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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-207258(P2017-207258A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】熱媒ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/22 20060101AFI20171027BHJP
   F23N 5/02 20060101ALI20171027BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   F24H1/22 301A
   F23N5/02 350E
   F23N5/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-101379(P2016-101379)
(22)【出願日】2016年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 遼太
【テーマコード(参考)】
3K003
3K005
【Fターム(参考)】
3K003EA07
3K003FA01
3K003FB01
3K005AB13
3K005AC05
3K005BA02
3K005DA01
(57)【要約】
【課題】熱媒ボイラ2の起動時に、燃焼制御部71による制御方法を変更することなく熱媒油の温度上昇速度を緩やかに制御し、循環ポンプ35に対する熱衝撃を緩和し、循環ポンプ35を長寿命化すること。
【解決手段】熱媒ボイラシステム1は、予め設定された目標温度と熱媒油温度検出部36により計測された熱媒検出温度との偏差に基づいて熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御する燃焼制御部71と、熱媒ボイラ2が起動されたことを検知する起動検知部72と、起動検知部72により熱媒ボイラ2の起動が検知された時点tにおける熱媒油温度検出部36による検出温度T及び予め設定された単位時間あたりの昇温速度p(度/時間)に基づいて、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)を式1により設定する起動時目標温度設定部73と、を備える。
SP(t)=p(t−t)+T(式1)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて熱媒油の加熱を行う熱媒ボイラと、
前記熱媒ボイラと熱使用部とを接続し、前記熱媒ボイラと前記熱使用部との間で熱媒油を循環させる熱媒循環ラインと
前記熱媒循環ラインに配置される循環ポンプと、
熱媒油の熱媒温度を検出する熱媒油温度検出部と、
前記熱媒ボイラの燃焼を制御する制御部と、
を備える熱媒ボイラシステムであって、
前記制御部は、
予め設定された目標温度と前記熱媒油温度検出部により計測された熱媒検出温度との偏差に基づいて、前記熱媒ボイラの燃焼状態を制御する燃焼制御部と、
前記熱媒ボイラが起動されたことを検知する起動検知部と、
前記起動検知部により前記熱媒ボイラの起動が検知された時点tにおける前記熱媒油温度検出部による検出温度T及び予め設定された単位時間あたりの昇温速度p(度/時間)に基づいて、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)を式1により設定する起動時目標温度設定部と、
を備える熱媒ボイラシステム。
SP(t)=p(t−t)+T (式1)
【請求項2】
前記起動時目標温度設定部は、さらに、
時間tにおける目標温度SP(t)が、予め設定された第1目標温度T1に到達すると、第1目標温度T1に到達して以降の時間における目標温度SP(t)を前記第1目標温度T1に固定する、請求項1に記載の熱媒ボイラシステム。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、
前記熱媒ボイラに対する停止指示を検知する停止指示検知部と、
前記停止指示検知部により前記熱媒ボイラに対する停止指示が検知された時点tにおける前記熱媒油温度検出部による検出温度T及び予め設定された単位時間あたりの降温速度p(度/時間)に基づいて、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)を式2により設定する停止時目標温度設定部と、
を備える、請求項1又は請求項2に記載の熱媒ボイラシステム。
SP(t)=T−p(t−t) (式2)
【請求項4】
前記停止時目標温度設定部は、さらに、
時間tにおける目標温度SP(t)が、予め設定された第2目標温度T2に到達すると、第2目標温度T2に到達して以降の時間における目標温度SP(t)を前記第2目標温度T2に固定する、請求項3に記載の熱媒ボイラシステム。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、
前記熱媒油温度検出部による検出温度が、予め設定された停止目標温度T3に到達すると、前記熱媒ボイラの燃焼を停止させる熱媒ボイラ停止部を備える、請求項3に記載の熱媒ボイラシステム。
【請求項6】
前記循環ポンプは、前記熱媒循環ラインにおける熱媒ボイラの出口側に設置される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の熱媒ボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒ボイラの燃焼により熱媒油を加熱し、加熱した熱媒油を負荷機器としての熱使用部との間で循環ポンプにより循環させることで該熱使用部に対して熱を供給する熱媒ボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱媒体として熱媒油を使用することで、蒸気よりも高い温度(例えば、180度〜300度)の熱を供給することができる熱媒ボイラが知られている。熱媒ボイラの起動時においては、通常、熱媒油は低温(例えば常温)状態にある。このため、熱媒ボイラの起動時に、熱媒ボイラを高燃焼で燃焼させると熱媒油温度が急激に上がり、その熱衝撃で循環ポンプのケーシングに歪みが生じる可能性、また場合によっては割れる可能性があることが知られている。
【0003】
熱媒ボイラの起動時において、熱媒油の温度が所定の温度に上昇するまで、熱媒油の加温操作を行う、熱媒ボイラの起動制御方法が知られている(特許文献1)。
特許文献1には、熱媒ボイラの起動時に、バーナを設定時間tだけ稼動させて熱媒油を加熱し、熱媒油の温度をある程度まで上昇させてその粘度を低下させた後、循環ポンプを設定時間tだけ稼動させて、温度が低い熱媒油を熱媒ボイラへ送り、再度、バーナを設定時間tだけ稼動させてその熱媒油を加熱する、熱媒ボイラの起動制御方法が記載されている。そして、これらの設定時間tによるバーナの稼動と、設定時間tによる循環ポンプの稼動とを、熱媒ボイラ出口部における熱媒油温度が予め設定した値Tに達するまで、交互に繰り返し、熱媒ボイラ出口部における熱媒油温度が予め設定した値Tに達した後は、起動制御を終了して通常の運転制御に切り替える熱媒ボイラの起動制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−019598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱媒ボイラで使用される循環ポンプには、通常、温度上昇速度に関する要求仕様が定められており、循環ポンプの起動時等には、当該要求仕様に沿って、熱媒油の温度上昇速度を緩やかに制御することが求められている。
【0006】
本発明は、熱媒ボイラの起動時等に、燃焼制御部による制御方法を変更することなく熱媒油の温度上昇速度を緩やかに制御し、循環ポンプに対する熱衝撃を緩和し、循環ポンプを長寿命化できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料を燃焼させて熱媒油の加熱を行う熱媒ボイラと、前記熱媒ボイラと熱使用部とを接続し、前記熱媒ボイラと前記熱使用部との間で熱媒油を循環させる熱媒循環ラインと前記熱媒循環ラインに配置される循環ポンプと、熱媒油の熱媒温度を検出する熱媒油温度検出部と、前記熱媒ボイラの燃焼を制御する制御部と、を備える熱媒ボイラシステムであって、前記制御部は、予め設定された目標温度と前記熱媒油温度検出部により計測された熱媒検出温度との偏差に基づいて、前記熱媒ボイラの燃焼状態を制御する燃焼制御部と、前記熱媒ボイラが起動されたことを検知する起動検知部と、前記起動検知部により前記熱媒ボイラの起動が検知された時点tにおける前記熱媒油温度検出部による検出温度T及び予め設定された単位時間あたりの昇温速度p(度/時間)に基づいて、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)を式1により設定する起動時目標温度設定部と、を備える熱媒ボイラシステムに関する。
SP(t)=p(t−t)+T (式1)
【0008】
前記起動時目標温度設定部は、さらに、時間tにおける目標温度SP(t)が、予め設定された第1目標温度T1に到達すると、第1目標温度T1に到達して以降の時間における目標温度SP(t)を前記第1目標温度T1に固定することが好ましい。
【0009】
前記制御部は、さらに、前記熱媒ボイラに対する停止指示を検知する停止指示検知部と、前記停止指示検知部により前記熱媒ボイラに対する停止指示が検知された時点tにおける前記熱媒油温度検出部による検出温度T及び予め設定された単位時間あたりの降温速度p(度/時間)に基づいて、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)を式2により設定する停止時目標温度設定部と、を備えることが好ましい。
SP(t)=T−p(t−t) (式2)
【0010】
前記停止時目標温度設定部は、さらに、時間tにおける目標温度SP(t)が、予め設定された第2目標温度T2に到達すると、第2目標温度T2に到達して以降の時間における目標温度SP(t)を前記第2目標温度T2に固定することが好ましい。
【0011】
前記制御部は、さらに、時間tにおける温度Tが、予め設定された熱媒温度の第2目標温度T2に到達すると、前記熱媒ボイラの燃焼を停止させる熱媒ボイラ停止部を備えることが好ましい。
【0012】
前記循環ポンプは、前記熱媒循環ラインにおける熱媒ボイラの出口側に設置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱媒ボイラの起動時等に、燃焼制御部による制御方法を変更することなく熱媒油の温度上昇速度を緩やかに制御し、循環ポンプに対する熱衝撃を緩和し、循環ポンプを長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例の熱媒ボイラシステムの概略を示す図である。
図2】本発明の実施例の制御部の構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施例の燃焼量(燃焼状態)と熱媒検出温度との関係を示すグラフである。
図4】本発明の実施例の熱媒ボイラ2による熱媒油の加熱動作を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1に示すように、熱媒ボイラシステム1は、熱媒ボイラ2と、熱媒循環ライン3と、制御部7と、記憶部8と、を備える。
【0016】
熱媒ボイラ2は、缶体20と、バーナ21と、バーナ21に燃焼用空気を供給する送風機22と、缶体20の内部に配置され熱媒油が流通する熱媒油加熱管23と、を備える。熱媒ボイラ2は、バーナ21により燃料を燃焼させて缶体20の内部を加熱することで、熱媒油加熱管23中を流通する熱媒油を加熱する。
本実施形態における熱媒ボイラ2は、燃焼量を高燃焼、高燃焼よりも少ない燃焼量で燃焼する低燃焼、燃焼停止の3つの位置に切り換えることができる3位置燃焼制御ボイラとする。ここで、高燃焼とは、熱媒ボイラ2の熱出力が定格出力の100%となる燃焼量で燃焼させる状態であり、低燃焼とは、熱媒ボイラ2の熱出力が定格出力の例えば20%〜50%となる燃焼量で燃焼させる状態をいう。本実施形態では低燃焼を定格出力の50%となる燃焼量で燃焼させる状態とする。
【0017】
燃料は、燃料供給ライン25から燃料調整弁24を介してバーナ21に供給される。バーナ21、送風機22、燃料調整弁24は、信号線9を介して制御部7と電気的に接続されている。
【0018】
熱媒循環ライン3は、熱媒ボイラ2(熱媒油加熱管23)と熱使用部5とを接続し熱媒ボイラ2で加熱された熱媒油を熱使用部5に供給する熱媒油供給ライン31と、熱使用部5と熱媒ボイラ2(熱媒油加熱管23)とを接続し熱使用部5で熱が使用された熱媒油を熱媒ボイラ2に戻す熱媒油戻しライン32と、を備える。
この熱媒循環ライン3には、循環ポンプ35及び熱媒油温度検出部36が配置される。循環ポンプ35、及び熱媒油温度検出部36は、信号線9を介して制御部7と電気的に接続されている。
本実施形態においては、循環ポンプ35は、熱媒ボイラ2の出口側となる熱媒油供給ライン31に設置するが、熱媒油戻しライン32に設置してもよい。
【0019】
循環ポンプ35を作動することにより、熱媒油加熱管23内で加熱された熱媒油は、熱媒油供給ライン31を経由して熱使用部5に送られる。熱使用部5で熱を奪われた熱媒油は、熱媒油戻しライン32を経由して熱媒ボイラ2に戻される。このように、循環ポンプ35を作動することにより、熱使用部5で熱を奪われ温度の低下した熱媒油は、熱媒循環ライン3により熱媒ボイラ2に循環させるように構成される。
【0020】
循環ポンプ35には、通常、熱媒ボイラの起動時等における、循環ポンプ35の昇温速度及び降温温度に関する要求仕様が設けられる。ここで、昇温温度とは、単位時間当たりの熱媒油の上昇温度を意味する。同様に降温温度とは単位時間当たりの熱媒油の下降温度を意味する。例えば、1時間当たりで熱媒油の温度を摂氏150度上昇させる場合、昇温温度150度/時間という。以下、「度」は、特に断らない限り、摂氏温度を意味する。
なお、昇温速度の値と降温温度の値とは同じ値であっても、異なる値であってもよい。
【0021】
例えば、循環ポンプ35に求められる昇温温度が150度/時間の場合、熱媒油の現在温度が70度で、熱媒油の目標温度を例えば220度としたとき、該昇温速度にしたがって徐々に熱媒油の温度を上げ、1時間後に、220度となるように昇温制御されることが循環ポンプ35にとって望まれる。
【0022】
熱媒油温度検出部36は、熱媒油の温度を測定する。熱媒油温度検出部36は、熱媒ボイラ2の出口近傍(熱媒油加熱管23の出口)に設けるものとする。なお、熱媒油温度検出部36は、熱媒ボイラ2の出口近傍(熱媒油加熱管23の出口)及び/又は熱媒ボイラ2の入口近傍に設けてもよい。
【0023】
制御部7は、熱媒ボイラ運転スイッチ(図示せず)がオンされることに応答して、熱媒ボイラ2の燃焼を開始する。また、制御部7は、熱媒ボイラ運転スイッチがオフされることに応答して、熱媒ボイラ2の燃焼を停止する。
制御部7は、循環ポンプ起動スイッチ(図示せず)がオンされることに応答して、熱媒循環ライン3に設けられた循環ポンプ35の運転を開始する。また、制御部7は、循環ポンプ強制停止スイッチ(図示せず)がオンされることに応答して、循環ポンプ35の運転を停止することができる。
【0024】
[制御部7について]
次に、制御部7について図2を参照しながら、詳細に説明する。図2は、制御部7の構成を示す機能ブロック図である。
本実施形態では、制御部7は、熱媒ボイラ2の起動時等に熱媒油の温度上昇速度を緩やかに制御するための構成として、燃焼制御部71と、起動検知部72と、起動時目標温度設定部73と、停止指示検知部74と、停止時目標温度設定部75と、熱媒ボイラ停止部76と、を備える。
【0025】
燃焼制御部71は、予め設定された目標温度と熱媒油温度検出部36により計測された熱媒検出温度との偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御する。前述したように、熱媒ボイラ2は、燃焼量を高燃焼、高燃焼よりも少ない燃焼量で燃焼する低燃焼、燃焼停止の3つの位置に切り換えることができる3位置燃焼制御ボイラである。
したがって、具体的には、燃焼制御部71は、予め設定された目標温度と、熱媒油温度検出部36により計測された熱媒検出温度との偏差に基づいて、燃焼を、高燃焼、低燃焼、又は燃焼停止と判定し、この判定に基づき燃料調整弁24を高燃焼、低燃焼又は燃焼停止の位置に切り換える機能を有するとともに、送風機22から当該燃焼状態に必要な燃焼用空気を送気させる。
【0026】
燃焼制御部71による3位置燃焼制御方式の一例を示す。この方式では、燃焼制御に関するパラメータとして4つの設定値、すなわち設定値1(SP)、ON/OFF制御のヒステリシス(HYS)、警報2設定値(A2)、及び警報2ヒステリシス(HY2)が予め設定される。なお、この例では、設定値1(SP)を目標値ともいう。
【0027】
図3に、上記4つのパラメータに、SP=220度、HYS=5度、A2=10度、HY2=5度と設定した場合の燃焼量(燃焼状態)と熱媒検出温度との関係を示す。図3に示すように、高燃焼中(L1)に熱媒検出温度が上昇して、SP+(HYS/2)(=222.5度)を超えると、燃焼制御部71は、燃焼量を高燃焼位置から低燃焼位置へ移行させる。その後低燃焼中(L2)にさらに、熱媒検出温度が上昇して、SP+A2(=230度)を超えると、燃焼制御部71は、燃焼量を低燃焼位置から燃焼停止位置(L3)に移行させる。また、燃焼停止中(L3)に熱媒検出温度が下降して、SP+A2−HY2(=225度)を割った場合、燃焼量を燃焼停止位置から低燃焼位置に移行させる。また、低燃焼中(L2)において、熱媒検出温度が下降して、SP−(HYS/2)(=217.5度)を割ると、燃焼制御部71は、燃焼量を低燃焼位置から高燃焼位置へ移行させる。
なお、低燃焼位置で燃焼している状態(L2)において、熱媒検出温度がSP−(HYS/2)(=217.5度)より大きく、SP+A2(=230度)より小さな温度範囲内の変動にとどまる場合、燃焼制御部71は、燃焼量を低燃焼位置にとどめる。
このように、燃焼制御部71は、予め設定された目標温度と、熱媒油温度検出部36により計測された熱媒検出温度との偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼量を制御することができる。
なお、上記4つのパラメータすなわちSP、HYS、A2、HY2の値は、熱媒ボイラ2により適宜設定することができる。
【0028】
本実施形態においては、設定値1(SP)は、熱媒ボイラ2の起動時に、起動時目標温度設定部73により、時間とともに連続的に増加するように設定され、当該設定値1(SP)に基づいて、燃焼制御がなされる。詳細は後述する。
【0029】
[パイロット燃焼待機について]
熱媒ボイラ2のバーナ21は、パイロット燃焼の運転状態も含むバーナとしてもよい。すなわち、バーナ21は、パイロットバーナとメインバーナとの組み合わせで構成され、メインバーナの燃焼停止後においてパイロットバーナの燃焼(いわゆる種火の燃焼状態)を継続させた状態で待機させる(「パイロット燃焼待機」又は「燃焼待機」ともいう)構成にしてもよい。
そうすることで、燃焼停止をパイロット燃焼待機(燃焼待機)とすることで、燃焼制御部71は、燃焼待機状態から直ちに低燃焼状態に移行させることが可能となる。
【0030】
[他の燃焼制御方式]
熱媒ボイラ2の燃焼制御方式は、3位置燃焼制御方式としたが、これに限定されるものではない。例えば、2位置燃焼制御方式(燃焼オンとオフの切換え)又は高燃焼位置と低燃焼位置の間に中燃焼位置を設けるn位置燃焼制御方式(n≧4)を適用してもよい。また、燃焼量を連続的に増減可能な比例燃焼制御方式を適用してもよい。
【0031】
起動検知部72は、熱媒ボイラ2が起動されたことを検知する。ここで、熱媒ボイラ2が起動されたとは、例えば、熱媒ボイラ運転スイッチがオンされることに応答して、熱媒ボイラ2の燃焼が開始される場合、例えば、熱媒ボイラシステム1が複数の熱媒ボイラ2を備え、複数の熱媒ボイラ2が台数制御部(図示せず)により燃焼制御されている場合であって、台数制御部により熱媒ボイラ2が燃焼待機状態又は燃焼停止状態から燃焼起動される場合、又は熱媒油がある温度(例えば180度)に加熱された状態で熱使用部に供給されていたときに、熱媒油がより高い温度(例えば250度)に加熱された状態で熱使用部に供給されるように、目標温度が高く(例えば250度)再設定される場合等を含む。
【0032】
起動時目標温度設定部73は、起動検知部72により熱媒ボイラ2の起動が検知された場合、当該熱媒ボイラ2の起動を検知した時点tにおける熱媒油温度検出部36による検出温度T及び予め設定された単位時間あたりの昇温速度p(度/時間)に基づいて、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)を式1により設定する。
SP(t)=p(t−t)+T (式1)
なお、予め設定される単位時間あたりの昇温速度p(度/時間)は、循環ポンプ35の昇温速度に関する要求仕様を満たすように(すなわち、昇温速度p(度/時間)は、少なくとも循環ポンプ35の要求仕様となる昇温速度以下となるように)設定されることが好ましい。
また、他のパラメータHYS、A2、HY2の値については、SPの値とは関係なく固定値としてもよい。また、SPの値の予め設定された温度範囲に応じて、他のパラメータHYS、A2、HY2の値を設定してもよい。
【0033】
このように起動時目標温度設定部73により、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)が設定されることで、熱媒温度がTから第1目標温度T1に到達するまでの間、燃焼制御部71は、時間tにおける目標温度SP(t)と熱媒油温度検出部36により計測された時間tにおける熱媒検出温度T(t)との偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御することができる。
【0034】
なお、起動時目標温度設定部73は、例えば、制御周期Δt毎に、時間t+nΔtにおける目標温度SPを式1Aにより設定するようにしてもよい。
SP=p×nΔt+T (式1A)
ここで、1≦n≦(T1−T)/p×Δt (式1B)
このようにすることで、時間t+nΔtにおける熱媒検出温度をTとしたとき、燃焼制御部71は、制御周期毎に設定される目標温度SPと制御周期毎に熱媒油温度検出部36により計測される熱媒検出温度Tとの偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御することができる。
【0035】
それにより、燃焼制御部71による制御方式(目標温度との偏差に基づく燃焼制御方式)を変更することなく熱媒油の温度上昇速度を緩やかに(予め設定された循環ポンプ35の昇温速度に関する要求仕様を満たすように)制御でき、循環ポンプ35に対する熱衝撃を緩和するとともに循環ポンプ35を長寿命化することが可能となる。
【0036】
起動時目標温度設定部73は、式1により算出される時間tにおける温度Tが、予め設定された熱媒温度の第1目標温度T1に到達すると、第1目標温度T1に到達して以降の時間における目標温度SP(t)を第1目標温度T1に固定する。
なお、起動時目標温度設定部73は、制御周期Δt毎に、時間t+nΔtにおける目標温度SPを式1Aにより設定する場合、nが(T1−T)/p×Δtを超えて以降、目標温度SPを第1目標温度T1に固定する。
【0037】
このように設定されることで、熱媒温度が第1目標温度T1に到達して以降、燃焼制御部71は、熱媒検出温度を第1目標温度T1に保つように、第1目標温度T1と熱媒検出温度との偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御する。
それにより、熱使用部に対して、第1目標温度T1を保つ熱媒油を供給することが可能となる。
【0038】
停止指示検知部74は、熱媒ボイラ2に対する停止指示を検知する。ここで、熱媒ボイラ2に対する停止指示とは、例えば、熱媒ボイラ運転スイッチがオフされることに応答して、熱媒ボイラ2の燃焼を停止させる指示、例えば台数制御装置により熱媒ボイラ2を燃焼状態から燃焼停止状態又は燃焼待機状態に移行させる指示、又は熱媒油をある温度(例えば250度)に加熱した状態で熱使用部に供給していたときに、目標温度を低く(例えば180度)再設定して、熱媒油を低い温度(例えば180度)に加熱された状態で熱使用部に供給するように再設定させる指示等を含む。
【0039】
停止時目標温度設定部75は、停止指示検知部74により熱媒ボイラ2に対する停止指示が検知された時点tにおける熱媒油温度検出部36による検出温度T及び予め設定された単位時間あたりの降温速度p(度/時間)に基づいて、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)を式2により設定する。
SP(t)=T−p(t−t) (式2)
なお、予め設定される単位時間あたりの降温速度p(度/時間)は、循環ポンプ35の降温速度に関する要求仕様を満たすように(すなわち、降温速度p(度/時間)は、少なくとも循環ポンプ35の要求仕様となる降温速度以下となるように)設定されることが好ましい。
また、他のパラメータHYS、A2、HY2の値については、SPの値とは関係なく固定値としてもよい。また、SPの値の予め設定された温度範囲に応じて、他のパラメータHYS、A2、HY2の値を設定してもよい。
【0040】
このように停止時目標温度設定部75により、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)が設定されることで、燃焼制御部71は、時間tにおける目標温度SP(t)と熱媒油温度検出部36により計測された時間tにおける熱媒検出温度T(t)との偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御することができる。
【0041】
なお、停止時目標温度設定部75は、例えば、制御周期Δt毎に、時間t+nΔtにおける目標温度SPを式2Aにより設定するようにしてもよい。
SP=T−p×nΔt (式2A)
このようにすることで、時間t+nΔtにおける熱媒検出温度をTとしたとき、燃焼制御部71は、制御周期毎に設定される目標温度SPと制御周期毎に熱媒油温度検出部36により計測される熱媒検出温度Tとの偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御することができる。
【0042】
それにより、燃焼制御部71による燃焼制御方式(目標温度との偏差に基づく燃焼制御方式)を変更することなく熱媒油の温度下降速度を緩やかに(循環ポンプ35の降温速度に関する要求仕様を満たすように)制御でき、循環ポンプ35に対する熱衝撃を緩和するとともに循環ポンプ35を長寿命化することが可能となる。
【0043】
なお、停止指示検知部74が、熱媒油が温度Tに加熱された状態で熱使用部に対して供給されていたときに、熱媒油を低い第2目標温度T2に加熱された状態で熱使用部に供給するように、目標温度を低い第2目標温度T2に再設定されたことを検知した場合、停止時目標温度設定部75は、時間tにおける目標温度SP(t)が、第2目標温度T2に到達すると、第2目標温度T2に到達して以降の時間における目標温度SP(t)を第2目標温度T2に固定する。
なお、停止時目標温度設定部75は、制御周期Δt毎に、時間t+nΔtにおける目標温度SPを式2Aにより設定する場合、nが(T−T2)/p×Δtを超えて以降、目標温度SPを第2目標温度T2に固定する。
【0044】
このように設定されることで、熱媒温度が第2目標温度T2に到達して以降、燃焼制御部71は、熱媒検出温度を第2目標温度T2に保つように、第2目標温度T2と熱媒検出温度との偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御する。
それにより、熱使用部に対して、第2目標温度T2を保つ熱媒油を供給することが可能となる。
【0045】
停止指示検知部74が、熱媒ボイラ運転スイッチがオフされることに応答して熱媒ボイラ2の燃焼を停止させる状態を検知した場合、又は、熱媒ボイラシステム1が複数の熱媒ボイラ2を備え、複数の熱媒ボイラ2が台数制御部(図示せず)により燃焼制御されている場合であって、台数制御部が燃焼状態の熱媒ボイラ2に対して燃焼待機(又は燃焼停止)するように指示したことを検知した場合、熱媒ボイラ停止部76は、熱媒油温度検出部36による検出温度が、予め設定された停止目標温度T3に到達すると、熱媒ボイラ2の燃焼を停止させるように制御する。
なお、停止時目標温度設定部75が、制御周期Δt毎に、時間t+nΔtにおける目標温度SPを式2Aにより設定する場合、nが(T−T3)/p×Δtを超えたときに、熱媒ボイラ2の運転を停止させるように制御する。
【0046】
このように設定されることで、熱媒温度が停止目標温度T3に到達すると、熱媒ボイラ2の燃焼を停止させることが可能となる。
以上のように、制御部7は構成される。
【0047】
記憶部8には、熱媒ボイラシステム1の運転を実施する制御プログラム、予め設定される燃焼制御に関するパラメータ(すなわちSP、HYS、A2、HY2)の設定値、予め設定される目標温度に関する情報(例えば、第1目標温度T1、第2目標温度T2、第3目標温度T3等)、起動時目標温度設定部73及び停止時目標温度設定部75の設定する情報(例えば、式1、式2等)が記憶される。
また、起動時目標温度設定部73及び/又は停止時目標温度設定部75が、制御周期Δt毎に、時間t+nΔtにおける目標温度SPを式1A又は式2Aにより設定する場合、記憶部8には、目標温度SPが記憶される。
【0048】
[動作説明]
次に図4を参照して、本実施形態の熱媒ボイラ2の加熱による熱媒油の昇温動作について説明する。図4は、本実施形態の熱媒ボイラ2による熱媒油の加熱動作の一例を示した図である。横軸は時間t(単位:時間)、縦軸(左側)は熱媒温度T(単位:度)を表すものとする。
【0049】
図4において、昇温速度p(度/時間)を150度/時間、第1目標温度SPを220度、現在熱媒温度を70度とする。
時間tにおいて、熱媒ボイラ運転スイッチがオンされることに応答して、熱媒ボイラ2の燃焼を開始すると、起動時目標温度設定部73は、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)を式3により設定する。
SP(t)=(1/150)(t−t)+70 (式3)
時間tにおいて、燃焼制御部71は、目標温度SP(t)と、熱媒油温度検出部36により計測された熱媒検出温度との偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御する。
こうすることで、図3に示すように、目標温度SP(t)の変化に伴って、図3に記載したような燃焼制御の切替を行いながら、熱媒検出温度は、現在温度(70度)から、1/150(度/時間)の昇温速度で変化する。
【0050】
以上のように、本実施形態の熱媒ボイラシステム1は、予め設定された目標温度と熱媒油温度検出部36により計測された熱媒検出温度との偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御する燃焼制御部71と、熱媒ボイラ2が起動されたことを検知する起動検知部72と、起動検知部72により熱媒ボイラ2の起動が検知された時点tにおける熱媒油温度検出部36による検出温度T及び予め設定された単位時間あたりの昇温速度p(度/時間)に基づいて、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)を式1により設定する起動時目標温度設定部73と、を備える。
これにより、本実施形態の熱媒ボイラシステム1は、燃焼制御部71による目標温度との偏差に基づく燃焼制御を変更することなく熱媒油の温度上昇速度を緩やかに制御し、循環ポンプ35に対する熱衝撃を緩和し、循環ポンプ35を長寿命化することが可能となる。また、循環ポンプ35の昇温速度に関する要求仕様を満たすように制御することが可能となる
【0051】
また、本実施形態の熱媒ボイラシステム1の起動時目標温度設定部73は、時間tにおける目標温度SP(t)が、予め設定された第1目標温度T1に到達すると、第1目標温度T1に到達して以降の時間における目標温度SP(t)を前記第1目標温度T1に固定する。
これにより、本実施形態の熱媒ボイラシステム1は、第1目標温度T1に到達して以降、熱使用部に対して、第1目標温度T1を保つ熱媒油を供給することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態の熱媒ボイラシステム1の制御部7は、さらに、熱媒ボイラ2に対する停止指示を検知する停止指示検知部74と、停止指示検知部74により熱媒ボイラ2に対する停止指示が検知された時点tにおける熱媒油温度検出部36による検出温度T及び予め設定された単位時間あたりの降温速度p(度/時間)に基づいて、時間t(t≧t)における目標温度SP(t)を式2により設定する停止時目標温度設定部75と、を備える。
これにより、本実施形態の熱媒ボイラシステム1は、熱媒油の温度下降速度を緩やかに制御できるので、循環ポンプ35に対する熱衝撃を緩和でき循環ポンプ35を長寿命化することができる。また、循環ポンプ35の降温速度に関する要求仕様を満たすように制御することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の熱媒ボイラシステム1の停止時目標温度設定部75は、さらに、時間tにおける目標温度SP(t)が、予め設定された第2目標温度T2に到達すると、第2目標温度T2に到達して以降の時間における目標温度SP(t)を第2目標温度T2に固定する。
これにより、第2目標温度T2に到達して以降、熱使用部に対して、第2目標温度T2を保つ熱媒油を供給することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態の熱媒ボイラシステム1の制御部7は、さらに、熱媒油温度検出部36による検出温度が、予め設定された停止目標温度T3に到達すると、熱媒ボイラの燃焼を停止させる熱媒ボイラ停止部66を備える。
これにより、熱媒ボイラシステム1は、停止時に緩やかに熱媒温度を下げた後に、熱媒ボイラ2の運転を停止させることが可能とすることができる。
【0055】
また、循環ポンプ35は、熱媒循環ライン3における熱媒ボイラ2の出口側に設置される。
これにより、循環ポンプ35を流れる熱媒油の温度と、熱使用部に対して供給される熱媒油の温度とを等しい値として制御することができる。
【0056】
なお、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0057】
[変形例1]
本実施形態の燃焼制御部は、3位置燃焼制御方式を適用したが、3位置燃焼制御方式に限定されない。燃焼制御部は、3位置燃焼制御方式に換えて、2位置燃焼制御方式、n位置燃焼制御方式(n≧4)、又は比例燃焼制御方式を適用してもよい。
【0058】
[変形例2]
本実施形態では、循環ポンプを熱媒ボイラの下流に設置したが、循環ポンプを熱媒ボイラの上流に設置するようにしてもよい。また、循環ポンプを熱媒ボイラの上流及び下流に設置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 熱媒ボイラシステム
2 熱媒ボイラ
21 バーナ
22 送風機
23 熱媒油加熱管
24 燃料調整弁
25 燃料供給ライン
3 熱媒循環ライン
31 熱媒油供給ライン
32 熱媒油戻しライン
35 循環ポンプ
36 熱媒油温度検出部
5 熱使用部
7 制御部
71 燃焼制御部
72 起動検知部
73 起動時目標温度設定部
74 停止指示検知部
75 停止時目標温度設定部
76 熱媒ボイラ停止部
8 記憶部
9 信号線
図1
図2
図3
図4