【解決手段】可動鉄芯40は、断面略矩形のプレート状に形成された鉄芯部43と、該鉄芯部43における軸Lと直交する端面43aに設けられた弁支持部とにより形成されていて、該弁支持部は、上記端面43aから軸L方向に継目無く一体に延設された一対の支持アーム45,45により形成されており、該可動鉄芯における厚さ方向の両端に位置して互いに平行を成す一対の表面がそれぞれ、上記鉄芯部43と一対の支持アーム45,45とに亘って連続的に延びる単一の平面によって形成され、これら一対の支持アーム45,45の間に弁体3が支持されている。
軸方向の両端に第1端及び第2端をそれぞれ有していて、ソレノイドの励磁作用により該軸方向に変位する可動鉄芯と、圧縮流体が出入りする複数のポート及びこれらポートが連通された弁室を備えて成る弁ボディと、上記弁室に収容されていて、上記可動鉄芯の軸方向への変位により、該弁室内に設けられた弁座に接離して上記ポート間の接続状態を切換える弁体とを有する電磁弁であって、
上記可動鉄芯は、断面略矩形のプレート状に形成された上記第1端側の鉄芯部と、該鉄芯部における軸と直交する端面に設けられた上記第2端側の弁支持部とにより形成されていて、
該弁支持部は、上記可動鉄芯の幅方向に並設されると共に、鉄芯部の上記端面から軸方向に継目無く一体に延設された一対の支持アームにより形成されており、
該可動鉄芯における厚さ方向の両端に位置して互いに平行を成す一対の表面がそれぞれ、上記鉄芯部と一対の支持アームとに亘って連続的に延びる単一の平面によって形成されており、
これら一対の支持アームの間に上記弁体が支持されている、
ことを特徴とするもの。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の技術的課題は、ソレノイドの励磁によって可動鉄芯を変位させることで弁体を動作させる電磁弁において、より合理的な改良設計によって製造コストをより抑制することが可能なものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電磁弁は、軸方向の両端に第1端及び第2端をそれぞれ有していて、ソレノイドの励磁作用により該軸方向に変位する可動鉄芯と、圧縮流体が出入りする複数のポート及びこれらポートが連通された弁室を備えて成る弁ボディと、上記弁室に収容されていて、上記可動鉄芯の軸方向への変位により、該弁室内に設けられた弁座に接離して上記ポート間の接続状態を切換える弁体とを有する電磁弁であって、上記可動鉄芯は、断面略矩形のプレート状に形成された上記第1端側の鉄芯部と、該鉄芯部における軸と直交する端面に設けられた上記第2端側の弁支持部とにより形成されていて、該弁支持部は、上記可動鉄芯の幅方向に並設されると共に、鉄芯部の上記端面から軸方向に継目無く一体に延設された一対の支持アームにより形成されており、該可動鉄芯における厚さ方向の両端に位置して互いに平行を成す一対の表面がそれぞれ、上記鉄芯部と一対の支持アームとに亘って連続的に延びる単一の平面によって形成されており、これら一対の支持アームの間に上記弁体が支持されていることを特徴とするものである。
このように、本発明によれば、可動鉄芯の鉄芯部と弁支持部とを継ぎ目なく一体成形することで、部品点数を抑制して、可動鉄芯の構造や形態も簡素化することができるようになり、その結果、製造コストを抑制することが可能となる。
【0007】
上記電磁弁において、好ましくは、上記弁体は、上記一対の支持アームの間で該支持アームに対して軸方向に相対動可能に支持されていて、上記弁室内には、該弁体を上記弁座側に向けて常時付勢し、その付勢力によって該弁体を該弁座に着座させる弾性部材が設けられており、上記一対の支持アームには、可動鉄芯が上記弾性部材による弁体の付勢方向とは逆方向に変位するときに、上記弁座に着座した弁体の被係合部に係合することにより、該弁体を上記弾性部材の付勢力に抗して該弁座から離間させる弁係合部が設けられている。
このように、弁体を可動鉄芯に固定的に設けることなく別体とすることによって、可動鉄芯の弁支持部の設計自由度がさらに増すため、該弁支持部の構造や形態をより簡素化することが可能となる。
【0008】
このとき、より好ましくは、上記可動鉄芯が上記弾性部材による弁体の付勢方向に変位して該弁体が上記弁座に着座した状態において、上記弁係合部が軸方向において該弁体と非接触となっている。
そうすることにより、弁体が弁座に当接して着座するときに、可動鉄芯の運動エネルギーが弁体に直接作用するのを防ぐことができるため、弁体に対して軸方向に作用する外力を緩和することができる。よって、そのような外力が弁体に繰り返し作用することによる該弁体の摩耗や不可逆的な変形(永久歪み)を抑制することができ、該弁体の軸方向における寸法の経時的な変化を抑制することが可能となる。その結果、可動鉄芯のストローク量、すなわち弁座からの弁体の離間量の変動が抑制されて、該弁座を通じて流れる流体の流量や電磁弁の応答性の変動を可及的に抑制することが可能となる。
【0009】
また、さらにより好ましくは、上記弁座が、弁室における上記可動鉄芯の第2端と対向する底壁面に形成され、上記弁支アームの先端面が、軸と直交する平面によって形成され、上記底壁面には、該先端面と平行を成して対向する平面によって形成され、上記可動鉄芯の変位に伴って該先端面が接離する当接面が設けられており、上記可動鉄芯が第2端側に変位して弁体が上記弁座に着座した状態において、上記支持アームの先端面が上記アーム当接面に当接すると共に、上記弁係合部と上記弁体の被係合部との間に、可動鉄芯のストローク量よりも小さい軸方向の空隙が形成されている。
そうすることにより、上記弁体が弁座に当接して着座したときに、可動鉄芯が弁ボディに対して正確に位置決めされるため、電磁弁の応答性をより正確に管理することが可能となる。
【0010】
上記本発明に係る電磁弁において、好ましくは、上記弁室内には、可動鉄芯の第2端と対向する該弁室の底壁面に上記弁座としての第1弁座が形成されると共に、軸方向における該第1弁座と対向する位置に第2弁座が設けられ、上記弁体は、これら弁座間に形成された空間に配置される共に、上記弾性部材により上記第1弁座側に向けて常時付勢されており、上記一対の支持アームに設けられた弁係合部は、軸方向にバネ性を有する薄板から成っていて、上記弁係合部は、可動鉄芯が上記第2端側から第1端側へと変位するときに、上記第1弁座に着座した弁体の被係合部に係合することにより、該弁体を上記弾性部材の付勢力に抗して該第1弁座から離間させると共に上記第2弁座に着座させる。
このように、一対の支持アームに設けられた弁係合部を軸方向にバネ性を有する薄板によって形成したので、弁体が第2弁座に当接して着座するときに、弁体に対して作用する軸方向の外力を、該弁係合部が吸収することで緩和することができる。そのため、そのような外力が弁体に繰り返し作用することによる該弁体の摩耗や不可逆的な変形(永久歪み)を可及的に抑制することができる。
【0011】
このとき、より好ましくは、上記一対の支持アームは、それらの先端部に、互いに背向する外方向に屈曲した鉤状の係合爪をそれぞれ有しており、該一対の支持アームの先端部間には、金属薄板で断面略U字形に形成されたキャップ部材が架設されていて、該キャップ部材には、これら支持アームの係合爪に係合させるための一対の係合用開口と、これら一対の係合用開口間に配されて上記第1弁座に弁体が着座することを許容する弁用開口とが貫設されており、上記キャップ部材における弁用開口の周縁部が、上記弁係合部を形成し、上記弁体における第1弁座側を向いた端面が、上記被係合部を形成している。
このようにすることで、可動鉄芯の弁支持部に対する弁体の装着、及び上記弁係合部の形成を、金属薄板から成る簡単な構造のキャップ部材にて実現することが可能となる。
【0012】
そして、本発明に係る電磁弁において、好ましくは、上記弁体には、互いに逆方向に開口する一対のガイド溝が、それぞれ軸方向に沿って形成されていて、これら一対のガイド溝に対して上記一対の支持アームをそれぞれ軸方向に相対動可能に嵌合することにより、弁体が、該一対の支持アームの間において軸方向に摺動自在に支持されている。
そうすることにより、弁体が可動鉄芯の軸と直交する方向へ移動するのを防止することができるため、弁体の軸のぶれを防止することができ、弁体を確実に弁座に対して着座させることが可能となる。
【0013】
このとき、より好ましくは、上記弁座が、弁室における上記可動鉄芯の第2端と対向する底壁面に形成されていて、上記一対の支持アームは、それらの先端部における外方向を向いて互いに背向する外側面に、外方向に屈曲する鉤状の係合爪をそれぞれ有しており、上記一対の支持アームの先端部間には、金属薄板で断面略U字形状に形成されたキャップ部材が架設されていて、該キャップ部材には、これら支持アームの係合爪に係合させるための一対の係合用開口と、これら一対の係合用開口間に配されて上記弁座に弁体が着座することを許容する弁用開口とが貫設されており、上記キャップ部材における弁用開口の周縁部が上記弁係合部を形成し、該弁係合部は、可動鉄芯が上記第2端側から第1端側へと変位するときに、上記弁体における弁座側を向いた端面に係合する。
このようにすることで、可動鉄芯の弁支持部に対する弁体の装着、及び上記弁係合部の形成を、金属薄板から成る簡単な構造のキャップ部材にて実現することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明に係る電磁弁において、好ましくは、該電磁弁は、さらに、上記可動鉄芯の鉄芯部が軸方向に摺動自在に嵌合された中心穴を備えると共に、外周にコイルが捲回されたボビンと、該ボビンにおける上記弁ボディ側の端部に、上記中心穴の開口部を取り囲むように配設された磁性体リングとを備えたソレノイド部を有しており、上記ボビンの中心穴は、上記鉄芯部における厚さ方向の両端に位置して互いに平行を成す一対の表面とそれぞれ対向する一対の第1内面、及び、該鉄芯部の幅方向の両端に位置して互いに平行を成す一対の側端面とそれぞれ対向する一対の第2内面によって断面略矩形に形成されていて、上記一対の第1内面の幅方向の両側部には、第1内面間の距離をそれら両側部に挟まれた中間部よりも狭める段部が、軸方向に沿ってそれぞれ形成されると共に、周方向に対しては上記第1内面の両側部から第2内面へと延設されており、上記一対の第2内面には、一対の突条が軸方向に沿ってそれぞれ形成されており、上記中心穴内において、上記鉄芯部が、その一対の側端面が上記一対の突条によって軸方向に沿って摺動自在に支持されると共に、その一対の表面の両側部が上記第1内面の段部によって軸方向に沿って摺動自在に支持された状態で、上記磁性体リングを弁ボディ側へと貫通している。
このように、可動鉄芯における両側端面及び一対の表面の両側部が、ボビンの中心穴内において、突条及び段部によって摺動自在に支持されているため、可動鉄芯の軸がぶれるのを効果的に防止することができる。
【0015】
このとき、より好ましくは、上記中心穴の開口部には、上記一対の第2内面を軸方向に沿ってそれぞれ延出させた一対の係合突壁が設けられていて、上記磁性体リングには、これら突壁をそれぞれ挿入することにより、上記ボビンの中心穴と軸を合わせた状態で位置決めするための被係合穴部が貫設されている。
そうすることで、可動鉄芯が磁性体リングに接触することによるソレノイド部の効率低下をより確実に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る電磁弁によれば、可動鉄芯の鉄芯部と弁支持部とを継ぎ目なく一体成形することで、部品点数を抑制して、可動鉄芯の構造や形態も簡素化することができるようになり、その結果、製造コストを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1−
図15は、本発明に係る電磁弁の一実施形態を示している。本発明に係る電磁弁1は、大きく分けると、エア等の圧縮流体が流れる流路を切り換えるための弁体3を有する主弁部2と、主弁部2における弁体3を駆動するソレノイド部7とによって構成されていて、これら主弁部2とソレノイド部7とは、電磁弁1の軸L方向において直列に結合されている。
【0019】
上記主弁部2は、
図1又は
図2から分かるように、矩形の断面形状に形成された弁ボディ10を有している。この弁ボディ10の一方の側面には、供給ポートPと、出力ポートAと、排出ポートRとが設けられている。また、上記弁ボディ10の内部には、上記供給ポートPと出力ポートAと排出ポートRとがそれぞれ連通する弁室11が形成されている。なお、これら各ポートにはガスケット29が装着されている。
【0020】
図1又は
図4に示すように、上記弁室11には、上記弁体3が接離する第1弁座12及び第2弁座13が設けられ、これら第1弁座12と第2弁座13とが上記軸L方向において対向して配設されている。上記第1弁座12は、弁室11における底壁面14に形成されており、該底壁面14の略中央位置に形成された供給通孔15の周りを囲んだ状態で、ソレノイド部7側に向けて突出している。また、供給通孔15は、上記底壁面14よりも弁ボディ10の底側に設けられた、上記供給ポートPに接続する供給用連通路16と連通しており、それにより、上記供給ポートPが、該供給通孔15を通じて弁室11内に連通するように構成されている。
【0021】
一方、上記第2弁座13は、弁室11における、弁ボディ10の開口端側(ソレノイド部7側)に装着されたリテーナ17に設けられている。このリテーナ17は、樹脂製材料から成っているもので、上記弁室11の内周壁に嵌合する環状外周部20と、環状外周部20に取り囲まれる共に、上記第1弁座12に向けて突出する突出部19とを有している。
【0022】
図1又は
図2に示すように、上記リテーナ17における突出部19の先端(頂部)には、上記排出ポートRに連通する排出通孔21が形成されており、当該排出通孔21の周囲に円環状の上記第2弁座13が形成されている。上記環状外周部20は、軸L方向の両側に弁室11内の気密を保つためのシール部材23がそれぞれ装着されていて、該軸L方向における、これら2つのシール部材23間には環状溝22が形成されている。この環状溝22は、上記排出通孔21に連通する排出用連通路24と連通しており、それにより、上記排出ポートRが、該環状溝22、排出用連通路24、排出通孔21を通じて弁室11内に連通するように構成されている。また、上記突出部19と環状外周部20との間には後述する可動鉄芯40の一対の支持アーム45,45が挿通される、一対の挿通孔25,25が形成されている(
図1又は
図9参照)。
【0023】
図1又は
図4に示すように、上記弁室11内において、上記第1弁座12及び第2弁座13の両弁座間との間に形成された空間には、ポペット式の上記弁体3が収容されている。上記弁体3は、例えばゴム等の弾性とシール性とを併せ備えた樹脂素材で略矩形状に形成されていて、この弁体3が、第1弁座12及び第2弁座13に接離することで、上記各ポートP,A,R間の接続状態を切り換えるように構成されている。また、弁体3と、上記弁ボディ2に対して固定関係にある上記リテーナ17との間には、コイルばねから成る弾性部材26が介装されている。それにより、該弁体3が、第1弁座12に向けて常時付勢されており、ソレノイド部7への非励磁状態(消磁状態)においては、この弾性部材26の付勢力によって、該弁体3を第1弁座12に着座させるように構成されている(
図1−
図3参照)。なお、本実施形態では、リテーナ17における上記突出部19の基端側が、上記弾性部材26のばね座として機能する。
【0024】
また、
図8に示すように、上記弁体3には、幅方向(
図8において左右方向)の端面に、互いに逆方向に開口する一対のガイド溝3a,3aが、それぞれ上記軸L方向に沿って形成されている。そして、本実施形態では、これらガイド溝3a,3aに対して、後述の可動鉄芯40における一対の支持アーム45,45が嵌合することにより、上記弁体3が、該一対の支持アーム45,45間において軸L方向に摺動自在に支持されている。ガイド溝3a,3aを設けたことによって、弁体3が可動鉄芯40の軸と直交する方向に移動するのを防止することができるため、弁体3の軸のぶれを防止することができ、該弁体3を確実に第1弁座12或いは第2弁座13に対して着座させることができる。
【0025】
次いで、上記ソレノイド部7について説明する。例えば、
図1又は
図7に示すように、このソレノイド部7は、軸L方向の一端側(
図1において上側)がボンネット31で閉じられた、横断面矩形状の磁気カバー30を有している。そして、
図1に示すように、この磁気カバー30の内部には、外周に励磁コイル32が捲回された中心穴60aを有するボビン60と、この中心穴60aに装着された固定鉄芯35と、該中心穴60a内において、軸L方向に摺動可能に嵌合された可動鉄芯40と、ボビン60の弁ボディ2側の端部に、上記中心穴60aの開口部を取り囲むように配設された磁性体リング80とが設けられている。
図1又は
図4に示されているように、上記ボンネット31とボビン60との間、及びボビン60と磁性体リング80との間には、それぞれ環状溝60bが凹設され、該環状溝60bにシール部材38がそれぞれ取り付けられている。また、磁気カバー30の側面からは、上記励磁コイル32に電気的に接続される一対のコイル端子39,39が突出し、これらのコイル端子39,39にリード線がそれぞれ接続される。
【0026】
上記固定鉄芯35は、金属製材料で略矩形プレート状に形成されており、その軸L方向の一端側(
図1における上端側)にフランジ部35aが設けられている。該固定鉄芯は35は、上記フランジ部35aを、ボビン60におけるボンネット31側の端部と係合させた状態で、該ボビン60と上記ボンネット31との間で挟持されている。
【0027】
一方、上記可動鉄芯40は、ソレノイド部7の励磁作用によって上記軸L方向に変位し、その軸L方向の変位により、上記弁体3を、第1弁座12或いは第2弁座13の何れかに着座させるように構成されている。本実施形態においては、励磁コイル32が通電状態(励磁状態)にあるとき、
図4−
図6に示すように、上記可動鉄芯40は固定鉄芯35に吸着されて、上記弁体3が第1弁座12を開放して第2弁座13に着座し、上記供給ポートPと出力ポートAとが弁室11を介して連通するように成っている。
これとは逆に、非通電状態(消磁状態)にあるときは、
図1−
図3に示すように、上記可動鉄芯40は固定鉄芯35から離間して、上記弁体3が第2弁座13を開放して第1弁座12に着座し、上記出力ポートAと排出ポートRとが弁室11を介して連通するように構成されている。
【0028】
上記可動鉄芯40は、上記軸L方向の両端に第1端及び第2端をそれぞれ有し、第1端側の断面略プレート状の鉄芯部43と、該鉄芯部43における軸Lと直交する端面43aに設けられた上記第2端側の弁支持部(後述の支持アーム45)とにより形成されている。上記鉄芯部43は、軸L方向において固定鉄芯35側に配されていて、上記励磁コイル32への通電又は非通電により、固定鉄芯35に対して吸着或いは離間する部分となっている。
【0029】
図1又は
図4に示すように、上記弁支持部は、上記鉄芯部43の端面43aから軸L方向に継目無く一体に延設された一対の支持アーム45,45によって形成されている。これら支持アーム45,45は、上記可動鉄芯40の幅方向(
図1において左右方向)の両端に設けられ、該幅方向において軸Lに関して対称を成して並設されている。本実施形態において、可動鉄芯40は、磁性を有する単一の金属板から成り、このような金属板を打ち抜くことで、上記鉄芯部43と弁支持部(即ち、支持アーム45)とが一体的に形成されている。それにより、上記可動鉄芯40は、
図2又は
図9−
図11に示すように、該可動鉄芯40における厚さ方向(
図2の左右方向)の両端に位置して互いに平行を成す一対の表面50,50がそれぞれ、上記鉄芯部43と一対の支持アーム45,45とに亘って連続的に延びる単一の平面によって形成されている。
【0030】
図1又は
図4に示すように、上記一対の支持アーム45,45は、上記リテーナ17に開設された上記一対の挿入孔25,25を通じて、上記弁ボディ3における弁室11内まで延出している。そして、当該弁室11内において、上述のように、上記弁体3に形成された上記一対のガイド溝3a,3aに対して、これら一対の支持アーム45,45がそれぞれ軸L方向に相対動可能に嵌合されている。それにより、上記弁体3が、該一対の支持アーム45,45間において上記軸L方向に摺動自在に支持されている(
図8参照)。
このように、弁体3を可動鉄芯40に固定的に設けることなく別体とすることによって、可動鉄芯40の弁支持部の設計自由度がさらに増すため、該弁支持部の構造や形態をより簡素化することが可能となる。
【0031】
また、
図3又は
図6に示すように、上記一対の支持アーム45,45は、それらの先端部に、互いに背向する外方向に屈曲した鉤状の係合爪47,47をそれぞれ有している。この係合爪47,47は、支持アーム45の先端面46から鉄芯部43側に向けて上り勾配に形成された傾斜面47aと、軸Lと直交する端面から成る係合面47bとから成っている。
【0032】
さらに、
図3又は
図6、
図9に示すように、上記一対の支持アーム45,45の先端部間には、ばね性を有する金属薄板で断面略U字形に形成されたキャップ部材70が架設されている。上記キャップ部材70には、上記係合爪47,47に係合させるための一対の係合用開口71,71と、これら一対の係合用開口71,71間に配されて、上記第1弁座12に弁体3が着座することを許容する弁用開口72とが貫設されている。
【0033】
図9に示すように、上記キャップ部材70は、上記軸Lと直交方向に延びて該軸L方向にバネ性を有する薄板状の弁係合部73と、該係合部73の左右両端側から略垂直方向に延出する一対の係止部74,74とを有し、これら弁係合部73と係止部74との連結部分が滑らかに連続するよう弧状を成している。上記弁係合部73は、可動鉄芯40が固定鉄芯35に吸着された際に、
図6のように、第1弁座12に着座した弁体3の被係合面4(第1弁座12側を向く端面)に係合する。それによって、該弁体3を、上記弾性部材26の付勢力に抗して該第1弁座12から離間させると共に、上記第2弁座13に着座させるように構成されている。また、この弁係合部73には、上記弁用開口72が貫設されていて、
図3に示すように、弁体3がこの弁用開口72を通じて、上記第1弁座12に着座することができるように成っている。
【0034】
また、
図9に示すように、上記係合用開口71,71は、矩形状に形成された開口縁によって形成されており、上記弁係合部73と上記係止部74とに跨る位置に設けられている。なお、係止部74の先端側には、外方に屈曲する屈曲部75が設けられている。このように、本実施形態においては、可動鉄芯40の弁支持部(支持アーム45)に対する弁体3の装着、及び弁係合部73の形成を、金属薄板から成る簡単な構造のキャップ部材70にて実現することが可能となっている。
【0035】
上記キャップ部材70を、上記支持アーム45,45間に取付ける場合には、次のようにして行う。先ず、
図9に示すように、可動鉄芯40、リテーナ17、弾性部材26、弁体3、キャップ部材70を準備したのち、上記リテーナ17の突出部19の外周に、上記コイルばねから成る弾性部材26を取り付ける。それから、上記可動鉄芯40と、上記弾性部材26が介装されたリテーナ17との軸を合わせ、一対の支持アーム45,45を、リテーナ17の軸L方向の一方側(突出部19と反対側)から該リテーナ17の挿通孔25,25に挿通する。それと共に、弁体3を、可動鉄芯40(支持アーム45)とは反対側(突出部19側)から、弾性部材26の付勢力に抗して該リテーナ17側に向けて押し込み、上記挿通孔25,25から延出する一対の支持アーム45,45間に該弁体3のガイド溝3a,3aを嵌合させた状態とする(
図10参照)。その状態で、上記キャップ部材70を該支持アーム45,45間に取り付ける。
【0036】
その際、
図10に示すように、上記キャップ部材70の開口側(係止部74側)を上記支持アーム45,45の先端面46,46と対向させながら、支持アーム45,45に対して相対的に押し込むと、キャップ部材70は、自由端である係止部74の上記屈曲部75が、上記支持アーム45の先端部に設けられた係合爪47の傾斜面47aに乗り上がり、キャップ部材70の開口が弾性的に拡開する。そして、係止部74の係止用開口71の開口縁(自由端側)が、上記係合爪47の係合面47bに到り、当該係止用開口71の位置と係合爪47の位置とが合致すると、拡開したキャップ部材70が弾性復帰し、
図11に示すように、係合爪47が係止用開口71に嵌り、支持アーム45に対するキャップ部材70の取付が完了する。
【0037】
また、
図3、
図4又は
図6に示すように、上記一対の支持アーム45,45の上記先端面46,46は、軸Lと直交する平面に形成されている。一方、上記弁室11内において、これら先端面46,46と対向する上記底壁面14には、該先端面46,46が接離する一対のアーム当接面27,27が形成されている。一対のアーム当接面27,27は、上記支持アーム45の先端面46と平行を成して対向する平面によって形成されている。また、これらアーム当接面27,27は、底壁面14に設けられた第1弁座12を挟んで、幅方向(
図3において左右方向)両側に設けられ、それぞれソレノイド部7側に向けて突設されている。底壁面14から弁室11へのアーム当接面27の突出高さは、底壁面14から弁室11への第1弁座12の突出高さよりも低く成っている。すなわち、軸L方向において、アーム当接面27は第1弁座12よりも底壁面14側に位置している。
【0038】
本実施形態においては、
図1及び
図3に示すように、上記可動鉄芯40が上記第2端側(第1弁座12側)に変位し、弁体3が、上記第1弁座12に着座した状態においては、上記一対の支持アーム45,45の先端面46,46が、上記アーム当接面27,27に当接するように成っている。その際、
図3に示すように、上記キャップ部材70における弁係合部73は、軸L方向において該弁体3と非接触となり、該弁係合部73と、弁体3における、第1弁座12側を向く端面から成る上記被係合部4との間には、上記可動鉄芯40のストローク量よりも小さい空隙Gが形成されるように構成されている。
【0039】
一方、このような可動鉄芯40を収容するボビン60において、
図12に示すように、該ボビン60の中心穴60aには、上記可動鉄芯40(鉄芯部43)の厚さ方向(
図12において上下方向)の両端に位置する上記一対の表面50,50に対して、それぞれ対向する一対の第1内面61,61が形成されている。また、該中心穴60aは、可動鉄芯40(鉄芯部43)の幅方向(
図12において左右方向)の両端に位置して互いに平行を成す一対の側端面51,51とそれぞれ対向する一対の第2内面65,65を有し、これら第1内面61と第2内面65とによって断面略矩形状に形成されている。
【0040】
上記一対の第1内面61,61における幅方向の両側部62,62には、これら第1内面61,61間の距離をそれら両側部62,62に挟まれた中間部63よりも狭める段部64が形成されている。この段部64は、上記軸L方向に沿って形成されると共に、この中心穴60aの周方向に対しては、上記第1内面61の両側部62,62から上記第2内面65へと延設している。また、上記一対の第2内面65,65には、一対の突条66,66が上記軸L方向に沿ってそれぞれ形成されている。上記突条66は、第2内面65,65から互いに対向する向き(内向き)に円弧状に突設されて形成されている。
【0041】
それにより、上記ボビン60の中心穴60aにおいて、上記可動鉄芯40の鉄芯部43が、その一対の側端面51,51が上記一対の突条66,66によって軸L方向に沿って摺動自在に支持されると共に、一対の表面50,50の両側部(
図12において左右方向両側部)が上記段部64によって軸L方向に摺動自在に支持された状態で、上記磁性体リング80を弁ボディ2側へと貫通している。このように、本実施形態では、可動鉄芯40における両側端面51,51及び一対の表面50,50の両側部が、ボビン60の中心穴60a内において、突条66及び段部64により摺動自在に部分的に支持されているため、可動鉄芯40の軸がぶれるのを効果的に防止することができる。
【0042】
さらに、
図7又は
図13−
図15に示すように、上記中心穴60aにおける弁ボディ2側の開口部には、上記一対の第2内面65,65を上記軸L方向に沿って延出する一対の係合突壁67,67が設けられている。また、中心穴60aを取り囲むように配置された上記磁性体リング80には、上記係合突壁67,67にそれぞれ挿通することにより、上記ボビン60の中心穴60aと中心軸を合わせた状態で位置決めするための、被係合穴部81が貫通されている。
【0043】
図7又は
図13−
図15に示すように、上記ボビン60の係合突壁67は、上記可動鉄芯40の両側部51,51に対向する側壁部68と、この側壁部68の両側(
図13における上下方向両側)に半円形状の弧状壁部69とから成っている。一方、上記磁性体リング80の被係合孔部81は、
図7、
図14又は
図15に示すように、上記可動鉄芯40の一対の表面50,50に対向して平行に延びる一対の第1縁部82,82と、これら縁部82,82の両側に設けられた第2縁部83,83とから成っている。上記第1縁部82,82間の距離は、上記可動鉄芯40の板厚(一対の表面50,50間の距離)、及び、中心穴60aにおける第1内面61の中間部63,63間よりも大きく形成されている。
また、上記第2縁部83は、実質的に、上記係合突部67に係合される部分であって、上記第1縁部82と直交する向きに延びる直線部84と、直線部84の両側に形成された半円弧状の弧状部85とから成っている。上記直線部84は、係合突壁67における上記側壁部68の外周面に係合し、また、弧状部85は、該係合突壁67における弧状端部69の外周面に係合するように構成されている。
【0044】
なお、この磁性体リング80は、
図14に示すように、平面視略矩形状の外周面を有しており、その外周面における幅方向両側には、内向きに窪む一対の凹部86,86が設けられている。一対の凹部86,86は、上記弁ボディ2の弁室11内に形成された一対の内向き突部28,28にそれぞれ係合されている。
本実施形態においては、上述のように、中心穴60aの開口部に磁性体リング80を取付ける際、
図14に示すように、上記ボビン60における係合突部67と、当該磁性体リング80における被係合穴部81とを係合させると共に、凹部86と内向き突部28とを係合させることにより、磁性体リング80と、ボビン60の中心穴60aとの軸心が一致されるように成っている。さらに、磁性体リング80をボビン60の開口部に取り付けた状態においては、上記係合突部67が、上記可動鉄芯40の両側部51,51と磁性体リング80の第2縁部83との間に介在する。そして、その状態においては、磁性体リング80の第1縁部82と、可動鉄芯40の表面50との間にクリアランスが設けられるので、該可動鉄芯40と磁性体リング80とが直接接触することがなくなり、ソレノイド部7の効率低下をより確実に防止することが可能となる。
【0045】
上記構成を有する電磁弁1において、上記励磁コイル32が非通電の状態(消磁状態)では、
図1及び
図2に示すように、可動鉄芯40が固定鉄芯35から離間している。この消磁状態にあるとき、上記弁体3は、リテーナ17を介して作用する弾性部材26のばね付勢力により、上記第1弁座12に着座して、上記供給ポートPと弁室11との連通を遮断する。この際、第1弁座12と軸L方向で対向する位置にある第2弁座13は開放されており、上記出力ポートAが、弁室11内の上記排出通孔21及び排出用連通路24を介して排出ポートRに連通している状態に成っている。そのため、外部に接続する排出ポートRを通じて弁室11内の圧縮流体は外部に排出される。
【0046】
本実施形態においては、上記消磁状態にあるとき、
図3に示すように、可動鉄芯40の一対の支持アーム45,45は、その先端面46が上記弁室11の底壁部14から突出する一対のアーム当接面27,27に当接した状態に成っている。この状態で、弁体3は、上記一対の支持アーム45,45間において、キャップ部材70における上記弁係合部73の弁用開口72を介して第1弁座12に着座している。このとき、該弁体3における上記第1弁座12と対向する端面(被係合部4)と、上記キャップ部材70の弁係合部73とは、軸L方向において非接触と成っていて、これら被係合部4と弁係合部73との間には、上記可動鉄芯40のストローク量よりも小さい空隙Gが形成されている。
【0047】
この状態から、励磁コイル32に通電すると(励磁状態)、上記可動鉄芯40は固定鉄芯35に吸着される。
図4−
図6に示すように、可動鉄芯40は、上記弁体3を第1弁座12側に向けて付勢する弾性部材26の付勢力に抗して、固定鉄芯35側に向けて軸L方向に変位する。
図6に示すように、この軸L方向への変位に伴い、該可動鉄芯40の一対の支持アーム45,45は、アーム当接面27から離間する共に、支持アーム45,45間に装着されたキャップ部材70の弁係合部73が、弁体3の被係合面4に係合する。そして、第1弁座12に着座している弁体3は、支持アーム60,60間でガイド溝3a,3aが支持された状態で第2弁座13側へと変位する。
【0048】
この励磁状態への切換時において、上述したように、上記弁体3における被係合部4と、キャップ部材70の弁係合部73との間には、上記可動鉄芯40のストローク量より小さい空隙Gが形成されている。そのため、当該励磁状態に切り換えると、可動鉄芯40の変位と同時に弁体3が第2弁座13側に変位するのではなく、被係合部4と弁係合部73との空隙Gが縮まり、当該空隙Gがゼロになった時点で、当該弁係合部73が弁体3の被係合部4に係合し、それにより、該弁体3が第2弁座13側に移動するように成っている。
【0049】
そして、可動鉄芯40の吸着動作により、上記弁体3が第2弁座13に着座することで、上記排出通孔21が閉鎖される。その結果、第2弁座13と軸L方向で対向する位置にある第1弁座12は開放され、上記供給ポートPが、弁室11内の上記供給通孔15を介して出力ポートAに連通する状態になり、上記供給ポートPから供給される圧力流体が、該出力ポートAを通じて出力されるように成っている(
図4−
図6参照)。このとき、本実施形態においては、一対の支持アーム45,45に設けられたキャップ部材70の弁係合部73が、軸L方向にバネ性を有する薄板から成っているため、該弁体3が第2弁座13に当接して着座するときに、弁体3に作用する軸L方向の外力を、該弁係合部73が吸収することで緩和することができる。そのため、そのような外力が弁体3に繰り返し作用することによる該弁体3の摩耗や不可逆的な変形(永久歪み)を可及的に抑制することができる。
【0050】
この状態から、上記励磁コイル32への通電をオフとし、
図1−
図3に示す消磁状態に切り替えると、上記可動鉄芯40が固定鉄芯35から離間すると共に、上記弁体3が弾性部材26の付勢力により第2弁座13から離間する。そして、上述したように、弁体3により第1弁座12が閉鎖されると共に、第2弁座13が開放されて、出力ポートAが弁室11を介して排出ポートRと連通し大気開放状態となる。このとき、本実施形態においては、上記一対の支持アーム45,45の平坦な先端面46,46が、該先端面46,46と平行を成す一対のアーム当接面27,27に当接する為、可動鉄芯40が弁ボディ2に対して正確に位置決めされる。それにより、電磁弁の応答性をより正確に管理することができる。
【0051】
また、上記支持アーム45の先端面46がアーム当接面27に当接する際、上記弁体3は、その第1弁座12に対向する被係合部4と、上記キャップ部材70における弁係合部73との間に上記空隙Gを設けた状態で当該第1弁座12に着座するように構成されている。このように構成したことで、この弁体3が第1弁座12に着座するときに、上記可動鉄芯40の運動エネルギーが該弁体3に直接作用するのを防止することができるので、弁体3に対して軸L方向に作用する外力を緩和することができる。よって、そのような外力が上記弁体3に繰り返し作用することによる該弁体3の摩耗や不可逆的な変形(永久ひずみ)を抑制することができ、該弁体3の軸L方向における寸法の経時的変化を抑制することができる。その結果、可動鉄芯40のストローク量、すなわち第1弁座12からの弁体3の離間量の変動が抑制されて、該弁座12を通じて流れる流体の流量や、電磁弁の応答性の変動を可及的に抑制することができる。
【0052】
以上のように、本発明に係る電磁弁1によれば、上記可動鉄芯40の鉄芯部43と弁支持部とを継ぎ目なく一体成形することで、部品点数を抑制して、可動鉄芯40の構造や形態も簡素化することができるようになり、その結果、製造コストを抑制することが可能となる。
【0053】
本発明に係る電磁弁について説明してきたが、本願発明は上記の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない範囲で様々な設計変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、図示した例では3ポート式電磁弁であるが、ポート数はこのようなものに限定されるものではなく、2ポートであっても構わない。