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特開2017-208399半導体レーザ装置およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-208399(P2017-208399A)
(43)【公開日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/024 20060101AFI20171027BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   H01S5/024
   H01L21/302 104C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-98536(P2016-98536)
(22)【出願日】2016年5月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 久義
【テーマコード(参考)】
5F004
5F173
【Fターム(参考)】
5F004BB26
5F004CA04
5F004DA13
5F004DB19
5F004EA03
5F004EB04
5F173AA08
5F173AB62
5F173AB64
5F173AB73
5F173AG05
5F173AL10
5F173AL17
5F173AP33
5F173AP37
5F173AR72
(57)【要約】
【課題】導波路構造での温度特性を改善し、安定的な発光パターンおよび高出力化を実現できる半導体レーザ装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体レーザ装置1は、基板2上に積層されたn型クラッド層5と、n型クラッド層5上に積層された活性層6と、活性層6上に積層されたp型クラッド層7と、p型クラッド層7上に形成され、平面視ホーン形状のリッジを有する複数の導波路構造8とを含む。この構成において、互いに隣り合う導波路構造8の間には、活性層6を分断する溝30と、当該溝30に充填され、かつ半導体層4の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱材34とを含む分断構造29が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板上に積層された第1導電型のクラッド層と、
前記第1導電型のクラッド層上に積層された活性層と、
前記活性層上に積層された第2導電型のクラッド層と、
前記第2導電型のクラッド層上に形成され、かつ平面視ホーン形状のリッジを有する複数の導波路構造とを含み、
互いに隣り合う前記導波路構造の間には、前記活性層を分断する溝と、当該溝に充填され、かつ前記半導体層の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱材とを含む分断構造が形成されている、半導体レーザ装置。
【請求項2】
基板と、
基板上に積層された第1導電型のクラッド層と、
前記第1導電型のクラッド層上に積層された活性層と、
前記活性層上に積層された第2導電型のクラッド層と、
前記第2導電型のクラッド層上に形成され、かつ平面視ホーン形状のリッジを有する少なくとも10個の導波路構造とを含み、
互いに隣り合う前記導波路構造の間には、前記活性層を分断する溝と、当該溝に充填され、かつ前記半導体層の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱材とを含む分断構造が形成されている、半導体レーザ装置。
【請求項3】
基板と、
基板上に積層された第1導電型のクラッド層と、
前記第1導電型のクラッド層上に積層された活性層と、
前記活性層上に積層された第2導電型のクラッド層と、
前記第2導電型のクラッド層上に積層されたエッチングストップ層と、
前記エッチングストップ層上に形成され、かつ平面視ホーン形状のリッジを有する複数の導波路構造とを含み、
互いに隣り合う前記導波路構造の間には、前記活性層を分断する溝と、当該溝に充填され、かつ前記半導体層の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱材とを含む分断構造が形成されている、半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記エッチングストップ層は、前記導波路構造に対してエッチング選択比を有する半導体材料を含む、請求項3に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記分断構造の前記溝は、前記第2導電型のクラッド層および前記活性層を分断し、前記第1導電型のクラッド層に達する深さを有している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記分断構造の前記溝は、前記第2導電型のクラッド層、前記活性層および前記第1導電型のクラッド層を分断している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記分断構造の前記溝は、互いに隣り合う前記導波路構造の間において、前記導波路構造に沿って延び、前記導波路構造の間の間隔に応じてその幅が変化するように形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項8】
前記分断構造が、互いに隣り合う前記導波路構造の間において、前記導波路構造の長さ方向に間欠的に複数形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項9】
前記導波路構造は、側面部が垂直に立ち上がった垂直リッジを有している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項10】
前記導波路構造は、前記第2導電型のクラッド層上に積層された第2導電型のリッジクラッド層と、前記リッジクラッド層上に積層されたコンタクト層とを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項11】
請求項3に記載の半導体レーザ装置の製造方法であって、
前記基板上に、前記第1導電型のクラッド層と、前記活性層と、前記第2導電型のクラッド層と、前記エッチングストップ層と、前記導波路構造の元となる半導体材料層とを、この順に形成する工程と、
マスクを介するドライエッチングにより、前記エッチングストップ層が露出しない程度に前記導波路構造の元となる半導体材料層を選択的に除去するドライエッチング工程と、
前記ドライエッチング工程の後、前記マスクを介するウエットエッチングにより、前記エッチングストップ層が露出するまで前記導波路構造の元となる半導体材料層を選択的に除去する工程とを含む、半導体レーザ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体レーザ装置の分野では、生成される光(レーザ)の高出力化が求められており、それに伴って種々の形態が提案されている。たとえば、高出力化が実現され得る一つの形態として、特許文献1には、平面視ホーン形状のリッジを有する導波路構造を備えた半導体レーザ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−23133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、半導体レーザ装置の更なる高出力化を実現するため、同一の基板上に平面視ホーン形状のリッジを有する導波路構造を複数個設ける構成を検討している。導波路構造を複数個設けることで、理論上では、導波路構造の個数に応じて光出力を比例的に増加させることができると考えられるからである。
しかし、複数個の導波路構造が設けられた構成では、これら複数個の導波路構造が同時に発振されるため、一つの導波路構造で発生した熱が隣の導波路構造に伝達される結果、熱干渉により導波路構造が動作温度を超えた高温になる虞がある。導波路構造が高温になると、半導体レーザ装置の光出力の低下が引き起こされる。また、複数の導波路構造間において温度差が生じるとそれらの間で光出力にばらつきが生じる結果、設計通りの光出力を得ることができず、発光パターンの安定性も損なわれる。
【0005】
そこで、本発明は、導波路構造での温度特性を改善し、安定的な発光パターンおよび高出力化を実現できる半導体レーザ装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体レーザ装置は、基板と、基板上に積層された第1導電型のクラッド層と、前記第1導電型のクラッド層上に積層された活性層と、前記活性層上に積層された第2導電型のクラッド層と、前記第2導電型のクラッド層上に形成され、かつ平面視ホーン形状のリッジを有する複数の導波路構造とを含む。この構成において、互いに隣り合う前記導波路構造の間には、前記活性層を分断する溝と、当該溝に充填され、かつ前記半導体層の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱材とを含む分断構造が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の半導体レーザ装置は、互いに隣り合う導波路構造の間に、活性層を分断する分断構造が形成された構成とされている。分断構造は、活性層を分断する溝と、当該溝に充填され、かつ半導体層の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱材とによって形成されている。この分断構造によって、複数の導波路構造で生じた熱をそれらの間において相互に伝達させることができるから、複数の導波路構造間で温度差が生じるのを抑制できる。
【0008】
つまり、分断構造によって、複数の導波路構造で生じた熱を外部に放散(排熱)させることができる共に、複数の導波路構造を均熱状態、つまり、複数の導波路構造間において温度差が少ない状態に近づけることができる。これにより、複数の導波路構造間における熱干渉の発生を良好に抑制できる。よって、安定的な発光パターンおよび高出力化を実現できる半導体レーザ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る半導体レーザ装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す導波路構造の幾つかを示す拡大平面図である。
図3図3は、図2に示すIII-III線に沿う縦断面図である。
図4図4は、図2に示すIV-IV線に沿う縦断面図である。
図5図5は、図2に示すV-V線に沿う縦断面図である。
図6A図6Aは、図1に示す半導体レーザ装置の製造方法の一工程を示す縦断面図である。
図6B図6Bは、図6Aの次の工程を示す縦断面図である。
図6C図6Cは、図6Bの次の工程を示す縦断面図である。
図6D図6Dは、図6Cの次の工程を示す縦断面図である。
図6E図6Eは、図6Dの次の工程を示す縦断面図である。
図6F図6Fは、図6Eの次の工程を示す縦断面図である。
図6G図6Gは、図6Fの次の工程を示す縦断面図である。
図6H図6Hは、図6Gの次の工程を示す縦断面図である。
図7図7(a)は、従来のドライエッチング工程を経て形成された導波路構造を示すSEM画像である。図7(b)は、本発明のドライエッチング工程を経て形成された導波路構造を示すSEM画像である。
図8図8は、図2に対応する部分の拡大平面図であって、溝の変形例を示す図である。
図9図9は、図3に対応する部分の縦断面図であって、溝の変形例を示す図である。
図10図10は、図3に対応する部分の縦断面図であって、半導体層の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体レーザ装置1を示す斜視図である。図2は、図1に示す導波路構造8の幾つかを示す拡大平面図である。図3は、図2に示すIII-III線に沿う縦断面図である。図4は、図2に示すIV-IV線に沿う縦断面図である。図5は、図2に示すV-V線に沿う縦断面図である。
【0011】
半導体レーザ装置1は、たとえば動作電圧VOPが3V以下であり、700nm以上1000nm以下の範囲にピーク発光波長を有する光(レーザ)を発現させる化合物半導体レーザダイオードである。半導体レーザ装置1は、n型の基板2を含む。基板2は、たとえばn型GaAs基板であってもよい。基板2は、平面視で長方形状に形成されており、表面と、その反対の裏面と、表面および裏面を接続する側面とを含む。基板2は、所定のオフ角(たとえば10°程度のオフ角)が設定されたオフ基板であってもよい。
【0012】
基板2の裏面側には、裏面メタル3が形成されており、基板2の表面側には、半導体層4が形成されている。半導体層4は、基板2の側面との間で面一な劈開面を形成する側面を有しており、基板2の一方側端部に位置する側面が出射端部4aとされ、基板2の他方側端部に位置する側面が非出射端部4bとされている。半導体層4は、基板2上に積層されたn型クラッド層5と、n型クラッド層5上に積層された活性層6と、活性層6上に積層されたp型クラッド層7とを含むダブルヘテロ構造を有している。
【0013】
n型クラッド層5は、活性層6に電子を提供し、かつ、活性層6で生成された光を当該活性層6内に閉じ込めるための層である。n型クラッド層5は、ヒ素(As)または燐(P)が添加された化合物半導体層を含んでいてもよい。n型クラッド層5は、たとえばn型AlGaAs層またはn型InGaAlP層であってもよい。
図1図5を参照して、半導体層4上には、平面視ホーン形状のリッジ(リッジ構造)を有する複数個(本実施形態では、10個)の導波路構造8が形成されている。図2では、明瞭化のため、各導波路構造8に薄いハッチングを付して示している。1つの導波路構造8は、本実施形態では、たとえば250mW程度まで発光可能な構成とされている。
【0014】
図2を参照して、複数個の導波路構造8は、いずれも、平面視において、基板2の長手方向に延びるように形成されており、かつ、基板2の短手方向に互いに間隔を空けて配置されている。つまり、複数個の導波路構造8は、平面視において、ストライプ状に配列されている。以下では、導波路構造8が延びる方向を「ストライプ方向」という。ストライプ方向は、本実施形態では、基板2の長手方向でもある。導波路構造8間の間隔は、たとえば10μm〜30μm(本実施形態では20μm)である。
【0015】
各導波路構造8は、ストライプ方向に沿ってリッジ幅が徐々に変化する平面視ホーン形状とされている。より詳細には、各導波路構造8は、出射端部4a側に位置し、所定のリッジ幅Wで長方形状に延びる第1領域9と、非出射端部4b側に位置し、第1領域9のリッジ幅Wよりも狭いリッジ幅W(W<W)で長方形状に延びる第2領域10と、第1領域9から第2領域10に向けてリッジ幅が徐々に狭まるように、第1領域9と第2領域10とを接続するテーパ領域11とを含む。このようにして、各導波路構造8は、出射端部4aから非出射端部4bに向かってリッジ幅が徐々に狭まる平面視ホーン形状とされている。
【0016】
導波路構造8は、第1領域9のリッジ幅Wと、第1領域9の長手方向の長さLと、第2領域10のリッジ幅Wと、第2領域10の長手方向の長さLと、テーパ領域11のテーパ角度θと、平面視における導波路構造8の面積Sとを含む、六つのパラメータを有している。これら六つのパラメータが最適化されることにより、良好な直列抵抗成分Rおよび動作電流IOPが実現されると共に、キンク(電流と光出力特性の直線性が失われる現象)の抑制および高出力化の両立が可能とされている。
【0017】
図3図5を参照して、各導波路構造8は、いずれも、半導体層4から上方に向けて突出するリッジを有している。各導波路構造8は、側面部8aが基板2の表面に対して垂直な方向に立ち上がった垂直リッジを有している。垂直リッジであれば、側面部8aが基板2の表面に対して傾斜したテーパリッジを有する導波路構造8に比べて、電流経路の面積を増加させることができるから、直列抵抗成分Rを低減させることができる。
【0018】
図1図5を参照して、各導波路構造8における出射端部4a側の端部には、ストライプ方向に沿って所定幅だけ延びる第1窓領域20が設定されており、各導波路構造8における非出射端部4b側の端部には、ストライプ方向に沿って所定幅だけ延びる第2窓領域21が設定されている。第1窓領域20および第2窓領域21は、導波路構造8に電流が注入されない電流非注入領域である。各導波路構造8における第1窓領域20および第2窓領域21間の内方領域22に、導波路構造8に電流が注入される電流注入領域が設定されている。
【0019】
半導体層4は、さらに、p型クラッド層7と導波路構造8との間に介在するp型エッチングストップ層25を含む。p型エッチングストップ層25は、導波路構造8(p型リッジクラッド層12)を形成するためのエッチング処理がp型クラッド層7に及ぶのを抑制するための層である。p型エッチングストップ層25は、導波路構造8(p型リッジクラッド層12)に対してエッチング選択比を有する化合物半導体材料からなる。p型エッチングストップ層25は、たとえば、p型リッジクラッド層12とは異なる組成比からなるp型AlGaAs層またはp型InGaAlP層であってもよい。
【0020】
図2および図3を参照して、本実施形態に係る半導体レーザ装置1は、互いに隣り合う導波路構造8の間に、活性層6を分断する溝30と、当該溝30に充填され、かつ半導体層4の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する放熱材34とを含む分断構造29が形成されていることを特徴とする。
図2を参照して、分断構造29の溝30は、互いに隣り合う導波路構造8の間において、導波路構造8に沿って延び、導波路構造8の間の間隔に応じて溝幅(開口幅)が変化するように形成されている。図2では、明瞭化のため、各溝30に濃いクロスハッチングを付して示している。
【0021】
図2では、溝30が、導波路構造8とは反対パターンの平面視ホーン形状に形成された例を示している。すなわち、溝30は、非出射端部4b側に位置し、所定の溝幅(開口幅)Wg1で長方形状に延びる第1領域31と、出射端部4a側に位置し、第1領域9の溝幅(開口幅)Wg1よりも狭い溝幅(開口幅)Wg2(Wg2<Wg1)で長方形状に延びる第2領域32と、第1領域31から第2領域32に向けて徐々に溝幅(開口幅)が徐々に狭まるように、第1領域31と第2領域32とを接続するテーパ領域33とを含む。
【0022】
図3を参照して、溝30は、p型エッチングストップ層25、p型クラッド層7および活性層6を分断し、n型クラッド層5に達する深さを有している。溝30の底部は、n型クラッド層5内に位置しており、n型クラッド層5の一部を挟んで基板2の表面に対向している。本実施形態では、溝30が、半導体層4の積層方向(基板2表面に対して垂直な方向)に掘り下げて形成されている例を示している。しかし、半導体層4の表面側から基板2の表面側に向けて開口幅が徐々に狭まるテーパ形状の溝30が形成されていてもよい。
【0023】
図3を参照して、分断構造29の放熱材34は、絶縁膜35を介して溝30内に埋め込まれている。放熱材34は、本実施形態では、半導体層4や導波路構造8等の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する金属材料により形成されている。放熱材34は、銅、アルミニウム、金および銀を含む群から選択される1種以上の金属材料種を含んでいてもよい。放熱材34の金属材料は、上記金属材料種に限定されるものではなく、半導体層4や導波路構造8等の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する金属材料であれば、放熱材34の金属材料として適切である。
【0024】
絶縁膜35は、一方表面(基板2側の表面)およびその反対の他方表面が、溝30の内壁面に沿って形成されている。絶縁膜35は、たとえばシリコン窒化膜またはシリコン酸化膜である。絶縁膜35は、溝30の内壁面に加えて、各導波路構造8の外面(側面部8aおよび上面を含む)を被覆している。絶縁膜35における内方領域22(電流注入領域)内に位置する部分には、p型コンタクト層14を選択的に露出させるコンタクト孔36が形成されている。一方、図4および図5を参照して、絶縁膜35における第1窓領域20および第2窓領域21(電流非注入領域)内に位置する部分には、コンタクト孔36は形成されていない。
【0025】
図1および図3図5を参照して、絶縁膜35上には、当該絶縁膜35を被覆するように表面メタル37が形成されている。図1では、表面メタル37を破線で示している。表面メタル37は、絶縁膜35上からコンタクト孔36内に入り込み、当該コンタクト孔36内でp型コンタクト層14に電気的に接続されている。
表面メタル37は、半導体層4や導波路構造8等の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する金属材料により形成されている。表面メタル37は、銅、アルミニウム、金および銀を含む群から選択される1種以上の金属材料種を含んでいてもよい。表面メタル37の金属材料は、上記金属材料種に限定されるものではなく、半導体層4や導波路構造8等の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する金属材料であれば、表面メタル37の金属材料として適切である。
【0026】
本実施形態では、表面メタル37の一部が前述の溝30内に入り込み、表面メタル37のうちの溝30に埋め込まれた部分が放熱材34とされている。したがって、導波路構造8等で生じた熱は、表面メタル37(放熱材34)を介して半導体レーザ装置1の外部に放散される。なお、本実施形態では、表面メタル37の一部を利用して放熱材34が形成されている例について説明したが、放熱材34は、表面メタル37とは異なる材料により形成されていてもよい。
【0027】
図1を再度参照して、半導体層4(p型エッチングストップ層25)上には、全ての導波路構造8を挟み込むように、ストライプ方向に沿って延びる第1土台部38および第2土台部39が形成されている。第1土台部38は、基板2の長手方向に沿う一方の側面側に形成されており、第2土台部39は、基板2の長手方向に沿う他方の側面側に形成されている。第1土台部38および第2土台部39は、図示はしないが、いずれも導波路構造8と同一の積層構造を有しており、上面および内側の側面(導波路構造8に対向する側面)が絶縁膜35により被覆されている。つまり、第1土台部38および第2土台部39は、絶縁膜35により全ての導波路構造8から電気的に絶縁されている。
【0028】
表面メタル37は、第1土台部38の上面の一部および第2土台部39の上面の一部を被覆するように形成されている。なお、第1土台部38および第2土台部39が存在しない構成が採用されてもよい。この場合、表面メタル37は、複数個の導波路構造8を被覆するように絶縁膜35上に形成されていてもよい。
以上、本実施形態の半導体レーザ装置1は、互いに隣り合う導波路構造8の間に、活性層6を分断する分断構造29が形成された構成とされている。分断構造29は、活性層6を分断する溝30と、当該溝30に充填され、かつ半導体層4よりも熱伝導率の高い放熱材34によって形成されている。この分断構造29によって、複数の導波路構造8で生じた熱をそれらの間において相互に伝達させることができるから、複数の導波路構造8間で温度差が生じるのを抑制できる。
【0029】
つまり、分断構造29によって、複数の導波路構造8で生じた熱を外部に放散(排熱)させることができると共に、複数の導波路構造8を均熱状態、つまり、複数の導波路構造間において温度差が少ない状態に近づけることができる。これにより、複数の導波路構造8間における熱干渉の発生を良好に抑制できる。よって、安定的な発光パターンおよび高出力化を実現できる半導体レーザ装置1を提供できる。
【0030】
また、本実施形態の半導体レーザ装置1では、分断構造29の溝30が、溝幅(開口幅)が導波路構造8間の幅に応じて変化するように形成されている。これにより、限られたスペースの中で、溝30に埋め込まれる放熱材34の体積を効率よく増加させることができるので、複数の導波路構造8で生じた熱をそれらの間において相互に良好に伝達させることができる。また、複数の導波路構造8で生じた熱を外部に良好に放散(排熱)させることができる。
【0031】
ところで、n型クラッド層5およびp型クラッド層7は、ヒ素(As)または燐(P)が添加された化合物半導体層によって構成される。たとえば、n型クラッド層5およびp型クラッド層7が、ヒ素(As)が添加された化合物半導体層によって構成されている場合、その性質上、燐(P)が添加されたものと比べて動作電圧VOPを低減できるから、発熱量の増加を抑制できると考えられる。しかし、ヒ素(As)は燐(P)と比べて環境負荷が大きいという課題がある。
【0032】
この点、本実施形態の半導体レーザ装置1では、ヒ素(As)に代えて燐(P)が添加されたn型クラッド層5およびp型クラッド層7を採用した場合であっても、前述の通り、分断構造29によって、導波路構造8の温度上昇を抑制しつつ、安定的な発光パターンおよび高出力化を実現できる。よって、環境負荷を低減できる半導体レーザ装置1を提供できる。
【0033】
図6A図6Hは、図1に示す半導体レーザ装置1の製造方法の一工程を示す縦断面図である。図6A図6Hは、図3に対応する部分の拡大断面図である。
図6Aを参照して、半導体レーザ装置1を製造するにあたり、まず、基板2が準備される。次に、たとえばエピタキシャル成長法により、n型クラッド層5、活性層6、p型クラッド層7、p型エッチングストップ層25、p型リッジクラッド層12、p型不連続緩和層13およびp型コンタクト層14の元となる各種の半導体材料層(化合物半導体材料層)が、基板2の表面上にこの順に成長される。これにより、n型クラッド層5、活性層6、p型クラッド層7、p型エッチングストップ層25、p型リッジクラッド層12、p型不連続緩和層13およびp型コンタクト層14を含む積層構造が形成される。
【0034】
次に、図6Bを参照して、p型コンタクト層14上に、導波路構造8を形成すべき領域を被覆するように酸化シリコンからなるハードマスク50が形成される。次に、図6Cを参照して、ハードマスク50を介するドライエッチング(たとえばRIE(Reactive Ion Etching))が実行される。ドライエッチング工程は、基板2が加熱ステージ51に載置された状態で実行される。
【0035】
ドライエッチング工程の一つの手法として、Clガスを使用し、加熱ステージ51の温度を80℃程度に設定して実行するものがある(以下、従来のドライエッチング工程という。)。しかし、従来のドライエッチング工程では、p型コンタクト層14、p型不連続緩和層13および/またはp型リッジクラッド層12にインジウム(In)が含まれる場合には、エッチングの進行に伴って、Clガスとインジウム(In)とが反応し、不揮発性のインジウム塩化物層が形成される虞がある。このインジウム塩化物層は、エッチング途中に形成されるp型コンタクト層14、p型不連続緩和層13およびp型リッジクラッド層12の側壁部に付着する。
【0036】
インジウム塩化物層が付着すると、Clガス雰囲気に対する暴露時間が長いp型コンタクト層14側の側壁部のエッチング量が相対的に増加し、Clガス雰囲気に対する暴露時間が短いp型リッジクラッド層12側の側壁部のエッチング量が相対的に低下する。その結果、従来のドライエッチング工程を経て形成された導波路構造8を示すSEM(Scanning Electron Microscope)画像である図7(a)に示されるように、側面部8aが基板2の表面に対して下り傾斜したテーパリッジを有する導波路構造8が形成される。
【0037】
そこで、本実施形態では、p型コンタクト層14、p型不連続緩和層13および/またはp型リッジクラッド層12にインジウム(In)が含まれる場合には、SiClガスを使用し、加熱ステージ51の温度を80℃を超える温度、たとえば100℃〜200℃程度(より具体的には150℃程度)に設定して、ドライエッチング工程を実行することとしている。このドライエッチング工程では、p型リッジクラッド層12の一部が残存するように、つまりp型エッチングストップ層25が露出しない程度に、p型コンタクト層14、p型不連続緩和層13およびp型リッジクラッド層12が選択的に除去される。
【0038】
本実施形態のドライエッチング工程によれば、エッチングの進行に伴って形成されるインジウム塩化物が、還元剤となるSiClラジカルの働きにより適度に分解されることから、p型コンタクト層14側のエッチング量と、p型リッジクラッド層12側のエッチング量との間に異なりが生じるのが抑制される。また、SiClガスから生じるシリコン系のパーティクルが、導波路構造8の側面部8aに付着することがあるが、加熱ステージ51の温度上昇に伴って、当該シリコン系のパーティクルが導波路構造8の側面部8aから離脱するのも促される。したがって、側面部8aの状態が良好な導波路構造8を形成することが可能となる。
【0039】
次に、図6Dを参照して、ハードマスク50を介するウエットエッチングにより、p型エッチングストップ層25が露出するまでp型リッジクラッド層12が選択的に除去される。この工程では、図6Cの工程で残存させられたp型リッジクラッド層12の厚さに応じた分だけ、p型コンタクト層14およびp型不連続緩和層13の側壁部も除去される。
このようにして、本発明のドライエッチング工程を経て形成された導波路構造8を示すSEM画像である図7(b)に示されるように、側面部8aが基板2の表面に対して垂直な方向に立ち上がった垂直リッジを有する導波路構造8が形成される。導波路構造8の形成後、ハードマスク50は除去される。
【0040】
次に、図6Eを参照して、溝30を形成すべき領域に選択的に開口52aを有するレジストマスク52が、p型エッチングストップ層25上に形成される。次に、図6Fを参照して、レジストマスク52を介するドライエッチング(たとえばRIE(Reactive Ion Etching)法)により、p型エッチングストップ層25、p型クラッド層7、活性層6およびn型クラッド層5の不要な部分が選択的に除去される。これにより、互いに隣り合う導波路構造8の間に、活性層6を分断する溝30が形成される。溝30の形成後、レジストマスク52は除去される。
【0041】
次に、図6Gを参照して、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法によって、窒化シリコンまたは酸化シリコンが堆積されて、絶縁膜35が形成される。次に、たとえばマスクを介するエッチングにより、絶縁膜35の不要な部分(各導波路構造8の内方領域22に対応する部分)が選択的に除去されて、コンタクト孔36が形成される。
【0042】
その後、図6Hを参照して、絶縁膜35上に表面メタル37が形成され、基板2の裏面側に裏面メタル3が形成される。表面メタル37および裏面メタル3は、電界めっきまたは無電解めっきにより形成されてもよい。以上の工程を経て、半導体レーザ装置1が製造される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
【0043】
たとえば、前述の実施形態では、10個の導波路構造8が形成された例について説明したが、10個以上の導波路構造8が形成されていてもよい。
また、前述の実施形態では、半導体レーザ装置1が、導波路構造8とは反対パターンの平面視ホーン形状に形成された溝30を含む例について説明した(図2も併せて参照)。しかし、半導体レーザ装置1は、溝30に代えてまたはこれに加えて、図8に示すように、互いに隣り合う導波路構造8の間において、導波路構造8の長さ方向に間欠的に形成された複数個の溝60を含んでいてもよい。この構成において、複数個の溝60は、導波路構造8の間の間隔に応じて溝幅(開口幅)が徐々に変化するように形成されている。このような構成によっても、前述の実施形態において述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0044】
また、前述の実施形態では、溝30の底部が、n型クラッド層5内に位置する例について説明した。しかし、溝30に代えてまたはこれに加えて、図9に示すように、p型エッチングストップ層25、p型クラッド層7、活性層6およびn型クラッド層5を分断し、その底部が基板2内に位置する溝61が形成されていてもよい。
また、前述の実施形態では、p型エッチングストップ層25を含む半導体層4が形成された例について説明した。しかし、エッチング条件により垂直リッジとなる導波路構造8を形成できるのであれば、必ずしもp型エッチングストップ層25を含む半導体層4が形成される必要はない。半導体層4がp型エッチングストップ層25を含まない場合、図10に示すように、半導体層4のp型クラッド層7上に、導波路構造8のp型リッジクラッド層12が直接積層された構成となる。
【0045】
また、前述の実施形態において、半導体レーザ装置1は、分断構造29(放熱材34)に熱的に接続されるヒートシンクを含んでいてもよい。このヒートシンクによれば、分断構29で吸収された熱を外部に良好に放散させることができる。なお、このヒートシンクは、表面メタル37に熱的に接続されるものであってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…半導体レーザ装置、2…基板、5…n型クラッド層、6…活性層、7…p型クラッド層、8…導波路構造、8a…側面部、12…p型リッジクラッド層、14…p型コンタクト層、25…p型エッチングストップ層、30,60,61…溝、34…放熱材、50…ハードマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7
図8
図9
図10