(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-208340(P2017-208340A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】金属イオンバッテリー
(51)【国際特許分類】
H01M 10/054 20100101AFI20171027BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20171027BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20171027BHJP
H01M 4/42 20060101ALI20171027BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20171027BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20171027BHJP
【FI】
H01M10/054
H01M10/0568
H01M4/38 Z
H01M4/42
H01M4/66 A
H01M4/587
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-97886(P2017-97886)
(22)【出願日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】62/337,629
(32)【優先日】2016年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】105140794
(32)【優先日】2016年12月9日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】江 建志
(72)【発明者】
【氏名】林 俊凱
(72)【発明者】
【氏名】陳 光耀
(72)【発明者】
【氏名】呉 俊星
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS10
5H017CC01
5H017EE06
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK06
5H029AK07
5H029AL11
5H029AM07
5H029AM09
5H029DJ07
5H029EJ04
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA15
5H050CA14
5H050CA15
5H050CB11
5H050CB13
5H050DA02
5H050DA04
(57)【要約】
【課題】
金属イオンバッテリーを提供する。
【解決手段】
本発明は、金属イオンバッテリーを提供する。金属イオンバッテリーは、正極と、絶縁層と、絶縁層によって正極と隔てられた負極であって、銅(Cu)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、クロム(Cr)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)若しくはモリブデン(Mo)である金属又はその合金で構成された負極と、正極と負極との間に設けられた電解質であって、ハロゲン化アルミニウムと、イオン液体とを有する電解質と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
絶縁層と、
前記絶縁層によって正極と隔てられた負極であって、銅、鉄、亜鉛、コバルト、インジウム、ニッケル、錫、クロム、ランタン、イットリウム、チタン、マンガン若しくはモリブデンである金属又はその合金で構成された負極と、
前記正極と前記負極との間に設けられた電解質であって、ハロゲン化アルミニウムと、イオン液体とを有する電解質と、
を備えることを特徴とする金属イオンバッテリー。
【請求項2】
前記正極は、集電層と、活性材料とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属イオンバッテリー。
【請求項3】
前記集電層は、導電性カーボン基材であることを特徴とする請求項2に記載の金属イオンバッテリー。
【請求項4】
前記導電性カーボン基材は、炭素布、炭素フェルト又はカーボン紙であることを特徴とする請求項3に記載の金属イオンバッテリー。
【請求項5】
前記活性材料は、層状活性材料、又は、層状活性材料の凝集体であることを特徴とする請求項2に記載の金属イオンバッテリー。
【請求項6】
前記活性材料は、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、又は、これらの組み合わせであることを特徴とする請求項2に記載の金属イオンバッテリー。
【請求項7】
前記グラファイトは、天然グラファイト、人工グラファイト、メソフェーズ、カーボンマイクロビーズ、熱分解グラファイト、発泡グラファイト、片状グラファイト、膨張グラファイト、又は、これらの組み合わせであることを特徴とする請求項6に記載の金属イオンバッテリー。
【請求項8】
前記電解質は、第2のハロゲン化金属を有することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の金属イオンバッテリー。
【請求項9】
前記ハロゲン化金属は、金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、又は、これらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項8に記載の金属イオンバッテリー。
【請求項10】
前記第2のハロゲン化金属は、ルイス酸であることを特徴とする請求項8に記載の金属イオンバッテリー。
【請求項11】
前記ハロゲン化アルミニウムは、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、又は、これらの材料の組み合わせを有することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の金属イオンバッテリー。
【請求項12】
前記イオン液体は、ウレア(urea)、N−メチルウレア(N-methylurea)、塩化コリン(choline chloride)、エチルクロリンクロリド(ethylchlorine chloride)、アルカリハライド(alkali halide)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、メチルスルホニルメタン(methylsulfonylmethane)、アルキルイミダゾリウム塩(alkylimidazolium salt)、アルキルピリジニウム塩(alkylpyridinium salt)、アルキルフルオロピラゾリウム塩(alkylfluoropyrazolium salt)、アルキルトリアゾリウム塩(alkyltriazolium salt)、アラルキルアンモニウムアルミネート(aralkylammonium aluminates)、アルキルアルコキシアンモニウムアルミネート(alkylalkoxyammonium aluminates)、アラルキルホスホニウム塩(aralkylphosphonium salt)、アラルキルスルホニウム塩(aralkylsulfonium salt)、又は、これらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の金属イオンバッテリー。
【請求項13】
前記イオン液体は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドを有することを特徴とする請求項12に記載の金属イオンバッテリー。
【請求項14】
前記金属イオンバッテリーが充放電を実行すると、前記ハロゲン化アルミニウムと前記イオン液体とが反応してハロゲン化アルミニウム酸基を形成することを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の金属イオンバッテリー。
【請求項15】
前記金属イオンバッテリーが充放電を実行すると、前記負極の前記金属と前記電解質とが反応してハロゲン化金属酸基を形成することを特徴とする請求項14に記載の金属イオンバッテリー。
【請求項16】
前記ハロゲン化金属酸基のイオンサイズは、前記ハロゲン化アルミニウム酸基のイオンサイズより小さいことを特徴とする請求項15に記載の金属イオンバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオンバッテリーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは、地球上で非常に豊富な金属であり、アルミニウムを材料とする電子装置は、低コストという長所がある。電気化学充放電反応において3個の電子の移動を伴うアルミニウムベースのレドックス対は、比較的高いエネルギー貯蔵容量を提供する。また、かかるアルミニウムイオンバッテリーは、その低反応性及び難燃性により、使用上の安全性を大幅に改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5474861号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の金属イオンバッテリーは、放電電圧が低く、エネルギー貯蔵容量が少なく、放電電圧プラトー(discharge voltage plateaus)が不安定であった。よって、上述した問題を解決する新規の金属イオンバッテリーが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施態様によれば、本発明は例えば金属イオンバッテリー等のエネルギー貯蔵装置を提供する。金属イオンバッテリーは、正極と、絶縁層と、絶縁層によって正極と隔てられた負極であって、銅、鉄、亜鉛、コバルト、インジウム、ニッケル、錫、クロム、ランタン、イットリウム、チタン、マンガン若しくはモリブデンである金属又はその合金で構成された負極と、正極と負極との間に設けられた電解質であって、ハロゲン化アルミニウムとイオン液体とを有する電解質と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、金属イオンバッテリーを提供する。金属イオンバッテリーは、正極と、絶縁層と、絶縁層によって正極と隔てられた負極であって、銅、鉄、亜鉛、コバルト、インジウム、ニッケル、錫、クロム、ランタン、イットリウム、チタン、マンガン若しくはモリブデンである金属又はその合金で構成された負極と、正極と負極との間に設けられた電解質であって、ハロゲン化アルミニウムとイオン液体とを有する電解質と、を備える。本発明の実施態様によれば、金属イオンバッテリーの負極の金属はアルミニウムではない。本発明の実施態様によれば、金属と電解質中のハロゲン陰イオンとは、金属ハロゲン化物を形成することができ、さらに、金属ハロゲン化物はルイス酸である。よって、金属イオンバッテリーの充放電時に、負極から溶出する金属は、電解質と反応して、ハロゲン化金属酸基を形成する。電解質中のハロゲン化アルミニウムは、イオン液体と反応してハロゲン化アルミニウム酸基を形成し、電解質システムを可逆に維持する。この他、本発明のある実施態様によれば、負極から溶出する金属と電解質とが反応することにより形成されるハロゲン化金属酸基は、ハロゲン化アルミニウム酸基よりさらに小さいイオンサイズを有するので、活性材料(例えば、グラファイト)とさらにインターカレーション反応し易くなる。また、塩化アルミニウム酸基と活性材料とのインターカレーション反応をサポートして、金属イオンバッテリーの総発電量を増加させ、金属イオンバッテリーの使用寿命を延長する。
【0007】
以下の実施形態では、添付の図面を参照して、詳細な説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施態様による金属イオンバッテリーを示す図である。
【
図2】本発明の実施態様による金属イオンバッテリーの充放電プロセスにおける電圧と時間との関係を示す図である。
【
図3】本発明の実施態様による金属イオンバッテリーの充放電プロセスにおける電圧と時間との関係を示す図である。
【
図4】本発明の実施態様による金属イオンバッテリーの充放電プロセスにおける電圧と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載されている。しかしながら、これらの具体的な詳細がなくても、1つ以上の実施形態を実施可能であることは明らかであろう。他に、図面を簡略化するために、周知の構造及びデバイスが概略的に示されている。
【0010】
図1は、本発明の一実施態様による金属イオンバッテリー100を示す図である。金属イオンバッテリー100は、正極10と、負極12と、絶縁層14と、を有する。絶縁層14は、正極10と負極12との間に配置されており、負極を、絶縁層14により正極と隔てさせて、正極10と負極12とが直接接触するのを防止する。金属イオンバッテリー100は、金属イオンバッテリー100内に設けられた電解質20であって、正極と負極との間に位置して、正極10と負極12とに接触する電解質20を有する。金属イオンバッテリー100は充電式の二次電池であるが、本発明は、一次電池も含む。
【0011】
本発明の実施態様によれば、正極10は、集電層11と、集電層11上に配置される活性材料13と、を有する。本発明の実施態様によれば、正極10は、集電層11と、活性材料13と、から構成されてもよい。本発明の実施態様によれば、集電層11は、例えば炭素布、炭素フェルト又はカーボン紙等の導電性カーボン基材である。集電層11は、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅等の金属である金属材質、及び、カーボン材と金属の複合層であってもよい。例えば、導電性カーボン基材は、約約1mΩ・cm
2〜6mΩ・cm
2のシート抵抗を有しており、且つ、炭素含有量が65wt%より多い。活性材料13は、層状活性材料、又は、層状活性材料の凝集体を有する。本発明の実施態様によれば、活性材料13は、インターカレートした炭素材(例えば、グラファイト(天然グラファイト、人工グラファイト、メソフェーズ、カーボンマイクロビーズ、熱分解グラファイト、発泡グラファイト、片状グラファイト、若しくは、膨張グラファイトを含む)、グラフェン、カーボンナノチューブ、又は、これらの組み合わせ)であってもよい。本発明の実施態様によれば、活性材料13は、層状複水酸化物(layered double hydroxide)、層状酸化物、層状カルコゲナイド(layered chalcogenide)、又は、これらの組み合わせであってよい。活性材料13は、約0.05〜0.95(例えば、約0.3〜0.9)の気孔率を有する。また、本発明の実施態様によれば、活性材料13は、集電層11上で直接成長する(つまり、活性層と集電層との間に別の層が存在しない)。さらに、活性材料13は、粘着剤を用いて、集電層11に取り付けられる。
【0012】
本発明の実施態様によれば、絶縁層14の材質は、ガラス繊維、ポリエチレン(polyethylene:PE)、ポリプロピレン(Polypropylene:PP)、不織布、木質繊維、ポリエーテルスルホン(Poly(ether sulfones):PES)、セラミックファイバ等であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0013】
本発明の実施態様によれば、負極12は、金属M、又は、金属Mを含む合金である。金属のハロゲン化物(MX
y、Xはハロゲンであり、yは1〜4の整数である)はルイス酸であり、負極から溶出した金属を電解質20と反応させてハロゲン化金属酸基を形成して、イオン液体システムを可逆に維持する。本発明の実施態様によれば、金属Mは、例えば、銅、鉄、亜鉛、コバルト、インジウム、ニッケル、錫、クロム、ランタン、イットリウム、チタン、マンガン又はモリブデンであってもよい。また、負極12が金属Mを含む合金である場合には、金属Mを含む合金は、アルミニウムを含まない。さらに、負極12は集電層(図示しない)を含み、第1金属、又は、第1金属を含む合金が、集電層上に配置される。本発明の実施態様によれば、第1金属、又は、第1金属を含む合金は、集電層上で直接成長する(すなわち、両者間に何も介在しない)。第1金属、又は、第1金属を含む合金は、粘着剤を用いて、集電層上に固定される。本発明の実施態様によれば、金属Mは、還元電位がアルミニウムより小さい金属であり、金属イオンバッテリーの負極の腐食の問題を改善する。
【0014】
本発明の実施態様によれば、電解質20は、イオン液体及びハロゲン化アルミニウムを含むことができる。一実施態様において、電解質は、更に、金属のハロゲン化物を有することができる。イオン液体は、融点が100℃より低く、常温イオン液体(room temperature ion liquid:RTIL)であってよい。本発明の実施形態によれば、イオン液体は、ウレア(urea)、N−メチルウレア(N-methylurea)、塩化コリン(choline chloride)、エチルクロリンクロリド(ethylchlorine chloride)、アルカリハライド(alkali halide)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、メチルスルホニルメタン(methylsulfonylmethane)、アルキルイミダゾリウム塩(alkylimidazolium salt)、アルキルピリジニウム塩(alkylpyridinium salt)、アルキルフルオロピラゾリウム塩(alkylfluoropyrazolium salt)、アルキルトリアゾリウム塩(alkyltriazolium salt)、アラルキルアンモニウムアルミネート(aralkylammonium aluminates)、アルキルアルコキシアンモニウムアルミネート(alkylalkoxyammonium aluminates)、アラルキルホスホニウム塩(aralkylphosphonium salt)、アラルキルスルホニウム塩(aralkylsulfonium salt)、又は、これらの混合物であってよい。イオン液体と金属ハロゲン化物とのモル比は、少なくとも約1.1以上、又は、少なくとも約1.2以上(例えば、1.1〜1.2の間、例えば、約1.3、1.5、1.6又は1.8)であってよい。本発明の実施態様によれば、ハロゲン化アルミニウムが塩化アルミニウム(AlCl
3)である場合、イオン液体は、例えば、塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドであり、且つ、塩化アルミニウムと塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドのモル比は、少なくとも約1.2以上(例えば、1.2〜1.8の間)であってもよい。イオン液体電解質は、ドープされて(又は、添加剤が加えられて)、導電率が増加し、且つ、粘度が低下してもよいし、他の方式で液体電解質が変更されて、材料の可逆電着に有利な組成物が得られてもよい。
【0015】
本発明の実施形態によれば、電解質20は、ハロゲン化アルミニウムではない他のハロゲン化金属(M2)を含むことができる。金属(M2)は、銅、鉄、亜鉛、コバルト、インジウム、ニッケル、錫、クロム、ランタン、イットリウム、チタン、マンガン若しくはモリブデン、又は、これらの組み合わせを含むことができる。ハロゲン化金属(M2)は、金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、又は、これらの組み合わせを含むことができ、ルイス酸として機能することができる。
【0016】
本発明の実施態様によれば、イオン液体は、ハロゲンイオンを有する塩類であってもよい。金属イオンバッテリーが充放電を実行すると、ハロゲン化アルミニウムは、イオン液体とハロゲン化アルミニウム酸基(例えば、塩化アルミニウム酸基(AlCl
4−)とを形成する。また、金属イオンバッテリーが充放電を実行すると、負極の金属は、電解質と反応してハロゲン化金属酸基を形成する。
【0017】
本発明の或る実施態様によれば、負極の金属は、銅、鉄、亜鉛、コバルト、インジウム、ニッケル、錫、クロム、ランタン、イットリウム、チタン、マンガン又はモリブデンを含み、ハロゲン化アルミニウムは、塩化アルミニウムであってもよい。これにより、金属イオンバッテリーが充放電反応を実行する場合、形成される塩化金属酸基(MCl
(x+1)−,xは、1〜4の整数)は、例えば、CuCl
2−、CuCl
3−、FeCl
3−、FeCl
4−、MnCl
3−、MnCl
4−、ZnCl
3−、NiCl
3−、CoCl
3−、CoCl
4−、CrCl
3−、又は、CrCl
4−であってもよい。よって、塩化金属酸基は、活性材料(例えば、グラファイト)とインターカレーション反応をさらに容易に実行することができ、さらには、塩化アルミニウム酸基と活性材料が実行するインターカレーション反応をサポートして、金属イオンバッテリーの総発電量を増加させ、金属イオンバッテリーの使用寿命を延長することができる。
【0018】
本発明の上述した目的、特徴及び効果と、他の目的、特徴及び効果とを理解し易くするために、以下に、いくつかの実施態様及び比較例を挙げて、詳細に説明する。本発明の概念は、本明細書に記載された例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形態で具体化されてもよい。分かりやすくするために、周知の部分についての説明は省略し、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素を指している。
【0019】
(実施例1)
厚さが0.025mmの銅箔(Alfa Aesar社製造)を用意し、裁断して銅電極を得た。次に、絶縁膜(ガラスフィルター(2層)、商品番号 ワットマン(Whatman)GFA)と、グラファイト電極(集電基板上に配置された活性材質を有し、集電基板はカーボンファイバー紙であって、活性材質は膨脹グラファイト(60.5mg)である)を用意した。次に、銅電極(負極)、絶縁膜、グラファイト電極(正極)の順序で配列するとともに、アルミニウムプラスチックパウチ内に密封する。そして、電解質(塩化アルミニウム(AlCl
3)/1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(1-ethyl-3-methylimidazolium chloride:[EMIm]Cl)、AlCl
3と[EMIm]Clとの比は約1.4:1である)を注入して、金属イオンバッテリー(1)を得た。
【0020】
次に、NEWAREバッテリーアナライザーを用いて、実施例1で得られたアルミニウムイオン電池(1)の電池パフォーマンスを測定し(測定条件:充電電流100mA/g、カットオフ電圧2.45V、放電電流100mA/g、カットオフ電圧1V)、最大比容量が95.8mAh/gに達することが分かった。
図2は、金属イオンバッテリー(1)の充電プロセス中の電圧と時間との関係を示す図である。
図2から分かるように、金属イオンバッテリー(1)は、2.3V〜2.45Vにおいて明らかな充電電圧プラトーを表す以外に、2.0V〜2.1V及び1.8V〜1.9Vの各々においても充電電圧プラトーを表している。また、金属イオンバッテリー(1)が500mA/g電流下で充放電テストを実行する場合、比容量は、87.43mAh/gに達する。銅を負極としているので、充放電プロセス中に、イオンサイズが小さい塩化銅酸基(CuCl
3−)及び塩化銅酸基(CuCl
2−)を形成することができる。よって、金属イオンバッテリー(1)の比容量が増加する。
【0021】
(実施例2)
厚さが0.03mmのニッケル箔(偉斯社販売)を用意し、裁断してニッケル電極を得た。次に、絶縁膜(ガラスフィルター(2層)、商品番号 ワットマン(Whatman)GFA)と、グラファイト電極(集電基板上に配置された活性材質を有し、集電基板はカーボンファイバー紙であって、活性材質は膨脹グラファイト(72mg)である)を用意した。次に、ニッケル電極(負極)、絶縁膜、グラファイト電極(正極)の順序で配列するとともに、アルミニウムプラスチックパウチ内に密封する。そして、電解質(塩化アルミニウム(AlCl
3)/1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(1-ethyl-3-methylimidazolium chloride:[EMIm]Cl)、AlCl
3と[EMIm]Clとの比は約1.4:1である)を注入して、金属イオンバッテリー(2)を得た。
【0022】
次に、NEWAREバッテリーアナライザーを用いて、実施例2で得られたアルミニウムイオン電池(2)の電池パフォーマンスを測定し(測定条件:充電電流100mA/g、カットオフ電圧2.45V、放電電流100mA/g、カットオフ電圧1V)、最大比容量が88mAh/gに達することが分かった。
図3は、金属イオンバッテリー(2)の充放電プロセス中の電圧と時間との関係を示す図である。
図3から分かるように、金属イオンバッテリー(2)は、2.3V〜2.45Vにおいて明らかな充電電圧プラトーを表す以外に、2.0V〜2.1V及び1.8V〜1.9Vの各々においても充電電圧プラトーを表しており、さらに、2.3V〜2.0V及び1.8V〜1.5Vの各々においても複数の放電電圧プラトーを表している。
【0023】
金属イオンバッテリー(2)に対して複数回の充放電サイクルを施した後に、金属イオンバッテリー(2)のニッケル電極(負極)を観察したが、穿孔や破損現象は発見されなかった。よって、ニッケル電極を負極とし、塩化アルミニウム/1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド電解質を配合すると、負極の腐食の問題がかなり改善される。
【0024】
(実施例3)
厚度が0.1mmのステンレス箔(新日鉄により製造販売、番号 YUS190、成分は鉄とクロムを含む)を用意し、裁断してステンレス電極を得た。次に、絶縁膜(ガラスフィルター(2層)、商品番号 ワットマン(Whatman)GFA)と、グラファイト電極(集電基板上に配置された活性材質を有し、集電基板はカーボンファイバー紙であって、活性材質は膨脹グラファイト(45mg)である)を用意した。次に、ステンレス電極(負極)、絶縁膜、グラファイト電極(正極)の順序で配列するとともに、アルミニウムプラスチックパウチ内に密封する。そして、電解質(塩化アルミニウム(AlCl
3)/1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(1-ethyl-3-methylimidazolium chloride:[EMIm]Cl)、AlCl
3と[EMIm]Clとの比は約1.4:1である)を注入して、金属イオンバッテリー(3)を得た。
【0025】
次に、NEWAREバッテリーアナライザーを使用いて、実施例3で得られたアルミニウムイオン電池(3)の電池パフォーマンスを測定し(測定条件:充電電流100mA/g、カットオフ電圧2.45V、放電電流100mA/g、カットオフ電圧1V)、最大比容量が95.8mAh/gに達することが分かった。
図4は、金属イオンバッテリー(3)の充放電(電流は100mA/g)プロセス中の電圧と時間との関係を示す図である。
図4から分かるように、金属イオンバッテリー(3)は、2.3V〜2.45Vにおいて明らかな充電電圧プラトーを表す以外に、2.0V〜2.2Vにおいても充電電圧プラトーを表し、2.3V〜1.5Vにおいても複数の放電電圧プラトーを表している。ステンレスを負極としているので、充放電プロセス中に、イオンサイズが小さい塩化クロム酸基(CrCl
3−)及び塩化鉄酸基(FeCl
3−)を形成することができる。よって、金属イオンバッテリー(3)の比容量を増加させることができる。
【0026】
(比較例1)
厚さが0.025mmのアルミニウム箔を用意し、裁断してアルミニウム電極を得た。次に、絶縁膜(ガラスフィルター(2層)、商品番号 ワットマン(Whatman)GFA)と、グラファイト電極(集電基板上に配置された活性材質を有し、集電基板はカーボンファイバー紙であって、活性材質は膨脹グラファイト(57mg)である)を用意した。次に、アルミニウム電極(負極)、絶縁膜、グラファイト電極(正極)の順序で配列するとともに、アルミニウムプラスチックパウチ内に密封する。そして、電解質(塩化アルミニウム(AlCl
3)/1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(1-ethyl-3-methylimidazolium chloride:[EMIm]Cl)、AlCl
3と[EMIm]Clとの比は約1.4:1である)を注入して、金属イオンバッテリー(4)を得た。
【0027】
次に、NEWAREバッテリーアナライザーを用いて、比較例1で得られたアルミニウムイオン電池(4)の電池パフォーマンスを測定し(測定条件:充電電流100mA/g、カットオフ電圧2.45V、放電電流100mA/g、カットオフ電圧1.5V)、最大比容量が80.7mAh/gに達することが分かった。
【0028】
比較例1と比較すると、実施例1及び実施例3において非アルミニウム電極を負極とする金属イオンバッテリーは、充放電後に、負極が電解質と反応して、イオンサイズが塩化アルミニウム酸基(AlCl
4−)より小さい塩化金属酸基(MCl
(x+1)−)を形成するので、グラファイトとのインターカレーション反応がさらに容易になり、さらには、塩化アルミニウム酸基とグラファイトのインターカレーション反応をサポートして、金属イオンバッテリーの比容量を増加させることができる。また、実施例2のニッケルを負極とする金属イオンバッテリーは、充放電後のニッケル電極に腐食が発生していないので、金属イオンバッテリーの総発電量を増加させ、金属イオンバッテリーの使用寿命を延長することができる。
【0029】
本発明では、好ましい実施例を上述したように開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨と範囲を脱しない範囲内で各種の変更及び修正を加えることができる。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で特定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0030】
10…正極
11…集電層
12…負極
13…活性材料
14…絶縁膜
20…電解質
100…金属イオンバッテリー