【解決手段】板材搬送方法は、切断加工によって製品または試験片が形成された板状のワークを配置することと、製品または試験片からワークの所定方向に離れた位置を目標位置として、製品または試験片を吸着部で吸着して移動させて載置することと、製品または試験片が載置された位置と目標位置とのずれから、ワークにおける所定方向と吸着部の移動方向との傾きを求め、この傾きを用いて吸着部による吸着位置補正値を算出することと、吸着位置補正値を用いて吸着部によりワークから製品を抜き出して搬送することと、を含む。
前記吸着部の移動における数値制御に用いられる第2直交座標系の座標を、前記ワークの切断加工における数値制御に用いられる第1直交座標系の座標に変換する関数を決定することを含み、
前記関数を用いて前記吸着位置補正値を算出する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の板材搬送方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような加工システムは、レーザ加工機、及び板材ローダなどに分かれた各種装置を組み立てることで設置される。各種装置は、互いの位置関係に留意して組み立てられるが、据え付け誤差を完全に無くすことは困難であり、レーザ加工機側の座標軸と板材ローダ側の座標軸とに傾きが生じる。そのため、板材ローダの吸着部を製品の位置に移動させても製品の位置が実際と異なり、吸着部が製品の位置からずれてしまう場合がある。例えば、吸着部と製品との位置のずれ量が大きい場合、製品をピッキングできないことがある。また、製品をピッキングできた場合でも、吸着部による製品の吸着力が弱く、製品が移載中に落下することがある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたものであり、製品と吸着部との位置ずれを簡便に補正して、製品を確実に搬送することが可能な板材搬送方法、搬送制御装置、及び加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の板材搬送方法は、切断加工によって製品または試験片が形成された板状のワークを配置することと、製品または試験片からワークの所定方向に離れた位置を目標位置として、製品または試験片を吸着部で吸着して移動させて載置することと、製品または試験片が載置された位置と目標位置とのずれから、ワークにおける所定方向と吸着部の移動方向との傾きを求め、この傾きを用いて吸着部による吸着位置補正値を算出することと、吸着位置補正値を用いて吸着部によりワークから製品を抜き出して搬送することと、を含む。
【0007】
また、ワークの目標位置に、製品または試験片と同一形状が形成され、載置された製品または試験片と同一形状との相対位置を測定することを含んでもよい。ワークを配置する位置は、吸着部によって製品を抜き出すアンロード位置であってもよい。
【0008】
本発明の板材搬送方法は、板状のワークまたはワークを支持する加工パレットを配置することと、ワークまたは加工パレットの所定位置に吸着部を配置することと、所定位置から所定方向に離れた位置を目標位置として吸着部を移動させ、吸着部に設けられるマーク形成部によってワークまたは加工パレットにマークを形成することと、マークと所定位置とのずれから、ワークまたは加工パレットにおける所定方向と吸着部の移動方向との傾きを求め、この傾きを用いて吸着部による吸着位置補正値を算出することと、吸着位置補正値を用いて吸着部によりワークから製品を抜き出して搬送することと、を含む。
【0009】
また、吸着部の移動における数値制御に用いられる第2直交座標系の座標を、ワークの切断加工における数値制御に用いられる第1直交座標系の座標に変換する関数を決定することを含み、関数を用いて吸着位置補正値を算出してもよい。また、第1直交座標系の軸方向と第2直交座標系の軸方向との傾きに基づいて、関数を決定してもよい。
【0010】
本発明の搬送制御装置は、切断加工によって製品が形成されたワークから、吸着部によって製品を吸着して搬送する板材ローダによる搬送を制御する装置であって、ワークにおける所定方向と吸着部の移動方向との傾きから吸着位置補正値を算出する補正部を備え、補正部によって算出された吸着位置補正値を用いて吸着部を動作させる。
【0011】
本発明の加工システムは、ワークに切断加工を施す加工機と、切断加工によって製品が形成されたワークから、製品を吸着して移動する吸着部を備える板材ローダと、板材ローダを制御する上記の搬送制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の板材搬送方法によれば、載置された製品または試験片、あるいはマークと目標位置とのずれから、ワークにおける所定方向と吸着部の移動方向との傾きを求め、この傾きを用いて吸着部による吸着位置補正値を算出するので、この吸着位置補正値を用いることにより製品と吸着部との位置ずれを簡便に補正することができ、製品を安定してワークからピックアップして搬送することができる。
【0013】
また、ワークの目標位置に、製品または試験片と同一形状が形成され、載置された製品または試験片と同一形状との相対位置を測定する場合、載置された製品または試験片と同一形状の部分とのずれを容易に認識することができ、製品または試験片と同一形状との相対位置を高精度に側的することができる。また、ワークを配置する位置は、吸着部によって製品を抜き出すアンロード位置である場合、切断加工後のワークから容易に製品をピックアップできる。また、吸着部の移動における数値制御に用いられる第2直交座標系の座標を、ワークの切断加工における数値制御に用いられる第1直交座標系の座標に変換する関数を決定することを含み、関数を用いて吸着位置補正値を算出する場合、関数を用いることで吸着位置補正値を高精度に算出することでき、また数値制御に用いられる座標へ吸着位置補正値を簡便に反映させることができる。また、第1直交座標系の軸方向と第2直交座標系の軸方向との傾きに基づいて、関数を決定する場合、三角関数などによって吸着位置補正値を簡便に算出することができる。
【0014】
また、本発明の搬送制御装置によれば、上記した板材搬送方法を容易に実現することができる。
【0015】
また、本発明の加工システムによれば、上記した搬送制御装置を用いることにより、加工機により切断加工したワークから、板材ローダの吸着部によって製品を確実にピックアップすることができ、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、鉛直方向をZ方向とし、水平方向をX方向、Y方向とする。また、XYZの各方向において、適宜、矢印と同じ側を+側(例、+X側)と称し、その反対側を−側(例、−X側)と称す。
【0018】
図1は、実施形態に係る加工システムを示す図である。本実施形態において、加工システム1は、レーザ加工により切断加工を施すレーザ加工システムであるものとして説明する。なお、実施形態に係る加工システムは、パンチプレスなどによって切断加工を施すものでもよいし、レーザ加工機およびパンチプレスを併用して切断加工を施すものでもよい。
【0019】
加工システム1は、パレット搬送装置2(パレットチェンジャ)、レーザ加工機3、及び板材ローダ4を備える。パレット搬送装置2は、加工パレット5(ワーク保持部)を備え、加工パレット5は、板状のワークW(板材)を保持してレール6(搬送経路)に沿って移動可能である。加工パレット5は、例えば、レール6上を走行可能な車輪(図示せず)を備える。レール6は、レーザ加工機3からアンロード位置UPまでX方向に直線的に延びている。アンロード位置UPは、レーザ加工(切断加工)によって製品Waが形成された板状のワークWから製品Waを抜き出す際に、ワークWが配置される位置である。パレット搬送装置2は、加工パレット5を牽引することによって、レール6に沿って加工パレット5を搬送する。例えば、加工パレット5には、ワイヤと接続されたフックが掛けられ、このワイヤが駆動部に巻き取られることで加工パレット5が牽引される。なお、加工パレット5を移動させる機構は適宜変更可能であり、例えば、加工パレット5が自走式でもよい。
【0020】
レーザ加工機3にはワーク供給装置(図示せず)が併設され、このワーク供給装置は、加工パレット5に加工前のワーク(素材)を供給する。パレット搬送装置2は、加工前のワークを保持した加工パレット5をレーザ加工機3へ搬送する。レーザ加工機3は、加工パレット5に載置された加工前のワークに対してレーザ光を照射して、ワークにレーザ加工(切断加工)を施す。
【0021】
レーザ加工機3は、レーザヘッドと、ヘッド駆動部とを備える。レーザヘッドは、光ファイバなどの光伝送体を介してレーザ光源に接続され、下方にレーザ光を射出する。レーザ光源は、例えばファイバーレーザなどの固体レーザの光源であり、炭酸ガスレーザなどに比べて熱密度の高いレーザ光が得られる。そのため、ファイバーレーザを用いたレーザ加工機3は、高速で切断加工を行うことが可能である。レーザ加工によってワークWは、製品Waと残材Wbとに切り分けられる。
【0022】
パレット搬送装置2は、レーザ加工が施されたワークWが載置された加工パレット5を、レーザ加工機3からアンロード位置UPへ移動させる。これにより、レーザ加工後のワークWがアンロード位置UPに配置される。板材ローダ4は、アンロード位置UPに配置される。板材ローダ4は、搬送制御装置7に制御され、レーザ加工が施されたワークWから製品Waを移載する。板材ローダ4は、加工済みのワークWから製品Waをアンロード(搬出)して、製品搬出エリアARに対して製品Waをロード(搬入)する。
【0023】
製品搬出エリアARには、製品パレット11Aが配置される。製品パレット11Aは、アンロード位置UPの+X側に設けられる。製品パレット11Aには搬出用部材12が載置され、板材ローダ4は、加工パレット5上のワークWから抜き取った製品Waを、搬出用部材12の上に移載する。搬出用部材12は、例えばユーザが用意する木枠などであり、搬出用部材12上に集荷された複数の製品をフォークリフト等によって一括して搬出することに利用される。
図1では、製品パレット11Aに対して−Y側に製品パレット11Bが設けられている。製品パレット11Bは、製品パレット11Aと同様の構成であり、板材ローダ4は、種類が異なる製品を製品パレット11A上と製品パレット11B上とに仕分けすることができる。なお、上述の製品パレット11A、11Bの配置は一例であり、
図1と異なる位置に製品パレット11A、11Bが設けられてもよい。また、製品が集積される製品パレットの数は任意であり、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、加工システム1は、製品パレットを備えなくてもよく、製品パレットはユーザが適宜用意するものでもよい。
【0024】
図2は、実施形態に係る板材ローダを示す図である。板材ローダ4は、レール21と、レール21上を走行可能な走行台車22と、走行台車22に設けられる移載装置23とを備える。レール21は、ワークWの搬送方向(X方向)すなわち加工パレット5の移動方向に対して、交差する方向(例、Y方向)に延びている。走行台車22には、X方向に延びるXガイド24が設けられ、移載装置23はXガイド24に取り付けられる。移載装置23は、例えば、Xガイド24に沿って移動可能なX移動体25と、X移動体25に設けられたZ移動体26と、Z移動体26の下端に設けられる吸着部27とを備える。Xガイド24は、レール21よりも−X側まで延びており、X移動体25は、アンロード位置UPに配置された加工パレット5の上方と製品搬出エリアARとの間を移動可能である。Z移動体26は、吸着部27を保持しながら、X移動体25に対して上下方向(Z方向)に移動可能である。吸着部27は、走行台車22によりY方向に移動し、X移動体25によりX方向に移動し、Z移動体26によりZ方向に移動する。以下の説明において、適宜、走行台車22、X移動体25、及びZ移動体26を総称して移動部4a(後の
図3に示す)という。
【0025】
図2(B)に示すように、吸着部27の下面側(−Z側)には、複数の吸着パッド28が設けられる。吸着部27は、例えば真空、減圧により製品Waを吸着するが、磁気などで吸着するものでもよい。アンロード位置UPにおいて、吸着部27は、X方向およびY方向の移動によりワークW上の製品Waと位置合わせされ、下方(−Z側)へ移動することによりワークWに接近して、製品Waを吸着する。吸着部27は、製品Waを吸着した状態で、上方(+Z側)へ移動して製品Waを持ち上げ、X方向およびY方向の移動により製品Waを所定の位置へ移載する。
【0026】
実施形態に係る加工システムを示すブロック図である。加工システム1は、上位制御装置31を備え、上位制御装置31は、レーザ加工機3、パレット搬送装置2、及び板材ローダ4を制御する。レーザ加工機3は、上位制御装置31と有線または無線により通信可能に接続され、上位制御装置31からNCデータを受信する。NCデータは、ワークWに対する切断加工の工程、条件などを定めた加工データあるいは加工プログラムなどである。NCデータにおいて、ワークW上の切断線(加工線)の位置は、ワークWに設定される直交座標系の座標で表される。レーザ加工機3は、ワークWに対して、NCデータに定められた工程を順に行う。パレット搬送装置2は、上位制御装置31と有線または無線により通信可能に接続され、上位制御装置31から搬送指令を受信する。パレット搬送装置2は、搬送指令に定められたタイミングで、搬送元から搬送先へワークWを搬送する。
【0027】
板材ローダ4の搬送制御装置7は、ワークW上の製品Waの位置を示す情報(例、NCデータ)を外部の装置(例、上位制御装置31)から取得し、この情報に基づいて、ワークWからの製品Waの移載を板材ローダ4に実行させる。搬送制御装置7は、上位制御装置31と有線または無線により通信可能に接続され、上位制御装置31からNCデータを受信する。このNCデータにおいて、ワークW上の製品の位置は、ワークWに設定される直交座標系の座標で表される。搬送制御装置7は、NCデータから得られるワーク上の製品Waの位置に基づいて板材ローダ4を制御する。
【0028】
搬送制御装置7は、制御部32、補正部33、入力部34、及び記憶部35を備える。制御部32は、ワークWから製品Waを吸着部27によってピックアップする際の吸着部27の目標位置に基づいて、板材ローダ4に対して移載指令を送信する。この移載指令には、走行台車22、X移動体25、及びZ移動体26のそれぞれについて、目標位置、移動タイミングが定められており、板材ローダ4は、移載指令に基づいて、走行台車22、X移動体25、及びZ移動体26をそれぞれ駆動させる。また、上記の移載指令には、吸着部27による吸着のタイミング、吸着を解除するタイミングなどが定められており、板材ローダ4は、移載指令に基づいて吸着部27を動作させる。
【0029】
ところで、加工システム1は、パレット搬送装置2、レーザ加工機3、及び板材ローダ4などの各種装置を組み立てることで設置される。各種装置は、互いの位置関係に留意して組み立てられるが、据え付け誤差を完全に無くすことは困難であり、
図2に示した板材ローダ4のXガイド24は、水平面内でレール6に対して多少なりとも傾く(非平行になる)。したがって、吸着部27をXガイド24と平行に移動させると、吸着部27は、所望の位置からY方向にずれることになる。補正部33は、上述の傾きによるワークWと吸着部27との位置ずれを補正する。
【0030】
図4は、パレット搬送装置側と板材ローダ側との位置誤差の説明図である。
図4において、Xa方向およびYa方向は、レーザ加工機3の切断加工における数値制御に用いられる直交座標系(以下、Xa−Ya座標系という)の軸方向である。座標系Xa−Yaは、例えば、ワークW上の位置を表すことに用いられ、Xa方向がワークWの一辺に平行であり、Ya方向がワークWの他辺に平行である。Xa方向は、
図1に示したレール6と平行である。
【0031】
また、Xb方向およびYbは、吸着部27の移動における数値制御に用いられる直交座標系(以下、Xb−Yb座標系)の軸方向である。Xb方向は、
図2に示したX移動体25の移動方向(Xガイド24、軸線)と平行であり、Yb方向は、走行台車22の移動方向(レール21、軸線)と平行である。
【0032】
Xa方向およびXb方向は、設計上は平行であるが、据え付け誤差などによって非平行になっている。符号θは、Xa方向とXb方向との角度であり、
図4等では、説明の便宜上、角度θを強調して示す。角度θは、実際には誤差のレベルであり、Xa方向とXb方向とは
図1のX方向とほぼ平行である。
【0033】
図4において、符号Wa1、Wa2は、それぞれ、ワークW上の製品である。Xa−Ya座標系において、製品Wa1の座標が(Xa1,Ya1)であるものとし、製品Wa2の座標が(Xa1+ΔXa,Ya1)であるものとする。ここで、吸着部27が製品Wa2を吸着する際に、その目標位置として、(Xa1+ΔXa,Ya1)を指定したとする。この場合、吸着部27は、Xb−Yb座標系における(Xa1+ΔXa,Ya1)の位置P2に移動する。Xa−Ya座標系とXb−Yb座標系とで軸方向が一致していないので、位置P2は、製品Wa2からずれた位置になる。位置P2の座標は、Xb−Yb座標系では(Xa1+ΔXa,Ya1)であるが、Xa−Ya座標系では(Xa1+ΔXa×(1−cosθ),Ya1+ΔXa×sinθ)で表される。すなわち、Xa−Ya座標系において、位置P2と、目標位置である(Xa1+ΔXa,Ya1)とのずれ量に相当するベクトルCaは、下記の式(1)で表される。
Ca=(−ΔXa×(1−cosθ),ΔXa×sinθ) ・・・(1)
【0034】
また、Xb−Yb座標系において、上記のずれ量に相当するベクトルをCbとすると、そのXb方向の成分Cbxが下記の式(2)で表され、そのYb方向の成分Cbyが下記の式(3)で表される。
Cbx=−ΔXa×(1−cosθ)×sin(θ/2) ・・・(2)
Cby= ΔXa×sinθ×cos(θ/2) ・・・(3)
【0035】
図3の補正部33は、NCデータから得られる製品Waの位置に対して、上記の式(2)、(3)で表されるずれ量を相殺するようにオフセット(補正量)を加えることで、吸着部27の吸着位置補正値を決定する。上記の式(2)、(3)において、ΔXaは、基準の位置に対する製品WaのXa方向の座標であり、NCデータから取得可能である。上記のθの値は、アンロード位置UPに配置されたワークW上で吸着部27を移動部4a(例、X移動体25)によって移動させ、移動部4aに指定された吸着部27の位置(例、
図4の製品Wa2の位置)と、ワークWに対する吸着部27の位置(例、
図4の位置P2)とを用いて、算出される。例えば、上記のXa1、Ya1、ΔXaの値を適宜設定して、吸着部27を実際に移動させ、
図4の製品Wa2の位置と位置P2とのずれ量を測定すると、このずれ量は上記の式(1)に相当する値であり、ΔXaが既知であるから、θの値を算出可能である。
【0036】
ユーザは、
図4の製品Wa2の位置と位置P2とのずれ量(上記の式(1)のCa)を測定し、その測定値を入力部34を用いて搬送制御装置7に入力する。ここで、ΔXaが大きいほど、θが微小であってもずれ量(Caの大きさ)が大きくなり、ずれ量を容易かつ高精度に測定することができる。そのため、Xa方向は、ワークの長辺に平行な方向であるとよく、また、試験片WT1、WT2の位置は、ワークにおけるXa方向の両端に寄せてあるとよい。
【0037】
入力部34は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力機器、LANボードなどの通信機器、あるいはUSBボートなど記憶媒体を接続可能な入出力ポートである。記憶部35は、ユーザが入力したずれ量を記憶する。補正部33は、このずれ量を用いてθの値を算出し、算出したθの値を記憶部35に記憶させる。なお、ユーザは、
図4の製品Wa2の位置と位置P2とのずれ量の測定値からθの値を算出し、搬送制御装置7にθの値を入力してもよい。この場合、記憶部35は、外部(例、ユーザ)から入力されたθの値を記憶し、補正部33は、記憶部35に記憶されたθの値を用いて上記のオフセット、あるいは吸着位置補正値を算出してもよい。この場合、補正部33は、θの算出を行わなくてもよい。
【0038】
このような処理は、板材ローダ4によって実際に製品Waを移載することに先立って行われる前処理であり、例えば、加工システム1を組み立てた際、加工システム1の一部の装置を交換した際、メンテナンス時などに行われる。補正部33は、板材ローダ4によって実際に製品Waを移載する際(例、加工システム1の稼働時)に、記憶部35からθの値を読み出し、NCデータから取得される製品Waの位置を用いて、上記の式(2)、式(3)のように三角関数を用いてオフセットを算出する。補正部33は、算出したオフセットを加味して、製品Waを吸着するための吸着部27の吸着位置補正値を決定する。
【0039】
次に、
図4で説明したずれ量(
図4のベクトルCa)を測定する方法の例について説明する。
図5は、位置誤差の測定方法の一例を示す図である。ここでは、ワークにテスト加工を行って試験片を形成し、試験片を用いて位置誤差を測定する。まず、
図5(A)に示すように、試験用のワークW2に対してレーザ加工機3(
図1参照)によって切断加工を施すことによって、試験片WT1、WT2を形成する。試験片WT2は、例えば、試験片WT1に対してXa方向へΔXaだけずれた位置に形成する。試験片WT2は、試験片WT1と同一形状であり、吸着部27によって試験片WT1をワークW上で移動させる際の目標位置を示すマークとして利用される。次に、試験用のワークW2をパレット搬送装置2(
図1参照)によってアンロード位置UPへ搬送する。
【0040】
次に、
図5(B)に示すように、試験片WT1を吸着する位置に、吸着部27を位置決めする。例えば、搬送制御装置7によって吸着部27の位置を変更しながら、試験片WT1の吸着に適した吸着部27の位置を決定する。この際に、搬送制御装置7が認識する吸着部27の位置を取得しておくと、Xa方向あるいはYa方向のシフト(据え付け誤差)を補正することもできる。
【0041】
次に、吸着部27によって試験片WT1を吸着させ、移動部4a(
図3参照)に試験片WT1の目標位置(試験片WT2の座標)を指定して吸着部27を移動させる。これにより、吸着部27は位置P3に移動する。次に、吸着部27をZ方向に移動させ、試験片WT1に対する吸着を解除させることで、試験片WT1を試験用のワークW2上に載置させる。次に、載置された試験片WT1と、目標位置(試験片WT2)との位置のずれ量(Ca)をスケールなどで測定する。試験片WT1と試験片WT2との位置のずれ量は、上記の式(1)に示したベクトルCaに相当し、この値を搬送制御装置7に入力することで、吸着部27の位置を補正可能になる。
【0042】
次に、上述の加工システム1の動作に基づき、板材搬送方法について説明する。
図6は、実施形態に係る板材搬送方法を適用した加工方法を示すフローチャートである。なお、加工システム1の構成、処理については、適宜、
図1から
図5を参照する。ステップS1において、搬送制御装置7(
図3参照)の補正部33は、吸着部27の吸着位置補正値を表す関数を決定する。ステップS1のステップS11において、レーザ加工機3は、試験用のワークW2(
図5)に試験片WT1、WT2を形成する。ステップS12において、パレット搬送装置2(
図1参照)は、搬送経路(レール6)上の位置(例、アンロード位置UP)に試験用のワークW2を配置する。ステップS13において、搬送制御装置7は、試験片WT1(
図5参照)から所定方向(Xa方向)に離れた試験片WT2の位置を目標位置として、試験片WT1を吸着部27で吸着して移動させ、試験片WT1を載置する。ステップS14において、ユーザは、載置された試験片WT1と目標位置(試験片WT2)とのずれ(Ca)を測定する。ユーザは、測定したずれを搬送制御装置7に入力し、ステップS15において、補正部33は、ステップS14で測定されたずれを用いて、ワークの所定方向(Xa方向)と吸着部27の移動方向(Xb方向)との傾き(θ)を求める。ステップS16において、補正部33は、ワーク上の位置とオフセットとの関係を示す関数を決定する。
【0043】
ステップS2において、レーザ加工機3(
図1参照)は、ワークWに製品Waを形成する。ステップS3において、パレット搬送装置2(
図1参照)は、製品Waが形成されたワークWを保持した加工パレット5をアンロード位置UPへ搬送する。ステップS4において、搬送制御装置7(
図3参照)の補正部33は、ステップS16で決定した関数を用いてオフセットを算出し、オフセット値と目標位置とを用いて吸着位置補正値を算出する。ステップS5において、板材ローダ4は、吸着位置補正値を用いて吸着部27により製品Waを搬送する。
【0044】
なお、ステップS1の処理は、製品を搬送する前処理として行われ、板材ローダ4が据え付けられた際に実行される。ここでは、試験用のワークW2を用いる例を説明したが、製品Waが形成されたワークを用いてもよい。ステップS16で決定された関数は記憶部35に記憶され、板材ローダ4が次回以降に製品を搬送する際には、記憶部35に記憶されている関数を用いてステップS3の処理が実行され、ステップS1の処理が省略される。ステップS1の処理は、例えばメンテナンス時におこなってもよいし、板材ローダ4とレーザ加工機3との相対位置が地震などで変動した懸念がある時、レール等が変形した懸念がある時、あるいは板材ローダ4を交換した時などに実行してもよい。
【0045】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
図7は、本実施形態に係る板材搬送方法の第1の例を示す工程図である。本実施形態は、
図6のステップS11からステップS14の処理が第1実施形態と異なる。ここでは、試験片の代わりにマークを形成し、ずれを測定する。
【0046】
図7(A)に示すように、吸着部27に、ワークWに対してマークを形成可能なマーク形成部41を着脱可能に取り付けておく。マーク形成部41は、例えば、ペンなどのようにワークWに染料あるいは顔料を付着させてマークを形成するものでもよいし、ケガキ針のようにワークWにキズをつけてマークを形成するものでもよい。次に、
図7(B)に示すように、吸着部27をワークWに接近させ、マーク形成部41によってワークWにマークM1を形成する。
【0047】
次に、
図7(C)に示すように、マークM1(所定位置)から所定方向に離れた位置を目標位置として吸着部27を移動させ、
図6(B)と同様にワークWにマークM2を形成する。これにより、
図7(D)に示すように、マークM1、M2が形成されたワークWが得られる。ユーザは、Xa方向におけるマークM1とマークM2との距離L1(座標の差)、及びYa方向におけるマークM1とマークM2との距離L2(座標の差)を測定し、tanθ=L2/L1の関係から、θの値を算出することができる。なお、マーク形成部41は、加工システム1の実際の稼働時には取り外される。
【0048】
図8は、本実施形態に係る板材搬送方法の第2の例を示す工程図である。ここではワークの代わりに加工パレット5を用い、マークとしてビームのスポットを形成してずれを測定する。まず、
図8(A)に示すように、吸着部27に、指向性、直進性が高いビームBM(例、レーザ)を照射する照射部42(マーク形成部)を着脱可能に取り付けておく。次に、照射部42からビームBMを加工パレット5に照射させ、ビームBMが加工パレット5上の所定位置P5に入射するように吸着部27を位置決めする。所定位置P5には、例えばアライメントマークが設けられ、このアライメントマークにビームBMのスポットを合わせるように吸着部27あるいは照射部42が位置決めされる。なお、加工パレット5の角など特徴部分を所定位置P5に設定してもよく、この場合、所定位置P5にアライメントマークを設けなくてもよい。
【0049】
次に、
図7(B)に示すように、所定位置P5から所定方向に離れた位置を目標位置として吸着部27を移動させ、照射部42からビームBMを加工パレット5に照射させる。
図8(C)に示すように、加工パレット5上には、マークM3としてビームBMのスポットが形成される。ユーザは、Xa方向における所定位置P5とマークM3との距離L1(座標の差)、及びYa方向における所定位置P5とマークM3との距離L2(座標の差)を測定し、tanθ=L2/L1の関係から、θの値を算出することができる。なお、照射部42は、加工システム1の実際の稼働時には取り外される。
【0050】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。