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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-206193(P2017-206193A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20171027BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20171027BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20171027BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   B62D5/04
   F16C19/18
   F16C25/08 Z
   F16C35/077
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-101562(P2016-101562)
(22)【出願日】2016年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中山 琢也
【テーマコード(参考)】
3D333
3J012
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB19
3D333CC15
3D333CC18
3D333CD05
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD17
3D333CD37
3D333CD39
3D333CE06
3D333CE09
3J012AB02
3J012BB03
3J012CB03
3J012CB04
3J012CB10
3J012DB09
3J012DB14
3J012FB10
3J117AA01
3J117BA10
3J117CA06
3J117DA01
3J117DB10
3J701AA02
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701FA60
3J701GA01
(57)【要約】
【課題】ボールねじ機構のトルク変動を抑制できるステアリング装置を提供する。
【解決手段】弾性支持機構は、ハウジング16と軸受34との間にプレート50および皿ばね60が設けられている。プレート50の平坦部50bには、その軸線を含む平面で切断した断面がV字形状である円環状の溝50cが設けられている。皿ばね60の角部V2は溝50cの谷部V1に当接している。皿ばね60の弾性力により外輪34bおよびプレート50は軸方向において離間する方向へ向けて押圧される。軸受34は皿ばね60により軸方向に沿って移動可能に支持される。プレート50の軸受34側の側面がN極に着磁され、皿ばね60の角部V2を含む、皿ばね60の外周面60aおよび皿ばね60の小径側端部の内周面60bはS極に着磁されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にねじ溝を備え、ステアリング操作に伴い、軸方向に移動する転舵シャフトと、
複数のボールを介して前記転舵シャフトの前記ねじ溝と螺合するボールねじナットと、
前記転舵シャフトおよび前記ボールねじナットを収容するハウジングと、
前記ボールねじナットを前記ハウジングに対して回転可能に支持する軸受と、
前記ハウジングの内部において、前記ハウジングの一部分と前記軸受の軸方向における両側面との間にそれぞれ配置されるプレートおよび円環状の弾性部材と、を備え、
前記プレートは、軸方向における前記軸受の端面またはハウジングとの間で前記弾性部材を挟みこむ円環状の平坦部と、前記平坦部の軸方向の側面において、軸方向に平行に延びるように設けられ、且つ前記弾性部材の径方向内側に設けられている保持部と、を有し
前記平坦部の軸方向における側面には、前記弾性部材の軸方向における端部が嵌まる円環状の溝が設けられているステアリング装置。
【請求項2】
前記弾性部材および前記プレートの少なくとも一方は、前記弾性部材と前記プレートとの間に吸引力が働くように着磁されている請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記弾性部材は円錐台筒状をなし、その小径側の端部における外側の角部が前記円環状の溝に嵌まるとともに、その大径側の端部は軸方向において、前記軸受の外輪またはハウジングに当接するものであって、少なくとも前記弾性部材の外周面と前記円環状の溝の内面との間には隙間が形成されている請求項1または請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記隙間は、前記弾性部材の外周に向かうほど、前記弾性部材の軸方向に広くなっている請求項3に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記プレートを前記プレートの軸線を含む平面で切断したときの前記円環状の溝の断面形状はV字形状である請求項1〜4のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記軸受の軸方向における両側に設けられている前記プレートの溝の中心軸の位置は、転舵シャフトの径方向において互いに一致している請求項1〜5のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【請求項7】
前記弾性部材は、前記軸受の外輪部の側面全周と前記円環状の溝が設けられる平坦部の全周とを互いに離間する方向に押圧する皿ばねである請求項1〜6のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【請求項8】
前記軸受は、複列アンギュラ玉軸受である請求項1〜7のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載のように、ボールねじナットをハウジングに対して回転可能に支持する軸受が設けられているEPS(電動パワーステアリング装置)が存在する。この軸受の軸方向両側に、金属ばねおよび断面L字で円環状に形成されるプレートが設けられることにより、軸受は軸方向に移動可能にハウジングに支持される。金属ばねと断面L字のプレートの短手辺としての保持部およびハウジングとの間には、ラック軸の径方向の隙間がある。この隙間は金属ばねが弾性変形することを補助するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−227047
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記構成のEPSでは、金属ばねとプレートとを組み付けた際に、金属ばねとプレートとの間に径方向の隙間があることから、金属ばねがプレートに対して径方向に偏心して装着されるおそれがある。このため、金属ばねが軸受の側面を押圧する位置が軸受の両側面において互いに径方向にずれてしまい、軸受ひいてはボールねじナットに傾きが生じてしまう。その結果、ボールねじナットが回転した時にトルク変動が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、ボールねじナットを支持する軸受の傾きを抑制できるステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得るステアリング装置は、外周にねじ溝を備え、ステアリング操作に伴い、軸方向に移動する転舵シャフトと、複数のボールを介して前記転舵シャフトの前記ねじ溝と螺合するボールねじナットと、前記転舵シャフトおよび前記ボールねじナットを収容するハウジングと、前記ボールねじナットを前記ハウジングに対して回転可能に支持する軸受と、前記ハウジングの内部において、前記ハウジングの一部分と前記軸受の軸方向における両側面との間にそれぞれ配置されるプレートおよび円環状の弾性部材と、を備えることを前提としている。前記プレートは、軸方向における前記軸受の端面またはハウジングとの間で前記弾性部材を挟みこむ円環状の平坦部と、前記平坦部の軸方向の側面において、軸方向に平行に延びるように設けられ、且つ前記弾性部材の径方向内側に設けられている保持部と、を有し前記平坦部の軸方向における側面には、前記弾性部材の軸方向における端部が嵌まる円環状の溝が設けられていることが要旨である。
【0007】
上記構成によれば、プレートの平坦部に設けられた円環状の溝に弾性部材の軸方向における端部が嵌まっていることにより、組み付け時に弾性部材が転舵シャフトの径方向に対して偏心することが抑制できる。すなわち、軸受の軸方向における両側面に対して、弾性部材が当接し、軸受を押圧する位置が径方向にずれることが抑制されるため、軸受が転舵シャフトの軸線に対して傾くこと、ひいてはボールねじナットが転舵シャフトの軸線に対して傾くことが、抑制される。
【0008】
前記弾性部材および前記プレートの少なくとも一方は、前記弾性部材と前記プレートとの間に吸引力が働くように着磁されていることが好ましい。
弾性部材とプレートとの間には吸引力が働くことにより、弾性部材を平坦部の円環状の溝に嵌め合わせた状態に維持される。このため、弾性部材が径方向に偏心することをより抑制することができる。
【0009】
上記ステアリング装置において、前記弾性部材は円錐台筒状をなし、その小径側の端部における外側の角部が前記円環状の溝に嵌まるとともに、その大径側の端部は軸方向において、前記軸受の外輪またはハウジングに当接するものであって、少なくとも前記弾性部材の外周面と前記円環状の溝の内面との間には隙間が形成されていることが好ましい。
【0010】
弾性部材に軸方向の圧縮力が作用するとき、弾性部材の小径側の端部における外側の角部を基点として、大径側の端部が径方向外側に広がるように弾性変形しようとする。すなわち、弾性部材の外周面が径方向に沿って平らに近づくように弾性変形する。上記構成によれば、弾性部材が弾性変形した場合、弾性部材の外周面が円環状の溝の内面に近接するように弾性変形する。そのため、弾性部材の外周面と円環状の溝の内面との間には隙間が設けられることにより、弾性部材は弾性変形しやすくなる。
【0011】
上記のステアリング装置において、前記隙間は、前記弾性部材の外周に向かうほど、前記弾性部材の軸方向に広くなるように形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、弾性部材の外周面が円環状の溝の内面に近接するように弾性変形する。弾性部材の外周に向かうほど、弾性部材の軸方向に広くなるように隙間が形成されることにより、弾性部材はより弾性変形しやすくなる。
【0012】
前記プレートを前記プレートの軸線を含む平面で切断したときの前記円環状の溝の断面形状はV字形状であることが好ましい。
上記構成によれば、溝を径方向に切断した断面形状がV字形状であれば、弾性部材の小径側の端部における外側の角部が、平坦部のV字形状の溝に嵌まる。そのため、弾性部材の径方向への偏心をより抑制することができる。また、弾性部材の外周面と溝の内面との間に隙間をより設けやすくなる。
【0013】
上記のステアリング装置において、前記軸受の軸方向における両側に設けられている前記プレートの溝の中心軸の位置は、転舵シャフトの径方向において互いに一致していることが好ましい。
【0014】
プレートの平坦部の軸方向における側面に円環状の溝を設けるとき、プレートの外径の中心軸と溝の中心軸とが一致しないことが稀にある。その場合、プレートおよび弾性部材の組み付け時に、弾性部材が転舵シャフトの径方向に対して偏心して取り付けられてしまうおそれがある。
【0015】
その点、上記構成によれば、軸受の軸方向における両側にある円環状の溝の中心軸を一致するように組み付けることで、組み付け時に弾性部材の径方向に対する偏心をより抑制することができる。すなわち、軸受の軸方向における両側面に対して、弾性部材が当接し、押圧する位置が径方向にずれることが抑制されるため、軸受が転舵シャフトの軸線に対して傾くこと、ひいてはボールねじナットが転舵シャフトの軸線に対して傾くことが、抑制される。
【0016】
上記ステアリング装置において、前記弾性部材は、前記軸受の外輪部の側面全周と前記円環状の溝が設けられる平坦部の全周とを互いに離間する方向に押圧する皿ばねであることが好ましい。
【0017】
上記ステアリング装置において、次のようなことが懸念される。
転舵シャフトの軸方向において、円環状の溝が設けられている平坦部とハウジングとの間を互いに押圧するように皿ばねを設けた場合、皿ばねの軸方向における一方の端部はハウジングに当接する。その時、ハウジングは、例えばアルミニウムのような軟金属にて構成されているため、ハウジングにおける皿ばねが当接した面は徐々にへこみが出てきてしまう。そのへこみが生じることにより、円環状の溝が設けられている平坦部とハウジングとの間を互いに離間するように押圧していた皿ばねの弾性力が弱くなる。弾性力が弱くなるにつれて、皿ばねは軸受の弾性支持を維持することが難しくなり、ひいては軸受の傾きを生じるおそれがある。
【0018】
その点、上記構成によれば、皿ばねは軸受の外輪部の側面と円環状の溝が設けられている平坦部との間を互いに押圧するように設けられている。すなわち、皿ばねがハウジングに対して当接することが無くなる。そのため、皿ばねは、軸受の弾性支持を維持することができる。
【0019】
前記軸受は、複列アンギュラ玉軸受であることが好ましい。
上記のステアリング装置における軸受には、次のようなことが懸念される。
例えば、上記ステアリング装置を車両用として使用した場合、路面から伝わる力により、転舵シャフトがその軸方向と直交する方向へ回転する力が生じる場合がある。その回転する力が転舵シャフトからボールねじナットを介して軸受に伝達され、軸受が転舵シャフトの軸線に対して傾きを生じるおそれがある。
【0020】
その点、上記構成によれば、軸受が複列アンギュラ玉軸受である場合、深溝玉軸受(単列)に比べて、転舵シャフトから伝達される回転する力に対する剛性がより改善される。したがって、ボールねじナットを支持する軸受の傾きをより抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のステアリング装置によれば、ボールねじナットを支持する軸受の傾きを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態の電動パワーステアリング装置についてその概略構成を示す構成図。
図2】実施の形態の電動パワーステアリング装置についてそのアシスト機構の断面構造を示す断面図。
図3】実施の形態の電動パワーステアリング装置についてそのボールねじ機構の断面構造を示す断面図。
図4】実施の形態における皿ばねおよびプレートの斜視図。
図5】実施の形態における皿ばねとプレートの組み付け状況を示した断面図。
図6】実施の形態における皿ばねとプレートの着磁状況を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、ステアリング装置の実施の形態を説明する。本実施の形態のステアリング装置は、ベルト式減速機構を介してモータの回転運動をボールねじ機構に伝達し、モータの回転運動をラックシャフトの直線運動に変換することにより、ユーザーのステアリング操作を補助する電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という)である。
【0024】
図1に示すように、EPS1は、ユーザーのステアリングホイール10の操作に基づいて転舵輪15を転舵させる操舵機構2、及びユーザーのステアリング操作を補助するアシスト機構3を備えている。
【0025】
操舵機構2は、ステアリングホイール10及びステアリングホイール10と一体回転するステアリングシャフト11を備えている。ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール10と連結されたコラムシャフト11aと、コラムシャフト11aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト11bと、インターミディエイトシャフト11bの下端部に連結されたピニオンシャフト11cとを有している。ピニオンシャフト11cの下端部は、ラックアンドピニオン機構13を介して転舵軸としてのラックシャフト12に連結されている。したがって、ステアリングシャフト11の回転運動は、ピニオンシャフト11c及びラックシャフト12からなるラックアンドピニオン機構13を介してラックシャフト12の軸方向(図1の左右方向)の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動が、ラックシャフト12の両端にそれぞれ連結されたタイロッド14を介して、左右の転舵輪15にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪15の転舵角が変化する。
【0026】
以下の説明において、「軸方向」はラックシャフト12の軸長方向を意味し、「径方向」は「軸方向」に直交する方向を意味する。
アシスト機構3は、ラックシャフト12の周囲に設けられている。アシスト機構3は、アシスト力の発生源であるモータ20と、ラックシャフト12の周囲に一体的に取り付けられたボールねじ機構30と、モータ20の回転軸21の回転力をボールねじ機構30に伝達するベルト式減速機構(以下、「減速機構」という)40とを有している。アシスト機構3は、モータ20の回転軸21の回転力を減速機構40及びボールねじ機構30を介して、ラックシャフト12を軸方向に往復直線運動させる力に変換する。このラックシャフト12に付与される軸方向の力がアシスト力となり、ユーザーのステアリング操作を補助する。
【0027】
ボールねじ機構30、減速機構40、ピニオンシャフト11c、及びラックシャフト12は、ラックシャフト12の軸方向に沿って延びるハウジング16により覆われている。ハウジング16は、減速機構40の付近で軸方向に分割された第1ハウジング16a及び第2ハウジング16bを連結することにより構成されている。第1ハウジング16aおよび第2ハウジング16bは、ラックシャフト12の延びる方向に対して交わる方向(図中の下方)へ突出している。第2ハウジング16bの外壁(図中の右側壁)には、貫通孔22が設けられている。尚、ハウジング16はアルミニウム等の軟金属で構成されている。
【0028】
モータ20の回転軸21は、貫通孔22を通じて第2ハウジング16bの内部に伸びている。モータ20は、第2ハウジング16bに設けられたフランジ部17及びモータ20に設けられたフランジ部24をボルト23により連結することで、第2ハウジング16bに固定されている。回転軸21は、ラックシャフト12に対して平行である。
【0029】
ラックシャフト12の両端には、タイロッド14を回動自在に連結するエンド部材としてのインナーボールジョイント(以下、「IBJ」という)18がそれぞれ設けられている。IBJ18は、ハウジング16の軸方向の両端部に設けられる拡径部16cに出入り可能に設けられている。拡径部16cの内径は、ハウジング16がラックシャフト12を収容するラック収容部16dの内径と比較して大きく設定されている。拡径部16cとラック収容部16dとが繋がれる部位には、IBJ18側に壁面を有する段差部16eが設けられている。一方、IBJ18の外径は、ハウジング16の拡径部16cの内径と比較して小さい且つラック収容部16dの内径と比較して大きく設定されている。ラックシャフト12の軸方向の移動は、IBJ18の段差部16eに突き当たることによって生じる端当てによって制限されるようになっている。すなわち、ラックシャフト12の軸方向の移動は、IBJ18によってストロークエンド(移動限界)が規定されている。
【0030】
次に、アシスト機構3について詳細に説明する。
図2に示すように、ボールねじ機構30は、ラックシャフト12に複数のボール32を介して螺合する円筒状の回転体としてのボールねじナット31を備えている。ボールねじナット31は、円筒状の軸受34を介してハウジング16の内周面に対して回転可能に支持されている。ラックシャフト12の外周面には螺旋状のねじ溝12aが設けられている。ボールねじナット31の内周面には、ラックシャフト12のねじ溝12aに対応する螺旋状のねじ溝33が設けられている。ボールねじナット31のねじ溝33とラックシャフト12のねじ溝12aにより囲まれる螺旋状の空間は、ボール32が転動する転動路Rとして機能する。また、図示しないが、ボールねじナット31には転動路Rの2箇所に開口して、当該2箇所の開口を短絡する循環路が設けられている。したがって、ボール32は、ボールねじナット31内の循環路を介して転動路R内を無限循環することができる。尚、転動路Rには、例えば、グリース等の潤滑材が塗付されて、ボール32が転動する際の摩擦抵抗等が低減されている。
【0031】
減速機構40は、モータ20の回転軸21に一体的に取り付けられた駆動プーリ41、ボールねじナット31の外周に一体的に取り付けられた回転体としての従動プーリ42、及び駆動プーリ41と従動プーリ42との間に巻きかけられたベルト43を備えている。第1ハウジング16aの内部空間には、モータ20の回転軸21と、回転軸21に取り付けられた駆動プーリ41と、ベルト43とが配置されている。ベルト43は、心線を含むゴム製の歯付きベルトである。また、駆動プーリ41及び従動プーリ42は、歯付きプーリである。
【0032】
ボールねじナット31の軸方向の一端部には、円環状のフランジ部35が設けられている。ボールねじナット31の外周面には、フランジ部35と軸方向に係合するように軸受34の内輪34aが嵌合されているとともに、この内輪34aに隣接して従動プーリ42が嵌合されている。例えば、軸受34は、深溝玉軸受(単列)や複列アンギュラ玉軸受(一般的で汎用性のある軸受)であるが、本実施の形態では複列アンギュラ玉軸受を採用している。従動プーリ42はボールねじナット31に対して固定されている。また、従動プーリ42とフランジ部35とにより軸受34の内輪34aが軸方向にはさみ込まれることで、この内輪34aがボールねじナット31に対して固定されている。軸受34の外輪34bの外周面は、第1ハウジング16aに対して軸方向に移動可能に当接している。
【0033】
第2ハウジング16bにおける外輪34b側の先端には係止部25が設けられている。また軸方向において、第1ハウジング16aにおける外輪34bと対向する部分には係止部26が設けられている。軸方向における外輪34bと両係止部25、26との隙間には外輪34bを軸方向において弾性的に支持するための構成として、それぞれプレート50と、弾性部材としての皿ばね60とが配置されている。
【0034】
図4に示すように、プレート50および皿ばね60は、磁性体の金属により、それぞれ円環状に形成されている。
プレート50は、円環状の平坦部50bおよび円筒状の保持部50aを有している。平坦部50bにおいて、保持部50aが設けられている側の側面には円環状の溝50cが設けられている。プレート50を軸線を含む平面で切断した場合、溝50cの断面形状はV字形状である。
【0035】
皿ばね60は、円錐台筒状である。皿ばね60の小径側の端部の外周側に設けられる角部が、プレート50の平坦部50bに挿入される。
図3に示すように、プレート50および皿ばね60が軸受34とハウジング16との間に配置された状態において、平坦部50b、50bの円環状の溝50cが設けられている端面と反対側の端面は、皿ばね60の弾性力により、軸方向において係止部25、26に当接している。平坦部50b、50bの外周面は第1ハウジング16aの内周面に当接している。また、皿ばね60の大径側の端部は、外輪34bの軸方向における側面に当接している。皿ばね60の小径側の端部は、平坦部50bの円環状の溝50cに当接している。
【0036】
図6に示すように、プレート50および皿ばね60は着磁されている。プレート50の平坦部50bの溝50cが設けられている側面がN極、平坦部50bの溝50cが設けられている側面と反対側の側面がS極に着磁されている。皿ばね60の外周面60aおよび皿ばね60の小径側端部の内周面60bはS極、皿ばね60の内周面および皿ばね60の大径側端部の外周面はN極に着磁されている。
【0037】
図5に示すように、溝50cは平坦部50bの肉厚中央から保持部50aが延びる方向に向かうにつれて、その径方向に互いに離れるように傾斜する2つの斜面51、52を有している。2つの斜面51、52はこれらのなす角度θが90度より大きくなるように設けられている。2つの斜面51、52の交わる部分を谷部V1とする。なお、溝50cの中心軸Ax1と、プレート50の中心軸Ax2とは互いに一致している。
【0038】
皿ばね60はその軸線を含む平面で切断した断面は矩形である。皿ばね60の外周面60aと皿ばね60の小径側の端部の内周面60bとが交わる部位を角部V2とする。
図5に示すように、プレート50および皿ばね60をハウジング16と軸受34の間に設ける場合、皿ばね60は、その角部V2がプレート50の谷部V1に当接する位置まで溝50cに挿入される。角部V2が谷部V1に当接した状態において、斜面51と皿ばね60の外周面60aとの間には第1の隙間CL1が、斜面52と皿ばね60の小径側の端部の内周面60bとの間には第2の隙間CL2が形成される。第1の隙間CL1は、皿ばね60の外周に向かうほど、また、第2の隙間CL2は皿ばね60の内周に向かうほど、皿ばね60の軸方向において広くなっている。斜面51と外周面60aとのなす角度がθ1であり、斜面52と内周面60bとの成す角度がθ2である。
【0039】
図3に示すように、プレート50および皿ばね60がハウジング16と軸受34との間に設けられた状態において、角部V2は谷部V1に当接している。また、皿ばね60大径側端部における内周側の角部は、外輪34bの側面に当接している。また、皿ばね60の大径側端部における外周側の角部と、第1ハウジング16aの内周面との間には隙間が設けられている。皿ばね60の小径側端部における内周側の角部と保持部50aの外周面との間にも隙間が設けられている。
【0040】
軸受34は2つの皿ばね60からの弾性力によって軸方向に位置が保持される。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)プレート50と皿ばね60を組み付ける際、皿ばね60の角部V2がプレート50の谷部V1に当接することにより、皿ばね60はプレート50に対して、その径方向において位置決めされる。この時、軸受34の軸方向における両側面に対して、それぞれの皿ばね60が当接し、軸受34を押圧する位置が互いに径方向にずれることが抑制されるため、軸受34の両側にある皿ばね60およびプレート50は同一の軸線上に安定的に位置する。したがって、ボールねじナット31を支持する軸受34が傾くことを抑制できる。
【0041】
(2)また、平坦部50bの軸受34側の面がN極、皿ばね60の角部V2を含む、皿ばね60の外周面60aおよび皿ばね60の小径側端面の内周面60bがS極に着磁されている。すなわち、プレート50と皿ばね60を組み付ける際に、平坦部50bと皿ばね60とが互いに近接するように磁力が働くため、皿ばね60の角部V2とプレート50の谷部V1とが接触した状態を維持することができる。つまり、組み付け時に皿ばね60がプレート50に対して径方向に偏心することをより抑制することができる。
【0042】
(3)また、皿ばね60において、その軸方向に圧縮力が作用するとき、皿ばね60は小径側端部がその径方向内側に狭まるように、大径側端部がその径方向外側に広がるように弾性変形しようとする。つまり、皿ばね60の外周面60aが、プレート50側に近接する方向に弾性変形し、角部V2が中心軸Ax2に向かう方向に弾性変形する。
【0043】
この点、斜面51と皿ばね60の外周面60aとの間には第1の隙間CL1が、斜面52と皿ばね60の小径側の端部の内周面60bとの間には第2の隙間CL2が形成されている。この隙間は皿ばね60が弾性変形を許容するスペースである。このため、皿ばね60は円滑に弾性変形できる。
【0044】
(4)また、第1の隙間CL1は、皿ばね60の外周に向かうほど、また、第2の隙間CL2は、皿ばね60の内周に向かうほど、皿ばね60の軸方向において広くなっている。このため、皿ばね60はより円滑に弾性変形することができる。
【0045】
(5)また、断面形状がV字形状であれば、本実施の形態では皿ばねその軸線を含む平面で切断した断面が矩形であることから、プレート50の谷部V1に皿ばね60の角部V2が嵌まることにより、皿ばね60がプレート50に対して偏心することを一層抑制できる。さらに、断面形状がV字形状であることにより、径方向に切断した断面形状がV字形状でない場合と比較して、第1の隙間CL1および第2の隙間CL2を形成しやすくなる。そのため、皿ばね60のより円滑な弾性変形を補助することができる。
【0046】
(6)円環状の溝50cの中心軸Ax1と、プレート50の中心軸Ax2とは互いに一致するように、プレート50における平坦部50bに円環状の溝50cが設けられている。このような構成とすることで、軸受34の軸方向における両側に皿ばね60をプレート50の溝50cに嵌め込んだ際に、皿ばね60が軸受34の軸方向における両側面を押圧する弾性力が同軸上の位置に作用する。そのため、皿ばね60のプレート50に対する径方向の偏心に起因して生じる軸受34の傾きを抑制できる。
【0047】
(7)プレート50および皿ばね60を、それらの軸方向において、軸受34とハウジング16との間に配置する場合、次のようなことが懸念される。例えば、ラックシャフト12の軸方向において、円環状の溝50cが設けられている平坦部50bとハウジング16との間を互いに押圧するように皿ばね60を設けた場合、皿ばね60の軸方向における一方の端部はハウジングに当接する。ハウジング16は、例えばアルミニウムのような軟金属にて構成されているため、ハウジング16における皿ばね60が当接した面は徐々にへこみが出てきてしまう。そのへこみが生じることにより、円環状の溝50cが設けられている平坦部50bとハウジング16との間を互いに離間するように押圧していた皿ばね60の弾性力が弱くなる。弾性力が弱くなるにつれて、皿ばねは軸受の弾性支持を維持することが難しくなり、ひいては軸受の傾きを生じるおそれがある。
【0048】
その点、皿ばね60の小径側の端部(正確には角部V2)は、平坦部50bの円環状の溝50c(正確には谷部V1)に当接している。このような構成とすることで、皿ばね60はハウジング16と当接しない。そのため、皿ばね60は軸受34の弾性支持を維持することができる。
【0049】
(8)ステアリング装置に軸受34を使用する場合、次のようなことが懸念される。
例えば、ステアリング装置を車両用として使用した場合、路面から伝わる力により、ラックシャフト12がその軸方向と直交する方向へ回転する力が生じる場合がある。その回転する力がラックシャフト12からボールねじナット31を介して軸受34に伝達され、軸受34がラックシャフト12の軸線に対して傾きを生じるおそれがある。
【0050】
その点、上記構成によれば、軸受が複列アンギュラ玉軸受である。軸受34に深溝玉軸受(単列)を採用した場合に比べて、ラックシャフト12から伝達される回転する力に対する剛性がより改善される。したがって、ボールねじナット31を支持する軸受34の傾きをより抑制できる。
【0051】
<その他の実施形態>
尚、本実施の形態は、技術的に矛盾が生じない範囲で以下のように変更してもよい。
・本実施の形態にて、斜面51と斜面52とがなす角度θを90度より大きな角度としたが、これに限らない。例えば、角度θを90度以下に設定する場合、斜面51と斜面52とがなす角度θよりも、皿ばね60の角部V2のなす角度が小さくなるように、且つ角部V2を谷部V1に当接させた場合に、第1の隙間CL1および第2の隙間CL2が形成されるように、角部V2の形状を変更すればよい。
【0052】
・本実施の形態において、プレート50をその軸線を含む平面で切断した溝50cの断面形状はV字形状であったが、これに限らない。たとえば、断面形状がU字形状であってもよい。ただし、この場合、皿ばね60の角部V2に相当する部分の形状を適宜変更し、皿ばね60の角部V2に相当する部分を溝50cに当接させた際に、第1の隙間CL1および第2の隙間CL2が形成されるようにすればよい。尚、第1の隙間CL1が形成され、且つ第2の隙間CL2が形成されていない場合でもよい。
【0053】
・本実施の形態において、円環状の溝50cを設けた側と反対側の平坦部50bの側面は平坦であるが、これに限らない。円環状の溝50cを設けた側の反対側の側面に、円環状の溝50cに対して凹凸を反転させた形の円環状の突起を設けてもよい。溝と突起をそれぞれ平坦部50bの両側面において対称な位置に設けることにより、溝部におけるプレート50の肉厚が均一となり、プレス加工により精度良く円環状の溝50cを形成することができる。尚、上記構成のプレート50をステアリング装置に適用した場合、上記の円環状の突起を嵌め込む溝をハウジング16の係止部25、26または、軸受34の軸方向における両側面に設ければよい。円環状の突起を嵌め込む溝の形状は製品使用によって適宜変更してもよいが、少なくとも平坦部50bの円環状の突起が設けられている面における突起以外の面がハウジング16の係止部25、26または軸受34の軸方向における側面に当接するようにすればよい。
【0054】
・本実施の形態において、平坦部50bは軸方向において、係止部25、26に当接するように設けられたが、これに限らない。例えば、プレート50および皿ばね60の向きを軸方向において反対向きに設けてもよい。この場合、平坦部50b、50bは軸受34の軸方向における両側面に当接する。
【0055】
・本実施の形態にて、皿ばね60の外周面60aおよび皿ばね60の小径側端部の内周面60bはS極、皿ばね60の内周面および皿ばね60の大径側端部の外周面はN極に着磁されているが、これに限らない。すなわち、図6に示すプレート50および皿ばね60の着磁の向きを逆にしてもよい。このようにしても、プレート50と皿ばね60を組み付ける際に、平坦部50bと皿ばね60とが互いに近接するように吸着力が働くため、皿ばね60の角部V2とプレート50の谷部V1とが接触した状態を維持することができる。つまり、組み付け時に皿ばね60がプレート50に対して径方向に偏心することをより抑制することができる。また、プレート50および皿ばねを着磁しなくてもよい。そのようにしても、皿ばね60の角部V2を、平坦部50bにおける円環状の溝50cの谷部V1に嵌め込むことで、皿ばね60のプレート50に対する偏心が抑制できる。尚、たとえば、プレート50を鋼製とし、皿ばね60のみを着磁をすることで、プレート50と皿ばね60の間に吸引力を発生させることができる。また、皿ばね60を鋼製とし、プレート50のみをに着磁しても同様の効果を得ることができる。
【0056】
・本例ではステアリング装置としてEPS(電動パワーステアリング装置)を例に挙げたが、ステアバイワイヤにも適用できる。
【符号の説明】
【0057】
12…ラックシャフト、12a…(ラックシャフトの)ねじ溝、15…ステアリング、16…ハウジング、16a…第1ハウジング、16b…第2ハウジング、31…ボールねじナット、33…(ボールねじナットの)ねじ溝、34…軸受、34b…外輪、50…プレート、50a…保持部、50b…平坦部、50c…(円環状の)溝、51…斜面、52…斜面、60…皿ばね、60a…皿ばねの外周面、60b…皿ばねの小径側端部における内周面、CL1…第1の隙間、CL2…第2の隙間、Ax1…(円環状の溝の)中心軸、Ax2…(プレート外径の)中心軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6