶縁体コーティングを含んでいる。一態様では、電気絶縁体コーティングはパリレンコーティングである。
【0007】
一態様では、非導電性コーティングは熱可塑性層である。一態様では、熱可塑性層はポリエーテルブロックアミドであり、別の態様では、熱可塑性層はリフローされた熱可塑性物質であり、リフローされた熱可塑性物質は複数の導電性ワイヤ間の複数の間隙に充填されている。
【0008】
一態様では、可撓性フレームは、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、白金、およびMP35N合金からなる群から選択された導電性金属を含んでいる。
【0009】
一態様では、複数の電極は、パラジウム、白金、金、イリジウム、ならびにそれらの組み合わせおよび合金からなる群から選択された導電性金属を含んでいる。
【0010】
一態様では、多電極アセンブリは、カテーテルから配置されたときに螺旋形状電極アセンブリを形成するように構成された単一のスパインである。
【0011】
一態様では、多電極アセンブリは複数のスパインを含み、一態様では、複数のスパインは、配置されたときにバスケット形電極アセンブリを形成するように構成されている。
【0012】
また本開示は、多電極アセンブリを製造するための方法を対象にしている。本方法は、可撓性フレームを形成することであって、可撓性フレームは複数の導電性ワイヤを含む、形成することと、可撓性フレームに複数のリング電極を取り付けることであって、可撓性フレームに複数のリング電極を取り付けることは、複数の電極をそれぞれ導電性ワイヤに溶接することを含み、複数の導電性ワイヤはそれぞれ1つの電極のみが電気的に取り付けられている、取り付けることと、少なくとも可撓性フレームの外側部分上に熱可塑性層を形成することと、を含んでいる。
【0013】
一態様では、可撓性フレームを形成することは、導電性の金属円筒から複数の導電性ワイヤを切断することを含んでおり、複数の導電性ワイヤは遠位リングで接合されている。一態様では、可撓性フレームは、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、白金、およびMP35N合金からなる群から選択された導電性金属であり、一態様では、本方法はさらに、複数の導電性ワイヤに非導電性コーティングをコーティングすることを含んでいる。非導電性コーティングはパリレンコーティングであってもよい。
【0014】
一態様では、熱可塑性層を形成することは、複数のリング電極に隣接して熱可塑性物質チュービングを配置することと、熱可塑性物質チュービングを熱収縮チュービングで覆うことと、熱可塑性物質チュービングを加熱して熱可塑性物質をリフローし、外層を形成することと、を含んでいる。熱可塑性物質チュービングを加熱して熱可塑性物質をリフローし複数の間隙内に入れて複数の導電性ワイヤを電気絶縁し、別の態様では、熱可塑性物質チュービングを加熱して熱可塑性物質をリフローして、可撓性フレームの外面上に熱可塑性層を形成する。
【0015】
一態様では、本方法はさらに、熱可塑性層を形成した後に、切断した導電性の金属円筒から遠位リングを取り除くことを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
更なる特徴および利点は、添付図面に例示するように、本開示の好ましい実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。添付図面の同様の参照記号は、概して、図全体を通じて同一の部分又は要素を示す。
図1】本発明の実施形態による多電極カテーテルの斜視図である。
図2】本発明の実施形態による多電極カテーテルの斜視図である。
図3】本発明の実施形態による多電極カテーテルの斜視図である。
図4】本発明の実施形態によるレーザ切断したフレームの斜視図である。
図5】本発明の実施形態により図4のレーザ切断したフレームに複数の電極を付けた斜視図である。
図6】本発明の実施形態により図5のレーザ切断したフレームに複数の電極が付いたものを熱可塑性物質が覆っている斜視図である。
図7】本発明の実施形態により多電極スパインを製造する方法の一実施形態を例示するフロー・チャートである。
図8】本発明の実施形態により患者を治療するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に、本開示は、具体的に例示された材料、構成、手順、方法、又は構造に限定されず、変化し得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書に記載されているようなものに類似するか又は等価である多くの選択肢が、本開示の実践又は実施形態において用いられることができるが、好ましい材料および方法が本明細書に記載されている。
【0018】
本明細書で使用する用語は、本開示の特定の実施形態を説明するためのみであって、制限することを意図するものでないことも理解されるべきである。
【0019】
添付の図に関連して下記に示される詳細記述は、本開示の例示的実施形態を説明するためのものであり、本開示が実践可能な限定的な例示的実施形態を示すことを意図したものではない。本記述全体にわたって使用される用語「例示的」とは、「実施例、事例、又は実例として役立つ」ことを意味し、必ずしも他の例示的な実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。詳細記述には、本明細書の例示的な実施形態の徹底した理解を提供することを目的とした、具体的な詳細が含まれる。本明細書の例示的実施形態は、これらの具体的な詳細なしでも実施が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。場合によっては、本明細書に示される例示的実施形態の新しさを明確にするために、周知の構造および装置がブロック図形式で示される。
【0020】
単に便宜的および明確さの目的で、上、下、左、右、上方、下方、上側、下側、裏側、後側、背側、および前側などの方向を示す用語が、添付の図に関して使用されることがある。これらおよび類似の方向を示す用語は、本開示の範囲をいかなる意味でも制限すると見なされるべきではない。
【0021】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。
【0022】
最後に、本明細書および添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0023】
図1に示されるように、カテーテル10は、近位端および遠位端を有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体の近位端に設けられた制御ハンドル14と、を備え、それぞれが複数の電極20を担持する複数のスパイン18を有するバスケット形電極アセンブリ16が、カテーテル本体12の遠位端に取り付けられている。カテーテル本体12は、単一の軸方向ルーメン、つまり中央ルーメン(図示せず)を有する、細長い管状構造を備えるが、所望により、任意追加的に複数のルーメンを有することもできる。電気信号の正確なマッピングを可能にするために、たとえば、1回という少ない拍動で右心房又は左心房の電気的機能の大部分又はその実質的にすべてを検出するために、いくつかの実施形態は、比較的高密度の電極アレイを提供することが望ましいことがある。したがって、用いるスパイン18の数は、8、10、12、又は任意の好適な数であってよい。スパイン18は、径方向に均一に又は不均一に分布してよい。さらに、各スパイン18は、スパインあたり少なくとも10個および最大約16個の電極など、複数の電極20を含んでよい。他の用途では、必要に応じてより少ない数のスパインおよび/又は電極を使用してもよい。さらに、電極は各スパインに沿って均一に分布してもよく、あるいは、測定した電気信号の解析を促進するため、又は患者の解剖学的構造の所望の区域に接近するために、近位、中央、又は遠位に偏らせてもよい。いくつかの実施形態では、電極20のうちの1つ又は2つ以上を、高周波エネルギーを送達して電極に隣接した組織をアブレーションするように構成してもよい。
【0024】
カテーテル本体12は、可撓性、すなわち屈曲可能であるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造を有していてもよく、任意の好適な材料で作製することができる。1つの構造は、ポリウレタン又はPEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)から作られる外壁を有する。外壁は、カテーテル本体12の捩り剛性を高めるために、ステンレス鋼などの、埋め込まれた編組みメッシュを備えており、そのため、制御ハンドル14が回転されると、カテーテル本体の遠位端部がそれに対応する方式で回転するようになっている。カテーテル本体12の外径は重要ではないが、一般に可能な限り小さくあるべきであり、所望の用途に応じて約10フレンチ以下であってよい。同様に、外壁の厚さも重要ではないが、中央ルーメンが引込部材ワイヤ、リードワイヤ、センサケーブル、および任意の他のワイヤ、ケーブル、又はチューブを収容することができるように十分に薄くてもよい。所望により、外壁の内部表面は補剛チューブ(図示せず)で裏張りされて、捩り安定性が改善される。本発明と関連して用いるために好適なカテーテル本体構成の例が、米国特許第6,064,905号に記載および図示されているが、同特許の全開示内容が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0025】
バスケット形電極アセンブリ16は、また、引張部材22を含んでよく、この引張部材22は、カテーテル本体12と概ね同軸であり、中央ルーメンを通ってカテーテル本体12の近位端から延在し、引張部材22をスパイン18の遠位端に結合するためのキャップ24などの構造要素に取り付けられる。引張部材22は、カテーテル本体に対して長手方向の運動を与えられ、したがって、スパイン18の遠位端をカテーテル本体12に対して近位に移動させて、電極アセンブリを半径方向に拡張させることができる。いくつかの実施形態では、スパイン18は、拘束されていないときに呈する事前形成された拡張配置を有してもよく、引張部材を必要としない。スパイン18の近位端は、図1に概略的に示されているカラー26などの、カテーテル本体12内に配置された別の構造要素によって受容されてもよい。後でさらに詳細に述べるように、カラー26は、スパイン18の近位端を互いに対して所望の放射状形状で固定し維持してもよい。
【0026】
スパイン18の近位端が、カラー26によってカテーテル本体12に固定されるので、スパイン18の遠位端と近位端の間の距離は、外方に拡張配置に湾曲されたときに縮まり、これは引張部材22の近位方向への相対運動と関連付けられることができる。その代わりに又はそれに加えて、スパイン18が、拡張配置を呈することを容易にする材料(後述する)たとえば形状記憶材料を含むことで、引張部材22が拡張配置と潰れた配列との間の移行を援助するか又は不必要となってもよい。一実施形態では、引張部材22は、後述するようなニッケルチタン合金など好適な形状記憶材料から形成されたワイヤ又はハイポチューブを含んでもよい。上記の内容から分かるように、縦軸に沿った引張部材22の様々な相対運動量は、湾曲の程度に影響を及ぼすことがあり、たとえば、スパイン18が心房組織に大きい圧力をかけて、組織とスパイン上の電極との間の接触を良好にすることができる。したがって、ユーザは、バスケット形電極アセンブリ16が拡張配置になるときに引張部材22が引っ張られる距離を調整することによって、電極アセンブリの形状を修正することができる。
【0027】
引張部材22がその最も遠位の位置から相対的により近位の位置まで移動する範囲は、潰れた配置から図1に概略的に示された概略球形を有する拡張配置へのバスケット形電極アセンブリ16のたわみに対応する。潰れた配置のとき、スパインはガイド用シースなどによって拘束されてもよく、ガイド用シースを引っ張って引張部材22に十分な力を加えることによって、スパインを潰れた配置から第1の膨張展開形状にたわませてもよい。上記の内容から分かるように、潰れた配置では、スパイン18は、外径を最小にして患者内に挿入し患者からの引き出すために、カテーテル本体12と略直線状に整列する。拡張配置まで拡張する際、バスケット形電極アセンブリ16のスパイン18は外方に湾曲する。患者内の所望の位置に位置決めされたとき、拡張配置になることによって、電極20は、バスケット形電極アセンブリ16が位置決めされたチャンバ又は他の領域の壁と接触又は接近してもよい。バスケット形電極アセンブリ16の全体サイズは、右心房や左心房などの調査又は治療される患者の部位にぴったりと合うように、患者の解剖学的構造に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、引張部材22は、制御ハンドル14上のアクチュエータに結合されてもよく、アクチュエータは、摺動レバー、回転ノブ、又は任意の他の適切な実現形態であってよい。したがって、アクチュエータは、引張部材22の相対的長手方向位置を調整するために使用されてもよく、詳細には、バスケット形電極アセンブリ16の1つ又は2つ以上の所望の拡張配置を達成するために引張部材22の位置を調整するように構成されてもよい。
【0028】
バスケット形状の電極アセンブリ16は、好適な支持材料からなるフレーム構造を用いることによって構築できる。一態様では、形状記憶材料を用いて、膨張状態および潰れた状態の配置を取ることを補助してもよい。たとえば、ニチノールとして知られているニッケルチタン合金を使用してよい。ニチノール製ワイヤは、体温で可撓性かつ弾性であり、大部分の金属のように、ニチノール製ワイヤは、最小限の力を受けたら変形し、力の不在でそれらの形状に戻る。ニチノールは、形状記憶合金(SMA)と呼ばれる材料クラスに属し、可撓性および弾性以外にも形状記憶および超弾性など興味深い機械的特性を有する。このため、ニチノールは、その温相に依存する「記憶形状」を有することができる。オーステナイト相はニチノールのより強い、より高い温相であり、単純な立法晶構造を有する。超弾性挙動は、この相(50〜60℃の温度の広がりにわたって)で生じる。それに応じて、マルテンサイト相は比較的弱く、より低い温相であり、双晶構造を有する。ニチノール材料がマルテンサイト相内にあるとき、比較的容易に変形し、変形した状態で留まる。しかしながら、そのオーステナイト遷移温度を超えて加熱すると、ニチノール材料は変形前の形状に戻り、「形状記憶」効果をもたらす。加熱にあたり、ニチノールがオーステナイトへの変換を開始する温度は、「As」温度と呼ばれる。加熱にあたり、ニチノールがオーステナイトへの変換を完了した温度は、「Af」温度と呼ばれる。したがって、バスケット形電極アセンブリ16は、これらの材料から形成されたとき、容易に収縮してガイド用シース内に送り込まれ、次にガイド用シースの除去および/又は引張部材22の操作によって患者の所望部位に送達されたときにその拡張された形状記憶形状に容易に戻ることができる三次元形状を有してよい。
【0029】
当業者であれば分かるように、スパイン20の数を特定の用途に応じて要求通りに変えることができ、その結果、バスケットアセンブリは少なくとも2つのスパイン、および10、12、又はそれ以上ものスパインを有する。本明細書で用いる場合、電極アセンブリ16を説明するときの用語「バスケット形」は図示した構成に限定されず、他のデザインを含むことができる。たとえば卵状デザインであって、複数の伸張可能なアームが、直接又は間接的に、それらの近位および遠位端に接続されているものである。当業者であればさらに分かるように、後述する方法は、バスケットを形成しない多電極カテーテルに等しく適用される。
【0030】
たとえば、電極アセンブリ16は、図2に示す多スパインアセンブリなどの構成を用いてもよい。この実施形態では、電極アセンブリ16は、複数の伸張可能なスパイン18を含んでいてもよい。スパイン18はカテーテル本体12の遠位端に、直接又は間接的に、その近位端のみにおいて接続され、その遠位端では接続されていない。カテーテル10は、近位および遠位端を有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体12の近位端における制御ハンドル14と、複数のスパイン18を有する電極アセンブリ16とを含んでおり、スパイン18は、自由な遠位端を有し、その近位端においてカテーテル本体12に固定されている。電気信号の正確なマッピングを可能にするために、たとえば、1回という少ない拍動で右心房又は左心房の電気的機能の大部分又はその実質的にすべてを検出するために、いくつかの実施形態は、比較的高密度の電極アレイを提供することが望ましいことがある。したがって、用いるスパイン18の数は、8、10、12、又は任意の好適な数であってよい。スパイン18は、径方向に均一に又は不均一に分布してよい。さらに、各スパイン18は、スパインあたり少なくとも10個および最大約16個の電極など、複数の電極20を含んでよい。他の用途では、必要に応じてより少ない数のスパインおよび/又は電極を使用してもよい。さらに、電極は各スパインに沿って均一に分布してもよく、あるいは、測定した電気信号の解析を促進するため、又は患者の解剖学的構造の所望の区域に接近するために、近位、中央、又は遠位に偏らせてもよい。いくつかの実施形態では、電極20のうちの1つ又は2つ以上を、高周波エネルギーを送達して電極に隣接した組織をアブレーションするように構成してもよい。
【0031】
別の実施形態では、電極アセンブリ16は、図3に示すような螺旋状又は投げ縄状の多電極カテーテルなどの構成を用いてもよい。この実施形態では、カテーテル10は細長い本体を含み、細長い本体は、挿入シャフト又はカテーテル本体12(長手軸を有する)と、カテーテル本体から遠位の中間部分19とを含んでいる。この実施形態では、一連のリング電極20が中間部分19の長さに沿って配置されている。電極20は標的組織との接触に適合されている。この実施形態では、中間部分19は治療部位に配置されるとすぐに、螺旋形状を形成する。この実施形態では、中間部分19は複数の電極20(たとえば少なくとも10、最大で約16の電極)を含んでいてもよい。これらは、起動されると、螺旋状の損傷パターンを形成する。この実施形態の他の態様はすべて、図1および2に例示した実施形態に対して前述したものと同様である。この実施形態では、カテーテルは8、9、11、又は12フレンチであってもよい。
【0032】
多電極カテーテルが1〜複数のスパインを有する場合、当業者であれば分かるように、カテーテルルーメン内ではスペースが重要である。内部管腔を複数の目的に対して用いてもよい。たとえば、灌漑流体に対する導管ならびに遠位端から制御ハンドルへの電気接続を実行するための導管などである。いくつかの実施形態では、カテーテル管腔を用いて、電極をシステム・コントローラに接続するワイヤを収容する。電極の数が増加すると、スペース要求も増加する。図4図8に例示するのは、導電性可撓性フレームを形成して従来技術のデバイス内にあるワイヤの少なくとも一部と入れ替えることによって管腔内のワイヤの数を減らす多電極可撓性フレームを製造するための方法である。図1のバスケット形多電極デバイスからの典型的なスパイン20を用いて、この方法を例示する。
【0033】
全般的に、図1を再び参照して、各スパイン18は導電性の可撓性フレーム25を含み、可撓性フレーム25には非導電性のカバーリング28が付いており、カバーリング28上には1つ以上のリング電極20が搭載されている。好ましい実施形態では、可撓性フレーム25はそれぞれ、Nitinol(登録商標)円筒を含み、非導電性のカバーリング28はそれぞれ、生体適合性熱可塑性物質、たとえばPEBAX(登録商標)ポリエーテルブロックアミドを含んでいる。
【0034】
次に図7を参照して、多電極デバイスを製造するための方法100はステップ110から始まる。ステップ120において、可撓性フレーム25を形成する。各可撓性フレーム25の製造は、図5に示すように線L−Lに沿って長手軸を有する金属円筒30から始まる。金属円筒30には、導電性材料(たとえば、ステンレス鋼、白金、又はMP35N合金など)が含まれている。金属円筒の外径は0.5mm〜2mmであってもよく、この円筒の肉厚は0.05mm〜0.25mmの範囲とすることができる。金属円筒の長さは50mm〜100cmであってもよい。次に金属円筒30に切り込みを入れて可撓性フレーム25にする。図4に例示するのは、金属円筒30から切り込みを入れた可撓性フレーム25の一実施形態である。金属円筒30の切り込みを、レーザ又は他の同等なデバイスを用いて行なって、複数のまっすぐな導電性ワイヤ32にする。金属円筒30に切り込みを入れて任意の数の導電性ワイヤにすることを、金属円筒の直径および多電極デバイスの特定の目的などの因子に基づいて行なっても良い。一例としては、金属円筒に切り込みを入れて、わずか8つの導電性ワイヤおよび50もの導電性ワイヤにしてもよい。図4に例示するように、金属円筒30はその長さに沿って完全には切断されてはおらず、遠位端に材料のリング38が残っている。この材料のリング38は一時的なリングであり、複数の導電性ワイヤを分離した状態およびこの製造プロセスの全体にわたって位置を合わせされた状態に保つために用いられる。複数のワイヤ30と材料のリング38とによって可撓性フレーム25が形成される。
【0035】
可撓性フレーム25のワイヤ30は、金属円筒30の円周の周りに等しく隔地されている。一実施形態では、各ワイヤ32は約20μm幅である。導電性ワイヤ32の幅は50〜250μmであってもよい。図4にさらに、スペース又は間隙34が各ワイヤ間にあることを例示する。間隙34を用いて各導電性ワイヤ32が電気絶縁されている。各導電性ワイヤ32をさらに絶縁するために、一実施形態では、可撓性フレーム25の各ワイヤを非導電性絶縁体36で覆う(ステップ130)。一実施形態では、非導電性絶縁体36はパリレンコーティングである。別の実施形態では、可撓性フレームを非導電性コーティングで覆わない。
【0036】
次にステップ140において、複数のリング電極40を可撓性フレーム25に取り付ける。次に図5を参照して、リング電極40を任意の好適な導電性材料から形成してもよい。たとえばパラジウム、白金、金、イリジウム、ならびにそれらの組み合わせおよび合金(たとえば、Pd/Pt(たとえば、80%パラジウム/20%白金)およびPt/Ir(たとえば、90%白金/10%イリジウム))である。リング電極40の内径は、可撓性フレーム25にスライドしながら嵌まるような寸法である。可撓性フレーム25に取り付けるべきリング電極の数は、多電極カテーテルの用途に基づいて変えてもよい。さらに、電極間の間隔も変わってもよい。一実施形態では、電極40は1mm離れて位置している。別の実施形態では、電極40は1mm〜15mm離れて隔地されている。応用例に必要であるならば、15mmよりも大きい間隔を用いてもよい。別の実施形態では、リング電極の間隔は単一のスパイン上で変えてもよい。
【0037】
概して言えば、可撓性フレーム25は、導電性ワイヤと同じ数だけのリング電極を支持してもよい。一例としては、図5に例示するのは、30の導電性ワイヤ32を有する可撓性フレーム25である。したがって、30ものリング電極40を、可撓性フレームに取り付けてもよい。明瞭にするために、図5には、3つの電極40を可撓性フレーム25に取り付けた場合を例示している。各電極40を可撓性フレーム25上でスライドさせて、フレームに取り付けるように位置付ける。一実施形態では、各電極40を位置付けるために、電極内の鍵穴開口部42を単一の導電性ワイヤ32と合わせる。次に電極40を導電性ワイヤに、鍵穴開口部42を通してレーザ溶接することによって取り付ける。一例としては、鍵穴開口部42aを用いて、電極40aを導電性ワイヤ32aと合わせる。いったん開口部42aをワイヤ32aと合わせたら、電極40aを開口部42aを通してレーザ溶接してワイヤに付ける。同様に、電極40bおよび40cを導電性ワイヤ32bおよび32cに、鍵穴開口部42bおよび42cを通して、それぞれ取り付ける。電極40を導電性ワイヤ32に溶接すると、鍵穴開口部42に隣接する導電性ワイヤから非導電性絶縁体36が取り除かれる。別の実施形態では、各電極40を単一の導電性ワイヤ32に抵抗溶接手順(当該技術分野で知られている)によって取り付けてもよい。
【0038】
本方法は、ステップ150において、可撓性フレーム25の少なくとも一部上に熱可塑性外層を形成することによって続く。図6に例示するのは、外部の熱可塑性層44を有する可撓性フレーム25である。一実施形態では、熱可塑性物質チュービング46(たとえば、PEBAX(登録商標)ポリエーテルブロックアミド)の一部が電極40間の場所である。熱可塑性物質チュービングは電極を覆っていない。次にこの熱可塑性物質チュービングを熱収縮チュービングで覆い、高温空気を印加して熱可塑性物質を溶融およびリフローする。一実施形態では、熱可塑性物質を加熱して熱可塑性物質を可撓性フレームの外面上でリフローする。別の実施形態では、熱可塑性物質を加熱して熱可塑性物質をリフローすることで外面を覆って導電性ワイヤ32間に流して、ワイヤ32間の間隙34に少なくとも部分的に充填し、個々のワイヤをさらに電気絶縁してワイヤが触れないようにする。
【0039】
熱可塑性物質外層を形成した後に、材料の遠位リング30を取り除く(ステップ160)。遠位リングを取り除くと、可撓性フレーム25の各導電性ワイヤは完全に電気絶縁されている。本製造方法はステップ170で終了する。
【0040】
当業者であれば分かるように、さらなるステップに従って、図4〜8で製造され例示された多電極スパインを取り入れてもよい。たとえば、一実施形態では、複数の製造されたスパインを互いに接合して、図1に例示したもののようにバスケット形電極アセンブリを形成する。別の例では、バスケット形電極アセンブリを、心臓の室をマッピングするように構成してもよい。一実施形態では、図2に示すように、電極アセンブリ16は、複数の伸張可能なスパインを含んでいてもよい。スパインはカテーテル本体の遠位端に、それらの近位端のみにおいて接続され、それらの遠位端では接続されていない。別の実施形態では、図3に示すように、単一のスパインを用いて、血管(たとえば腎動脈)をアブレートするための螺旋形状電極アセンブリを構築してもよい。さらに他の実施形態では、単一のスパインを用いて、たとえば、肺静脈口をアブレートするための投げ縄形状のアブレーションカテーテルを形成してもよい。これらの実施形態のそれぞれにおいて、導電性ワイヤの近位端が、図8に例示するようにシステム200に電気的に接続されている。これについては後述する。
【0041】
理解されるように、前述したカテーテルには、明瞭にするために説明も例示もしていないさらなる構造が含まれる。たとえば、多電極アブレーションカテーテル10は、アブレーションに必要な構造(たとえば電極40に電圧を印加するために用いるべきRFコイルを受け取るための導管)を含んでいる。他の導管を任意の好適な目的に対して用いてもよい。たとえば、安全ワイヤを引き回しおよび/又は固定して、カテーテル10の電極アセンブリ又は他の遠位部分が処置中に外れたときに、その回収を容易にする。安全ワイヤをVectran(商標)又は他の好適な材料から形成してよい。他の実施形態では、1つ以上の導管が、患者の解剖学的構造内のカテーテル10の遠位端の配置を可視化することを支援するためにマッピングシステムとともに用いてもよい電磁式位置センサに適応してもよい。
【0042】
アブレーション処置において多電極カテーテル10を用いる場合、当業者に知られている技術に従ってもよい。図8は、本発明の実施形態による、腎臓および/又は心臓のカテーテル法およびアブレーションのためのシステム200についての概略絵入り図である。システム200は、たとえば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)製造のCARTO(商標)マッピングシステム、および/又はSmartAblate又はnMarq RF発生器に基づいてもよい。このシステムは、カテーテル10の形態をなす侵襲プローブと、制御および/又はアブレーションコンソール202とを備える。オペレータ204(たとえば心臓専門医、電気生理学技師又は介入的放射線医)が、たとえば大腿アクセスアプローチ又は橈骨アクセスアプローチを介して、患者206の体内にアブレーションカテーテル10を挿入し、これによって、カテーテル10の遠位端、特に電極12が、望ましい位置の組織(たとえば患者206の心臓208の心腔)に係合する。カテーテル10は、典型的には、その近位端で、好適なコネクタによってコンソール202に接続される。コンソール202は、RF発生器208を含み、これは、電極22によって係合される位置において、カテーテルを介して組織210をアブレーションするための高周波電気エネルギーを供給する。
【0043】
コンソール202は、また、磁気位置検出を使用して患者206の体内でのカテーテル10の遠位端の位置座標も決定し得る。この目的のために、コンソール202内の駆動回路が、磁場発生器を駆動して、患者206の身体内に磁場を生成する。典型的には、磁場発生器はコイルを含み、これらコイルは、患者の胴体の下の、患者の体外の既知の位置に置かれる。これらのコイルは、関心領域を包含する既定の作業体積内に磁界を生成する。カテーテル10の遠位端内にある磁界センサ(図示せず)によって電気信号が、これらの磁界に応答して発生される。コンソール202の信号プロセッサは、典型的には、場所および向きの座標の双方を含む、遠位端の位置座標を決定するために、これらの信号を処理し得る。この位置感知の方法は、上述のCARTOシステムに実装され、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、および同第6,332,089号、PCT特許公開第WO 96/05768号、ならびに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、および同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されており、その開示がすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
コンソール202は、システム・コントローラ212を含み得、このシステム・コントローラには、システム200の操作のためのソフトウェアが格納されているメモリ214と通信を行う処理装置216が含まれている。コントローラ212は、汎用コンピュータ処理装置を含む業界標準のパーソナルコンピュータであり得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、コントローラの機能の少なくとも一部は、特定用途向け集積回路(ASIC)又は現場プログラム可能ゲートアレイ(FPGA)を使用して実施される。コントローラ212は、典型的には、好適な入力周辺装置およびグラフィカルユーザインタフェース(GUI)218(これらは、オペレータがシステム200のパラメータを設定することを可能する)を使用して、オペレータ204によって操作される。またGUI218は典型的に、処置の結果をオペレータに表示する。メモリ214中のソフトウェアは、たとえばネットワークを介して、電子的形態でコントローラにダウンロードすることができる。代替的に又は付加的に、このソフトウェアは、たとえば、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体のような一時的でない有形の媒体上に提供され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の接触力センサが、コンソール202に信号を送って、電極22上の圧力を表示してもよい。接触力センサ・ワイヤからの信号をシステム・コントローラ212に与えて、歪みゲージ134からの測定値を得てもよい。このような信号を用いて、医師にそれぞれの別個の電極の組織接触のレベルを与えてもよい。さらに、システム・コントローラ212は、どの多電極がアブレートすべき組織と接触しているかについての表示を与える。このフィードバック情報を用いて、施術者は必要な調整を行なって完全なアブレーションを確実にする。前述したように、本発明は、任意の多電極カテーテル(たとえば、投げ縄、円弧、螺旋、又はバスケット構成のリング電極を有するものなど)に良好に適している。
【0045】
典型的には、アブレーションの際には、患者の組織においてRFエネルギーにより熱が生成されてアブレーションが引き起こされ、この熱の一部は、電極12に反射されて、電極およびその周囲に凝固が生じる。システム200は、灌注開口部26を介してこの領域に灌注を行い、灌注の流れの速度は灌注モジュール220により制御され、電極22に送られる電力(RFエネルギー)は、アブレーションモジュール222により制御される。さらに、電極22の表面のうち組織と結合されている割合を、観察される接触力に基づいて見積もってもよい。さらに別の例として、カテーテル10にさらなるセンサを設けて心内心電図をシステム・コントローラ212に与えて、アブレートされている組織部位がもはや催不整脈性電流を流していないときを決定するために用いてもよい。
【0046】
特定の代表的な実施形態が本明細書に記述されている。ただし、提示された実施形態に関わる当業者には、本開示の原理が他の適用に対して適切に改変することにより容易に拡張可能であることが理解されよう。
【0047】
〔実施の態様〕
(1) 導電性の可撓性フレームであって、
外面、円周、および長手軸を有する導電性の中空円筒状金属チューブであって、前記金属チューブは前記長手軸に沿って複数の切り込みを有して、複数の平行な導電性ワイヤを含む可撓性フレームを形成し、前記複数の導電性ワイヤはそれぞれ前記チューブの前記長手軸に沿って円周方向に間隙によって等間隔に隔置されて前記複数のワイヤを電気絶縁する、金属チューブと、
前記可撓性フレームの前記円周の周りに、前記チューブの前記長手軸に沿って搭載され、前記複数のワイヤのうちの第1のワイヤに取り付けられた第1の電極と、
前記可撓性フレームの前記円周の周りに、前記チューブの前記長手軸に沿って前記第1の電極から所定の距離に搭載され、前記複数のワイヤのうちの第2のワイヤに取り付けられた第2の電極であって、前記第2のワイヤは前記第1のワイヤに隣接し、前記第1のワイヤに取り付けられていない、第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間で前記可撓性フレームの前記外面に固定された非導電性の熱可塑性層であって、前記熱可塑性層が前記複数のワイヤを円周方向に囲んで前記第1の電極と第2の電極との間に絶縁層を形成する、非導電性の熱可塑性層と、を含む、導電性の可撓性フレーム。
(2) 前記複数の導電性ワイヤはそれぞれ非導電性の電気絶縁体コーティングを含んでいる、実施態様1に記載のフレーム。
(3) 前記電気絶縁体コーティングはパリレンを含んでいる、実施態様2に記載のフレーム。
(4) 前記熱可塑性層はポリエーテルブロックアミドを含んでいる、実施態様1に記載のフレーム。
(5) 前記熱可塑性層は、リフローされた熱可塑性物質を含み、前記リフローされた熱可塑性物質は前記複数の導電性ワイヤ間の各間隙に充填されている、実施態様1に記載のフレーム。
【0048】
(6) 前記円筒状金属チューブは、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、白金、およびMP35N合金からなる群から選択された導電性金属を含む、実施態様1に記載のフレーム。
(7) 前記複数の電極は、パラジウム、白金、金、イリジウム、ならびにそれらの組み合わせおよび合金からなる群から選択された導電性金属を含む、実施態様1に記載のフレーム・カテーテル。
(8) 前記複数の平行な導電性ワイヤの数は8〜50である、実施態様1に記載のフレーム。
(9) 前記複数のワイヤはそれぞれ幅が50〜250μmである、実施態様1に記載のフレーム。
(10) 前記複数のワイヤはそれぞれ幅が約20μmである、実施態様1に記載のフレーム。
【0049】
(11) 前記第1の電極は、前記第1の電極を前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに取り付けるための鍵穴を含み、前記第2の電極は、前記第2の電極を前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに取り付けるための鍵穴を含んでいる、実施態様1に記載のフレーム。
(12) 前記第1の電極は、前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに、溶接によって、前記第1の電極内の前記鍵穴を通して取り付けられ、前記第2の電極は、前記複数のワイヤのうちの前記第2のワイヤに、溶接によって、前記第2の電極内の前記鍵穴を通して取り付けられている、実施態様11に記載のフレーム。
(13) 前記長手軸に沿った前記金属チューブの前記複数の切り込みはレーザ切断によって形成されている、実施態様1に記載のフレーム。
(14) 導電性の可撓性フレームを製造する方法であって、
導電性の中空円筒状金属チューブを前記チューブの長手軸に沿って切断して前記長手軸に沿って複数の切り込みを形成することであって、前記複数の切り込みは、複数の平行な導電性ワイヤを含む可撓性フレームを形成し、前記複数の導電性ワイヤはそれぞれ前記チューブの前記長手軸に沿って円周方向に間隙によって等間隔に隔置されて、前記複数のワイヤを電気絶縁する、ことと、
第1の電極を、前記可撓性フレームの前記円周の周りに、前記チューブの前記長手軸に沿って、前記複数のワイヤのうちの第1のワイヤに取り付けることと、
第2の電極を、前記可撓性フレームの前記円周の周りに、前記チューブの前記長手軸に沿って、前記複数のワイヤのうちの第2のワイヤに取り付けることであって、前記第2のワイヤは前記第1のワイヤに隣接し、前記第2の電極は、前記チューブの前記長手軸に沿って、前記第1の電極から所定の距離に配置されて、前記第1のワイヤに取り付けられていない、ことと、
前記第1の電極と第2の電極との間で前記可撓性フレームの少なくとも外面上に非導電性の熱可塑性層を形成することであって、前記熱可塑性層が前記複数のワイヤを円周方向に囲んで前記第1の電極と第2の電極との間に絶縁層を形成する、ことと、を含む、方法。
(15) 前記複数の導電性ワイヤを非導電性コーティングでコーティングすることをさらに含む、実施態様14に記載の方法。
【0050】
(16) 前記非導電性コーティングはパリレンを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記導電性の金属チューブは、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、白金、およびMP35N合金からなる群から選択された金属を含む、実施態様14に記載の方法。
(18) 前記熱可塑性層を形成することが、
前記第1の電極と第2の電極との間で前記可撓性フレームの前記円周の周りに熱可塑性物質チュービングを配置することと、
前記熱可塑性物質チュービングを熱収縮チュービングで覆うことと、
前記熱可塑性物質チュービングを加熱して前記熱可塑性物質をリフローして、外層を形成することと、を含む、実施態様14に記載の方法。
(19) 前記熱可塑性物質チュービングを加熱して前記熱可塑性物質をリフローし前記複数のワイヤ間の前記複数の間隙内に入れて、複数の導電性ワイヤを電気絶縁する、実施態様14に記載の方法。
(20) 前記熱可塑性物質チュービングを加熱して前記熱可塑性物質をリフローして、前記可撓性フレームの前記外面上に熱可塑性層を形成する、実施態様14に記載の方法。
【0051】
(21) 前記第1の電極は、前記第1の電極を前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに取り付けるための鍵穴を含み、前記第2の電極は、前記第2の電極を前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに取り付けるための鍵穴を含む、実施態様14に記載の方法。
(22) 前記第1の電極は、前記複数のワイヤのうちの前記第1のワイヤに、溶接によって、前記第1の電極内の前記鍵穴を通して取り付けられ、前記第2の電極は、前記複数のワイヤのうちの前記第2のワイヤに、溶接によって、前記第2の電極内の前記鍵穴を通して取り付けられている、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記長手軸に沿った前記金属チューブの前記複数の切り込みはレーザ切断によって形成される、実施態様14に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】
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