【解決手段】ポリオレフィン及びシリコーン−オレフィン共重合体を含む樹脂シートであって、表面及び裏面の少なくとも一方の算術平均粗さRaが0.15μm以下であるか、及び/又は静摩擦係数が0.5以下である樹脂シート。
ポリオレフィン及びシリコーン−オレフィン共重合体を含む樹脂シートであって、表面及び裏面の少なくとも一方の算術平均粗さRaが0.15μm以下である樹脂シート。
前記第2の樹脂層の、前記第1の樹脂層と反対側の面に第3の樹脂層を含み、前記第3の樹脂層が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン及びポリエステルから選択される1以上の樹脂を含む請求項3〜7のいずれかに記載の積層体。
前記金属又は金属酸化物が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金及び亜鉛から選択される1以上の金属又はその酸化物を含む請求項10に記載の積層体。
前記金属又は金属酸化物が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金及び亜鉛から選択される1以上の金属又はその酸化物を含む請求項15に記載の積層体。
前記成形を、前記積層体を金型に合致するよう附形し、前記附形した積層体を金型に装着し、成形用樹脂を供給して一体化して行う請求項21に記載の成形体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の成形体は未だ防汚性が十分ではなかった。本発明の目的は、防汚性に優れる成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検証した結果、成形体表面の平滑性が防汚性に大きく影響することを見出した。この知見に基づき、成形体表面がシリコーン−オレフィン共重合体を含み、かつ平滑であれば、汚れが付着しにくく、優れた防汚性を発揮できることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下の樹脂シート等が提供される。
1.ポリオレフィン及びシリコーン−オレフィン共重合体を含む樹脂シートであって、表面及び裏面の少なくとも一方の算術平均粗さRaが0.15μm以下である樹脂シート。
2.ポリオレフィン及びシリコーン−オレフィン共重合体を含む樹脂シートであって、表面及び裏面の少なくとも一方の静摩擦係数が0.4以下である樹脂シート。
3.1に記載の樹脂シートからなる第1の樹脂層、及び第2の樹脂層を含む積層体であって、
前記第1の樹脂層の、前記第2の樹脂層と反対側の面の算術平均粗さRaが0.15μm以下である積層体。
4.2に記載の樹脂シートからなる第1の樹脂層、及び第2の樹脂層を含む積層体であって、
前記第1の樹脂層の、前記第2の樹脂層と反対側の面の静摩擦係数が0.4以下である積層体。
5.前記第1の樹脂層に含まれるポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレン及びポリエチレンである3又は4に記載の積層体。
6.前記第2の樹脂層がポリオレフィンを含む3〜5のいずれかに記載の積層体。
7.前記第2の樹脂層のポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレン及びポリエチレンである6に記載の積層体。
8.前記第2の樹脂層の、前記第1の樹脂層と反対側の面に第3の樹脂層を含み、前記第3の樹脂層が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン及びポリエステルから選択される1以上の樹脂を含む3〜7のいずれかに記載の積層体。
9.前記第3の樹脂層の、前記第2の樹脂層と反対側の面の一部又は全面に印刷層を含む8に記載の積層体。
10.前記第3の樹脂層の、前記第2の樹脂層と反対側の面に、金属又は金属酸化物からなる金属層を含む8に記載の積層体。
11.前記金属又は金属酸化物が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金及び亜鉛から選択される1以上の金属又はその酸化物を含む10に記載の積層体。
12.前記金属又は金属酸化物が、インジウム及びアルミニウムから選択される1以上の金属又はその酸化物を含む10又は11に記載の積層体。
13.前記金属層の、前記第3の樹脂層と反対側の面の一部又は全面に印刷層を含む10〜12のいずれかに記載の積層体。
14.前記第2の樹脂層の、前記第1の樹脂層と反対側の面の一部又は全面に印刷層を含む3〜7のいずれかに積層体。
15.前記印刷層の、前記第2の樹脂層と反対側の面に金属又は金属酸化物からなる金属層を含む14に記載の積層体。
16.前記金属又は金属酸化物が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金及び亜鉛から選択される1以上の金属又はその酸化物を含む15に記載の積層体。
17.前記金属又は金属酸化物が、インジウム及びアルミニウムから選択される1以上の金属又はその酸化物を含む15又は16に記載の積層体。
18.3〜17のいずれかに記載の積層体の成形体。
19.前記第1の樹脂層からなる面の算術平均粗さRaが0.15μm以下である18に記載の成形体。
20.前記第1の樹脂層からなる面の静摩擦係数が0.4以下である18に記載の成形体。
21.3〜17のいずれかに記載の積層体を成形し、成形体を得る成形体の製造方法。
22.前記成形を、前記積層体を金型に装着し、成形用樹脂を供給して一体化して行う21に記載の成形体の製造方法。
23.前記成形を、前記積層体を金型に合致するよう附形し、前記附形した積層体を金型に装着し、成形用樹脂を供給して一体化して行う21に記載の成形体の製造方法。
24.前記成形を、
チャンバーボックス内に芯材を配設し、
前記芯材の上方に、前記積層体を配置し、
前記チャンバーボックス内を減圧し、
前記積層体を加熱軟化し、
加熱軟化させた前記積層体を前記芯材に押圧して被覆させる21に記載の成形体の製造方法。
25.18〜20のいずれかに記載の成形体を用いて作成された、鞍乗型車両の外装部品又は四輪車の外装部品。
26.18〜20のいずれかに記載の成形体を用いて作成された、車両の内装材、家電の筐体、化粧鋼鈑、化粧板、住宅設備又は情報通信機器の筐体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防汚性に優れる成形体が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[樹脂シート]
本発明の第1の樹脂シートは、ポリオレフィン及びシリコーン−オレフィン共重合体を含む。また、樹脂シートの表面及び裏面の少なくとも一方の面の算術平均粗さRaは0.15μm以下である。
【0010】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられるが、特に、耐熱性、硬度の観点からポリプロピレンが好ましい。
ポリプロピレンは、少なくともプロピレンに由来する構造単位を含む重合体である。具体的には、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィン(エチレン等)との共重合体が挙げられる。ポリプロピレンにポリエチレン等のポリオレフィンや共重合体が混合された混合物としてもよい。
ポリプロピレン共重合体は、ランダムポリプロピレン、又はブロックポリプロピレンであってもよく、これらの混合物でもよい。
これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
ポリプロピレンには、必要に応じて、顔料、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。
また、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンを、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、アクリル酸、メタクリル酸、テトラヒドロフタル酸、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート等の変性用化合物で変性して得られる変性ポリオレフィン樹脂を配合してもよい。
【0012】
シリコーン−オレフィン共重合体は、シリコーン(シロキサン結合を有する高分子化合物)とオレフィン(又はポリオレフィン)との共重合体である。
シリコーンは、好ましくは下記式(1)で表される構造単位を有する。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基又はケイ素含有基を表し、炭化水素基、酸素含有基、ケイ素含有基は1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Y
1は、O、S又はNR(Rは水素原子又は炭化水素基を表す)を表す。)
【0013】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基が挙げられる。
【0014】
アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0015】
酸素含有基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0016】
ケイ素含有基としては、アルキルシリル基、アルケニルシリル基、アリールシリル基、アルキルシロキシ基、アルケニルシロキシ基、アリールシロキシ基、アルコキシシリル基、アリールオキシシリル基、アルコキシシロキシ基、アリールオキシシロキシ基、ポリシロキシル等が挙げられる。ポリシロキシル基は2個以上のシロキサンの繰り返し単位を有する基であり、直鎖でも分岐していても構わない。
【0017】
また上記の炭化水素基、酸素含有基、およびケイ素含有基は、1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、これらの基の少なくとも1つの水素が、ハロゲン原子、酸素、窒素、ケイ素、リン、イオウを含む基で置換された基が含まれる。
【0018】
ポリオレフィンは、通常、ビニル基を1以上含む構造を有する。
ビニル基を除いた構造が、エチレン単独重合鎖、プロピレン単独重合鎖、又はエチレン、プロピレン、ブテン、ビニルノルボルネン、2個以上の二重結合を有する環状ポリエンおよび2個以上の二重結合を有する鎖状ポリエンからなる群から選択される2種以上のオレフィンの共重合鎖であることが好ましい。
【0019】
シリコーン−オレフィン共重合体は、公知の方法により合成することができる。
シリコーン−オレフィン共重合体中における、構造単位(1)の割合は、シリコーン−オレフィン共重合体の目的機能が発現されればよく、特に限定されないが、通常5〜99質量%であり、好ましくは10〜95質量%である。
【0020】
シリコーン−オレフィン共重合体は、市販の共重合体を用いてもよいし、製造したものを用いてもよい。市販品としては、シリコーン−オレフィン共重合体「イクスフォーラ」(三井化学株式会社製、商品名)が挙げられる。また、ビニル基の含有量が0〜1mol%のジメチル・ビニルポリシロキサンと、不飽和基の含有量が0〜5質量%のEPDM(エチレン−プロピレンゴム)、SBS(スチレン−ブタジエンスチレンブロックコポリマー)、又はSIS(スチレン−イソプレンブロックコポリマー)との部分架橋物や、アミノ変性シリコーン又はカルボキシル変性シリコーンと、無水マレイン酸変性したオレフィンポリマー又はオリゴマー(ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体等)との反応物を用いてもよい。
【0021】
また、これらを樹脂でマスターバッチ化したペレットである「X−22−2101」、「X−22−2147」(信越化学工業株式会社製、商品名)、「BY27−001S」(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名)や、樹脂と部分グラフト重合したペレットである「BY27−201」(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名)等も挙げられる。
【0022】
シリコーン−オレフィン共重合体の含有量は、第1の樹脂シート中、通常、2〜80質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。また、2〜15質量%、3〜10質量%又は4〜8質量%としてもよい。
【0023】
第1の樹脂シートは、本質的に、ポリオレフィン及びシリコーン−オレフィン共重合体からなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。第1の樹脂シートの、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、98質量%以上、99質量%以上又は99.5質量%以上が、ポリオレフィン及びシリコーン−オレフィン共重合体であってもよい。また、第1の樹脂シートは、ポリオレフィン及びシリコーン−オレフィン共重合体のみからなってもよい。
【0024】
第1の樹脂シートの表面及び裏面の少なくとも一方の面の算術平均粗さRaは0.15μm以下である。Raが0.15μmを超えると表面が平滑でなくなるため、表面と泥が接する面積が多くなり、泥の剥離性が損なわれるおそれがある。算術平均粗さRaは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.8μm以下である。
算術平均粗さRaは、3D測定レーザー顕微鏡を用いて測定する。具体的には実施例に記載の方法によって測定する。
【0025】
本発明の第2の樹脂シートは、ポリオレフィン及びシリコーン−オレフィン共重合体を含む。また、第2の樹脂シートの表面及び裏面の少なくとも一方の面の静摩擦係数は0.4以下である。
ポリオレフィン、シリコーン−オレフィン共重合体、配合量等は、第1の樹脂シートと同じである。
【0026】
第2の樹脂シートの表面及び裏面の少なくとも一方の面の静摩擦係数は0.4以下であり、好ましくは0.38以下であり、より好ましくは0.35以下である。静摩擦係数が0.5を超えると、付着した泥の滑り出しが悪くなり、泥の離形性が損なわれるおそれがある。
静摩擦係数は実施例に記載の方法によって測定する。
【0027】
第1〜第2の樹脂シート(以下、これらを「本発明の樹脂シート」という場合がある)の厚さは、通常50〜1000μmであり、好ましくは100〜500μmである。
【0028】
本発明の樹脂シートは、好ましくは表面及び裏面の少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.5以下であり、好ましくは0.4以下であり、より好ましくは0.35以下である。動摩擦係数が0.5を超えると、滑り出した泥の抵抗が大きく、泥の離形性が損なわれるおそれがある。
動摩擦係数は実施例に記載の方法によって測定する。
【0029】
本発明の樹脂シートは、シリコーン−オレフィン共重合体を含み、少なくとも一方の面が特定の性質(算術平均粗さRa、又は静摩擦係数)を有するため、防汚性に優れ、泥等の汚れが付着しにくい成形体とすることができる。
【0030】
本発明の樹脂シートの形成方法は、押出法等が挙げられる。
本発明の樹脂シートを製造するための製造装置の一例を
図1に示す。
図1に示す製造装置は、押出機のTダイ12、第1冷却ロール13、第2冷却ロール14、第3冷却ロール15、第4冷却ロール16、金属製エンドレスベルト17、剥離ロール21を備える。
このように構成された製造装置を用いた急冷による樹脂シート11の製造方法の一例を以下に説明する。
【0031】
まず、押し出された溶融樹脂と直接接触し、これを冷却する金属製エンドレスベルト17及び第4冷却ロール16の表面温度が露点以上、50℃以下、好ましくは30℃以下に保たれるように、予め各冷却ロール13、14、15、16の温度制御を行う。
【0032】
ここで、第4冷却ロール16及び金属製エンドレスベルト17の表面温度が露点以下では、表面に結露が生じ均一な製膜が困難になる可能性がある。一方、表面温度が50℃より高いと、得られるシート11の透明性が低くなるとともに、α晶が多くなり、熱成形しにくいものとなる可能性がある。従って、表面温度は例えば20℃である。
【0033】
次に、押出機のTダイ12より押し出された溶融樹脂(造核剤を含まない)を第1冷却ロール13上で金属製エンドレスベルト17と、第4冷却ロール16との間に挟み込む。この状態で、溶融樹脂を第1、第4冷却ロール13、16で圧接するとともに、20℃で急冷する。
この際、第1冷却ロール13及び第4冷却ロール16間の押圧力で弾性材22が圧縮されて弾性変形する。
この弾性材22が弾性変形している部分、即ち、第1冷却ロール13の中心角度θ1に対応する円弧部分で、急冷されたシートは各冷却ロール13、16により面状圧接されている。この際の面圧は、通常0.1MPa以上20MPa以下である。
【0034】
上述のように圧接され、第4冷却ロール16及び金属製エンドレスベルト17間に挟まれたシートは、続いて、第4冷却ロール16の略下半周に対応する円弧部分で金属製エンドレスベルト17と第4冷却ロール16とに挟まれて面状圧接される。この際の面圧は、通常0.01MPa以上0.5MPa以下である。
【0035】
このように第4冷却ロール16で面状圧接及び冷却された後、金属製エンドレスベルト17に密着したシートは、金属製エンドレスベルト17の回動とともに第2冷却ロール14上に移動される。ここで、剥離ロール21によりガイドされて第2冷却ロール14側に押圧されたシートは、前述同様、第2冷却ロール14の略上半周に対応する円弧部分で金属製エンドレスベルト17により面状圧接され、再び30℃以下の温度で冷却される。この際の面圧は、通常0.01MPa以上0.5MPa以下である。
【0036】
第2冷却ロール14上で冷却されたシートは、剥離ロール21により金属製エンドレスベルト17から剥離され、巻き取りロール(図示省略)により、所定の速度で巻き取られる。
【0037】
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の樹脂シートからなる第1の樹脂層、及び第2の樹脂層を含む。
本発明の積層体を
図2に示す。積層体1は、第1の樹脂層100及び第2の樹脂層200の積層構造であり、第1の樹脂層100の、第2の樹脂層200と反対側の面Aが、上記の各樹脂シートの特定の性質を有する。
本発明の積層体は、具体的には下記の第1〜第2の積層体である。
【0038】
本発明の第1の積層体は、上記の第1の樹脂シートからなる第1の樹脂層、及び第2の樹脂層からなる。第1の樹脂層の、第2の樹脂層と反対側の面(面A)の算術平均粗さRaは0.15μm以下である。
第1の樹脂シート及び算術平均粗さRaは上述した通りである。
【0039】
第2の樹脂層は、好ましくはポリオレフィンを含む。ポリオレフィンは第1の樹脂シートで説明した通りである。ポリオレフィンは、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレン及びポリエチレンである。
【0040】
本発明の第2の積層体は、上記の第2の樹脂シートからなる第1の樹脂層、及び第2の樹脂層を含む。第1の樹脂層の、第2の樹脂層と反対側の面(面A)の静摩擦係数が0.5以下である。
第2の樹脂シート及び静摩擦係数は上述した通りである。
第2の樹脂層は第1の積層体における第2の樹脂層と同じである。
【0041】
本発明の積層体は、好ましくは、第1の樹脂層の、第2の樹脂層と反対側の面(面A)の動摩擦係数が0.5以下である。動摩擦係数は上述した通りである。
【0042】
本発明の積層体において、第1の樹脂層の厚さは、通常5〜200μmであり、好ましくは10〜100μmである。第2の樹脂層の厚さは、通常45〜800μmであり、好ましくは90〜400μmである。
【0043】
(第3の樹脂層)
本発明の積層体は、第2の樹脂層の、第1の樹脂層と反対側の面に第3の樹脂層を含んでもよい。この場合、積層体は(第1の樹脂層/第2の樹脂層/第3の樹脂層)の構成となる。「/」は積層構造であることを示す。
【0044】
第3の樹脂層は、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン及びポリエステルから選択される1以上の樹脂を含む。第2の樹脂層やインキへの密着性や成形性を考慮すると、ウレタン樹脂が好ましい。
【0045】
ウレタン系樹脂は、ジイソシアネート、高分子量ポリオール及び鎖延長剤の反応物が好ましい。高分子量ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
これにより、積層体を複雑な非平面状に成形しても、第1の層に第3の層が追従して良好に層構成を形成できる。また、後述する金属層のひび割れや剥離を防ぐことができる。
【0046】
第3の樹脂層は、ガラス転移温度が−50℃以上100℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が−50℃未満では、第3の樹脂層の歪みが後述する金属層や印刷層の追従性を超えるため、長期使用時に微細なクラックによる不良が発生するおそれがある。ガラス転移温度が100℃を超えると、軟化温度が高くなるため、予備附形時の伸びが悪くなり、延伸部の伸びムラが発生して、金属薄膜の微細割れが発生するおそれがある。
ガラス転移温度はJIS K7121に準拠した方法で測定できる。
【0047】
第3の樹脂層は、引張破断伸度が好ましくは150%以上900%以下であり、より好ましくは200%以上850%以下であり、さらに好ましくは300%750%以下である。引張破断伸度が150%より低いと、熱成形時に第1の樹脂層の伸びに第2の樹脂層が追従することができずクラックが入り、後述する金属層や印刷層にひび割れが生じたり、剥離したりするおそれがある。引張破断伸度が900%を超えると耐水性が悪化するおそれがある。
引張破断伸度は、JIS K7311に準拠した方法で、厚み150μmの試料にて測定する。
【0048】
第3の樹脂層の軟化温度は、好ましくは50℃以上180℃以下であり、好ましくは90℃以上170℃以下であり、さらに好ましくは100℃以上165℃以下である。軟化温度が50℃より低いと、常温で第3の樹脂層の強度が不足し、金属又は金属酸化物からなる層や印刷層にひび割れが生じたり剥離したりするおそれがある。軟化温度が180℃より大きいと、熱成形時に十分軟化しきれず、第3の樹脂層にクラックが入り、後述する金属層や印刷層にひび割れが生じたり剥離したりするおそれがある。
軟化温度は高化式フローテスターによる流動開始温度を測定することにより測定する。
【0049】
第3の樹脂層の厚さは、0.01μm以上3μm以下が好ましく、より好ましくは0.03μm以上0.5μm以下である。第3の層の厚さが0.01μmより薄い場合、十分なインキ密着性を得ることができないおそれがある。一方、3μmより厚い場合、べた付きが生じてブロッキングの原因となるおそれがある。
【0050】
第3の樹脂層は、例えば、グラビアコーター、キスコーター、バーコーター等によって樹脂を塗布し、乾燥(例えば80℃にて1分間)することで、形成することができる。
【0051】
(印刷層)
本発明の積層体は、第3の樹脂層の、第2の樹脂層と反対側の面に印刷層を含んでもよい。この場合、積層体は(第1の樹脂層/第2の樹脂層/第3の樹脂層/印刷層)の構成となる。
印刷層は、第3の樹脂層の一部に形成されてもよく、全面に形成されてもよい。印刷層の形状としては、特に制限されないが、例えばベタ状、カーボン調、木目調等の様々な形状が挙げられる。
【0052】
印刷の方法としては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の一般的な印刷方法が利用できる。特に、スクリーン印刷法はインキの膜厚が厚くできるので、複雑な形状に成形した際にインキ割れが発生しにくいことから好ましい。
例えば、スクリーン印刷の場合、成形時の伸びに優れたインキが好ましく、十条ケミカル株式会社製の「FM3107高濃度白」や「SIM3207高濃度白」等が例示できるが、この限りではない。
【0053】
(金属層)
本発明の積層体は、第3の樹脂層の、第2の樹脂層と反対側の面に金属又は金属酸化物からなる金属層を含んでもよい。この場合、積層体は(第1の樹脂層/第2の樹脂層/第3の樹脂層/金属層)の構成となる。
【0054】
金属層において、金属又は金属酸化物の金属としては、積層体に金属調の意匠を付与できる金属であれば特に限定されないが、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。これらの金属及びその酸化物は、1種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
これらの中でも、伸展性の観点と、色調が優れるという観点から、好ましくはインジウム及びアルミニウムが挙げられる。これにより、積層体を三次元成形した際にクラックが発生しにくくなる。
【0055】
また、当該金属層の上面の一部又は全面に印刷層を有してもよい。この場合、積層体は(第1の樹脂層/第2の樹脂層/第3の樹脂層/金属層/印刷層)の構成となる。印刷層は上述した通りである。
【0056】
金属層の厚みは、5nm以上80nm以下が好ましく、15nm以上70nm以下が好ましい。5nm未満の場合、所望していた金属光沢が得られなくなるおそれがあり、一方、80nmを超えると、クラックが生じるおそれがある。
【0057】
金属層の形成方法は、特に制限されないが、質感が高く高級感のある金属調の意匠を積層体に付与する観点から、例えば、上述の金属を用いた、蒸着法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が好ましい。特に、真空蒸着法は、低コストで、被蒸着体へのダメージが少ないため、好ましい。蒸着の条件は、用いる金属の溶融温度又は蒸発温度に応じて適宜設定すればよい。また、上記の金属を含むペーストを塗工する方法、上記の金属を用いためっき法等を用いることができる。
【0058】
第3の樹脂層を設けずに印刷層を設けてもよく、この場合、第2の樹脂層の、前記第1の樹脂層と反対側の面の一部又は全面に印刷層を含む。この場合、積層体は(第1の樹脂層/第2の樹脂層/印刷層)の構成となる。印刷層は上述した通りである。
また、当該構成において、印刷層の上に金属層を設けてもよい。この場合、積層体は(第1の樹脂層/第2の樹脂層/印刷層/金属層)の構成となる。金属層は上述した通りである。
【0059】
第3の樹脂層を設けずに金属層を設けてもよく、この場合、第2の樹脂層の、前記第1の樹脂層と反対側の面に金属層を含む。この場合、積層体は(第1の樹脂層/第2の樹脂層/金属層)の構成となる。金属層は上述した通りである。
また、当該構成において、金属層の上面の一部又は全面に印刷層を設けてもよい。この場合、積層体は(第1の樹脂層/第2の樹脂層/金属層/印刷層)の構成となる。印刷層は上述した通りである。
【0060】
本発明の積層体は、本発明の樹脂シートと同様の方法によって製造することができる。
【0061】
[成形体]
本発明の積層体を用いて成形体を作製することができる。
本発明の成形体は、第1の樹脂層からなる面の算術平均粗さRaが0.15μm以下であるか、及び/又は静摩擦係数が0.5以下である。
本発明の成形体は、好ましくは第1の樹脂層からなる面の動摩擦係数が0.5以下である。これらの性質は、上述した通りである。
【0062】
[成形体の製造方法]
成形体の成形方法としては、インモールド成形、インサート成形、被覆成形等が挙げられる。
【0063】
インモールド成形は、金型内に積層体を設置して、金型内に供給される成形用樹脂の圧力で所望の形状に成形して成形体を得る方法である。
インモールド成形として、積層体を金型に装着し、成形用樹脂を供給して一体化して行うことが好ましい。
【0064】
インサート成形では、金型内に設置する附形体を予備附形しておき、その形状に成形用樹脂を充填することで、成形体を得る方法である。より複雑な形状を出すことができる。
インサート成形として、積層体を金型に合致するよう附形し、附形した積層体を金型に装着し、成形用樹脂を供給して一体化して行うことが好ましい。
金型に合致するようする附形(予備附形)は、真空成型、圧空成型、真空圧空成型、プレス成型、プラグアシスト成形等で行うことが好ましい。
【0065】
成形用樹脂は、成形可能な熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、アセチレン−スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル重合体等が例示できるが、この限りではない。ファイバーやタルク等の無機フィラーを添加してもよい。
供給は、射出で行うことが好ましく、圧力5MPa以上120MPa以下が好ましい。
金型温度は20℃以上90℃以下であることが好ましい。
【0066】
被覆成形として、チャンバーボックス内に芯材を配設し、芯材の上方に、積層体を配置し、チャンバーボックス内を減圧し、積層体を加熱軟化し、芯材の上面に、積層体を接触し、加熱軟化させた積層体を芯材に押圧して被覆させることが好ましい。
加熱軟化後、芯材の上面に、積層体を接触させることが好ましい。
押圧は、チャンバーボックス内において、積層体の、芯材と接する側を減圧したまま、積層体の、芯材の反対側を加圧することが好ましい。
【0067】
芯材は、凸状でも凹状であってもよく、例えば三次元曲面を有する樹脂、金属、セラミック等が挙げられる。樹脂は、上述の成形に用いる樹脂と同様のものが挙げられる。
【0068】
具体的には、互いに分離可能な、上下ふたつの成型室から構成されるチャンバーボックスを用いることが好ましい。
まず、下成型室内のテーブル上へ芯材を載せ、セットする。被成型物である本発明の積層体を下成型室上面にクランプで固定する。この際、上・下成型室内は大気圧である。
次に上成型室を降下させ、上・下成型室を接合させ、チャンバーボックス内を閉塞状態にする。上・下成型室内の両方を大気圧状態から、真空タンクによって真空吸引状態とする。
上・下成型室内を真空吸引状態にした後、ヒータを点けて加飾シートの加熱を行なう。次に上・下成型室内は真空状態のまま下成型室内のテーブルを上昇させる。
次に、上成型室内の真空を開放し大気圧を入れることによって、被成型物である本発明の積層体は芯材へ押し付けられてオーバーレイ(成型)される。尚、上成型室内に圧縮空気を供給することで、より大きな力で被成型物である本発明の積層体を芯材へ密着させることも可能である。
オーバーレイが完了した後、ヒータを消灯し、下成型室内の真空も開放して大気圧状態へ戻し、上成型室を上昇させ、加飾印刷された積層体が表皮材として被覆された製品を取り出す。
【0069】
[成形体等の用途]
本発明の積層体及び成形体は、鞍乗型車両の外装部品又は四輪車の外装部品として好適に用いることができる。
雨天や未舗装路の走行時に、自車の車輪や他車が巻き上げた泥が外装部品に、汚れとなって付着する。また、水分を含んでぬかるんだ未舗装路では、外装部品に泥が蓄積し、車両重量が重くなる。本発明の積層体及び成形体(例えばマッドカバー)は、最表面にシリコーン−オレフィン共重合体を含み表面エネルギーが小さいため、泥が付着しても密着しない。さらに、表面が平滑であるため成形品と泥の接触面積が小さく、走行時の振動により容易に泥が滑り成形体から脱落する。泥が蓄積しなくなるため、質量増加による走行性能の低下を防止することができる。
【0070】
本発明の積層体及び成形体は、鞍乗型車両と四輪車の外装部品以外にも、車両の内装材、家電の筐体、化粧鋼鈑、化粧板、住宅設備、情報通信機器の筐体等、汚れが付着する可能性がある部品に好適である。
【実施例】
【0071】
実施例1
[積層体の製造]
図1に示す製造装置を用い、以下のようにして第1の樹脂層と第2の樹脂層からなる積層体を製造した。
ポリオレフィン(商品名:プライムポリプロF−133A、株式会社プライムポリマー製(メルトフローインデックス3g/10min、ホモポリプロピレン))(95質量%)、及びシリコーン−オレフィン共重合体(商品名:イクスフォーラ、三井化学株式会社製)(5質量%)を第1の樹脂層用の押出機(図示せず)に投入した。
ポリオレフィン(商品名:プライムポリプロF−133A、株式会社プライムポリマー製(メルトフローインデックス3g/10min、ホモポリプロピレン))を第2の樹脂層用の押出機(図示せず)に投入した。
【0072】
混練しながら、以下の条件で押し出して積層体を得た。
第1の樹脂層用の押出機の直径:65mm
第2の樹脂層用の押出機の直径:75mm
Tダイの幅:900mm
積層シートの引取速度:6m/分
冷却ロール及び金属製エンドレスベルトの表面温度:20℃
冷却ロールの算術平均粗さRa:0.032μm
冷却速度:10,800℃/分
第1の樹脂層の厚さ:50μm
第2の樹脂層の厚さ:150μm
【0073】
[算術平均粗さRaの測定]
得られた積層体における第1の樹脂層からなる面について、算術平均粗さRaを以下の測定装置と測定条件で測定した。
・測定装置:オリンパス株式会社製 3D測定レーザー顕微鏡(LEXT4000LS)
・測定条件
対物レンズ:20倍
ズーム:1倍
測定ピッチ:0.06μm
測定 操作モード:X,Y,Z高精度カラー
測定エリア:面
測定品質:高精度
解析長さ:642μm
【0074】
[静摩擦係数・動摩擦係数の測定]
得られた積層体における第1の樹脂層からなる面について、静摩擦係数と動摩擦係数を以下の測定装置、測定条件、算出方法で測定した。
・測定装置:株式会社島津製作所製 オートグラフAGSX−1kN
・測定条件
移動側試験片の形状:80mm(流れ方向)×70mm(幅方向)
固定側試験片の形状:170mm(流れ方向)×110mm(幅方向)
移動動錘の質量:324.6g
クロスヘッドスピード:300mm/分
移動距離:50mm
・静摩擦係数の算出方法
静摩擦係数は、最初のピーク点の試験力と移動動錘の質量を用いて、以下の式から算出した。
静摩擦係数=ピーク点の試験力/移動動錘の質量
・動摩擦係数の算出方法
動摩擦係数は、ストロークが10mmから40mmの間の試験力平均と移動動錘の質量を用いて、以下の式から算出した。
動摩擦係数=ストローク10mm〜40mmの平均試験力/移動動錘の質量
【0075】
[泥付着特性の評価]
得られた積層体を、厚さ2mm、短辺65mm、長辺150mmの平板状の金型に装着し、油圧式射出成形機IS−80EPN(東芝機械株式会社製)にて、プライムポリプロJ−705UG(株式会社プライムポリマー製、メルトフローインデックス9g/10min、ブロックポリプロピレン)を金型内に供給して一体化させ、泥付着特性評価用の成形体を作製した。
【0076】
黄色土を60℃で4時間乾燥して水分を抜き、これにイオン交換水を35質量%となるように混合し、泥付着特性評価用の泥とした。
【0077】
泥付着特性評価用の泥20gを、泥付着特性評価用の成形体の第1の樹脂層の上に置き、当該成形体を地面から40°傾けて泥を滑らせた。下記基準に基づいて泥付着特性を評価した。結果を表1に示す。
○:泥が全量滑り落ちる
△:泥が滑り落ちるも、滑った後に微量の泥が付着している
×:泥が滑らない、又は滑った後に泥が多く付着している
【0078】
実施例2
製造装置の冷却ロール表面の算術平均粗さRaを0.02μmに変更した以外は、実施例1と同様に積層体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0079】
比較例1
シリコーン−オレフィン共重合体を用いずに第1の樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に積層体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0080】
比較例2
製造装置の冷却ロール表面の算術平均粗さRaを0.50μmに変更した以外は、実施例1と同様に積層体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1より、特定の面特性を有する本発明の成形体(積層体)は、特定の面特性を有さない比較例2の成形体と比較して、優位な防泥性があることを確認した。
また、第1の樹脂層にシリコーン−オレフィン共重合体を有する本発明の成形体(積層体)は、第1の樹脂層にシリコーン−オレフィン共重合体を有しない比較例1の成形体と比較して、優位な防泥性があることを確認した。