(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-206817(P2017-206817A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】震動吸収体及び建物基礎構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20171027BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
E04H9/02 331Z
F16F15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-97838(P2016-97838)
(22)【出願日】2016年5月16日
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC04
2E139CA01
2E139CB01
2E139CC02
3J048AA01
3J048AB01
3J048BA03
3J048BD01
3J048CB05
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】 安価かつ簡単な構造で基礎コンクリート及びその上の建物の両方に耐震性を付与する。また、短周期地震動と長周期地震動の両方に対する耐震効果を達成する。
【解決手段】
本発明は、弾性部材30と、前記弾性部材を収容可能な凹部22を有する一対のブロック20を有し、前記一対のブロック20は、前記凹部22の開口同士を対向させて上下に配置され、前記弾性部材30は、前記一対のブロック20を相互に離間させる方向に弾性力を作用させることを特徴とする震動吸収体10を提供する。震動吸収体10は、地盤と基礎コンクリート3の間に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材と、
前記弾性部材を挿入可能な凹部を有する一対のブロックを有し、
前記一対のブロックは、前記凹部の開口同士を対向させて上下に配置され、
前記弾性部材は、前記一対ブロックを相互に離間させる方向に弾性力を作用させることを特徴とする震動吸収体。
【請求項2】
地盤と基礎コンクリートの間に請求項1に記載の震動吸収体を複数配置したことを特徴とする建物基礎構造。
【請求項3】
地中に埋設した枠体に前記震動吸収体を配置したことを特徴とする請求項2に記載の建物基礎構造。
【請求項4】
上側の前記ブロックと前記基礎コンクリートの間に砕石層を設け、
前記砕石層にエア注入可能なエアマットを埋設したことを特徴とする請求項2又は3に記載の建物基礎構造。
【請求項5】
長周期地震動が作用した場合に、前記一対のブロック同士が接触し、両者間の摩擦により、前記基礎コンクリートへの地震動の伝達を軽減することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の建物基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の耐震性向上を図るための震動吸収体及び建物基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の耐震建物では、地震等によって生じた建物の震動を吸収するために、建物の柱等に震動吸収体が使用されている。かかる震動吸収体として、例えば、特許文献1,2のように積層ゴムを使用したもの、特許文献3のように複数の耐震ゴムと複数の板状対を交互に積層したもの、特許文献4のように複数のプレキャストコンクリート製のブロックを緊張材によりプレストレスを与えた状態で緊結し、集合体としたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−371723号公報
【特許文献2】特開2001−329715号公報
【特許文献3】実用新案登録第3091236号公報
【特許文献4】特開2001−13315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の耐震建物では、震動吸収体は、基礎コンクリート(ベタ基礎等)よりも上部に配置されており、基礎コンクリートの下に震動吸収体を配置したものは存在しなかった。基礎コンクリートよりも上部に震動吸収体を配置する場合には、建築基準法上の認定を受けることが必要になるため、建築コストの増加につながる。
【0005】
更に、従来の震動吸収体は、主として直下型地震等の短周期の地震動に対する震動吸収効果を有するが、短周期の地震動と長周期の地震動の両方に対して十分な震動吸収効果を得ることはできなかった。
【0006】
本発明は、基礎コンクリート及びその上の建物の両方に耐震性を付与する震動吸収体及び建物基礎構造を提供する。また、短周期の地震動と長周期の地震動の両方に対して十分な震動吸収効果を達成できる震動吸収体及び建物基礎構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、弾性部材と、前記弾性部材を挿入可能な凹部を有する一対のブロックを有し、前記一対のブロックは、前記凹部の開口同士を対向させて上下に配置され、前記弾性部材は、前記一対ブロックを相互に離間させる方向に弾性力を作用させることを特徴とする震動吸収体とした。また、地盤と基礎コンクリートの間に上記震動吸収体を複数配置したことを特徴とする建物基礎構造とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、弾性部材の上下の伸縮により縦揺れを吸収し、横方向への傾斜/屈曲により横揺れを吸収できる。横揺れが大きい場合には、弾性部材が凹部に当たることで震動が吸収され、更に大きい横揺れの場合、上下のブロック同士が接触することによる抵抗によって地震動を抑制できる。本発明の震動吸収体を地盤と基礎コンクリートの間に配置することで、建築基準法上の認定を受けなくても建物を耐震化することができる。また、地盤から基礎コンクリートに作用する地震動が吸収されるため、建物の損害を防ぐだけでなく、地震による基礎コンクリートの損害も防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1実施形態の建物基礎構造1及び震動吸収体10に使用するブロック20を示す。
【
図2】本発明の他の実施形態のブロック20Aを示す。
【
図3】本発明の他の実施形態のブロック20Aを示す。
【
図4】本発明の1実施形態の震動吸収体10を示す。
【
図5】本発明の1実施形態の建物基礎構造1を示す。
【
図6】基礎コンクリート3及び建物7への地震動の影響が建物基礎構造1により軽減されるメカニズムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の1実施形態の建物基礎構造1及び震動吸収体10に使用するブロック20を示す。
図1(a)は、ブロック20の側面図であり、
図1(b)は、ブロック20の平面図であり、
図1(c)は、
図1(b)のX−X断面図である。
【0011】
図示のように、ブロック20は、上板21と4つの凹部22を有する。上板21は、平面視で方形の形状を有する。他の形状でもよい。上板21の厚さは任意である。凹部22は、上板21の上面に開口22aを有する。凹部22は、開口22aから底面22bに向けて面積が小さくなる円形の断面形状を有する。開口は、正方形の頂点に配置されている。凹部22は、他の個数・配置・形状でも良い。
図2及び
図3は、他の実施形態のブロック20Aを示す。
図2(a)は、ブロック20Aの平面図であり、
図2(b)は、ブロック20Aの側面図である。
図3は、ブロック20Aを斜め下方から見た写真である。
図2、3のブロック20Aでは、凹部22の断面形状が非円形(概略十字形)である。
図2、3のブロック20Aでは、材料の節約や強度向上等のために種々の穴空き部23や凹凸模様等が形成されている。
【0012】
ブロック20は、プラスチック(例えば、ポリプロピレン)やコンクリート等の硬質材料で形成することができる。プラスチックの場合、ブロック20は、射出成型等で製造することができる。
【0013】
図4は、本発明の1実施形態の震動吸収体10を示す。図示のように、震動吸収体10は、2つのブロック20と弾性部材30で形成される。2つのブロック20は、凹部22の開口同士を対向させた状態で上下に配置される。
【0014】
弾性部材30は、上下のブロック20の凹部22に挿入されている。弾性部材30は、棒状(例えば、円柱状)の形状を有する。凹部22に挿入可能であれば、他の形状にしてもよい。弾性部材30は、上下のブロック20を上下に離間させる方向に弾性力を作用させる。弾性部材30は、凹部22の深さ寸法の2倍以上の長さを有し、上下の上板21の間に隙間D1が形成される。弾性部材30は、例えば、ゴムやバネ、シリコン樹脂等で構成できる。
【0015】
図5は、本発明の1実施形態の建物基礎構造1を示す。図示のように、建物基礎構造1は、地面に埋設された枠体2と、枠体2内に配列された複数の震動吸収体10と、震動吸収体10の上に打設された基礎コンクリート3を有する。建物7は、基礎コンクリート3上に建設される。
【0016】
枠体2は、コンクリート等で形成できる。枠体2を、砕石層や捨てコン層に変更してもよい。震動吸収体10は、例えば、縦横方向にマトリクス状に配列される。震動吸収体10の相互間に隙間が無いように密接して配列するとよい。震動吸収体10の上に砕石層4を設け、その上に保護シート5(例えば、布等。コンクリートが砕石層4に落ちてしまわないようにする)を敷き、その上にコンクリートを打設することで基礎コンクリート3を形成できる。保護シート5としてプラスチック板等の硬質材料を使用すれば、砕石層4は省略してもよい。
【0017】
枠体2の端部と震動吸収体10の間に20cm程度の隙間D2を設け、そこにスポンジ等の詰物6をすると地震動を効果的に吸収できる。
【0018】
図6は、基礎コンクリート3及び建物7への地震動の影響が建物基礎構造1により軽減されるメカニズムを示す。直下型等の縦揺れの地震は、弾性部材30の上下の伸縮で吸収することができる(
図6(a))。横揺れの地震(特に短周期震動)は、弾性部材30の横方向への傾斜及び/又は屈曲で吸収できる(
図6(b))。大きい横揺れの場合、又は、長周期震動の場合には、弾性部材30が凹部22の縁又は側面に当たることで震動が吸収される。さらに大きい横揺れの場合、又は、さらに長周期の地震動の場合には、弾性部材30がさらに大きく屈曲して上下ブロック20の上板21同士が接触し、上板21同士の間で摩擦/抵抗が生じることで震動がより効果的に吸収される。このように、短周期地震動及び長周期地震動の両方に対応可能であり、縦揺れ及び横揺れの両方に対応可能である。
【0019】
本実施形態の建物基礎構造1は、下記の効果も有する。すなわち、枠体2に水(例えば、雨水)を溜めることができる。水は緊急時の生活用水として使用できる。溜めた水で魚を養殖することもできる。養殖の餌は家で出る残飯を利用することができる。
【0020】
図7(a)、(b)は、他の実施形態の建物基礎構造1Aを示す。建物基礎構造1Aでは、震動吸収体10と基礎コンクリート3の間(例えば、砕石層4の中)にエアマット40が埋設されている。軟弱地盤等により建物7が傾いてきたときに、ホース41から空気を注入してエアマット40を膨らませ、出来た隙間に生コンクリート42を高圧で吹き込むことで基礎コンクリート3を水平に戻すことができる(
図7(b))。その後、エアマット40の空気は抜いておけば、将来建物7が傾いたときに、建物7を再度水平に戻すことができる。
図7(a)、(b)では、震動吸収体10の下が枠体2ではなく、砕石層2Aになっているが、建物基礎構造1と同様、枠体2を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の震動吸収体及び建物基礎構造は、耐震性を必要とする住宅等の建物の基礎として使用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1、1A・・・建物基礎構造
2・・・枠体
3・・・基礎コンクリート
4・・・砕石層
5・・・保護シート
6・・・詰物
7・・・建物
10・・・震動吸収体
20、20A・・・ブロック
21・・・上板
22・・・凹部
30・・・弾性部材
40・・・エアマット
41・・・ホース
42・・・生コンクリート