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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-207024(P2017-207024A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】ギヤポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/18 20060101AFI20171027BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   F04C2/18 311B
   F04C2/18 321A
   F04C15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-100851(P2016-100851)
(22)【出願日】2016年5月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直史
【テーマコード(参考)】
3H041
3H044
【Fターム(参考)】
3H041AA00
3H041BB02
3H041CC03
3H041CC20
3H041DD02
3H041DD23
3H041DD38
3H044AA00
3H044BB02
3H044CC03
3H044CC14
3H044CC19
3H044DD02
3H044DD28
(57)【要約】
【課題】安定したポンプ性能を得ることができるギヤポンプを提供する。
【解決手段】ハウジング3の収容孔2内にギヤ室4が区画される。ギヤ室4に一対のギヤ7,8が収容される。一対のギヤ7,8は、一対のサイドプレート5,6の支持孔13,14に支軸15,16を介して回転可能に支持される。ギヤ7,8の回転時に支軸15,16の軸方向から見て、低圧室31と高圧室41との差圧を受けて変位したギヤ7,8の歯先軌道円70,80が、収容孔2の内周面2aに対して第1接点P1を形成する。ギヤ7,8の回転時に支軸15,16の軸方向から見て、前記差圧を受けて変位したサイドプレート5,6が第1接点P1を覆った状態となる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容孔が形成されたハウジングと、
互いの間にギヤ室が区画されるように対向して前記収容孔に配置され、一対の支持孔がそれぞれ形成された一対のサイドプレートと、
互いに噛み合う状態で前記ギヤ室に配置され、前記一対の支持孔に挿入された支軸を介して前記サイドプレートにより回転可能に支持された一対のギヤと、を備えたギヤポンプであって、
前記一対のギヤの回転時に前記支軸の軸方向から前記ギヤポンプを見た場合に、
前記ギヤ室の内部に前記一対のギヤの噛合位置を挟んで低圧室と前記低圧室よりも高圧の高圧室とが形成され、
前記低圧室と前記高圧室との差圧を受けて変位した各前記ギヤの歯先軌道円が、各前記ギヤを収容した前記収容孔の内周面に対して第1接点を形成し、
前記差圧を受けて変位した前記サイドプレートが前記第1接点を覆った状態となるギヤポンプ。
【請求項2】
請求項1において、
前記収容孔は、前記一対のギヤのそれぞれが収容された一対の円筒孔部を含み、
前記サイドプレートは、前記一対の円筒孔部にそれぞれ嵌合された一対の円板部を含み、
前記収容孔を構成する各前記円筒孔部の中心軸線間の距離を第1距離とするとともに、前記サイドプレートを構成する各前記円板部の中心軸線間の距離を第2距離としたとき、前記第1距離と前記第2距離とが等しいギヤポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はギヤポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なギヤポンプの構造は、ハウジング内に互いに噛み合う一対のギヤが収容され、この一対のギヤを軸方向に挟んで配置される一対のサイドプレートによって収容孔内にギヤ室が区画され、各ギヤの支軸を各サイドプレートに形成された支持孔によって回転可能に支持する構造である(例えば特許文献1を参照)。
ギヤの軸方向からギヤポンプを見た場合、前記ギヤ室の内部に両ギヤの噛み合い位置を挟んで、作動流体の吸込口に連通する低圧室と、作動流体の吐出口に連通する高圧室とが配置される。各サイドプレートは、収容孔に対して隙間嵌めにより配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−122160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ギヤポンプの駆動状態で、低圧室と高圧室との差圧を受けた各ギヤは、両ギヤの中心間距離の変化を伴って低圧側へ変位する。そして、図9に示すように、ギヤの歯先軌道円90が、収容孔の内周面91に対して接点92を形成する。この接点92によって、ギヤの周方向に関して、低圧室と高圧室とが仕切られている。一方、前記差圧を受けたサイドプレート93も、低圧側へ変位する。
【0005】
図9では、ギヤおよびサイドプレートの位置関係が強調的に示されている。図9に示すように、各ギヤは、サイドプレート93とは異なり、両ギヤの中心間距離が変化する方向Zにも変位するため、ギヤの歯先軌道円90の接点92が、サイドプレート93から露出する。高圧側と低圧側とを仕切る接点92が露出するようにサイドプレート93が配置されると、ギヤの軸方向端部(図9では紙面手前側)における接点92の周辺において、高圧室側から低圧室側へ接点92を迂回して流体が漏れる内部漏れが発生する。このため、流量が低下する等、ポンプ性能が不安定となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、安定したポンプ性能を得ることができるギヤポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、収容孔(2)が形成されたハウジング(3)と、互いの間にギヤ室(4)が区画されるように対向して前記収容孔に配置され、一対の支持孔(13,14)がそれぞれ形成された一対のサイドプレート(5,6)と、互いに噛み合う状態で前記ギヤ室に配置され、前記一対の支持孔に挿入された支軸(15,16)を介して前記サイドプレートにより回転可能に支持された一対のギヤ(7,8)と、を備えたギヤポンプであって、前記一対のギヤの回転時に前記支軸の軸方向から前記ギヤポンプを見た場合に、前記ギヤ室の内部に前記一対のギヤの噛合位置(MP)を挟んで低圧室(31)と前記低圧室よりも高圧の高圧室(32)とが形成され、前記低圧室と前記高圧室との差圧を受けて変位した各前記ギヤの歯先軌道円(70,80)が、各前記ギヤを収容した前記収容孔の内周面に対して第1接点(P1)を形成し、前記差圧を受けて変位した前記サイドプレートが前記第1接点を覆った状態となるギヤポンプ(1)を提供する。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
請求項2のように、請求項1において、前記収容孔は、前記一対のギヤのそれぞれが収容された一対の円筒孔部(21,22)を含み、前記サイドプレートは、前記一対の円筒孔部にそれぞれ嵌合された一対の円板部(18,19)を含み、前記収容孔を構成する各前記円筒孔部の中心軸線(C1)間の距離を第1距離(D1)とするとともに、前記サイドプレートを構成する各前記円板部の中心軸線(C2)間の距離を第2距離(D2)としたとき、前記第1距離と前記第2距離とが等しくてもよい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、一対のギヤの回転時に、支軸の軸方向から見て、ギヤ(歯先軌道円)の、収容孔の内周面に対する第1接点がサイドプレートで覆われてシールされる。このため、ギヤの軸方向端部で第1接点を迂回する高圧側から低圧側への流体の漏れが抑制され、安定したポンプ性能を得ることができる。なお、本発明において、第1接点は、薄い油膜等の流体膜を介する接触点のことを言う。
【0010】
差圧を受けたサイドプレートは低圧側へ変位する。その変位によって、サイドプレートを構成する円板部の外周面が、収容孔を構成する円筒孔部の内周面に対して接点(第2接点)を形成する。ここで、請求項2の発明では、収容孔を構成する各円筒孔部の中心軸線間の距離である第1距離と、サイドプレートを構成する各円板部の中心軸線間の距離である第2距離とが等しくなるように形成されている。そのため、第2接点と当該第2接点に対応する円板部の中心軸線とを結ぶ直線(第1直線)が、収容孔を構成する各円筒孔部の中心軸線間を結ぶ直線(第2直線)と直交する関係になる。すなわち、第2接点は、第2直線と直交する方向において最も低圧室側に形成されることになる。
【0011】
これにより、ハウジング及びサイドプレートの寸法交差のばらつきによって、第2接点の位置が円筒孔部の周方向にばらつく場合であっても、第2直線と直交する方向における第2接点のばらつきは小さく抑えることができる。このため、差圧を受けて変位するサイドプレートの変位量及びサイドプレートに支持されたギヤの変位量をほぼ一定に保つことができ、性能のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態のギヤポンプの正面断面図である。ギヤおよびギヤの支軸の断面を示すハッチングは省略してある。
図2図1のII−II線に沿って切断された断面を示す概略図であり、断面を示すハッチングは省略してある。
図3】ハウジングの本体筒の端面図である。
図4】サイドプレートのギヤ側の側面を正面とした図である。
図5】(a),(b)は駆動状態のギヤポンプの模式的断面図である。(a)はサイドプレートの変位状態を示し、(b)は両ギヤの変位状態を示している。
図6図1のVI−VI線に沿って切断された断面図である。
図7】駆動状態のギヤポンプの諸元の位置関係を示す模式図である。
図8】本実施形態のギヤポンプおよび従来のギヤポンプにおいて部品公差のばらつきの影響による第2接点の位置のばらつきを比較説明する模式図である。
図9】従来例において、駆動状態のギヤポンプの諸元の位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るギヤポンプの正面断面図である。図2図1のII−II断面図であって断面を示すハッチングは省略してある。図1および図2に示すように、ギヤポンプ1は、収容孔2が形成されたハウジング3と、互いの間にギヤ室4が形成されるように距離をあけて収容孔2内に対向配置された一対のサイドプレート5,6と、ギヤ室4内に配置され互いに噛み合う一対のギヤとしての駆動ギヤ7および従動ギヤ8とを備えている。
【0014】
ハウジング3は、本体筒9と、本体筒9の軸方向両側の端面を覆うようにねじ止めされた一対の蓋板10,11とを含む。収容孔2は、本体筒9の中央部を貫通する貫通穴である。各蓋板10,11と本体筒9との間には、ギヤ室4を密封するシール部材12が介在している。また各蓋板10,11と対応するサイドプレート5,6との間にも、ギヤ室4を密封するシール部材50が介在している。
【0015】
図3はハウジング3の本体筒9の端面図である。図4はサイドプレート5(6)のギヤ側の側面を正面とした図である。図3に示すように、収容孔2は、駆動ギヤ7および従動ギヤ8をそれぞれ収容する一対の円筒孔部21,22を有する「8の字形」をなしている。収容孔2の円筒孔部21および円筒孔部22は、互いに等しい半径Rを有する円筒状の孔である。一対の円筒孔部21,22は、互いに平行な第1中心軸線C1を有して平行に並ぶように形成されている。
【0016】
また、円筒孔部21,22は、一対の円筒孔部21,22の第1中心軸線C1間の距離である第1距離D1が、円筒孔部21(22)の内径(直径2R)よりも小さくなるように配置され(D1<2R)、円筒孔部21および円筒孔部22のそれぞれが互いに連通するように形成されている。
図4に示すように、各サイドプレート5,6は、収容孔2に嵌まり合う「8の字形」をなしている。各サイドプレート5,6は、各円筒孔部21,22に、それぞれ収容された一対の円板部18,19を含む。各円板部18,19の外周面18a,19aは、対応する円筒孔部21,22の内周面21a,22aに、例えばすきま嵌めにより嵌合している。円板部18,19は、互いに等しい外径(直径2r)を有している。円板部18,19の外径(直径2r)は、円筒孔部21,22の内径(直径2R)よりも小さく形成されている(2r<2R)。
【0017】
各サイドプレート5,6の一対の円板部18,19は、互いに平行な一対の第2中心軸線C2をそれぞれ有している。各サイドプレート5,6には、対応する円板部18,19と同心の支持孔13,14が形成されている。すなわち、各円板部18,19の第2中心軸線C2が、各円板部18,19に形成された支持孔13,14の中心とされている。
一対の円板部18,19は、一対の円板部18,19(一対の支持孔13,14)の第2中心軸線C2間の距離である第2距離D2が、円板部18(19)の直径(=2r)よりも小さくなるように配置されている(D2<2r)。円板部18および円板部19は一体に連結形成されている。
【0018】
本実施形態では、図3に示される一対の第1中心軸線C1間の第1距離D1と、図4に示される一対の第2中心軸線間の第2距離D2とが互いに等しくされている(D1=D2)。
図1に示すように、各ギヤ7,8の支軸15,16は、それぞれの両端部が、一対のサイドプレート5,6の対応する支持孔13,14に挿入され、一対のサイドプレート5,6によってそれぞれ回転可能に支持されている。支軸15,16は互いに平行に配置されている。支持孔13,14が、ブッシュ等のすべり軸受を介して支軸15,16を支持するものであってもよい。
【0019】
支軸15は、一方の蓋板10を貫通して外部に延長されている。支軸15は駆動軸を構成し、支軸15の延長端15aに伝達される図示しないモータなどの動力源からの駆動力により回転駆動される。支軸15には、駆動ギヤ7が一体回転可能に装着されている。支軸15が蓋板10を貫通する部分にはオイルシール17が配置されている。
また、支軸16は、従動軸を構成している。支軸16には、従動ギヤ8が装着されている。従動ギヤ8の支軸16への装着では、支軸16と一体回転するように連結してもよいし、支軸16に対して相対回転可能に取り付けてもよい。従動ギヤ8は駆動ギヤ7と噛み合い、支軸15により駆動される駆動ギヤ7の回転に伴って、支軸16と共に(或いは支軸16の回転を伴わずに)従動回転するように構成されている。
【0020】
図2では、駆動ギヤ7およびこれに連動する従動ギヤ8の回転方向が、矢符により示されている。支軸15,16の軸方向からギヤ室4を見たとき、ギヤ室4の両ギヤ7,8の噛み合い位置MPを挟んだ両側には、作動流体の吸込口32に連通する低圧室31と、作動流体の吐出口42に連通する高圧室41とが形成されている。これら低圧室31および高圧室41は、本体筒9の対応位置に開口するように形成された吸込口32および吐出口42を介して、ハウジング3外の図示しない吸込先および吐出先にそれぞれ接続されている。
【0021】
図2に示すように、両ギヤ7,8が回転するギヤポンプ1の駆動時に、吸込口32を経て低圧室31に導入される作動流体は、低圧室31に臨む駆動ギヤ7および従動ギヤ8の歯間に受け入れられ、両ギヤ7,8の回転により、歯間と収容孔2の内周面2aとの間に封止された状態で搬送され、高圧室41に送り出される。
以上の如く行われるギヤポンプ1の動作中、ギヤ室4の内側においては、低圧室31から高圧室41に至る圧力分布が発生する。各ギヤ7,8およびサイドプレート5,6には、低圧室31と高圧室41との差圧に応じた押圧力が主に作用し、各ギヤ7,8およびサイドプレート5,6は、収容孔2の内周面2a(円筒孔部21,22の内周面21a,22a)の低圧側の領域に押し付けられる。
【0022】
まず、サイドプレート5(6)の変位状態を説明する。図5(a)は駆動状態のギヤポンプ1の模式的断面図であり、支軸15,16の軸方向から見たときのサイドプレート5(6)の変位状態を示している。
ギヤポンプ1の駆動時に低圧室31と高圧室41との差圧を受けて低圧室31側へ変位するときのサイドプレート5(6)の変位方向(白抜き矢符で示される)は、サイドプレート5の一対の第2中心軸線C2を通過する第2直線L2に対して直交する直交方向Vの低圧室側VLである。
【0023】
支軸15,16の軸方向から見て、両円筒孔部21,22の第1中心軸線C1を通過する直線を第4直線L4とすると、サイドプレート5(6)は、サイドプレート5の第2中心軸線C2を通過する第2直線L2が第4直線L4に対して平行移動する。直交方向Vの低圧室側VLに変位した各サイドプレート5,6は、収容孔2の内周面2a(円筒孔部21,22の内周面21a,22a)の低圧室31側の領域に対して第2接点P2を形成する。第2接点P2は、作動流体の薄膜を介する接触点のことを言う。
【0024】
第2接点P2の位置は、下記のようにして調整されている。すなわち、一対の第1中心軸線C1間の第1距離D1と、一対の第2中心軸線間の第2距離D2とが互いに等しくされている(D1=D2)。このため、サイドプレート5(6)が直交方向Vの低圧室側VLに変位して形成される第2接点P2は、第1中心軸線C1(第2中心軸線C2)に対して、直交方向Vの低圧室側VLに配置される。第2接点P2と当該第2接点P2に対応する第2中心軸線C2とを通過する直線を第1直線L1として、第2接点P2は、第1直線L1と第2直線L2とが直交するように配置される。
【0025】
次いで、ギヤポンプ1の駆動時の両ギヤ7,8の変位状態を説明する。図5(b)は駆動状態のギヤポンプ1の模式的断面図であり、支軸15,16の軸方向から見たときの両ギヤ7,8の変位状態を示している。ギヤポンプ1の駆動状態で一対のギヤ7,8の回転時に、支軸15,16の軸方向から見て、低圧室31と高圧室41との差圧を主に受けて低圧側へ変位した各ギヤ7,8の歯先軌道円70,80が、収容孔2の内周面2a(円筒孔部21,22の内周面21a,22a)に対して第1接点P1を形成する。第1接点P1は、作動流体の薄膜を介する接触点のことを言う。
【0026】
第1接点P1の位置は下記のようにして調整されている。まず、図2および図4を参照して、サイドプレート5(6)のギヤ側側面5a,6aには、両ギヤ7,8の噛み合い位置MPから低圧室31側に延びる逃げ溝23と、噛み合い位置MPから高圧室41側に延びる逃げ溝24とが形成されている。両逃げ溝23,24は、互いに連通しないように離隔されている。
【0027】
逃げ溝23,24は、噛み合い位置MPで作動流体が両サイドプレート5,6のギヤ側側面5a,6aと両ギヤ7,8の噛み合い歯とで形成される閉塞領域Kに閉じ込められて発生する閉込み圧力を抑制するよう機能する。具体的には、図示していないが、一対のギヤ7,8の回転に伴って、閉塞領域Kが逃げ溝24を介して高圧室41に連通する状態から、閉塞領域Kが逃げ溝23を介して低圧室31に連通する状態へと切り換えられる。各逃げ溝23,24の位置、形状の設定により閉塞領域Kに発生する閉込み圧力が調整可能である。
【0028】
図2および図5(b)に示すように、閉塞領域Kに発生する閉込み圧力は、両ギヤ7,8に対して、両ギヤ7,8の中心C3を互いに遠ざける方向の力成分を持つ押圧力Eを付与する。
図6は、図1のVI−VI線に沿って切断された断面図である。図6に示すように、サイドプレート5のギヤ側側面5aの反対側の側面である反対側側面5bには、略3の字形形状のシール溝26が形成されている。シール溝26に、シール部材50が収容されている。シール部材50は、略3の字形形状をなしている。シール部材50の一対の端部には、ハウジング3の収容孔2の円筒孔部21,22の内周面にそれぞれ弾性的に接触するシール面51,52が設けられている。
【0029】
シール部材50を境界として、サイドプレート5と蓋板11との間の空間が、低圧室31に連通する低圧室側領域LAと、高圧室41に連通する高圧室側領域HAとに仕切られている。高圧室側領域HAは、支軸15,16の軸方向から見て、両ギヤ7,8の中心C3(第2中心軸線C2と略一致)を通過する第4直線L4(第2直線L2と略一致)よりも低圧室31側へ延び、高圧室側領域HAが低圧室側領域LAよりも広くされている。
【0030】
各部品(ハウジング3、サイドプレート5,6、両ギヤ7,8およびシール部材50)の諸元の設定によって、低圧室31と高圧室41との差圧に基づく各円筒孔部21,22の周方向の圧力分布が調整される。
図5(b)に示すように、差圧に基づく圧力分布の調整によって、差圧によって各ギヤ7,8に与えられる押圧力Fの方向が調整される。本実施形態における差圧による押圧力Fは、両ギヤ7,8を互いに近づける方向の力成分を持つ。これにより閉じ込み圧力によって各ギヤ7,8に与えられる押圧力Eと、高圧室41と低圧室31との差圧によって各ギヤ7,8に与えられる押圧力Fの合力Gの方向が、直交方向Vの低圧室側VLとなるように調整される。
【0031】
これにより、支軸15,16の軸方向から見て、各ギヤ7,8が形成する第1接点P1は、当該第1接点P1と対応するギヤ7,8の中心C3(第2中心軸線C2に略一致)とを通過する第3直線L3が、一対の第2中心軸線C2を通過する第2直線L2(第4直線L4と略一致)と直交するように配置される。
このように、一対の第1中心軸線C1間の第1距離D1と一対の第2中心軸線間の第2距離D2とを調整することによって、ハウジング3の収容孔2の内周面2aに対する第2接点P2の位置が調整され、且つ、各ギヤ7,8に負荷される圧力(閉込み圧力、差圧)による押圧力の合力Gの方向を調整することによって、収容孔2の内周面2aに対する第1接点P1の位置が調整される。
【0032】
これにより、ギヤポンプ1の模式図である図7に示すように、支軸15,16の軸方向(紙面と直交する方向)から見て、第2接点P2の位置が第1接点P1の位置に一致した状態で、第1接点P1がサイドプレート5で覆われる。このため、ギヤ7,8の軸方向端部で第1接点P1を迂回する高圧側から低圧側への流体の漏れが抑制される。これにより、安定したポンプ性能を得ることができる。
【0033】
また、差圧を受けたサイドプレート5,6は低圧側へ変位する。その変位によって、サイドプレート5,6を構成する円板部18,19の外周面が、収容孔2を構成する円筒孔部21,22の内周面に対して接点(第2接点P2)を形成する。ここで、収容孔2を構成する各円筒孔部21,22の中心軸線(第1中心軸線C1)間の距離である第1距離D1と、サイドプレート5,6を構成する各円板部18,19の中心軸線(第2中心軸線C2)間の距離である第2距離D2とが互いに等しくなる(D1=D2)ように形成されている。そのため、第2接点P2と当該第2接点P2に対応する円板部18,19の中心軸線(第1中心軸線C1)とを結ぶ直線(第1直線L1)が、収容孔2を構成する各円筒孔部21,22の中心軸線(第2中心軸線C2)間を結ぶ直線(第2直線)と直交する関係になる。すなわち、第2接点P2は、第2直線L2と直交する方向(直交方向V)において最も低圧室31側に形成されることになる。
【0034】
これにより、ハウジング3及びサイドプレート5,6の寸法交差のばらつきによって、第2接点P2の位置が円筒孔部21,22の周方向にばらつく場合であっても、第2直線L2と直交する方向(直交方向V)における第2接点P2の位置のばらつきは小さく抑えることができる。このため、差圧を受けて変位するサイドプレート5,6の変位量及びサイドプレート5,6に支持されたギヤ7,8の変位量をほぼ一定に保つことができ、性能のばらつきを抑制することができる。
【0035】
本発明の請求項2の条件(D1=D2)を満足する実施例1と、本発明の請求項1の条件(サイドプレート5,6が第1接点を覆った状態となる)は満足し且つ請求項2の条件を満足しない実施例2とに対して、幾何学的解析を行った。図8は、実施例1,2における第2接点P2の位置のばらつき状態を比較説明するための模式図である。
図8に示すように、実施例1の第2接点P2の位置が、部品公差のばらつきによって、位置P2aと位置P2bの間で円筒孔部21(22)の周方向に周長ΔXでばらつくときの、位置P2aと位置P2bとの直交方向Vの距離(ばらつき量)をΔYaとする。
【0036】
一方、第1距離D1と第2距離D2を等しくする(D1=D2)条件が満足されない実施例2のギヤポンプにおいて、第2接点P2の位置が位置P2cから位置P2dまで円筒孔部21(22)の周方向に同じ周長ΔXでばらつくときの、位置P2cと位置P2dとの直交方向Vの距離(ばらつき量)をΔYcとする。
実施例1の直交方向Vのばらつき量ΔYaは、実施例2の直交方向Vのばらつき量ΔYcよりも格段に小さくなる(ΔYa<ΔYc)。したがって、実施例1では、実施例2と比較して、各部品の寸法交差のばらつきによって、第2接点P2の位置が円筒孔部21,22の周方向にばらつく場合であっても、直交方向Vにおける第2接点P2の位置のばらつきを一層小さく抑えることができ、性能のばらつきを一層抑制することができると考察される。
【0037】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、図示していないが、任意の位置[例えば図5(a)に示されるように第1直線L1と第2直線L2とが直交するような第2接点P2の位置から、円筒孔部21,22の周方向にずれた位置]にある第2接点P2を持つサイドプレート5,6によって、ギヤ7,8の第1接点P1の軸方向端部が覆われるように、合力Gの方向の調整による第1接点P1の位置調整のみを行ってもよい。
【0038】
また、第1距離D1に対する第2距離D2の大きさを調整することにより、第2接点P2の位置調整のみを行って、ギヤ7,8の第1接点P1の軸方向端部がサイドプレート5,6で覆われるようにしてもよい。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0039】
1…ギヤポンプ、2…収容孔、2a…内周面、3…ハウジング、4…ギヤ室、5,6…サイドプレート、7…駆動ギヤ、8…従動ギヤ、9…本体筒、10,11…蓋板、13,14…支持孔、15,16…支軸、18,19…円板部、18a,19a…外周面、21,22…円筒孔部、21a,22a…内周面、31…低圧室、41…高圧室、70,80…歯先軌道円、C1…第1中心軸線(円筒孔部の中心)、C2…第2中心軸線(円板部の中心)、C3…(ギヤの)中心、D1…第1距離(第1中心軸線間の距離)、D2…第2距離(第2中心軸線間の距離)、E,F…押圧力、G…合力、K…閉塞領域、L1…第1直線、L2…第2直線、L3…第3直線、P1…第1接点、P2…第2接点、V…直交方向、VL…直交方向の低圧室側
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9