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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-206867(P2017-206867A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20171027BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20171027BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20171027BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20171027BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   E02F9/20 Z
   H02J7/00 Y
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
   H01M10/42 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-99528(P2016-99528)
(22)【出願日】2016年5月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】納谷 到
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】日田 真史
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
【テーマコード(参考)】
2D003
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB05
2D003BA01
2D003BA05
2D003CA03
2D003CA10
2D003DA04
2D003FA02
5G503AA07
5G503BA01
5G503CA01
5G503CB11
5G503DA04
5G503EA08
5H030AA01
5H030AA10
5H030AS06
5H030AS08
5H030BB10
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】蓄電装置の一時的な性能劣化の抑制と蓄電装置使用制限時の操作フィーリングの改善とを両立することができる建設機械を提供する。
【解決手段】メインコントローラ24およびハイブリッドコントローラ22は、エンジン9、アシスト発電モータ13、油圧ポンプ10、蓄電装置16を制御する。この場合、ハイブリッドコントローラ22は、蓄電装置16の状態回復を行う状態回復部23を備えている。状態回復部23は、蓄電装置16が放電と充電を繰り返すことによって変化する状態量、具体的には、蓄電装置16の放電と充電に基づく電流積算値(電流積算値比率)が所定の閾値(L1%)を超えた場合、油圧ポンプ10の動力を制限することにより、蓄電装置16の状態回復を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される油圧アクチュエータと、
前記電動モータに電力を供給し、または、前記電動モータによる発電電力を充電する蓄電装置と、
前記電動モータ、前記油圧ポンプ、前記蓄電装置の少なくとも何れかを制御するコントローラとを備えてなる建設機械において、
前記コントローラは、前記蓄電装置が放電と充電を繰り返すことによって変化する状態量が所定の閾値を超えた場合、前記油圧ポンプの動力を制限することにより、前記蓄電装置の状態回復を行う状態回復部を備える構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記状態回復部は、前記油圧ポンプの動力を制限しても、前記状態量が所定の閾値を下回らない場合、前記油圧ポンプの動力を制限することに加えて、前記電動モータの動力を制限することにより、前記蓄電装置の状態回復を行う構成としたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記状態回復部は、前記油圧ポンプの動力を制限し、かつ、前記電動モータの動力を制限しても、前記状態量が所定の閾値を下回らない場合、前記蓄電装置の放電および充電を停止することにより、前記蓄電装置の状態回復を行う構成としたことを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記状態量は、前記蓄電装置の放電と充電に基づく電流積算値であることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記状態量は、前記蓄電装置自体の温度であることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項6】
前記電動モータに機械的に接続されたエンジンをさらに備え、
前記油圧ポンプは、前記電動モータおよび前記エンジンによって駆動されることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の枯渇や環境問題への配慮から、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械でも、省エネ化が進められている。即ち、建設機械は、エンジンの動力により油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプより供給(吐出)される圧油(作動油)によって、油圧アクチュエータ(油圧装置、油圧機器)を駆動する。
【0003】
これに対し、近年、油圧ポンプを駆動する動力の一部を、蓄電装置をエネルギの供給源とする電動モータの動力に置き換えた、ハイブリッド式の建設機械が、市場に投入されている。また、油圧ポンプを駆動する動力の全てを、電動モータの動力で置き換えた、電動式の建設機械も、市場に投入されている。
【0004】
しかし、蓄電装置は、安定性の確保や性能劣化の抑制の観点から、定められた使用条件の範囲内での運用が必要になる。このため、蓄電装置を搭載する建設機械は、新たな制限や運用が必要となる。
【0005】
例えば、蓄電装置を構成するリチウムイオン二次電池は、安定性の確保や性能劣化の抑制を目的に、電圧、電流、温度、充電率(SOC:State Of Charge)等の使用条件が定められている。このため、蓄電装置を搭載する建設機械は、蓄電装置の使用条件を逸脱しないように運用する必要がある。
【0006】
ここで、蓄電装置は、例えば電池の損傷のような非可逆的な性能劣化に対し、このような非可逆的な性能劣化にまでは至らないが、一時的に所期の性能を発揮できなくなる可逆的な性能劣化(一時的な性能劣化)が発生することが知られている。具体的には、蓄電装置は、大電流を充放電(充電・放電)した場合に、電池内部抵抗が一時的に増大することにより、電池電圧が急変動するといった一時的な性能劣化が発生することが知られている。このとき、電池状態の推定、制御を正しくできなくなり、結果、インバータや電動モータ等の電動機器の性能を十分に発揮できなくなるおそれがある。
【0007】
これに対し、特許文献1には、電気自動車に関し、蓄電装置(リチウムイオン二次電池)の放電電流の二乗値を積算した電流二乗積算値に応じて、蓄電装置からインバータへ放電される電流を制御する技術が記載されている。一方、特許文献2には、作業機械に関し、蓄電装置の充電率(SOC)に基づいて、油圧アクチュエータ(油圧機器)からの戻り油を制御して、戻り油により駆動されるポンプ動力で駆動される発電機の回生電力を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−149181号公報
【特許文献2】特開2013−2540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、蓄電装置の状態(電流二乗積算値)に応じて蓄電装置の出力(放電)を制御する構成の場合、次のような不都合を生じるおそれがある。即ち、蓄電装置の一時的な性能劣化(例えば、電圧の急変動)を抑制すべく、蓄電装置の出力を制限したときに、この制限した分の出力を、エンジンの出力の増加で賄うことができない可能性がある。また、蓄電装置の出力を制限したときに、例えば、油圧ポンプの動力に対する影響の予測、または、この予測に基づく油圧ポンプの制御が失敗する(例えば、遅れる)可能性もある。このような場合、油圧アクチュエータ動作が急変動する等、油圧アクチュエータの操作性が低下し、オペレータ(操縦者)に違和感を与えるおそれがある。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、蓄電装置の一時的な性能劣化の抑制と蓄電装置使用制限時の操作フィーリングの改善とを両立することができる建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の建設機械は、電動モータと、前記電動モータにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される油圧アクチュエータと、前記電動モータに電力を供給し、または、前記電動モータによる発電電力を充電する蓄電装置と、前記電動モータ、前記油圧ポンプ、前記蓄電装置の少なくとも何れかを制御するコントローラとを備えてなる。
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明が採用する構成の特徴は、前記コントローラは、前記蓄電装置が放電と充電を繰り返すことによって変化する状態量が所定の閾値を超えた場合、前記油圧ポンプの動力を制限することにより、前記蓄電装置の状態回復を行う状態回復部を備える構成としたことにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蓄電装置の一時的な性能劣化の抑制と蓄電装置使用制限時の操作フィーリングの改善とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態によるハイブリッド式の油圧ショベルを示す正面図である。
図2】油圧ショベルの油圧系統と電気系統を概略的に示すブロック図である。
図3】第1の実施の形態による状態回復部を示すブロック図である。
図4】電流積算値比率と油圧出力比率との関係の一例を示す特性線図である。
図5】電流積算値比率と電池出力比率との関係の一例を示す特性線図である。
図6】第2の実施の形態による状態回復部を示すブロック図である。
図7】温度比率と油圧出力比率との関係の一例を示す特性線図である。
図8】温度比率と電池出力比率との関係の一例を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を、ハイブリッド式の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1において、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、ハイブリッド式の油圧ショベル(ハイブリッド式建設機械)として構成されている。油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に設けられた旋回軸受装置3と、該旋回軸受装置3を介して下部走行体2上に旋回可能に搭載され該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置5とにより大略構成されている。油圧ショベル1は、作業装置5を用いて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0017】
ここで、下部走行体2は、トラックフレーム2Aと、該トラックフレーム2Aの左,右両側に設けられた駆動輪2Bと、トラックフレーム2Aの左,右両側で駆動輪2Bと前,後方向の反対側に設けられた遊動輪2Cと、駆動輪2Bと遊動輪2Cに巻回された履帯2D(いずれも左側のみ図示)とにより構成されている。左,右の駆動輪2Bは、それぞれが油圧アクチュエータとしての左,右の走行油圧モータ2E,2F(図2参照)によって回転駆動され、履帯2Dを周回駆動させることにより油圧ショベル1を走行させる。
【0018】
作業装置5は、旋回フレーム6の前部側に俯仰動可能に取付けられたブーム5Aと、該ブーム5Aの先端側に回動可能に取付けられたアーム5Bと、該アーム5Bの先端側に回動可能に取付けられた作業具としてのバケット5Cと、これらを駆動するブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、作業具シリンダとしてのバケットシリンダ5Fとにより構成されている。油圧シリンダからなるブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5F、さらに、油圧モータからなる走行油圧モータ2E,2F、後述の旋回油圧モータ15A(図2参照)は、それぞれ圧油によって駆動(作動)される油圧アクチュエータ(油圧機器、油圧装置)となるものである。
【0019】
一方、上部旋回体4は、該上部旋回体4の支持構造体を形成するベース(フレーム)となる旋回フレーム6と、該旋回フレーム6上に搭載されたキャブ7、カウンタウエイト8、エンジン9、油圧ポンプ10、アシスト発電モータ13、蓄電装置16、インバータ19等とを含んで構成されている。
【0020】
旋回フレーム6の前部左側には、運転室を画成するキャブ7が設けられている。キャブ7内には、オペレータが着席する運転席が設けられ、運転席の周囲には、走行用の操作レバー・ペダル装置、作業用の操作レバー装置(いずれも図示せず)等が設けられている。操作レバー・ペダル装置、操作レバー装置は、オペレータによる操作レバー、操作ペダルの傾転操作に応じたパイロット信号(パイロット圧)を、後述のコントロールバルブ12(図2参照)に出力するものである。
【0021】
さらに、キャブ7内には、運転席の後方の下側に位置して後述のハイブリッドコントローラ22およびメインコントローラ24(図2参照)が設けられている。一方、旋回フレーム6の後端側には、作業装置5との重量バランスをとるためのカウンタウエイト8が設けられている。
【0022】
エンジン9は、カウンタウエイト8の前側に位置して旋回フレーム6の後側に配設されている。エンジン9は、内燃機関であり、クランク軸(図示せず)の軸線が左,右方向に延在する横置き状態で、旋回フレーム6上に搭載されている。図2に示すように、エンジン9の左,右方向の一側(例えば右側)には、油圧ポンプ10とアシスト発電モータ13とが取付けられている。
【0023】
ここで、エンジン9は、例えば、電子制御式エンジンにより構成され、エンジン制御装置(エンジン・コントロール・ユニット)であるECU9Aによって制御される。具体的には、エンジン9は、シリンダ(燃焼室)内への燃料の供給量、即ち、シリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射装置(電子制御噴射弁)の噴射量が、エンジン9の制御部(コントローラ)となるECU9Aにより可変に制御される。この場合、ECU9Aは、後述のメインコントローラ24に接続されている。ECU9Aは、メインコントローラ24からの制御信号(指令信号)に基づいて、燃料噴射装置によるシリンダ内への燃料噴射量を可変に制御し、エンジン9の回転速度を制御する。
【0024】
油圧ポンプ10は、エンジン9の出力側に取付けられている。油圧ポンプ10は、エンジン9およびアシスト発電モータ13によって駆動されることにより、油圧ショベル1に搭載された左,右の走行油圧モータ2E,2F、各シリンダ5D,5E,5F、後述する旋回油圧モータ15A等の各種の油圧アクチュエータに向けて作動用の圧油を供給(吐出)するものである。
【0025】
油圧ポンプ10は、例えば可変容量型の斜板式油圧ポンプ等により構成され、ポンプ容量を調整するレギュレータ(容量可変部、傾転アクチュエータ)10Aを有している。レギュレータ10Aは、後述のメインコントローラ24により可変に制御される。
【0026】
油圧ポンプ10の近傍(例えば車体の前,後方向で前側)には、作動油タンク11が設けられている。作動油タンク11は、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ5D,5E,5F、油圧モータ2E,2F,15A)に供給される作動油を貯溜している。
【0027】
コントロールバルブ12は、複数の方向制御弁、電磁弁等の集合体からなる制御弁装置である。コントロールバルブ12は、キャブ7内に配置された走行用の操作レバー・ペダル装置、作業用の操作レバー装置のレバー操作、ペダル操作、メインコントローラ24からの指令等に応じて、油圧ポンプ10から各種の油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aに供給される圧油の方向を制御する。これにより、油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aは、油圧ポンプ10から供給される圧油によって駆動される。
【0028】
電動モータとしてのアシスト発電モータ13は、油圧ポンプ10と共にエンジン9の出力側に取付けられている。アシスト発電モータ13は、エンジン9に機械的に接続されている。
【0029】
アシスト発電モータ13は、エンジン9によって駆動されることにより電力を発電し、または、蓄電装置16から電力が供給されることによりエンジン9の駆動を補助(アシスト)するものである。即ち、アシスト発電モータ13は、エンジン9によって駆動されることにより発電する発電機としての機能と、蓄電装置16から供給される電力によりエンジン9の駆動を補助する電動機としての機能とを有している。
【0030】
建屋カバー14は、カウンタウエイト8の前側に位置して旋回フレーム6上に設けられている。建屋カバー14は、エンジン9、油圧ポンプ10、アシスト発電モータ13等を覆うものである。建屋カバー14には、外気を冷却風として吸込む吸気口14Aが設けられている。
【0031】
旋回装置15は、旋回フレーム6の中央部に設けられている。旋回装置15は、上部旋回体4を下部走行体2に対して旋回させるものである。旋回装置15は、例えば、油圧アクチュエータとしての旋回油圧モータ15Aと、該旋回油圧モータ15Aの回転を減速する減速機構(図示せず)と、該減速機構によって減速された回転を旋回軸受装置3(の内輪の内歯)に出力するピニオンとしての出力軸(図示せず)とを含んで構成されている。旋回油圧モータ15Aは、油圧ポンプ10からコントロールバルブ12を介して供給される圧油に基づいて、上部旋回体4を下部走行体2に対して旋回駆動する。
【0032】
蓄電装置16は、電力の充電(蓄電)と放電を行うものである。蓄電装置16は、例えばリチウムイオン二次電池16Aを用いて構成され、旋回フレーム6上に取付けられている。蓄電装置16は、アシスト発電モータ13が発電した発電電力を充電(蓄電)し、または、充電された電力をアシスト発電モータ13に供給(放電、給電)するものである。このために、蓄電装置16は、直流ケーブル(DCケーブル)である直流母線17を介してインバータ19と接続されている。
【0033】
ここで、蓄電装置16は、バッテリモジュールを直列および並列配置してなるリチウムイオン二次電池16Aと、該リチウムイオン二次電池16Aの状態判定および制御を行う制御部(バッテリコントローラ)16Bとを含んで構成されている。蓄電装置16には、リチウムイオン二次電池16Aの充放電電流を検出(計測)する電流センサ16Cと、リチウムイオン二次電池16Aの電圧を検出する電圧センサ16Dと、蓄電装置16自体の温度、即ち、リチウムイオン二次電池16Aの温度を検出する温度センサ16Eとが設けられている。
【0034】
各センサ16C,16D,16Eは、制御部16Bと接続されている。制御部16Bは、各センサ16C,16D,16Eにより検出される電流、電圧、温度に基づいて必要な演算を行い、リチウムイオン二次電池16Aの状態判定および制御を行う。さらに、制御部16Bは、蓄電装置信号線18を介して後述するハイブリッドコントローラ22に接続されている。
【0035】
なお、蓄電装置16は、リチウムイオン二次電池16A以外にも、例えば電気二重層のキャパシタを用いることもできる。蓄電装置16にキャパシタを用いる場合には、蓄電装置16とインバータ19との間にチョッパを設け、該チョッパによって蓄電装置16とインバータ19とを接続する直流母線17の電圧を一定に保持する構成とすることができる。
【0036】
インバータ19は、アシスト発電モータ13の動作を制御するものである。インバータ19は、三相交流ケーブル(強電ケーブル)であるモータ電力線20を介してアシスト発電モータ13と接続されている。インバータ19内には、トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる複数のスイッチング素子が収容されている。各スイッチング素子のオン(閉)/オフ(開)は、制御部19Aによって制御される。制御部19Aは、モータ信号線21を介してハイブリッドコントローラ22と接続されている。
【0037】
制御部19Aは、ハイブリッドコントローラ22の指令に基づいてインバータ19のスイッチング制御を行う。なお、図示は省略するが、インバータ19には、アシスト発電モータ13から延びる信号線、例えば、アシスト発電モータ13に設けられた回転検出センサ(レゾルバ)等のセンサからの検出信号(例えば、アシストモータ速度信号)をインバータ19の制御部19Aに出力するための信号線も接続されている。
【0038】
アシスト発電モータ13の発電時には、インバータ19は、アシスト発電モータ13による発電電力を直流電力に変換し、直流母線17を通じて直流電力を蓄電装置16に供給する。一方、アシスト発電モータ13を電動機として駆動するときには、インバータ19は、直流母線17を介して蓄電装置16から供給される直流電力を三相交流電力に変換し、モータ電力線20を介して三相交流電力をアシスト発電モータ13に供給する。
【0039】
コントローラ(制御装置、コントロールユニット)としてのハイブリッドコントローラ22は、アシスト発電モータ13、蓄電装置16を制御するものである。ハイブリッドコントローラ22は、蓄電装置16の制御部16B、インバータ19の制御部19A、エンジン9のECU9A、後述のメインコントローラ24と同様に、マイクロコンピュータ等により構成されている。ハイブリッドコントローラ22は、各制御部16B,19Aおよびメインコントローラ24と電気的に接続され、CANを構成している。
【0040】
ハイブリッドコントローラ22は、各制御部16B,19Aの上位のコントローラとなり、これら各制御部16B,19Aを統括的に制御する。具体的には、ハイブリッドコントローラ22は、インバータ19の制御部19Aに対して制御信号を出力することにより、アシスト発電モータ13の動作を制御し、蓄電装置16による充電または放電を制御する。一方、メインコントローラ24も、ハイブリッドコントローラ22と同様に、マイクロコンピュータ等により構成されている。メインコントローラ24は、ECU9A、ハイブリッドコントローラ22、油圧ポンプ10のレギュレータ10A、コントロールバルブ12を構成する電磁弁(図示せず)等と電気的に接続されている。
【0041】
メインコントローラ24は、ECU9A、ハイブリッドコントローラ22と通信し、例えば、レバー操作量、ペダル操作量、エンジン9の回転数、蓄電装置16の蓄電率(SOC)等に基づいて、各種の制御信号をECU9A、ハイブリッドコントローラ22に送信する。これにより、ECU9Aは、メインコントローラ24からの制御信号に基づいて、エンジン9の回転数等を制御する。また、ハイブリッドコントローラ22は、アシスト発電モータ13およびインバータ19の状態と、レバー操作量、ペダル操作量等に基づいて、アシスト発電モータ13、インバータ19、蓄電装置16を制御する。さらに、メインコントローラ24は、油圧ポンプ10のレギュレータ10Aに対して制御信号を出力することにより、油圧ポンプ10のポンプ容量(動力、油圧パワー)を制御する。
【0042】
ところで、蓄電装置16は、大電流を充放電(充電・放電)した場合に、電池内部抵抗が一時的に増大することにより、電池電圧が急変動するといった一時的な性能劣化が発生するおそれがある。これに対し、蓄電装置16の一時的な性能劣化を抑制すべく、蓄電装置16の状態(例えば、放電電流の二乗積算値)に応じて、蓄電装置16の出力(放電)を制御することが考えられる。
【0043】
しかし、この場合は、蓄電装置16の電圧の急変動を抑制すべく、蓄電装置16の出力を制限したときに、この制限した分の出力を、エンジン9の出力の増加で賄うことができない可能性がある。また、蓄電装置16の出力を制限したときに、例えば、油圧ポンプ10の動力に対する影響の予測、または、この予測に基づく油圧ポンプ10の制御が失敗する(例えば、遅れる)可能性もある。このような場合、油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aの動作が急変動する等、油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aの操作性が低下し、オペレータに違和感を与えるおそれがある。
【0044】
これに対し、本実施の形態では、図3図5に示すように、ハイブリッドコントローラ22は、蓄電装置16が放電と充電を繰り返すことによって変化する状態量、具体的には、蓄電装置16の放電と充電に基づく電流積算値(から求められる電流積算値比率)が予め設定した所定の閾値(L1%)を超えた場合、油圧ポンプ10の動力を制限する(ポンプ容量を小さくする、作動油出力を小さくする)ことにより、蓄電装置16の状態回復を行う状態回復部23を備えている。
【0045】
ここで、状態回復部23は、電流積算値演算部23Aと、閾値出力部23Bと、油圧出力値演算部23Cと、電池出力値演算部23Dとを含んで構成されている。電流積算値演算部23Aは、蓄電装置16の電流積算値を算出(演算)すると共に、算出された電流積算値と閾値出力部23Bから出力される電流積算値閾値(劣化開始値)とを比較し、その比率となる電流積算値比率を算出するものである。
【0046】
このために、電流積算値演算部23Aには、蓄電装置16の電池充放電電流、即ち、蓄電装置16の電流センサ16Cで検出(計測)された電流値(電流測定値)が入力される。電流積算値演算部23Aでは、入力された電流値(電池充放電電流)から、予め設定した所定時間(単位時間)内の電流値の積算値である電流積算値を算出する。所定時間は、電流積算値と後述の電流積算値閾値との比較(比率)に基づいて、適切な油圧ポンプ10の動力の制限(延いては、アシスト発電モータ13の動力の制限)を行うことができるように、予め実験、計算、シミュレーション等により求めておく。
【0047】
一方、電流積算値演算部23Aには、閾値出力部23Bから出力される電流積算値閾値も入力される。電流積算値閾値は、一時的な内部抵抗値の上昇が起きない電流積算値の閾値、換言すれば、その値を超えると蓄電装置16の一時的な性能劣化(内部抵抗が一時的に増大することによる電圧の急変動)が発生し易くなる劣化開始値(劣化開始境界値、劣化開始判定値)として設定することができる。
【0048】
電流積算値演算部23Aでは、現在の電流積算値と電流積算値閾値とから、その比率となる電流積算値比率を算出する。電流積算値比率は、下記の数1式で表すことができる。電流積算値演算部23Aで算出された電流積算値比率は、油圧出力値演算部23Cおよび電池出力値演算部23Dに出力される。
【0049】
【数1】
【0050】
油圧出力値演算部23Cには、電流積算値演算部23Aで算出される電流積算値比率と、油圧ポンプ10で出力すべき動力に対応する油圧出力要求値とが入力される。ここで、油圧出力要求値は、例えば、オペレータのレバー入力(レバー操作量、ペダル操作量)から求めることができる。即ち、油圧出力要求値は、オペレータのレバー入力を実現するために必要な油圧パワーに対応する値となるものである。換言すれば、油圧出力要求値は、オペレータのレバー操作、ペダル操作に応じた油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aの駆動を実現するために、油圧ポンプ10で出力すべき動力に対応する値となるものである。油圧出力要求値は、レバー入力(レバー操作量、ペダル操作量)と相関関係を有しており、例えば、オペレータのレバー入力(レバー操作量、ペダル操作量)が大きくなる程、油圧出力要求値も大きくなる。
【0051】
油圧出力値演算部23Cでは、図4に示す関係(特性線31)に基づいて、電流積算値比率から油圧出力比率を求めると共に、その求めた油圧出力比率と油圧出力要求値とを乗算することにより、油圧出力指令値を算出する。ここで、図4は、電流積算値比率と油圧出力比率との関係を示している。図4に示すように、電流積算値比率がL1%以下のときは、油圧出力比率は100%になる。
【0052】
このため、電流積算値比率がL1%以下のときは、油圧出力要求値がそのまま油圧出力指令値となる。即ち、電流積算値比率がL1%以下のときは、油圧出力要求値が制限されることなく、油圧出力要求値がそのまま油圧出力指令値としてハイブリッドコントローラ22からメインコントローラ24を介して油圧ポンプ10のレギュレータ10Aに出力される。この場合は、油圧ポンプ10の動力(ポンプ容量)は制限されない。即ち、オペレータは、油圧ポンプ10の動力が制限されることなく、油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aを駆動させることができる。
【0053】
一方、電流積算値比率がL1%を超えると、油圧出力比率が100%よりも小さくなる。このため、電流積算値比率がL1%を超えると、油圧出力指令値が油圧出力要求値よりも小さくなる。即ち、電流積算値比率がL1%を超えると、油圧出力要求値よりも制限された油圧出力要求値が、ハイブリッドコントローラ22からメインコントローラ24を介して油圧ポンプ10のレギュレータ10Aに出力され、油圧ポンプ1の吐出作動油の流量(ポンプ容量)が制限される(小さくなる)。
【0054】
これにより、油圧ポンプ10の動力が制限され、油圧出力比率が100%のときと比較して、油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aの駆動が制限される。このとき、油圧ポンプ10の動力の制限により生じる余剰動力分を、アシスト発電モータ13の出力低減分に割り当てることができる。これにより、蓄電装置16の充放電の電流を低減でき、蓄電装置16の状態回復を行うことができる。
【0055】
ここで、油圧出力比率は、電流積算値比率がL1%を超えると、電流積算値比率がL2%のときにV1%となるように、100%からV1%に線形的に低下する。これにより、油圧ポンプ10の動力は、電流積算値比率がL1%からL2%の間で線形的に制限される。この場合、油圧出力比率V1%は、油圧ショベル1の操作性の低下を許容できる油圧値(操作性を確保できる最小の油圧値)を操作性許容油圧値とし、油圧出力の上限となる油圧値(最大油圧値)を油圧出力上限値とした場合に、次の数2式で表すことができる。なお、操作性許容油圧値は、油圧ショベル1の操作性の低下を許容できる油圧値として、予め実験、計算、シミュレーション等により求めておく。
【0056】
【数2】
【0057】
さらに、電流積算値比率がL2%以上のときは、油圧出力比率がV1%に固定される。即ち、実施の形態では、電流積算値比率が0%から100%の間で、油圧出力比率は、V1%を下回らない。このため、電流積算値比率が0%からL1%のとき、および、L1%からL2%のときは勿論、L2%から100%のときも、油圧出力比率がV1%以上になり、油圧ショベル1の操作性を確保できる。
【0058】
一方、電池出力値演算部23Dでは、電流積算値比率がL2%を超えると、蓄電装置16の保護を図るべく、アシスト発電モータ13の出力制限を行う。即ち、電池出力値演算部23Dには、電流積算値演算部23Aで算出される電流積算値比率と、アシスト発電モータ13で出力すべき動力に対応する電池出力要求値とが入力される。ここで、電池出力要求値は、例えば、オペレータのレバー入力(レバー操作量、ペダル操作量)、蓄電装置16の入出力可能な電力、エンジン9の回転数(回転速度)等から求めることができる。この場合、蓄電装置16の入出力可能な電力は、そのときの蓄電装置16の状態、例えば、リチウムイオン二次電池16Aの電圧、内部抵抗、温度等に応じて算出することができる。
【0059】
電池出力値演算部23Dでは、図5に示す関係(特性線32)に基づいて、電流積算値比率から電池出力比率を求めると共に、その求めた電池出力比率と電池出力要求値とを乗算することにより、電池出力指令値を算出する。ここで、図5は、電流積算値比率と電池出力比率との関係を示している。図5に示すように、電流積算値比率がL2%以下のときは、電池出力比率は100%になる。
【0060】
このため、電流積算値比率がL2%以下のときは、電池出力要求値がそのまま電池出力指令値となる。即ち、電流積算値比率がL2%以下のときは、電池出力要求値が制限されることなく、電池出力要求値がそのまま電池出力指令値としてインバータ19の制御部19Aに出力される。この場合は、アシスト発電モータ13の動力は制限されず、エンジン9の駆動の補助(アシスト)、または、発電を行うことができる。
【0061】
一方、電流積算値比率がL2%を超えると、電池出力比率が100%よりも小さくなる。このため、電流積算値比率がL2%を超えると、電池出力指令値が電池出力要求値よりも小さくなる。即ち、電流積算値比率がL2%を超えると、電池出力要求値よりも制限された電池出力要求値が、インバータ19に出力される。
【0062】
この場合は、アシスト発電モータ13の動力が制限され、アシスト発電モータ13によるアシストまたは発電が制限される。これにより、蓄電装置16の充放電の電流を低減することができ、蓄電装置16の状態回復を行うことができる。ここで、電池出力比率は、電流積算値比率がL2%を超えると、電流積算値比率が100%で0%となるように、100%から線形的に低下する。これにより、アシスト発電モータ13の動力は、電流積算値比率がL2%から100%の間で線形的に制限される。さらに、電流積算値比率が100%以上になると、電池出力比率が0%になり、蓄電装置16の放電および充電を停止する。
【0063】
このように、実施の形態では、状態回復部23は、蓄電装置16の電流積算値、より具体的には、電流積算値比率が、所定の閾値(第1の閾値)となるL1%を超えた場合、油圧ポンプ10の動力を制限することにより、蓄電装置16の状態回復を行う(油圧ポンプ動力制限要素)。また、状態回復部23は、油圧ポンプ10の動力を制限しても、電流積算値比率が下がらない場合、例えば、電流積算値比率がさらに増大し、所定の閾値(第2の閾値)となるL2%を超えた場合(L2%を下回らない場合)、油圧ポンプ10の動力を制限することに加えて、アシスト発電モータ13の動力も制限することにより、蓄電装置16の状態回復を行う(電動モータ動力制限要素)。
【0064】
さらに、状態回復部23は、油圧ポンプ10の動力を制限し、かつ、アシスト発電モータ13の動力を制限しても、電流積算値比率が下がらない場合、例えば、電流積算値比率がL2%からさらに増大し、所定の閾値(第3の閾値)となる100%以上の場合(100%を下回らない場合)、蓄電装置16の放電および充電を停止することにより、蓄電装置16の状態回復を行う(電動モータ停止要素)。このように、状態回復部23は、油圧ポンプ動力制限要素と、電動モータ動力制限要素と、電動モータ停止要素とを有している。これにより、蓄電装置16の一時的な性能劣化(内部抵抗が一時的に増大することによる電圧の急変動)の抑制と蓄電装置16の使用制限時の操作フィーリングの改善とを両立することができる。
【0065】
なお、電流積算値比率L1、L2、油圧出力比率V1は、油圧ポンプ10、油圧シリンダ5D,5E,5F、油圧モータ2E,2F,15A、蓄電装置16、アシスト発電モータ13、エンジン9等の搭載装置、搭載機器の仕様、制御仕様の違い等により様々な値を取り得る。また、同様に、油圧出力値演算部23Cの出力制限の仕方(図4の電流積算値比率と油圧出力比率との関係)、電池出力値演算部23Dの出力制限の仕方(図5の電流積算値比率と電池出力比率との関係)についても、搭載装置、搭載機器の仕様、制御仕様の違い等により様々な方法を取り得る。電流積算値比率L1、L2、油圧出力比率V1、電流積算値比率と油圧出力比率との関係(特性線31)、電流積算値比率と電池出力比率との関係(特性線32)は、蓄電装置16の一時的な性能劣化の抑制と油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aの操作性の低下の抑制(蓄電装置16の使用制限時の操作フィーリングの改善)とを両立することができるように、油圧ショベル1の機種等に応じて設定することができる。
【0066】
本実施の形態によるハイブリッド式の油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0067】
キャブ7に搭乗したオペレータがエンジン9を起動させると、エンジン9によって油圧ポンプ10とアシスト発電モータ13が駆動される。これにより、油圧ポンプ10から吐出した圧油は、キャブ7内に設けられた走行用の操作レバー・ペダル装置、作業用の操作レバー装置のレバー操作、ペダル操作に応じて、左,右の走行油圧モータ2E,2F、旋回油圧モータ15A、作業装置5のブームシリンダ5D,アームシリンダ5E,バケットシリンダ5Fに向けて吐出する。これにより、油圧ショベル1は、下部走行体2による走行動作、上部旋回体4の旋回動作、作業装置5による掘削作業等を行うことができる。
【0068】
ここで、油圧ショベル1の作動時にエンジン9の出力トルクが油圧ポンプ10の駆動トルクよりも大きいときには、余剰トルクによってアシスト発電モータ13が発電機として駆動される。これにより、アシスト発電モータ13は交流電力を発生し、この交流電力は、インバータ19により直流電力に変換され、蓄電装置16に蓄えられる。一方、エンジン9の出力トルクが油圧ポンプ10の駆動トルクよりも小さいときには、アシスト発電モータ13は、蓄電装置16からの電力によって電動機として駆動され、エンジン9の駆動を補助(アシスト)する。
【0069】
さらに、アシスト発電モータ13に対する蓄電装置16の充放電(充電・放電)が大電流の傾向になると、ハイブリッドコントローラ22の状態回復部23では、電流積算値演算部23Aで算出される電流積算値、延いては、電流積算値比率が大きくなる。この結果、状態回復部23の油圧出力値演算部23Cでは、図4の関係(特性線31)に基づいて油圧ポンプ10の動力の制限が行われ、状態回復部23の電池出力値演算部23Dでは、図5の関係(特性線32)に基づいてアシスト発電モータ13の動力の制限が行われる。
【0070】
かくして、実施の形態によれば、蓄電装置16の一時的な性能劣化の抑制と蓄電装置16の使用制限時の操作フィーリングの改善とを両立することとができる。
【0071】
(1).即ち、実施の形態によれば、ハイブリッドコントローラ22の状態回復部23は、蓄電装置16の状態量(電流積算値、電流積算値比率)が所定の閾値を超えた場合に、油圧ポンプ10の動力を制限する。ここで、蓄電装置16の一時的な性能劣化(内部抵抗が一時的に増大することによる電圧の急変動)が発生し易くなる状態量(電流積算値比率:100%)を劣化開始値(劣化開始境界値、劣化開始判定値)とすると、所定の閾値となる第1の閾値、即ち、油圧ポンプ10の動力の制限を開始する動力制限開始値は、例えば、劣化開始値よりも小さい値(電流積算値比率:L1%)として設定することができる。
【0072】
一方、油圧ポンプ10の動力を制限すると、蓄電装置16の負担が低下し、蓄電装置16の状態回復を行うことができる。即ち、油圧ポンプ10の動力を制限することにより、蓄電装置16の充放電(充電・放電)の電流を低下させることができる。このため、蓄電装置16の状態量(電流積算値、電流積算値比率)の増大を抑えることができ、状態量が劣化開始値(電流積算値比率:100%)に近付くことを抑制することができる。これにより、蓄電装置16の一時的な性能劣化(内部抵抗が一時的に増大することによる電圧の急変動)を抑制できる。
【0073】
さらに、油圧ポンプ10の動力の制限は、油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aの操作性の低下を許容できる範囲(100%≧油圧出力比率≧V1%)で設定することができる。このため、油圧ポンプ10の動力を制限することにより、蓄電装置16の状態回復を行っているときに、油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aの操作性が低下すること、延いては、油圧アクチュエータ5D,5E,5F,2E,2F,15Aの動作が急変動することを抑制できる。この結果、蓄電装置16の一時的な性能劣化の抑制と蓄電装置16の使用制限時の操作フィーリングの改善とを両立することができる。
【0074】
(2).実施の形態によれば、状態回復部23は、油圧ポンプ10の動力を制限しても、蓄電装置16の状態量(電流積算値、電流積算値比率)が所定の閾値(電流積算値比率:L1%)を下回らず、さらに、所定の閾値となる第2の閾値、即ち、電動モータ動力制限開始値(電流積算値比率:L2%)を超えた場合、油圧ポンプ10の動力を制限することに加えて、電動モータとしてのアシスト発電モータ13の動力を制限することにより、蓄電装置16の状態回復を行う。このため、油圧ポンプ10とアシスト発電モータ13との両方の動力を制限することにより、蓄電装置16の負担をさらに低下させることができる。これにより、蓄電装置16の状態量(電流積算値、電流積算値比率)を低下させることができ、蓄電装置16の性能劣化を抑制することができる。
【0075】
(3).実施の形態によれば、状態回復部23は、油圧ポンプ10の動力を制限し、かつ、電動モータとしてのアシスト発電モータ13の動力を制限しても、蓄電装置16の状態量(電流積算値、電流積算値比率)が所定の閾値(電流積算値比率:L1%)を下回らず、さらに、所定の閾値となる第3の閾値(電流積算値比率:100%=劣化開始値)に達した場合、蓄電装置16の放電および充電を停止することにより、蓄電装置16の状態回復を行う。このため、蓄電装置16の状態量を直接的に低下させることができ、蓄電装置16の性能劣化を抑制することができる。
【0076】
(4).実施の形態によれば、蓄電装置16の状態量を、蓄電装置16の放電と充電に基づく電流積算値(電流積算値比率)としている。従って、油圧ポンプ10の動力の制限を行う所定の閾値(第1の閾値:L1%、第2の閾値:L2%、第3の閾値:100%)を、電流積算値(電流積算値比率)として設定することができる。ここで、電流積算値(電流積算値比率)の増大は、蓄電装置16の充放電(充電・放電)の電流の増大と相関関係を有する。このため、電流積算値(電流積算値比率)に基づいて、油圧ポンプ10の動力を適切なタイミングで制限することができる。
【0077】
次に、図6ないし図8は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、蓄電装置が放電と充電を繰り返すことによって変化する状態量を、蓄電装置自体の温度としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0078】
状態回復部41は、第1の実施の形態の状態回復部23に代えて、第2の実施の形態で用いるものである。状態回復部41は、蓄電装置16が放電と充電を繰り返すことによって変化する状態量、具体的には、蓄電装置16自体の温度(から求められる温度比率)が予め設定した所定の閾値(M1%)を超えた場合、油圧ポンプ10の動力を制限することにより、蓄電装置16の状態回復を行う。
【0079】
即ち、蓄電装置16を構成するリチウムイオン二次電池16Aは、電解液の変性による性能低下や、正極と負極を電気的に分離しているセパレータの損傷による短絡等の性能劣化を抑制するために、例えば、温度が60℃以上にならないように管理する必要がある。そこで、第2の実施の形態では、蓄電装置16自体の温度、即ち、リチウムイオン二次電池16Aの温度を温度センサ16E(図2参照)により検出する。そして、状態回復部41では、温度センサ16Eで検出(計測)される温度(から求められる温度比率)に基づいて、油圧ポンプ10の動力を制限(さらには、アシスト発電モータ13の動力を制限)することにより、蓄電装置16の状態回復を行う。
【0080】
ここで、状態回復部41は、温度演算部41Aと、閾値出力部41Bと、油圧出力値演算部41Cと、電池出力値演算部41Dとを含んで構成されている。温度演算部41Aは、蓄電装置16自体の温度(リチウムイオン二次電池16Aの温度)と閾値出力部41Bから出力される温度閾値(劣化開始値)とを比較し、その比率となる温度比率を算出するものである。
【0081】
このために、温度演算部41Aには、温度センサ16Eで検出された温度が入力される。また、温度演算部41Aには、閾値出力部41Bから出力される温度閾値も入力される。温度閾値は、リチウムイオン二次電池16Aの性能劣化が発生しない温度の閾値(例えば、60℃)、換言すれば、その値を超えるとリチウムイオン二次電池16Aの性能劣化が発生し易くなる劣化開始値(劣化開始境界値、劣化開始判定値)として設定することができる。
【0082】
温度演算部41Aでは、現在温度と温度閾値とから、その比率となる温度比率を算出する。温度比率は、下記の数3式で表すことができる。温度演算部41Aで算出された温度比率は、油圧出力値演算部41Cおよび電池出力値演算部41Dに出力される。
【0083】
【数3】
【0084】
油圧出力値演算部41Cには、温度演算部41Aで算出される温度比率と、油圧ポンプ10で出力すべき動力に対応する油圧出力要求値とが入力される。油圧出力値演算部41Cでは、図7に示す関係(特性線51)に基づいて、温度比率から油圧出力比率を求めると共に、その求めた油圧出力比率と油圧出力要求値とを乗算することにより、油圧出力指令値を算出する。ここで、図7は、温度比率と油圧出力比率との関係を示している。図7に示すように、温度比率がM1%以下のときは、油圧出力比率は100%となり、温度比率がM1%を超えると、油圧出力比率が100%よりも小さくなる。
【0085】
この場合、温度比率M1%は、例えば、40℃に対応する値(=40℃/60℃≒67%)とすることができる。また、油圧出力比率は、温度比率がM1%を超えると、温度比率がM2%のときにV1%となる。油圧出力比率V1%は、前述の数2式で表すことができる。また、温度比率がM2%は、例えば、50℃に対応する値(=50℃/60℃≒83%)とすることができる。
【0086】
一方、電池出力値演算部41Dでは、温度比率がM2%を超えると、蓄電装置16の保護を図るべく、アシスト発電モータ13の出力制限を行う。即ち、電池出力値演算部41Dには、温度演算部41Aで算出される温度比率と、アシスト発電モータ13で出力すべき動力に対応する電池出力要求値とが入力される。電池出力値演算部41Dでは、図8に示す関係(特性線52)に基づいて、温度比率から電池出力比率を求めると共に、その求めた電池出力比率と電池出力要求値とを乗算することにより、電池出力指令値を算出する。
【0087】
ここで、図8は、温度比率と電池出力比率との関係を示している。図8に示すように、温度比率がM2%以下のときは、電池出力比率は100%になり、温度比率がM2%を超えると、油圧出力比率が100%よりも小さくなる。そして、温度比率が100%以上になると、電池出力比率が0%になり、蓄電装置16の放電および充電を停止する。
【0088】
このように、実施の形態では、状態回復部41は、蓄電装置16の温度比率(温度)が、所定の閾値(第1の閾値)となるM1%(40℃)を超えた場合、油圧ポンプ10の動力を制限することにより、蓄電装置16の状態回復を行う(油圧ポンプ動力制限要素)。また、状態回復部41は、油圧ポンプ10の動力を制限しても、蓄電装置16の温度比率(温度)が下がらない場合、例えば、温度比率(温度)がさらに増大し、所定の閾値(第2の閾値)となるM2%(50℃)を超えた場合(第2の閾値を下回らない場合)、油圧ポンプ10の動力を制限することに加えて、アシスト発電モータ13の動力も制限することにより、蓄電装置16の状態回復を行う(電動モータ動力制限要素)。
【0089】
さらに、状態回復部41は、油圧ポンプ10の動力を制限し、かつ、アシスト発電モータ13の動力を制限しても、蓄電装置16の温度比率(温度)が下がらない場合、例えば、温度比率(温度)がM2%(50℃)からさらに増大し、所定の閾値(第3の閾値)となる100%(60℃)に達した場合(第3の閾値を下回らない場合)、蓄電装置16の放電および充電を停止することにより、蓄電装置16の状態回復を行う(電動モータ停止要素)。このように、状態回復部41は、油圧ポンプ動力制限要素と、電動モータ動力制限要素と、電動モータ停止要素とを有している。これにより、蓄電装置16の性能劣化の抑制と蓄電装置16の使用制限時の操作フィーリングの改善とを両立することができる。
【0090】
第2の実施の形態は、上述のように蓄電装置16の温度(温度比率)に基づいて油圧ポンプ10の動力の制限、アシスト発電モータ13の動力の制限、蓄電装置16の放充電の停止を行うもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0091】
(5).特に、第2の実施の形態によれば、蓄電装置16の状態量を、蓄電装置16自体の温度(温度比率)としている。従って、油圧ポンプ10の動力の制限を行う所定の閾値(第1の閾値:M1%、第2の閾値:M2%、第3の閾値:100%)を、蓄電装置16自体の温度(温度比率)として設定することができる。ここで、蓄電装置16自体の温度の増大は、蓄電装置16の性能劣化の進行と相関関係を有する。このため、蓄電装置16自体の温度に基づいて、油圧ポンプ10の動力を適切なタイミングで制限することができる。
【0092】
なお、上述した第1の実施の形態では、ハイブリッドコントローラ22が状態回復部23を備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、蓄電装置の制御部(コントローラ)が状態回復部を備える構成としてもよい。また、例えば、エンジンの制御部(コントローラ)となるECU、または、インバータの制御部(コントローラ)が状態回復部を備える構成としてもよい。さらに、ハイブリッドコントローラおよびECUが接続されるメインコントローラが状態回復部を備える構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
【0093】
上述した第1の実施の形態では、電流積算値と電流積算値閾値(劣化開始値)との比率となる電流積算値比率を算出し、該電流積算値比率の値に応じて油圧ポンプ10の動力の制限、アシスト発電モータ13の動力の制限、蓄電装置16の停止(充電と放電の停止)を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、電流積算値比率を算出することなく、電流積算値に応じて油圧ポンプの動力の制限、電動モータの動力の制限、蓄電装置の停止(充電と放電の停止)を行う構成としてもよい。
【0094】
上述した第2の実施の形態では、温度と温度閾値(劣化開始値)との比率となる温度比率を算出し、該温度比率の値に応じて油圧ポンプ10の動力の制限、アシスト発電モータ13の動力の制限、蓄電装置16の停止(充電と放電の停止)を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、温度比率を算出することなく、温度に応じて油圧ポンプの動力の制限、電動モータの動力の制限、蓄電装置の停止(充電と放電の停止)を行う構成としてもよい。
【0095】
上述した第1の実施の形態では、状態回復部23から油圧出力指令値を、油圧ポンプ10のレギュレータ10Aに出力する構成とした場合を例に挙げて説明した。即ち、第1の実施の形態では、油圧出力要求値よりも小さい油圧出力指令値が、状態回復部23から油圧ポンプ10のレギュレータ10Aに出力されることにより、油圧ポンプ10の動力を制限する構成とした場合を例に挙げて説明した。
【0096】
しかし、本発明はこれに限らず、例えば、状態回復部から油圧出力指令値を、コントロールバルブに出力する構成としてもよい。ここで、コントロールバルブは、例えば、オペレータが操作する走行用の操作レバー・ペダル装置、作業用の操作レバー装置からのパイロット信号(パイロット圧)に応じて、油圧アクチュエータに対する圧油の供給・排出を切換える制御弁装置として構成される。この場合、油圧出力要求値よりも小さい油圧出力指令値が、状態回復部からコントロールバルブに出力されると、コントロールバルブでは、例えば、オペレータの操作に基づくパイロット信号(パイロット圧)を制限することにより、油圧アクチュエータに供給される圧油を制限することができる。即ち、状態回復部から油圧出力指令値をコントロールバルブに出力し、該コントロールバルブで油圧アクチュエータに供給される圧油を制限することにより、油圧ポンプの動力を(間接的に)制限する構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
【0097】
上述した第1の実施の形態では、旋回装置15の駆動源を旋回油圧モータ15Aにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、旋回装置の駆動源を油圧モータ(旋回油圧モータ)と電動モータ(旋回電動モータ)により構成してもよい。また、旋回装置の駆動源を電動モータ(旋回電動モータ)のみにより構成してもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
【0098】
上述した各実施の形態では、建設機械として、ハイブリッド式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ハイブリッド式のホイールローダ、ハイブリッド式のダンプトラック(運搬車両)等、蓄電装置に接続された電動モータとエンジンとを油圧ポンプの動力源とする各種のハイブリッド式の建設機械に広く適用することができる。さらには、エンジンを省いて、電動モータのみで油圧ポンプを駆動する電動式の建設機械についても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 油圧ショベル(建設機械)
2E,2F 走行油圧モータ(油圧アクチュエータ)
5D ブームシリンダ(作業用油圧シリンダ、油圧アクチュエータ)
5E アームシリンダ(作業用油圧シリンダ、油圧アクチュエータ)
5F バケットシリンダ(作業用油圧シリンダ、油圧アクチュエータ)
9 エンジン
10 油圧ポンプ
13 アシスト発電モータ(電動モータ)
15A 旋回油圧モータ(油圧アクチュエータ)
16 蓄電装置
22 ハイブリッドコントローラ(コントローラ)
23 状態回復部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8