特開2017-209061(P2017-209061A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-209061(P2017-209061A)
(43)【公開日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】噴霧式水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20060101AFI20171102BHJP
【FI】
   A01G31/00 601C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-105094(P2016-105094)
(22)【出願日】2016年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】藤原 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】西小野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】岡 正晃
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314NC24
2B314ND27
2B314PB20
2B314PB22
2B314PB47
2B314PB49
(57)【要約】
【課題】簡素な構成であっても培養液を植物に良好に供給することができる噴霧式水耕栽培装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る噴霧式水耕栽培装置Aは、図2図5に示すように、植物Pの根Rを育成するために密閉された根育成空間10を有してなる装置本体1と、植物Pに付与すべき培養液を装置本体1の外部から根育成空間10へ導入するための培養液供給管2と、この培養液供給管2に接続されて霧状培養液Fを噴射可能なノズルユニット3と、このノズルユニット3から噴射された培養液が直接接しない位置に植物Pの根Rを配すべく当該植物Pを位置決めする根配置部4とを具備することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の根を育成するために密閉された根育成空間を有してなる装置本体と、
植物に付与すべき培養液を装置本体の外部から根育成空間へ導入するための培養液供給管と、
この培養液供給管に接続されて培養液を噴射可能な複数のノズルからなるものでありこの複数のノズルの噴射口を相対するよう対向配置させることで霧状の培養液を生成するノズルユニットと、
前記複数のノズルから噴射された培養液が直接接しない位置に前記植物の根を配すべく当該植物を位置決めする根配置部と
を具備することを特徴とする噴霧式水耕栽培装置。
【請求項2】
前記ノズルユニットが前記培養液供給管の長手方向に沿って対をなすノズルを対向配置させたものである請求項1又は2記載の噴霧式水耕栽培装置。
【請求項3】
前記根配置部が、前記長手方向において対をなすノズル間に前記植物を配さないようにしている請求項2記載の噴霧式水耕栽培装置。
【請求項4】
前記ノズルユニットが、前記培養液供給管の上方に設けられている請求項1、2又は3記載の噴霧式水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の水耕栽培を行うにあたり植物の根に霧状の培養液を噴霧する噴霧水耕栽培を行うための噴霧式水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を栽培するにあたり、既存の土壌を利用すること無く、植物の根に直接栄養分を含ませた養液である培養液を付与するという水耕栽培が旧知である。
【0003】
なかでも近年、植物の根への効率の良い栄養分の付与を実現すべく、植物の根へ液体を付与するのではなく、特定の構造をなすノズルを通じて噴霧される霧状の培養液を根に対して噴霧することにより、従前よりも効率の良い栽培を行おうとする試みも行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
斯かる特許文献1記載のものでは、培養液を散布するノズルの構造を、液体である培養液のみならず、別途空気といった気体を噴出する構成をも有するという、所謂二流体式のノズルを採用することにより、より微細な培養液の霧を創出せしめたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−10651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載したようなノズルを使用するためには、ノズルに対し培養液のみならず、別途気体を効率良く供給するための格別の設備が必須となる。具体的には、当該ノズルに一定以上の気圧をもって気体を供給するための気体の管路や、当該管路に気体を送り込むためのコンプレッサといった格別の構成が必要となる。
【0007】
ここで近年、斯かる植物の水耕栽培は、単に自然条件下のみでおこなわれるのみならず、温度条件も管理された且つ人工照明によって日照条件をも管理されているような、所謂植物工場とも称される栽培手法にも積極的に適用されている。それ故、植物工場を担う設備の設営、管理上、植物を栽培するための各設備は、可能な限り簡素であり汎用性が高い構造からなるものが要求されている。
【0008】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には培養液の微細な霧を植物の根に安定して供給することが可能な噴霧式水耕栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以上のような問題点を鑑み、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明の噴霧式水耕栽培装置は、植物の根を育成するために密閉された根育成空間を有してなる装置本体と、植物に付与すべき培養液を装置本体の外部から根育成空間へ導入するための培養液供給管と、この培養液供給管に接続されて培養液を噴射可能な複数のノズルからなるものでありこの複数のノズルの噴射口を相対するよう対向配置させることで霧状の培養液を生成するノズルユニットと、前記複数のノズルから噴射された培養液が直接接しない位置に前記植物の根を配すべく当該植物を位置決めする根配置部とを具備することを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、対をなすノズルから噴射される培養液は、当該複数のノズルが対向配置されているが故、互いの噴射された液体同士が衝突し、更に微細な霧となり周囲に雲散する。これにより、植物の根にはノズルから噴射された液体が直接当たることはなく、一度相対するノズルから噴射された液体同士が衝突した霧のみが植物の根に付着することとなる。その結果、ノズルから噴射された培養液は植物の根に過度に影響を与えることなく当該根に付着し、そのまま培養液を吸収せしめることができる。斯かる培養液の植物の根への付着、吸収の過程がそのまま植物に対し過度なストレスの無い健全な生育に寄与せしめている。
【0012】
培養液供給管に供給される培養液の流れをノズルから噴射されるスムーズな培養液の噴射に貢献させるためには、ノズルユニットを培養液供給管の長手方向に沿って対をなすノズルを対向配置することが好ましい。
【0013】
また、ノズルユニットから噴射される培養液が植物の根に良好に吸収され得るようにするためには、根配置部を、長手方向において対をなすノズル間に植物を配さないようにすることが望ましい。
【0014】
更に、培養液からなる微細な霧を根育成空間に効率良く供給するためには、ノズルユニットを、培養液供給管の上方に設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明した本発明によれば、簡素な構成であっても培養液を植物に良好に供給することができる噴霧式水耕栽培装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る噴霧式水耕栽培装置を示す外観図。
図2】同構成説明図。
図3】同噴霧式水耕栽培装置の底面側から見た構成説明図。
図4】同実施形態に係る作用説明図。
図5】同上。
図6】同実施形態の変形例に斯かる作用説明図。
図7】同他の変形例に斯かる構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の噴霧式水耕栽培装置Aは、図1図5に示すように、例えば温度条件並びに日照条件が外部に影響されずに管理され得る、所謂植物工場を構成するための栽培設備に設置されるものである。そして本実施形態では、当該噴霧式水耕栽培装置Aにより栽培する栽培植物は、一例として果菜類を栽培するものとしている。なお当該果菜類の一例としては、イチゴを挙げることができる。
【0019】
この噴霧式水耕栽培装置Aは、栽培する植物に応じて設定された培養液を適宜殺菌浄化しつつ循環させながら植物を栽培するものである。また、本実施形態では当該噴霧式水耕栽培装置Aを設置するための植物工場を構成するための設備や培養液を循環させるための設備といった、植物を栽培するために専ら必要とされる設備は、既存の種々の態様のものを適宜利用できるため、詳細な説明を省略する。また勿論、上述した植物工場には、完全人工光型植物工場、人工光型植物工場、閉鎖型植物工場、人工光閉鎖型植物工場等が含まれることはいうまでもない。
【0020】
この噴霧式水耕栽培装置Aは、図2図5に示すように、植物の根Rを育成するために密閉された根育成空間10を有してなる装置本体1と、植物に付与すべき培養液を装置本体1の外部から根育成空間10へ導入するための培養液供給管2と、この培養液供給管2に接続されて培養液を噴射可能な複数のノズル31からなるものでありこの複数のノズル31の噴射口32を相対するよう対向配置させることで霧状培養液F(図4図5)を噴射可能なノズルユニット3と、このノズルユニット3から噴射された培養液が直接接しない位置に植物の根を配すべく当該植物を位置決めする根配置部4とを具備することを特徴とする。
【0021】
以下、当該噴霧式水耕栽培装置Aの具体的な構成について説明していく。
【0022】
装置本体1は、内部に根育成空間10を形成するために遮光された概略直方体形状をなすものである。当該根育成空間10とは、内部に霧状培養液Fが充満された状態で、植物Pの根Rが育成され得る容積が確保されている。噴霧式水耕栽培の場合、根Rに対し培養液の霧を直接根の表面、具体的には根毛と称される先端部分に晒すことが重要となる。
【0023】
培養液供給管2は、装置本体1の外部に突出し装置本体1の内部へ培養液を導入するための導入部21と、装置本体1内にたとえば直線状に培養液を案内する管本体22と、装置本体1の外部において培養液の供給をストップさせるための止水栓23とを有している。
【0024】
根配置部4は、装置本体1の上面側を被覆するとともに、栽培する植物Pの地上部Lの位置を位置決めすることを通して、装置本体1内の根Rの配置を決めるためのものである。この根配置部4は、装置本体1の上面側を被覆する上面板40と、この上面板40に施した開口であり植物の地上部を挿通させるための根配置口41と、根配置口41内で植物Pを位置決めするために根配置口41に充填する支持部材42とを有している。そして本実施形態では根配置部4は、長手方向においてノズルユニット3に重複しない位置に各根配置口41を設定している。当該根配置口41の位置設定については後に改めて説明する。
【0025】
排水部5は、装置本体1内に滞留した培養液を回収するために装置本体1の下面側に設けた部分である。当該排水部5から回収された培養液は、適宜殺菌されるとともにpHや電気伝導度が再調整された後、再び新たな培養液と混合されて植物へ付与され得る。すなわち本実施形態においても通常の水耕栽培と同様、この排水部5を用いて培養液のリサイクルが行われている。当該培養液のリサイクルの具体的な態様に関しては既存の種々の態様を適宜適用することができるので、本実施形態ではその詳細な説明を省略する。
【0026】
ここで、本実施形態に係る噴霧式水耕栽培装置Aは、ノズルユニット3が、対をなすノズル31からなるものであり当該対をなすノズル31を噴射口32が相対するよう対向配置させてなることを特徴としている。
【0027】
ノズルユニット3は、本実施形態では培養液供給管2の上方であり且つ長手方向に沿って配置された対をなすノズル31を主体としたものであり、これら対をなすノズル31の互いの噴射口32を、所定距離で相対するように配置することにより、各噴射口32から噴射される液体すなわち培養液が互いに衝突するように構成してある。これにより、各噴射口32から噴射される培養液はさらに微細にされた上で、装置本体1の根育成空間10中に霧状培養液Fの状態で充満することとなる。そして一度根育成空間10内に霧状に噴射された霧状培養液Fは長時間根育成空間10内を滞留することとなる。
【0028】
以上のように本実施形態の噴霧式水耕栽培装置は、対をなすノズル31から噴射される霧状培養液Fは、当該対をなすノズル31が対向配置されているが故、互いの培養液が衝突し、微細な霧となり周囲に雲散する。これにより、植物Pの根Rにはノズル31から噴射された液体すなわち培養液が直接当たることはなく、一度相対するノズル31から噴射された液体同士が衝突した霧、すなわち霧状培養液Fのみが植物Pの根Rに付着することとなる。その結果、ノズル31から噴射された霧状培養液Fは植物Pの根Rに過度に影響を与えることなく当該根Rに付着し、そのまま培養液を吸収せしめることができる。斯かる培養液の植物Pの根Rへの付着、吸収の過程がそのまま植物に対し過度なストレスの無い健全な生育に寄与せしめている。
【0029】
そして、装置本体1に気体の導入を要する格別な設備の配置を回避しながら簡素な構成にて良好な培養液の供給を可能なものとするために本実施形態では、ノズルユニット3を構成する対をなすノズル31を、液体のみを噴射し得る一流体式のノズル31としている。このことは、従前より用いられてきた気体並びに液体を併せて噴射するという二流体式のものを用いることを有効に回避し、植物工場を構成するために液体のみならず気体を供給するためのコンプレッサや気体用の配管設備といった大がかりな設備を構築することを有効に回避せしめている。
【0030】
また本実施形態では、ノズルユニット3を培養液供給管2の長手方向に沿って対をなすノズル31を対向配置するように構成することで、培養液供給管2に供給される培養液の流れをノズル31から噴射されるスムーズな培養液の噴射を実現せしめている。
【0031】
また、ノズルユニット3から噴射される培養液が植物の根に良好に吸収され得るようにするために本実施形態では、根配置部4を、長手方向において対をなすノズル31間に植物を配さないように配置している。
【0032】
<変形例>
【0033】
以下、本実施形態の変形例について説明する。また以下の変形例について、上記実施形態の構成要素に相当するものに対しては同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
【0034】
上記実施形態ではノズルユニット3を、培養液供給管2の下側に配置した態様を開示したが、本発明は当該態様に限定されるものではない。
【0035】
すなわち図6に示すように、ノズルユニット3を培養液供給管2の上側に配したものとしてもよい。このようなものであれば、培養液供給管2を相対的に下側に配置することができる。これは、栽培により生育した植物Pの根Rが培養液供給管2の上側から乗り掛かり、当該培養液供給管2に不要な荷重を加えてしまうという不具合を有効に回避することができる。
【0036】
また本実施形態の他の変形例として、図7に示す態様を挙げることができる。
【0037】
すなわち図7に示すように、装置本体1の限られた容積を有効に利用しつつ、単位面積あたりの植物Pの栽植本数の増大を図るために、上面板40に設けた根配置口41を、所謂千鳥配置の態様としたものである。このようなものであっても、上記実施形態同様の効果を得ることができる。
【0038】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限られるものではない。例えば上記実施形態では本装置により栽培する植物の一例として、果菜類を模式的に例示したが勿論、他に市場に出回り得る葉菜類、又は一部の根菜類を対象として扱っても良い。また勿論、その場合には単位面積当たりの栽培植物の栽植本数や培養液の構成といった具体的な事項は適宜変わり得ることがいうまでもない。
【0039】
また例えば上記実施形態では培養液供給管を長手方向に一本のみ縦貫させた態様を開示したが勿論、短寸方向に複数本の培養液供給管を並べた態様としてもよい。また斯かる場合、ノズルユニットを構成する複数のノズルは培養液供給管の延出方向に配置される態様に限られない。すなわち、複数並ぶ培養液供給管に亘ってそれぞれノズルが設けられ、これら対をなすノズルが短寸方向に向いて対向するという構成を適用してもよい。加えて、上記実施形態ではノズルユニットを構成する複数のノズルとして、対をなす、すなわち二つのノズルを180°正対させて配置した態様のみを開示したが勿論、三つのノズルであれば角度位相を120°ずつ異ならせて相対する向きに配置しても良く、四つ以上のノズルであってもそれぞれ向きを当角度間隔異ならせて配置するように構成しても良いことは勿論である。
【0040】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0041】
A・・・噴霧式水耕栽培装置
1・・・装置本体
10・・・根育成空間
2・・・培養液供給管
3・・・ノズルユニット
31・・・ノズル
32・・・噴射口
4・・・根配置部
F・・・霧状培養液
P・・・植物
R・・・根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2016年6月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7