特開2017-207681(P2017-207681A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クラリオン株式会社の特許一覧
特開2017-207681サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム
<>
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000003
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000004
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000005
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000006
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000007
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000008
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000009
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000010
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000011
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000012
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000013
  • 特開2017207681-サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-207681(P2017-207681A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/00 20060101AFI20171027BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   G10K15/00 L
   G01H17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-101037(P2016-101037)
(22)【出願日】2016年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武志
(72)【発明者】
【氏名】福江 一智
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB16
2G064CC29
(57)【要約】
【課題】再生系と収録系でサンプリング周波数が非同期の場合にインパルス応答特性を精度良く求めることが難しい。
【解決手段】測定用信号を収録することで得られた収録信号を、第一の周波数範囲内でサンプリング周波数を第一の間隔でシフトさせながらリサンプリングし、リサンプリング後の複数の第一の収録信号のSN比に基づき、より狭い第二の周波数範囲を設定し、収録信号を、第二の周波数範囲内でサンプリング周波数を第一の間隔よりも狭い第二の間隔でシフトさせながらリサンプリングし、リサンプリング後の複数の第二の収録信号のSN比に基づき、より狭い第三の周波数範囲を設定し、第三の周波数範囲で且つ第二の間隔よりも狭い第三の間隔で、SN比の最も高い第二の収録信号のサンプリング周波数を、線形補間によって変換し、線形補間後の複数の第三の収録信号のSN比に基づき、測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定用信号を収録する収録手段と、
前記収録手段により測定用信号を収録することで得られた収録信号に基づき、前記測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する推定手段と、
を備え、
前記推定手段は、
前記収録手段により収録された収録信号を、第一の周波数範囲内でサンプリング周波数を第一の間隔でシフトさせながらリサンプリングし、リサンプリング後の複数の第一の収録信号のSN比に基づき、該第一の周波数範囲よりも狭い第二の周波数範囲を設定し、
前記収録信号を、前記第二の周波数範囲内でサンプリング周波数を前記第一の間隔よりも狭い第二の間隔でシフトさせながらリサンプリングし、リサンプリング後の複数の第二の収録信号のSN比に基づき、該第二の周波数範囲よりも狭い第三の周波数範囲を設定し、
前記第三の周波数範囲で且つ前記第二の間隔よりも狭い第三の間隔で、SN比の最も高い前記第二の収録信号のサンプリング周波数を、線形補間によって変換し、
線形補間後の複数の第三の収録信号のSN比に基づき、前記測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する、
サンプリング周波数のずれ量推定装置。
【請求項2】
前記推定手段は、
前記第一の周波数範囲内でリサンプリングされた各収録信号と第一のリファレンス信号との相互相関関数を演算により求め、各前記第一の収録信号のインパルス応答特性を計算し、
計算された各第一の収録信号のインパルス応答特性に基づいて該各第一の収録信号のSN比を計算し、
前記第二の周波数範囲内でリサンプリングされた各収録信号と第二のリファレンス信号との相互相関関数を演算により求め、各前記第二の収録信号のインパルス応答特性を計算し、
計算された各第二の収録信号のインパルス応答特性に基づいて該各第二の収録信号のSN比を計算し、
前記第三周波数範囲内でサンプリング周波数が変換された各収録信号と第三のリファレンス信号との相互相関関数を演算により求め、各前記第三の収録信号のインパルス応答特性を計算し、
計算された各第三の収録信号のインパルス応答特性に基づいて該各第三の収録信号のSN比を計算し、
SN比の最も高い前記第三の収録信号のサンプリング周波数に基づき、前記測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する、
請求項1に記載のサンプリング周波数のずれ量推定装置。
【請求項3】
前記第一のリファレンス信号は、
前記測定用信号を前記第一の間隔に応じたカットオフ周波数でフィルタリングしたものであり、
前記第二のリファレンス信号は、
前記測定用信号を前記第二の間隔に応じたカットオフ周波数でフィルタリングしたものである、
請求項2に記載のサンプリング周波数のずれ量推定装置。
【請求項4】
前記SN比は、
前記インパルス応答特性の最大振幅を電力で表わしたピーク電力と、該インパルス応答特性の少なくとも一部の区間の実効電力の平均値との比である、
請求項2又は請求項3に記載のサンプリング周波数のずれ量推定装置。
【請求項5】
SN比の最も高い前記第三の収録信号のインパルス応答特性を測定結果として選択し出力する出力手段
を備える、
請求項2から請求項4の何れか一項に記載のサンプリング周波数のずれ量推定装置。
【請求項6】
測定用信号を収録する収録ステップと、
前記収録ステップにて測定用信号を収録することで得られた収録信号に基づき、前記測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する推定ステップと、
を含む、
前記推定ステップにて、
前記収録ステップにて収録された収録信号を、第一の周波数範囲内でサンプリング周波数を第一の間隔でシフトさせながらリサンプリングし、
リサンプリング後の複数の第一の収録信号のSN比に基づき、前記第一の周波数範囲よりも狭い第二の周波数範囲を設定し、
前記収録信号を、前記第二の周波数範囲内でサンプリング周波数を前記第一の間隔よりも狭い第二の間隔でシフトさせながらリサンプリングし、
リサンプリング後の複数の第二の収録信号のSN比に基づき、該第二の周波数範囲よりも狭い第三の周波数範囲を設定し、
前記第三の周波数範囲で且つ前記第二の間隔よりも狭い第三の間隔で、SN比の最も高い前記第二の収録信号のサンプリング周波数を、線形補間によって変換し、
線形補間後の複数の第三の収録信号のSN比に基づき、前記測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する、
サンプリング周波数のずれ量推定方法。
【請求項7】
前記推定ステップにて、
前記第一の周波数範囲内でリサンプリングされた各収録信号と第一のリファレンス信号との相互相関関数を演算により求め、各前記第一の収録信号のインパルス応答特性を計算し、
計算された各第一の収録信号のインパルス応答特性に基づいて該各第一の収録信号のSN比を計算し、
前記第二の周波数範囲内でリサンプリングされた各収録信号と第二のリファレンス信号との相互相関関数を演算により求め、各前記第二の収録信号のインパルス応答特性を計算し、
計算された各第二の収録信号のインパルス応答特性に基づいて該各第二の収録信号のSN比を計算し、
前記第三周波数範囲内でサンプリング周波数が変換された各収録信号と第三のリファレンス信号との相互相関関数を演算により求め、各前記第三の収録信号のインパルス応答特性を計算し、
計算された各第三の収録信号のインパルス応答特性に基づいて該各第三の収録信号のSN比を計算し、
SN比の最も高い前記第三の収録信号のサンプリング周波数に基づき、前記測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する、
請求項6に記載のサンプリング周波数のずれ量推定方法。
【請求項8】
前記第一のリファレンス信号は、
前記測定用信号を前記第一の間隔に応じたカットオフ周波数でフィルタリングしたものであり、
前記第二のリファレンス信号は、
前記測定用信号を前記第二の間隔に応じたカットオフ周波数でフィルタリングしたものである、
請求項7に記載のサンプリング周波数のずれ量推定方法。
【請求項9】
前記SN比は、
前記インパルス応答特性の最大振幅を電力で表わしたピーク電力と、該インパルス応答特性の少なくとも一部の区間の実効電力の平均値との比である、
請求項7又は請求項8に記載のサンプリング周波数のずれ量推定方法。
【請求項10】
SN比の最も高い前記第三の収録信号のインパルス応答特性を測定結果として選択し出力する出力ステップ
を含む、
請求項6から請求項9の何れか一項に記載のサンプリング周波数のずれ量推定方法。
【請求項11】
請求項6から請求項10の何れか一項に記載のサンプリング周波数のずれ量推定方法をコンピュータに実行させるためのサンプリング周波数のずれ量推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
音響空間の伝搬特性を測定する方法として、インパルス応答特性測定が知られている。インパルス応答特性を測定するインパルス応答特性測定装置では、一般に、測定用信号を再生する再生系と、測定用信号を収録する収録系とが、同一の発振器から生成される同一のサンプリング周波数で信号処理を行うループ構成となっている。
【0003】
一方、再生系と収録系とがループ構成になっていない場合もある。例示的には、再生系として外部入力の無い車載器(再生機器)を用い、収録系としてスマートフォン等の再生機器とは別の収録機器を用いる場合が挙げられる。この場合、収録機器では、サンプリング周波数が再生機器と非同期であるため、インパルス応答特性を精度良く求めることができない。
【0004】
例えば特許文献1や特許文献2に、収録系にて収録された測定用信号をフーリエ変換して位相を補正することにより、サンプリング周波数が非同期の場合のインパルス応答特性の測定精度を改善する方法が記載されている。しかし、この方法では、両機器のサンプリング周波数に大きな差異がある場合、位相回転量が大きくなりすぎて、位相の正確な補正量が不明になる。また、測定用信号に含まれるノイズ成分による位相変動が発生するため、位相が精度良く補正されず、インパルス応答特性が精度良く求まらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−365320号公報
【特許文献2】特開2011−22055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、再生系と収録系でサンプリング周波数が非同期であってもインパルス応答特性を精度良く測定するのに好適なサンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るサンプリング周波数のずれ量推定装置は、測定用信号を収録する収録手段と、収録手段により測定用信号を収録することで得られた収録信号に基づき、測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する推定手段とを備える。推定手段は、収録手段により収録された収録信号を、第一の周波数範囲内でサンプリング周波数を第一の間隔でシフトさせながらリサンプリングし、リサンプリング後の複数の第一の収録信号のSN比に基づき、該第一の周波数範囲よりも狭い第二の周波数範囲を設定し、収録信号を、第二の周波数範囲内でサンプリング周波数を第一の間隔よりも狭い第二の間隔でシフトさせながらリサンプリングし、リサンプリング後の複数の第二の収録信号のSN比に基づき、該第二の周波数範囲よりも狭い第三の周波数範囲を設定し、第三の周波数範囲で且つ第二の間隔よりも狭い第三の間隔で、SN比の最も高い第二の収録信号のサンプリング周波数を、線形補間によって変換し、線形補間後の複数の第三の収録信号のSN比に基づき、測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する。
【0008】
また、本発明の一実施形態において、推定手段は、第一の周波数範囲内でリサンプリングされた各収録信号と第一のリファレンス信号との相互相関関数を演算により求め、各第一の収録信号のインパルス応答特性を計算し、計算された各第一の収録信号のインパルス応答特性に基づいて該各第一の収録信号のSN比を計算し、第二の周波数範囲内でリサンプリングされた各収録信号と第二のリファレンス信号との相互相関関数を演算により求め、各第二の収録信号のインパルス応答特性を計算し、計算された各第二の収録信号のインパルス応答特性に基づいて該各第二の収録信号のSN比を計算し、第三周波数範囲内でサンプリング周波数が変換された各収録信号と第三のリファレンス信号との相互相関関数を演算により求め、各第三の収録信号のインパルス応答特性を計算し、計算された各第三の収録信号のインパルス応答特性に基づいて該各第三の収録信号のSN比を計算し、SN比の最も高い第三の収録信号のサンプリング周波数に基づき、測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する構成としてもよい。
【0009】
また、本発明の一実施形態において、第一のリファレンス信号は、例えば、測定用信号を第一の間隔に応じたカットオフ周波数でフィルタリングしたものである。また、第二のリファレンス信号は、例えば、測定用信号を第二の間隔に応じたカットオフ周波数でフィルタリングしたものである。
【0010】
また、本発明の一実施形態において、SN比は、例えば、インパルス応答特性の最大振幅を電力で表わしたピーク電力と、該インパルス応答特性の少なくとも一部の区間の実効電力の平均値との比である。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係るサンプリング周波数のずれ量推定装置は、SN比の最も高い第三の収録信号のインパルス応答特性を測定結果として選択し出力する出力手段を備える構成としてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係るサンプリング周波数のずれ量推定方法は、測定用信号を収録する収録ステップと、収録ステップにて測定用信号を収録することで得られた収録信号に基づき、測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する推定ステップとを含む。推定ステップにて、収録ステップにて収録された収録信号を、第一の周波数範囲内でサンプリング周波数を第一の間隔でシフトさせながらリサンプリングし、リサンプリング後の複数の第一の収録信号のSN比に基づき、第一の周波数範囲よりも狭い第二の周波数範囲を設定し、収録信号を、第二の周波数範囲内でサンプリング周波数を第一の間隔よりも狭い第二の間隔でシフトさせながらリサンプリングし、リサンプリング後の複数の第二の収録信号のSN比に基づき、該第二の周波数範囲よりも狭い第三の周波数範囲を設定し、第三の周波数範囲で且つ第二の間隔よりも狭い第三の間隔で、SN比の最も高い第二の収録信号のサンプリング周波数を、線形補間によって変換し、線形補間後の複数の第三の収録信号のSN比に基づき、測定用信号の発信元とのサンプリング周波数のずれ量を推定する。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係るサンプリング周波数のずれ量推定プログラムは、上記のサンプリング周波数のずれ量推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、再生系と収録系でサンプリング周波数が非同期であってもインパルス応答特性を精度良く測定するのに好適なサンプリング周波数のずれ量推定装置、ずれ量推定方法及びずれ量推定プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る音響システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る音響システムに備えられる収録機器において実行されるサンプリング周波数のずれ量推定処理のフローチャートを示す図である。
図3】リファレンス信号(測定用信号と同一のM系列信号)をフィルタリングしない場合の周波数特性を示す図である。
図4】本発明の一実施形態においてリファレンス信号をフィルタリングした場合の周波数特性を示す図である。
図5図2の処理ステップS15にて計算された結果得られる13個のインパルス応答特性のSNRを示す図である。
図6】リファレンス信号がカットオフ周波数Cfでフィルタリングされない場合に、図2の処理ステップS15にて計算されるインパルス応答特性のSNRを示す図である。
図7】本発明の一実施形態においてリファレンス信号をフィルタリングした場合のインパルス応答特性(差分DFが−150Hz)を示す図である。
図8】リファレンス信号をフィルタリングしない場合のインパルス応答特性(差分DFが−150Hz)を示す図である。
図9図2の処理ステップS19にて計算された結果得られる11個のインパルス応答特性のSNRを示す図である。
図10図2の処理ステップS23にて計算された結果得られる26個のインパルス応答特性のSNRを示す図である。
図11】本発明の一実施形態において測定結果として出力されるインパルス応答特性を示す図である。
図12】本発明の一実施形態において測定結果として出力されるインパルス応答の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本発明の一実施形態として音響システムを例に取り説明する。
【0017】
[音響システム1の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る音響システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る音響システム1は、再生機器10及び収録機器20を備えている。
【0018】
再生機器10は、例えば車両に搭載される車載型オーディオ機器であり、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等の音源より入力される測定用信号を復号化して、車室内のスピーカから出力する。測定用信号には、疑似ランダム雑音であるM系列信号(Maximum Length Sequence)が用いられる。
【0019】
収録機器20は、スマートフォン、フィーチャフォン、PHS(Personal Handy phone System)、タブレット端末、ノートPC、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Portable Navigation Device)、携帯ゲーム機など、車室内に持ち込める携帯型端末であり、図1に示されるように、収録部21、サンプリング周波数変換部22、インパルス応答計算部23、サンプリング周波数推定部24を有している。
【0020】
[ずれ量推定処理]
図2は、本発明の一実施形態に係る収録機器20において実行されるずれ量推定処理のフローチャートを示す図である。本フローチャートは、例えばユーザによる所定の収録待機操作が行われた時点で開始される。なお、収録機器20による測定用信号の収録は、運転席や助手席など、車室内の任意の位置で行われる。
【0021】
図2のS11(測定用信号の収録)]
本処理ステップS11では、収録待機中、所定の条件(レベル、長さ等)を満たす音信号(ここでは、再生機器10により再生された測定用信号)が収録機器20に取り付けられたマイクロフォン又は内蔵のマイクロフォンに入力されると、入力された測定用信号が収録部21で収録される。収録される測定用信号(以下、「収録信号」と記す。)の長さは、サンプリング周波数の変換(後述のリサンプリング)によりサンプルポイントの伸張が生じても過不足がないようにするため、M系列信号長の2倍程度とする。
【0022】
図2のS12(収録信号のリサンプリング)]
本処理ステップS12では、サンプリング周波数変換部22により、処理ステップS11(測定用信号の収録)にて収録された収録信号がリサンプリングされる。ここで、リサンプリングは、ある標本点系列でサンプリングされた信号を別の標本点系列でサンプリングされた信号に変換することであり、サンプリング周波数を整数倍に上げる補間処理と整数分の1に下げる間引き処理を組み合わせて行うことにより実現される。
【0023】
図2のS13(インパルス応答特性の計算)]
本処理ステップS13では、インパルス応答計算部23により、処理ステップS12(収録信号のリサンプリング)にてリサンプリングされた収録信号とリファレンス信号との相互相関関数が演算により求められて、インパルス応答特性が計算される。リファレンス信号は、再生機器10で再生される測定用信号と同一のM系列信号であり、収録機器20に予め記憶されている。リファレンス信号は、本処理ステップS13を実行するにあたり、リサンプリング後の各サンプリング周波数の間隔Dtに応じたカットオフ周波数Cfでフィルタリングされる。
【0024】
図3図4の各図に、リサンプリング後のサンプリング周波数Sfが44.1kHzであり、信号長が32,767サンプルであるM系列信号の周波数特性を示す。図3は、測定用信号と同一のM系列信号をフィルタリングしない場合の周波数特性を示し、図4は、M系列信号をフィルタリングした場合の周波数特性を示す。図3図4の各図中、縦軸は、レベル(単位:dB)を示し、横軸は、周波数(単位:Hz)を示す。なお、間隔Dtは50Hzであり、フィルタリングには2次のバタワースローパスフィルタが用いられる。この場合、カットオフ周波数Cfは、次の値に設定される。
【0025】
Cf=Sf/Dt=44.1kHz/50Hz=882Hz
【0026】
本実施形態では、再生機器10のサンプリング周波数sf1が44.1kHzであり、収録機器20のサンプリング周波数sf2が48kHzである。また、リサンプリング後のサンプリング周波数Sfの基準が44.1kHzであり、リサンプリングの範囲がSf±300Hzとなっている。従って、本実施形態では、処理ステップS12(収録信号のリサンプリング)にて43.8kHzから44.4kHzまでの範囲内で50Hz間隔でサンプリング周波数がシフトされ、夫々のリサンプリング後のサンプリング周波数について処理ステップS13(インパルス応答特性の計算)が実行される。これにより、計13個のインパルス応答特性が求まる。
【0027】
なお、上記の「±300Hz」は、収録機器20において収録信号を非同期のサンプリング周波数で処理する際の、再生機器10のサンプリング周波数との最大のずれ量を考慮して決定された範囲となっている。以下、説明の便宜上、両機器のサンプリング周波数のずれ量を「サンプリング周波数ずれ量」と記す。
【0028】
図2のS14(完了判定)]
本処理ステップS14では、処理ステップS12(収録信号のリサンプリング)及びS13(インパルス応答特性の計算)を複数回実行することにより、対象となる全て(計13個)の収録信号のインパルス応答特性が求められたか否かが判定される。
【0029】
図2のS15(処理対象の範囲の絞り込み)]
本処理ステップS15は、処理ステップS14(完了判定)にて対象となる全ての収録信号のインパルス応答特性が求められたと判定された場合(S14:YES)に実行される。本処理ステップS15では、サンプリング周波数ずれ量を推定するため、サンプリング周波数推定部24により、13個の収録信号のインパルス応答特性の夫々について、ピーク電力Sとノイズの実効電力Nを基にSNR(Signal Noise Ratio)が計算される。なお、ピーク電力Sは、インパルス応答特性を絶対値化した後、最大となる振幅を電力で表わしたものである。また、実効電力Nは、所定区間(例えば1サンプルから2048サンプルまでの区間)の実効電力の平均値である。
【0030】
なお、本実施形態では、サンプリング周波数ずれ量を推定するにあたり、パルス圧縮効果によってノイズが抑圧されたインパルス応答特性が用いられる。そのため、位相特性を検出して推定及び補正を行う構成(特許文献1や特許文献2)と比べて、サンプリング周波数の推定精度が向上する。
【0031】
図5に、本処理ステップS15にて計算された結果得られる13個のインパルス応答特性のSNRを示す。図5中、縦軸は、インパルス応答特性のSNR(単位:dB)を示し、横軸は、基準のサンプリング周波数Sfに対する差分DF(単位:Hz)を示す。本実施形態では、±300Hz(43.8kHzから44.4kHzまで)の範囲内でSNRがピークとなる差分DFがサンプリング周波数ずれ量であると推定される。
【0032】
本処理ステップS15では、サンプリング周波数ずれ量を精度良く推定するため、サンプリング周波数推定部24により、処理対象の範囲が、SNRがピークとなる差分DFを含む、より狭い範囲に絞り込まれる。具体的には、SNRが最大となる差分DFから、これに隣接する差分DFのうちSNRが大きい方の差分DFまでの範囲に絞り込まれる。図5の例では、−150Hz(SNRが最大となる差分DF)から−100Hz(隣接する差分DFのうちSNRが大きい方の差分DF)までの範囲に絞り込まれる。
【0033】
図6に、リファレンス信号がカットオフ周波数Cfでフィルタリングされない場合(図3参照)に、本処理ステップS15にて計算されるインパルス応答特性のSNRを例示する。図6中、縦軸は、インパルス応答特性のSNR(単位:dB)を示し、横軸は、基準のサンプリング周波数Sfに対する差分DF(単位:Hz)を示す。
【0034】
図6の例においても、差分DFが−150Hzであるときにインパルス応答特性のSNRが最大となる。しかし、最大となるSNRは18dBであり、図5の例よりも15dBも低い。
【0035】
図7図8に、差分DFが−150Hzであるときのインパルス応答特性を示す。図7は、リファレンス信号がカットオフ周波数Cfでフィルタリングされた場合(図4参照)のインパルス応答特性を示し、図8は、リファレンス信号がカットオフ周波数Cfでフィルタリングされない場合(図3参照)のインパルス応答特性を示す。図7図8の各図中、縦軸は、振幅を示し、横軸は、サンプル(時間)を示す。
【0036】
図8(及び図6)の例では、リファレンス信号がカットオフ周波数Cfでフィルタリングされないため、ノイズ成分が大きい(SNRが小さい)。そのため、再生機器10により再生される測定用信号のレベルが小さい場合や測定環境の雑音が大きい場合に、サンプリング周波数ずれ量を精度良く推定することが難しくなる。言い換えると、図7(及び図5)の例では、リファレンス信号がカットオフ周波数Cfでフィルタリングされることにより、ノイズ成分が小さくなる(SNRが大きくなる)ため、再生機器10により再生される測定用信号のレベルが小さい場合や測定環境の雑音が大きい場合であっても、サンプリング周波数ずれ量を精度良く推定することができる。
【0037】
図2のS16(収録信号のリサンプリング)]
本処理ステップS16では、処理ステップS15(処理対象の範囲の絞り込み)にて絞り込まれた範囲について、サンプリング周波数変換部22により、処理ステップS11(測定用信号の収録)にて収録された収録信号がリサンプリングされる。具体的には、収録信号は、43.95kHzから44kHz(差分DFが−150Hzから−100Hz)までの範囲内で5Hz間隔でリサンプリングされる。
【0038】
図2のS17(インパルス応答特性の計算)]
本処理ステップS17では、インパルス応答計算部23により、処理ステップS16(収録信号のリサンプリング)にてリサンプリングされた収録信号とリファレンス信号との相互相関関数が演算により求められて、インパルス応答特性が計算される。なお、リファレンス信号は、本処理ステップS17を実行するにあたり、リサンプリング後のサンプリング周波数の間隔Dt(5Hz)に応じたカットオフ周波数Cf(Sf/Dt=44.1kHz/5Hz=8.82kHz)でフィルタリングされる。
【0039】
処理ステップS16(収録信号のリサンプリング)にて43.95kHzから44kHzまでの範囲内で5Hz間隔でサンプリング周波数がシフトされ、夫々のリサンプリング後のサンプリング周波数について処理ステップS17(インパルス応答特性の計算)が実行される。これにより、計11個のインパルス応答特性が求まる。
【0040】
図2のS18(完了判定)]
本処理ステップS18では、処理ステップS16(収録信号のリサンプリング)及びS17(インパルス応答特性の計算)を複数回実行することにより、対象となる全て(計11個)の収録信号のインパルス応答特性が求められたか否かが判定される。
【0041】
図2のS19(処理対象の範囲の絞り込み)]
本処理ステップS19は、処理ステップS18(完了判定)にて対象となる全て(計11個)の収録信号のインパルス応答特性が求められたと判定された場合(S18:YES)に実行される。本処理ステップS19では、サンプリング周波数ずれ量を推定するため、サンプリング周波数推定部24により、11個の収録信号のインパルス応答特性の夫々について、ピーク電力Sとノイズの実効電力Nを基にSNRが計算される。
【0042】
図9に、本処理ステップS19にて計算された結果得られる11個のインパルス応答特性のSNRを示す。図9中、縦軸は、インパルス応答特性のSNR(単位:dB)を示し、横軸は、基準のサンプリング周波数Sfに対する差分DF(単位:Hz)を示す。
【0043】
本処理ステップS19では、サンプリング周波数ずれ量を精度良く推定するため、サンプリング周波数推定部24により、処理対象の範囲が、SNRがピークとなる差分DFを含む、より一層狭い範囲に絞り込まれる。図9の例では、−135Hz(SNRが最大となる差分DFに隣接する差分DFのうちSNRが大きい方の差分DF)から−130Hz(SNRが最大となる差分DF)までの範囲に絞り込まれる。
【0044】
図2のS20(収録信号の線形補間)]
リサンプリングでは、間隔Dtが狭いとき、低い周波数成分に対する補間と間引きを行うため、タップ数の多いFIR(Finite Impulse Response)が必要になる。そこで、本処理ステップS20では、サンプリング周波数変換部22により、線形補間によるサンプリング周波数の変換が行われる。ここで、線形補間は、点同士を直線で結んで内挿する簡易な手法であり、サンプリング周波数ずれ量が小さい場合に適用することができる。
【0045】
具体的には、本処理ステップS20では、43.97kHz(SNRが最大となる差分DF(−130Hz)に対応する周波数)にリサンプリングされた収録信号のサンプリング周波数が、処理ステップS19(処理対象の範囲の絞り込み)にて絞り込まれた範囲について、線形補間により変換される。線形補間によるサンプリング周波数の変換は、当該範囲内で0.2Hz間隔で行われる。
【0046】
図2のS21(インパルス応答特性の計算)]
本処理ステップS21では、インパルス応答計算部23により、処理ステップS20(収録信号の線形補間)にてサンプリング周波数が変換された収録信号と、リファレンス信号との相互相関関数が演算により求められて、インパルス応答特性が計算される。なお、間隔Dtが1Hz以下(具体的には、0.2Hz)であるため、リファレンス信号のフィルタリングは行われない。
【0047】
処理ステップS20(収録信号の線形補間)にて43.965kHzから43.97kHzまでの範囲内で0.2Hz間隔でサンプリング周波数がシフトされ、夫々の変換後のサンプリング周波数について処理ステップS21(インパルス応答特性の計算)が実行される。これにより、計26個のインパルス応答特性が求まる。
【0048】
図2のS22(完了判定)]
本処理ステップS22では、処理ステップS20(収録信号の線形補間)及びS21(インパルス応答特性の計算)を複数回実行することにより、対象となる全て(計26個)の収録信号のインパルス応答特性が求められたか否かが判定される。
【0049】
図2のS23(サンプリング周波数ずれ量の推定)]
本処理ステップS23は、処理ステップS22(完了判定)にて対象となる全て(計26個)の収録信号のインパルス応答特性が求められたと判定された場合(S22:YES)に実行される。本処理ステップS23では、サンプリング周波数ずれ量を推定するため、サンプリング周波数推定部24により、26個の収録信号のインパルス応答特性の夫々について、ピーク電力Sとノイズの実効電力Nを基にSNRが計算される。
【0050】
図10に、本処理ステップS23にて計算された結果得られる26個のインパルス応答特性のSNRを示す。図10中、縦軸は、インパルス応答特性のSNR(単位:dB)を示し、横軸は、基準(線形補間時の基準である43.97kHz)のサンプリング周波数Sfに対する差分DF(単位:Hz)を示す。
【0051】
図10の例によれば、インパルス応答特性のSNRは、差分DFが−1.6Hzのときに最大となる。線形補間時の基準である43.97kHzを加味すると、基準のサンプリング周波数Sf(44.1kHz)に対する差分DFとして「−131.6Hz」が得られる。「−131.6Hz」は、インパルス応答特性のSNRがピークとなる差分DFであるため、サンプリング周波数ずれ量(両機器の発振器の実質的な差異)であるものと推定される。推定されたサンプリング周波数ずれ量は、約0.3%(131.6Hz/44.1kHz)であるため、インパルス応答特性の測定精度に大きな影響を及ぼす。
【0052】
本実施形態では、インパルス応答計算部23にて、図2のずれ量推定処理により推定されたサンプリング周波数ずれ量(図10中、DF=−1.6Hz)のインパルス応答特性が測定結果として選択されて、後段の回路(例えば収録機器20内のメモリ等)に出力されて保存される。すなわち、本実施形態によれば、再生機器10とのサンプリング周波数ずれ量(−131.6Hz)を補正したインパルス応答特性の測定結果が得られる。
【0053】
図11図12の夫々に、インパルス応答計算部23より出力されるインパルス応答特性、インパルス応答の周波数特性を示す。図11中、縦軸は、振幅を示し、横軸は、サンプル(時間)を示す。また、図12中、縦軸は、レベル(単位:dB)を示し、横軸は、周波数(単位:Hz)を示す。
【0054】
本実施形態では、処理対象の範囲を複数回絞り込んだうえでサンプリング周波数ずれ量を推定することにより、サンプリング周波数の変換が不十分であるときのインパルス応答特性(図8)と比べて、ノイズが大幅に低減され且つ十分なSNRを有するインパルス応答特性になっていることが判る(図11参照)。また、周波数特性においてもノイズが観測されず、十分なダイナミックレンジが確保されていることが判る(図12参照)。
【0055】
このように、本実施形態によれば、サンプリング周波数ずれ量を、粗い周波数間隔で大雑把にリサンプリングして推定した後、細かい周波数間隔でリサンプリングして推定し、更に、サンプリング周波数ずれ量を小さくすることができた段階で線形補間によるサンプリング周波数の変換を行うことにより、処理量を抑えつつもサンプリング周波数ずれ量の推定精度を向上させることができる。
【0056】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 音響システム
10 再生機器
20 収録機器
21 収録部
22 サンプリング周波数変換部
23 インパルス応答計算部
24 サンプリング周波数推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12