と反応材18との化学反応によって熱を発生させてエンジンオイルを加熱し、高温の排ガスの熱を利用してエンジンオイルを加熱する。これにより、エンジンオイルを十分に加熱することができる。また、排ガス供給系15は、排ガス配管23(流出流路)を流通する排ガスを排ガス配管22(供給流路)を介して反応器12へ再循環させる再循環配管53を有する。従って、再循環配管53で排ガスを再度反応器12に循環させることで、一度反応器12で回収されなかった熱を再度回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る化学蓄熱装置を備えたエンジンオイル循環システムを排気浄化システムと共に示す概略構成図である。
図1において、排気浄化システム1及びエンジンオイル循環システム2は、内燃機関であるディーゼルエンジン3(以下、単にエンジン3という)を搭載した車両Sに具備されている。
【0017】
排気浄化システム1は、エンジン3から排出される排ガスに含まれる有害物質(環境汚染物質)を浄化する。排気浄化システム1は、ディーゼル酸化触媒(DOC:DieselOxidation Catalyst)4と、ディーゼル排気微粒子除去フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)5と、選択還元触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)6とを備えている。
【0018】
DOC4、DPF5及びSCR6は、エンジン3と接続された排気通路7に上流側から下流側に向けて順に配設されている。DOC4は、排ガス中に含まれるHC及びCO等を酸化して浄化する。DPF5は、排ガス中に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集することにより、排ガスからPMを取り除く。SCR6は、尿素またはアンモニア(NH
3)によって、排ガス中に含まれるNOxを還元して浄化する。
【0019】
エンジンオイル循環システム2は、エンジン3内の各部を潤滑するためのエンジンオイルを循環させる。エンジンオイル循環システム2は、オイルパン8と、オイルポンプ9と、オイルクーラ10とを備えている。オイルパン8は、エンジンオイルを溜めておく。エンジン3内の各部を流れたエンジンオイルは、オイルパン8に戻る。オイルポンプ9は、オイルパン8に溜められたエンジンオイルを吸い上げてエンジン3に向けて圧送する。オイルクーラ10は、エンジンオイルの温度が高くなり過ぎたときに、冷却水によりエンジンオイルを所定温度に冷却する。なお、エンジンオイルを冷却する理由は、エンジンオイルの過昇温による劣化を防ぐためである。
【0020】
また、エンジンオイル循環システム2は、エンジンオイルの早期昇温を可能とする化学蓄熱装置11を備えている。化学蓄熱装置11は、電力等の外部エネルギーを必要とせずに、エンジンオイルを加熱(暖機)する。具体的には、化学蓄熱装置11は、排ガスの熱により反応器12の反応材18(後述)から反応媒体を脱離させ、その脱離した反応媒体を吸着器13(後述)に蓄えると共に、反応媒体を反応器12に供給して反応材18と反応媒体とを化学反応させ、その時の反応熱によりエンジンオイルを加熱する。即ち、化学蓄熱装置11は、可逆的な化学反応を利用して、エンジンオイルからの熱を蓄えると共にエンジンオイルに熱を供給する装置である。本実施形態では、反応媒体はアンモニア(NH
3)である。
【0021】
化学蓄熱装置11は、反応器12と、吸着器13と、NH
3流通系14(反応媒体流通系)と、排ガス供給系15とを備えている。反応器12は、例えばエンジン3の外壁面に取り付けられ固定されている。反応器12は、エンジンオイルが流れるオイル配管16を介してオイルクーラ10と接続されていると共に、エンジンオイルが流れるオイル配管17を介してエンジン3と接続されている。反応器12は、エンジンオイルに対して熱交換可能に配置されている。
【0022】
反応器12は、NH
3が供給されるとNH
3との化学反応により発熱すると共に排ガス(後述)の熱が与えられるとNH
3を脱離する反応材18を含んでいる。反応材18としては、組成式MXaで表されるハロゲン化物が用いられる。Mは、Mg、CaまたはSr等のアルカリ土類金属、若しくはCr、Mn、Fe、Co、Ni、CuまたはZn等の遷移金属である。Xは、Cl、BrまたはI等である。aは、Mの価数により特定される数であり、2〜3である。
【0023】
吸着器13は、NH
3を貯蔵する貯蔵器である。吸着器13は、NH
3の物理吸着及び脱離が可能な吸着材19を含んでいる。吸着材19としては、活性炭、カーボンブラック、メソポーラスカーボン、ナノカーボンまたはゼオライト等が用いられる。なお、NH
3は吸着材19に化学吸着されてもよい。
【0024】
NH
3流通系14は、反応器12と吸着器13との間でNH
3を流通させる。NH
3流通系14は、反応器12と吸着器13とを接続し、NH
3が双方向に流れるNH
3配管20と、このNH
3配管20に配設され、NH
3の流路を開閉する電磁式のバルブ21とを有している。
【0025】
排ガス供給系15は、排気通路7から反応器12に向けて排ガスを供給する。排ガス供給系15は、反応器12と排気通路7におけるDOC4の上流側とを接続し、排気通路7から反応器12に排ガスが流れる排ガス配管22と、排気通路7における排ガス配管22と排気通路7との接続箇所の下流側と反応器12とを接続し、反応器12から排気通路7に排ガスが流れる排ガス配管23と、排ガス配管22に配設され、排ガスの流路を開閉する電磁式の排ガスバルブ24とを有している。なお、排ガス供給系15の更に詳細な構成については
図3を参照して後述する。
【0026】
図2は、反応器12の縦断面図である。
図2において、反応器12は、直方体形状を呈している。反応器12は、反応材18が充填された複数の反応材充填部25と、エンジンオイルが通る複数のオイル通路部26(加熱対象通路部)と、排ガスが通る複数の排ガス通路部27と、反応材充填部25、オイル通路部26及び排ガス通路部27を収容する筐体28とを有している。筐体28は、例えばNH
3及び排ガスに対して耐腐食性を有する金属材料(例えばステンレス鋼)で形成されている。
【0027】
反応材充填部25、オイル通路部26及び排ガス通路部27は、交互に積層されている。具体的には、排ガス通路部27上にはオイル通路部26が積層され、オイル通路部26上には反応材充填部25が積層されている。オイル通路部26は、反応材充填部25に隣接して配置されている。排ガス通路部27は、反応材充填部25及びオイル通路部26に隣接して配置されている。
【0028】
筐体28には、NH
3配管20が接続されている。なお、図示はしないが、筐体28内には、各反応材充填部25にNH
3を供給するための通路が設けられている。オイル通路部26は、エンジンオイルと反応材18との熱交換を促進させるための複数のフィンを有している。図示はしないが、各オイル通路部26には、オイル配管16,17が反応器12を挟むように分岐して接続されている。排ガス通路部27は、排ガスと反応材18及びエンジンオイルとの熱交換を促進させるための複数のフィンを有している。各排ガス通路部27には、排ガス配管22,23が反応器12を挟むように分岐して接続されている。従って、排ガス供給系15は、排気通路7から反応器12の排ガス通路部27に排ガスを供給することとなる。
【0029】
反応器12において、オイル通路部26をエンジンオイルが流れる方向と排ガス通路部27を排ガスが流れる方向とは、直交している。ただし、エンジンオイルが流れる方向と排ガスが流れる方向とは、平行となっていてもよい。この場合、エンジンオイルが流れる方向と排ガスが流れる方向とは、同じ方向でもよいし、逆方向でもよい。
【0030】
図1に戻り、化学蓄熱装置11において、エンジン3の起動直後におけるエンジンオイルの温度が低いときは、バルブ21が開弁されると、吸着器13と反応器12との圧力差によって、吸着器13の吸着材19からNH
3が脱離し、そのNH
3がNH
3配管20を通って反応器12に供給される。そして、反応器12の反応材18(例えばMgBr
2)とNH
3とが化学反応(化学吸着)して熱が発生する。つまり、下記の反応式(A)における左辺から右辺への反応(発熱反応)が起こる。そして、反応器12内において、反応材18から発生した熱がエンジンオイルに伝えられ、エンジンオイルが加熱(暖機)される。暖められたエンジンオイルは、オイル配管17を通ってエンジン3内の各部に送られる。
MgBr
2+
xNH
3 ⇔ Mg(NH
3)
xBr
2+熱 …(A)
【0031】
その後、高温の排ガスが排ガス配管22を通して反応器12に供給されると、排ガスの熱が反応材18に与えられることで、反応材18からNH
3が脱離する。つまり、上記の反応式(A)における右辺から左辺への反応(再生反応)が起こる。このとき、バルブ21が開弁されると、反応器12と吸着器13との圧力差によって、NH
3がNH
3配管20を通って吸着器13に戻り、吸着器13の吸着材19に物理吸着される。これにより、NH
3が吸着器13に回収されることとなる。
【0032】
また、化学蓄熱装置11は、温度センサ30と、温度センサ31と、温度センサ32と、圧力センサ33と、コントローラ34とを備えている。温度センサ30は、排ガスの温度を検出する供給温度検出部である。温度センサ30は、例えば排ガス配管22内を流れる排ガスの温度、つまり反応器12に供給される排ガスの温度を検出する。温度センサ30は、排気通路7のうち、当該排気通路7と排ガス配管22との分岐部よりも上流側(あるいは分岐部)に設けられる。温度センサ31は、エンジンオイルの温度を検出する。温度センサ31は、例えばオイル配管17内を流れるエンジンオイルの温度、つまり反応器12よりも下流側を流れるエンジンオイルの温度を検出する。温度センサ32は、吸着器13の温度を検出する。圧力センサ33は、吸着器13内の圧力を検出する。
【0033】
コントローラ34は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ34は、発熱制御部35と、排ガス供給制御部36とを有している。
【0034】
発熱制御部35は、エンジン3が起動されたときに、NH
3と反応器12の反応材18との化学反応によって熱を発生させてエンジンオイルを加熱するように、NH
3流通系14を制御する。排ガス供給制御部36は、温度センサ30により検出された排ガスの温度が所定温度以上になったときに、排ガスの熱によって反応材18からNH
3を脱離させると共にエンジンオイルを加熱するように、排ガス供給系15を制御する。
【0035】
排ガス供給系15及び排ガス供給制御部36は、温度センサ30により検出された排ガスの温度が所定温度以上になったときに、排ガスの熱を利用して反応材18からNH
3を脱離させると共に、排ガスの熱を利用してエンジンオイルを加熱する排ガス活用ユニット37を構成する。
【0036】
次に、
図3を参照して、排ガス供給系15の詳細な構成について説明する。
図3に示すように、排ガス供給系15は、排気通路7から反応器12へ排ガスを供給する供給流路としての排ガス配管22と、反応器12から排気通路7へ排ガスを流出させる流出流路としての排ガス配管23と、排ガス配管22と排ガス配管23とを接続し、反応器12を通過して排ガス配管23を流れる排ガスを排ガス配管22に戻して反応器12へ再循環させる再循環配管(再循環流路)53と、を有する。本実施形態では、流出流路として構成される排ガス配管23は、排気通路7に対して、供給流路として構成される排ガス配管22よりも下流側に接続される。従って、排ガス供給系15は、排気通路7の上流側から排ガスを取り出し、下流側へ流出させる。
【0037】
排ガス配管22(ここでは排気通路7との分岐点付近)には、排ガスバルブ24が設けられる。再循環配管53には、排ガス配管23から排ガス配管22へ排ガスを流すポンプ50が設けられている。再循環配管53には、再循環用バルブ51が設けられる。また、排ガス配管23には排ガスの温度を検出する流出温度検出部としての温度センサ54が設けられる。詳細には、温度センサ54は、排ガス配管23の再循環配管53への分岐点と反応器12との間(あるいは分岐点)に設けられる。このような温度センサ54の配置により反応器12を通過した後の排ガスの温度を検知することができる。
【0038】
上述のような排ガス供給系15に対して、排ガス供給制御部36は、温度センサ54によって検出される温度が所定の閾値以上である場合、再循環用バルブ51を開弁する。また、排ガス供給制御部36は、吸着器13によるNH
3の回収率が所定の閾値より低い場合、再循環用バルブ51を閉弁する。特に、排ガス供給制御部36は、温度センサ54によって検出される温度が所定の閾値より低く、且つ、吸着器13によるNH
3の回収率が所定の閾値より低い場合、再循環用バルブ51を閉弁する。
【0039】
図4は、コントローラ34による制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。ここでは、再生処理の制御内容について記載されている。当該再生処理が行われる前段階では、加熱処理が行われる。当該加熱処理の初期状態では、バルブ21,24は閉弁されている。つまり、排気通路7を流れる排ガスは、排ガス配管22に流れず、全てDOC4に流れる。また、吸着器13の吸着材19には、バルブ21が開弁された際に反応器12、吸着器13及びNH
3配管20からなる反応系内を所定の圧力に保持するための圧力保持用NH
3と、反応器12において所望の発熱温度を得るために反応材18との化学反応に使用される移動用NH
3とが吸着されている。圧力保持用NH
3及び移動用NH
3の量は、反応材18の材料等に応じて適宜決められている。
【0040】
加熱処理がスタートすると、コントローラ34は、まずイグニッションスイッチ(IGスイッチ)38の操作信号に基づいて、エンジン3が起動されたかどうかを判断する。コントローラ34は、エンジン3が起動されたと判断したときは、バルブ21を開制御する。これにより、吸着器13から反応器12に移動用NH
3が供給され、反応器12の反応材18と移動用NH
3との化学反応により発生した熱によってエンジンオイルが加熱される。続いて、コントローラ34は、温度センサ30の検出値に基づいて、排ガスの温度が再生温度(所定温度)以上であるかどうかを判断する。再生温度は、反応材18から移動用NH
3が脱離する、いわゆる反応材18の再生が可能となる温度であり、例えば100℃である。コントローラ34によって、排ガスの温度が再生温度以上であると判断された場合に、
図4に示す再生処理が開始される。
【0041】
図4に示すように、再生処理がスタートしたら、コントローラ34は、排ガスバルブ24を開制御し、バルブ21を開制御する(手順S100)。これにより、排気通路7を流れる高温の排ガスが排ガス配管22に供給され、当該排ガス配管22を通って反応器12の排ガス通路部27に供給される。また、高温の排ガスの熱が排ガス通路部27から反応材充填部25に伝えられ、排ガスの熱によって反応材18から移動用NH
3が脱離し、その移動用NH
3が反応器12から吸着器13に回収される。排ガス通路部27を通過した排ガスは、排ガス配管23から排気通路7へ流出する。
【0042】
次に、コントローラ34は、温度センサ54によって検出された温度が、閾値X℃以上であるか否かを判定する(手順S101)。閾値X℃は、例えば反応材の反応媒体NH
3を脱離する温度に基づいて定められ、具体的には反応材がMgBr
2の場合、250℃〜350℃に設定してよい。S101において温度センサ54によって検出された温度が閾値X℃以上であると判定された場合、コントローラ34は、再循環用バルブ51を開制御し、ポンプ50を稼働する(手順S102)。これにより、排ガス配管23を流れる高温の排ガスの一部が再循環配管53に供給され、当該再循環配管53及び排ガス配管22を通って反応器12の排ガス通路部27に再度供給される。また、高温の排ガスの熱が排ガス通路部27から反応材充填部25に伝えられ、排ガスの熱によって反応材18から移動用NH
3が脱離し、その移動用NH
3が反応器12から吸着器13に回収される。排ガス通路部27を通過した排ガスは、排ガス配管23から排気通路7へ流出する。
【0043】
次に、コントローラ34は、温度センサ32及び圧力センサ33の検出値に基づいて、吸着器13のNH
3回収率を求め、当該回収率が閾値Y%以上であるか否かを判定する(手順S103)。吸着器13のNH
3回収率は、吸着器13に対する移動用NH
3の回収率であり、より具体的には移動用NH
3の総量と吸着器13に対する移動用NH
3の回収量との比率である。
【0044】
このとき、コントローラ34は、温度センサ32により検出された吸着器13の温度と圧力センサ33により検出された吸着器13内の圧力とに基づいて、吸着器13の吸着材19に吸着されているNH
3量(吸着器13のNH
3吸着量)を推定する。
【0045】
NH
3吸着量の推定は、
図5に示されるNH
3飽和蒸気圧特性及びNH
3吸着特性を用いて行われる。
図5(a)に示されるNH
3飽和蒸気圧特性は、吸着器13の温度とNH
3飽和蒸気圧との関係を示すグラフであり、吸着器13の温度が高くなるに従ってNH
3飽和蒸気圧が高くなるような特性を有している。
図5(b)に示されるNH
3吸着特性は、相対圧力と吸着器13のNH
3吸着量との関係を示すグラフであり、相対圧力が高くなるに従って吸着器13のNH
3吸着量が多くなるような特性を有している。相対圧力は、NH
3飽和蒸気圧P
satと吸着器13内の圧力Pとの比(P/P
sat)である。
【0046】
コントローラ34は、まずNH
3飽和蒸気圧特性を用いて、温度センサ32により検出された吸着器13の温度Tに対応するNH
3飽和蒸気圧P
satを求める。そして、コントローラ34は、NH
3飽和蒸気圧P
satと圧力センサ33により検出された吸着器13内の圧力Pとの比である相対圧力を算出する。そして、コントローラ34は、NH
3吸着特性を用いて、相対圧力に対応するNH
3吸着量S
nh3を求める。これにより、吸着器13のNH
3吸着量が推定される。
【0047】
そして、コントローラ34は、吸着器13のNH
3吸着量から、吸着器13のNH
3回収率を求める。例えば、吸着器13のNH
3吸着量が圧力保持用NH
3に相当する量であるときは、吸着器13のNH
3回収率は0%であり、吸着器13のNH
3吸着量が圧力保持用NH
3に相当する量と移動用NH
3の総量に相当する量との合計値であるときは、吸着器13のNH
3回収率は100%である。
【0048】
S103において、コントローラ34が吸着器13のNH
3回収率が閾値Y%よりも低いと判断したときは、手順S100から処理を再度実行する。一方、コントローラ34は、吸着器13のNH
3回収率が目標値以上であると判断したときは、バルブ21、排ガスバルブ24、及び再循環用バルブ51を閉制御し、ポンプ50を停止する(手順S104)。これにより、排気通路7から反応器12への排ガスの供給が終了し、反応器12から吸着器13への移動用NH
3の回収が終了する。これによって、
図4に示す処理が終了する。排気通路7から反応器12への排ガスの供給が停止するため、排ガスの熱によるエンジンオイルの加熱が終了する。なお、各バルブを閉制御する前に、コントローラ34は、エンジンオイルの温度が目標温度(例えば100℃)に達するまで、排ガスバルブ24を開弁状態に維持してもよい。これにより、排気通路7から反応器12への排ガスの供給が継続されるため、高温の排ガスの熱が排ガス通路部27からオイル通路部26に伝えられ、排ガスの熱によってエンジンオイルが加熱される。
【0049】
一方、S101において、温度センサ54によって検出された温度が閾値X℃より低いと判定された場合、コントローラ34は、温度センサ32及び圧力センサ33の検出値に基づいて、吸着器13のNH
3回収率を求め、当該回収率が閾値Y%以上であるか否かを判定する(手順S106)。S106において、回収率が閾値Y%以上であると判定された場合、S104の処理へ移行する。このように、再循環配管53を用いて排ガスを再循環させるまでもなく、目標の回収率に達している場合は、不要な再循環の処理を行わなくてもよい。
【0050】
一方、S106において、回収率が閾値Y%より低いと判定した場合、コントローラ34は、再循環用バルブ51を閉制御し、ポンプ50を停止する(手順S107)。すなわち、再循環の処理が行われていた場合は当該処理が停止され、再循環の処理が行われていなかった場合は、当該状態が維持される。これにより、反応器12から流出する排ガスが再度の熱回収を行える程度に高くない場合に、不要な再循環の処理が行われることを抑制できる。S107の処理の後、S100へ移行する。
【0051】
次に、本実施形態に係る化学蓄熱装置11の作用・効果について説明する。
【0052】
本実施形態に係る化学蓄熱装置11においては、排ガスの温度が所定温度以上になったときは、高温の排ガスの熱を利用して、反応材18からNH
3を脱離させる、いわゆる反応材18の再生を行う。これにより、反応材18の再生を十分に行うことができる。また、内燃機関が起動されたときは、NH
3と反応材18との化学反応によって熱を発生させてエンジンオイルを加熱し、排ガスの温度が所定温度以上になったときは、高温の排ガスの熱を利用してエンジンオイルを加熱する。これにより、エンジンオイルを十分に加熱することができる。また、排ガス供給系15は、排ガス配管23(流出流路)を流通する排ガスを排ガス配管22(供給流路)を介して反応器12へ再循環させる再循環配管53を有する。従って、再循環配管53で排ガスを再度反応器12に循環させることで、反応器12で回収されなかった熱を再度回収することができる。これにより、反応材18の再生を更に十分に行うことができる。
【0053】
また、再循環配管53には、再循環用バルブ51が設けられ、排ガス配管23には排ガスの温度を検出する温度センサ54が設けられる。また、排ガス供給制御部36は、温度センサ54によって検出される温度が所定の閾値以上である場合、再循環用バルブ51を開弁する。この場合、排ガス供給制御部36は、温度センサ54によって、排ガス配管23を流れる排ガスが十分な熱を有していることを把握できると共に、それを把握した上で再循環配管53により排ガスを再循環させることができる。
【0054】
排ガス供給制御部36は、温度センサ54によって検出される温度が所定の閾値より低く、且つ、吸着器13によるNH
3の回収率が所定の閾値より低い場合、再循環用バルブ51を閉弁する。この場合には、排ガス配管23を流れる排ガスの熱が不十分な場合に、排ガスの再循環が不要に行われることを抑制できる。
【0055】
排ガス配管22には、排ガスバルブ24が設けられ、排ガス配管23は、排気通路7に対して、排ガス配管22よりも下流側に接続され、再循環配管53には、排ガス配管23から排ガス配管22へ排ガスを流すポンプ50が設けられていている。この場合、排気通路7において排ガス配管22が排ガス配管23の上流側で接続されており、排ガス配管22に流入した排ガスが排ガス配管23から流出することになり、より高い温度の排ガスを反応器12に循環させることができる。従って、反応材18の再生を十分に行うことができる。また、ポンプ50を再循環配管53に設けているため、排ガスの再循環流量を調整することができる。
【0056】
排気通路7から排ガス配管22に供給される排ガスの温度を検出する温度センサ30が設けられ、排ガス供給制御部36は、温度センサ30によって検出される温度が所定の閾値以上である場合、排ガスバルブ24を開弁する。これにより、排ガスが十分に高温になったタイミングで排ガスバルブ24を開弁することができる。
【0057】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る化学蓄熱装置11における反応器12周辺の構成を詳細に説明するための概略構成図である。また、
図7は、
図6に示されたコントローラによる制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0058】
第2実施形態に係る化学蓄熱装置11では、排ガス配管22が流出流路として機能し、排ガス配管23が供給流路として機能する点が第1実施形態に係る化学蓄熱装置11と主に相違する。具体的には、排ガス配管22(流出流路)には、排ガスバルブ24が設けられている。排ガス配管22は、排気通路7に対して、排ガス配管23(供給流路)よりも上流側に接続されている。排ガス配管22における排ガスバルブ24及び再循環配管53よりも上流側には、反応器12から排気通路7へ排ガスを流すポンプ50が設けられていている。再循環配管53上には、再循環用バルブ51が設けられている。この場合、ポンプ50により排気通路7から排ガス配管23へ確実に排ガスを供給することができるとともに、排ガスの反応器12への供給流量を調整することができる。
【0059】
図7を参照して、第2実施形態に係る化学蓄熱装置11のコントローラ34による再生処理の制御内容について説明する。
図7に示すように、再生処理がスタートしたら、コントローラ34は、ポンプ50を稼働し、排ガスバルブ24を開制御し、バルブ21を開制御する(手順S200)。これにより、ポンプ50の吸引力により、排気通路7を流れる高温の排ガスが排ガス配管23に供給され、当該排ガス配管23を通って反応器12の排ガス通路部27に供給される。また、高温の排ガスの熱が排ガス通路部27から反応材充填部25に伝えられ、排ガスの熱によって反応材18から移動用NH
3が脱離し、その移動用NH
3が反応器12から吸着器13に回収される。排ガス通路部27を通過した排ガスは、排ガス配管22から排気通路7へ流出する。
【0060】
次のS101では第1実施形態の
図4における処理と同様の処理が行われる。S101において温度センサ54で検出された温度がX℃以上であった場合、コントローラ34は、再循環用バルブ51を開制御する(手順S202)。これにより、排ガス配管22を流れる高温の排ガスの一部が再循環配管53に供給され、当該再循環配管53及び排ガス配管23を通って反応器12の排ガス通路部27に再度供給される。また、高温の排ガスの熱が排ガス通路部27から反応材充填部25に伝えられ、排ガスの熱によって反応材18から移動用NH
3が脱離し、その移動用NH
3が反応器12から吸着器13に回収される。排ガス通路部27を通過した排ガスは、排ガス配管22から排気通路7へ流出する。その後のS103、S104の処理は、第1実施形態の
図4における処理と同様の処理が行われる。
【0061】
S101において温度センサ54で検出された温度がX℃より低い場合、第1実施形態の
図4におけるS016と同様の処理が行われる。S106において、回収率がY%より低いと判定された場合、コントローラ34は、再循環用バルブ51を閉制御する(手順S107)。すなわち、再循環の処理が行われていた場合は当該処理が停止され、再循環の処理が行われていなかった場合は、当該状態が維持される。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施形態には限定されない。例えば、排ガスバルブ24の位置は上述の実施形態に限定されるものではなく、反応器12に対して上流側と下流側のどちらに設けてもよい。排ガスバルブ24を排ガス配管22の排気通路7との接続箇所に設けるとともに、三方弁により構成することにより、排ガスバルブ24の上流側の排気通路7と排ガスバルブ24の下流側の排気通路7とを接続する流路と、排ガスバルブ24の上流側の排気通路7と排ガス配管22とを接続する流路とに切り替え可能に構成してもよい。また、排ガスバルブ24を設けることなく、常に排気通路7と排ガス配管22とを連通させてもよい。また、再循環用バルブ51の位置は上述の実施形態に限定されるものではなく、ポンプ50に対して上流側及び下流側の何れの位置に設けてもよい。また、ポンプ50の位置も特に限定されるものではなく、排ガス供給系15において排ガスを循環及び再循環させることが出来る限り、どの位置に設けられてもよく、差圧によって排ガスを循環及び再循環させることが出来る場合は、ポンプ50を省略してもよい。また、排気通路7に対する排ガス配管22,23の取付位置は上述の実施形態に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0063】
また、本実施形態に係る化学蓄熱装置の再生処理は、
図4及び
図7に示すフローチャートに限定されるものではなく、処理の一部を省略してもよく、処理の順序を変更してもよい。
【0064】
また、例えば上記第1実施形態では、反応器12は、反応材充填部25、オイル通路部26及び排ガス通路部27が交互に積層された構造を有している。しかし、反応器12の構成としては、特にそのような積層構造には限られず、オイル通路部26が反応材充填部25に隣接して配置され、排ガス通路部27が反応材充填部25及びオイル通路部26に隣接して配置されていればよい。また、上記第2及び第3実施形態でも、反応器12の構成としては、特に積層構造には限られず、オイル通路部26が反応材充填部25に隣接して配置されていればよい。
【0065】
また、上記実施形態では、反応媒体であるNH
3とMgBr
2等の組成式MXaで表される反応材18とを化学反応させて熱を発生させているが、反応媒体としては、特にNH
3には限られず、CO
2またはH
2O等を使用してもよい。反応媒体としてCO
2を使用する場合、CO
2と化学反応させる反応材18としては、MgO、CaO、BaO、Ca(OH)
2、Mg(OH)
2、Fe(OH)
2、Fe(OH)
3、FeO、Fe
2O
3またはFe
3O
4等が用いられる。反応媒体としてH
2Oを使用する場合、H
2Oと化学反応させる反応材18としては、CaO、MnO、CuOまたはAl
2O
3等が用いられる。
【0066】
また、上記実施形態では、オイルクーラ10とエンジン3との間に反応器12が配置されているが、特にその形態には限られず、例えばオイルパン8とオイルポンプ9との間に反応器12を配置してもよいし、或いはオイルポンプ9とオイルクーラ10との間に反応器12を配置してもよい。
【0067】
また、エンジンオイルが循環するオイル循環経路に反応器12をバイパスする経路を設け、反応材18の再生時には、エンジンオイルをバイパスさせて反応器12に流通させず、排ガスのみを反応器12に流すようにしてもよい。この場合には、排ガスの熱がエンジンオイルに奪われることが抑制されるため、反応材18の再生を早期に行うことができる。
【0068】
さらに、上記実施形態の化学蓄熱装置11は、エンジンオイルを加熱しているが、加熱対象としては、特にエンジンオイルには限られず、例えば水または空気等であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態の化学蓄熱装置11は、車両Sに搭載されているが、本発明は、車両以外にも、船舶等のように内燃機関を搭載した移動機械であれば、適用可能である。
【0070】
なお、排ガスの供給温度検出部である温度センサ30は必須の構成要素ではなく、省略してもよい(例えば
図6参照)。例えば、排ガスの供給温度検出部を省略し、対象の暖機を考慮して、排ガスを反応器に供給し続けてもよい。