【解決手段】測定装置(10)は、透明板(1)と、光源(2)と、顕微鏡(3)と、カメラ(4)と、演算装置(5)とを備える。光源(2)及びカメラ(4)は、透明板(1)の上面(12)側に配置される。光源(2)は、複数の波長域の光を透明板(1)と転動体(X)との接触部に瞬間的に照射する。カメラ(4)は、干渉光が入射されたときに顕微鏡(3)で拡大された接触部を撮影して干渉画像を生成する。演算装置(5)は、波長域ごとの強度を干渉画像から取得して油膜厚さに変換する。測定装置(10)は、光源(2)の発光時間をL[μs]、転動体(X)の回転速度をV[m/s]、顕微鏡倍率をM、カメラ(4)の撮像素子サイズ及び画素数をS[μm]、N
【背景技術】
【0002】
従来、接触状態で相対的に移動する物体間の摩擦を低減するため、物体間に潤滑油を供給する技術が知られている。例えば、軸受では、軌道輪と転動体との間に潤滑油が供給されて油膜が形成される。油膜厚さは、接触圧力による軌道輪及び転動体の弾性変形、並びに接触圧力による潤滑油の粘度の増加に影響を受ける。このような状態の潤滑を弾性流体潤滑(Elasto-Hydrodynamic Lubrication、以下EHL)という。
【0003】
EHL下での油膜厚さを測定する方法として、白色光を用いた光干渉法がある(非特許文献1及び2)。当該光干渉法では、鋼球を透明板の下面に接触させた状態で、透明板の上面から接触部に白色光を照射する。この白色光はブロードなスペクトルを持っており、波長制御されていない連続光である。転がり接触又は転がり滑り接触を想定した油膜厚さを測定する場合、透明板及び転動体の少なくとも一方を回転させる。白色光は透明板の下面及び転動体の表面で反射し、各反射光の光路差によって干渉縞が発生する。
【0004】
この干渉縞を、30fpsのデジタルカラーCCDカメラを用いて撮影し、撮像を、画像集録ボードを用いてコンピュータへRGB輝度分布として取り込む。これらのRGB輝度分布を画像処理によりHSV輝度分布に変換し、その中のH(Hue、色相)の分布を用いる。
【0005】
また、事前に膜厚が既知の透明膜試料を用いて実験的に作成した色相−膜厚の較正表を用いて、色相分布を膜厚分布に変換する。
【0006】
従来技術の課題は、光干渉法で得た干渉色から膜厚への変換方法である。色と膜厚の較正を事前に実験的に作成しなくてはならないが、それが非常に煩雑である。
【0007】
また、非特許文献1の
図2に記載されているように、色相は膜厚に対して周期的に変化し、その周期は干渉の次数と関連した約250nm(光学膜厚)である。そのため、膜厚の測定範囲は250nmに限定され、膜厚測定範囲が狭い。
【0008】
従来技術の課題を解決しうる測定手法として、複数の波長域の光を用いた光干渉法がある。例えば、特許文献1は、複数の波長域の光を利用して、測定対象物の表面を覆う透明膜の厚さを測定する方法を開示する。
【0009】
特許文献1の測定方法では、透明膜で覆われた測定対象物に複数の単色光を照射して干渉縞を生じさせ、透明膜及び測定対象物の干渉画像を撮影する。当該測定方法では、複数の点を干渉画像から選択し、各点に対応する干渉輝度信号を干渉縞のモデルに適合させる。これにより、色―膜厚の実験的な較正を要することなく、透明膜の各点における厚さが一括で求められる。膜厚分解能も従来技術と同等の約1nmである。また、特許文献1では膜厚0nm〜750nm(光学膜厚)の測定結果が示されている。よって、特許文献1の測定方法では、従来技術と比較して、膜厚測定範囲は広がることがわかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1の測定方法は、その実施例にもあるように、シリコンウェハー上の酸化膜を測定対象物としている。すなわち、「非常に平滑」な表面に「固定」された透明膜を測定対象物としている。特許文献1の測定方法では、EHLにおける油膜厚さを測定することは想定されていない。油膜は、物体同士が相対的に転がり接触及び/又は転がり滑り接触している際に動的に形成され、物体間の接触圧力や物体の表面粗さ等に応じてその厚さが時間変動する。また、摺動面に用いられる物体の表面は、化学研磨された上記シリコンウェハーと比較すると粗く、油膜厚さは表面粗さに由来した空間方向の分布を持つ。このような時間変動し空間分布を持つ油膜厚さの測定に対して特許文献1の測定方法を用いる場合には、干渉色の混色による「次数飛び」と呼ばれるエラーが問題になる。以下、「干渉色の混色」、「油膜厚さの時間変動と空間分布」、そして「次数飛び」について述べる。
【0013】
まず、干渉色の混色について述べる。干渉色の混色には「時間的混色」と「空間的混色」が存在する。このうち、油膜計測において影響が大きいものは前者の時間的混色である。便宜上、空間的混色から説明する。空間的混色とは、画像素子の1ピクセル内で生じる混色のことである。静的(時間変動しない)かつ色分布を持つ干渉像を撮影することを考える。この場合、撮像における1ピクセルのRGB輝度値は、「カメラの画像素子のピクセルサイズ(通常のカメラでは1辺が数μmの正方形)」を「顕微鏡の倍率」で除した、有限の面積における平均値である。すなわち、その面積と色分布(単位距離当たりの色変化量)に応じた空間的な混色が生じる。空間的混色は、カメラの画像素子のピクセルサイズが小さいほど、カメラの倍率が大きいほど、抑制される。
【0014】
時間的混色とは、撮影の露光時間内で生じる混色のことである。ここで露光時間とは「1つの撮像を得るためにカメラの撮像素子が受光した時間」であり、「カメラのシャッタースピード」と「照明(光源)の発光時間」の短い方を意味する。動的(時間変動する)かつ各時間においては色分布を持たない(撮影視野内で色が均一な)干渉像を撮影することを考える。この条件にて、ある露光時間で撮影した場合、色分布をもたないため空間的混色は生じないが、干渉色が時間変動するため、撮像における1ピクセルのRGB輝度値は露光時間内の時間的な平均値となる。すなわち、その露光時間と色の変化量・変化速度に応じた時間的な混色が生じる。時間的混色は、露光時間が短いほど、色の変化量・変化速度が少ないほど、抑制される。
【0015】
続いて、油膜厚さの時間変動と空間分布について述べる。時間変動については、油膜厚さに影響を与えるパラメータは「接触面圧」や「転がり又は転がり滑り速度」、「油の粘度」、「油温」、「透明体/転動体の表面粗さ」である。このうち、表面粗さ以外のパラメータ由来の時間変動は、試験条件を一定にすることで、比較的抑制することができる。一方、透明体/転動体の表面粗さ由来の時間変動を抑制することは困難である。なぜなら、物体同士が相対的に転がり接触及び/又は転がり滑り接触する場合に、表面粗さ由来の時間変動を抑制するということは、「表面粗さの空間分布を特許文献1の測定方法の分解能(1nm)以下にする」ことを意味するからである。転がり及び/又は転がり滑り接触下で用いられる物体の表面は、通常の機械摺動部の表面と比較すると平滑であるが、機械加工面でありこのような超平滑面ではないため、表面粗さ由来の油膜厚さの時間変動は必ず生じてしまう。
【0016】
最後に次数飛びについて述べる。次数飛びとは、干渉色から膜厚へ変換する際に似た干渉色を混同し、真値とは大きく離れた膜厚が算出されるエラーである。似た干渉色は各波長の干渉の次数に対応して表れるため、「次数飛び」と呼ばれる。上記文献の手法では、先述のように従来技術と比較して膜厚測定範囲が広いため、変換範囲において似た色が多数存在する。
図1に、特許文献1の測定方法において理想条件における0〜5μmの干渉色の推移を示す。このように膜厚変換範囲において似た色が多数存在しており、干渉色が混色すると次数飛びが生じてしまう。
【0017】
なお、従来技術では先述のように30fpsのカメラと連続光を用いて計測しており、33msの時間平均された干渉画像を解析対象としているため、比較的程度の大きい時間的混色が生じているが、次数飛びは生じない。なぜなら膜厚測定範囲が色相1周期分であり、その中で似た色相は離散的ではなく連続的に表れるからである(非特許文献1の
図2参照)。そのため、混色が生じて計測された色相が膜厚真値の色相と異なった場合にも、膜厚真値の周辺の値が選択されるため、実用上影響が小さい。
【0018】
以上より、特許文献1の測定手法を、膜厚が時間変動する油膜計測に適用するためには、干渉色の混色を許容値以下に抑えることが求められる。
【0019】
本開示は、転がり接触及び/又は転がり滑り接触下において、転動体の表面に形成される油膜厚さを次数飛びなく測定することができる装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本開示に係る測定装置は、転動体の表面に形成される油膜厚さを測定する。当該測定装置は、透明板と、光源と、顕微鏡と、カメラと、演算装置とを備える。透明板の一方面には、転動体が接触する。透明板と転動体との接触部には潤滑剤が供給される。光源は、透明板の他方面側に配置される。光源は、複数の波長域の光を接触部に瞬間的に照射する。顕微鏡は、透明板の他方面側に配置される。顕微鏡は、接触部を拡大する。カメラは、透明板の他方面側に配置される。カメラは、光源からの光が透明板の一方面及び転動体の表面で反射して干渉光が入射されたときに、顕微鏡で拡大された接触部を撮影して干渉画像を生成する。演算装置は、干渉画像から干渉光の強度を波長域ごとに取得し、強度を油膜厚さに変換する。測定に際して、透明板が一方面に垂直な回転軸周りに回転し、及び/又は転動体が透明板の一方面に平行な回転軸周りに回転する。光源の発光時間をL[μs]、転動体の回転速度をV[m/s]、顕微鏡倍率をM、転動体の転がり方向におけるカメラの撮像素子サイズをS[μm]、転がり方向におけるカメラの画素数をN
pとしたとき、以下の式(1)を満たす。
0<L×V+(S/N
P)/M≦5 (1)
【0021】
本開示に係る他の測定装置は、転動体の表面に形成される油膜厚さを測定する。当該測定装置は、透明板と、光源と、カメラと、顕微鏡と、演算装置とを備える。透明板の一方面には、転動体が接触する。透明板と転動体との接触部には潤滑剤が供給される。光源は、透明板の他方面側に配置される。光源は、複数の波長域の光を接触部に連続して照射する。顕微鏡は、透明板の他方面側に配置される。顕微鏡は、接触部を拡大する。カメラは、透明板の他方面側に配置される。カメラは、光源からの光が透明板の一方面及び転動体の表面で反射して干渉光が入射されている間に、顕微鏡で拡大された接触部を撮影して干渉画像を生成する。演算装置は、干渉画像から干渉光の強度を波長域ごとに取得し、強度を油膜厚さに変換する。測定に際して、透明板が一方面に垂直な回転軸周りに回転し、及び/又は転動体が透明板の一方面に平行な回転軸周りに回転する。カメラのシャッタースピードをE[μs]、転動体の回転速度をV[m/s]、顕微鏡倍率をM、転動体の転がり方向におけるカメラの撮像素子サイズをS[μm]、転がり方向におけるカメラの画素数をN
pとしたとき、以下の式(2)を満たす。
0<E×V+(S/N
P)/M≦5 (2)
【0022】
本開示に係る測定方法は、油膜厚さを測定する。当該測定方法は、転動体及び透明板を準備する工程と、透明板の一方面に転動体を接触させ、透明板と転動体との接触部に潤滑剤を供給し、透明板を一方面に垂直な回転軸周りに回転させ、及び/又は転動体を透明板の一方面に平行な回転軸周りに回転させる工程と、複数の波長域の光を接触部に瞬間的に照射する工程と、光が透明板の一方面及び転動体の表面で反射して干渉光がカメラに入射されたときに、顕微鏡で拡大された接触部をカメラで撮影して干渉画像を生成する工程と、干渉画像から干渉光の強度を波長域ごとに取得し、強度を油膜厚さに変換する工程とを備える。光源の発光時間をL[μs]、転動体の回転速度をV[m/s]、顕微鏡倍率をM、転動体の転がり方向におけるカメラの撮像素子サイズをS[μm]、転がり方向におけるカメラの画素数をN
pとしたとき、以下の式(1)を満たす。
0<L×V+(S/N
P)/M≦5 (1)
【0023】
本開示に係る他の測定方法は、油膜厚さを測定する。当該測定方法は、転動体及び透明板を準備する工程と、透明板の一方面に転動体を接触させ、透明板と転動体との接触部に潤滑剤を供給し、透明板を一方面に垂直な回転軸周りに回転させ、及び/又は転動体を透明板の一方面に平行な回転軸周りに回転させる工程と、複数の波長域の光を接触部に連続して照射する工程と、光が透明板の一方面及び転動体の表面で反射して干渉光がカメラに入射されている間に、顕微鏡で拡大された接触部をカメラで撮影して干渉画像を生成する工程と、干渉画像から干渉光の強度を波長域ごとに取得し、強度を油膜厚さに変換する工程とを備える。カメラのシャッタースピードをE[μs]、転動体の回転速度をV[m/s]、顕微鏡倍率をM、転動体の転がり方向におけるカメラの撮像素子サイズをS[μm]、転がり方向におけるカメラの画素数をN
pとしたとき、以下の式(2)を満たす。
0<E×V+(S/N
P)/M≦5 (2)
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、転がり接触及び/又は転がり滑り接触下において、転動体の表面に形成される油膜厚さを簡便かつ広い膜厚範囲で次数飛び無く測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本考案者等は、油膜厚さの測定に複数の波長域の光を用いた光干渉法を適用し、測定の簡便化と測定膜厚範囲の拡大を図ることを考えた。しかしながら、特許文献1における測定対象物と異なり、転動体は、油膜の測定時において、透明板に対して相対的に転がり接触及び/又は転がり滑り接触する。このため、非特許文献1又は2のような構成に対して特許文献1のような光干渉法を単に油膜の測定に適用したというだけでは、干渉像を撮影した場合に干渉色の混色が生じ、次数飛びが生じて、油膜厚さを正確に測定することは難しい。
【0027】
次数飛びなく測定するには、影響の大きい時間的混色を抑制すべく、光学系の構成や転がり/転がり滑り速度に応じて撮影の「露光時間」を適切に設定することが必要である。この露光時間について本考案者等が検討した結果を以下に示す。
【0028】
まず、干渉色の混色量は、先述した時間的混色量と空間的混色量の和で決まる。時間的混色量は「表面粗さ由来の油膜厚さの勾配」×「露光時間」×「転がり速度」によって決まる。空間的混色量は「表面粗さ由来の油膜厚さの勾配」×「撮像素子サイズ(転がり方向)」/「撮像素子のピクセル数(転がり方向)」/「「顕微鏡倍率」で決まる。なお、これらの式は「表面粗さの周波数に対して画素間隔が十分小さい」、「表面粗さによる油膜厚さの勾配は線形」という前提条件に則っている。多くのカメラおよび転動体の表面粗さの場合、この条件は実用上問題ないレベルで満たされる。
【0029】
なお本検討では、転動体の表面粗さのみを考慮し透明板の粗さは考慮していないが、透明板としては通常、化学研磨されたガラス板およびサファイア板が用いられ、転動体と比較して平滑であるため、転動体の表面粗さのみを考慮して問題ない。
【0030】
まず、「表面粗さ由来の油膜厚さの勾配」を求める。ここでは、転動体の代表例として、玉軸受の球を考える。
図2に、市販の転がり軸受(JTEKT社製 KOYO深溝玉軸受6236FY)から取り出した球の光学像および3次元形状を示す。3次元形状測定には白色干渉式3次元形状測定機(Zygo社製 Newview)を用いた。なお、本測定結果には曲面補正を施しており、曲面を平面にして表示してある。
図3に、
図2中A−B部の断面形状を示す。これより、表面粗さの勾配はおおよそ1nm/μmであるとわかる。参考までに、1nm/1μmの傾きを持った線を
図3のグラフに付記する。
図3中に示された表面粗さは転動面においてもほぼ保たれることが知られているため、潤滑下の転がり又は転がり滑り接触面における表面粗さ由来の油膜厚さの勾配は1nm/1μmが妥当である。
【0031】
許容可能な混色量の上限は、次数飛びの有無によって決まるため、油膜厚さ測定範囲において似た色が出現しない程度であればよい。ここで、特許文献1の測定方法では膜厚測定範囲の上限と下限を任意に設定可能である。一般的な潤滑下の転がり又は転がり滑り接触面を想定すると、最小油膜厚さと最大油膜厚さの差は、速度によって異なるものの、多くの場合で1μmの範囲に入る。そこで、
図1に示した油膜厚さ―干渉色の関係において、膜厚20nm〜1020nmにおいて、各膜厚の干渉色のRGB輝度に最も近いRGB輝度との差を求めた(20nm以下は特許文献1の測定範囲外のため除外している)。具体的には以下の式(3)を用いて、膜厚tにおけるRGB輝度間との最小色乖離度Cという形で評価した。
C
min(t)=Min[|I
R(t)−I
R(m)|+|I
G(t)−I
G(m)|+|I
B(t)−I
B(m)|] (3)
【0032】
上記式(3)において、Min[]は[]内の最小値を意味する。|a|はaの絶対値を意味し、mは各膜厚に割り当てた番号であり、m=20〜1020である。I
R,I
G,I
BはそれぞれRGBの輝度値であり、計算に際しては256階調(8bit)の輝度値を用いた。本計算において、当然ながら各膜厚の近傍では似た色が存在するが、それらへ読み間違いは先述のように大きな悪影響を及ぼさない。そのため、任意の膜厚から±10nmは評価対象から除外した。
【0033】
図4に、各油膜厚さにおける最小色乖離度C
minを示す。これより、
図4中g1〜g3に示す3対において類似色が出現していることがわかる(g1の組み合わせが最も類似している)。
図5に、類似色(g1〜g3)におけるRGB輝度値およびそれらの差分を数値にて示す。また
図6に、類似色(g1〜g3)におけるRGB輝度値の比較をグラフで示す。これらより、20nm〜1020nmの1μm間で最もRGBの輝度値が近いもの3点の平均を取ると、RGBのうち一つの輝度値が約10階調乖離しているとわかる。次数飛びを抑制するには、混色度合がこれの半分以下である5階調以下である必要がある(5階調を越えると次数飛び先の膜厚の方が計測値と近くなってしまい、次数飛びが生じる)。ここで、
図1に示した膜厚―干渉色の関係において、膜厚が1nm変化すると各波長の輝度は1階調変化する。よって、これらの結果を踏まえると、次数飛びを生じないための許容混色量は、時間的混色と空間的混色の和が5階調以下、すなわち油膜厚さ5nm相当以下であれば良い。ここで、露光時間ゼロでは撮影できないため、露光時間はゼロ以上である必要がある。これらより、上記文献の測定を油膜計測に用いるには、以下の式(4)を満たすように露光時間Tを設定すれば良い。露光時間Tは、上述した通り、カメラのシャッタースピード及び照明(光源)の発光時間のうち短い方である。
0<T×V+(S/N
P)/M≦5 (4)
T:露光時間[μs]
V:転がり速度[m/s]
M:顕微鏡倍率
S:カメラの撮像素子サイズ(転がり方向)[μm]
N
P:カメラの画素数(転がり方向)
【0034】
本考案者等は、上記の知見に基づいて、実施形態に係る測定装置及び測定方法を考案した。
【0035】
実施形態に係る第1の測定装置は、転動体の表面に形成される油膜厚さを測定する。当該測定装置は、透明板と、光源と、顕微鏡と、カメラと、演算装置とを備える。透明板の一方面には、転動体が接触する。透明板と転動体との接触部には潤滑剤が供給される。光源は、透明板の他方面側に配置される。光源は、複数の波長域の光を接触部に瞬間的に照射する。顕微鏡は、透明板の他方面側に配置される。顕微鏡は、接触部を拡大する。カメラは、透明板の他方面側に配置される。カメラは、光源からの光が透明板の一方面及び転動体の表面で反射して干渉光が入射されたときに、顕微鏡で拡大された接触部を撮影して干渉画像を生成する。演算装置は、干渉画像から干渉光の強度を波長域ごとに取得し、強度を油膜厚さに変換する。測定に際して、透明板が一方面に垂直な回転軸周りに回転し、及び/又は転動体が透明板の一方面に平行な回転軸周りに回転する。光源の発光時間をL[μs]、転動体の回転速度をV[m/s]、顕微鏡倍率をM、転動体の転がり方向におけるカメラの撮像素子サイズをS[μm]、転がり方向におけるカメラの画素数をN
pとしたとき、以下の式(1)を満たす。
0<L×V+(S/N
P)/M≦5 (1)
【0036】
第1の測定装置では、光源が瞬間的に発光する。このため、露光時間(干渉光がカメラに入射する時間)が短く、時間的混色が低減される。すなわち、露光時間Tの長さを回転速度Vや光学系の構成に応じて制限して、混色度合を許容範囲に収めている。よって、転がり接触及び/又は転がり滑り接触下において、転動体の表面に形成される油膜厚さを広い膜厚範囲で次数飛びなく測定することができる。
【0037】
実施形態に係る第2の測定装置は、転動体の表面に形成される油膜厚さを測定する。当該測定装置は、透明板と、光源と、カメラと、顕微鏡と、演算装置とを備える。透明板の一方面には、転動体が接触する。透明板と転動体との接触部には潤滑剤が供給される。光源は、透明板の他方面側に配置される。光源は、複数の波長域の光を接触部に連続して照射する。顕微鏡は、透明板の他方面側に配置される。顕微鏡は、接触部を拡大する。カメラは、透明板の他方面側に配置される。カメラは、光源からの光が透明板の一方面及び転動体の表面で反射して干渉光が入射されている間に、顕微鏡で拡大された接触部を撮影して干渉画像を生成する。演算装置は、干渉画像から干渉光の強度を波長域ごとに取得し、強度を油膜厚さに変換する。測定に際して、透明板が一方面に垂直な回転軸周りに回転し、及び/又は転動体が透明板の一方面に平行な回転軸周りに回転する。カメラのシャッタースピードをE[μs]、転動体の回転速度をV[m/s]、顕微鏡倍率をM、転動体の転がり方向におけるカメラの撮像素子サイズをS[μm]、転がり方向におけるカメラの画素数をN
pとしたとき、以下の式(2)を満たす。
0<E×V+(S/N
P)/M≦5 (2)
【0038】
第2の測定装置の場合、カメラのシャッタースピードが非常に早いため、露光時間(干渉光がカメラに入射する時間)が短く、時間的混色が低減される。すなわち、露光時間Tの長さを回転速度Vや光学系の構成に応じて制限して、混色度合を許容範囲に収めている。よって、転がり接触及び/又は転がり滑り接触下において、転動体の表面に形成される油膜厚さを広い膜厚範囲で次数飛びなく測定することができる。
【0039】
実施形態に係る第1の測定方法は、油膜厚さを測定する。当該測定方法は、転動体及び透明板を準備する工程と、透明板の一方面に転動体を接触させ、透明板と転動体との接触部に潤滑剤を供給し、透明板を一方面に垂直な回転軸周りに回転させ、及び/又は転動体を透明板の一方面に平行な回転軸周りに回転させる工程と、複数の波長域の光を接触部に瞬間的に照射する工程と、光が透明板の一方面及び転動体の表面で反射して干渉光がカメラに入射されたときに、顕微鏡で拡大された接触部をカメラで撮影して干渉画像を生成する工程と、干渉画像から干渉光の強度を波長域ごとに取得し、強度を油膜厚さに変換する工程とを備える。光源の発光時間をL[μs]、転動体の回転速度をV[m/s]、顕微鏡倍率をM、転動体の転がり方向におけるカメラの撮像素子サイズをS[μm]、転がり方向におけるカメラの画素数をN
pとしたとき、以下の式(1)を満たす。
0<L×V+(S/N
P)/M≦5 (1)
【0040】
第1の測定方法は、第1の測定装置と同様に、発光時間Lの値が式(1)を満たすように設定される。よって、転がり接触及び/又は転がり滑り接触下において、転動体の表面に形成される油膜厚さを広い膜厚範囲で次数飛びなく測定することができる。
【0041】
実施形態に係る第2の測定方法は、油膜厚さを測定する。当該測定方法は、転動体及び透明板を準備する工程と、透明板の一方面に転動体を接触させ、透明板と転動体との接触部に潤滑剤を供給し、透明板を一方面に垂直な回転軸周りに回転させ、及び/又は転動体を透明板の一方面に平行な回転軸周りに回転させる工程と、複数の波長域の光を接触部に連続して照射する工程と、光が透明板の一方面及び転動体の表面で反射して干渉光がカメラに入射されている間に、顕微鏡で拡大された接触部をカメラで撮影して干渉画像を生成する工程と、干渉画像から干渉光の強度を波長域ごとに取得し、強度を油膜厚さに変換する工程とを備える。カメラのシャッタースピードをE[μs]、転動体の回転速度をV[m/s]、顕微鏡倍率をM、転動体の転がり方向におけるカメラの撮像素子サイズをS[μm]、転がり方向におけるカメラの画素数をN
pとしたとき、以下の式(2)を満たす。
0<E×V+(S/N
P)/M≦5 (2)
【0042】
第2の測定方法は、第2の測定装置と同様に、カメラのシャッタースピードが式(2)を満たすように設定される。よって、転がり接触及び/又は転がり滑り接触下において、転動体の表面に形成される油膜厚さを広い膜厚範囲で次数飛びなく測定することができる。
【0043】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。説明の便宜上、各図において、構成を簡略化又は模式化して示したり、一部の構成を省略して示したりする場合がある。
【0044】
[第1実施形態]
(測定装置)
図7は、第1実施形態に係る測定装置10の概略構成を示す図である。測定装置10は、複数の波長域の光を用いた光干渉法により、転動体Xの表面に形成される油膜厚さを測定する。転動体Xは、例えば、球状、円柱状、あるいは円板状等、他の物体に対して相対的に転がり接触及び/又は転がり滑り接触し得る形状を有する。
【0045】
測定対象の転動体Xは、特に限定されるものではないが、例えば、転がり軸受の転動体である。転動体Xは、光を反射する材質で構成される。転動体Xの材質は、例えば、金属であり、SUJ2等の軸受用鋼とすることができる。ただし、転動体Xの材質は、セラミックや樹脂等であってもよい。
【0046】
図7に示すように、測定装置10は、透明板1と、光源2と、顕微鏡3と、カメラ4と、演算装置5とを備える。
【0047】
透明板1は、一方面11及び他方面12を有する。油膜の測定に際し、透明板1の一方面11には転動体Xが接触する。以下、説明の便宜上、測定装置10において、一方面11側を下方、他方面12側を上方といい、一方面11を下面、他方面12を上面という。
【0048】
透明板1は、ガラスで構成することができる。ただし、透明板1の材料は、特に限定されるものではない。透明板1は、光源2からの光を透過させ、転動体Xからの荷重に耐え得る強度を有するものであればよい。
【0049】
透明板1は、回転軸A
1周りに回転可能に構成される。回転軸A
1は、一端部が下面11の中心に接続され、下面11に垂直に延びる軸部材である。回転軸A
1の他端部には、モータ(図示略)が取り付けられる。透明板1の形状は、特に限定されるものではないが、例えば円板状である。
【0050】
透明板1の下面11には、半透膜6が設けられている。半透膜6は、光源2からの光の一部を反射し、残部を透過させる。半透膜6は、例えばクロム(Cr)膜である。
【0051】
透明板1の下方には、転動体Xを支持するための支持器具7が配置されている。支持器具7は、梃子部材71と、ローラ72と、錘73とを有する。梃子部材71は、透明板1の下方において概ね水平に延び、端部711,712を有する。端部711は、転動体Xに対応する位置にある。端部711上には、ローラ72が設置される。端部712は、端部711よりも透明板1から離れた位置にある。端部712には、錘73が取り付けられる。梃子部材71は、支点P周りに回転する。
【0052】
光源2は、透明板1と転動体Xとの接触部に対し、複数の波長域の光を瞬間的に照射する。光源2は、光源本体21と、バンドパスフィルタ22とを含む。光源本体21は、複数の波長域の光が混合した光、例えば白色光を発生させる。光源本体21は、瞬間的な光を所定の間隔で発生させる。光源本体21として、例えば、キセノンフラッシュライト等を使用することができる。
【0053】
バンドパスフィルタ22は、光源本体21の前方に配置されている。バンドパスフィルタ22は、光源本体21が発生させた光のうち、所定の波長域の光のみを透過する。バンドパスフィルタ22は、例えば、赤(R)、青(B)、緑(G)の光を通す3波長フィルタである。
【0054】
本実施形態では、光源本体21は、複数の波長域を含む光を発生させる。ただし、光源本体21は、複数の単色光(単一波長域の光)を別個に発生させることもできる。この場合、光源2は、バンドパスフィルタ22を有していなくてもよい。
【0055】
顕微鏡3は、透明板1の上面12側に配置される。顕微鏡3は、透明板1の上方において、上下方向に延びている。顕微鏡3は、透明板1と転動体Xとの接触部の真上に位置付けられる。顕微鏡3は、透明板1と転動体Xとの接触部の拡大像を形成する。顕微鏡3は、接触部の大きさとカメラ4の撮像素子サイズに応じて、適切な倍率まで接触部を拡大する。
【0056】
顕微鏡3は、ハーフミラー31と、接眼顕微鏡及び対物顕微鏡(図示略)とを備える。接眼顕微鏡は顕微鏡3の上端部に配置され、対物顕微鏡は顕微鏡3の下端部に配置される。ハーフミラー31は、接眼顕微鏡と対物顕微鏡との間に配置される。ハーフミラー31は、上下方向に対して約45°傾斜する。
【0057】
顕微鏡3の側面には、開口32が形成されている。開口32には、通路8が接続されている。通路8は、光源2からの光を顕微鏡3内に案内する。
【0058】
カメラ4は、顕微鏡3を介して、透明板1と転動体Xとの接触部を撮影する。カメラ4は、所定の間隔で接触部を撮影する。カメラ4の撮影間隔及び光源本体21の発光間隔は、一度の露光当たりに一度の発光が生じるように調整される。例えば、カメラ4の撮影間隔を光源本体21の発光間隔と一致させることにより、一度の露光中に一度だけ発光を生じさせることができる。
【0059】
カメラ4としては、一般的なCCDカメラを使用することができる。ただし、カメラ4は、明るさや色彩等の自動補正を行わないものであることが好ましい。カメラ4は、後述する干渉光を捉えてそのまま電気信号に変換し、ありのままの画像を生成する。カメラ4は3CCDカメラであることが好ましい。カメラ4が1CCDカメラである場合には、選択するRGB波長にもよるが、クロストーク補正が必要である。
【0060】
演算装置5は、カメラ4に直接又はネットワークを介して接続される。演算装置5は、カメラ4が撮影した画像を取得する。詳しくは後述するが、演算装置5は、取得した画像から、転動体Xの表面に形成された油膜厚さを求める。演算装置5は、例えば、CPU、HDD、及びメモリを含むコンピュータである。
【0061】
(測定方法)
以下、測定装置10を用いて油膜厚さを測定する方法について説明する。
【0062】
図7に示すように、油膜厚さの測定に際し、支持器具7のローラ72上に転動体Xを配置し、透明板1の下面11に接触させる。このとき、支持器具7によって転動体Xに荷重が加えられる。具体的には、錘73の重さによって梃子部材71が支点P周りに回転し、端部711が上方へ移動して、ローラ72上の転動体Xが透明板1の下面11に押し付けられる。ただし、転動体Xへの荷重の加え方は、これに限定されるものではない。
【0063】
次に、転動体Xを回転軸A
x周りに回転させるとともに、透明板1を回転軸A
1周りに回転させる。回転軸A
xは、一端部が転動体Xに接続され、透明板1の下面11に平行に延びる軸部材である。回転軸A
xの他端部には、モータ(図示略)が接続される。このモータが回転することにより、回転軸A
x及び転動体Xが回転する。透明板1は、回転軸A
1に接続されたモータ(図示略)が回転することによって回転する。透明板1と転動体Xとの間には、公知の方法で潤滑剤Yが供給される。例えば、ノズル等を用いて透明板1と転動体Xとの接触部に潤滑剤Yを直接供給してもよいし、転動体Xの一部に潤滑剤Yを塗布して転動体Xを回転させることにより、透明板1と転動体Xとの接触部に潤滑剤Yを供給してもよい。また、ローラ72を潤滑剤Yに浸漬させて、金属体Xに潤滑剤Yを供給してもよい。潤滑剤Yとしては、潤滑油又はグリースを用いることができる。
【0064】
転動体Xの回転速度は、通常、透明板1の回転速度と等しい。すなわち、透明板1と転動体Xとの接触部において、透明板1の下面11の速度と転動体Xの表面の速度とを一致させ、油膜厚さを滑り0で測定する。ただし、透明板1の回転速度と転動体Xの回転速度とが異なっていてもよいし、透明板1及び転動体Xのうち一方のみを回転させてもよい。この場合、滑りがあるときの油膜厚さを測定することができる。
【0065】
透明板1及び転動体Xの少なくとも一方を回転させることにより、転動体Xは、透明板1に対して相対的に転がり接触及び/又は転がり滑り接触した状態になる。この状態で、透明板1と転動体Xとの接触部に、光源2からの光を照射する。
【0066】
上述したように、光源2の光源本体21は、瞬間的な光を所定の間隔で発生させる。光源本体21が発生させた光のうち、所定の波長域の光だけがバンドパスフィルタ22を通過する。ここでは、R,B,Gの3色の光がバンドパスフィルタ22を通過するものとして説明する。
【0067】
3色の光は、通路8及び開口32を通って顕微鏡3内に導入され、ハーフミラー31に入射される。ハーフミラー31は、透明板1と転動体Xとの接触部の方向に3色の光を反射する。
【0068】
3色の光の一部は、透明板1を透過し、透明板1と半透膜6との界面で反射する。すなわち、3色の光の一部は、透明板1の下面11で反射する。3色の光の残部は、透明板1及び半透膜6を透過し、転動体Xの表面で反射する。
【0069】
透明板1の下面11で反射した光は、転動体Xの表面で反射した光と干渉する。干渉光は、顕微鏡3を介してカメラ4に入射される。カメラ4は、干渉光が入射されたときに接触部を撮影し、干渉画像を生成する。
【0070】
透明板1と転動体Xとが相対的に移動していることにより、露光時間内に時間的混色が生じる。特許文献1の測定方法を用いて油膜厚さを次数飛びなく測定するためには、混色量を低減させる必要がある。混色量は、先述のように、発光時間、回転速度、画像素子のサイズ(転がり方向)、画像素子のピクセル数(転がり方向)、顕微鏡倍率を用いて算出することができる。
【0071】
図8は、本実施形態の光学系の構成において、露光時間と回転速度における適/不適な範囲を示したものである。
図8において、V=[5−S/(N
P×M)]/Tで表される曲線の内側が適の範囲である。後述する実施例1は適の範囲に入る。混色量を許容量以下に抑えるには、この範囲内に入るよう露光時間と回転速度を設定すればよい。すなわち、次の式(1)を満たすように、露光時間及び回転速度が設定される。本実施形態では、光源2が瞬間的に発光するため、光源2の発光時間がカメラ4のシャッタースピードよりも短い。よって、本実施形態における露光時間は、光源2の発光時間である。
0<L×V+(S/N
P)/M≦5 (1)
【0072】
上記式(1)において、Lは光源2の発光時間[μs]、Vは転動体Xの回転速度[m/s]、Mは顕微鏡倍率、Sは転動体Xの転がり方向におけるカメラ4の撮像素子サイズ[μm]、N
pは転動体Xの転がり方向におけるカメラの画素数である。なお、透明板1のみが回転し、転動体Xが回転しない場合は、回転速度Vは0である。
【0073】
図7に戻り、油膜厚さの測定方法の説明を続ける。カメラ4によって生成された干渉画像は、演算装置5に出力される。演算装置5は、干渉画像に基づいて、転動体Xの表面に形成された油膜厚さを求める。干渉画像から油膜厚さを求める手法自体は公知であるので、ここでは簡単に説明する。
【0074】
図9は、R,B,Gの光の強度と油膜厚さとの対応関係を示すグラフである。
図9では、干渉画像におけるR,B,Gの各干渉光の強度が最大値のときを100%として、それに対する割合[%]で示している。
図9に示すように、油膜厚さは、3色の光の強度に対応している。よって、カメラ4が捉えた干渉光におけるRの強度、Bの強度、及びGの強度が全て定まれば、油膜厚さを決定することができる。演算装置5は、干渉画像からR,G,Bの波長域ごとに光強度を取得し、上記対応関係に基づいてその光強度を油膜厚さに変換する。演算装置5は、例えば、HDDに記憶された所定のプログラムをCPUによって実行することにより、このような処理を実現する。
【0075】
以上のようにして、転動体Xと透明板1との間に形成される油膜厚さが測定される。
【0076】
(効果)
本実施形態では、転がり接触及び/又は転がり滑り接触下の油膜厚さの測定について、簡便かつ広膜厚範囲にて測定できる、複数の波長域の光による光干渉法を採用している。それに加えて、本実施形態では、発光時間L及び回転速度Vが上記式(1)を満たすように設定される。これは、L×V+(S/N
P)/Mで表される撮像1枚あたりの混色量(時間的混色量と空間的混色量の和)が許容混色量を超えないことを意味する。このため、転動体X及び透明板1が相対的に転がり接触及び/又は転がり滑り接触しているにもかかわらず、上記光干渉法の背反事項である次数飛びを抑制することができる。よって、転がり接触及び/又は転がり滑り接触下において、転動体Xの表面に形成される油膜厚さを簡便かつ広膜厚範囲にて測定することができる。
【0077】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態に係る測定装置10Aの概略構成を示す図である。測定装置10Aは、光源及びカメラを除き、第1実施形態に係る測定装置10と同様の構成を有する。
図10に示すように、測定装置10Aは、第1実施形態における光源2及びカメラ4に代えて、光源2A及びカメラ4Aを備える。
【0078】
光源2Aは、光源本体21Aと、第1実施形態と同様のバンドパスフィルタ22とを有する。光源本体21Aは、油膜厚さを測定している間、複数の波長域を含む光を連続して発生させる。なお、光源本体21Aが複数の連続単色光を別個に発生させるように構成されている場合、光源2Aはバンドパスフィルタ22を有していなくてもよい。
【0079】
カメラ4Aは、いわゆる高速度カメラである。すなわち、カメラ4Aのシャッタースピードは非常に短い。シャッタースピードは、1回当たりのシャッターの開放時間である。
【0080】
測定装置10Aを用いて油膜厚さを測定する際、光源2Aは、透明板1と転動体Xとの接触部に複数の波長域の光を連続して照射する。カメラ4Aは、接触部に光が連続照射されている間に、顕微鏡3を介して接触部を撮影し、干渉画像を生成する。この干渉画像は、第1実施形態と同様、演算装置5における油膜厚さの変換に使用される。
【0081】
上述した通り、透明板1と転動体Xとの相対移動により、干渉画像には時間的混色が生じる。時間的混色量を低減させるためには、カメラ4Aのシャッタースピードを適切に設定する必要がある。
【0082】
カメラ4AのシャッタースピードをE[μs]、転動体Xの回転速度をV[m/s]、顕微鏡倍率をM、カメラ4Aの撮像素子サイズ(転がり方向)をS[μm]、カメラ4Aの画素数(転がり方向)をN
Pとしたとき、混色量はE×V+(S/N
P)/Mで算出することができる。混色量が許容混色量を越えるのを防止するため、カメラ4AのシャッタースピードEは、以下の式(2)を満たすように設定される。
0<E×V+(S/N
P)/M≦5 (2)
【0083】
第1実施形態の式(1)では、発光時間Lが使用されているのに対し、本実施形態の式(2)では、カメラ4AのシャッタースピードEが使用されている。しかしながら、式(1)及び(2)において、その他のパラメータは等しい。このため、
図8に示す露光時間Tと回転速度Vとの関係は、本実施形態の場合にも当てはまる。
【0084】
すなわち、カメラ4AのシャッタースピードEと回転速度Vの関係が、適の範囲に入ればよい。
【0085】
このように、本実施形態では、転がり接触及び/又は転がり滑り接触下の油膜厚さの測定において、連続光を使用する。ただし、本実施形態では、カメラ4AのシャッタースピードE及び回転速度Vが上記式(2)を満たすように設定される。すなわち、E×V+(S/N
P)/Mで表される撮像1枚あたりの混色量(時間的混色量と空間的混色量の和)が許容混色量を超えることがない。よって、転動体X及び透明板1が相対的に転がり接触及び/又は転がり滑り接触し、且つ連続光を使用しているにもかかわらず、混色量の少ない干渉画像を取得することができる。このため、転動体Xの表面に形成される油膜厚さを簡便かつ広膜厚範囲で次数飛び無く測定することができる。
【0086】
以上、実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【実施例】
【0087】
本開示による効果を確認するため、転動体(X)のEHL下において、干渉画像の撮影及び油膜厚さの測定を行った。転動体(X)として、鋼球を使用した。
【0088】
実施例1では、測定装置(10)を用いて干渉画像を撮影した。光源本体(21)としてキセノンフラッシュライトを使用し、発光時間L=2μs、回転速度V=0.5m/sの条件で撮影を行った。カメラは3CCDカメラ(JAI製 CV-M9CL)を用い、画素サイズを表すS/N
P=4.65μmである。顕微鏡倍率M=4である。実施例1は、L×V+(S/N
P)/M=2.1625であって上記式(1)を満たす。比較例として、透明板(1)と鋼球との接触部に照射する光を連続光とし、回転速度R=0.5m/sの条件で干渉画像を撮影した。
【0089】
実施例1及び比較例において撮影した各干渉画像を
図11に示す。実施例1の干渉画像では、次数飛びなく油膜厚さが測定できている。よって、上記式(1)を満たすように発光時間L及び回転速度Vを設定すれば、次数飛びが抑制されるといえる。
【0090】
実施例2では、表面に大きな傷を有する鋼球を使用し、測定装置(10)によって干渉画像の撮影及び油膜厚さの測定を行った。実施例1と同様、光源本体(21)としてキセノンフラッシュライトを使用し、発光時間L=2μs、回転速度V=0.5m/sに設定した。カメラの画素サイズや顕微鏡倍率も実施例1と同様である。実施例2も、L×V+(S/N
P)/M=2.1625であり、上記式(1)を満たす。
【0091】
実施例2において撮影した干渉画像を
図12に示す。
図13は、
図12の干渉画像から得られた3色(R,B,G)の光の強度を油膜厚さの分布に変換した図である。
図12に示す干渉画像では、鋼球の表面の傷を明確に視認することができる。また、
図13より、傷が存在しない部分と傷の部分とで油膜厚さが異なっていることがわかる。よって、鋼球の表面に傷が存在する場合であっても、傷の部分も含めて精度よく油膜厚さを測定することができるといえる。