本発明の一態様は、靴を自動的に製造する方法であって、a.複数の靴底を第1のステーションで自動的に製造するステップと、b.複数の甲被を第2のステーションで自動的に製造するステップとを含み、c.第1のステーションおよび第2のステーションは、並行して動作し、製造された靴底および製造された甲被が、接合ステーションに運搬されて、そこで自動的に接合され得るように、共同施設の中に配置されている、方法が提供される。
前記複数の靴底を前記第1のステーションで前記自動的に製造することが、複数の粒子から個々の靴底を成形することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
自動的に接合する前記ステップが、接着剤なしで行われ、好ましくは、前記甲被の材料を前記靴底の材料の上に直接溶着させることによって行われる、請求項7に記載の方法。
前記ステップb.が、少なくとも1つのパッチを甲被材料の上に選択的に設置することによって、製造された甲被を補強することを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
前記選択的に設置するステップが、中足部分のパッチと比較して、より高い剛性および/またはより大きい厚さを有する少なくとも1つのパッチを、前記製造された甲被のかかと部分に設けることを含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
前記選択的に設置するステップが、前記中足部分のパッチと比較して、より低い剛性および/またはより小さい厚さを有する少なくとも1つのパッチを、前記製造された甲被の前足部分に設けることを含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
前記補強するステップが、熱および圧力を加えることによって前記少なくとも1つのパッチを前記甲被材料の上に固結させることを含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
前記選択的に設置することの後および/または前記固結させることの後行われる前記パッチ設置の視覚品質チェックをさらに含む、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
品質チェックステーションが、前記製造された靴底および前記製造された甲被を自動的に接合した後に、自動品質チェックを行う、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題は、独立請求項1による方法によって少なくとも一部が解決される。1つの実施形態では、方法は、(a)複数の靴底を第1のステーションで自動的に製造するステップと、(b)複数の甲被を第2のステーションで自動的に製造するステップとを含み、(c)第1のステーションおよび第2のステーションは、並行して動作し、製造された靴底および製造された甲被が、接合ステーションに運搬されて、そこで自動的に接合され得るように、共同施設の中に配置されている。
【0009】
本発明は、複数の完成した靴を製造するための、初めての真に自動化された方法を提供する。「自動化された」または「自動的に」という用語は、設定するおよび/または故障を修正すること以外に人間が介入することなく、行われる工程を表している。並行して動作する2つのステーションによって、靴の2つの主要な構成要素、すなわち、靴底および甲被を製造することは、製造全体を大幅に単純化する。先行技術とは対照的に、全ての主要な構成要素は、共同施設で製造される。予め製造された構成要素を供給することの難事が原因の生産遅延を回避することができる。
【0010】
実施形態では、接合ステーションまでの運搬は、自動化されている。
【0011】
したがって、さらに、2つの構成要素は、接合ステーションで自動的に接合されて靴全体の製造を完了するために、2つの製造ステーションから接合ステーションまで自動的に運搬することができ、このようにして、工程の全体的な自動化に寄与している。自動化をさらに促進するために、さらに、接合ステーションが、共同施設の中に配置されることもできる。その結果、全体的な工程所要時間、労働コスト、ならびに運搬コストが、大幅に削減される。
【0012】
しかしながら、異なる実施形態では、例えば生産現場で、第1の製造ステーションおよび/または第2の製造ステーションから接合ステーションまでの完全自動運搬が可能ではない場合には、または接合ステーションが、共同施設の中に配置されない場合には、接合ステーションまでの運搬は、半自動化される場合もある、または手動で行われる場合もある。
【0013】
1つの実施形態では、ステップ(a)で製造される靴底の第1の数は、ステップ(b)で製造される甲被の第2の数と一致している。さらに、第1の数と第2の数の一致は、不良な靴底および/または不良な甲被の比率を考慮に入れることができる。靴構成要素の大部分が、異なる施設で単独に製造され、次いで貯蔵設備に保管される、靴を製造するための従来方法とは対照的に、本発明のこの態様は、製造工程全体を大幅に合理化する。特に不良な構成要素の比率を考慮に入れる場合、製造全体を、より効率的に遂行することができ、これにより、どのような時点であっても、休止時間および使われない靴構成要素の余剰が削減される。
【0014】
1つの実施形態では、複数の靴底を第1のステーションで自動的に製造するステップは、複数の粒子から個々の靴底を成形することを含んでいる。他の靴底製造技術を同様に用いることもできるが、複数の粒子から個々の靴底を成形することは、靴底の自動製造にとって特に効率的な方法である。さらに、本発明の発明者は、この靴底製造方法が、本発明による靴全体の自動製造に特にうまく統合されることに初めて気付いた。1つの理由は、粒子を成形することによる靴底の製造は、有毒物質または危険物質を伴わず、このことが、共同施設の中に靴底製造を甲被の製造と組み合わせることを大いに促進するからである。
【0015】
1つの実施形態では、製造された靴底の自動品質チェックは、例えば第1の製造ステーションで、または第1の製造ステーションから接合ステーションまでの途中で、または工程流れの中の別の地点で行われる。品質チェックは、製造された靴底に成形された粒子の自動検査を含む場合もある。自動品質チェックは、製造された靴底の重量および/または大きさの自動測定を含む場合もある。さらに、製造された靴底の緩衝性、剛性、または屈曲性の特性などの動的特性を、自動的に調査する場合もある。
【0016】
このような自動品質チェックをすでに第1のステーションに統合しておくことは、さらに、靴底の自動製造を改善する。製造された靴底が、例えば望ましくない重量および/または大きさが原因で部分的に不良である場合には、自動品質チェックが、製造工程の初期段階にそうした靴底を検出して、除去することができる。その結果、靴の製造工程全体の誤り率は、大幅に低減される。
【0017】
製造された靴底と製造された甲被を接合ステーションで自動的に接合するステップは、熱を加えることで行うこともできる。さらに、このステップは、接着剤なしで行うこともでき、好ましくは、甲被の材料を靴底の材料の上に直接溶着することによって行われる。例えば、靴底の材料および甲被の材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU:thermoplastic polyurethane)などの同じ材料区分の材料を含むこともできる。このような実施形態では、接着剤は必要ではなく、なぜならば、熱を加えると、分子結合を形成することで、材料が互いにつながることができるからである。例えば、独国特許出願公開第102015202014号明細書は、接触せずに構成要素の接続表面に熱エネルギーを供給することによって、2つの構成要素を結合させることを可能にする方法を開示しており、この方法は、接着剤を使用しなくても行うことができる。この方法の実施形態は、本発明の接合ステーションで利用することができる。しかしながら、本発明の他の実施形態は、甲被と靴底を接合するのに適切な接着剤を自動的に計量分配することをさらに含むこともできる。
【0018】
1つの実施形態では、ステップ(b)は、少なくとも1つのパッチを甲被材料の上に選択的に配置することによって、製造された甲被を補強するステップを含むことができる。これが行われ得る方法の例は、独国特許出願公開第102015224885号明細書に開示されており、そこに説明される方法の実施形態は、本発明による方法のステップ(b)と連結して使用することもできる。
【0019】
少なくとも1つのパッチは、例えば熱可塑性ポリウレタン、TPU材料を含むことができる。その上、少なくとも1つのパッチは、10μm〜5mmの厚さ、より好ましくは150μm〜750μmの厚さを備えることができる。1つの実施形態では、これらの値は、パッチと、甲被材料上にパッチを固定するのに使用される物質(例えばホットメルト)とを合同した厚さを指している。好都合には、そのような方法は、特に柔軟なやり方で甲被を製造することを可能にする。異なる形状および大きさを有する、少なくとも1つのパッチ、すなわち1片の材料を選択的に設置することで、多種多様な性能特性を有する甲被の製造が可能になる。パッチは、切断台上で1巻のTPUテープから切断することによって自動的に供給されることができ、それによって、自動製造靴の性能特性を自動的にカスタマイズすることが、簡素化される。
【0020】
1つの実施形態では、パッチを選択的に設置するステップは、中足部分のパッチと比較して、より高い剛性および/またはより大きい厚さを有する少なくとも1つのパッチを、製造された甲被のかかと部分に設けることを含むことができる。さらに、このステップは、中足部分のパッチと比較して、より低い剛性および/またはより薄い厚さを有する少なくとも1つのパッチを、製造された甲被の前足部分に設けることをさらに含むことができる。発明者は、このようなパッチの自動設置は、甲被の特性、したがって結果的に靴の特性をカスタマイズすることを、依然として最小限の生産労力のままで、可能にすることを発見した。
【0021】
1つの実施形態では、パッチ設置によって甲被を補強するステップは、熱および圧力を加えることによって少なくとも1つのパッチを甲被材料の上に固結させるステップを含む場合がある。
【0022】
パッチ設置工程および/または固結工程が完了した後、視覚品質チェックを行う場合がある。視覚品質チェックは、工程の結果を光学的に注視して、結果的に得られた製品の外観から、工程が正常にかつ満足に行われたかどうかを判定することによって、工程の品質が判定されるチェックである。この視覚品質チェックは、人間によって、またはカメラおよびパターン認識技術等を使用しながら、自動的にもしくは半自動的に行うことができる。
【0023】
接合ステーションへの自動運搬は、少なくとも1つのロボット装置によって実行される場合もある。工程を監視および制御すること、および/または適切ではない動作の場合に調整すること以外に人間が介入する必要がここでもないので、このような運搬は、靴の自動製造をさらに単純化する。
【0024】
1つの実施形態では、品質チェックステーションは、製造された靴底および製造された甲被を自動的に接合した後に、靴のさらなる自動品質チェックを行う。さらに、例えば適切な画像処理ソフトウェアによって、さらに最終的な品質制御を自動的に行うことは、基本的には反復的な労役に関する人間の相互作用なしに動作することができる製造全体に寄与する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、上で説明した方法の1つを用いて製造された靴を対象とする。
【0026】
最終的に、別の態様によれば、本発明は、上記の要約された方法の1つを行うためのシステムを対象とする。1つの実施形態では、システムは、複数の靴底を自動的に製造するための第1のステーションと、複数の甲被を自動的に製造するための第2のステーションと、靴底および甲被を自動的に接合するのに適している接合ステーションとを備え、第1のステーションおよび第2のステーションは、並行して動作するのに適していて、製造された靴底および製造された甲被が接合ステーションに運搬されて、そこで自動的に接合されることができるように、共同施設の中に配置されている。
【0027】
上述のように、製造された靴底および製造された甲被を接合ステーションへ運搬することは、自動化もされ得る。または、それは、半自動的に(すなわち一部手動で支援して)、または完全に人間によって行われることができる。さらに、接合ステーションおよび/またはシステムの別のステーションを、工程の自動化をさらに促進するために、共同施設の中にさらに配置することもできる、またはこのようなステーションを、共同施設の外側に配置することもできる。
【0028】
本発明の可能な実施形態を、以下の図に関連させながら以下の詳細な説明においてさらに説明してゆく。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の各種実施形態を、以下の詳細な説明に記載する。しかしながら、本発明が、これらの実施形態に限定されないという事実を強調しておく。本明細書に説明される方法は、例えばスポーツ用靴、カジュアル靴、編上靴、または作業ブーツなどのブーツ等の一般的な靴の製造で用いることができる。
【0031】
本発明のそれぞれの実施形態は、後でより詳細に説明されることをさらに留意されたい。しかしながら、当業者にとっては明白であるように、これらの特定の実施形態に関して説明される構造上の可能性および任意選択特徴は、本発明の範囲内であれば、さらに、修正すること、および異なるやり方で相互に組み合わせることができ、個々のステップまたは特徴は、それらが当業者にとって不必要であると思われる場合には、省略されることもある。冗長性を回避するために、前述の節内の説明を参照し、これらの説明は、以下の詳細な説明の実施形態にも適用される。
【0032】
図1は、本開示のある態様による、靴を自動的に製造するための例示的な方法ステップ100を例示する流れ図である。方法ステップ100は、例えば、
図2に概略的に示され、下文でさらに論じられるような製造システムによって行うことができる。方法ステップ100は、複数の靴底を第1のステーションで自動的に製造することによって、ステップ110で始まることができる。例えば、複数の靴底の自動製造は、複数の粒子から個々の靴底を成形するステップを含むことができる。粒子成形ステップは、1つ以上の自動装置によって完全に自動化されて遂行され得る。さらに、靴底製造ステップ110は、中央計算機装置(
図1に図示せず)によって制御されることができる、および/または1人以上の人間によって設定および管理をされることができる。
【0033】
ステップ120では、複数の甲被が、第2のステーションで自動的に製造され得る。例えば、複数の甲被の自動製造は、機械、例えば編機によって生産される1巻の織物から甲被片を切断するステップを含む場合がある。さらに、複数の甲被は、少なくとも1つのパッチを切断された甲被片の上に選択的に設置することによって補強されることができる、または機能を付与されることができる。この点に関して用いることができる例示的な方法を示している独国特許出願公開第102015224885号明細書を参考文献とする。少なくとも1つのパッチは、熱可塑性ポリウレタン、TPU材料を含むことができる1巻の材料から切断することによって提供され得る。パッチは、10μm〜5mmの厚さ、より好ましくは150μm〜750μmの厚さを備えることができる。1つの実施形態では、これらの値は、パッチと、甲被材料上にパッチを固定するのに使用される物質(例えばホットメルト)とを合同した厚さを指している。その上、切断ステップは、真空効果を発生させて、パッチ材料(
図1に図示せず)を取り付けるために、そこから空気を抜き取る穴を含んだ切断台上で行うことができる。切断は、レーザによって行うことができ、少なくとも1つの切断されたパッチを、つかみ装置、例えばコアンダつかみ具でつまみ上げることができる。つまみ上げステップは、任意の他の型のつかみ具を用いて行うこともできるとさらに考えられ得る。
【0034】
複数の靴底および甲被を製造するための自動製造ステップ110および120は、ステップ130にて、並行して、共同施設の中で行われる。上述のように、2つの方法ステップのこのような動作は、靴の製造全体を大幅に単純化する。例えば、製造された靴底および/または甲被が、運搬システム上に容易に設置され得るように、ステーションは、施設(工場であり得るが、小売店の控置スペースでもあり得る)の中で隣り合って配置される場合もある。
【0035】
どのような製造工程においても見られるように、一定の品質基準を満たしていない靴底および/または甲被が存在する可能性がある。例えば不良靴底の率が、不良甲被の率より高い場合など、靴底および甲被用の製造ステップの誤り率が、同一ではない可能性もある。1つの実施形態において、方法100全体では、平均して基本的に、同じ数の不良ではない甲被および靴底が、以下に記載するさらなるステップに提供されるように、さまざまなステップの動作速度を適応させることによって、このような異なる率を考慮に入れている。
【0036】
次のステップ140として、製造された靴底および甲被は、接合ステーションに運搬され得る。運搬は、自動的に行われることもできる。自動運搬は、この場合もコンピュータ装置、例えば上述したのと同じコンピュータ装置の制御下で自動的に動作する場合もある、および/または1人以上の人間によって管理される場合もある、1つ以上のロボットによって行われることができる。自動運搬を促進するために、接合ステーション(および他のステーションのいくつかまたは全て)も、共同施設の中に配置されることができる。さらに、またはあるいは、製造された靴底および/または甲被は、コンベヤベルトに載って接合ステーション(
図1に図示せず)に転送されることができる。
【0037】
次のステップ150として、製造された靴底および製造された甲被は、自動的に接合される。自動接合ステップは、熱接合工程によって行うことができる。例えば、製造された靴底および甲被部分の材料表面の一部が、熱源を用いながら完全に溶融される場合がある。いったん構成要素が溶融されれば、熱源は、引き出すことができ、構成要素は、1つ以上のロボット装置によって圧力下で接合されて、靴を形成することができる。この文脈において使用することができる例示的な方法と装置に関するさらなる詳述を含む文献独国特許出願公開第102015202014号明細書を、ここでも参考文献とする。
【0038】
次のステップ160として、製造された靴は、最終的な品質チェックを行っている自動品質チェックステーションによって、チェックされ得る。例えば、あらゆる靴は、画像ソフトウェアを含む自動光学検査工程を受ける場合がある。例えば、靴を履いて模擬歩行または模擬走行中に足にかかる力を測定するための測定センサを備えた人工的な足を、最終的な靴の中に挿入するなど、最終的な靴の特性についての動的試験も考えられ得る。このような自動試験は、時間がかかる可能性もあるので、自動的に製造された靴の試料のサブセットだけが、試験用に選択されると、さらに考えられ得る。
【0039】
最終的に、製造された靴は、ラベル付けされ、さらなる出荷用タグを付すことができる。さらに、またはあるいは、中敷きおよび靴ひもを、製造された靴に取り付ける場合もあり、このような製造後のステップは、手動で行われる場合もある。
【0040】
結果として、方法100は、共同施設の中で複数の靴を完全に自動製造することを初めて可能にした。
【0041】
図2は、靴280を自動的に製造するためのシステム200に関する本発明の実施形態の概略図を提示する。システム200は、上述の方法、具体的には、一連の方法ステップ100の1つ以上を行うことができる。それらの方法は、靴280を自動的に製造するための別のシステムによって行うこともできると、さらに考えられ得る。以下において、靴底211および甲被221を含む単一の靴280の自動製造を説明する。
図2に示される2つの主要な靴構成要素についての非常に概略的な表現は、多種多様な異なる甲被221および靴底211が、説明されたシステム200を用いて製造され得ることを示し、関連する手動作業は、システム200の設定および保守の間だけ必要とされる。
【0042】
図2の実施形態では、靴底211は、第1のステーション210で自動的に製造され、甲被221は、第2のステーション220で自動的に製造されており、第1のステーション210および第2のステーション220は、並行して動作し、共同施設201の中に配列されている。上述したように、このような施設201は、工場でも、または小売店であってもよい。さらに、共同施設201は、システム200のいくつかのまたは全てのさらなるステーションを含む場合もある。共同施設201は、例えば
図2に示すように接合ステーション260および品質チェックステーション270を含むこともできる。しかしながら、他の実施形態では、これらのさらなるステーションの少なくともいくつかは、共同施設201の外側に配置される場合もある(この選択肢は、図中に示されていない)。例えば、全てのステーションが小売店の中に配置されている場合、ある1対の靴を注文したばかりで、次いで、システム200の動作を注視することによって、その1対の靴が生産される様子を実際に見ることができる顧客にとっては、製造工程全体が、透明性のあるものになり得る。
【0043】
第1のステーション210では、靴底211は、2つ以上の部分を備える場合がある靴底型を含む成形ステーション212で、複数の粒子から個々に成形されることができる。型部品は、複数の個々の粒子で靴底型を充填するステップより前に、靴底型を閉じるように移動可能であり得る。その上、溶剤を供給して、靴底211を形成するために、粒子を、粒子同士互いに、そして選択的には外底要素と直接に結合および/または融合させることができる。加えて、回内運動または回外運動に対する選択的な支持などの、特別な靴底特性を提供するために、少なくとも1つの支持要素(
図2に図示せず)が、靴底型の中に設置されて、靴底211に一体化される場合もある。粒子を結合または融合するための溶剤は、1つの実施形態では、無毒性であり、施設および環境に何ら被害をもたらさない。水蒸気は、このような溶剤としての1つの例である。むろん、システム200が、例えば基本的にシステムから出る全ての有毒な放出物を収集するなどして、最適に適合されることを条件として、有毒な材料が、含まれる場合もある。
【0044】
1つの実施形態では、靴底型は、粒子を供給するために、靴底型の片方の部品または両方の部品に配置される少なくとも1つの第1の開口を備えることができる。1つより多い第1の開口を設ければ、それぞれの型に供給される粒子供給をさらに加速させることができ、したがって、生産量を増やことができる。さらに、またはあるいは、第1の開口は、型の2つの部品の間の間隙を広げて、その間隙から粒子を充填するだけで設けることができると、さらに考えられ得る。成形された靴底の外形を画定することに加えて、ステーション210は、さらに、足の衝撃の下での曲げ剛性または緩衝性などの所望の動的特性を保証するために、成形された靴底にある程度の圧縮をもたらす場合がある。
【0045】
1つの実施形態では、粒子は、発泡熱可塑性ポリウレタン(eTPU:expanded thermoplastic polyurethane)などの発泡材料から作られることができる。さらに、何らかの他の適切な材料を使用することもできると、考えられ得る。その上、発泡粒子は、無作為に、または型の内側にある種の模様を備えて配置されることができる。
【0046】
さらに、
図2に示した実施形態では第1のステーション210は、製造された靴底211用の自動品質チェックステーション215を備えている。しかしながら、他の実施形態では、品質チェックステーション215は、システム200の中の異なる位置、例えば第1のステーション210と接合ステーション260との間に配置される場合もある。
【0047】
自動品質チェックステーション215は、製造された靴底211の自動検査を含むことができる。この自動検査は、靴底が、例えば重量および/または大きさおよび/または形状または色に関して画定された公差の範囲内であるかどうかを調べることができる。例えば、製造された靴底211が、不正確に成形されている、例えば粒子が多すぎるまたは少なすぎることが原因で、望ましくない形状または重量を有している場合、自動品質チェックステーション215は、このような欠陥を検出することができ、製造工程から不良靴底を取り除くことができる。自動重量測定は、測定設備、例えば秤を用いて行うことができる。すでに上で述べたような靴底の動的試験も、可能である。先に説明したように、このような自動品質チェックが、第1のステーション210の中にすでに含まれている場合には、共同施設201内の製造工程全体の誤り率および起こり得る製造廃棄物は、大幅に最小限に抑えられる。最終的に、チェックされた靴底211は、ロボット装置250に届けられる。
【0048】
図2の実施形態では、甲被221を自動的に製造するための第2のステーション220は、甲被片を切断するための切断ステーション225と、パッチ準備ステーション230と、少なくとも1つのパッチを甲被片上に選択的に設置するためのパッチ設置ステーション235と、少なくとも1つのパッチを甲被片の表面上に固結させるための固結ステーション240と、固結された甲被片を2次元的な平面から3次元的な甲被に縫合するための縫合ステーション245とを備えることができる。これらのステーションは全て、運搬装置、例えばコンベヤベルトでつなげられることができる。
【0049】
切断ステーション225は、転子から切断台上の甲被片に送達され得る繊維材料を切断することができる。上述したように、繊維材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むことができる。ポリアミド類(PA:polyamides)またはポリエーテルブロックアミド(PEBA:polyetherblockamide)などの他の材料も、さらに考えられ得る。繊維材料は、編物材料、例えばポリエステル糸で編まれた繊維材料である場合もある。切断ステーション225は、甲被片用の1巻の繊維材料を提供するために、編機(図示せず)を含む場合もある。
【0050】
パッチ準備ステーション230は、例えばTPU材料を含み、10μm〜5mmの厚さ、より好ましくは150μm〜750μmの厚さを有する少なくとも1つのパッチを提供することができ、このパッチは、次のステーションで甲被片上に選択的に設置される。例えば、このようなTPU材料を含む1巻のテープは、転子上に巻き付けられていて、切断台上に引き出すことができる。方法ステップ120に関して上述したように、切断台は、真空を発生させてTPUテープを保持するために、そこから空気を抜き取ることができる穴を含むことができる。レーザ、例えば炭酸ガスレーザは、TPUテープから少なくとも1つのパッチを切断することができ、少なくとも1つの切断されたパッチは、真空によって切断台上で取り付けることができる。TPUテープが切断されて、パッチが形成された後、余分のテープは、持ち上げて取り除き、転子上に巻き付けることができる。切断台上に残っている少なくとも1つのパッチは、つかみ装置、例えばコアンダつかみ具を用いてつまみ上げることができる。
【0051】
パッチ設置ステーション235は、少なくとも1つのパッチを甲被片の上に選択的に設置することができる。例えば、ロボットアームの真空つかみ具は、少なくとも1つの切断されたパッチをつかんで動かすことができる。その上、パッチ設置ステーション235は、カメラなどのハードウェアおよび少なくとも1つのパッチの位置を検出するためのソフトウェアを含む視覚システムを備えることができる。
【0052】
パッチは、2層構造の形態で甲被片上に固定されることができ、パッチは、層の1つを形成しており、第2の層は、パッチを甲被の上に固定するのに使用される物質、例えばホットメルト材料によって形成される。その場合、上述の厚さの値は、(固結された)2層構造を合同した厚さに関していることができる。このような場合には、パッチ自体は、例えば190μm〜600μmの範囲の厚さを有することができる。
【0053】
1つの実施形態では、中足部分のパッチと比べて、より高い剛性および/またはより大きい厚さを有する少なくとも1つのパッチを、甲被片のかかと部分に設けることができる。好都合には、このように設置されたパッチは、着用者の足を下方に係止するために、製造された靴用に選択された曲げ剛性およびかかと合わせを生み出すことができる。
【0054】
1つの実施形態では、中足部分のパッチと比べて、より低い剛性および/またはより小さい厚さを有する少なくとも1つのパッチを、甲被片の前足部分に設けることができる。好都合には、このようなパッチは、伸張可能であり、しわおよび/または圧点を回避する。結果として、少なくとも1つのパッチを選択的に設置することで、製造された靴280用の機能を甲被片に付与することができる。
【0055】
固結ステーション240は、少なくとも1つの設置されたパッチを切断された甲被片と固結することができる、すなわち、熱および圧力を加えることによって、それらの間に結合を発生させることができる。1つの実施形態では、固結および結合は、以下の加工ステップ、すなわち接着、溶着、高周波溶着、超音波溶着、レーザ溶着、クリンピング、裁縫、ねじ切り、リベット留め、溶融、クリッピング、封止、熱加圧処理を施すこと、水蒸気処理への曝露の1つまたはいくつかによって実行されることができる。すでに上で示唆したように、別の可能な選択肢は、例えば上述の独国特許出願公開第102015224885号明細書でより詳細に記載されているように、パッチと甲被との間に結合をもたらすのに溶融可能な層またはホットメルト層を使用することである。好都合には、製造全体が、全自動化され、したがって、大幅に単純化される。
【0056】
縫合ステーション245は、固結された2次元的甲被片から3次元的な甲被221を形成することができ、それを一緒に縫合することができる。例えば、成形および縫合ステップは、穴押抜き、トング切断および/または縫合、ボードラスティング、ストローベリング、爪革縫合、かかと成形、かかとギャザリング用トングテーピング、つばおよび/またはかかとライニング用縁テーピング、つま先ギャザリング、およびつま先成形の少なくとも1つを含むことができる。1つの実施形態では、ボードラスティングとストローベリングの組合せが、使用されている。最終的に、製造された甲被221は、ロボット装置250上に設置される。
【0057】
パッチ設置工程および/または固結工程および/または縫合工程が完了した後、さらに品質チェックを、行うことができる。このような品質チェックは、単純な視覚システムによって、パッチが正しく(例えば位置、数、正しい型、色、厚さなどに関して)設置されているかどうかを確認する単純な視覚品質チェックである場合がある。品質チェックは、部分的にまたは完全に自動化されることもできる。
【0058】
図2に概略的に示されるように、ロボット装置250は、製造された靴底211および製造された甲被221を接合ステーション260に運搬する。接合ステーション260は、熱を加えることによって、製造された靴底211および製造された甲被221を自動的に接合する。例えば、熱は、赤外線「IR」源または類似のエネルギー源によって供給される場合がある。1つの実施形態では、接合ステップは、甲被221の材料を靴底211の材料の上に直接溶着することによって、すなわち接着剤を使わずに行われる。これは、製造された靴底211および製造された甲被221が、同じまたは類似の材料区分、例えばTPUの材料を含むことができる場合に、可能である。したがって、安定した、耐久性のある接続、したがって安定した、耐久性のある製造された靴280を生産するために、2つの面は、溶融されて、所定の期間の間、特定の圧力で一緒に押圧されることができる。
【0059】
図2の実施形態では、自動的に製造された靴280は、品質チェックステーション270に運搬されることができ、最終的な品質チェックで自動的にチェックされ得る。例えば、製造された靴280は、何らかの金属部品、例えば縫合の針が製造された靴28の0内部にあるかどうかを検出するために、金属検出工程を受けることができる。上述したように、ステーション270は、生産された靴の全てまたは試料セットの動的試験を含むこともできる。製造された靴280は、品質チェックステーション270によって、ラベル付けされ、さらなる出荷用タグを付すことができると、さらに考えられ得る。さらに、またはあるいは、中敷きおよび靴ひもを、製造された靴280に取り付ける場合もある。
【0060】
靴280が自動的に製造されるとき、靴の特性は、たくさんの手作業を伴う、知られている技術によって製造された靴よりも、はるかに高い一貫性を有している。手動で行われる反復的な労役が、靴の製造には含まれないので、製造された靴の製品のずれは、極めてまれである。
【0061】
以下において、発明の理解を促進するために、さらなる実施形態を説明する。
[1]
靴を自動的に製造する方法であって、
a.複数の靴底を第1のステーションで自動的に製造するステップと、
b.複数の甲被を第2のステーションで自動的に製造するステップとを含み、
c.第1のステーションおよび第2のステーションが、並行して動作し、製造された靴底および製造された甲被が、接合ステーションに運搬されて、そこで自動的に接合され得るように、共同施設の中に配置されている、方法。
[2]
ステップa.で製造される靴底の第1の数が、ステップb.で製造される甲被の第2の数と一致している、[1]に記載の方法。
[3]
第1の数と第2の数の一致が、不良な靴底および/または不良な甲被の比率を考慮に入れる、[2]に記載の方法。
[4]
複数の靴底を第1のステーションで自動的に製造することが、複数の粒子から個々の靴底を成形することを含む、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の方法。
[5]
製造された靴底の自動品質チェックをさらに含む、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の方法。
[6]
自動品質チェックが、製造された靴底の重量および/または大きさの自動測定を含む、[5]に記載の方法。
[7]
接合ステーションが、熱を加えることで、製造された靴底と製造された甲被を自動的に接合する、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の方法。
[8]
自動的に接合するステップが、接着剤なしで行われ、好ましくは、甲被の材料を靴底の材料の上に直接溶着させることによって行われる、[7]に記載の方法。
[9]
ステップb.が、少なくとも1つのパッチを甲被材料の上に選択的に設置することによって、製造された甲被を補強することを含む、[1]〜[8]のいずれか1つに記載の方法。
[10]
少なくとも1つのパッチが、熱可塑性ポリウレタン(TPU)材料を含む、[9]に記載の方法。
[11]
少なくとも1つのパッチが、10μm〜5mmの厚さ、より好ましくは150μm〜750μmの厚さを備える、[10]に記載の方法。
[12]
選択的に設置するステップが、中足部分のパッチと比較して、より高い剛性および/またはより大きい厚さを有する少なくとも1つのパッチを、製造された甲被のかかと部分に設けることを含む、[9]〜[11]のいずれか1つに記載の方法。
[13]
選択的に設置するステップが、中足部分のパッチと比較して、より低い剛性および/またはより小さい厚さを有する少なくとも1つのパッチを、製造された甲被の前足部分に設けることを含む、[9]〜[12]のいずれか1つに記載の方法。
[14]
補強するステップが、熱および圧力を加えることによって少なくとも1つのパッチを甲被材料の上に固結させることを含む、[9]〜[13]のいずれか1つに記載の方法。
[15]
選択的に設置することの後および/または固結させることの後行われるパッチ設置の視覚品質チェックをさらに含む、[9]〜[14]のいずれか1つに記載の方法。
[16]
接合ステーションへの運搬が、自動化されている、[1]〜[15]のいずれか1つに記載の方法。
[17]
接合ステーションへの自動運搬が、少なくとも1つのロボット装置によって実行される、[16]に記載の方法。
[18]
品質チェックステーションが、製造された靴底および製造された甲被を自動的に接合した後に、自動品質チェックを行う、[1]〜[17]のいずれか1つに記載の方法。
[19]
[1]〜[18]のいずれか1つに記載の方法によって製造される靴。
[20]
[1]〜[19]のいずれか1つに記載の方法を行うためのシステムであって、
a.複数の靴底を自動的に製造するための第1のステーションと、
b.複数の甲被を自動的に製造するための第2のステーションと、
c.靴底と甲被を自動的に接合するのに適した接合ステーションとを備え、
d.第1のステーションおよび第2のステーションが、並行して動作するのに適していて、製造された靴底および製造された甲被が接合ステーションに運搬されて、そこで自動的に接合されることができるように、共同施設の中に配置されている、システム。