(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-205816(P2017-205816A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】ブラストチャンバ
(51)【国際特許分類】
B24C 9/00 20060101AFI20171027BHJP
【FI】
B24C9/00 M
B24C9/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-98232(P2016-98232)
(22)【出願日】2016年5月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(74)【代理人】
【識別番号】100100066
【弁理士】
【氏名又は名称】愛智 宏
(72)【発明者】
【氏名】羽石 亮平
(72)【発明者】
【氏名】吉里 克司
(57)【要約】
【課題】ブラストチャンバの磨耗に対して無駄なく効率良く対処可能とする。
【解決手段】ブラスト時の粉塵の飛散を防ぐためブラスト加工が施される基材部分と、ブラストガンとを覆う箱状のブラストチャンバで、棒状部材で形成したフレームと、フレームを取り囲むように着脱可能に(例えばねじで)フレームに固定した複数枚のパネルと、ブラストガンを挿入可能なブラストガン導入部とを備え、パネルによって囲まれた空間内に加工対象である基材の少なくとも一部を収容可能とし、当該空間内に配置された基材部分にブラストガンから研削材を吹き付けて加工を施すことを可能とし、フレームを取り囲むパネルによって粉塵の飛散を防ぐ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラスト時に生じる粉塵の飛散を防ぐため、ブラスト加工が施される基材部分と、ブラストガンの噴射口とを覆う箱状のブラストチャンバであって、
当該ブラストチャンバは、
棒状部材により形成した骨組フレームと、
当該骨組フレームを取り囲むように当該骨組フレームに対して着脱可能に固定した複数枚のパネルと、
前記ブラストガンを挿入可能なブラストガン導入部と
を備え、
前記複数枚のパネルによって囲まれた空間内に加工対象である基材の少なくとも一部を収容可能とし、当該空間内に配置された基材部分に前記噴射口から噴射される研削材を吹き付けてブラスト加工を施すことを可能とする一方、
前記骨組フレームを取り囲む複数枚のパネルによって粉塵の飛散を防ぐことを可能とした
ことを特徴とするブラストチャンバ。
【請求項2】
前記パネルは、前記棒状部材に対してねじ手段により固定してある
請求項1に記載のブラストチャンバ。
【請求項3】
前記棒状部材は、方形の断面形状を有する中実の金属部材であり、
前記ねじ手段は、
前記棒状部材を貫通することがないように前記棒状部材に開けられた雌ねじ穴と、
前記パネルを貫通して前記雌ねじ穴に螺合する雄ねじと
からなる
請求項2に記載のブラストチャンバ。
【請求項4】
前記パネルは、前記雄ねじが貫通するねじ貫通孔を備え、
当該ねじ貫通孔はその直径が、前記雄ねじの軸部の外径より大きく且つ前記雄ねじの頭部より小さい
請求項3に記載のブラストチャンバ。
【請求項5】
前記骨組フレームと前記パネルとの間に、弾性材を介在させてあり、
当該弾性材は、その縁が前記骨組フレームおよび前記パネルのいずれからも突出することなく当該骨組フレームの縁および当該パネルの縁より内側に引っ込んでいるように、当該骨組フレームとパネルとの間に配置してある
請求項1から4のいずれか一項に記載のブラストチャンバ。
【請求項6】
前記ブラストチャンバは、前記パネルによって形成した、天面部、底面部、前面部、後面部、左側面部および右側面部を備え、
これら各部のうちの2以上をそれぞれ2枚以上の前記パネルによって形成した
請求項1から5のいずれか一項に記載のブラストチャンバ。
【請求項7】
前記天面部、底面部、前面部、後面部、左側面部および右側面部のうちの少なくとも1つを、一定の方向に配列させた2枚以上のパネルによって形成し、
当該2枚以上のパネルは、前記雄ねじが貫通するねじ貫通孔を備え、
当該ねじ貫通孔の直径は、前記雄ねじの軸部の外径より大きく且つ前記雄ねじの頭部より小さく、
前記2枚以上のパネルのうちの少なくとも1枚は、前記2枚以上のパネルを配列させるときの位置ずれを吸収できるように、隣接するパネルとの間に位置調整用間隙を形成可能な調整パネルであり、
当該調整パネルは、
前記骨組フレームに固定される平板状のパネル本体部と、
当該パネル本体部の一端部の外面側に固定されて前記位置調整用間隙を覆う蓋板部と
を備える
請求項6に記載のブラストチャンバ。
【請求項8】
前記底面部は、一方向に向かって下り勾配となっており、
当該下り勾配の先端部に粉塵を外部へ排出する排出口を備え、
前記底面部を滑り下った粉塵が前記排出口から外部へ排出されるようにした
請求項6または7に記載のブラストチャンバ。
【請求項9】
前記天面部に前記ブラストガン導入部を備え、
当該ブラストガン導入部は、前記天面部を鉛直方向に貫通するようにブラストガンをブラストチャンバ内に導入可能であり、
前記底面部のうち、前記ブラストガン導入部の略直下位置の領域であるガン対向部に、前記ブラストガンから噴射される研削材を受け止める捨て板を係止するための捨て板係止部をさらに備えた
請求項6から8のいずれか一項に記載のブラストチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラストチャンバに係り、特に、ブラスト加工を行うときにブラストガンとワークを覆って粉塵の飛散を防ぎ研削材を回収する箱状のカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
基材表面の粗面化や、酸化膜・スケールの除去、表面研削、バリ取り、模様付けなど様々な表面加工を目的としてブラストが用いられている。
【0003】
加工にあたっては、粒子状の研削材(投射材)をブラストガンから加工対象物である基材(ワーク)に向けて噴射させる。基材に衝突した研削材は基材の表面を削り、加工が行われる。一方、ブラストガンから噴射した研削材は、基材に衝突した後に跳ね返って周囲に飛び散る。また、基材に衝突せずにそのまま基材の後方へ飛んでいくものもある。さらに、基材が削られて出る削りカスも生じる。
【0004】
そこで、かかる研削材や削りカスなどの粉塵が飛散するのを防ぐため、また、研削材を回収して再利用するために、ブラストが施される基材を取り囲む箱状のカバー(チャンバ)が使用される。
【0005】
また、ブラストに関連する文献として下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−19884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ブラストチャンバは一般に金属板で作製されているものの、飛び散った研削材が長期間に亘り衝突することによって次第に削られ、壁面に孔が開くことがある。このため、交換が必要となるが、本発明者はこの点で従来のチャンバには改良の余地があることを見出した。
【0008】
具体的には、従来のブラストチャンバは金属板を溶接して箱を形成し、この中に基材とブラストガンを閉じ込めるだけの比較的単純な構造を有しており、削られて板厚が薄くなったり孔が開く部分は限られた箇所であるにもかかわらず、一部を交換することは困難である。このため、まだ十分に使用できる部分があるにもかかわらずチャンバ全体を取り替えるのが通常であった。
【0009】
一方、損傷した部分を補修することも考えられる。例えば、孔が開いた部分に金属板を溶接すれば孔を塞ぐことが出来る。しかしながら、当該作業には溶接技術者が必要となるうえ、様々な補修箇所に対応した金属板を用意することも煩わしく補修に手間がかかる。
【0010】
また、前記特許文献1に記載の発明は、ブラストと溶射を同時作業で行うことが出来るものであるが、粉塵の飛散を防ぐブラストチャンバを備えていない。
【0011】
したがって、本発明の目的は、ブラストチャンバの磨耗に対して無駄なく従来より効率良く対処できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係るブラストチャンバは、ブラスト時に生じる粉塵の飛散を防ぐため、ブラスト加工が施される基材部分と、ブラストガンの噴射口とを覆う箱状のブラストチャンバであって、棒状部材により形成した骨組フレームと、当該骨組フレームを取り囲むように当該骨組フレームに対して着脱可能に固定した複数枚のパネルと、ブラストガンを挿入可能なブラストガン導入部とを備え、前記複数枚のパネルによって囲まれた空間内に加工対象である基材の少なくとも一部を収容可能とし、当該空間内に配置された基材部分に前記噴射口から噴射される研削材を吹き付けてブラスト加工を施すことを可能とする一方、骨組フレームを取り囲む複数枚のパネルによって粉塵の飛散を防ぐことを可能とした。
【0013】
本発明のブラストチャンバは、加工対象である基材(当該基材の少なくとも加工部分)と、研削材を噴射するブラストガンの噴射口とを収容する箱状体であるが、骨組フレーム(以下単に「フレーム」と言うことがある)と、これを取り囲むように設置した複数枚のパネルによって当該箱状体を構成した。また各パネルは、骨組フレームに対して着脱可能に固定してあり、したがってチャンバの壁の一部が磨耗して孔が開くなど劣化した場合には、当該劣化したパネルのみを取り外して交換することによりチャンバを長持ちさせ、より長期間に亘り無駄なくチャンバを使用し続けることが出来る。なお、当該パネルは、例えば鋼板などの金属板により構成すれば良い。
【0014】
パネルを着脱可能に固定する手段は、典型的には、ねじ手段である。
【0015】
また本発明の一態様では、骨組フレームを構成する棒状部材は、方形(長方形または正方形)の断面形状を有する中実の金属部材であり、上記ねじ手段は、当該棒状部材を貫通することがないように当該棒状部材に開けられた雌ねじ穴と、パネルを貫通して雌ねじ穴に螺合する雄ねじとからなる。
【0016】
骨組フレームを構成する棒状部材を中実の金属部材とし、当該部材に雌ねじ穴を形成することで、骨組フレーム自体の強度ならびにパネルの固定強度を向上させることが出来るとともに、パネルを固定するのにナットが不要となり、パネルの交換(パネルの取外しおよび取付け)を簡便に行うことが可能となる。また棒状部材を貫通しないように雌ねじ穴を形成するから、雌ねじ穴にねじ込まれる雄ねじがフレーム(棒状部材)内に収まってチャンバ内に雄ねじの先端が飛び出すことがなく、ブラストによって雄ねじの先端が破損してパネルの取外しが困難になるような不都合が生じることもない。
【0017】
さらに上記パネルは、雄ねじが貫通するねじ貫通孔を備えるが、このねじ貫通孔の直径を、雄ねじの軸部の外径より大きくすることがある。ねじ貫通孔に通常より(雄ねじを通すための必要径より)余裕を持たせることで、フレームへの取付け時にパネルを多少ずらせるようにするためである。このような構造によれば、チャンバの組立て時や複数枚のパネルを交換するときに、最初に取り付けたパネルに対して、次に取り付けるパネルを押し付けて密着させることが可能となり、このようにして順に複数枚のパネルをフレームに取り付けていけば、パネル同士を密着させ、チャンバ(隣り合うパネル間)の密閉性を高めることが出来る。なお、パネルの固定を可能とするため、当該ねじ貫通孔の直径は、雄ねじの頭部よりは小さくする。
【0018】
また、骨組フレームとパネルとの間に弾性材を介在させても良い。チャンバの密閉性を高め、外部への粉塵の飛散をより確実に防ぐためである。
【0019】
さらに、弾性材を備える場合には、当該弾性材の縁がフレームおよびパネルのいずれからも突出することなくフレームの縁およびパネルの縁より内側に引っ込んでいるように、フレームとパネルとの間に配置することが望ましい。研削材によって弾性材が削られて基材に付着したり、回収し再利用する研削材に弾性材が混入することを防ぐためである。
【0020】
また本発明の別の一態様では、パネルによって形成した、天面部、底面部、前面部、後面部、左側面部および右側面部を備え、これらの面部(天面部、底面部、前面部、後面部、左側面部および右側面部)のうちの2以上の面部(6面総ての面部についてでも良いし、後述の実施形態のように例えば5つの面部、すなわち天面部、底面部、前面部、後面部および左側面部についてでも良い)についてそれぞれ2枚以上のパネルによって形成する。チャンバの劣化した部分だけを交換する補修メンテナンスをよりきめ細かく行えるようにするためである。
【0021】
本発明のさらに別の一態様では、天面部、底面部、前面部、後面部、左側面部および右側面部のうちの少なくとも1つを、一定の方向に配列させた2枚以上のパネルによって形成し、当該2枚以上のパネルは、雄ねじが貫通するねじ貫通孔を備え、このねじ貫通孔の直径が雄ねじの軸部の外径より大きく且つ雄ねじの頭部より小さく、前記2枚以上のパネルのうちの少なくとも1枚は、当該2枚以上のパネルを配列させるときの位置ずれを吸収できるように、隣接するパネルとの間に位置調整用間隙を形成可能な調整パネルである。そしてこの調整パネルは、骨組フレームに固定される平板状のパネル本体部と、パネル本体部の一端部の外面側に固定されて前記位置調整用間隙を覆う蓋板部とを備える。
【0022】
このような調整パネルを備えた構造によれば、天面部、底面部、前面部、後面部、左側面部および右側面部のいずれかにおいて、例えば3枚以上のパネルを配列させて当該面部を形成するときに、当該面部の各端部からパネル同士を密着させつつ(押し付けつつ)順にパネルを取り付けていき、中央部で最後に調整パネルを取り付けることとすれば、各パネルの取付け時に積み重ねられてきたパネルの位置ずれを上記位置調整用間隙によって吸収することができ、しかも当該位置調整用間隙は上記蓋板部によって塞ぐことが出来る。
【0023】
さらに上記各態様では、底面部が一方向に向かって下り勾配となっており、当該下り勾配の先端部に粉塵を外部へ排出する排出口を備えても良い。このような構造によれば、ブラストにより発生した粉塵(研削材や削りカス等)を底面部の端部に自然に集め(滑り下らせ)、排出口から外部へ排出することが出来る。
【0024】
また、天面部に前記ブラストガン導入部を備え、このブラストガン導入部を、天面部を鉛直方向に貫通するようにブラストガンをブラストチャンバ内に導入できるように構成し、底面部のうち、ブラストガン導入部の略直下位置の領域であるガン対向部に、ブラストガンから噴射される研削材を受け止める捨て板を係止するための捨て板係止部をさらに備えても良い。
【0025】
ブラストガンの対向位置(直下位置)は、噴射される研削材が衝突してチャンバが削られやすいが、このようにブラストガンの対向位置となる底面部に捨て板を設置すれば、チャンバの底面部が捨て板によって保護され、捨て板を交換するだけの簡便な作業でチャンバの寿命を延ばすことが可能となる。なお、捨て板は、ねじ等の固定手段で固定する必要は必ずしもなく、例えば、底面部の上に置くだけであっても良いし、後に説明する実施形態のように傾斜した底面部を捨て板が滑り落ちないように止める突起を底面部の上面に備え、この突起によって捨て板を支えるようにしても良い。なお、当該捨て板としては、例えば鋼板などの金属板を使用すれば良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るブラストチャンバによれば、磨耗に対して従来より無駄なく効率良く対処することが出来る。
【0027】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るブラストチャンバを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、前記実施形態に係るブラストチャンバ(前面部のパネルを取り外した状態)を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、前記実施形態に係るブラストチャンバのパネル固定部(雄ねじをねじ込む前の状態)を示す断面図(
図1のA−A断面)である。
【
図4】
図4は、前記実施形態に係るブラストチャンバのパネル固定部(雄ねじをねじ込んだ状態)を示す断面図である。
【
図5】
図5は、前記実施形態のブラストチャンバにおいてパネルを取り付ける状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、前記実施形態に係るブラストチャンバの底面部を部分的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、前記実施形態に係るブラストチャンバの底面部を構成するパネルの1枚を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1〜
図2に示すように本発明の一実施形態に係るブラストチャンバは、ブラストガン1の先端部(噴射口1a)と、基材2の加工部分とを取り囲む箱状のチャンバ本体11と、チャンバ本体11の内部にブラストガン1を導入するためのブラストガン導入部12と、チャンバ本体11に対して基材2を出し入れ出来るようにする基材用開口部13と、研削材や削りカスなどの粉塵をチャンバ本体11から外部へ排出する粉塵排出口14とを備えている。
【0030】
なお、本実施形態では、基材2を2本同時に加工できるようにブラストガン導入部12と基材用開口部13をそれぞれ2つずつ備えた。また、各図には前後左右上下の方向を示す座標を表示し、これらの方向に基づいて本実施形態の説明を行う。
【0031】
チャンバ本体11は、骨組フレーム16に複数枚の金属製パネル(例えば鋼板)31,32,33,34,35,36を固定することにより形成した六面体、すなわち、天面部21、底面部22、前面部23、後面部24、左側面部25および右側面部26を備えた箱状体である。フレーム16は正方形の断面形状を有する中実の金属製の棒状部材からなり、これらの棒状部材にねじ穴(雌ねじ穴)4を形成し、ねじ穴4に螺合するボルト(雄ねじ)5で金属製の平板であるパネル31〜36を固定することにより密閉空間を形成する。
【0032】
図3〜
図4に示すように、ねじ穴4はフレーム16を貫通することなくフレーム16内に収まる深さとする。パネル31〜36を固定する各ボルト5がチャンバの内部に突き出し、研削材によって削られて損傷を受けることを防ぐためである。なお、フレーム(棒状部材)16の隣り合う面、例えば上面と前面(
図3〜
図4参照)に形成する各ねじ穴4は、棒状部材16の内部でねじ穴4(ボルト5)同士がぶつかり合うことがないように、左右方向(
図3〜
図4では紙面に垂直な方向)について形成位置をずらしてある。他のフレーム部分についても同様である。なお、各図においてねじ穴4とボルト5に、ねじ山とねじ溝は描いていない。
【0033】
ボルト5を通すためパネル31〜36に形成した貫通孔(ねじ貫通孔)7の直径Cはボルト5の軸部5aの外径より大きくしてある。このため当該貫通孔7にボルト5を通した状態でもパネル31〜36を平行に若干ずらしてパネル31〜36の取付位置の調整が可能であり(天面部のパネル31は前後左右方向に、前面部のパネル33は上下左右方向にそれぞれ移動可能)、フレーム16にパネル31〜36を取り付けるときに、フレーム16の寸法誤差やねじ穴4の位置誤差を吸収できるとともに、隣り合うパネル同士を順に押し付け密着させながらパネル31〜36をフレーム16に取り付けていくことで密閉性の高いチャンバを組み立てることが出来る。
【0034】
また、チャンバの密閉性をさらに高めるため、パネル31〜36とフレーム16との間には弾性材6を介在させる。弾性材6は、例えばゴムパッキンからなり、チャンバ内に突出しないようにフレーム16の縁より内側に、すなわち、パネル31〜36とフレーム16の対向領域内に収まるように設置する(
図3に示すようにフレーム16の内面(内側の縁)から距離Dだけ引っ込むように配置してある)。研削材により弾性材6が削られ、基材2に付着したり回収する研削材に混入することを防ぐためである。
【0035】
図1〜
図2を再び参照して本実施形態では、右側面部26は1枚のパネル36によって形成したが、天面部21、底面部22、前面部23、後面部24および左側面部25はそれぞれ複数枚のパネルで形成する。パネル31〜35の取付けは、各面部(天面部21、底面部22、前面部23、後面部24および左側面部25)において一端から他端に順にパネル31〜35をフレーム16に取り付けていくことにより行う。すなわち
図5に示すように、既に取り付けたパネル31aに押し付けるようにして次のパネル31bを取り付け、当該取り付けたパネル31bに押し付けつつさらに次のパネル31cを取り付けるように順にフレーム16にパネル31〜35を取り付けていくことで、隣接するパネル同士を密着させる。
【0036】
また底面部22については、左右両端部からパネル32を取り付けていき、調整パネル32aを最後に取り付ける。この調整パネル32aは、
図6〜
図7に示すように、他のパネル32と同様にフレーム16に固定される平板状のパネル本体部32bと、パネル本体部32bの一端部の外面側に固定されて隣接するパネル32の端部外面に被さるように広がる蓋板部32cとを備えている。パネル本体部32bは、隣接するパネル(この例の場合は右隣りのパネル)32との間に隙間(位置調整用間隙)Gが形成されるサイズとしてあり、蓋板部32cがこの位置調整用間隙Gを覆う。このような調整パネル32aによる隙間(位置調整用間隙)Gを備えれば、両端部からパネル32を密着させつつ順次取り付けていったときのパネル32の位置ずれを当該隙間Gにより吸収することが出来る。
【0037】
なお、当該位置調整用間隙Gの前端と後端は、前面部23および後面部24を形成するパネル33,34のうち調整パネル32aの前後に取り付けられるパネル33a,34a(
図1〜
図2参照)の長さを長くして、当該パネル33a,34aの下端部が調整パネル32aの蓋板部32cまで覆うようにすれば、位置調整用間隙Gの前端および後端に形成される穴を塞いでチャンバの密閉性を確保することが出来る。また、チャンバ本体11の他の面、例えば天面部21や前面部22、後面部23等についても同様の調整パネルを備える構造としても良い。
【0038】
底板部22は、チャンバの右端から左端に向けて下り勾配となるように片流れ状に傾斜しており、底板部22の左端に開口14を形成してある。この開口14は、チャンバ内から外部へ粉塵を排出するための排出口である。ブラストガン1から噴射され基材2に吹き付けられた研削材や、基材2の削りカスなどの粉塵は、底板部22を滑り落ちて排出口14から外部へ自動的に排出され(矢印B参照)、排出口の下方に備えてある粉塵回収装置(図示せず)によって回収される。なお、排出口14には、粉塵を下方へ落とし周囲に飛び散ることを防ぐカバー(覆い)15を設置する。
【0039】
さらに底板部22の上面には、捨て板3を係止するための係止ブロック17を備える。ブラストガン1の直下部分は、ブラストガン1から噴射されたあるいは基材2の表面で反射した研削材が衝突することによって削られやすい。このため、ブラストガン1の直下位置に捨て板3を設置し、底板部22を保護する。捨て板3は、金属製で底板部22の上に置かれ(
図2において捨て板3の配置位置をハッチングを施して示した)、傾斜した底板部22を滑り落ちないように係止ブロック17で止められているだけであり、パネル22より更に簡便に交換することが可能である。
【0040】
ブラスト加工にあたっては、ブラストガン導入部12に設置したブラストガン1の噴射口1aから垂直下方へ研削材を噴射させる。噴射口1aの直下には、前面部23および後面部24にそれぞれ備えた基材用開口13を通ってチャンバ本体11を前後方向に貫通するように基材2を支持する。基材2は、軸周りに回転されるとともに前後方向に移動され、ブラストガン1の下を通過するときに研削材が吹き付けられ、ブラスト加工が施される。なお、ブラストガン1にはホース(図示せず)が接続されており、このホースを通じて研削材や圧縮ガスなどをブラストガン1に供給する。
【0041】
パネル31〜36が磨耗するなど劣化した場合には、当該劣化したパネル31〜36だけをボルト5を緩めて取り外し、新しいパネルに交換するだけの簡便な作業で補修を行うことが出来る。補修に溶接のような特別な技術や煩雑な作業が必要となることはない。また、チャンバの他の部分はそのまま使い続けることができ、チャンバの寿命を延ばすことが出来る。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0043】
例えば、本発明ではチャンバの総ての面(面部)21〜26をそれぞれ複数枚のパネルで形成する必要は必ずしもなく、一部または総ての面について1枚のパネルで形成しても良い。また前記実施形態では、基材2を2本同時に加工できるようにブラストガン導入部12と基材用開口部13をそれぞれ2つずつ備えたが、これらを1つずつ備えて1本の基材を加工できるチャンバとしても良いし、3つずつ以上備えて3本以上の基材を同時に加工可能なチャンバを構成することも可能である。
【0044】
また、前記実施形態では鋼管のような長尺の基材を想定して基材用開口部13を備えたが、本発明では基材全体がチャンバ本体内に収まるような基材を対象としたチャンバを構成することも可能で、この場合、前記実施形態のような基材用開口部13ではなく、例えば基材の搬出入が可能な開口と当該開口を塞ぐ開閉可能な扉とを備えれば良い。
【0045】
さらにブラストの種類についても本発明では特に限定されない。例えばスチールグリッドブラストやアルミナグリッドブラスト、サンドブラスト、その他各種のブラストにおいて本発明のチャンバを利用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ブラストガン
1a 噴射口
2 基材
3 捨て板
4 ねじ穴(雌ねじ穴)
5 ボルト(雄ねじ)
5a ボルト軸部
5b ボルト頭部
6 弾性材
7 ねじ貫通孔
11 チャンバ本体
12 ブラストガン導入部
13 基材用開口部
14 粉塵排出口
15 カバー(覆い)
16 骨組フレーム(棒状部材)
17 係止ブロック
21 天面部
22 底面部
23 前面部
24 後面部
25 左側面部
26 右側面部
31,32,33,34,35,36 パネル
32a 調整パネル
32b パネル本体部
32c 蓋板部
G 位置調整用間隙