(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-20626(P2017-20626A)
(43)【公開日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】軸受ブッシュ及びこの軸受ブッシュを備えたペダル装置
(51)【国際特許分類】
F16C 17/02 20060101AFI20170105BHJP
F16C 11/10 20060101ALI20170105BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20170105BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20170105BHJP
B60K 26/02 20060101ALI20170105BHJP
F16C 33/04 20060101ALI20170105BHJP
B60K 23/02 20060101ALN20170105BHJP
【FI】
F16C17/02 Z
F16C11/10 Z
G05G1/30 E
B60T7/06 B
B60T7/06 A
B60K26/02
F16C33/04
B60K23/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-140889(P2015-140889)
(22)【出願日】2015年7月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
(72)【発明者】
【氏名】沖村 明彦
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 勝利
(72)【発明者】
【氏名】金城 雅也
【テーマコード(参考)】
3D036
3D037
3D124
3J011
3J070
3J105
【Fターム(参考)】
3D036EA01
3D036EA06
3D036EB02
3D036EB08
3D037EA05
3D037EB02
3D037EB05
3D124AA34
3D124BB01
3D124CC46
3D124DD26
3D124DD27
3J011AA20
3J011BA06
3J011BA13
3J011KA08
3J011KA09
3J011MA12
3J011PA01
3J011SB03
3J011SB04
3J011SB20
3J011SC03
3J011SC13
3J011SC16
3J070AA32
3J070BA54
3J070BA57
3J070CB05
3J070CB31
3J070DA02
3J105AA14
3J105AA15
3J105AB06
3J105AB50
3J105AC01
3J105BA15
3J105BC21
(57)【要約】
【課題】径方向のガタに起因する操作フィーリングの低下及び異音の発生を防止できる軸受ブッシュ及びこの軸受ブッシュを備えたペダル装置を提供すること。
【解決手段】軸受ブッシュ1は、円筒状内面2及び円筒状外面3を有する円筒状部6と、円筒状内面9及び円筒状外面10を有する円筒状部14と、軸方向Xの両端部18及び19では円筒状外面3及び10よりも径方向Yの内方に位置している一方、軸方向Xの両端部18及び19間では円筒状外面3及び10よりも径方向Yの外方に位置した湾曲状凸外面20及び湾曲状凸外面20に相補的に対応して湾曲した湾曲状凹内面21を有している膨出部22と、円筒状部6及び14並びに膨出部22を縮径自在とするスリット29とを具備している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の円筒状内面及び円筒状外面を有する一方の円筒状部と、一方の円筒状内面と同径の他方の円筒状内面に加えて他方の円筒状外面を有する他方の円筒状部と、軸方向の両端部では一方及び他方の円筒状外面よりも径方向の内方に位置している一方、軸方向の当該両端部間では一方及び他方の円筒状外面よりも径方向の外方に位置した湾曲状凸外面並びに一方及び他方の円筒状内面よりも径方向の外方に位置した湾曲状凹内面を有していると共に軸方向における一方及び他方の円筒状部間に配された膨出部と、一方の円筒状部の軸方向の一端部から径方向外方に伸びて当該一端部に一体的に設けられた円環状鍔部と、一方及び他方の円筒状部並びに膨出部を縮径自在とするスリットとを具備した軸受ブッシュ。
【請求項2】
円筒状のボスと、このボスに固定されたペダルアームと、ボス内に当該ボスに対して相対回転可能に配された軸部材と、この軸部材の両端が固定されたペダルブラケットと、湾曲状凹内面及び軸部材の外面間に環状空所を形成する一方、湾曲状凸外面の少なくとも一部をボスの内面に接触させるようにして、ボス及び軸部材間に一方及び他方の円筒状部並びに膨出部を配してなる請求項1に記載の軸受ブッシュとを備えているペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受ブッシュ及びこの軸受ブッシュを備えたペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のブレーキペダル又はクラッチペダルは、車体部材、例えばダッシュパネルに固定されたペダルブラケットに支持された軸部材に円筒状のボスを介して回転自在に支持されている。
【0003】
そして、ペダルブラケットと軸部材との枢支構造を有する従来のペダル装置では、外周面にペダルアームを固定したボスに、夫々一方の端部に鍔部を有した合成樹脂製の軸受ブッシュが鍔部の裏面をボスの端面に当接させて圧入嵌合されており、軸受ブッシュ内には所定のクリアランス(軸受隙間)をもってボルトからなる軸部材が挿入されており、軸部材はナットによりペダルブラケット間に締結固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−143217号公報
【特許文献2】実開平6−23854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
斯かるペダル装置では、ペダルアームの回転を円滑に行わせるために、ペダルブラケットと軸受ブッシュとの間に軸方向の隙間を設けているが、この隙間はペダルアームの軸方向のガタとなるため、このガタに起因するペダルアームの振動で、運転者に伝達される異音(コツコツ音)が発生し、また、斯かるガタに起因してペダルパッドで横揺れが生じる虞があり、いずれにしても、自動車の操作フィーリングを低下させるという問題がある。
【0006】
斯かる問題を解消すべく、ペダルブラケットと軸受ブッシュとの間の隙間を小さくすると、ペダルブラケットと軸受ブッシュとの間の摺動抵抗が大きくなって、ペダルアームの戻りが不良となり、かえって自動車の操作フィーリングを低下させる虞がある。
【0007】
また、ペダル装置では、自動車の操作フィーリングを向上させるために、軸受ブッシュの内径と軸部材の外径との寸法公差を極力小さくして軸受ブッシュと軸部材との径方向のガタ(軸受隙間)を最小限にすることが要求されるが、斯かる径方向のガタを小さくすると、軸受ブッシュと軸部材との間の摺動抵抗が大きくなって、上記と同様に、ペダルアームの戻りが不良となり、同じく操作フィーリングを低下させる虞がある。
【0008】
特許文献1には、ペダルブラケットに枢着されているペダルアーム及びボスの外周面にガイド部材を設け、ガイド部材とペダルブラケットとの間にブッシュを介装して、ペダルアームの横揺れを減少させ、ペダルアームの操作フィーリングを向上させる技術が記載されており、特許文献2には、支点ピン(軸部材)の端部に、プッシュプレートナットを嵌挿固定し、支点ピンに嵌挿されたプッシュプレートナットで支点ピンの軸方向抜け止めを行うとともに、支点ピンに所定の押し付け力を発揮させて、ガタを発生させることなくペダルアームの円滑な回転を確保する技術が記載されている。
【0009】
ところで、特許文献1及び特許文献2に記載された技術は、いずれもペダルアームの横揺れを防止する技術であり、軸受ブッシュと軸部材との寸法公差による径方向のガタに起因する操作フィーリングの低下に加えて、異音の発生防止については考慮されていない。
【0010】
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、径方向のガタに起因する操作フィーリングの低下及び異音の発生を防止できる軸受ブッシュ及びこの軸受ブッシュを備えたペダル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の軸受ブッシュは、一方の円筒状内面及び円筒状外面を有する一方の円筒状部と、一方の円筒状内面と同径の他方の円筒状内面に加えて他方の円筒状外面を有する他方の円筒状部と、軸方向の両端部では一方及び他方の円筒状外面よりも径方向の内方に位置している一方、軸方向の当該両端部間では一方及び他方の円筒状外面よりも径方向の外方に位置した湾曲状凸外面及び一方及び他方の円筒状内面よりも径方向の外方に位置した湾曲状凹内面を有していると共に軸方向における一方及び他方の円筒状部間に配された膨出部と、一方の円筒状部の軸方向の一端部から径方向外方に伸びて当該一端部に一体的に設けられた円環状鍔部と、一方及び他方の円筒状部並びに膨出部を縮径自在とするスリットとを具備している。
【0012】
本発明の軸受ブッシュによれば、軸部材の外面に接触させられる一方及び他方の円筒状内面を有した一方及び他方の円筒状部並びにペダル装置のボスの内面に接触させられる湾曲状凸外面を有した膨出部がスリットによって縮径自在となっているので、当該膨出部を軸方向において挟んで設けられた一方及び他方の円筒状部の一方及び他方の円筒状内面の内径寸法とペダル装置の軸部材の外径寸法との寸法公差によって決定される軸受隙間(ガタ)を吸収でき、軸受隙間に起因する径方向のガタによるペダル装置の操作フィーリングの低下及び異音の発生を防止できる。
【0013】
本発明の軸受ブッシュにおいて、一方及び他方の円筒状部は、軸方向において互いに同一の長さを有していてもよいが、これに代えて、軸方向において異なる長さを有していてもよく、一方及び他方の円筒状部が軸方向において互いに異なる長さを有している場合、膨出部は、一方又は他方の円筒状部側に偏って配されることになり、また、一方及び他方の円筒状外面は、好ましい例では、互いに同一の径を有しているが、互いに異なる径を有していてもよく、要は、一方及び他方の円筒状部が挿入されるボスの内周面の径より小さく、夫々とボスの内周面との間に円環状の隙間を形成する径を有していればよい。
【0014】
本発明において、湾曲状凸外面及び湾曲状凹内面の夫々は、好ましい例では、同心の球面又は回転楕円体面の一部からなるが、本発明は、これに限定されず、要は、湾曲状凸外面は、一方及び他方の円筒状外面よりも径方向の外方に位置した連続な全体として凸に湾曲した面からなっていればよく、湾曲状凹内面もまた、湾曲状凸外面に対応して連続な全体として凹に湾曲した面からなっていればよい。
【0015】
本発明において、スリットは、一方及び他方の円筒状部の軸心線を中心とした円周方向において一方及び他方の円筒状部並びに膨出部を分断するように、一方及び他方の円筒状部の端面で夫々開口すると共に一方の円筒状部の端面から他方の円筒状部の端面まで軸心線に平行に軸方向に伸びて又は軸心線に一定の角度をもって軸方向に対して傾きをもって伸びて一方及び他方の円筒状部並びに膨出部に設けられた第一のスリット部と、円環状鍔部を円周方向Rに分断するように、第一のスリット部と連通して円環状鍔部に設けられた第二のスリット部とを具備していても、これらに代えて、一方の円筒状部の端面で開口すると共に一方の円筒状部の端面から他方の円筒状部の端面の手前まで軸心線に平行に軸方向に伸びて又は軸心線に一定の角度をもって軸方向に対して傾きをもって伸びて少なくとも一方の円筒状部及び膨出部に、当該少なくとも一方の円筒状部及び膨出部を円周方向Rに分断するようにして設けられた少なくとも一つの第一のスリット部と、他方の円筒状部の端面で開口すると共に他方の円筒状部の端面から一方の円筒状部の端面の手前まで第一のスリット部と平行に伸びて少なくとも他方の円筒状部及び膨出部に、当該少なくとも他方の円筒状部及び膨出部を円周方向Rに分断するようにして設けられた少なくとも一つの第二のスリット部と、円環状鍔部を円周方向Rに分断するように、第一のスリット部と連通して円環状鍔部に設けられた第三のスリット部とを具備していてもよい。
【0016】
本発明において、一方及び他方の円筒状部、膨出部並びに円環状鍔部を含む軸受ブッシュは、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂等の合成樹脂から一体形成されていてもよく、また、銅若しくは銅合金又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金等の非鉄金属板又はステンレス鋼板から一体形成されていてもよく、更には、鋼薄板と鋼薄板上に一体的に形成された多孔質金属焼結層と多孔質金属焼結層に充填被覆された合成樹脂層とを具備した複層板から一体形成されていてもよい。
【0017】
本発明のペダル装置は、円筒状のボスと、このボスに固定されたペダルアームと、ボス内に当該ボスに対して相対回転可能に配された軸部材と、この軸部材の両端が固定されたペダルブラケットと、湾曲状凹内面及び軸部材の外面間に環状空所を形成する一方、湾曲状凸外面の少なくとも一部をボスの内面に接触させるようにして、ボス及び軸部材間に一方及び他方の円筒状部並びに膨出部を配してなる上記の軸受ブッシュとを備えている。
【0018】
本発明のペダル装置によれば、軸受ブッシュの一方及び他方の円筒状部の円筒状内面の内径寸法と軸部材の外径寸法とによって決定される軸受隙間(ガタ)は、膨出部が縮径自在となっている上に、湾曲状凸外面の少なくとも一部がボスの内面に接触されているので、常時適正な値に維持され、当該軸受隙間に起因する異音の発生は防止される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、径方向のガタに起因する操作フィーリングの低下及び異音の発生を防止できる軸受ブッシュ及びこの軸受ブッシュを備えたペダル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の軸受ブッシュの好ましい例の側面説明図である。
【
図3】
図3は、本発明のペダル装置の好ましい例の正面説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の軸受ブッシュの好ましい他の例の側面説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の軸受ブッシュの好ましい更に他の例の側面説明図である。
【
図8】
図8は、
図8のVIII−VIII線矢視断面説明図である。
【
図9】
図9は、本発明の軸受ブッシュの好ましい更に他の例の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい具体例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの具体例に何等限定されないのである。
【0022】
図1及び
図2において、本例の軸受ブッシュ1は、円筒状内面2、円筒状外面3、円筒状内面2に直接に連接した円環状のテーパ面4及びテーパ面4に直接に連接した軸方向Xの円環状の端面5を有する円筒状部6と、円筒状内面2の径r1と同径の円筒状内面9に加えて円筒状外面3の径r2と同径の円筒状外面10、円筒状内面9に直接に連接した円環状のテーパ面11、円筒状外面10に直接に連接した円環状のテーパ面12並びにテーパ面11及び12の夫々に直接に連接した軸方向Xの円環状の端面13を有すると共に軸方向Xにおいて円筒状部6と同一の長さを有した円筒状部14と、軸方向Xの両端部18及び19では円筒状外面3及び10よりも径方向Yの内方に位置している一方、軸方向Xの当該両端部18及び19間では円筒状外面3及び10よりも径方向Yの外方に位置した湾曲状凸外面20及び湾曲状凸外面20に相補的に対応して湾曲した湾曲状凹内面21を有していると共に軸方向Xにおける円筒状部6及び14間に配された膨出部22と、円筒状部6の軸方向Xの一端部25から径方向Yの外方に伸びて当該一端部25に一体的に設けられた円環状鍔部26と、円筒状部6及び14並びに膨出部22を縮径自在とするスリット29とを具備している。
【0023】
曲率半径r3を有した球面の一部からなる湾曲状凹内面21は、軸方向Xの円環状の一端35では円筒状内面2の軸方向Xの円環状の一端に、軸方向Xの円環状の他端36では円筒状内面9の軸方向Xの円環状の一端に夫々直接に連接されており、曲率半径r4を有した球面の一部からなる湾曲状凸外面20は、軸方向Xの円環状の一端37では円筒状部6の軸方向Xの円環状の段差面38を介して円筒状外面3の軸方向Xの円環状の一端39に間接的に連接している一方、軸方向Xの円環状の他端40では円筒状部14の軸方向Xの円環状の段差面41を介して円筒状外面10の軸方向Xの円環状の一端42に間接的に連接しており、円筒状部6及び14の厚み(肉厚)T(=(r2−r1)/2)よりも薄い膨出部22の厚み(肉厚)をt(<T)とすると、曲率半径r4は、曲率半径r3に厚みtを加えた値(r4=r3+t)となっている。
【0024】
スリット29は、円筒状部6及び14の軸心線Oを中心とした円周方向Rにおいて円筒状部6及び14並びに膨出部22を分断するように、端面5及び端面13で開口すると共に端面5から端面13まで軸心線Oに平行に軸方向Xに伸びて円筒状部6及び14並びに膨出部22に設けられたスリット部51と、円環状鍔部26を円周方向Rに分断するように、スリット部51と連通して円環状鍔部29に設けられたスリット部52とを具備している。
【0025】
斯かる軸受ブッシュ1を具備したペダル装置61は、
図3及び
図4に示すように、円筒状のボス62と、ボス62の円筒状の外面63に一端64で固定されているペダルアーム65と、ペダルアーム65の他端66に取付けられたペダル67と、ボス62内に当該ボス62に対して円周方向Rに相対回転可能に配されている軸部材68と、軸部材68の両端69及び70がカシメ固定されている側壁71及び72を有すると共に車体のダッシュパネルに固定されたペダルブラケット73及び74とを更に具備している。
【0026】
ペダル装置61において、軸受ブッシュ1は、側壁71及び72側の夫々に配されており、側壁71側の軸受ブッシュ1は、湾曲状凹内面21及び軸部材68の円筒状の外面81間に環状空所82を形成するようにして、円筒状内面2及び9を夫々外面81に接触させると共に湾曲状凸外面20の少なくとも一部をボス62の円筒状の内面83に接触させる一方、円環状鍔部26を側壁71に接触させてボス62及び軸部材68間に円筒状部6及び14並びに膨出部22を配してなり、側壁72側の軸受ブッシュ1も、側壁71側の軸受ブッシュ1と同様にして、ボス62及び軸部材68間に円筒状部6及び14並びに膨出部22を配してなる。
【0027】
以上のペダル装置61では、円筒状内面2及び9で規定される径と外面81で規定される径によって決定される軸受隙間(ガタ)は、円筒状内面2及び9が縮径自在となっている上に、環状空所82を形成するようにして、湾曲状凸外面20が内面83に接触されているので、常時適正な値に維持され、当該軸受隙間に起因する異音の発生は防止される上に、径方向Yに過度の荷重が軸受ブッシュ1に作用した場合は、湾曲状凸外面20が弾性変形して、斯かる荷重を湾曲状凸外面20と該湾曲状凸外面20を軸方向Xにおいて挟む膨出部22の厚みtより厚い厚みTを有する一対の円筒状部6及び円筒状部14のそれぞれの円筒状外面3及び10とで受け止めるので、軸受隙間は適正な値に維持される一方、環状空所82も維持され、軸受ブッシュ1と軸部材68との間の摺動抵抗の増大を防止することができる。
【0028】
ところで、上記の軸受ブッシュ1においては、スリット29は、スリット部52に加えて、端面5及び端面13で開口すると共に端面5から端面13まで軸心線Oに平行に軸方向Xに伸びて円筒状部6及び14並びに膨出部22に設けられたスリット部51を具備しているが、これに代えて、スリット29は、
図5及び
図6に示すように、円周方向Rにおいて円筒状部6及び14並びに膨出部22を分断するように、端面5及び端面13で開口すると共に端面5から端面13まで軸心線Oに例えば30°の角度αをもって軸方向Xに対して傾きをもって伸びて円筒状部6及び14並びに膨出部22に設けられたスリット部91と、円環状鍔部26を円周方向Rに分断するように、スリット部91と連通して円環状鍔部29に設けられたスリット部92とを具備していてもよい。
【0029】
また、
図1及び
図2並びに
図5及び
図6に示す各スリット29に代えて、
図7及び
図8に示すスリット29でもよく、
図7及び
図8に示すスリット29は、端面5で開口すると共に端面5から端面13の手前まで軸心線Oに平行に軸方向Xに伸びて円筒状部6及び膨出部22並びに円筒状部14の一部に、当該円筒状部6及び膨出部22並びに円筒状部14の一部を円周方向Rに分断するようにして設けられた少なくとも一つ、本例では三つのスリット部95と、端面13で開口すると共に端面13から端面5の手前までスリット部95と平行に伸びて円筒状部14及び膨出部22並びに円筒状部6の一部に、当該円筒状部14及び膨出部22並びに円筒状部6の一部を円周方向Rに分断するようにして設けられた少なくとも一つ、本例では三つのスリット部96と、円環状鍔部26を円周方向Rに三つに分断するように、スリット部95と連通して円環状鍔部26に設けられた三つスリット部97とを具備していてもよく、スリット部95及び97とスリット部96とは、円周方向Rに等角度間隔をもって交互に配されている。
【0030】
図3及び
図4に示すペダル装置61に
図1及び
図2に示す軸受ブッシュ1に代えて
図5及び
図6又は
図7及び
図8に示す軸受ブッシュ1を用いることにより、斯かるペダル装置61においてもまた、軸受隙間を常時適正な値に維持でき、当該軸受隙間に起因する異音の発生を防止できる上に、径方向Yに過度の荷重が軸受ブッシュ1に作用して湾曲状凸外面20が大きく弾性変形しても、当該荷重を湾曲状凸外面20と湾曲状凸外面20を軸方向Xに挟む膨出部22の厚みtより厚い厚みTを有する一対の円筒状部6及び円筒状部14のそれぞれの円筒状外面3及び10とで受け止めるので、軸受隙間を適正な値に維持できる一方、環状空所82をも維持できて、軸部材68との間の摺動抵抗の増大を防止することができる。
【0031】
更に、上記では、膨出部22の厚みをtとして一定としたが、例えば、軸方向Xにおける両端部18及び19間の中央部から両端部18及び19にかけて徐々に厚みtが厚くなるように膨出部22を形成してもよく、而して、湾曲状凸外面20と湾曲状凹内面21とは、互いに曲率の異なる回転楕円体面からなっていてもよい。
【0032】
更にまた、上記では、湾曲状凸外面20の全体は、径方向Yの外方に凸な曲率半径r3を有した球面の一部からなるが、これに代えて、例えば
図9に示すように、湾曲状凸外面20は、段差面38及び41の夫々に夫々連接していると共に径方向Yの内方に凸な一対の環状の湾曲外面101及び102と、軸方向Xにおいて湾曲外面101及び102間に配されて湾曲外面101及び102の夫々に連接していると共に曲率半径r4を有した球面の一部からなって径方向Yの外方に凸な湾曲外面103とを具備していてもよく、また、この場合、径方向Yの内方に凸な一対の環状の湾曲外面101及び102の夫々の外面に代えて、夫々截頭円錐面からなる外面であってもよく、一方、湾曲状凹内面21の全体もまた、上記では、径方向Yに凸な曲率半径r3を有した球面の一部からなるが、これに代えて、例えば
図9に示すように、湾曲状凹内面21は、円筒状内面2及び9の夫々に夫々連接していると共に湾曲外面101及び102に対応した径方向Yの内方に凸な一対の環状の湾曲内面111及び112と、軸方向Xにおいて湾曲内面111及び112間に配されて湾曲内面111及び112の夫々に連接していると共に湾曲外面103に対応した曲率半径r3を有した球面の一部からなって径方向Yの外方に凸な湾曲内面113とを具備していてもよく、また、この場合にも、径方向Yの内方に凸な一対の環状の湾曲内面111及び112の夫々の内面に代えて、夫々截頭円錐面からなる内面であってもよく、
図9に示す例では、円筒内面2と湾曲内面111との連接部及び湾曲内面9と湾曲内面112との連接部の夫々に角部を生じさせなくできる。なお、
図9に示すような湾曲状凸外面20及び湾曲状凹内面21を有した膨出部22でも、いずれも円筒状部6及び14の厚みTよりも薄い厚みtを全体的に有しているとよい。
【符号の説明】
【0033】
1 軸受ブッシュ
2、9 円筒状内面
3、10 円筒状外面
4、11、12 テーパ面
5、13 端面
6、14 円筒状部
18、19 端部
20 湾曲状凸外面
21 湾曲状凹内面
22 膨出部
25 一端部
26 円環状鍔部
29 スリット