【実施例】
【0011】
<全体構成>
図1は本実施例のワインセラーの構造の一例を示す図であり、詳細には、
図1−1は、本実施例のワインセラーの正面図およびその断面図であり、
図1−2は、本実施例のワインセラーの側面図およびその断面図である。
【0012】
図1−1および
図1−2において、1はワインセラー(本体)であり、このワインセラー1には、上下個別に温度管理が可能な上保存室2aと下保存室2bが設けられている。各保存室は固定の中仕切りプレート3により完全に独立し、たとえば、それぞれ0℃〜20℃の範囲内で1℃単位の温度設定が可能である。本実施例では、一例として、それぞれ12本のワインボトルの収納を可能とし、上下の有効内容量の合計が100Lクラス(小型)のワインセラーを想定する。上下2室の構成とすることにより、より高精度な温度管理が可能となり、たとえば、一方を短期保存用(7〜8℃程度)、もう一方を長期保存用(14℃程度)、等のように、目的に応じて上下2室を使い分けることが可能となる。
【0013】
また、ワインセラー1には、断熱性とインテリア性に優れた3層構造のフルフラットガラスが全面に採用されたガラス扉4が取り付けられている。また、ガラス扉4の上部部分には、タッチ式の操作パネル5が配置され、主電源やライト(各保存室のLED照明)のON/OFF,保存室内の温度調整等の操作ができ、マニュアル操作で保存室内の環境を最適な状態に保つことが可能である。
【0014】
また、ワインセラー1は、太いワインボトル(シャンパーニュ径)をスムーズに出し入れできるような高さで棚ピッチが設定されており、上保存室2aには、寝かせた状態で3本のワインボトルを収納可能な棚が縦に4段構成で設けられ、計12本のワインボトルの収納が可能である。また、下保存室2bには、後述する冷却サイクルに必要なコンプレッサー等が収納された収納庫6の段差を利用して、1番下の棚にワインボトル3本を斜めに配置することができ、さらに、寝かせた状態で3本のワインボトルを収納可能な棚が縦に3段構成で設けられ、計12本のワインボトルの収納が可能である。なお、各保存室の棚を仕切る棚板7は、スライドすることにより自由に取り外しおよび取り付けが可能な構成である。このように、各保存室において1つの棚にワインボトルを3本収納可能な構成をとることにより、一般的な4本収納タイプのものよりも設置幅を小さくすることができ、コンプレッサーを搭載したワインセラーとしては最小の設置面積を実現することができる。たとえば、ワインセラー1は、本体幅が400mm以下、奥行きが500mm以下となっている。また、上記構成により設置面積を小さくすると、その一方で本体の高さが増すことになるが、たとえば、短期保存用(飲用)のワインを上保存室2aに入れておくことにより、高い位置での出し入れが可能となり、下保存室2bに入れておく場合よりもワインの出し入れが容易になる、というメリットが得られる。
【0015】
また、
図1−2に示すように、下保存室2bの奥には、保存室内に階段状の段差が得られるように収納庫6が設けられており、この収納庫6には、後述する冷却サイクルにおいて使用されるコンプレッサーやキャピラリーチューブ等の機器が収納されている。また、各保存室の奥には、奥パネル9により各保存室と仕切られた空間である収納庫8が設けられており、この収納庫8には、たとえば、後述する冷却サイクルにおいて使用されるアキュムレータや冷却器が収納され、さらに、加温ヒーター,LED等の照明,空気循環用のファンおよび各種温度センサー等も収納されている。
【0016】
なお、上記では、上下個別に温度管理が可能な上保存室2aと下保存室2bが設けられた、上下2段構成のワインセラー1について記載したが、本実施例のワインセラーは、これに限らず、たとえば、
図2(
図2−1,
図2−2)に示すような保存室が1つのタイプのワインセラーであってもよく、また、図示はしていないが3つ以上の保存室を有するものであってもよい。
図2は本実施例のワインセラーの構造の一例を示す図であり、詳細には、
図2−1は、保存室が1つのタイプのワインセラーの正面図およびその断面図であり、
図2−2は、保存室が1つのタイプのワインセラーの側面図およびその断面図である。保存室が1つのタイプのワインセラー1は、上下2段構成のワインセラーから上保存室2aの機能を除いたものであり、下保存室2bの機能を備えた保存室2のみで構成されたものとなる。
【0017】
<詳細構成>
つづいて、ワインセラー1の構成をより詳細に説明する。なお、以下では、
図1に示す上下2段構成のワインセラー1を用いてその構成および動作を詳細に記載するが、本実施例のワインセラーはこれに限らず、たとえば、
図2に示すワインセラー1等、保存室単位に個別に温度調整が可能なすべてのワインセラーに適用可能である。
【0018】
まず、上記
図1のように構成されるワインセラー1の電気回路構成およびその制御について説明する。
図3−1は、ワインセラー1の電気系統図の一例を示す図である。
【0019】
図3−1に示すとおり、ワインセラー1においては、制御回路11が、AC100Vを入力とし、ワインセラー1内の電子機器を制御する。詳細には、上保存室2a,下保存室2b用にそれぞれ設けられたLED21a,21b、下段温度センサー22a,22b、上段温度センサー23a,23b、霜取り温度センサー24a,24b、加温ヒーター25a,25b、ファン26a,26bを制御する。また、制御回路11は、冷却サイクルで使用されるコンプレッサー31と電磁弁(三方弁)32を、上保存室2aおよび下保存室2bに共通の構成として制御する。なお、
図2に示すような保存室が1つのタイプのワインセラー1の電気系統図を、一例として
図3−2に示す。このワインセラー1は、制御回路11が、AC100Vを入力とし、保存室2用に設けられたLED21,下段温度センサー22,上段温度センサー23,霜取り温度センサー24,加温ヒーター25,ファン26,コンプレッサー31,電磁弁(三方弁)32を制御する。
【0020】
さらに、制御回路11は、ガラス扉4に設けられた操作パネル5から得られる操作情報に基づいて、主電源やライト(各保存室のLED照明)のON/OFF制御や、保存室の温度調整を行う。
図4は、タッチ式の操作パネル5の一例を示す図である。本実施例では、上保存室2aと下保存室2bが独立しているので、各保存室の温度を個別に設定可能である(
図4のUpper,Lowerに相当)。なお、
図5は、保存室が1つのタイプのワインセラーにおけるタッチ式の操作パネル5の一例を示す図である。
【0021】
上記各種電子機器を制御する本実施例の制御回路11は、CPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成される制御部、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等の各種メモリ、および図示の各種電子機器と信号の送受信を行うインタフェース部、等から構成されている。
【0022】
また、
図3−1において、LED21aは上保存室2a用の照明であり、LED21bは下保存室2b用の照明であり、それぞれ、操作パネル5のON/OFF操作に連動して、制御回路11によりON/OFFが制御される。
【0023】
下段温度センサー22aは、たとえば、上保存室2a内の棚の上から3段目周辺の温度を検知するためのセンサーであり、下段温度センサー22bは、下保存室2b内の棚の上から3段目周辺の温度を検知するためのセンサーである(以後、保存室内の棚の上から3段目周辺を、単に、下段と呼ぶ。)。下段温度センサー22a,22bは、それぞれ、割り当てられた保存室内の下段の温度を制御回路11に通知する。この通知を受けた制御回路11は、保存室毎に、操作パネル5の操作により設定された温度(上記0℃〜20℃に相当)と下段温度センサーから通知された温度とを比較し、各保存室の設定温度が保持されるように冷却および加温に関する制御を行う。すなわち、操作パネル5に表示される現在温度(
図4および
図5参照)は、各保存室の下段の温度に相当する。
【0024】
上段温度センサー23aは、たとえば、上保存室2a内の棚の上から1段目(一番上の棚)周辺の温度を検知するためのセンサーであり、上段温度センサー23bは、下保存室2b内の棚の上から1段目(一番上の棚)周辺の温度を検知するためのセンサーである(以後、保存室内の棚の上から1段目周辺を、単に、上段と呼ぶ。)。上段温度センサー23a,23bは、それぞれ、割り当てられた保存室内の上段の温度を制御回路11に通知する。この通知を受けた制御回路11は、保存室毎に、上段温度センサーから通知された温度と下段温度センサーから通知された温度とを比較し、操作パネル5の操作によって設定された上段と下段の温度差(たとえば、1℃,2℃,3℃,4℃…)が保持されるようにファン26a,26bの風量を制御する。
【0025】
霜取り温度センサー24aは上保存室2a用の冷却器近傍に配置され、霜取り温度センサー24bは下保存室2b用の冷却器近傍に配置される。たとえば、制御回路11が定期的に霜取り制御を行う場合において、各霜取り温度センサー24a,24bは、それぞれ近傍の冷却器(エバポレーター)の霜取りが終了したこと(温度が上がったこと)を検知して制御回路11に通知する。
【0026】
加温ヒーター25aは上保存室2a用の冷却器に一体化して設置され、加温ヒーター25bは下保存室2b用の冷却器に一体化して設置され、これらのヒーターは、制御回路11の制御により、周辺温度を上昇させる。また、ファン26aは上保存室2aの上部に設置され、ファン26bは下保存室2bの上部に設置され、制御回路11の制御により、割り当てられた保存室内の空気を循環させる。たとえば、上記加温ヒーター25aとファン26aが上保存室2aにおいて連動し、加温ヒーター25aにより暖められた空気を循環させることにより、上保存室2a内の温度を設定温度まで上昇させることができる。なお、下保存室2bにおいても上記と同様の制御が可能である。たとえば、真冬の部屋等、外気温が特に低い場合には、ワインセラー1の各保存室内の温度が設定温度よりも大幅に低くなる場合が想定されるが、このような場合でも加温ヒーター25a,25bによって温度管理が可能となる。
【0027】
また、
図3−1において、制御回路11は、コンプレッサー31および電磁弁32を電気的に制御し、ワインセラー1の冷却サイクルを保存室毎に個別に制御する。
図6−1は、ワインセラー1の冷却サイクルの一例を示す図であり、より詳細には、2つの冷却器36a,36bを上下2つの保存室に1つずつ割り当て、制御回路11が、上保存室2aの冷却サイクルおよび下保存室2bの冷却サイクルを個別に制御する。
【0028】
コンプレッサー(圧縮器)31は、気体冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒を生成し出力する。コンプレッサー31から送られてきた高温高圧のガス冷媒は、コンデンサー(凝縮器)33で放熱しながら、常温高圧の液体冷媒に変化し、さらに、常温高圧の液体冷媒は、アキュムレータ34にて水分等の異物が取り除かれる。ここで、たとえば、上保存室2a内の温度を下げるように制御を行う場合、制御回路11は、アキュムレータ34にて水分等の異物が取り除かれた液体冷媒がキャピラリーチューブ35aに送られるように電磁弁32を制御する。電磁弁32を介して送られてくる液体冷媒は、管径の細いキャピラリーチューブ35aを通過することによって、蒸発(気化)しやすいように圧力が下げられる。その後、低温低圧となった液体冷媒は、冷却器36aに送られ、ここで、周辺の空気から熱を奪って蒸発(気化)し、最終的に、冷却器36aにおいて気体となった冷媒がコンプレッサー31に戻る。このようなサイクルが繰り返し実行されることによって、冷却器36aの周囲が冷却される。
【0029】
一方、下保存室2b内の温度を下げるように制御を行う場合、制御回路11は、アキュムレータ34にて水分等の異物が取り除かれた液体冷媒がキャピラリーチューブ35bに送られるように電磁弁32を制御する。電磁弁32を介して送られてくる液体冷媒は、管径の細いキャピラリーチューブ35bを通過することによって、蒸発(気化)しやすいように圧力が下げられる。その後、低温低圧となった液体冷媒は、冷却器36bに送られ、ここで、周辺の空気から熱を奪って蒸発(気化)し、最終的に、冷却器36bにおいて気体となった冷媒がコンプレッサー31に戻る。このようなサイクルが繰り返し実行されることによって、冷却器36bの周囲が冷却される。
【0030】
そして、各保存室において上記冷却サイクルに使用される機器とファン26a,26bが連動して、冷却器36a,36bにより冷やされた空気を循環させることにより、すなわち、その冷気が各保存室内に送り込まれることによって、各保存室内の温度を設定温度まで下げることができる。
【0031】
なお、上記冷却サイクルにおいては、説明の便宜上、制御回路11が電磁弁32を交互に操作することとしたが、これに限らず、上保存室2aの冷却サイクルと下保存室2bの冷却サイクル(2系統の冷却サイクル)が同時に行われるように電磁弁32を調整することとしてもよい。また、ワインセラー1では、一例として上下2段構成の保存室を有することから電磁弁32を制御することで2系統の冷却サイクルを切り替える構成としたが、たとえば、保存室が1つのタイプのワインセラー1(
図2参照)については、冷却サイクルが1系統(たとえば、コンプレッサー31,コンデンサー33,アキュムレータ34,キャピラリーチューブ35,冷却器36からなる冷却サイクル)となり切り替えの必要がないため、電磁弁32が不要となる。
図6−2は、保存室が1つのタイプのワインセラー1の冷却サイクルの一例を示す図である。
【0032】
図7−1は、保存室内の空気の循環の様子を示す図であり、具体的には、上記冷却サイクルにより冷やされた空気および加温ヒーターにより暖められた空気の循環の様子が示されている。また、
図7−2は、本実施例のワインセラーの特徴的な構成を示す模式図である。
図7−1および
図7−2において、41aは、上記加温ヒーター25aと冷却器36aが一体化されて配置された上保存室2a用のフィン型冷却器であり、41bは、上記加温ヒーター25bと冷却器36bが一体化されて配置された下保存室2b用のフィン型冷却器であり、それぞれ奥パネル9裏の収納庫8内に配置されている。本実施例では、制御回路11がファン26a,26bによる吸い込みおよび吐き出しを制御することにより、保存室内の空気を循環させる。具体的には、図示の矢印に示すように、各保存室下部に設けられた吸込用通風口を介して収納庫8に保存室内の空気が取り込まれ、上記フィン型冷却器41a,41bで暖められた空気または冷やされた空気が、奥パネル9上部にスリット状に設けられた吐出用通風口を介して各保存室内に放出される。これにより、保存室毎に、操作パネル5により設定された温度への温度制御が可能となる。
【0033】
また、本実施例においては、ファン26a,26bを、たとえば、取り込んだ空気を10度前後斜め上に向けて放出することができるように傾けて設置する(
図7−1,
図7−2参照)。これにより、吐出用通風口から斜め上に向かって放出された空気が保存室内上面にあたって反射し保存室内前面まで到達することになり、ワインボトル収納時においても、ワインボトルにより風が遮られることなく、保存室内の空気を効率よく循環させることができるため、たとえば、0℃〜20℃の範囲内で、さらにはそれ以上の温度範囲において、1℃単位の温度設定が可能となり、さらに、保存室内の上段と下段の温度差をほぼ0℃とすることが可能となる。また、上記のように保存室内の空気を効率よく循環させることにより0℃前後の低温設定も可能となるため、ワインに限らず、たとえば、ビールや日本酒等、その他の各種飲料の保存にも最適である。
【0034】
なお、
図7−1に示すように、ワインセラー1には、本体背面(収納庫8の背面)に、それぞれ複数の外気交換穴42が設けられている。これにより、収納庫8および奥パネル9を介して、外気に含まれる水分を上保存室2a内および下保存室2b内に取り入れることができ、また、余分な水分を保存室外に排出することができるため、各保存室内の湿度を最適な状態に保つことが可能となる。また、本実施例においては、ファン26a,26bを傾けて設置することとしたが、この傾斜角度についてはこれに限るものではなく、ワインボトルにより風が遮られないように適宜角度を変えて設置可能である。
【0035】
<温度制御方法>
つづいて、本実施例のワインセラーにおける保存室内の温度制御方法について説明する。ここでは、一例として、
図2に示すワインセラーを用いて保存室内の温度制御方法を説明する。なお、本実施例の温度制御方法は、
図2に示すワインセラー1の他、たとえば、
図1に示すワインセラー1等のように、保存室単位に個別に温度調整が可能なすべてのワインセラーに適用可能である。すなわち、保存室が複数存在するワインセラーについては、保存室毎に、下記の温度制御方法を実行する。
【0036】
たとえば、保存室内に収納されているワインボトルが少ない場合には、ファン26の駆動により冷気を十分に循環させることができるため上段と下段の温度差を抑えることができるが、一方で、保存室内に収納されているワインボトルが多い場合、特にフル収納の場合には、それぞれの棚に置かれたワインボトルが壁となって各段に空気の層ができるため、上記の場合と同様の風量でファン26を駆動しても冷気が十分に循環されず、上下の温度差が大きくなってしまう。すなわち、ファン26の風量が固定の場合には、保存室内のワインボトルの量に応じて上段と下段の温度差が変化することになり、保存室内のきめ細かな温度調整が困難となる。そこで、本実施例では、保存室内のワインボトルの量に左右されることなく、保存室内の上段と下段の温度差が常に設定された温度差に近づくように、制御回路11がファン26の風量を制御する。
【0037】
図8は、ファン26の風量と、上段と下段の温度差と、の関係の一例を示す図であり、詳細には、たとえば、ワインボトルをフル収納し、かつ設定温度を14℃に設定して、ファン26の風量を0から順次大きくしていった場合の温度および温度差の測定結果である。このような環境で、ファン26の風量を順次大きくしていくと、それに伴って上段の温度が下段の温度に近づいていき、温度差が段階的に小さくなることがわかる。すなわち、ファン26の風量を変化させることで、上段と下段の温度差を調整することが可能となる。
【0038】
なお、ワインセラー1においては、保存室内の温度制御方法を実現するための前提として、以下の操作を可能とする。たとえば、操作パネル5の現在温度表示部分左側の上方向ボタンを3秒間長押しすることにより温度設定制御が発動し、その後、上下方向ボタンの操作で保存室の設定温度(たとえば、0℃〜20℃)を変更することが可能となる。また、たとえば、操作パネル5の現在温度表示部分右側の下方向ボタンを3秒間長押しすることにより温度差設定制御が発動し、その後、上下方向ボタンの操作で保存室の上段と下段の温度差(たとえば、1℃,2℃,3℃,4℃…)を設定することが可能となる。ここで変更された設定温度および設定された温度差は、随時、制御回路11内のメモリに上書きされる。また、本実施例では、特定のボタンを3秒間長押しすることで設定温度および上段と下段の温度差の設定値を変更可能な構成としたが、設定温度および上段と下段の温度差の設定値の変更方法についてはこれに限らず、どのような方法であってもよい。
【0039】
以下、保存室内の温度制御方法をフローチャートに従い詳細に説明する。
図9は、保存室内の温度制御方法を示すフローチャートであり、詳細には、
図9−1,
図9−2は、それぞれ、本実施例の温度制御方法を実現するための機能である冷却機能および加温機能を示すフローチャートであり、また、
図9−3は、本実施例の温度制御方法を実現するためのその他の機能である温度差調整機能を示すフローチャートである。なお、ワインセラー1においては、保存室の設定温度Xの初期値が、たとえば、14℃に設定され、また、上段と下段の温度差Yの初期値が1℃に設定されているものとし、それらの値が制御回路11内のメモリに予め記憶されているものとする。
【0040】
<冷却機能>
制御回路11は、操作パネル5から送られてくるON信号の受信待ち状態において(ステップS1,No)、主電源ON/OFFボタンが押され、ON信号を受信した場合に(ステップS1,Yes)、ワインセラー1を立ち上げ、制御を開始する。
【0041】
主電源ONの直後の動作において、制御回路11は、まず、メモリから保存室の設定温度Xの初期値を読み出し(ステップS2)、さらに、下段温度センサー22により測定された下段の温度Aを確認する(ステップS3)。そして、制御回路11は、下段の温度Aが(X+1)℃以上かどうか、すなわち、「A≧X+1」であるかどうかを確認し、たとえば、「A≧X+1」の場合には(ステップS4,Yes、ステップS5,Yes)、保存室内の温度を下げるため、コンプレッサー31およびファン26を起動し、冷却サイクルを開始する(ステップS6)。その後、制御回路11は、下段の温度Aが(X+1)℃を下回るまで上記ステップS1〜ステップS5,No,ステップS10,No(主電源ON状態)の処理を繰り返し実行して冷却サイクルを継続し、さらには、下段の温度Aが(X−1)℃以下になるまで、すなわち、下段の温度Aが「X+1>A>X−1」の間も、上記ステップS1〜ステップS4,No、ステップS7,No、ステップS10,Noの処理を繰り返し実行して冷却サイクルを継続する。その後、冷却サイクル継続中に下段の温度Aが(X−1)℃以下になった場合、すなわち、「A≦X−1」になった場合(ステップS4,No、ステップS7,Yes、ステップS8,Yes)、制御回路11は、コンプレッサー31およびファン26の動作を終了させ(ステップS9)、冷却サイクルを終了する。
【0042】
一方、主電源ONの直後の動作において、上記ステップS2およびステップS3の処理を実行後、たとえば、下段の温度Aが(X+1)℃以上かどうかを確認し(ステップS4)、下段の温度Aが「X+1>A>X−1」の場合(ステップS4,No、ステップS7,No)、制御回路11は、現状の温度を保持するため、下段の温度Aが(X+1)℃以上になるまで冷却サイクルを起動させない。その後、冷却サイクルを起動させない状態を継続した結果、下段の温度Aが(X+1)℃以上となった場合、すなわち、「A≧X+1」になった場合(ステップS4,Yes、ステップS5,Yes)、制御回路11は、冷却サイクルを起動し(ステップS6)、以降、上記同様、ステップS1〜ステップS10,Noの処理を繰り返し実行する。一方で、冷却サイクルを起動させない状態を継続した結果、下段の温度Aが(X−1)℃以下となった場合(ステップS4,No、ステップS7,Yes、ステップS8,No)、制御回路11は、冷却サイクルを起動させない状態をさらに継続する。
【0043】
さらに、主電源ONの直後の動作において、上記ステップS2およびステップS3の処理を実行後、下段の温度Aが(X−1)℃以下の場合(ステップS4,No、ステップS7,Yes、ステップS8,No)、制御回路11は、上記同様、下段の温度Aが(X+1)℃以上となるまで冷却サイクルを起動させない。冷却サイクルを起動させない状態を継続した場合の動作は上記と同様である。
【0044】
なお、上記では、冷却サイクルの起動,終了の起点を(X±1)℃としているが、これは一例であり、この限りではない。冷却サイクルの起動,終了の起点となる温度は、ワインセラー1に要求される性能に応じて適宜変更可能である。また、上記冷却サイクルにおいてファン26を起動する場合には、上記
図8に示すような測定結果等に基づいて決定された標準的な風量を設定することとする。
【0045】
<加温機能>
また、主電源ONの直後の動作において、上記ステップS2およびステップS3の処理を実行後、制御回路11は、下段の温度Aが(X−3)℃以下かどうか、すなわち、「A≦X−3」であるかどうかを確認し(
図9−2(a)、ステップS11)、たとえば、「A≦X−3」の場合には(ステップS11,Yes、ステップS12,Yes)、保存室内の温度を上げる必要があるため、加温ヒーター25およびファン26を起動し、加温制御を開始する(ステップS13)。その後、制御回路11は、下段の温度Aが(X−3)℃を上回るまで上記ステップS1〜ステップS3、ステップS11,Yes、ステップS12,No、(b)、ステップS10,Noの処理を繰り返し実行して加温制御を継続し、さらには、下段の温度Aが(X−1)℃以上になるまで、すなわち、下段の温度Aが「X−3<A<X−1」の間も、上記ステップS1〜ステップS3、ステップS11,No、ステップS14,No、(b)、ステップS10,Noの処理を繰り返し実行して加温制御を継続する。その後、加温制御継続中に下段の温度Aが(X−1)℃以上になった場合、すなわち、「A≧X−1」になった場合(ステップS11,No、ステップS14,Yes、ステップS15,Yes)、制御回路11は、加温ヒーター25およびファン26の動作を終了させ(ステップS16)、加温制御を終了する。
【0046】
一方、主電源ONの直後の動作において、上記ステップS2およびステップS3の処理を実行後、下段の温度Aが(X−3)℃以下かどうかを確認し(
図9−2(a)、ステップS11)、下段の温度Aが「X−3<A<X−1」の場合(ステップS11,No、ステップS14,No)、制御回路11は、現状の温度を保持するため、下段の温度Aが(X−3)℃以下になるまで加温制御を起動させない。その後、加温制御を起動させない状態を継続した結果、下段の温度Aが(X−3)℃以下となった場合、すなわち、「A≦X−3」になった場合(ステップS11,Yes、ステップS12,Yes)、制御回路11は、加温制御を起動し(ステップS13)、以降、上記同様、ステップS1〜ステップS3、ステップS11〜ステップS16、(b)、ステップS10,Noの処理を繰り返し実行する。一方で、加温制御を起動させない状態を継続した結果、下段の温度Aが(X−1)℃以上となった場合(ステップS11,No、ステップS14,Yes、ステップS15,No)、制御回路11は、加温制御を起動させない状態をさらに継続する。
【0047】
さらに、主電源ONの直後の動作において、上記ステップS2およびステップS3の処理を実行後、下段の温度Aが(X−1)℃以上の場合(ステップS11,No、ステップS14,Yes、ステップS15,No)、制御回路11は、上記同様、下段の温度Aが(X−3)℃以下となるまで加温制御を起動させない。加温制御を起動させない状態を継続した場合の動作は上記と同様である。
【0048】
なお、上記では、加温制御の起動,終了の起点をそれぞれ(X−3)℃,(X−1)℃としているが、これは一例であり、この限りではない。加温制御の起動,終了の起点となる温度は、ワインセラー1に要求される性能に応じて適宜変更可能である。また、上記加温制御においてファン26を起動する場合には、たとえば、上記冷却サイクルの場合と同じ標準的な風量を設定することとする。
【0049】
<温度差調整機能>
また、主電源ONの直後の動作において、上記ステップS2およびステップS3の処理を実行後、制御回路11は、さらに、メモリから上段と下段の温度差Yの初期値を読み出し(
図9−3(a)、ステップS21)、さらに、上段温度センサー23により測定された上段の温度Bを確認する(ステップS22)。
【0050】
そして、制御回路11は、上段と下段の温度差(B−A)℃が設定値Y℃よりも大きいかどうか、すなわち、「B−A>Y」であるかどうかを確認する(ステップS23)。たとえば、「B−A>Y」の場合には(ステップS23,Yes)、現在のファン26の動作状態を確認し(ステップS24)、ファン26がONの場合には(ステップS24,Yes)、風量を1段階大きくし(ステップS25)、ファン26がOFF状態の場合には(ステップS24,No)、ファン26を上記標準的な風量で起動する(ステップS26)。
【0051】
一方、上記ステップS23の確認処理において、上段と下段の温度差(B−A)℃が設定値Y℃以下の場合(ステップS23,No)、制御回路11は、現在のファン26の動作状態を確認し(ステップS27)、ファン26がONの場合には(ステップS27,Yes)、風量を1段階小さくし(ステップS28)、ファン26がOFF状態の場合には(ステップS27,No)、OFFの状態を継続する。
【0052】
以降、制御回路11は、上段と下段の温度差(B−A)℃を設定値Y℃に近づけるために、そして、設定値Y℃に近づいた場合にはその温度差を保持するために、上記ステップS1〜S3、ステップS21〜S28、(b)、ステップS10,Noの処理を繰り返し実行する。
【0053】
なお、本実施例では、上段と下段の温度差(B−A)℃を設定値Y℃に近づけるために段階的に風量を変化させることとしたが、これに限らず、制御回路11が実験による測定結果や経験値等から使用環境(保存されたワインボトルの量等)に応じた適切な風量を適宜計算し、計算により求められた最適な風量を設定することとしてもよい。また、ワインセラー1の本体にファン26の風量をマニュアル操作可能なつまみ等の操作部を設け、たとえば、上段と下段の温度差を急速に設定値まで近づけたい場合等、所定の要求がある場合には、マニュアル操作で風量を調節することも可能である。
【0054】
また、本実施例では、操作パネル5に上段の温度の表示部を追加し、視覚的に現在温度(下段の温度)と上段の温度を確認可能な構成としてもよい。これにより、保存室内における用途(短期保存,長期保存等)に応じたワインの保存が、容易になる。
【0055】
また、本実施例では、上段と下段の2か所に温度センサーを設ける構成としたが、これに限らず、より詳細に保存室内の温度差を調整できるように、たとえば、3か所以上に温度センサーを配置することとしてもよい。これにより、上段と下段の温度差に限らず、所望の位置間の温度差を調整可能となる。
【0056】
<主電源OFF>
上記冷却機能、加温機能および温度差調整機能に関する処理を実行中に、主電源ON/OFFボタンが押され、制御回路11がOFF信号を受信した場合(ステップS10,Yes)、制御回路11は、冷却サイクル、加温制御、および温度差調整機能によるファン26の動作状態を確認する(ステップS31)。たとえば、冷却サイクル継続中の場合には(ステップS31,Yes)、コンプレッサー31およびファン26の動作を停止させて、冷却サイクルを終了し(ステップS32)、ステップS1の処理に戻る。また、加温制御継続中の場合には(ステップS31,Yes)、加温ヒーター25およびファン26の動作を停止させて、加温制御を終了し(ステップS32)、ステップS1の処理に戻る。また、温度差調整機能によりファン26がON状態の場合には(ステップS31,Yes)、ファン26の動作を停止させて(ステップS32)、ステップS1の処理に戻る。なお、ステップS31の確認処理においていずれも動作していない場合には(ステップS31,No)、そのままステップS1の処理に戻る。
【0057】
このように、たとえば、保存室が1つのタイプのワインセラーは、保存室2用に、下段温度センサー22と上段温度センサー23とファン26とを備え、制御回路11が、メモリから上段と下段の温度差の設定値を読み出し、下段温度センサー22から得られる温度と上段温度センサー23から得られる温度との差が設定値に近づくように、ファン26の風量を制御する。これにより、保存室内の上段と下段の温度差を調整することができる。
【0058】
また、たとえば、保存室が上下2段構成のワインセラーは、保存室2a用に、下段温度センサー22aと上段温度センサー23aとファン26aとを備え、そして、制御回路11が、メモリから上段と下段の温度差の設定値を読み出し、下段温度センサー22aから得られる温度と上段温度センサー23aから得られる温度との差が設定値に近づくように、ファン26aの風量を制御する。また、保存室2b用に、下段温度センサー22bと上段温度センサー23bとファン26bとを備え、そして、制御回路11が、メモリから上段と下段の温度差の設定値を読み出し、下段温度センサー22bから得られる温度と上段温度センサー23bから得られる温度との差が設定値に近づくように、ファン26bの風量を制御する。これにより、保存室毎に、上段と下段の温度差を調整することができる。