特開2017-208289(P2017-208289A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立研究開発法人物質・材料研究機構の特許一覧
特開2017-208289Nb3Al超伝導線製造用の前駆体線及びその製造方法
<>
  • 特開2017208289-Nb3Al超伝導線製造用の前駆体線及びその製造方法 図000003
  • 特開2017208289-Nb3Al超伝導線製造用の前駆体線及びその製造方法 図000004
  • 特開2017208289-Nb3Al超伝導線製造用の前駆体線及びその製造方法 図000005
  • 特開2017208289-Nb3Al超伝導線製造用の前駆体線及びその製造方法 図000006
  • 特開2017208289-Nb3Al超伝導線製造用の前駆体線及びその製造方法 図000007
  • 特開2017208289-Nb3Al超伝導線製造用の前駆体線及びその製造方法 図000008
  • 特開2017208289-Nb3Al超伝導線製造用の前駆体線及びその製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-208289(P2017-208289A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】Nb3Al超伝導線製造用の前駆体線及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 12/00 20060101AFI20171027BHJP
   C22C 27/02 20060101ALI20171027BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20171027BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20171027BHJP
   C22C 9/02 20060101ALI20171027BHJP
   C22C 9/01 20060101ALI20171027BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20171027BHJP
【FI】
   H01B12/00ZAA
   C22C27/02 102A
   C22C21/00 E
   C22C9/00
   C22C9/02
   C22C9/01
   C22C21/00 A
   C22F1/00 D
   C22F1/00 622
   C22F1/00 625
   C22F1/00 630K
   C22F1/00 660Z
   C22F1/00 661A
   C22F1/00 691B
   C22F1/00 691C
   C22F1/00 692B
   C22F1/00 612
   C22F1/00 627
   C22F1/00 641C
   C22F1/00 675
   C22F1/00 692A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-101429(P2016-101429)
(22)【出願日】2016年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】513097296
【氏名又は名称】株式会社SHカッパープロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】伴野 信哉
(72)【発明者】
【氏名】宮下 克己
【テーマコード(参考)】
5G321
【Fターム(参考)】
5G321AA11
5G321BA03
5G321CA09
5G321CA39
5G321CA41
5G321DA03
5G321DC04
5G321DC06
5G321DC14
5G321DC32
(57)【要約】
【課題】フラックスジャンプ発生等の低磁界不安定を抑制しつつ、伸線加工性をさらに改善し、歩留まりを十分に向上させ、実用化を容易なものとするNbAl超伝導線製造用の前駆体線を提供する。
【解決手段】急熱急冷変態法によるNbAl超伝導線製造用の前駆体線において、NbとAlとのモル比が3:1で混合されたNbとAlの複合体からなるNb/Al複合体フィラメント領域1が、Nbからなる隔壁2で被覆され、その外側にAlもしくはAl合金、又はCuもしくはCu合金からなる中間金属層3が設けられ、さらにその外側がAgからなるフィラメント間バリア材4で被覆されたシングル線を複数集合させた集合体の周囲を、Nb又はTaからなる外皮6で被覆して構成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NbとAlとのモル比が3:1で混合されたNbとAlの複合体からなるNb/Al複合体フィラメント領域が、Nbからなる隔壁で被覆され、その外側にAlもしくはAl合金、又はCuもしくはCu合金からなる中間金属層が設けられ、さらにその外側がAgからなるフィラメント間バリア材で被覆されたシングル線を複数集合させた集合体の周囲を、Nb又はTaからなる外皮で被覆して構成されていることを特徴とする、急熱急冷変態法によるNbAl超伝導線製造用の前駆体線。
【請求項2】
Agからなるフィラメント間バリア材に対する中間金属層を構成するAlもしくはAl合金のモル比が15at%以下であることを特徴とする請求項1に記載のNbAl超伝導線製造用の前駆体線。
【請求項3】
Agからなるフィラメント間バリア材に対する中間金属層を構成するCuもしくはCu合金のモル比が10at%以下であることを特徴とする請求項1に記載のNbAl超伝導線製造用の前駆体線。
【請求項4】
Al合金は、10at%以下のMgもしくは3at%以下のCuが含有されていることを特徴とする請求項2に記載のNbAl超伝導線製造用の前駆体線。
【請求項5】
Cu合金は、7at%以下のGe、15at%以下のGa、7at%以下のSn、又は15at%以下のAlが含有されていることを特徴とする請求項3に記載のNbAl超伝導線の前駆体線。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のNbAl超伝導線製造用の前駆体線を製造する方法であって、NbとAlとのモル比が3:1で混合されたNbとAlの複合体からなるNb/Al複合体フィラメント領域を、隔壁とするためのNbからなる金属シートで巻き込み、さらにその周囲にAlもしくはAl合金、又はCuもしくはCu合金からなる金属シートを巻き込み、これをフィラメント間バリア層とするためのAgパイプに充填して六角シングルビレットに伸線加工した後、複数本の六角シングル線に切断し、次いでこの六角シングル線複数本を集合体とし、この集合体の周りを外皮とするためのNb又はTaからなる金属シートで巻き込み、これをCuパイプ又はCu合金パイプに充填して細線に伸線加工し、最外層のCu又はCu合金をエッチングにより除去することを特徴とするNbAl超伝導線製造用の前駆体線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NbAl超伝導線製造用の前駆体線及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NMR用途に開発された初期の急熱急冷変態法NbAl線材は、超伝導接続性を優先し、NbAlフィラメント間バリアを1T未満の磁場中でも超伝導性を保持するNbとしたため、NbAlフィラメント同士が電磁気的に結合し低磁界不安定性が生じる欠点があった。
【0003】
これを改善するために、同じ高融点金属に属し、1T未満の磁場中で常伝導となるTaをNbに替えてバリア材とすることが提案されたが、加速器マグネットの運転温度である2Kまで下げると低磁界不安定性の抑制が不可能なこと、また前駆体線の伸線加工で断線が頻発する等の問題があった。
【0004】
そこで、本出願人らは、特許文献1において、低磁界不安定性の抑制、前駆体線の伸線加工性の向上等を図るため、Nb/Al複合体フィラメント領域が、Nbからなる隔壁で被覆され、その外側がAgからなるフィラメント間バリア材で被覆されたシングル線を複数集合させた集合体の周囲を、Nb又はTaからなる外皮で被覆して構成した、NbAl超伝導線製造用の前駆体線を提案した。
【0005】
これにより、前駆体線の伸線加工性改善、急熱急冷変態後においては、4Kはもちろん2Kでも低磁界不安定性を抑制することができ、また、曲げひずみ負荷においては微視的クラック伝搬を抑制することが可能となった。
【0006】
しかしながら、隔壁にNbを用い、フィラメント間バリア材にAgを用いたNbAl超伝導線製造用の前駆体線では、NbとAgとの機械的密着性が十分でなく、伸線加工性をさらに改善し、歩留まりを十分に向上させるためには、さらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−243685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の実状に鑑みてなされたもので、フラックスジャンプ発生等の低磁界不安定を抑制しつつ、伸線加工性をさらに改善し、歩留まりを十分に向上させ、実用化を容易なものとするNbAl超伝導線製造用の前駆体線を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0010】
第1に、急熱急冷変態法によるNbAl超伝導線製造用の前駆体線において、NbとAlとのモル比が3:1で混合されたNbとAlの複合体からなるNb/Al複合体フィラメント領域が、Nbからなる隔壁で被覆され、その外側にAlもしくはAl合金、又はCuもしくはCu合金からなる中間金属層が設けられ、さらにその外側がAgからなるフィラメント間バリア材で被覆されたシングル線を複数集合させた集合体の周囲を、Nb又はTaからなる外皮で被覆して構成されていることを特徴とする。
【0011】
第2に、上記第1の発明のNbAl超伝導線製造用の前駆体線において、Agからなるフィラメント間バリア材に対する中間金属層を構成するAlもしくはAl合金のモル比が15at%以下であることを特徴とする。
【0012】
第3に、上記第1の発明のNbAl超伝導線製造用の前駆体線において、Agからなるフィラメント間バリア材に対する中間金属層を構成するCuもしくはCu合金のモル比が10at%以下であることを特徴とする。
【0013】
第4に、上記第2の発明のNbAl超伝導線製造用の前駆体線において、Al合金は、10at%以下のMgもしくは3at%以下のCuが含有されていることを特徴とする。
【0014】
第5に、上記第3の発明のNbAl超伝導線製造用の前駆体線において、Cu合金は、7at%以下のGe、15at%以下のGa、7at%以下のSn、又は15at%以下のAlが含有されていることを特徴とする。
【0015】
第6に、上記第1から第5のいずれかの発明のNbAl超伝導線製造用の前駆体線を製造する方法であって、NbとAlとのモル比が3:1で混合されたNbとAlの複合体からなるNb/Al複合体フィラメント領域を、隔壁とするためのNbからなる金属シートで巻き込み、さらにその周囲にAlもしくはAl合金、又はCuもしくはCu合金からなる金属シートを巻き込み、これをフィラメント間バリア層とするためのAgパイプに充填して六角シングルビレットに伸線加工した後、複数本の六角シングル線に切断し、次いでこの六角シングル線複数本を集合体とし、この集合体の周りを外皮とするためのNb又はTaからなる金属シートで巻き込み、これをCuパイプ又はCu合金パイプに充填して細線に伸線加工し、最外層のCu又はCu合金をエッチングにより除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記技術的手段及び技術的手法を採用したので、フラックスジャンプ発生等の低磁界不安定を抑制しつつ、伸線加工性をさらに改善し、歩留まりを十分に向上させ、実用化を容易なものとするNbAl超伝導線製造用の前駆体線を提供することが可能となる。
【0017】
NbAl超伝導線はもともと優れた耐ひずみ特性を有しており、核融合炉や強磁場NMRなど大きな電磁力がかかる大型強磁場マグネットへの応用が期待されている。本発明により、高耐ひずみ性に加え、安定性、長尺性を兼ね備えた画期的な強磁場超伝導線材の開発が可能となり、核融合炉の実現やNMRの高性能化などの発展が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるNbAl超伝導線製造用の前駆体線の一構成例を示す断面図である。
図2】本発明によるNbAl超伝導線製造用の前駆体線の製造の手順の一例を示すフロー図である。
図3】実施例1の前駆体線を構成するAg被覆シングル線においてNbとAgの間にAl中間金属層が挿入されたシングル線の断面写真である。
図4】実施例1の前駆体線の断面写真である。
図5】熱処理後の実施例1のバリア構造NbAl超伝導線と従来のNbマトリクスNbAl超伝導線の磁化特性を比較して示す図である。
図6】熱処理後の実施例1のバリア構造NbAl超伝導線と従来のNbAl超伝導線の臨界密度特性を比較して示す図である。
図7】実施例2の前駆体線を構成するAg被覆シングル線においてNbとAgの間にCu中間金属層が挿入されたシングル線の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0020】
本発明のNbAl超伝導線製造用の前駆体線の最も基本的な構成は、Nb/Al複合体を材料とするNb/Al複合体フィラメント領域の周りを、Nbからなる隔壁、AlもしくはAl合金、又はCuもしくはCu合金からなる中間金属層及びAgからなるフィラメント間バリアで被覆したシングル線を集合体とし、この集合体をNb又はTaからなる外皮で被覆した構成である。
【0021】
本発明のNbAl超伝導線製造用の前駆体線を構成するシングル線の中心部は、Nb金属とAl金属を主な構成要素とする複合体であって、NbとAlとのモル比が3:1で混合されたNbとAlとの複合体からなるNb/Al複合体フィラメント領域である。Nb/Al複合体フィラメント領域は、例えば、ジェリーロール法により形成することができる。
【0022】
シングル線は、上記したように、Nb/Al複合体フィラメント領域を、高融点金属のNbからなる隔壁で被覆し、その外側に本発明の重要な特徴である中間金属層を設け、さらにその外側が常伝導金属・良導電体のAgからなるフィラメント間バリアで被覆した構成となっている。
【0023】
フィラメント間バリアは、超伝導フィラメントの電磁気的結合を有効に断ち切るために設けられ、隔壁は、フィラメント間バリアと、Nb/Al複合体フィラメント領域とが反応して非超伝導化合物を生成するのを防止するために設けられ、中間金属層は、隔壁のNbとフィラメント間バリアのAgの機械的密着性を向上させ、伸線加工性をより良好にするために設けられる。
【0024】
シングル線における隔壁のNbの厚さは1μm以上、好ましくは1〜5μmの範囲である。Nbの厚さがこの範囲であると、AgがNb隔壁を拡散してNb/Al複合体フィラメント領域と反応して、非超伝導3元化合物が生成することを防止することができる。
【0025】
シングル線の最外層となるフィラメント間バリア層を、高融点金属であるNbと比べて柔らかく延性に富むAgとすることにより、良好な伸線加工性と、曲げひずみ負荷による微視的クラック伝搬を抑制することができる。
【0026】
シングル線におけるフィラメント間バリアを構成する常伝導金属・良導電体Agの厚さは、1μm以上、好ましくは3〜5μmの範囲である。厚さがこの範囲であると、伸線加工性と超伝導フィラメントの電磁気的結合の有効な断ち切りの観点から有利となる。
【0027】
シングル線における中間金属層は、隔壁のNbとフィラメント間バリアのAgの機械的密着性を改善し、伸線加工性をより向上させる観点から、AlもしくはAl合金を用いる場合には、0.1μm以上、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲、CuもしくはCu合金を用いる場合には、0.1μm以上、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲である。
【0028】
中間金属層としてAlもしくはAl合金を使用する場合、Agからなるフィラメント間バリア材に対するモル比は15at%以下であることが望ましい。それより大きくなると、その後の急熱急冷処理などの熱処理の際に、AlがAgの固溶限を超えて化合物相を形成してしまい、良好な加工性を得ることができなくなる。
【0029】
中間金属層としてAl合金を使用する場合、構成材料の硬さのバランスを整えるという観点から、MgやCuなどを添加することができる。AlにMgを添加する場合、Mgは10at%以下、Cuを添加する場合、Cuは3at%以下の組成であることが望ましい。それより多くなると加工効果が大きくなり過ぎ、伸線加工性は低下する。ただし、十分な加工性を確保する観点からは、純Alの使用が望ましい。
【0030】
また、中間金属層としてCuもしくはCu合金を使用する場合、Agからなるフィラメント間バリア材に対するモル比は10at%以下であることが望ましい。それより大きくなると、その後の急熱急冷処理などの熱処理の際に、AlがAgの固溶限を超えて化合物相を形成してしまい、良好な加工性を得ることができなくなる。
【0031】
中間金属層としてCu合金を用いる場合、構成材料の硬さのバランスを整えるという観点から、Ge、Ga、SnやAlなどを添加することができる。CuにGeを添加する場合、Geは7at%以下、Gaを添加する場合、Gaは15at%以下、Snは7at%以下、Alは15at%以下の組成であることが望ましい。それより多くなると加工効果が大きくなり過ぎ、伸線加工性は低下する。ただし、十分な加工性を確保する観点からは、純Cuの使用が望ましい。
【0032】
中間金属層としてAlやCuに添加する元素は上記以外であっても、平衡状態図に示される固溶限を超えない範囲で添加することも可能である。固溶限を超えると、化合物相が生成し、伸線加工性が低下する。ただし、十分な加工性を確保する観点からは、純Alもしくは純Cuの使用が望ましい。
【0033】
本発明では、超伝導線の機械的強度の向上や、加工性の改善を図るために、集合体の内部好ましくは中心部に、例えばNbからなるダミーフィラメントの六角線を配置して、その外側にシングル線を配置し、その周りを外皮とする構成とすることもできる。このダミーフィラメントの六角線は、シングル線の製造と同様に伸線加工することにより成形することができる。また、Nbの代わりに、Taや、Taバリアで被覆されたCu線、Nbバリアで被覆されたAg線を用いてもよい。
【0034】
また、本発明では、超伝導を安定化するため、集合体の内部好ましくは中心部に、従来と同様、内部安定化材フィラメントの六角線を配置して、その外側にシングル線を配置し、その周りを外皮とする構成とすることもできる。この内部安定化材フィラメントの六角線は、シングル線の製造と同様に伸線加工することにより成形することができる。
【0035】
ここで、図1に、本発明による急熱急冷変態法によるNbAl超伝導線製造用の前駆体線の一構成例を断面図で示す。
【0036】
図1において、左側にNbAl超伝導線製造用の前駆体線を示し、右側に要部を拡大して示す。前駆体を構成するシングル線は、Nb/Al複合体を材料とするNb/Al複合体フィラメント領域1が、Nbからなる隔壁2で被覆され、その外側にAlもしくはAl合金、又はCuもしくはCu合金からなる中間金属層3が設けられ、さらにその外側がAgからなるフィラメント間バリア4で被覆されている。図中5は、断面が六角形のNbダミーフィラメントである。
【0037】
前駆体は、中心部に複数のNbダミーフィラメント5が配置され、その周囲に、複数のシングル線からなる集合体が図示のように配置され、さらにその周囲を、Nb又はTaからなる外皮6で被覆されて構成されている。図1では、説明の便宜上、シングル線及び、Nbダミーフィラメントの本数が図示のように設定してあるが、後述の実施例に示すように、これらの本数は適宜適切な本数に設定することができる。また、後述の実施例に示すようにシングル線の集合体と外皮6の外周隙間に小径のNb等からなるダミー丸線を挿入してもよい。
【0038】
シングル線の製造方法としては、まず、Nb/Al複合体を隔壁材料のNbの高融点金属シートで巻き込む。次に、Nb/Al複合体の周囲に、AlもしくはAl合金、又はCuもしくはCu合金からなる金属シートを巻き込み、さらにこれをフィラメント間バリアのAgからなるパイプに充填して静水圧押出しにより伸線加工し、六角シングルビレットに形成する。
【0039】
そして、この六角シングルビレットを多数本に切断し、複数の短尺六角シングル線とし、これらを用いて最密充填組み立てして集合体として、この集合体の周りを外皮とするためのNb又はTaからなる高融点金属シートで巻き込み、更にCuパイプ又はCu合金(CuNi等)パイプに充填して所定の寸法の細線に再度静水圧押出しした後、伸線加工し、マルチビレットとする。なお、前述したように、必要に応じて、中心部にあるいは内部にダミーフィラメントあるいは内部安定化材フィラメントを配置する。
【0040】
伸線加工を施した後、最終的に、最外層のCu又はCu合金をエッチングにより除去することにより、本発明のNbAl超伝導線製造用の前駆体線とすることができる。
【0041】
また、本発明では、上記の構成とした本発明のNbAl超伝導線製造用の前駆体線は、急熱急冷変態法によりNbAl超伝導線とする。
【0042】
急熱急冷変態法では、1900℃以上、好ましくは1930〜2000℃で5秒以内の熱処理後に、500℃以下、好ましくは30〜100℃に急冷し、その後700〜900℃で追加熱処理する。
【0043】
本発明のNbAl超伝導線製造用の前駆体線に対して、急熱急冷処理を行うことにより、前駆体線のNb/Al複合体フィラメント領域は、AlがNbに過飽和に固溶したbcc相過飽和固溶体フィラメントに変換する。さらにその後、追加熱処理することにより、bcc相からA15相に結晶構造が変態してNbAl超伝導フィラメントとすることができる。
【0044】
図2に、本発明によるNbAl超伝導線製造用の前駆体線の製造の手順の一例をフロー図で示す。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。
実施例1
図2の製造フローに従って本発明によるNbAl超伝導線製造用の前駆体線を作製した。
(1)Nb/Alジェリーロール複合体シングルビレット
Nb/Al比が3.0となるよう、φ2mmのNb心棒の周囲に厚さ0.1mm・幅150mmのNbシートと厚さ0.03mm・幅150mmのAlシートを重ねてジェリーロール巻きした(Nb/Al複合体フィラメント領域)。次にその外周に厚さ1mm・幅150mmのNbシートを5層分巻いたのち、その外周にAgパイプ内面との密着性向上のために厚さ0.011mm・幅150mmのAlシートを1周巻き付けた。最後に内径11.5mm/外径13mmのAgパイプに挿入してシングルビレットとした。このシングルビレットの断面写真を図3に示す。
(2)マルチビレット押出し・伸線加工
上記シングルビレット24本を100トン静水圧押出機で静水圧押出しした後、伸線加工して対辺距離2.94mmとなるように六角線に伸線加工後、矯正、洗浄してから長さ200mmのシングル六角線に切り分けた。
【0046】
別途用意した対辺距離2.94mmのNbダミー六角線19本を中心に配置して、その周りに222本のシングル六角線、合計241本(=19+222)の六角線を束ね、外周の隙間にφ2mmとφ1mmのNbダミー丸線を入れた後、周囲に厚さ0.2mmのTaシートを約11層巻きつけて、それをCuNi管に挿入してマルチビレットとした。
【0047】
上記マルチビレットを400トン静水圧機出機で静水圧押出しした後、さらに外皮CuNi除去後の線径が1.35mmとなるように伸線加工し、その後外皮CuNiをエッチングにより除去し、前駆体線を作製した。この前駆体線の断面写真を図4に示す。
(3)伸線加工性
シングルビレットの作製において、ダイス伸線中にもAg外皮がずれることなく良好な加工性を示し、NbとAgとの間の機械的密着性を改善するAl中間金属層の効果が確認された。
【0048】
マルチビレットの伸線においても、良好な加工性を示し、最終目標線径まで無断線で伸線できることを確認した。
(4)磁化特性
上記の手順により作製された本発明によるNbAl超伝導線製造用の前駆体線に対し、最高到達温度2000℃となる急熱急冷処理において、Nb/Al複合体フィラメントがNb−Al過飽和固溶体となる最適な条件の下で処理を行った。このとき、Nb隔壁とAgフィラメント間バリアの間に設けられたAl層はAgに固溶する。続けて800℃×10hの追加熱処理を施し、Nb−Al過飽和固溶体をNbAl超伝導体へと相変態させ、NbAl超伝導線とした。
【0049】
この試料に対し、4.2Kにおける磁化特性を測定した。その結果を図5に示す。また、比較のため、従来のNbマトリクスNbAl超伝導線の磁化特性も載せた。dは超伝導フィラメント径を表す。この結果から、従来のNbマトリクスNbAl超伝導線では1T以下の磁場領域において、大きなフラックスジャンプが観測されたのに対し、本発明の前駆体線を用いて作製したNbAl超伝導線ではフラックスジャンプが抑制されていることを確認した。これにより、本発明によるNbからなる隔壁、Alからなる中間金属層及びAgからなるフィラメント間バリアを備えたバリア構造がフィラメント間の磁気的結合を抑制するのに効果的であることが確認された。
(5)臨界電流密度特性
上記のバリア構造を有するNbAl超伝導線に対して、臨界電流密度の磁場依存性を測定した。その結果を図6に示す。比較のため、従来のNbAl超伝導線の臨界電流密度特性も載せた。この結果から、本発明によるバリア構造を有するNbAl超伝導線は臨界電流密度特性については従来線材と同等の性能を示すことが確認された。
実施例2
上記のNb/Alジェリーロール複合体シングルビレットの作製において、Alの代わりにCuを用いた試作も行った。その結果を図7に示す。図7から明らかなように、NbとAgとの間の中間金属層としてCuを用いても良好な伸線加工性が得られることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7