【実施例】
【0026】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0027】
[実施例1]
栽培対象としてシロイヌナズナ(双子葉植物綱;アブラナ科)を選定し、その種子を定法通りに土壌に播種した。
なお、シロイヌナズナは、その生長、生殖などに関する遺伝子が、他の植物と多くが共通しており、シロイヌナズナの遺伝子に関する研究の成果は、他の植物にも幅広く応用されていることから、本実施例では、栽培対象としてシロイヌナズナを選定した。
【0028】
播種した種子を五つのグループに分けて、その生育状況を観察したところ、一週間後に、双葉が地表に出てきた。そして、その一週間後(播種から二週間後)に、第二本葉が形成されたのが確認できた。
この時点で、第二〜第五グループに、2.45GHz帯のマイクロ波を23Wの出力で、それぞれ、10分、20分、30分、60分照射した。第一グループは、マイクロ波を照射せずにコントロールグループとした。
【0029】
播種から三週間後と四週間後に、ロゼット状に広がった葉の直径を測定した。その結果をそれぞれ
図1、
図2に示す。
これらの測定結果から、葉の直径に著しい変化は認められず、マイクロ波照射が、植物の栄養成長期に与える影響が少ないことが確認できた。
【0030】
次に、播種から五週間後と六週間後に、茎(花序茎)の長さを測定した。その結果をそれぞれ
図3、
図4に示す。
これらの結果から、マイクロ波照射により花序茎の生長が早まることが確認できた。その後、花序茎の生長が早くなったものから順に、花序茎頂に花芽が形成され、開花、結実したことから、マイクロ波照射によって、栄養成長期から生殖成長期に切り替わる時期が早まり、早期に開花、結実することが確認できた。
【0031】
[実施例2]
栽培対象としてシロイヌナズナ(双子葉植物綱;アブラナ科)を選定し、その種子を定法通りに土壌に播種した。
【0032】
播種した種子を七つのグループに分けて、播種から二週間後に第二本葉が形成されたのが確認できた時点で、第二〜第七グループに、2.45GHz帯のマイクロ波を23Wの出力で、それぞれ、10分、20分、30分、1時間、2時間、4時間照射した。第一グループは、マイクロ波を照射せずにコントロールグループとした。
【0033】
播種から30日目と38日目に、花序茎の長さを測定した。その結果を
図5に示す。
これらの結果から、マイクロ波を1時間照射したものが最も花序茎の生長が早く、次に花序茎の生長が早いのはマイクロ波を2時間照射したものであり、これらに対して、それ以上照射時間を長くしても顕著な効果が認められないことが確認できた。
【0034】
[実施例3]
栽培対象としてシロイヌナズナ(双子葉植物綱;アブラナ科)を選定し、その種子を定法通りに土壌に播種した。
【0035】
播種した種子を二つのグループに分けて、一方のグループでは、実施例1と同様に、播種から二週間後に第二本葉が形成されたのが確認できた時点で、2.45GHz帯のマイクロ波を23Wの出力で60分照射した。他方のグループは、マイクロ波を照射せずにコントロールグループとした。
【0036】
一方のグループにマイクロ波を照射した以降は、両グループの水やりを中止して、播種から30日目の生育状況を観察した。マイクロ波を照射したグループは、コントロールグループに比べて、生育状況は相対的に良好に保たれ、葉の大きさを比較しても、マイクロ波を照射した物の方が大きく成長していた。
【0037】
[実施例4]
栽培対象としてシロイヌナズナ(双子葉植物綱;アブラナ科)を選定し、その種子を定法通りに土壌に播種した。
【0038】
播種した種子を二つのグループに分けて、一方のグループでは、実施例1と同様に、播種から二週間後に第二本葉が形成されたのが確認できた時点で、2.45GHz帯のマイクロ波を23Wの出力で60分照射した。他方のグループは、マイクロ波を照射せずにコントロールグループとした。
【0039】
一方のグループにマイクロ波を照射した以降は、両グループの水やりを中止して、播種から28日目に、40℃に設定された恒温槽に4時間静置し、恒温槽から取り出してから2日後(播種から30日目)に水やりを再開して生育状況を観察した。その後、枯れることなく開花、結実した割合(生存率)は、コントロールグループでは約60%であったのに対して、マイクロ波を照射したグループは約90%であり、生存率に著しい差異が認められた。
【0040】
[実施例5]
栽培対象としてジャガイモ(双子葉植物綱;ナス科)を選定し、その種イモ(塊茎)を二つのグループに分けて、一方のグループでは、2〜3mm程度に伸びた新芽に2.45GHz帯のマイクロ波を23Wの出力で60分照射した。他方のグループは、マイクロ波を照射せずにコントロールグループとした。これらを5cm程度の植え付け深さで定法通りに土壌に植え付けた。
【0041】
種イモを植え付けてから25日後と30日後に、つぼみの数を測定した。その結果を
図6に示す。
これらの結果から、マイクロ波照射によりつぼみの形成が促進され、ジャガイモにあっても、マイクロ波照射によって生殖成長期が早まることが確認できた。
【0042】
[実施例6]
栽培対象としてジャガイモ(双子葉植物綱;ナス科)を選定し、定法通りに種イモの芽出しをした。芽出しした種イモを二つのグループに分けて、一方のグループの種イモのサイズが、他方のグループの種イモのサイズの半分程度となるように大きさを揃えた。種イモのサイズが小さい方のグループに、2.45GHz帯のマイクロ波を28Wの出力で60分照射した。種イモのサイズが大きい方のグループは、マイクロ波を照射せずにコントロールグループとした。
これらを定法通りに土壌に植え付けて、種イモのサイズ以外の生育条件が等しくなるようにして栽培した。
【0043】
マイクロ波を照射したグループでは、植え付け後、平均3.5日で地表に芽が現れた。一方、コントロールグループでは、植え付け後、平均6.4日で地表に芽が現れた。
植え付けてから19日後に茎の長さを測ったところ、マイクロ波を照射したグループでは、平均48.2cmであった。一方、コントロールグループでは、平均34.5cmであった。
また、植え付けてから36日後に茎の直径を測ったところ、マイクロ波を照射したグループでは、平均8.03mmであった。一方、コントロールグループでは、平均5.50mmであった。
また、植え付けてから36日後に花の数を数えたところ、マイクロ波を照射したグループでは12、コントロールグループでは5であった。
これらの結果から、種イモのサイズが小さく養分が少ない不利な生育条件にあっても、マイクロ波照射によりジャガイモの生育が促進されることが確認できた。
【0044】
[実施例7]
栽培対象としてトマト(双子葉植物綱;ナス科)を選定し、その種子を定法通りに土壌に播種した。
【0045】
播種した種子を三つのグループに分けて、第一グループでは、第一本葉が形成されはじめた時期に、第二グループでは、第二本葉が形成された時期に、それぞれ、2.45GHz帯のマイクロ波を25Wの出力で60分照射した。第三グループは、マイクロ波を照射せずにコントロールグループとした。
それぞれのグループについて、その生育状況を観察した結果を
図7及び
図8に示す。
図7は、播種から10日目以降の茎の高さの変化を示すグラフであり、
図8は、播種から10日目以降の茎の直径の変化を示すグラフである。
これらの結果から、第二本葉が形成された時期にマイクロ波を照射した第二グループにおいて最も生育が促進され、次いで、第一本葉が形成されはじめた時期にマイクロ波を照射した第一グループにおいて生育が促進されていることが確認できた。
【0046】
[実施例8]
栽培対象としてレタス(双子葉植物綱;キク科、品種:ジェンティリナグリーン)を選定し、その種子を定法通りに水耕栽培用の苗床に播種した。
【0047】
播種した種子を四つのグループに分けて、第一及び第二グループでは、発芽してから3日後、子葉が完全に展開した時期に、2.45GHz帯のマイクロ波を25Wの出力で60分照射した。第三及び第四グループにはマイクロ波を照射しなかった。
【0048】
マイクロ波を照射した第一グループと、マイクロ波を照射しなかった第三グループとに適量の水を与えて栽培し、その生育状況を播種した初日から24日目まで観察したところ、生育状況に著しい差異は認められなかった。
一方、マイクロ波を照射した第二グループと、マイクロ波を照射しなかった第四グループについては、適量よりも少ない水(適量とされる水量の半分程度)で栽培し、その生育状況を播種した初日から24日目まで観察した。マイクロ波を照射した第二グループは、マイクロ波を照射しなかった第四グループに比べて、生育状況は相対的に良好に保たれ、葉の大きさを比較しても、マイクロ波を照射した第二グループの方が大きく成長していた。
【0049】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。