(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-20949(P2017-20949A)
(43)【公開日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】ガス検知器
(51)【国際特許分類】
G01N 30/02 20060101AFI20170105BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20170105BHJP
G01N 30/04 20060101ALI20170105BHJP
G01N 30/64 20060101ALI20170105BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20170105BHJP
【FI】
G01N30/02 A
G01N27/12 D
G01N30/04 A
G01N30/64 A
G01N30/86 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-139904(P2015-139904)
(22)【出願日】2015年7月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】神田 奎千
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046DC18
(57)【要約】
【課題】迅速に、複数のガス成分を含む被検知ガス群の識別を可能にするガス検知器を提供する。
【解決手段】検知対象である複数のガス成分を含む被検知ガス群が流下するガス流路10と、複数のガス成分を分離する分離カラム20と、ガス選択性の異なる複数のガス検知素子を有するマルチセンサ検知部30と、被検知ガス群を識別する識別部40と、を備えたガス検知器X。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象である複数のガス成分を含む被検知ガス群が流下するガス流路と、前記複数のガス成分を分離する分離カラムと、ガス選択性の異なる複数のガス検知素子を有するマルチセンサ検知部と、前記被検知ガス群を識別する識別部と、を備えたガス検知器。
【請求項2】
前記識別部が、所定のガス群の出力である標準出力パターンを予め記憶する記憶手段と、前記被検知ガス群の出力および前記標準出力パターンを比較してパターンマッチングを行う解析手段と、を備えた請求項1に記載のガス検知器。
【請求項3】
前記分離カラムが、前記複数のガス成分を分離する能力を低い状態としてある請求項1または2に記載のガス検知器。
【請求項4】
前記マルチセンサ検知部が、基板型半導体式ガス検知素子における少なくとも半導体材料を異ならせた複数のガス検知素子を備えた請求項1〜3の何れか一項に記載のガス検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオイ識別の対象となる検知対象ガス(被検知ガス群)を識別するガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス中の成分の定性・定量分析を行うガスクロマトグラフ装置が広く用いられており、これは被検知ガスをキャリアガスと共に、充填材が充填されているガス分離カラムに導入し、被検知ガス中に含まれる複数のガス成分がガス分離カラム中の充填材との相互作用によるリテンションタイム差により分離され、この分離された複数のガス成分をガス分離カラムから導出し、熱伝導度検出器(TCD)や水素炎イオン化検出器(FID)等の検出器にて検出することにより、クロマトグラムが得られるものである。
【0003】
ガス分離カラムにおける複数のガス成分のリテンションタイムは温度に依存するため、例えばガス分離カラムは恒温槽内に配置されて一定温度に加熱保持され、これによりガス分離カラム中での複数のガス成分のリテンションタイムを一定に保って、正確な測定が行われるようにしている。
【0004】
特許文献1には、医療分野等における呼気中の成分検出用として構成することができるガスクロマトグラフ装置が記載してある。例えば歯科医療における呼気中のメチルメルカプタンや硫化水素の分析による口臭の有無の判定や、糖尿病治療における呼気中のアセトン量の定量、肝臓疾病に起因する呼気中のアンモニアやイソプレン量の定量などといった、呼気中の成分の分析による疾病の発見や治療効果の確認に利用することができる。
【0005】
このガスクロマトグラフは、装置本体に、検知対象である試料ガスや検出器の構成等に応じた水素ガス、ヘリウムガス等の適宜のキャリアガスが充填されたガスボンベが装置本体に接続されている。装置本体内にはガスボンベから供給されたキャリアガスが流通するガス流路の上流側から下流側に沿って、流量切替器、流量計、試料ガス供給口、ガス分離カラム、検出器が順次設けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−057222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、例えば製品品質管理において、食品の汚染、魚肉類の鮮度管理、ニオイによる産地識別など、様々な分野でニオイの識別ニーズが増えている。また、半導体製造工程において、製造環境ガスの測定による製造環境の異変検知、作業環境中のガスの健康への影響などの管理においてニオイの識別ニーズが高まっている。
【0008】
ニオイ識別の対象となる検知対象ガス(被検知ガス群)は、多種類のガス成分を含んでおり、一般的にニオイ識別装置に用いられているガスセンサは各種類のガスに対して交差感度を有し、サンプル中のある成分の濃度が相当高くなると、センサの出力はその成分の濃度変化に支配され、他の成分の変化に殆ど応答できなくなり、結果としてニオイの識別が不可能となることがあった。また、マイナー成分の濃度がある程度高くなっていれば、類似するニオイ種に対するセンサ出力には僅かな差が生じ、その違いにより類似するニオイ種の識別が可能となるが、現状のガスセンサ技術ではこの微弱の差を長期に渡って維持することは困難であり、長期に渡ってそれらの類似するニオイを識別することができない。
【0009】
特許文献1に記載の装置は、検出器の検出出力に現れたピークのリテンションタイムをもとに、呼気ガスに含まれるガス成分の種類を判別しているため、リテンションタイムが同じ場合又は近接している場合はガス成分の種類を判別できないという問題があった。
【0010】
従って、本発明の目的は、迅速に、複数のガス成分を含む被検知ガス群の識別を可能にするガス検知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検知器の第一特徴構成は、検知対象である複数のガス成分を含む被検知ガス群が流下するガス流路と、前記複数のガス成分を分離する分離カラムと、ガス選択性の異なる複数のガス検知素子を有するマルチセンサ検知部と、前記被検知ガス群を識別する識別部と、を備えた点にある。
【0012】
一般に、被検知ガス群には数十種類以上のガス成分(ニオイ成分)が含まれていると考えられており、ニオイ識別に分離カラムを投入する際、多種類のガス成分を分離しようとすると分離カラム中のガス成分の保持時間は非常に長くなるため測定に時間を要する。また、多種類のガス成分がキャリアガスによってセンサの検知レベル以下に希釈されてしまう虞があるため、測定に必要なセンサ感度を満たせなくなることがある。このように、被検知ガス群の識別において、多種類のガス成分の全成分を完全に分離することは非常に難しく、非現実的である。
【0013】
マルチセンサ検知部におけるガス選択性の異なる複数のガス検知素子は、出力応答波形を異ならせることができる。そのため、マルチセンサ検知部で取得された複数のガス検知素子の出力データとして、異なるガス検知素子の数に応じて多様な出力態様を呈するデータを取得することができる。よって、分離カラムで多種類のガス成分を完全に分離しない状態であっても、複数のガス成分における各ガス成分の最大濃度(ピーク)が通過するタイミングを異ならせた状態とすれば、マルチセンサ検知部にて取得したデータを使用することにより、識別部にて被検知ガス群の出力を特徴的かつ複雑な出力パターンとして認識することができる。また、当該最大濃度が通過するタイミングが明確に異ならない場合であっても、ガス選択性の異なるマルチセンサ検知部によってガス成分の違いを検出することができる。これにより、被検知ガス群におけるマイナー成分の変化(有無)においても正確に認識することができる。
【0014】
従って、本発明のガス検知器では、複数のガス成分を分離する分離カラムや、ガス選択性の異なる複数のガス検知素子を有するマルチセンサ検知部を用いてシステムを構築することで、検知対象である複数のガス成分を含む被検知ガス群(ニオイ成分)に対する選択性を向上させ、従来のニオイ識別より、被検知ガス群の識別能力を向上させることができる。
【0015】
本発明に係るガス検知器の第二特徴構成は、前記識別部が、所定のガス群の出力である標準出力パターンを予め記憶する記憶手段と、前記被検知ガス群の出力および前記標準出力パターンを比較してパターンマッチングを行う解析手段と、を備えた点にある。
【0016】
本構成によれば、事前に取得した所定のガス群(標準ガス)の標準出力パターンを使用して、検知対象ガスである被検知ガス群の出力のパターンマッチングを行うため、被検知ガス群の識別を正確にかつ客観的に行うことができる。
【0017】
本発明に係るガス検知器の第三特徴構成は、前記分離カラムを、前記複数のガス成分を分離する能力を低い状態とした点にある。
【0018】
本構成によれば、分離カラムは、複数のガス成分における各ガス成分の最大濃度(ピーク)が通過するタイミングを異ならせるだけでよいため、多種類のガス成分を完全に分離する必要がなく、分離カラムのリテンションタイムを短縮することができる。従って、本構成では、被検知ガス群の識別を迅速に行うことができる。また、分離カラムの構成を簡略化することができるため、本発明のガス検知の製造コストを削減することができる。
【0019】
本発明に係るガス検知器の第四特徴構成は、前記マルチセンサ検知部が、基板型半導体式ガス検知素子における少なくとも半導体材料を異ならせた複数のガス検知素子を備えた点にある。
【0020】
本構成によれば、基板型半導体式ガス検知素子における感ガス特性の異なる半導体材料や触媒を用いることで、ガス検知素子の出力応答波形を容易に異ならせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】分離カラムおよびその周縁構造の概略図である。
【
図3】基板型半導体式ガス検知素子の概略図である。
【
図4】ガス選択性の異なる複数のガス検知素子が異なる出力応答波形を有することを示したグラフである。
【
図5】複数の時間に対する出力データをプロットした図である。
【
図6】パターン識別を主成分分析で行う場合に得られた解析図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示したように、本発明のガス検知器Xは、検知対象である複数のガス成分を含む被検知ガス群が流下するガス流路10と、複数のガス成分を分離する分離カラム20と、ガス選択性の異なる複数のガス検知素子31を有するマルチセンサ検知部30と、被検知ガス群を識別する識別部40と、を備える。
【0023】
本実施形態のガス検知器Xは、さらに、キャリアガスを供給するキャリアガス供給部50と、ガス流路10中のガス流量を制御する流量制御部60と、被検知ガス群をサンプリングするサンプリング部70と、ガス流路10を切り替える流路切替部80と、分離カラム20・流量制御部60・サンプリング部70・流路切替部80を制御する制御部90と、を備える。このようなガス検知器Xは設置型としても、小型のポータブルな態様としてもよい。
【0024】
本発明のガス検知器Xは、検知対象ガスである複数のガス成分を含む被検知ガス群を識別する。このような検知対象ガスとして、医療分野等における呼気、食品のニオイを含んだガス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
分離カラム20は、ステンレス等の耐腐食性金属を使用して中空筒状に形成されており、内部には固定相となる充填材が充填される。本実施形態の分離カラム20は、所謂パックドカラムを使用することができる。充填材は、例えば固定相を含浸・塗布した担体、または吸着剤等を使用することができ、検出対象ガスやキャリアガスの種類に応じた適宜のものが用いられる。
【0026】
本発明の分離カラム20は、被検知ガス群における複数のガス成分における各ガス成分の最大濃度が通過するタイミングを異ならせることができるカラムとすればよい。例えば、通常のカラム駆動条件を低温側に変更、カラムの長さを短縮する、或いは、充填剤の組成を変更する等して、公知の分離カラムより複数のガス成分を分離する能力を低い状態とした低分解能な分離カラムとして使用することができる。このような分離カラムは、本明細書では非完全分離カラムと称する。
【0027】
ニオイの識別は、検知対象ガスである複数のガス成分を含む被検知ガス群における複数のガス成分のそれぞれを同定することで達成できると考えられる。一般に、被検知ガス群には数十種類以上のガス成分(ニオイ成分)が含まれていると考えられており、このような多種類のガス成分を同定するため、通常のガス分離カラムを使用してそれぞれのガス成分を完全に分離するためには、長いリテンションタイムを要する。このように分離に長時間を要すると、被検知ガス群がキャリアガスによってセンサの検知レベル以下に希釈される虞があり、センサによって検知できないことがある。
【0028】
一方、本発明で使用する分離カラム20(非完全分離カラム)は、複数のガス成分における各ガス成分の最大濃度(ピーク)が通過するタイミングを異ならせるだけでよいため、多種類のガス成分を完全に分離する必要がなく、分離カラムのリテンションタイムを短縮することができる。例えば通常のガス分離カラムを使用してそれぞれのガス成分を完全に分離するためには30分程度のリテンションタイムを要するが、本発明で使用する分離カラム20では10分程度のリテンションタイムでよい。
【0029】
具体的な分離カラム20(非完全分離カラム)およびその周縁構造の構成を
図2に示す。分離カラム20は、エア加熱部21と共に支持シリンダー22によって支持され、かつ断熱材23で覆われる。分離カラム20はヒータ24によって駆動温度を変更することができ、駆動温度は測温抵抗体で測温した信号を制御部90に送ることで、制御部90によって制御することができる。分離カラム20の駆動温度は、50〜60℃程度(通常は100℃程度)とすることができ、分離カラム20の内径を3mmとした場合の長さを40〜50cm程度(通常は100cm程度)とすることができるが、これらに限定されるものではない。分離カラム20の駆動温度を通常よりも低い温度とすることができるため、本発明のガス検知器Xの駆動コストを削減することができる。また、具体的な充填剤として、塩類、有機酸塩素化合物であるBentone34等を使用するのがよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
このように、本発明で使用する低分解能な分離カラム20(非完全分離カラム)は、カラムの長さを短くできる分、通常の分離カラムより小型化することができる。そのため、本発明のガス検知器Xは、小型のポータブルな態様とすることができる。
【0031】
マルチセンサ検知部30は、ガス選択性の異なる複数のガス検知素子31を有する。
当該ガス検知素子31は、被検知ガスを検知できる公知のガス検知素子であれば特に限定されるものではなく、例えば熱線型半導体式ガス検知素子、基板型半導体式ガス検知素子といった半導体式ガス検知素子を使用することができる。ガス検知素子31の数についても複数であれば特に限定されるものではない。本実施形態では三つの基板型半導体式ガス検知素子を使用した場合について説明する。即ち、マルチセンサ検知部30は、基板型半導体式ガス検知素子における少なくとも半導体材料を異ならせた複数のガス検知素子31を備える。ガス選択性の異なる複数のガス検知素子31は、感ガス特性の異なる半導体材料や触媒を用いることで、それぞれのガス検知素子31において出力応答波形を異ならせることができる。
【0032】
触媒は公知の触媒を使用すればよい。即ち、マルチセンサ検知部30における複数のガス検知素子31は、半導体材料を異ならせる、或いは、半導体材料および触媒を異ならせてガス選択性が異なるように構成すればよい。
【0033】
基板型半導体式ガス検知素子31は、
図3に示すように、アルミナ基板31aの表面に白金櫛型電極31b,31cを蒸着して設け、この上に酸化タングステンを主成分とする金属酸化物半導体ペーストを塗布し、600℃で2時間焼成して感応層31dを設けてある。また、アルミナ基板31aの裏面には、白金薄膜ヒーター31eが設けられ、ガス検知素子の動作温度を維持するために用いられる。
【0034】
酸化タングステンを主成分とする金属酸化物半導体ペーストの替わりに、酸化チタン・酸化スズコアーセル構造粉体をベースとした半導体材料、或いは、酸化セリウムをベースとした半導体材料とすることで、ガス選択性の異なる三つの基板型半導体式ガス検知素子を作製することができる。
【0035】
識別部40は、被検知ガス群を識別する。即ち、識別部40は被検知ガス群がどのようなニオイを有するガス群であるかを判定する構成を有する。具体的には、識別部40は、所定のガス群の出力である標準出力パターンを予め記憶する記憶手段41と、被検知ガス群の出力および標準出力パターンを比較してパターンマッチングを行う解析手段42と、を備える。
【0036】
記憶手段41は、標準出力パターンを記憶できるメモリやストレージであれば、どのような態様でもよい。標準出力パターンは、事前に取得した標準ガス(医療分野等における呼気、食品のニオイを含んだガス等)の出力データのことである。即ち、標準ガスを本発明のガス検知器Xによってサンプリングし、マルチセンサ検知部30で取得された複数のガス検知素子31の出力データを標準出力パターンとすることができる。このとき、当該標準出力パターンは、それぞれのガス検知素子31の出力応答波形から予め複数の特徴となる複数の時間等のポイント(
図4:t1〜t4)を決定しておき、これらのポイントに対する出力をプロット(
図5,6)して標準ガスの出力傾向をパターン化したものである。標準ガスの出力傾向と異なるパターンとなるデータは、標準ガスと異なるニオイを有するガス(異種ガス)であると識別できる。
図6は主成分分析によるパターン識別の例を示している。このように出力傾向をパターン化することで、出力データに基づいた標準ガスの境界線を客観的に定義することができる。
【0037】
解析手段42は、検知対象ガスである被検知ガス群の出力および標準出力パターンを比較してパターンマッチングを行うマイコン等で構成すればよい。
【0038】
識別部40におけるパターン識別を主成分分析によって行う場合、PCにて視覚化し、識別の自動化を図るように構成することができる。
【0039】
パターン識別を主成分分析で行う場合は、以下のようにして行えばよい。即ち、標準ガスを本発明のガス検知器Xによって測定して得られたデータを
図6のようなグラフにプロットし、標準ガスのプロットされた領域を決定する。このとき、領域の境界はマハラノビス距離で定めることができる。次に、検知対象ガスである被検知ガス群を本発明のガス検知器Xによって測定して得られたデータを標準ガスと同じグラフにプロットし、標準ガスの領域内に位置するか否かで、被検知ガス群を識別することができる。即ち、
図6において、黒の三角で示されたプロットは標準ガスと同じ(同種の)ニオイを有するガスであると識別でき、黒の四角で示されたプロットは標準ガスと異なるニオイを有するガスであると識別できる。
【0040】
また、上述したように特徴となる複数の時間等のポイント(
図4:t1〜t4)を決定するのではなく、波形周波数成分を抽出し、周波数成分ごとに形成されるパターンの中から最大分散を持つパターンを選択してパターン識別するようにしてもよい。
【0041】
キャリアガス供給部50は、水素ガス、ヘリウムガス等の適宜のキャリアガスが充填されたガスボンベ等によって構成することができる。
流量制御部60は、マスフローコントローラ等によって構成することができ、キャリアガスの流量を調整することができる。
サンプリング部70は、被検知ガス群を採取する態様であればどのような態様でもよく、例えばノズル状の部材によって構成することができる。
流路切替部80は、キャリアガス供給部50からのキャリアガス、或いは、サンプリング部70からの被検知ガス群を切り替え制御できる制御弁などによって構成することができる。
制御部90は、分離カラム20の温度制御、流量制御部60におけるキャリアガスの流量制御、サンプリング部70における被検知ガス群のサンプリング制御、流路切替部80の切り替え制御、を行えるマイコン等によって構成することができる。
【0042】
本発明のガス検知器Xは、検知対象ガスの採取時以外は一定流量でキャリアガスが流れ(通常モード)、分離カラム20およびマルチセンサ検知部30はキャリアガス雰囲気中に置かれている。検知対象ガスの採取時にはサンプリング部70から検知対象ガスが採取され、その後、流量制御部60をサンプリングした検知対象ガスが分離カラム20に流下するように切り替える。検知対象ガスのサンプリングが終わり次第流路は通常モードに切り替えられ、キャリアガスよってサンプリングした検知対象ガスが分離カラム20を流下し、マルチセンサ検知部30に到達し、測定される。
【0043】
この時、マルチセンサ検知部30を通過する被検知ガス群の複数のガス成分の最大濃度(ピーク)が通過するタイミングをずらす(各ガス成分のマルチセンサ検知部30を通過するタイミングにオーバーラップする部分がある場合でも、ガス成分ごとの最大濃度の通過するタイミングはずれる)ことでセンサの交差感度による選択性低下を補うことができ、優れたニオイ(ガス)選択性が得られ、被検知ガス群の高い識別能力を確保することができる。
【0044】
一般に、被検知ガス群には数十種類以上のガス成分(ニオイ成分)が含まれていると考えられている。マルチセンサ検知部30におけるガス選択性の異なる複数のガス検知素子31は、出力応答波形を異ならせることができる。そのため、マルチセンサ検知部30で取得された複数のガス検知素子31の出力データとして、異なるガス検知素子31の数に応じて多様な出力態様を呈するデータを取得することができる。よって、分離カラム20で多種類のガス成分を完全に分離しない状態であっても、複数のガス成分における各ガス成分の最大濃度(ピーク)が通過するタイミングを異ならせた状態とすれば、マルチセンサ検知部30にて取得したデータを使用することにより、識別部40にて被検知ガス群の出力を特徴的かつ複雑な出力パターンとして認識することができる。これにより、被検知ガス群におけるマイナー成分の変化(有無)においても正確に認識することができる。
【0045】
従って、本発明のガス検知器Xでは、検知対象である複数のガス成分を含む被検知ガス群(ニオイ成分)に対する選択性を向上させ、従来のニオイ識別より、被検知ガス群の識別能力を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ニオイ識別の対象となる検知対象ガス(被検知ガス群)を識別するガス検知器に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
X ガス検知器
10 ガス流路
20 分離カラム
30 マルチセンサ検知部
40 識別部
41 記憶手段
42 解析手段