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特開2017-207748三味線、三味線の胴部、三味線組立用キット、楽譜付き三味線セットおよび三味線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-207748(P2017-207748A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】三味線、三味線の胴部、三味線組立用キット、楽譜付き三味線セットおよび三味線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10D 1/00 20060101AFI20171027BHJP
   G10D 3/02 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   G10D1/00 100
   G10D3/02
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-95152(P2017-95152)
(22)【出願日】2017年5月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-107883(P2016-107883)
(32)【優先日】2016年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】513134627
【氏名又は名称】河野 公昭
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】河野 公昭
(72)【発明者】
【氏名】横田 桂子
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA08
5D002CC02
5D002DD07
5D002EE04
(57)【要約】
【課題】安価な材料を使用しても従来の三味線と同等の音の強度が出せ、従来の三味線と同等の音色を奏でられる三味線の提供。
【解決手段】胴部、棹、糸巻き部および糸を備える三味線であって、
胴部の厚みが20〜80mmであり、
胴部の表面が、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材であることを特徴とする三味線。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部、棹、糸巻き部および糸を備える三味線であって、
前記胴部の厚みが20〜80mmであり、
前記胴部の表面が、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材である
ことを特徴とする三味線。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂フィルムが、合成紙であることを特徴とする請求項1に記載の三味線。
【請求項3】
前記合成紙が延伸層を有し、
前記延伸層の縦延伸倍率が4〜9倍であり、
前記延伸層の横延伸倍率が6〜9倍であることを特徴とする請求項2に記載の三味線。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂フィルムがポリプロピレンおよび無機微細フィラーを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の三味線。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂フィルムの厚みが250〜300μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の三味線。
【請求項6】
前記棹の長さが550〜900mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の三味線。
【請求項7】
前記糸が合成繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の三味線。
【請求項8】
厚みが20〜80mmであり、
表面が熱可塑性樹脂フィルムを含む部材である
ことを特徴とする三味線の胴部。
【請求項9】
胴部の材料、棹、糸巻き部および糸を含む三味線組立用キットであって、
前記胴部の材料として第1の材料および裏板を含み、
前記第1の材料は枠体の片側の開口部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張り合わせてあり、
前記第1の材料および前記裏板から形成される胴部の厚みが20〜80mmである
ことを特徴とする三味線組立用キット。
【請求項10】
胴部、棹、糸巻き部および糸を含む三味線組立用キットであって、
前記胴部の厚みが20〜80mmであり、
前記胴部の表面が熱可塑性樹脂フィルムを含む部材である
ことを特徴とする三味線組立用キット。
【請求項11】
前記三味線組立用キットがさらに楽譜を有し、
前記糸として色が異なる3本の糸を有し、
前記楽譜が三線譜であり、
前記三線譜のそれぞれの糸を表す線の色と、それぞれの糸の色とが略同一であることを特徴とする請求項9または10に記載の三味線組立用キット。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の三味線と、楽譜とを含み、
前記糸として色が異なる3本の糸を有し、
前記楽譜が三線譜であり、
前記三線譜のそれぞれの糸を表す線の色と、それぞれの糸の色とが略同一であることを特徴とする楽譜付き三味線セット。
【請求項13】
厚みが20〜80mmの枠体を形成し、
前記枠体の表面に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張ることにより胴部を形成し、
前記胴部に棹の一方端部を取り付け、
前記棹の他方端部に糸巻き部を取り付け、
前記胴部と前記糸巻き部との間に糸を取り付ける
ことを特徴とする三味線の製造方法。
【請求項14】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の三味線組立用キットから得られる胴部に前記棹の一方端部を取り付け、
前記棹の他方端部に前記糸巻き部を取り付け、
前記胴部と前記糸巻き部との間に前記糸を取り付ける
ことを特徴とする三味線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三味線、三味線の胴部、三味線組立用キット、楽譜付き三味線セットおよび三味線の製造方法に関する。特に安価な材料を使用しても従来の三味線と同等の音の強度が出せ、従来の三味線と同等の音色を奏でられる三味線に関する。
【背景技術】
【0002】
三味線は日本の伝統的な楽器であり、古くから日本人に愛され親しまれている。
従来の三味線の胴部に張る皮は、高価な動物の皮(天然皮革)を使用しているため、従来の三味線は高価であった。そのため、従来の三味線は、手軽に愛好しにくいものであった。
【0003】
高価な動物の皮の代わりに、三味線の胴部の表面に張る部材を合成品に変更することが提案されている。例えば、特許文献1では「高分子物質を含み、力学的損失正接(tanδ)が−5〜40℃の温度範囲において0.1以下である皮革状構造物」を三味線の胴部の表面に張ることが提案されている。この皮革状構造物は動物の皮より安価であるため安価な三味線を提供できると共に、この皮革状構造物は動物の皮(天然皮革)と類似した音波特性を持ち、三味線に装着したところ良好な音色を呈したと特許文献1には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52−064402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際に本発明者らが力学的損失正接(tanδ)が−5〜40℃の温度範囲において0.1以下である材料であるポリエチレンテレフタレートのフィルムやポリオレフィン系合成紙等を、通常のサイズである従来の三味線の動物の皮の代わりに張った場合、従来の三味線の音の強度が出ず、従来の三味線の音色とはほど遠い音色しか得られなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものである。本発明が解決しようとする課題は、安価な材料を使用しても従来の三味線と同等の音の強度が出せ、従来の三味線と同等の音色を奏でられる三味線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが試行錯誤を繰り返した結果、熱可塑性樹脂フィルムを使用すれば、従来の三味線の音色に非常に近づくことを突き止めた。しかし、熱可塑性樹脂フィルムを使用すれば従来の三味線の音色に近いものが得られるが、それでも従来の三味線の音色とは異なるものだった。
そこで、本発明者らが再度試行錯誤を繰り返し、熱可塑性樹脂フィルムを使用した場合に従来の三味線の音色と同等の音色を奏でるためには、胴部のサイズを小さくする必要があることを突き止めた。すなわち、本発明者らは熱可塑性樹脂フィルムを使用した場合の胴部の最適なサイズ(厚み)を導き出し、従来の三味線と同等の音の強度が出せ、従来の三味線と同等の素晴らしい音色を奏でられるようになった。
【0008】
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明および本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
[1] 胴部、棹、糸巻き部および糸を備える三味線であって、
胴部の厚みが20〜80mmであり、
胴部の表面が、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材であることを特徴とする三味線。
[2] 熱可塑性樹脂フィルムが、合成紙である[1]に記載の三味線。
[3] 合成紙が延伸層を有し、
延伸層の縦延伸倍率が4〜9倍であり、
延伸層の横延伸倍率が6〜9倍である[2]に記載の三味線。
[4] 熱可塑性樹脂フィルムがポリプロピレンおよび無機微細フィラーを含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の三味線。
[5] 熱可塑性樹脂フィルムの厚みが250〜300μmであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の三味線。
[6] 棹の長さが550〜900mmであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の三味線。
[7] 糸が合成繊維であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の三味線。
[8] 厚みが20〜80mmであり、
表面が熱可塑性樹脂フィルムを含む部材である
ことを特徴とする三味線の胴部。
[9] 胴部の材料、棹、糸巻き部および糸を含む三味線組立用キットであって、
胴部の材料として第1の材料および裏板を含み、
第1の材料は枠体の片側の開口部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張り合わせてあり、
第1の材料および裏板から形成される胴部の厚みが20〜80mmであることを特徴とする三味線組立用キット。
[10] 胴部、棹、糸巻き部および糸を含む三味線組立用キットであって、
胴部の厚みが20〜80mmであり、
胴部の表面が熱可塑性樹脂フィルムを含む部材であることを特徴とする三味線組立用キット。
[11] 三味線組立用キットがさらに楽譜を有し、
糸として色が異なる3本の糸を有し、
楽譜が三線譜であり、
三線譜のそれぞれの糸を表す線の色と、それぞれの糸の色とが略同一である[9]または[10]に記載の三味線組立用キット。
[12] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の三味線と、楽譜とを含み、
糸として色が異なる3本の糸を有し、
楽譜が三線譜であり、
三線譜のそれぞれの糸を表す線の色と、それぞれの糸の色とが略同一であることを特徴とする楽譜付き三味線セット。
[13] 厚みが20〜80mmの枠体を形成し、
枠体の表面に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張ることにより胴部を形成し、
胴部に棹の一方端部を取り付け、
棹の他方端部に糸巻き部を取り付け、
胴部と糸巻き部との間に糸を取り付けることを特徴とする三味線の製造方法。
[14] [9]〜[11]のいずれか一項に記載の三味線組立用キットから得られる胴部に棹の一方端部を取り付け、
棹の他方端部に糸巻き部を取り付け、
胴部と糸巻き部との間に糸を取り付けることを特徴とする三味線の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価な材料を使用しても従来の三味線の音の強度が出せ、従来の三味線の音色を奏でることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の三味線の一例の正面図である。
図2】三味線の胴部の一例の側面図である。
図3】楽譜付き三味線セットに含まれる楽譜の一例を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[三味線]
本発明の三味線は、胴部、棹、糸巻き部および糸を備える三味線であって、
胴部の厚みが20〜80mmであり、
胴部の表面が、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材である。
この構成により、本発明の三味線は、安価な材料を使用しても従来の三味線と同等の音の強度が出せ、従来の三味線と同等の音色を奏でられる。
従来の三味線の胴部のサイズは、長さ(棹に沿った方向)が200〜230mm、幅(三味線の糸を上面にして置いたとき、棹に直交する方向)が185〜250mm、厚み(胴部の枠体の片面の開口部から反対側の開口部までの距離)が90〜110mmとされてきた。これは、破れにくく、強く引っ張ることで高音を奏でることができる動物の皮を使用し、かつ生じた音を共鳴するための十分な空間を確保するために経験的に得られたサイズである。
ところが、本発明者らが従来の三味線の胴部2に熱可塑性樹脂フィルムを張ったところ、従来の三味線の音色を奏でることはできなかった。しかし、本発明者らの試行錯誤によって、従来の三味線のサイズより小さなサイズの胴部2を採用することで、従来の三味線に近い音色を奏でることが可能になった。
【0013】
近年、趣味の多様化等により三味線を愛好する人が減少しており、特に子供達は殆ど三味線に興味を示さなくなっている。子供達の三味線離れの原因は価格だけでない。すなわち、子供達にとって従来の三味線は弾き辛いという点や、子供達にとって従来の三味線が面白みに欠けるという点も原因として挙げられるが、これらの問題については何ら解決されていないのが現状である。
本発明の好ましい実施形態によれば、三味線のサイズや組み立て方法を工夫することにより、子供達にも弾きやすく、かつ楽しいと感じることができる三味線等を提供できる。
具体的には、本発明の好ましい実施形態によれば、身体の小さい子供達でも手軽に楽しく演奏を楽しむことができる。
また、本発明の好ましい実施形態によれば、必然的に三味線のサイズが小さくなるため、子供達の体のサイズに合った弾きやすい三味線を提供することができる。
また、本発明の好ましい実施形態によれば、三味線を子供達が自ら組み立てたり、三味線に絵を描くことができるので、子供達が楽しいと感じることができる三味線を提供することができる。
【0014】
図面に基づいて本発明の三味線を説明する。
図1は、本発明の三味線の一例の正面図である。
図1の符号1は本発明の三味線である。図1に示した三味線1は、胴部2、棹3、糸巻き部4および3本の糸5(糸5a、糸5b、糸5c)を備え、胴部2の厚みが20〜80mmであり、胴部2の枠体13の少なくとも片側の開口部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11を有する。熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11は、胴部2の枠体13の表側の面(図2の符号11が示す側)に張ることが可能であり、更には胴部2の枠体13の裏側の面(図2の符号12が示す側)にも張ることも可能である。図1および本明細書では、胴部2の枠体13の表側の面にのみ熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11を張る態様について説明する。
【0015】
<三味線の胴部>
本発明の三味線1は、胴部2の厚みが20〜80mmである。
また、本発明の三味線の胴部は、厚みが20〜80mmであり、表面が熱可塑性樹脂フィルムを含む部材である。
具体的には、本発明の三味線は、胴部2の厚みが20〜80mmである。胴部2の厚みは30〜60mmであることが好ましい。
本発明の三味線は、胴部2の長さが135〜190mmであることが好ましく、150〜180mmであることがより好ましい。
本発明の三味線は、胴部2の幅が70〜180mmであることが好ましく、100〜170mmであることがより好ましい。
本発明の三味線は、胴部2内部の容積が189000〜2736000mm3であることが好ましく、450000〜1836000mm3であることがより好ましい。
本発明の三味線は、胴部2の厚みが20〜80mmである第1の態様に限定されず、胴部2の長さが135〜190mmである第2の態様、胴部2の幅が70〜180mmである第3の態様、胴部2内部の容積が189000〜2736000mm3である第4の態様のいずれであってもよい。ここで、胴部2内部の容積とは、枠体と胴部の表面及び裏板で構成される胴部2の容積であって、胴部2に差し込まれる中木等の構造物による容積の減少は加味しない。
【0016】
胴部は、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11および枠体13(必要に応じてさらに裏板)で囲われた内部が、空洞であることが好ましい。胴部2の厚みは、胴部2のうち厚みが最大の部分の厚みを意味する。胴部2の厚みは、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11および枠体13の厚みの合計を意味する。胴部2が必要に応じてさらに裏板を有する場合、胴部2の厚みは、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11、枠体13の厚みおよび裏板の厚みの合計を意味する。
【0017】
熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11を胴部の表面の材質として使用した時に、胴部2のサイズを小さくすることが従来の三味線に近い音色を奏でるために必要な理由は明確に解明されていないが、以下のとおりであると推定している。
胴部の表面に動物の皮を張った場合、厚みの凹凸が生じ、凹部を振幅の節とする共鳴を起こしやすい傾向がある。そうすると、胴部の長さまたは幅に対して、節と節の間が短い振動を起こしやすくなる。
一方、熱可塑性樹脂フィルムは厚みの凹凸はほとんどなく、熱可塑性樹脂フィルムは胴部の枠体との接続部を節として共鳴する傾向がある。そうすると、従来の三味線の胴部の枠体のサイズに熱可塑性樹脂フィルムを張った場合、共鳴振動する波長が動物の皮を張った場合より長くなり、従来の三味線の音の波長域では共鳴しにくくなる。
これに対し、熱可塑性樹脂フィルムを用い、かつ、従来の三味線よりも胴部の厚み、長さまたは幅を小さくすれば、振動の波長が短くなり、従来の三味線の音の波長域で共鳴しやすくなる。
【0018】
三味線1の胴部2のサイズを小さくすることによって、胴部2の質量が軽量化される効果が得られる。加えて、三味線1の重心を棹3の胴部2に近い場所に位置させるため、棹3の長さを短くしたり、糸巻き部4を小さくしたりすることも必要になる。そのため、三味線1全体の質量も軽量化される。それにより、大人より身体の小さな子供達が三味線を取り扱いやすくなり、三味線を使い慣れていない大人が三味線を弾きながら練り歩く使用法でも疲れにくくなる効果が得られる。
なお、三味線1の胴部2には、任意の位置に駒を取り付けてもよい。
【0019】
三味線1において、胴部2の表面に張られた状態の熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11のデュロメータ タイプA(ショアA)硬度は、JIS K 6253の規定に基づいて測定した場合にショアA硬度50以上であることが好ましく、70〜100であることがより好ましく、80〜98であることが特に好ましい。
【0020】
(枠体)
本発明においては図2の胴部2における枠体(側面枠)13の材料に杉材、ラワン材等の安価な木材を使用することができる。
ここで、従来の三味線では、枠体13に動物の皮を均一に張ることは熟練を要するので、枠体13に動物の皮を張った状態で消費者に提供されるのが通常であった。従来の三味線では枠体13の開口部の片面のみに動物の皮を張ると、動物の皮の張力のため、枠体13にゆがみが生じる。
これに対し、本発明では、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11の張力は動物の皮に対して低いので、胴部2の枠体13の片側に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11を張った状態でキット部材として提供することができ、三味線の演奏の経験が無い人でも三味線の構造が理解しやすく組み立てが容易になる。
枠体の厚みは、3〜30mmであることが好ましく、5〜25mmであることがより好ましい。
さらに胴部2の枠体13の表面にはウレタン塗料等の塗料を塗布してもよい。これにより良好な美観を呈することに加え、塗料として耐水性がある塗料を採用することにより屋外での使用を可能とする。
【0021】
(裏板)
胴部2の片側のみに熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11を張った状態で消費者に提供された場合、消費者が枠体13の反対側に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張ることは容易ではない。そこで、枠体13の反対側の開口部は裏板12として、これを貼り合わせる構造とすることが好ましい。
裏板12の材質としては、木の板が、環境安定性が高い観点から好ましい。例えば、杉板、ラワン材等の単板、合板等が使用可能である。木質繊維に接着剤を混合し、加熱圧縮成型して得られる中密度繊維板(MDF)を使用することが好ましい。中密度繊維板を使用することによって、胴部2で共鳴された音が中でこもらず、従来の三味線に近い音色が得られやすい。
裏板の厚みは、0.3〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましい。
【0022】
(熱可塑性樹脂フィルムを含む部材)
本発明の三味線1は、胴部2の表面が、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11である。これにより、本発明の三味線は、安価な材料を使用することができる。その結果、本発明の三味線を子供達向け教材等として多数導入することが容易になる。
本発明の三味線1は、胴部2の枠体13の少なくとも片側の開口部に、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11(従来の三味線の動物の皮に相当する部材)を有することが好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルムの表面に印刷や手書きによる加飾を施せることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムの方が、動物の皮よりも屋外で使用しても安定し、安価で使用しやすい。
熱可塑性樹脂フィルムはさらに耐水性を有することが好ましく、耐水性を有する熱可塑性樹脂フィルムを用いることで、より屋外での使用をしやすくできる。
熱可塑性樹脂フィルムを含む部材は、動物の皮に比べて凹凸の少ない平面的な部材であることが、音色を制御しやすい観点から好ましい。熱可塑性樹脂フィルムを含む部材は、表面粗さが小さいことが好ましく、表面粗さが通常の合成紙と同程度以下であることがより好ましい。
【0023】
−熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂フィルムに含まれる熱可塑性樹脂の種類としては特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等のポリスチレン系樹脂等を使用することができる。これら上記の熱可塑性樹脂の中から1種類を選択して単独で使用してもよいし、2種類以上を選択して組み合わせて使用してもよい。これらの熱可塑性樹脂の中では、強度と加工性に優れるポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、印刷適性の観点からポリプロピレン系樹脂を用いることがより好ましく、ポリプロピレン系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0024】
熱可塑性樹脂フィルムにおける熱可塑性樹脂の配合量は、40〜100質量%であることが好ましく、45〜85質量%であることがより好ましく、50〜70質量%であることが更に好ましい。これにより、鋭い撥で熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を弾いた場合でも熱可塑性樹脂フィルムが傷つきにくい。
【0025】
−無機微細フィラー−
熱可塑性樹脂フィルムは無機微細フィラーを含むことが好ましい。ただし、熱可塑性樹脂フィルムは無機微細フィラーを含まなくてもよい。
無機微細フィラーは、無機微細粉末であることが好ましい。無機微細粉末の具体例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、珪藻土、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土などを例示することができる。また、無機微細粉末の種々の表面処理剤による表面処理品も例示できる。中でも重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム及びそれらの表面処理品、クレイ、珪藻土を使用すれば安価で延伸時の空孔形成性がよいために好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂フィルムにおける無機微細フィラーの配合量は、0〜60質量%であることが好ましく、15〜55質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることがさらに好ましい。これにより熱可塑性樹脂フィルムに十分な強度を持たせることが出来る。また、熱可塑性樹脂フィルム内部に微細な空孔を形成して動物の皮の質感に近づけることが出来る。また、熱可塑性樹脂フィルムの表面に微細な凹凸を形成することで、熱可塑性樹脂フィルムの表面を加飾しやすくすることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムの表面に絵や文字を直接描いたり、印刷したりして、三味線1にデザインを施すことにより、三味線を見た人間に三味線への興味を一層引き立たせる効果を奏する。
また、熱可塑性樹脂フィルムの表面に広告等を印刷することにより、三味線を見た人間に三味線への興味および/または印刷された広告等への興味を引き立たせる効果を奏することも好ましい。
【0027】
熱可塑性樹脂フィルムは、3層構造であることが好ましい。例えば、微細な空孔を多く有する基層と、強度を有し、かつ表面に絵を直接描いたり、印刷したりすることを可能とする表層とに機能を分離することができる。
例えば、基層に、ポリオレフィン系樹脂40〜90質量%及び平均粒子径が1〜15μmの無機微細粉末10〜60質量%を含有する熱可塑性樹脂組成物を使用し、表層としてプロピレン単独重合体30〜55質量%と平均粒子径が0.01〜0.9μmの無機微細粉末45〜70質量%とを含有する熱可塑性樹脂組成物を使用して、フィルムに成形し、後述の延伸をすることによって、油性インキで印刷が可能で、アクリル絵の具や油性ペン等での手書きが可能な表面を得ることができる。
また、表層に結晶化度が80%以下のプロピレン系共重合体を45〜65質量%、平均粒子径が1〜5μmの無機微細粉末55〜65質量%を含有する熱可塑性樹脂組成物を使用することによって、紫外線硬化型インキで印刷が可能な表面を得ることができる。
この様な3層構造の熱可塑性樹脂フィルムは、一般に合成紙として入手可能である。
【0028】
熱可塑性樹脂フィルムは、延伸されていることが好ましい。中でも熱可塑性樹脂フィルムを構成する層のうち縦延伸倍率が4〜9倍、横延伸倍率が6〜9倍の延伸層を少なくとも1層含むことが好ましい。上記範囲の延伸倍率を有する熱可塑性樹脂を使用することによって、張力を掛けながら枠体の開口部と張り合わせるときに、熱可塑性樹脂フィルムが若干伸びながら、皺が入ることなく張り合わせでき、胴部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張った状態での張力の調整が容易になる。
熱可塑性樹脂フィルムは、延伸層がボイド(空隙)を有していてもよく、ボイドを有していなくてもよい。
【0029】
熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面は印刷または手書きが可能であるように構成することが好ましい。この様な表面は例えば、アクリル系ポリマー、ポリエチレンイミン系ポリマーの水溶液や水分散液を塗布し、乾燥することによって得られる。さらに水溶液や水分散液をむらなく塗布するために熱可塑性樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理やプラズマ処理等の表面酸化処理を施すこともできる。また、熱可塑性樹脂フィルムに帯電防止性を付与するため、水溶液や水分散液中にポリオキシアルキレン系ポリマーや4級アンモニウム塩系ポリマー等の帯電防止剤を配合してもよい。また、印刷や手書きの情報が脱落しにくくするために水溶液や水分散液中に公知の各種架橋剤を配合してもよい。これらの表面処理は印刷や手書きの方法、インキや塗料の種類等に応じて適宜公知技術から採用することができる。
【0030】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは150〜500μmであることが好ましい。また、200〜400μmであることがより好ましく、250〜300μmであることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂フィルムの厚みが上記範囲にあることによって、熱可塑性樹脂フィルムに張力がかかっても破れにくくなり、皺も入りにくくなることから胴部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張ったり、張った後の余分な熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を除去したりする作業が容易になる。
【0031】
熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を接着剤で枠体に取り付けることが好ましい。接着剤としては、瞬間接着剤、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョンが挙げられる。これらの中でも瞬間接着剤を使用することが好ましい。また、熱可塑性樹脂の種類によっては木材との接着性が乏しいので、予め熱可塑性樹脂フィルムの表面をプライマー処理しておくこともできる。
【0032】
熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材として三味線を構成したときに撥等の衝撃によって裂けないように構成することが好ましい。そのためには熱可塑性樹脂フィルムを構成する層のうちの少なくとも1層の空孔率を0〜5%にすることが好ましい。ここで、空孔率は熱可塑性樹脂フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、観察像を画像解析した時に断面全体の面積に占める空孔部分の面積を指す。
【0033】
熱可塑性樹脂フィルムを含む部材に使用する熱可塑性樹脂フィルムは加飾できるように構成することが好ましい。加飾方法は公知の方法を適宜使用することができる。同種類の図柄を大量に印刷する場合は、有版印刷方法が好ましく、中でもオフセット印刷、グラビア印刷が好ましい。また、少量多品種または個別データを印刷する場合は、無版印刷方法が好ましく、中でも電子写真印刷やインクジェット印刷が好ましい。さらに熱可塑性樹脂フィルムに印刷した場合の迅速な固定の観点から電子写真印刷の中でも液体トナーを使用する印刷方法が好ましく、インクジェット印刷の中でも紫外線硬化型インクを使用する印刷方法が好ましい。また、手書きによる加飾の場合、マーカー、ボールペン、色鉛筆、クレヨン、パステル、絵の具、墨汁、カラースプレー等の画材を使用することが出来る。中でも画材の迅速な固定の観点から油性のマーカー、アクリル系の絵の具、クレヨン等が好ましい。
一方、熱可塑性樹脂フィルムを複数の層からなる構成として、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張ったときに外側になる層(外側層)が加飾に適した機能を有することが好ましい。そのためには、外側層に含まれる熱可塑性樹脂全体の75質量%以上をプロピレン−エチレンランダム共重合体とする方法、外側層に含まれる無機微細フィラーを平均粒子径が0.01〜0.1μmの範囲とする方法、外側層の表面にコロナ放電やプラズマ処理等の表面処理を施す方法、外側層の表面にバインダを含む塗工層を設ける方法等を単独で使用したり適宜組み合わせて使用したりすることができる。
【0034】
<糸>
本発明の三味線1に使用する糸5としては特に制限は無い。例えば、絹糸、ポリエチレン糸、ナイロン糸、ポリフッ化ビニリデン糸等が挙げられる。これらの中でも、切れにくく、弾力があるため調弦しやすく、屋外でも使用可能とする観点から、合成樹脂製の材料を含む糸が好ましく、合成繊維であることがより好ましく、ナイロン糸が特に好ましい。ナイロン糸は太さが異なる様々の種類のものが釣糸(テグス)等として市販されているので容易に入手できる。
【0035】
本発明の三味線には3本の異なる太さの糸5a、糸5b、糸5cを使用することが好ましい。3本の糸は太い方から順に一の糸(糸5a)、二の糸(糸5b)、三の糸(糸5c)と称する。
また、それぞれの糸5は異なる色で着色されていることが好ましい。さらに、それぞれの糸の色と、三線譜の対応する糸を表す線(図3の楽譜に表された糸を示す線5d、5e、5f)の色とを略同一にすると、初心者でも演奏時にどの糸を押さえればよいか理解しやすいため好ましい。ある1本の糸の色と三線譜の対応する糸を表す線の色が「略同一」であるとは、人間が視認した場合に同じ色と判断できる色の範囲まで同一と許容される。例えば、ある1本の糸の色を人間が視認した場合に、三線譜の対応する糸を表す線を楽譜の3本の三線譜の線の中から瞬時に選択できれば、その1本の糸の色と三線譜の対応する糸を表す線の色は同じ色と言える。
糸5の取り付けは、従来の三味線と同様に、音緒(ねお)に糸の片方の端を結び、反対側の端を糸巻き部に巻きつけてもよい。中木に3つの穴を開け、これら3つの穴に糸を通してそれぞれの糸を結ぶことで音緒を不要としてもよい。このようにすることで、三味線の制作が容易になる。
【0036】
<棹>
本発明においては、三味線の重心を棹3の胴部2に近い場所に位置させることが好ましい。そのため、従来の三味線に比べ胴部が小さくなると、棹3の長さは必然的に短くなる。従来の三味線における棹の長さは970mmが基本である。これに対し、本発明においては550〜900mmが好ましく、650〜750mmがより好ましく、700〜720mmがさらに好ましい。
なお、従来の三味線に比べ胴部が小さくなる場合に、棹3の長さを従来の三味線と同程度とすると、甲高い音が主体となり、楽器として機能しにくい。
また、棹3は制作を容易にする観点から角材を用いてもよい。また、棹3は持ちやすいように糸5を貼る面と反対側の面の面取りを行うことができる。
棹3の一方端部には、糸巻き部4を固定するために、糸巻き部差し込み穴を設けることが好ましい。
棹3には、糸巻き部4を固定するために、糸巻き部差し込み穴(図示せず)を設けることが好ましい。
さらに棹3の表面にはウレタン塗料等の塗料を塗布してもよい。これにより良好な美観を呈することに加え、塗料として耐水性がある塗料を採用することにより屋外での使用を可能とする。
【0037】
<糸巻き部>
また、三味線1の重心を棹3の胴部2に近い場所に位置させる目的で糸巻き部4も質量を軽減することが好ましい。
さらに糸巻き部4の表面にはウレタン塗料等の塗料を塗布してもよい。これにより良好な美観を呈することに加え、塗料として耐水性がある塗料を採用することにより屋外での使用を可能とする。
【0038】
<中木>
棹3と、棹3と胴部2とを接続するための中木(図示せず)は従来の三味線のように着脱式に構成してもよいが、分解の必要がなければ中木を接着剤で接着して組み立てるように構成してもよい。
中木(例えば、中木のうち、胴部2から突出した中木先)に糸を結ぶための3つの穴を開け、音緒を不要とすることが好ましい。
また、中木は制作を容易にする観点から角材を用いてもよい。
【0039】
<棹、中木および糸巻き部の相関関係>
従来の三味線の棹の長さに対する本発明の三味線1の棹3の長さの比率と同比率になるように糸巻き部4を縮小することが好ましい。これにより全体の重心のバランスに加え、見た目のバランスも保たれ、サイズを縮小したことによる外観上の違和感も少なくなる。
棹3、中木および糸巻き部4を組み立てた場合の長さが三味線1の全長となる。三味線1の全長は980〜1060mmが好ましく、1000〜1040mmがより好ましい。
【0040】
<糸と棹との相関関係>
本発明の三味線1は、安価とするため、従来の三味線で使用されている上質な糸を使用しなくてもよい。
更に、棹3の長さを従来の三味線より短くした場合、糸の弾き具合が従来の三味線とは異なり、若干ではあるが音色が従来の三味線と異なってしまうことがある。
糸5の素材を上述の好ましい態様にすることにより、安価でありながら従来の三味線と同等の音質を奏でられる。
【0041】
<三味線の使用態様>
本発明の三味線は、動物の皮の代わりに熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を用いているため、環境安定性が高く、屋外などの気温および湿度が変動しやすい場所であっても使用することができる。
更に、本発明の好ましい実施形態によれば、三味線に耐水性を付与することができ、耐水性の観点からも水に濡れる可能性がある屋外でも使用できる。
また、熱可塑性樹脂フィルムを含まない紙や段ボール紙を胴部の表面に用いる場合に比べて、本発明の三味線は熱可塑性樹脂フィルムを含む部材が破れにくく、印刷適性も良好である。
【0042】
[三味線組立用キット]
本発明の三味線組立用キットは、以下の第1の態様または第2の態様である。
本発明の三味線組立用キットの第1の態様は、胴部の材料、棹、糸巻き部および糸を含む三味線組立用キットであって、
胴部の材料として第1の材料および裏板を含み、
第1の材料は枠体の片側の開口部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張り合わせてあり、
第1の材料および裏板から形成される胴部の厚みが20〜80mmである。本発明の三味線組立用キットの第1の態様によれば、胴部を形成していない状態で消費者に提供することができる。
本発明の三味線組立用キットの第2の態様は、胴部、棹、糸巻き部および糸を含む三味線組立用キットであって、
胴部の厚みが20〜80mmであり、
胴部の表面が熱可塑性樹脂フィルムを含む部材である。本発明の三味線組立用キットの第2の態様によれば、胴部を形成した状態で消費者に提供することができる。
【0043】
三味線組立用キットは、胴部2、棹3、糸巻き部4、中木、糸5、譜尺(図示せず)を含むことが好ましい。このうち胴部2、棹3、糸巻き部4、中木、糸5は上記の各項目で説明したものをそのまま使用することができる。
譜尺(「つぼシール」という通称でも呼ばれている)は、糸5を押さえる位置の目安となるもので、文化譜を使用する場合、各糸共通で上駒に相当する場所を0と表記し、駒に向かって1、2・・・と番号を振る。ここで、本発明の三味線1は従来の三味線に対して棹3の長さが短いため、上駒と駒(通常2尺6寸。1尺は約303mm、1寸は約30.3mm)の間を等率縮小した譜尺を準備する。譜尺の裏を粘着剤と剥離紙の構成として、譜尺を直接棹に張ることもできる。
三味線組立用キットは、さらに図3に示す楽譜を有することが好ましい。楽譜は3本の糸5(5a、5b、5c)に対応した線(5d、5e、5f)を引いてある文化譜や弥之介譜であることが好ましい。また、譜尺に記入する番号が各糸共通となり初心者でも扱いやすくなる観点から、文化譜であることがより好ましい。
また、楽譜が三線譜であり、かつ三線譜のそれぞれの糸5を表す線の色と、それぞれの糸5の色とが略同一であることが好ましい。これにより、初心者でもその糸を押さえればよいか理解しやすいという効果を奏する。
三味線組立用キットは、さらに撥、音緒、三味線ケース等の付属品を備えてもよい。これらの付属品を備えることによって、より本格的な三味線の雰囲気を出すことができる。
【0044】
[楽譜付き三味線セット]
本発明の楽譜付き三味線セットは、本発明の三味線と、楽譜とを含み、
糸として色が異なる3本の糸を有し、
楽譜が三線譜であり、
三線譜のそれぞれの糸を表す線の色と、それぞれの糸の色とが略同一である。
【0045】
[三味線の製造方法]
本発明の三味線の製造方法は、以下の第1の態様または第2の態様である。
本発明の三味線の製造方法の第1の態様は、厚みが20〜80mmの枠体を形成し、
枠体の表面に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張ることにより胴部を形成し、
胴部に棹の一方端部を取り付け、
棹の他方端部に糸巻き部を取り付け、
胴部と糸巻き部との間に糸を取り付ける。本発明の三味線の製造方法の第1の態様によれば、本発明の三味線を製造できる。
本発明の三味線の製造方法の第2の態様は、本発明の三味線組立用キットから得られる胴部に棹の一方端部を取り付け、
棹の他方端部に糸巻き部を取り付け、
胴部と糸巻き部との間に糸を取り付ける。本発明の三味線の製造方法の第2の態様によれば、本発明の三味線組立用キットから、本発明の三味線を製造できる。本発明の三味線組立用キットの第1の態様から三味線を製造する場合は、さらに枠体の片側の開口部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張り合わせてある第1の材料に、裏板を貼り合わせて胴部を得る工程を含むことが好ましい。本発明の三味線組立用キットの第2の態様から三味線を製造する場合は、本発明の三味線組立用キットの第2の態様の胴部をそのまま用いることができる。
【0046】
以下、本発明の三味線の製造方法の好ましい態様を示す。
まず、4枚の板で厚みが20〜80mmの胴部の枠体13を構成することが好ましい。
次に、枠体13の少なくとも片側の開口部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張って胴部2を形成することが好ましい。なお、実施例1では、表となる開口部(糸5に近い側の面)に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材11を張るものとする。熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を枠体に張るときは、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材に皺が入らないように縦横方向から張力を掛けながら張ることが好ましい。
次に、胴部の枠体13の裏面に(糸5から遠い側の面)の開口部に裏板12を貼ることが好ましい。
次に、棹3に中木を取り付ける場合は、棹3に中木を取り付けることが好ましい。
次に、胴部2に棹3の一方端部(棹3に中木を取り付ける場合は中木側の端部)を取り付けることが好ましい。
次に、棹3の他方端部に糸巻き部4を取り付けることが好ましい。
次に、胴部2と糸巻き部4との間に糸5を取り付けることが好ましい。
駒を用いる場合は、糸5を持ち上げ、駒を滑り込ませることが好ましい。
譜尺を用いる場合は、三味線を持った場合に譜尺が上面に現れるよう、譜尺を棹の側面(右利き用の三味線を製造する場合は棹の左側面)に貼りつけることが好ましい。
以上の工程により三味線1が製造される。なお、製造工程の順番は以上の工程に限るものではない。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
<熱可塑性樹脂フィルムを含む部材の製造>
(熱可塑性樹脂フィルムの製造例)
JIS K7210:1999によるメルトマスフローレート(MFR)0.8g/10分のプロピレン単独重合体(融解ピーク温度160℃、融解終了温度167℃)80質量%と、高密度ポリエチレン8質量%との混合物に、平均粒子径1.5μmの炭酸カルシウム(無機微細フィラー)12質量%を配合して熱可塑性樹脂組成物(A)を得た。熱可塑性樹脂組成物(A)を、270℃に設定した押出機にて溶融混練後、ダイよりシート状に押出し、冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。このシートを140℃に加熱後、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸して熱可塑性樹脂組成物(A)の縦1軸延伸シートを得た。
これとは別にMFRが4.0g/10分のプロピレン単独重合体(融解ピーク温度164℃、融解終了温度178℃)45質量%と、平均粒子径0.1μmの表面処理沈降性炭酸カルシウム(無機微細フィラー)55質量%とを配合して熱可塑性樹脂組成物(B)を得た。
次に熱可塑性樹脂組成物(B)を270℃に設定した押出機により溶融混練してTダイから押出し、熱可塑性樹脂組成物(A)の縦1軸延伸シートの一方の面に積層して(A)/(B)の2層からなる積層体を得た。
一方、MFRが10.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体(融解ピーク温度;140℃、融解終了温度;151℃、エチレン含量;2.0質量%)53質量%、マレイン酸含量が0.5質量%のマレイン酸変性プロピレン単独重合体2質量%、平均粒子径1.5μmの炭酸カルシウム(無機微細フィラー)44.5質量%を混合した熱可塑性樹脂組成物(C)を得た。
次に熱可塑性樹脂組成物(C)を270℃に設定した押出機により溶融混練してTダイから押出し、熱可塑性樹脂組成物(A)の縦1軸延伸シートの他方の面に積層して(C)/(A)/(B)の3層からなる積層体を得た。
次いで、この3層からなる積層体を155℃に加熱したのち、横方向にテンターを用いて7.5倍の延伸を行ない、163℃でアニーリング処理し、(C)/(A)/(B)〔各フィルムの肉厚はそれぞれ、50/170/50μm〕の3層積層フィルムを得た。
表面処理用の塗料を次のとおり調製した。エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂水性分散液(商品名:アクアテックスEC−1200、平均粒子径:1.4μm、中央理化工業(株)製)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業(株)製)、ポリエチレンイミン水溶液(商品名:エポミンP−1000、重合度:1600、(株)日本触媒社製)を塩化n−ブチルで改質して得たブチル変性ポリエチレンイミン水溶液を固形分で100:5:4の比率で配合して、固形分濃度0.4質量%の水分散体を得た。
3層積層フィルムの両面をコロナ放電処理し、表面処理用の塗料を両表面同時に塗布し、80℃で1分間乾燥し、巻き取ることによって合成紙である熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0048】
(熱可塑性樹脂フィルムを含む部材の形成)
得られた熱可塑性樹脂フィルムの(C)面に、液体トナーを用いた電子写真印刷機(機器名:Indigo5600、日本ヒューレット・パッカード(株)製)を用いて、浮世絵(葛飾北斎、富嶽三十六景・神奈川沖浪裏)を図柄とする印刷を施し、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を形成した。
【0049】
(熱可塑性樹脂フィルムを含む部材の評価)
上記の手順で印刷された熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を、23℃の水中に24時間漬け込んだ。水中から取り出した熱可塑性樹脂フィルムを含む部材の表面の水分をウエスで軽く拭き取った。5分後に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材の(C)面にセロファンテープ(商品名:セロテープ(登録商標)CT−18、ニチバン(株)製)を貼り付けて充分密着させた後、セロファンテープを手でゆっくり剥離した。テープ剥離後の(C)面の状態を目視観察したところ、トナーの剥離は認められず、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材は良好な耐水性(耐水密着性)を示した。
あわせて、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材は、合成紙ではない紙よりも破れにくいことがわかった。
【0050】
<胴部の製造>
(枠体の形成)
4枚の長方形の板状部材で、長さ170mm、幅150mm、厚さ38mmの胴部の枠体13を形成した。枠体の側部に、棹をはめ込むための角溝を設けた。板状部材のそれぞれの厚みは18mmであった。胴内部の容積は580488mm2であった。
【0051】
(枠体への熱可塑性樹脂フィルムを含む部材の貼付)
次に、枠体13の片方の開口部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材の(A)面を貼りつけた。瞬間接着剤(商品名:セメダイン PPXセット、セメダイン(株)製)のPPXプライマーを熱可塑性樹脂フィルムを含む部材の(A)面に塗布し、枠体の開口部にPPX接着剤を塗布し、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材の(A)面が接するように配置し、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材に縦横方向から張力を掛けながらクランプ止めして枠体13の片方の開口部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を固定した。このとき、熱可塑性樹脂フィルムを含む部材に皺は入らなかった。そのまま30分間放置し、クランプを外し、余った熱可塑性樹脂フィルムを含む部材をカッターナイフで切除した。
以上の工程により、枠体の片側の開口部に熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を張り合わせた第1の材料(胴部の材料)を製造した。
【0052】
<楽譜の作成>
三線譜(文化譜)で「さくらさくら」の曲の楽譜を作成した(図3)。図3は白黒の線図であるが、本来は一の糸(糸5a)に対応する線5dを赤色で、二の糸(糸5b)に対応する線5eを黄色で、三の糸(糸5c)に対応する線5fを青色で構成し、その他の表記は黒色で表している。
【0053】
<三味線組立用キットの作製>
上記のようにして得られた胴部の第1の材料、棹、中木、糸巻き部(3本)、MDF製の裏板、木製の駒、3本の異なる太さのナイロン糸(一の糸用赤色、二の糸用黄色、三の糸用青色)、木工用接着剤、紙やすり(#100を1枚、#240を1枚)、譜尺、及び作成した楽譜を段ボール箱に同梱して三味線組立用キットを得た。
なお、棹は長さ710mmであり、糸巻き部差し込み穴を3つ設けた。
中木は、中木先に穴を3つ設けた。
裏板の厚みは、2mmである。
【0054】
<三味線の製造>
(組み立て)
棹と中木を木工用接着剤で貼り付け、1時間固定した。
次に、第1の材料の枠体に設けられた角溝に木工用接着剤を塗布し、ここに棹をはめ込んだ後、第1の材料の開口部(枠体の反対側の開口部)に木工用接着剤を塗布し、裏板を接着した後、荷重(500gf≒4.91N)をかけて1時間固定した。このようにして、第1の材料および裏板からなる胴部と、中木と棹とを固定した。
次に、荷重を外し、胴部、棹、中木および糸巻き部の表面及び角を磨いて滑らかにした。
棹に設けられた糸巻き部差し込み穴に、それぞれの差し込み位置が記載された糸巻き部を差し込んだ。次に、中木先に開けられた穴にそれぞれの糸を通し、糸を玉止めした。次に糸の反対側を糸巻き部の穴に通し、通した糸の先端に玉止めを作って糸が抜けないようにし、糸を巻き上げた。次に糸を3本持ち上げ、駒を滑り込ませ、3本の糸が等間隔に並ぶように調整した。
次に、三味線を持った場合に譜尺が上面に現れるよう、譜尺を棹の左側面に貼りつけた。
次に、一の糸がA(ラ)、二の糸がE(ミ)、三の糸が1オクターブ上のA(ラ)となるように調弦して、実施例1の三味線を得た。
実施例1の三味線において、胴部の表面に張られた熱可塑性樹脂フィルムを含む部材のデュロメータ タイプA(ショアA)硬度をJIS K 6253の規定に基づいて測定した結果、ショアA硬度90であった。
【0055】
[比較例1]
実施例1と同様のサイズの枠体を形成した後、枠体の片側の開口部に従来の三味線に用いられる動物の皮を張り合わせ、実施例1と同様の裏板を貼り合わせて、胴部を形成した。
第1の材料および裏板の代わりに、得られた胴部を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の三味線を得た。
比較例1の三味線は、胴部の厚みが38mmであるが、胴部の表面が動物の皮である。
【0056】
[比較例2]
組み立て後の胴部が長さ(棹に沿った方向)が250mm、幅(三味線の糸を上面にして置いたとき、棹に直交する方向)が220mm、厚み(胴部の片面の開口部から反対側の開口部までの距離)が100mmとなるように、従来の三味線のサイズである胴部の枠体を形成した。
実施例1で形成した枠体の代わりに、得られた従来の三味線のサイズである胴部の枠体を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の三味線を得た。胴内部の容積は3937600mm2であった。
比較例2の三味線は、胴部の厚みが100mmであり、胴部の表面が熱可塑性樹脂フィルムを含む部材である。
【0057】
[比較例3]
比較例2で形成した枠体の片側の開口部に、力学的損失正接(tanδ)が−5〜40℃の温度範囲において0.1以下(特開昭52−064402号公報に記載の材料)であるポリエチレンテレフタレートのフィルムを張り合わせ、実施例1と同様の裏板を貼り合わせて、胴部を形成した。
第1の材料および裏板の代わりに、得られた胴部を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の三味線を得た。
比較例3の三味線は、胴部の厚みが100mmであり、胴部の表面が力学的損失正接(tanδ)が−5〜40℃の温度範囲において0.1以下の材料である。
【0058】
[比較例4]
組み立て後の胴部が長さ(棹に沿った方向)が140mm、幅(三味線の糸を上面にして置いたとき、棹に直交する方向)が75mm、厚み(胴部の片面の開口部から反対側の開口部までの距離)が15mmとなるように超小型の胴部の枠体を形成した。胴内部の容積は60840mm2であった。
実施例1で形成した枠体の代わりに、得られた超小型の胴部の枠体を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4の三味線を得た。
比較例4の三味線は、胴部の厚みが15mmであり、胴部の表面が熱可塑性樹脂フィルムを含む部材である。
【0059】
[比較例5]
段ボール紙を加工し、実施例1と同じサイズの胴部を形成した。
第1の材料および裏板の代わりに、得られた胴部を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例5の三味線を得た。
比較例5の三味線は、胴部の厚みが38mmであるが、胴部の表面が段ボール紙である。
【0060】
[比較例6]
実施例1と同様のサイズの枠体を形成した後、枠体の両側の開口部に実施例1と同様の裏板を貼り合わせて、胴部を形成した。
第1の材料および裏板の代わりに、得られた胴部を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例6の三味線を得た。
比較例6の三味線は、胴部の厚みが38mmであるが、胴部の表面がMDFである。
【0061】
[参考例1]
比較例2で形成した枠体の片側の開口部に、従来の三味線に用いられる動物の皮を張り合わせ、実施例1と同様の裏板を貼り合わせて、胴部を形成した。
第1の材料および裏板の代わりに、得られた胴部を用いた以外は実施例1と同様にして、参考例1の三味線を得た。
参考例1の三味線は、胴部の厚みが100mmであり、胴部の表面が動物の皮である、従来の三味線である。
【0062】
<三味線の評価>
実施例1、比較例1〜6および参考例1の三味線の音の強度および音色を、官能評価によって評価した。
評価は、三味線を弾いた経験を有しない素人の評価者6名(大人3人、子供3人)と、三味線を弾いた経験が5年以上である熟練した評価者1名により行った。
その結果、実施例1の三味線の音の強度は、素人の評価者も熟練した評価者も従来の三味線である参考例1の三味線の音の強度と同等であると評価した。実施例1の三味線の音色は、素人の評価者は従来の三味線である参考例1の三味線の音色と全く違いが無いと評価し、熟練した評価者は参考例1の三味線の音色とわずかに違いがあるが聞き比べなければわからない程度と評価した。
比較例1の三味線の音色は、素人の評価者も熟練した評価者も参考例1の三味線の音色とも実施例1の三味線の音色とも異なると評価した。
比較例2〜6の三味線の音の強度は、素人の評価者も熟練した評価者も参考例1の三味線の音の強度よりも小さく、実施例1の三味線の音の強度よりも小さいと評価した。比較例2〜6の三味線の音色は、素人の評価者も熟練した評価者も参考例1の三味線の音色とも実施例1の三味線の音色ともほど遠いと評価した。
【0063】
以上より、本発明の三味線は、従来の三味線と同等の音の強度および音色を奏でることができ、単なるおもちゃレベルの物を製造する工作キットを超えて素晴らしい音色の楽器を製造できる点で子供達により興味を引き立たせられる。
また、胴部のサイズを小さくして動物の皮を張った比較例1の三味線よりも、実施例1の三味線の方が従来の三味線の音色に近いという、予測できない顕著な効果が得られた。
さらに、本発明の三味線は熱可塑性樹脂フィルムを含む部材を用いるため、胴部の表面の耐水性が高く、破れにくいため、屋外で使用でき、かつ、子供達が不用意に扱っても壊れにくいことがわかった。
【0064】
[実施例2]
<三味線組立用キットの評価>
実施例1で製造した三味線組立用キットについて、評価を行った。
三味線を弾いた経験を有しない大人3人、子供3人がそれぞれ一人で実施例1の三味線組立用キットを組み立てて、実施例2の三味線を製造できた。
さらにそれぞれ一人で、実施例1の三味線組立用キットに同梱された「さくらさくら」の曲の楽譜(図3に示した楽譜)を見ながら、それぞれが製造した実施例2の三味線を用いて「さくらさくら」の曲が弾けるようになった。
三味線組立用キットを組み立て始めてから、「さくらさくら」の曲が弾けるまで、2時間30分間程度であった。
【符号の説明】
【0065】
1 三味線
2 胴部
3 棹
4 糸巻き部
5 糸
5a 一の糸
5b 二の糸
5c 三の糸
5d 一の糸に対応する線
5e 二の糸に対応する線
5f 三の糸に対応する線
11 熱可塑性樹脂フィルムを含む部材
12 裏板
13 枠体
図1
図2
図3